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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W3637
審判 全部申立て  登録を維持 W3637
審判 全部申立て  登録を維持 W3637
審判 全部申立て  登録を維持 W3637
管理番号 1296304 
異議申立番号 異議2014-900196 
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2015-02-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2014-07-14 
確定日 2015-01-06 
異議申立件数
事件の表示 登録第5662009号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5662009号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5662009号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおり,図形と「SMA×ECO CITY」の文字からなり,平成25年8月28日に登録出願,同26年2月4日に登録査定,第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定着物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,信用購入あっせん,住宅資金の貸付けに関する情報の提供,家賃・ガス料金又は電気料金の徴収の代行,商品代金の徴収の代行,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,企業の信用に関する調査,税務相談に関する情報の提供,税務代理に関する情報の提供」及び第37類「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備,火災報知機の修理又は保守,暖冷房装置の修理又は保守,バーナーの修理又は保守,ボイラーの修理又は保守,ポンプの修理又は保守,冷凍機械器具の修理又は保守,電動機の修理又は保守,配電用又は制御用の機械器具の修理又は保守,発電機の修理又は保守,測定機械器具の修理または保守」を指定役務として,同年4月4日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当し,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人が引用する商標について
申立人が引用する商標は次のとおり(以下,それらをまとめて「引用商標」という場合がある。)であり,いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
ア 国際登録第1090534号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:SMA|SERVICE
(「SMA」の文字は,他の文字より太く濃く表されている。)
指定役務:第37類「Installation and support, namely repair and maintenance of solar, photovoltaic and energy generating systems; aforementioned services also in connection with spare part warranties and availability warranties.」及び第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の役務
国際商標登録出願日:2011年(平成23年)3月17日
優先権主張:Germany 2010年9月24日
設定登録日:平成24年5月25日
イ 国際登録第1136676号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:別掲2のとおり
指定商品及び指定役務:第37類「Installation, repair and maintenance of solar, photovoltaic and energy generating systems; aforementioned services also in connection with spare part warranties and availability warranties; maintenance, repair, replacement and tuning of components, parts or systems in solar, photovoltaic and energy generating systems; providing information concerning the installation, repair and maintenance works with respect to solar, photovoltaic and energy supply installations by means of a call center.」並びに第9類,第41類及び第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務
国際商標登録出願日:2012年(平成24年)3月12日
優先権主張:Germany 2011年9月14日
設定登録日:平成25年12月6日
ウ 国際登録第1139431号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様:SMA
指定商品及び指定役務:第37類「Installation, repair and maintenance of solar, photovoltaic and energy generating systems; aforementioned services also in connection with spare part warranties and availability warranties; maintenance, repair, replacement and tuning of components, parts or systems in solar, photovoltaic and energy generating systems; providing information concerning the installation, repair and maintenance works with respect to solar, photovoltaic and energy supply installations by means of a call center.」並びに第6類,第9類,第19類,第38類,第41類及び第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務
国際商標登録出願日:2012年(平成24年)3月5日
優先権主張:Germany 2011年9月7日
設定登録日:平成25年12月6日
エ 国際登録第903700号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
指定商品:第9類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品
国際商標登録出願日:2006年(平成18年)2月3日
優先権主張:Germany 2005年11月3日
設定登録日:平成20年7月25日
オ 国際登録第1000384号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様:SMA
指定商品:第9類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品
国際商標登録出願日:2009年(平成21年)2月23日
設定登録日:平成22年8月6日
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標について
(ア)「SMA×ECO」の文字部分に関して
本件商標は,「SMA×ECO」の文字部分に着目すると,該文字部分は,「×」の記号によって隔てられているため,「SMA」と「ECO」の単語に分離して認識され,「×」の記号が「コラボレーション」などの意味合いで使用されている(甲6)ことから,「SMA」と「ECO」とのコラボレーションといった意味合いで把握される。
そして,「ECO」の文字は,「環境の」などの意味で我が国でも広く親しまれている語であって(甲7),商標権者の「SMA×ECO」に関する業務は,後述するようにエコを目的としたものであるから,本件商標の「ECO」の文字部分は,指定役務の質を表示するにすぎない。さらに,「SMA」は,造語であり,「エスエムエー」の読みが生ずることから,「SMA×ECO」の文字部分は,要部が「SMA」の文字部分にあり,「SMAとエコのコラボレーション」「SMAによるエコ」といった意味合いで把握される。
したがって,本件商標は,「SMA」の文字部分に相応して「エスエムエー」の称呼を生ずるものである。
(イ)「SMA×ECO CITY」の文字部分全体に関して
本件商標は,「SMA×ECO CITY」の文字部分全体に着目された場合,「ECO CITY」,「エコシティー」の語は,「環境共生都市」などとも呼ばれ,環境の悪化を防止する都市計画に基づいて開発される都市を意味する成語であり(甲7),都市づくりの理想の形とされ,世界各国でその取り組みが注目を集めている(甲8)。
このように,本件商標の「ECO CITY」の文字部分は,本件商標を使用する役務がエコシティーに関連する役務であること,または,エコシティーにおいて提供される役務であることを意味するにとどまり,自他役務識別標識としての機能が低く,役務の質や提供の場所等を表示する記述的部分にすぎない。
このため,本件商標の「SMA×ECO CITY」の文字部分全体としても,要部が「SMA」の文字部分にあり,「SMAとエコシティーとのコラボレーション」,「SMAによるエコシティー」といった意味合いで把握される。
したがって,本件商標は,「SMA」の文字部分に相応して「エスエムエー」の称呼を生ずるものである。
イ 引用商標について
引用商標1は,「SMA」の文字部分が顕著に太く書されているのに加え,「SERVICE」の文字は役務を表示するものであるから,「SMA」の文字部分を要部として,「エスエムエー」の称呼を生ずる。
引用商標2及び3も,「SMA」の文字に対応して「エスエムエー」の称呼を生ずるものである。
加えて,引用商標の「SMA」の文字は,申立人の代表的出所識別標識(ハウスマーク)として継続的に使用してきたものであり,その結果,後述のとおり,引用商標1ないし3を含む引用商標は,申立人の業務に係る太陽光発電用パワーコンディショナー及び太陽光発電用システムに関連して行われる設置・修理・保守等のサービスについて,需要者並びに取引者の間において広く認識されている商標(周知商標)に該当するものである。
ウ 本件商標と引用商標1ないし3との類否
本件商標と引用商標1ないし3とは,上記のとおり,いずれも「エスエムエー」の称呼を生ずるものであるから,該称呼を共通にする類似の商標である。
なお,後述するように,商標権者が使用した「SMA×Eco」の文字について,海外ではこれに接した需要者が申立人の業務に関連があるものと混同する事態も生じている。
エ 本件商標の指定役務と引用商標1ないし3の指定役務との類否
本件商標の指定役務中,第37類「建設工事,電動機の修理又は保守,配電用又は制御用の機械器具の修理又は保守,発電機の修理又は保守」は,引用商標1ないし3の指定役務と同一又は類似の役務である。
オ 結論
以上より,本件商標は,引用商標1ないし3と類似の商標であって,かつ,本件商標の指定役務中,第37類「建設工事,電動機の修理又は保守,配電用又は制御用の機械器具の修理又は保守,発電機の修理又は保守」は,引用商標1ないし3の指定役務と同一又は類似であるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と引用商標の類似性
本件商標と引用商標1ないし3が類似する商標であることは,上記(2)ウのとおりである。
また,引用商標4及び5も,「SMA」からなる商標であるから「エスエムエー」の称呼を生じ,本件商標は,引用商標4及び5とも類似する商標である。
イ 引用商標の周知・著名性
申立人は,1981年に設立された,ドイツのニーステタールに本拠をおく法人であり,太陽光発電のパワーコンディショナーの開発,生産,販売を主要業務とする企業である(甲9)。
パワーコンディショナーとは,太陽電池等で発電した直流電流を交流電流に変換する機械であって,安定した出力に整える機能を果たすものであり,太陽光発電システムのなかでも技術的に最も重要な機能を果たすコンポーネントである(甲9,甲23の1)。
申立人は,我が国を含む少なくとも20か国に拠点を有し(甲9,甲10),屋外設置仕様の太陽光発電パワーコンディショナーの世界シェア30%以上を獲得する世界最大手である(甲23の1)。
申立人は,その優れた製品ソリューションと企業文化が評価され,様々な賞を受賞している(甲9,甲11?甲13)。
また,IMSリサーチが行った世界中の顧客への調査で,2012年に人気のある太陽光インバータブランドとして第1位に選ばれ,また,保証とサービスプランという観点に関しても,申立人は35%以上の票を獲得し第1位になった(甲14)。
申立人のグループ全体の2004年ないし2013年の売上高は,1.8億ユーロないし19.2億ユーロであった(甲15)。そして,そのほとんど全てに係る商品・サービスに,申立人の代表的出所識別標識(ハウスマーク)として,引用商標すなわち「SMA」商標を使用している(甲24)。
申立人のパワーコンディショナーは,世界各国のメガソーラー(1メガワットの規模以上の大規模な太陽光発電設備)を含む,多くの太陽光発電所のほか,ホワイトハウス(米国),法王謁見の間(バチカン市国)等の世界各国の主要な拠点などにも広く採用されている(甲16)。
我が国では,鹿児島市に建設された国内最大となる70MWのメガソーラー「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」(2012年9月3日着工,2013年10月31日竣工)に申立人のパワーコンディショナーが採用され,140基設置されている(甲17,甲18)。
申立人の製品は,標準仕様で塩害対策を施しており,全世界で30%のシェアを握る実績や塩害地域や砂漠などの過酷な地域での豊富な経験が評価され,国内メーカーを圧し,海外メーカーである申立人の製品が採用されたのである(甲18の2)。
また,三沢市のメガソーラー「サイエンテック細谷自然エネルギー発電所」(甲16の34)などにも,申立人のパワーコンディショナーが採用されている。
申立人の製品は,我が国の主要な再生可能エネルギー関連企業を多く取引先として輸入されている(甲19)。
引用商標の「SMA」は,ドイツのみならず我が国を含む世界各国で継続的に使用してきたものであり,雑誌記事,広告(甲25),カタログ,取扱説明書等の取引書類(甲20),ホームページ等にも広く使用されてきた。
我が国の東京ビッグサイトで開催された,太陽光発電システムに関する展示会「PV SYSTEM EXPO 2011」(2011年3月2日?4日),「PV SYSTEM EXPO 2013」(2013年2月27日?29日),「PV SYSTEM EXPO 2014」(2014年2月26日?28日)に出展した(甲21,甲22,甲27)。
以上のように,申立人は,我が国を含む世界各国で豊富な実績を誇り,海外企業でありながら,我が国においても主要メーカーの地位にある(甲23)。
以上の事実より,引用商標は,本件商標の出願時にはすでに,申立人の業務に係る太陽光発電用パワーコンディショナー及び太陽光発電用システムに関連して行われる設置・修理・保守等のサービスを表示する商標として広く知られていたものである。
ウ 出所混同のおそれ
商標権者は,家庭内エネルギーを把握・管理するエコハウスの実証実験に関して「SMA×Eco」の文字を使用して,その業務内容をホームページで公開している。このエコハウスの実証実験には,太陽光発電システムも含まれている(甲26の2)。
このように,「SMA×ECO」を使用した商標権者の業務は,太陽光発電に関する役務を含むもの,又は太陽光発電に関する役務と密接に関連していることが明らかである。
そして,上記の商標権者のホームページに接した,申立人の韓国法人の顧客は,申立人の共同開発によるものと認識した(甲26の1)。
このように,海外では,「SMA×Eco」を使用して行われる商標権者の業務を,申立人の事業に係る役務と混同した事例がある。
また,太陽光発電システムを含む,環境配慮型住宅・住宅地の開発に携わる上述の商標権者の事業内容から鑑みても,本件商標の「ECO」または「ECO CITY」の文字部分が,商標権者が行う指定役務の質や提供の用に供する物を表示する文字部分であることが明らかであり,本件商標に接した需要者は,「SMA」の文字部分を要部として認識・把握するというのが相当である。
そうとすれば,海外で既に出所混同が生じている事態もあわせみれば,本件商標は,申立人の業務に係る商品又は役務と混同のおそれがあるものといわなければならない。
エ 結論
したがって,引用商標は,申立人の業務に係る太陽光発電用パワーコンディショナー及び太陽光発電用システムに関連して行われる設置・修理・保守等のサービスを表示するものとして広く一般に知られており,これと類似する本件商標がその指定役務に使用された場合,その出所について混同を生ずるおそれがあるから,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

3 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,以下のとおりである。
(ア)申立人は,1981年に設立された,ドイツに本社をおく太陽光発電用のパワーコンディショナーの開発,生産,販売を主要業務とする企業であって,我が国を含む20か国に拠点を有しており(甲9,甲10),屋外設置仕様の太陽光発電用パワーコンディショナーの世界シェア30%以上を獲得している(甲23の1)。
また,申立人のグループ全体の2004年ないし2013年の売上高は,1.8億ユーロ(2005年)ないし19.2億ユーロ(2010年)であった(甲15)。
(イ)申立人の太陽光発電用のパワーコンディショナー(以下「申立人商品」という。)は,ドイツ国内はもとより,2003年頃から,米国,スペイン,イタリア,オーストラリア,フランス,韓国及びエチオピアなど世界の国々で採用されている(甲16)。
(ウ)我が国では,2013年(平成25年)4月に運転が開始された三沢市の「サイエンテック細谷自然エネルギー発電所」(甲16の34),及び同年11月に運転が開始された鹿児島市の「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」で,申立人商品が採用されている(甲17,甲18)。
また,申立人商品は,2008年(平成20年)から本件商標の登録出願の日前までに,5社程度の企業が我が国に輸入しており(甲19),申立人は,2011年(平成23年)3月及び2013年(平成25年)2月に東京ビッグサイトで開催された,太陽光発電システムに関する展示会(PV SYSTEM EXPO)に出展した。なお,本件商標の登録査定の日後に開催された2014年の同展示会にも出展している。
(エ)申立人は,自己のハウスマークとして,及び申立人商品について,遅くとも2004年頃から2008年頃までは引用商標4を使用し,2009年頃から引用商標2を使用している(甲15,甲25)。
(オ)しかしながら,申立人商品の我が国における売上額,シェアなどを示す証左は見あたらない。
また,宣伝広告については,本件商標の登録出願の日前に,上記(ウ)のとおり東京ビッグサイトで開催された展示会に2回出展したこと,及び申立人の日本法人のホームページに申立人商品の導入事例などが掲載されていること(甲16)が認められるほかは,2004年ないし2009年に海外の雑誌に6回掲載されたこと(甲25)が確認できるのみである。
さらに,太陽光発電用システムに関連して行われる設置・修理・保守等のサービス(以下「申立人役務」という。)について,申立人の業務実績を示す証左は見いだせない。
イ 上記アの事実によれば,引用商標2ないし5は,本件商標の登録出願の日前から,申立人の業務に係る商品「太陽光発電用のパワーコンディショナー」(申立人商品)を表示するものとして我が国の需要者の間で一定程度知られていたことは認めることができる。なお,引用商標1は使用された事実を確認できない。
しかしながら,申立人商品の我が国における売上額,シェアなどを示す証左がなく,宣伝広告も限られていること,及び申立人役務についての使用の実績を示す証左がないことから,引用商標の「SMA」が,本件商標の登録出願の日前ないし登録査定時において,申立人の業務に係る商品又は役務であることを表示するものとして,広く認識されているものと認めることができない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標は,前記1のとおり,図形と「SMA×ECO CITY」の文字からなり,その構成中の図形部分と文字部分は,それぞれ独立して自他役務識別標識としての機能を果たし得るものであり,該文字部分は,同書,同大で,まとまりよく一体的に表され,これから生じる「スマエコシティ」の称呼も冗長というべきものでなく,よどみなく一連に称呼できるものである。
そして,該文字部分は,たとえ,その構成中の「×」,「ECO」及び「CITY」の文字が,それぞれコラボレーションなどの意味合い,環境の意味及び都市の意味を有するとしても,該文字部分のかかる構成及び称呼においては,それらの文字が指定役務の質,提供場所などを表示したものとして認識されることなく,むしろ,「SMA×ECO CITY」の構成文字全体をもって,特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識,把握されるとみるのが相当である。
さらに,本件商標は,その構成中「SMA」の文字部分が,取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの,又は,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないとすべき事情は見いだせない。
してみれば,本件商標は,その構成中「SMA×ECO CITY」の文字部分は,全体が一体不可分のものであって,「スマエコシティ」の称呼のみを生じ,特定の観念を生じないものと認められる。
イ 他方,引用商標は,それぞれ上記2のとおりの構成からなり,その構成文字に相応し,引用商標1は,「エスエムエーサービス」,「エスエムエー」,「スマサービス」及び「スマ」の称呼を,引用商標2ないし5は,「エスエムエー」及び「スマ」の称呼を生じるものであって,いずれも特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否について検討するに,両商標の外観は,それぞれの構成態様に照らし,明らかな差異を有するものであるから,外観上,明確に区別できるものである。
そして,本件商標から生ずる「スマエコシティ」の称呼と,引用商標から生ずる「エスエムエーサービス」,「エスエムエー」,「スマサービス」及び「スマ」の称呼とは,その構成音及び構成音数が明らかに相違するものであるから,称呼上,明確に区別できるものである。
また,本件商標と引用商標は,いずれも特定の観念を生じないものであるから,観念上,類似するとはいえないものである。
そうとすれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
引用商標の「SMA」は,上記(1)のとおり,本件商標の登録出願の日前ないし登録査定時において,申立人の業務に係る商品又は役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。
また,上記(2)のとおり,本件商標は,引用商標と外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
そうすると,本件商標は,商標権者がこれをその指定役務について使用しても,取引者,需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく,その役務が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく,その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
なお,申立人は,本件商標について申立人の事業に係る役務と混同した事例がある旨主張し甲第26号証を提出しているが,その事例は1件のみであって,しかも海外の事例であるから,上記判断に影響するものではない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲
1 本件商標(色彩の詳細は,原本参照。)




2 引用商標2




3 引用商標4





異議決定日 2014-12-19 
出願番号 商願2013-67058(T2013-67058) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W3637)
T 1 651・ 262- Y (W3637)
T 1 651・ 261- Y (W3637)
T 1 651・ 263- Y (W3637)
最終処分 維持  
前審関与審査官 飯田 亜紀 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 井出 英一郎
田中 亨子
登録日 2014-04-04 
登録番号 商標登録第5662009号(T5662009) 
権利者 大和ハウス工業株式会社
商標の称呼 スマカケルエコシティ、スマバイエコシティ、スマエコシティ、スマエコ、シティ 
代理人 吉川 俊雄 

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