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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) X43
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) X43
管理番号 1297274 
審判番号 無効2012-890107 
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-12-18 
確定日 2015-01-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第5183865号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5183865号の指定役務中、第43類「串揚げ料理の提供」についての登録を無効とする。 その余の指定役務についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5183865号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成19年12月25日に登録出願され、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、同20年11月4日に登録査定、同月28日に設定登録されたものである。
なお、本件商標は、商標法第51条第1項の商標登録の取消しの審判により、その登録は取り消すべき旨の審決がされ、平成26年1月30日にその確定審決の登録がされている。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第27号証(枝番を含む。なお、甲号証において、枝番を有するもので、枝番のすべてを引用する場合は、以下、枝番の記載を省略する。)を提出した。
1 当事者等
(1)請求人は、飲食店の経営等を業とする株式会社であり、現在、請求人の登録第5156663号商標である「新世界元祖串かつだるま」を屋号とする串かつ店を、大阪府下で9店舗、兵庫県下で1店舗を展開している。
なお、登録第5156663号商標(以下「引用商標」という。)は、上記のとおり、「新世界元祖串かつだるま」の文字を標準文字で表してなり、平成19年4月18日に登録出願、第29類「チーズの串揚げ,肉の串揚げ,水産物の串揚げ,野菜の串揚げ,果実の串揚げ,卵の串揚げ,調理済みのチーズの串揚げ,調理済みの肉の串揚げ,調理済みの水産物の串揚げ,調理済みの野菜の串揚げ,調理済みの果実の串揚げ,調理済みの卵の串揚げ」、第30類「もちの串揚げ,その他の穀物の加工品の串揚げ,串揚げ用のソース」及び第43類「串揚げ料理の提供」を指定商品及び指定役務として、同20年8月1日に設定登録されたものである(甲1)。
(2)本件の商標権者(被請求人)は、請求人の代表取締役であったが、請求人の元従業員と共謀して、請求人の経営する串かつ店舗において、顧客から飲食代金として受領した金員を不当に領得するという業務上横領行為を行っていたことが判明したため、平成19年5月10日付けで取締役を解任された(甲2)。
(3)商標権者は、請求人の取締役を解任されて間もない平成19年12月25日に、当時、請求人においていまだ本件商標の登録がされていないことを奇貨として、本件商標の登録出願を行い、登録を得た(甲3)。
2 本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当すること
(1)はじめに
商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、商標自体に公序良俗違反のない商標であっても、登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠く場合や、当該商標登録が剽窃的行為であると評することができる場合も含まれると解されているところ(前者につき、東京高等裁判所平成15年5月8日判決〔TKC法律情報データベース。甲4。〕、後者につき、東京高等裁判所平成14年7月16日判決〔TKC法律情報データベース。甲5。〕)、以下に述べるとおり、被請求人による本件商標の登録出願の経緯は著しく社会的妥当性を欠くものであり、かつ、被請求人による本件商標登録は剽窃的になされたものであって、本件商標が商標法第4条第1項第7号に違反して商標登録がなされたものであることは明らかである。
(2)本件商標の登録出願の経緯は著しく社会的妥当性を欠くこと
ア 被請求人は、業務上横領を理由に、請求人の取締役を解任された際に、請求人と締結した示談書(甲2。以下「本件示談書」という。)において、今後、請求人及び請求人の運営する「新世界元祖串かつだるま」に一切関与しない旨誓約している(示談書第4条第3項〔関与禁止条項〕)にもかかわらず、被請求人は、請求人の取締役を解任されて間もない平成19年12月25日に、当時、請求人においていまだ本件商標の商標登録がなされていないことを奇貨として、本件商標の商標登録を行っている。
被請求人によるかかる本件商標の商標登録が、本件示談書の関与禁止条項に違反することは、本審判請求に先立つ請求人と被請求人との間の訴訟の確定判決においても明確に認められているところである(〔甲6〕「第3」「4」「(4)」の項〔7頁〕。)
イ このように、被請求人は、本件商標の商標登録を行い、もって、本件示談書に違反しているわけであるが、そもそも、本件示談書は、被請求人による業務上横領行為という犯罪行為の示談解決のために、請求人と被請求人との間で締結されたものであって、本件示談書の締結に至る経緯からすれば、被請求人としては、本件示談書において被請求人が誓約した事項を厳格に遵守しなければならない立場にある。
すなわち、被請求人が犯した業務上横領行為は、請求人の店舗において、顧客から飲食代金を受領する際に、レジスタ一に売上金を入力せずに、あるいはレジスターへの入力を即時に取消すなどして、ジャーナルとの差額を作り出し、その差額をそのまま自身の懐に入れたり、営業時間終了後になって抜き取りをするといった極めて悪質な手口により、平成15年4月頃から被請求人が解任される同19年5月頃までの長期間にわたり繰り返しなされたものであり、厳罰を科されてもおかしくない重大犯罪であって、刑事告訴することも検討されなければならないほどであった。しかも、代表取締役社長による担当店舗での業務上横領という請求人の多数の従業員にもおよそ示しのつかない前代未聞の問題行為であったが、被請求人はそれまで請求人店舗で一緒に働いていた仲間であったし、被請求人に業務上横領行為の事実を問い質したところ、被請求人も業務上横領行為の事実について素直に認めて示談に応じたことなどの事情を斟酌して、刑事告訴等により事を荒立てるよりも、示談書の約定に従って解決した方が請求人にとってもまた被請求人にとっても良いと考えて、あえて被請求人との間で本件示談書を締結して解決を図ったという経緯にあるのである。かかる本件示談書の締結に至る経緯からすれば、被請求人は、本件示談書において被請求人が誓約した事項を厳格に遵守しなければならず、いささかの違反も許されない立場にあるのである。
ウ しかも、被請求人が本件示談書に違反してまであえて本件商標の商標登録を行ったのは、請求人の登録商標である「新世界元祖串かつだるま」と混同を生じるおそれのある本件商標を使用して、請求人の「新世界元祖串かつだるま」の名声にフリーライドし、もって、不正の利益を得るためである(甲7)。
このことは、被請求人が、本件商標に対して、さらに「大阪」や「新世界」の語を併用したり(甲8)、また、通天閣を模した看板を店頭に設置するなどして(甲9)、被請求人の「四代目だるま」が、「大阪」、「新世界」及び「通天閣」との繋がりがあることを積極的にアピールし、請求人の「新世界元祖串かつだるま」と混同するように誘引していることからも明らかである。被請求人は、例えば「関西名物」といった語の採用も可能であったにもかかわらず、請求人の「新世界元祖串かつだるま」を連想させる「大阪」や「新世界」の語をあえて併用し、また、「大阪」や「新世界」を連想させる通天閣の看板をあえて使用しているのであって、請求人の「串かつだるま」との混同を狙ったものであるといわざるを得ない。
また、「新世界元祖串かつだるま」は、現在、請求人の代表者である上山勝也氏がその四代目を受け継いでいるところ、被請求人は、平成19年5月10日付けで請求人の取締役を解任されるまで請求人の代表取締役の地位にあったものであり、当然、かかる事実を十分認識している。請求人は、現在の「新世界元祖串かつだるま」が四代目であることを知悉しつつ、敢えて、「四代目」の語が冠された本件商標を登録出願しているのであって、かかる事実からしても、被請求人が、請求人の「新世界元祖串かつだるま」との混同を狙いとして、本件商標の商標登録を行ったことに疑いの余地はない。
エ このように、被請求人は、本件示談書において誓約した事項を厳格に遵守しなければならない立場にあるにもかかわらず、請求人の「新世界元祖串かつだるま」の名声にフリーライドし、もって、不正の利益を得るために、本件示談書に違反して、本件商標の商標登録を行ったものであって、被請求人による本件商標の登録出願は極めで悪質である。
よって、被請求人による本件商標の登録出願の経緯は著しく社会的妥当性を欠くものであるといわざるを得ない。
(3)本件商標の登録出願は剽窃的であること
ア 被請求人は、平成19年5月10日付けで、請求人の取締役を解任されるまで請求人の代表取締役の地位にあったものであるところ、請求人の引用商標は、当時、請求人の代表取締役の地位にあった被請求人が登録出願を行ったものである。
よって、被請求人は、平成19年5月10日付けで請求人の取締役を解任された時点では、いまだ請求人において本件商標の登録出願が行われていないことを当然知っていた。
イ 被請求人は、将来、四代目である請求人において本件商標と同一の商標の登録出願がなされる可能性があることを認識していた上で、請求人においていまだ本件商標の登録がなされていないことを奇貨として、請求人の取締役を解任されて間もない平成19年12月25日に本件商標の登録出願を行い、同20年11月28日に本件商標の商標登録がなされたものであるが、請求人の「新世界元祖串かつだるま」の名声にフリーライドし、もって、不正の利益を得るために、被請求人において先取り的に本件商標の登録出願を行ったものである。
ウ このように、被請求人は、いまだ請求人が本件商標を商標登録していないことを奇貨として、先取り的に、本件商標の商標登録を行っているのであって、かかる被請求人の行為は、請求人の正当な利益を害するおそれがあり、剽窃的であって、公正な取引秩序を乱し、社会一般の道徳観念に反するものである。
(4)小括
以上のとおり、被請求人による本件商標の登録出願の経緯は著しく社会的妥当性を欠くものであり、かつ、被請求人による本件商標の登録は剽窃的になされたものであって、本件商標が商標法第4条第1項第7号に違反して商標登録がされたものであることは明らかである。
3 本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当すること
(1)引用商標の周知著名性
ア 請求人が引用商標を屋号として使用して経営する「新世界元祖串かつだるま」は、大阪の繁華街である新世界に本店を置く、串かつ料理を提供する飲食店であり、昭和4年の創業以来、「だるま」や「串かつだるま」などの愛称で広く人々に親しまれてきた老舗の串かつ店である(甲10の1?13)。
ちなみに、串かつは、「新世界元祖串かつだるま」の創業者である百野ヨシエ氏が考案した食べ物であり(甲16)、そのため、「新世界元祖串かつだるま」は、串かつ発祥の店、いわば元祖串かつ店として、人々に認知されてきたという経緯にある。
イ もともと、「新世界元祖串かつだるま」は三代目店主である百野貴彦氏が個人経営する串かつ店であったが、百野貴彦氏が病に倒れ、閉店の危機に陥っていたところを、学生時代からの常連客であった大阪府出身の俳優で著名な赤井英和氏(以下「赤井氏」という。)にその味とのれんが託されることとなり、請求人が赤井氏からライセンスの付与を受けて経営を承継し(甲11)、現在は、請求人の代表者である上山勝也氏が四代目としてこれを受け継いでいる。
ウ 「新世界元祖串かつだるま」は、請求人が経営を承継して以降、赤井氏が広告塔となって、新聞、雑誌、テレビ番組などの各種メディアにおいて、有名な元祖串かつ店として繰り返し取り上げられるようになり、遅くとも、本件登録商標の出願がなされた時点には、串かつ発祥の店、そして、大阪の著名な観光スポットとして、一躍その名を全国に知られるようになっていた(甲12?甲24)。
また、甲第25号証は、「龍が如く2」というタイトルの、平成18年12月に発売されたプレイステーション用ゲームソフト(販売元:株式会社セガ)中に、「新世界元祖串かつだるま」が出てくるデモ画面映像である。同ソフトは、シリーズ累計販売本数500万本を突破する超人気ゲームソフトであり、「龍が如く2」自体は平成19年度日本ゲーム大賞優秀賞を受賞している作品である。同ゲーム中には、「新世界元祖串かつだるま」通天閣店(甲26)をモデルにした「新世界元祖串かつだるま」の店舗が登場する。
エ 今や、一般消費者は、串かつといえば「新世界元祖串かつだるま」、「新世界元祖串かつだるま」といえば串かつを連想するといったように、「新世界元祖串かつだるま」は、関西圏にとどまらず、全国的に周知著名性を獲得するに至っている。上記のとおり、現在、「新世界元祖串かつだるま」は、大阪府下で9店舗、兵庫県下で1店舗展開しているが、本件商標の出願時においても、大阪府下で4店舗、兵庫県下で1店舗を展開している。
このように、「新世界元祖串かつだるま」は、各種メディアヘの露出を通して、遅くとも本件登録出願時には、串かつ店の代名詞として、日本全国の需要者の間で周知著名になっていたものである。
(2)本件商標と引用商標の指定役務に係る需要者は全くの同一であること
本件商標の指定役務は「飲食物の提供」であり、他方、引用商標の指定役務は「串揚げ料理の提供」であることから、双方の指定役務の需要者が共通であることは明らかである。
さらに、実際にも、被請求人は、本件商標を使用して、「串かつ専門店大阪新世界四代目だるま」、「大阪新世界串かつ四代目だるま」という屋号の串かつ店を出店し(甲8,甲9)、請求人と同様に、串揚げ料理の提供を行っていることから、双方の指定役務にかかる需要者は全くの同一である。
(3)本件商標は引用商標と混同を生じさせやすいこと
ア 本件商標及び引用商標は、いずれも、その構成中に「だるま」の語を含むところ、「だるま」の語は、単に指定役務の内容や場所を表示するものではなく識別力が強い。
イ そして、本件商標は「だるま」に「四代目」との語が付加されており、引用商標もまた「だるま」に「元祖」との語が付加されているところ、「四代目」は「元祖」すなわち、創業者の代から数えて四代目であることを意味するものであるため、これらの語が、識別力の強い「だるま」の語に付されることにより、あたかも被請求人が請求人の「新世界元祖串かつだるま」の正当な後継者であるかの如き印象を消費者に与え、消費者は、被請求人の「四代目だるま」と請求人の「新世界元祖串かつだるま」が共に数代続いている老舗の一門に属するものとの誤解を生じさせやすい。
ウ さらに、前述のとおり、本件商標は「串揚げ料理の提供」に使用され、引用商標も同様に「串揚げ料理の提供」に用いられているところ、「串揚げ料理の提供」という極めて限定された市場において、上記のとおり、本来的に誤認混同のおそれの強い本件商標と引用商標とが併存すれば、消費者が、両商標の間に何らかの経済的・組織的関連性があるとして誤認混同するおそれが高いことは多言を要しない。ましてや、前述のとおり、引用商標が、串かつ店の代名詞として高い周知著名性を獲得するに至ったことをあわせ考えればなおさらである。
エ また、実際の取引実態としても、被請求人は、「四代目だるま」の語の傍らに、「串かつ専門店大阪新世界」、「大阪新世界串かつ」といった語を付加して本件商標を使用しており、消費者が本件商標と引用商標との間に何らかの関連性が存在するものと誤認混同する現実のおそれは極めて高い。
オ 以上のとおり、両商標は、混同を生じさせやすい。
(4)被請求人の出店した串かつ店が請求人の系列店であるとの混同が生じるおそれが高く、現に混同が生じていること
ア 上述のとおり、引用商標は周知著名であること、本件商標と引用商標の指定役務にかかる需要者は全くの同一であること、本件商標と引用商標は「だるま」との語を共通にするとともに、請求人は「串かつだるま」の傍らに「元祖」の語を使用し、他方、被請求人は「四代目」の語を使用しており、「四代目」は「元祖」たる創業者から四世代目を示すものであるから、かかる記載は、あたかも被請求人が請求人の「串かつだるま」の正当な後継者であるかの如き印象を顧客に与え、顧客は被請求人の「四代目だるま」が請求人の「串かつだるま」から正当に暖簾分けを受けたものと誤解を生じさせやすいこと、などからすれば、本件商標を、串かつを提供する飲食店に使用すると、需要者は、請求人の営む「新世界元祖串かつだるま」の支店又は暖簾分けした分家であるというように、何らかの関係のある者が運営する店舗であるといったように、役務の出所を混同するおそれが極めて高い。
したがって、被請求人による本件商標の使用は、請求人の業務に係る役務との誤認を招き、役務の出所の混同を招く(狭義の混同)だけでなく、被請求人があたかも請求人と経済的又は組織的に関係があるかの如き誤認を需要者に与え、その結果、役務の出所の混同を招くおそれがある(広義の混同)ことは明らかである。
イ そして、かかる混同のおそれにとどまらず、現に、インターネット上で、被請求人の運営する上記串かつ店が請求人の系列店であるなどといった誤った書き込みがされる、あるいは、被請求人が出店した上記串かつ店は請求人の系列店であるのかといった問い合わせが請求人に対して相次いでされるなど、請求人の業務にかかる役務との混同が生じているのである(甲27の1?25)。
(5)小括
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであることは明らかである。
4 結語
以上により、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第7号に違反して登録を受けたものとして、同法第46条第1項第1号によって登録を無効とすべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると主張し、その理由を要旨次のように述べた。
1 商標法第4条1項第7号違反について
請求人は、審判請求書において、被請求人が以前請求人の取締役に就任しており、業務上横領等を理由に解任されたこと、またその後、請求人と示談書を締結し、その示談書の関与禁止条項に違反する行為があったことなどを指摘して、かかる行為を行いながらも請求人の商標「新世界元祖串かつだるま」「串かつだるま」と誤認行動を生じさせるおそれがある本件商標「四代目だるま」を被請求人が取得した行為は、請求人のこれらの商標と誤認混同を起こさせ、またその名声にフリーライドするものであって、本件商標の登録出願は剽窃的であるから、商標法第4条第1項第7号に違反して商標登録がなされたものであると主張している。
しかし、先の異議2009-900084号の異議決定にもあるように、請求人が本件登録出願の当時から、「四代目だるま」なる商標を使用していたという事実は全く証明されていない以上、被請求人がこの請求人の商標を剽窃したという事実は全く根拠がない主張であり、失当であることは明らかである。
つまり、被請求人は、請求人の取締役から外れてから、請求人の商標とは非類似の本件商標の登録出願を行ったものであって、かかる商標出願行為はなんら請求人が主張する剽窃的な行為には当たらず、全くの事実無根である。
また、請求人は、本件商標「四代目だるま」が、請求人の「新世界元祖串かつだるま」「串かつだるま」なる商標のフリーライドであるとの主張を行っている。
しかし、そもそも請求人の「串かつだるま」又は「新世界元祖串かつだるま」なる商標は、簡易・迅速を旨とする取引においては、いずれも「串かつだるま」として認識されるにすぎない。
これに対して、本件商標「四代目だるま」は、前半の「四代目」は、「代」の文字が「家又は位を継いで、その地位にある間」の意味を有することから、初代から四番目の代にあたることを表すものであり、後半の「だるま」は、同様に、達磨大師の座禅した姿を模した「張り子の玩具」の意味合いを有するものであるから、共に親しまれたものというべきであって、本件商標が、該文字が軽重の差がなく結合し、「四代目だるま」のごとき一体の意味合いを認識させるものである。そうすれば、「四代目」及び「だるま」が指定役務との関係において、仮に多数使用されている事実があるとしても、これを一体不可分に表示した本件商標は、それ自体自他識別の機能を十分に発揮し得るものであり、請求人の「串かつだるま」なる商標とは類似せず、またこれを想起することもないから、被請求人が本件商標を取得したことにつき、商標法第4条1項第7号に違反するとの主張は、明らかに失当である。
2 商標法第4条1項第15号違反について
請求人は、「本件商標及び引用商標は、いずれも、その構成中に『だるま』の語を含むところ、『だるま』の語は、単に指定役務の内容や場所を表示するものではなく、識別力が強い。」と主張している。
しかし、指定役務第43類「飲食物の提供」について、「だるま軒」(商標登録第4877534号)、「だるま鍋」(同第5091414号)、「だるま茶屋」(同第5231317号)、「だるま亭」(同第5255884号)、「神田達磨」(同第5371411号)などの既登録商標が存在する。
かかる事実からすると、請求人が主張するように「だるま」の語は、請求人の造語でもなく、一般に達磨大師の座禅した姿を模した「張り子の玩具」の意味合いを有しているだけであるから、その部分だけでは大きな識別力を有しないと考えるのが相当である。
してみれば、あくまでも請求人商標「串かつだるま」、「新世界元祖串かつだるま」として認識されるにすぎないし、本件商標「四代目だるま」も、全体として識別力を発揮しているのであって、請求人の上記「『だるま』の語は、単に指定役務の内容や場所を表示するものではなく、識別力が強い。」との主張は明らかに失当である。
また、請求人は、「本件商標は『だるま』に『四代目』との語が付加されており、・・・これらの語が、識別力の強い『だるま』の語に付されることにより、あたかも被請求人が請求人の「新世界元祖串かつだるま」の正当な後継者であるかのごとき印象を消費者に与え、消費者は、被請求人の『四代目だるま』と請求人の『新世界元祖串かつだるま』が共に数代続いている老舗の一門に属するものと誤解を生じさせやすい。」と主張している。
しかし、上述のように「だるま」の語だけでは識別力は小さく、全体して識別力を獲得していることは明らかである。
請求人の「新世界元祖串かつだるま」なる商標は、簡易・迅速を旨とする取引においては、「串かつだるま」と省略して使用されるところ、請求人にとって識別力を有する部分は「串かつだるま」であることは明確である。つまり、請求人の業務を表す「串かつだるま」なる文字を含んでいなければ、請求人の役務と誤認混同の恐れは生じないことは明らかである。
かかる観点から本件商標を見ると、本件商標は、「四代目だるま」と短くかつまとまりよく構成され、一連一体の商標を構成している。
そして、請求人の商標である「串かつだるま」なる商標とは明らかにその語感もまた外観、観念も異なっていることは明らかである。
また、審査基準を参照しても「5、他人の著名な商標と他の文字または図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるもの等を含め、原則として、商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認にして取り扱うものとする。ただし、その他人の著名な商標部分が既成の語の一部となっているもの、又は指定商品若しくは役務との関係において出所の混同のおそれのないことが明白な場合を除く。」としている。
かかる基準に照らすと、本件商標「四代目だるま」は、請求人の「串かつだるま」と他の文字等の結合商標には該当しないし、請求人の「串かつ」「だるま」のいずれの語も請求人による創造的標章には該当せず、既成の語の組み合わせにすぎないから、上記基準に照らしても、本件商標「四代目だるま」なる商標は、請求人の「串かつだるま」とは誤認混同を生ずることはなく、商標法第4条第1項第15号に該当しないことは明らかである。
以上のことから、本件商標が商標法第4条1項第15号に違反して登録されたとの無効理由には該当しないことは明らかである。
3 結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第7号に違反している事実はない。

第4 当審の判断
1 請求人の業務に係る「串かつ料理の提供」に使用される営業表示及びその周知性
(1)請求人の提出した証拠(甲7,甲10,甲12?甲26)によれば、以下のことがいえる。
請求人は、天王寺公園の西に接し、通天閣をはじめ、映画館や飲食店などが多く建ち並ぶ繁華な地域としてよく知られている大阪の新世界において、その業務に係る「串かつ料理の提供」について、「だるま」の文字よりなる店舗名称を、昭和4年の創業以来継続して使用していた。請求人の営業する串かつ店は、独自に開発したソースと衣が秘伝の味として、地元の客に人気があったが、三代目店主が病に冒され、閉店を余儀なくされていた2001年(平成13年)10月頃、常連客であった元プロボクサーで俳優の赤井英和が、請求人の店舗の立て直しを図り、四代目店主として、赤井英和の後輩に当たる商標権者(田中享)が引き継ぐことに決まった。このことが話題となり、請求人の営業する串かつ店は、新聞や雑誌、テレビ等で取り上げられ、独自に開発したソースと衣が秘伝の味であること、あるいは、「ソースの二度付け(漬け)禁止」なる独特のルールがあることも相まって、一躍有名になった。その後、請求人の営業努力により、大阪の新世界にある串かつ店として知れわたるに従い、大阪の新世界には、串かつ店舗が多数軒を並べるようになり、2005年(平成17年)頃には、大阪の新世界といえば、串かつの街として、観光客に知られるようになった。しかして、そのような状況においても、請求人は、大阪の新世界における串かつ料理を提供する老舗の店舗として、「元祖串かつだるま」などと、一目置かれる存在であって、その人気は、商標権者が東京において、串かつ店を開店した際に、大阪の新世界の請求人の串かつ店「だるま」が引き合いに出されるほど高いものであった。また、請求人は、平成23年2月の時点において、大阪府に7店舗、兵庫県に1店舗を有し、「串かつ料理の提供」の事業展開をしていた。
(2)してみると、請求人の営業に係る串かつ店「だるま」は、大阪の新世界において古くから営業する店舗として(現在においては、本店が大阪の新世界に所在する。)、「大阪新世界元祖串かつだるま」、「元祖串かつだるま」、「串かつだるま」又は「だるま」(これらを以下「請求人営業表示」という場合もある。)と表示され、又は称されて、商標権者が本件商標を登録出願した平成19年12月25日には既に関西地方を中心とした需要者の間に広く認識され、「串かつを含む串揚げ料理の提供」に関わる取引者に限ってみれば全国的に広く認識されていたというべきであって、請求人営業表示の周知性は、本件商標について登録査定がされた同20年11月4日においても継続していたということができる。
2 本件商標と請求人営業表示との類似性
(1)上記1認定のとおり、請求人の営業に係る串かつ店は、「大阪新世界元祖串かつだるま」、「元祖串かつだるま」、「串かつだるま」又は「だるま」と表示され、又は称されており、それら請求人営業表示は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に「串かつを含む串揚げ料理の提供」に関わる取引者を中心とした需要者の間に広く認識されていたと認められるものである。
そして、請求人営業表示中の「大阪新世界」の文字は「大阪市浪速区恵美須東に位置する繁華街。中央やや北寄りに通天閣が建ち、南東部にジャンジャン横丁がある。」と説明される地域の名称として、また、「元祖」の文字は「一家系の最初の人。ある物事を初めてしだした人。創始者。」、「串かつ」の文字は「揚げ物料理の一種。豚肉と葱(ねぎ)または玉葱を交互に串に刺し、衣をつけて揚げたもの。」の意味を有するものであって、それぞれよく知られた語であり、請求人の提供する役務との関係では、その出所識別標識として機能が無い、又は弱いものであるのに対して、「達磨大師の坐禅した姿に模した張子の玩具。」の意味を有する語としてよく知られている「だるま」の文字は、役務の出所識別標識として機能が弱いものではない。
してみれば、「大阪新世界元祖串かつだるま」、「元祖串かつだるま」、「串かつだるま」又は「だるま」の請求人営業表示は、その構成中の文字に相応して「だるま」の文字部分が分離、抽出されて商取引に資されることも十分あり得るものであり、「だるま」の文字部分に相応した称呼及び観念が生じるといえる。
他方、本件商標は、「四代目だるま」の文字を横書きしてなるところ、構成前半の「四代目」の文字は、「代」の文字が「家または位を継いで、その地位にある間。また、それを数える語。」の意味を有することから、初代から四番目の代に当たることを表すものであり、後半の「だるま」の文字は、上記のとおり「達磨大師の座禅した姿に模した張り子の玩具。」の意味を有するものであって、いずれもよく知られたで語であるといえる。そうすると、本件商標は、構成全体として「四代目のだるま」(四番目の代のだるま)のごとき一体の意味合いを認識させるものであり、これより生ずる「ヨンダイメダルマ」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものであって、また、その構成も同じ書体、同じ大きさ、等間隔により外観上もまとまりよく表されていることから、特段の事情がない限り、一体不可分の商標として看取、認識されるものといえる。
しかしながら、上記のとおり、請求人営業表示は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に「串かつを含む串揚げ料理の提供」に関わる取引者を中心とした需要者の間に広く認識されていたと認められるものであることからすれば、本件商標の構成中の「だるま」の文字部分は、創始者から数えて四代目であることを意味する「四代目」の文字部分と比較して、圧倒的に強い印象を与える部分といい得るものである。
したがって、本件商標と請求人営業表示とは、「だるま」の文字部分を共通にしていることにおいて類似性は高いといわざるを得ない。
3 本件商標に係る指定役務と請求人営業表示に係る業務とにおける関連性等
本件商標に係る指定役務は、「飲食物の提供」であり、請求人営業表示に係る業務である「串かつ料理の提供」を含むものであって、「串かつを含む串揚げ料理の提供」については、その質、目的を共通にし、該役務の取引者、需要者も共通にすることが多いということができる。
4 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1ないし3によれば、本件商標と請求人営業表示とは、類似性が高いことに加え、請求人営業表示が、本件商標の登録出願時及び登録査定時に「串かつを含む串揚げ料理の提供」に関わる取引者を中心とした需要者の間に広く認識されていたと認められるものであることを併せ考慮すると、商標権者が本件商標をその指定役務中「串揚げ料理の提供」について使用するときは、取引者・需要者において、その役務が請求人又はこれらと経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように役務の出所について混同を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標の登録は、その指定役務中の「串揚げ料理の提供」について、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。
また、本件商標は、その指定役務中の「『串揚げ料理の提供』以外の飲食物の提供」について、上記のような混同を生じさせるおそれがあるというべき理由を見いだせないから、その登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるということはできない。
5 その他の無効理由について
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当すると主張するとともに、同項第7号にも該当する旨主張している。
本件商標の登録は、その指定役務中「串揚げ料理の提供」について、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであり、無効とされるべきであること、上記のとおりであるから、請求人が主張する他の無効理由について判断するまでもない。
そして、本件商標は、その指定役務中の「『串揚げ料理の提供』以外の飲食物の提供」について、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるというべき理由を見いだせないから、その登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるということはできない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第46条第1項の規定により、その指定役務中、「結論掲記の指定役務」について無効とし、その余の指定役務について無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標


審理終結日 2014-09-29 
結審通知日 2014-10-01 
審決日 2014-12-12 
出願番号 商願2007-127064(T2007-127064) 
審決分類 T 1 11・ 271- ZC (X43)
T 1 11・ 22- ZC (X43)
最終処分 一部成立 
前審関与審査官 田中 幸一 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 酒井 福造
手塚 義明
登録日 2008-11-28 
登録番号 商標登録第5183865号(T5183865) 
商標の称呼 ヨンダイメダルマ、ダルマ 
代理人 秋山 洋 
代理人 福岡 宏海 
代理人 粕川 敏夫 
代理人 武井 祐生 
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