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審決分類 審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 登録しない W41
管理番号 1296234 
審判番号 不服2014-16552 
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-21 
確定日 2015-01-05 
事件の表示 商願2013-80563拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は,別掲のとおりの構成からなり,第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,教育・文化・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く)」を指定役務として,平成25年10月16日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,その構成中に『少林寺拳法』の文字を有してなるところ,これは,1947年,『宗道臣』が創始した武道であり,現在は,『有限責任中間法人少林寺拳法知財保護法人』(東京都渋谷区富ヶ谷一丁目8番3号所在)等が,『拳法の教授』に使用した結果,著名な商標になったものであるから,これを本願指定役務に使用した場合,これに接する取引者又は需要者は,その役務が恰も上記法人等の業務に係る役務であるか,又は経済的・組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であるかの如く,その役務の出所について誤認混同を生じさせるおそれがあるものと認める。したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 本願商標について
本願商標は,別掲のとおり,左三つ巴の図形と「少林寺拳法志士の会」の文字を書してなるものである。
2 「少林寺拳法」について
(1)請求人が提出した平成26年3月15日付け手続補足書,平成25年12月27日付け提出の刊行物提出書及び当審の職権調査によれば,「少林寺拳法」については,以下の事実が認められる。
ア 「少林寺拳法五十年史」(1997年財団法人少林寺拳法連盟発行,写し)によれば,「少林寺拳法の誕生」の項に,「少林寺拳法は,一九四七(昭二二)年一〇月二五日に創始された。創始者である宗道臣(・・・)は,四九年一一月に発行された機関紙創刊号に少林寺拳法を始めたいきさつや考えを次のように書いている。・・・」の記載がある(手続補足書,資料3)。
イ 「秘伝少林寺拳法」(宗道臣著 昭和38年光文社発行,写し)によれば,「著者・宗 道臣について」の項に,「日本でたったひとりの,少林寺拳法の正式継承者。・・・中国各地に拳法の達人をさがし求めて修行をつむこと17年,北京にかくれ住む老大家文太宗師に直弟子として入門,正式の印可を受けた道臣師である。・・・いまでは十五万人のお弟子さんを持つまでになった。アメリカやブラジルにもお弟子さんがいる。」の記載がある(手続補足書,資料9)。
ウ 「少林寺」の表題の「少林寺入門案内」に関する書面(写し)には,2葉目に,「金剛禅について 宗教法人 金剛禅総本山少林寺管長 宗 道臣」と記載され,3葉目の「禅の源流 印度伝来の身心修養法」の項には,「この少林寺拳法の日本における総本山は,四国香川県多度津町に在り,正式な名称を宗教法人金剛禅総本山少林寺という。」の記載がある(手続補足書,資料12)。
エ 広辞苑第六版には,「少林拳」の項目があり,「少林寺で達磨大師が授けたという心身鍛練の法を起源とする拳法。日本では宗道臣(1911?1980)の創始した少林寺拳法が行われている。」の記載がある。なお,「少林寺拳法」の項目はない。
オ 「少林寺拳法五十年史」(1997年財団法人少林寺拳法連盟発行,写し)によれば,「村上元三氏との出会いと小説『風流あじろ笠』」の項に,「公開演武が少林寺拳法を一般に知らせる重要な手段になったが,全国に少林寺拳法の名を知らせる契機の一つになったのは,村上元三氏の小説『風流あじろ笠』だった。この小説は,大阪新聞など全国の地方紙に,一九五一(昭二六)年三月一三日から二年間にわたって連載されたもので,江戸時代の元禄期を舞台にしている。話の筋は,・・・普鈴を主人公にした大衆時代活劇小説で,普鈴が清国の少林派の拳法の達人という設定になっている。」の記載がある(刊行物提出書,資料3)。
そして,「風流あじろ笠」との題号の小説(文庫)は,徳間書店から1986年10月に出版され,さらに,同名の映画が1954年5月26日に公開されている(刊行物提出書,資料1及び2)。
カ 「少林寺拳法習得者及び支部・道場数について(2013年12月1日現在)」によれば,国内の少林寺拳法の習得者は,2009年度は80,014人,2010年度は77,471人,2011年度は65,657人,2012年度は60,640人及び2013年度は56,018人であり,支部・道場数は,2009年度は2,672箇所,2010年度は2,715箇所,2011年度は2,974箇所,2012年度は3,071箇所及び2013年度は3,083箇所である。また,海外の習得者は,2009年度は8,484人,2010年度は7,939人,2011年度は8,225人,2012年度は8,066人及び2013年度は7,164人であり,支部・道場数は,2009年度は209箇所,2010年度は217箇所,2011年度は230箇所,2012年度は248箇所及び2013年度は243箇所である(刊行物提出書,資料4)。
そして,「少林寺拳法公式サイト」の「機構図」によれば,「少林寺拳法師家」の下に「少林寺拳法世界連合」として「日本連盟」,「イタリア連盟」,「アメリカ連盟」等及びその各支部がある(刊行物提出書,資料5)。
キ 「少林寺拳法グループ 東京都」のウェブサイトにおいて,「少林寺拳法とは」の項の「少林寺拳法の沿革」には,「1947年10月,日本の香川県多度津町の自宅で,宗道臣は教えと技法と教育システムを兼ね備えた『人づくりの行』として,少林寺拳法の指導を開始しました。1951年,宗教法人法に基づき,金剛禅総本山少林寺を開基。1956年,日本少林寺武芸専門学校を設立。その後,二度の名称変更を経て,現在は学校法人禅林学園として,少林寺拳法の理念に基づく学校教育を展開しています。1963年,社団法人日本少林寺拳法連盟を設立。1991年,社団法人日本少林寺拳法連盟は解散し,財団法人少林寺拳法連盟を設立。2011年,一般財団法人少林寺拳法連盟に移行して,学校・職域などで少林寺拳法のクラブ活動を展開しています。1972年,国際少林寺拳法連盟が発足。1974年,国際少林寺拳法連盟は解散し,少林寺拳法世界連合が発足して,2008年3月現在,世界33カ国で少林寺拳法が愛されています。2003年,有限責任中間法人少林寺拳法知財保護法人を設立。2006年,有限責任中間法人SHORINJI KEMPO UNITYに名称変更。2008年一般社団法人に移行し,少林寺拳法の知的財産を保護・有効活用し,人づくり運動をサポートしています。」の記載がある。
(http://www.shorinjikempo-tokyo.com/toren/about/)
ク 「SHORINJIKEMPO」のウェブサイトの「グループ加盟団体」の項によれば,「少林寺拳法グループ・・・「関係5団体で構成」及び『宗道臣によって創始された,『教え』と『技法』と『教育システム』を兼ね備えた“少林寺拳法(SHORINJI KEMPO)”は,金剛禅総本山少林寺,財団法人少林寺拳法連盟,禅林学園,少林寺拳法世界連合,SHORINJI KEMPO UNITYの5つの組織によって普及されています。少林寺拳法グループは,2005年4月に制定した新たな統一マーク・ロゴのもと,各法人・団体が連携・融和をはかりながらその独自性を生かして,世界で一つの“少林寺拳法(SHORINJI KEMPO)”として社会教育活動を展開しています。」の記載がある。
そして,「一般社団法人 SHORINJI KEMPO UNITY」には,「少林寺拳法の知的財産を保護・有効活用し,社会に役立つ人づくり運動をサポートする。」の記載,「宗教法人 金剛禅総本山少林寺」には,「金剛禅の教えと少林寺拳法の修行により門信徒を教化育成する。」の記載,「一般財団法人 少林寺拳法連盟」には,「少林寺拳法の普及を通じて社会福祉の増進に寄与する。」の記載,「学校法人 禅林学園」には,「社会の福祉に寄与できる指導的社会人を育成する。」の記載及び「少林寺拳法世界連合(WSKO)」には,「世界各国での少林寺拳法の普及活動を統括・支援する。」の記載がある。
(http://www.shorinjikempo.or.jp/group/member/index.html)
ケ 「少林寺拳法公式サイト」のウェブサイトにおいて,「道場検索」を行えば,全国の道院を検索することができるものであり,それらの「施設名称」には,「金剛禅総本山少林寺」の記載と共に,各地の修練場所又は専有道場の名称が掲載されている。
(http://www.shorinjikempo.or.jp/search2/search.jsp?cat=3)
コ 「一般財団法人 少林寺拳法連盟」のウェブサイトにおいて,「沿革」には,「一般財団法人 少林寺拳法連盟はそれぞれの地域の公民館,体育館で,スポーツ少年団やカルチャーセンター,地域の道場といった地域型活動や,幼稚園・小学校・中学校・高等学校・専門学校・大学など,学校のクラブ活動として,また,官公庁,民間企業など,職域のクラブ活動として少林寺拳法を普及しています。」の記載がある。
(http://www.shorinjikempo.or.jp/federation/about_us.html)
(2)「少林寺拳法」の文字及びその周知性について
以上によれば,「少林寺拳法」の文字は,宗道臣(1911?1980)が,北京に住む中国拳法の老大家である文太宗師に直弟子として入門し,正式の印可を受けて創始した拳法の名称である。
そして,宗道臣は,1947年(昭和22年)10月,日本の香川県多度津町の自宅でその指導を開始し,1951年(昭和26年),宗教法人法に基づいて,金剛禅総本山少林寺を開基し,少林寺拳法の普及に努めた。
なお,「少林寺拳法」が一般に知られるようになった経緯としては,「風流あじろ笠」との題号の小説に,主人公が清国の少林派の拳法の達人という設定で,該拳法が採り入れられたものであり,その小説は,大阪新聞など全国の地方紙に,1951(昭26)年3月13日から2年間にわたって連載され,その後,映画化されたことによるものである。
また,「少林寺拳法」は,その後設立された,日本少林寺武芸専門学校による学校教育及び社団法人日本少林寺拳法連盟等による学校・職域などでクラブ活動を展開し,さらに,これを継承する,金剛禅総本山少林寺,財団法人少林寺拳法連盟,禅林学園,少林寺拳法世界連合及びSHORINJI KEMPO UNITYの5つの組織で構成する「少林寺拳法グループ」(下部連合及び各支部を含む。)が,長年にわたり普及に努めた結果,国内においては,少林寺拳法の支部,道場数は,2013年度には3,083箇所あり,その習得者数は56,000人ほどであって,相当の愛好者が存在するものと認められる。そして,上記「少林寺拳法グループ」は,「少林寺拳法」の文字を継続して「拳法の教授」に使用をしたものと認められる。
してみれば,「少林寺拳法」の文字は,宗道臣が創始した拳法の名称であって,宗道臣又はこれを継承した「少林寺拳法グループ」が,長年にわたり,継続して「拳法の教授」に使用をした結果,本願商標の登録出願時及び現在においては,宗道臣又は「少林寺拳法グループ」の業務について使用をする商標として,我が国において,周知著名であると認められる。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
本願商標は,左三つ巴の図形と「少林寺拳法志士の会」の文字を書してなるところ,その構成中,「少林寺拳法」の文字は,前記2のとおり,本願商標の登録出願時及び現在において,宗道臣又はこれを継承した「少林寺拳法グループ」が,その業務について使用をする商標として,我が国において,周知著名であると認められる。
そうとすれば,宗道臣又は「少林寺拳法グループ」と何ら関係を有することがない請求人が,「少林寺拳法」の文字を含む本願商標をその指定役務について使用するときは,宗道臣又は「少林寺拳法グループ」と経済的・組織的に何らかの関係にある者の業務に係る役務であるかのごとく,役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認められる。
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 請求人の主張について
請求人は,「『少林寺拳法』の名称は,古来より使用されている普通名称であり,中国嵩山少林寺で行われていた拳法を,日本から見て呼ぶ総称であって,現代に於いて,『ゴルフ』や『野球』『柔道』『剣道』等と同じように,活動を意味する普通名称である。」旨主張をしている。
しかしながら,前記2のとおり,「少林寺拳法」の名称の拳法を創始したのは宗道臣であって,その創始は1947年(昭和22年)であり,同年10月にその指導を開始し普及に努め,その後,同人から継承されている「少林寺拳法グループ」が指導,普及を行っているものである。
そして,広辞苑第六版によれば,「少林拳」(少林寺で達磨大師が授けたという心身鍛練の法を起源とする拳法。)が,拳法の普通名称といえるとしても,「少林寺拳法」の文字は,古来より使用されてきたものではなく,拳法を意味する普通名称ということはできない。
その他,請求人は,少林寺拳法の団体の実情及び少林寺拳法に対する思い等について種々述べているが,本願商標については,上記のとおり判断するものであるから,請求人の主張は採用することができない。
5 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第15号に該当し,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 (本願商標)





審理終結日 2014-11-07 
結審通知日 2014-11-10 
審決日 2014-11-25 
出願番号 商願2013-80563(T2013-80563) 
審決分類 T 1 8・ 271- Z (W41)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日向野 浩志 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 田中 亨子
大井手 正雄
商標の称呼 ショーリンジケンポーシシノカイ、ショーリンジケンポーシシ、ショーリンジケンポー、シシノカイ、シシ 

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