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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X41 |
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管理番号 | 1296137 |
審判番号 | 無効2014-890012 |
総通号数 | 182 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2015-02-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2014-03-05 |
確定日 | 2014-12-15 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5210394号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5210394号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5210394号商標(以下「本件商標」という。)は、「シータヒーリング」の片仮名及び「Theta Healing」の欧文字を2段に書してなり、平成19年12月19日に登録出願、第41類「あん摩の教授,マッサージ及び指圧の教授,カイロプラクティックの教授,リフレクソロジーの教授,きゅう及びはりの教授,美容の教授,カウンセリングの教授」及び第44類「医業,健康診断,あん摩,マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,リフレクソロジー,きゅう,はり,医療情報の提供,美容,理容,マッサージに関するカウンセリング,心理療法によるカウンセリング,美容に関するカウンセリング,医療用機械器具の貸与」を指定役務として、同21年1月9日に登録査定、同年3月6日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 第2 請求人の主張 請求人は、結論と同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第21号証(枝番を含む。)を提出した。 1 無効事由 本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当し、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効にすべきものである。 2 無効原因 (1)請求人は、本件商標が引用された商標登録出願をしており、本件商標の審判を請求するにつき、利害関係を有する利害関係人である。 (2)請求人による本件商標の採択については、平成17(2005)年12月赤松 瞳&大久保 恵による日本語版出版である「上昇して存在の根源と共に働きかけよ Book2-Go Up and Work with God」と「上昇して存在の根源に求めよ Book1-Go Up and Ask God」(「Book2」及び「Book1」の「2」及び「1」は、ギリシャ数字を表す、以下同じ。)(甲7)、2009(平成21)年11月11日初版発行の「シータヒーリング 著者 ヴァイアナ・スタイバル」(甲8)、シータヒーリングジャパンのホームページ(甲9)の記載に基づいて説明する。 なお、甲第8号証は、5頁最終行に記載されているように、「本書は、過去の作品「上昇して存在の根源に求めよ」「上昇して存在の根源と共に働きかけよ」「DNA応用セミナーマニュアル」を編集し、その後に得た情報を新たに加えたものです。」との記載がなされている。 ア 甲第8号証の1(5頁2行及び3行)に「シータヒーリングとは、創造主を通じて行う意識を集中させた祈りによって、肉体的な、そして精神的、霊的な癒しを創造する瞑想の方法です。」と説明されている。 また、甲第8号証の2(7頁5行)に「私の名前はヴァイアナ・スタイバル、シータヒーリングの創設者です。」と記載されている。 甲第8号証の3(24頁8行から26頁)には「私が初めて著したシータヒーリングの本は、タイトルを「上昇して存在の根源に求めよ」と言います。創造主に誓った通り、私は1998年に全米でクラスを開いて教え始めました。1999年にはオリアン-テクニックのインストラクター認定コースを開設し、記念すべき初回はアイダホ州のラ・ペルにあるトリプルクリークという土地で開講しました。以来、このコースは長い歴史を保っています。DNA2のインストラクター用マニュアルも新たに作成され、たびたび改訂されています。こうした知識は年に数回のクラスで授けられ、私は新たなインストラクターの認定を現在も続けています。やはり創造主が告げたとおり、私は世界の人々にこのテクニックを伝えるようになったのです。 私はクライアントとの面会も続け、1999年の年末までに2万件を超えるリーディングとヒーリングを行いました。時間の経過に伴って、さらなる情報を得た私は「上昇して存在の根源と共に働きかけよ」を2000年に著しました。 ・・・シータヒーリングの「木」は、新しい情報によって花を開かせながら成長を続けています。この本には、初めて自分の足の瞬間的な癒しを体験してから今日に至るまでの、あらゆるリーディングやヒーリング、これまでのシータヒーリングのクラスから収集した新しい情報が満載されています。」と記載されている。 イ 甲第7号証(3頁)に示すように、「ヴァイアナ・スタイバル女史(Vianna Stibal)は、聖職者、宗教学博士、サイキック、メディカル・インチュイテイブ(直感や超感覚を使用する医療直感者)、ナチュロパス(自然療法家)です。ヴァイアナ女史は「Go Up and Work with God」(上昇して存在の根源と共に働きかけよ)と「Go Up and Seek God」(上昇して存在の根源に求めよ)の著書です。 著書の中で、ヒーリング、リーディング、DNAの活性化、願いの現実化などの情報を世界中の人々とシェアしました。このヒーリング・テクニックは、自らが末期ガンにかかり余命数ヶ月、片足を失いそうになる中、彼女の魂の叫びが生み出した療法です。瞬時に奇跡的にも完治した彼女はこのテクニックを開発し、科学者と共に人間の脳波やトランス状態が人間本来の治癒能力を引き出す事を発見します。そして、この療法は今でも何千万人もの患者の健康状態を回復・改善しています。 この本では、身体的痛みの緩和や精神的な悩みの軽減のために顕在・潜在意識の思考体系を変える方法、治療が不可能と考えられている遺伝的な病気の改善方法またその原因となっている遺伝子の超感覚的な変え方、守護霊・天使とコンタクトする方法、他の人へのヒーリング方法などの多くのテクニックを公開しています。 追記:「シータヒーリングTM(ThetahealingTM)」は主に欧米諸国で認められている代替医療法・セラピーであり、宗教ではありません・・・・英語版初版2000年・・・」との記載がなされている。 ウ 甲第10号証に示すように、米国登録商標第3798383号「THETAHEALING」は、2000(平成12)年8月16日に商標としての使用が開始され、「THETAHEALING」の各国における商標の登録状況については、甲第10号証ないし甲第12号証のとおりである。 エ 甲第9号証の1の「シータヒーリングジャパン」のホームページに示すように、「ヴァイアナのシータヒーリング(tm)は米国Vianna’s nature’s path(略称VNP)の代表、ヴァイアナ・スタイバルにより1994年に開発されました。日本において2003年に、日本におけるシータヒーリングの普及を目的としてシータヒーリング・ジャパンの活動を開始しました。そして、近年のシータヒーリングの広がりに伴い、2008年10月よりシータヒーリング・ジャパンの推進運営はフェニックス株式会社に業務委託され、同社のシータヒーリング・ジャパン事業部にて運営されています。シータヒーリング・ジャパン代表者:宮崎裕之(フェニックス株式会社代表)」との記載がなされている。 また、シータヒーリング・ジャパンの業務内容は、「シータヒーリング・ジャパンの公式ホームページの運営/日本におけるシータヒーリング関連商品の開発・販売(書籍やCD)/日本におけるシータヒーリング・インストラクター認定セミナーの企画・開催/日本におけるシータヒーリング関連資料の翻訳,販売,配布」と記載されており、また、「セミナー」の項を参照すると、シータヒーリング・インストラクター認定セミナーの各コースの企画・開催により、シータヒーリング・インストラクターが認定され、「セッション」の項を参照すると、それぞれのシータヒーリング・インストラクターがクライアントとのカウンセリングなどを行うものである。 オ 以上のとおり、ヴァイアナ・スタイバル女史が開発したシータヒーリングは、少なくとも本件商標の登録出願前である2000年(平成12年)8月16日から米国において、「THETAHEALING」の使用がなされており、また、日本においては、2003年からその使用がなされている。 カ 日本における「シータヒーリング」又は「Theta healing」セミナーの開催及び広告・出版物、並びに販促品などの販売は、甲第13号証及び甲第14号証のとおりである。 キ 請求人の「シータヒーリング」又は「Theta healing」は、海外のみならず日本においても、本件商標の登録出願前から種々の活動を通じて周知、著名となっているものである。 (3)請求人と商標権者である株式会社レイコー(株式会社つくばアソティック・フーズ)との関係について ア 甲第15号証は、株式会社レイコーの横田理宇に「シータヒーリング」を教えたインストラクター ボビーヘンリー氏の2009年5月11日付け陳述書である。 イ 甲第16号証は、株式会社レイコーの代表取締役からヴァイアナ スタイルバルへの2008年1月22日付け書簡である。 ウ 甲第17号証は、株式会社レイコーの横田理宇氏と請求人の日本の業務委託会社シータヒーリング・ジャパン代表の宮崎氏との間で交わされた2008(平成20)年11月20日付け及び25日付けの本件商標に関するメール(写し)である。 エ 甲第6号証の3は、請求人が訴えを提起した平成25年(行ケ)第10123号審決取消請求事件において被告(被請求人)が提出した準備書面(2)であって、米国籍の女性インストラクター「BobbiJ.Henry」氏が、甲第15号証の2009年5月11日付け陳述書を作成したボビーヘンリー氏であり、株式会社レイコーの横田理宇に「シータヒーリング」を教えた人であることを示す証拠を被請求人が提出したものである。 また、前記準備書面には、甲第6号証の3の2ないし4を提出しており、甲第7号証の表紙の絵が使用されており、株式会社レイコーは、「2000(平成12)年に出版された英語版」又は「平成17(2005)年12月 赤松 瞳&大久保 恵による日本語版」の存在を知っていた事実が確認できる。 (4)本件商標が商標法第4条第1項第19号及び同項第7号に該当する理由について ア 商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は、商標登録することができない旨の規定である。その審査基準(甲18)によれば、「2.他の法律によって、その使用等が禁止されている商標、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標は、本号の規定に該当するものとする。」とされ、商標審査便覧「42.119.02」外国標章等の保護に関する取扱い」の「3.外国においてのみ周知、著名な商標/次の要件を満たすような商標登録出願に係る商標については、他人の商標と偶然に一致したものとは認め難いことから、これをいわゆる他人の周知、著名な商標を盗用し、不正の目的をもって使用するものと推認し、商標法第4条第1項第19号に該当するものとする(「審査便覧42.119.03:商標法第4条第1項第19号に関する審査について」参照)。 また、その周知、著名商標が使用されている国の政府等から、その商標登録出願について国際信義に反するものである旨等、何らかの関心が表明されている場合には、その内容等について十分勘案すべきものとする。 イ 「THETAHEALING」は、この構成から「シータヒーリング」の自然的称呼が生ずるものであり、甲第8号証に示すように、「シータヒーリングとは、創造主を通じて行う意識を集中させた祈りによって、肉体的な、そして精神的、霊的な癒しを創造する瞑想の方法です。」と説明され、また、「私の名前はヴァイアナ・スタイバル、シータヒーリングの創設者です。」との説明がなされており、「THETAHEALING」の語は、造語である。 そして、「THETAHEALING」は、少なくとも、本件商標の登録出願前である2000(平成12)年8月16日から米国において商標としての使用がなされており、日本においては、「シータヒーリングジャパンのホームページ」からわかるように、本件商標の登録出願前である2003年から「THETAHEALING」、「シータヒーリング」の使用がなされている(甲9)。 また、「シータヒーリングTM(THETAHEALING)」は主に欧米諸国で認められている代替医療法・セラピーであり、宗教ではありません、英語版初版2000年」との記載がなされている(甲7)。 さらに、請求人の業務活動は、「シータヒーリングジャパン」のホームページ(甲9の1)の記載からもわかるように、主として、「シータヒーリング・インストラクター認定セミナーの企画・開催」、「シータヒーリング・インストラクターがクライアントと行うカウンセリングなどのセッション」であって、前者は、本件商標の国際分類第41類の指定役務の範ちゅうに属する役務であり、後者は、本件商標の国際分類第44類の指定役務の範ちゅうに属する役務である。 以上のとおり、海外のみならず、日本においても本件商標の登録出願前から現在に至るまで、請求人により認定されたインストラクターにより各種のセミナーが企画・開催(甲13及び甲14)されており、また、請求人により認定されたシータヒーリング・インストラクターがクライアントと個人別に行うカウンセリングなどの「セッション」でその業務活動がなされているのであるから、請求人の引用する「THETAHEALING」若しくは「シータヒーリング」は、国際分類第41類及び第44類の指定役務の範ちゅうに属する役務において、商標法第4条第1項第19号の「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」である。 また、請求人が引用する「THETAHEALING」は、その構成から「シータヒーリング」の自然的称呼が生じ、本件商標とは、「シータヒーリング」の称呼を共通にするものであるから、商標法第4条第1項第19号の「他人の・・・商標と同一又は類似の商標」に該当するものである。 ウ 「不正の目的」は、「一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するものであること。」、「その周知な商標が造語よりなるものであるか、若しくは、構成上顕著な特徴を有するものであること。」のとおり(甲19)、本件商標は、外国において周知・著名な商標又は日本国内において周知・著名な商標である請求人の「THETAHEALING」、「シータヒーリング」を不正の目的をもって冒認出願し、その登録を得たものである。 まず、被請求人は、請求人の所有する「THETAHEALING」を本件商標の登録出願前から知っていた事実、シータヒーリングの「つくば市でより大きいクラスを持ちたい」と考えていた事実が示されている(甲15)。 また、「株式会社レイコーの代表取締役からヴァイアナ スタイバルヘの2008年1月22日付書簡」(甲16)によれば、「ヴァイアナ及びヴァイアナのネイチャーパス役員の皆様」、「日本でのシータヒーリング講習を持つ機会を与えて下さり、誠にありがとうございました。尊敬すべきインストラクター資格者のボビー ジェイ ヘンリー氏と共に、我々は大変な成功を収めることが出来ました。」。「『ベーシックアドバンス DNA クラス マニュアル』の翻訳の許可を頂きありがとうございました。」、「このマニュアルは、日本においてシータヒーリングを広める為に有効であると、私は自信を持っています。もちろん、我々は、我々が行った作業の許可を頂く以外は、その他全ての権利要求を致しません。」、「我々は、ヴァイアナのネーチャーパスの全ての権利を放棄しています。」との記載がある。 次に、「被請求人である株式会社レイコーの横田理宇氏と請求人の日本の業務委託会社シータヒーリング・ジャパン代表の宮崎氏との間で交わされた2008(平成20)年11月20日付け及び25日付けの本件商標に関するメール」(甲17)によれば、株式会社レイコーの横田理宇氏は、2008(平成20)年22月25日に、シータヒーリング・ジャパンの宮崎氏に対して、「商標の件ですが、『シータヒーリング』という名称を悪用されないため申請しております。」との回答を行っており、甲第15号証及び甲第16号証に記載のように、「外国で周知な請求人であるネイチャーパス アイエヌシー所有の商標「THETAHEALING」と類似の商標が我が国で登録されていないことを奇貨として、本件商標の商標登録出願をし、その登録を得たものである。 しかして、被請求人である株式会社レイコーは、前記(3)エのとおり、「2000(平成12)年に出版された英語版」、若しくは「平成17(2005)年12月赤松 瞳&大久保 恵による日本語版出版」の存在を知っていた事実を確認することができる。 エ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものであるから、その登録は無効とされるべきものである。 (5)本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当する理由について 請求人の引用する「THETAHEALING」が、外国において本件商標の登録出願日である平成19(2007)年12月19日前に周知・著名である証拠は、甲第14号証、甲第7号証及び甲第8号証の記載事実等を援用する。 また、請求人の引用する「THETAHEALING」、「シータヒーリング」が日本においてその使用が開始された事実並びに日本において周知・著名である証拠は、甲第9号証及び甲第13号証の記載事実等を援用する。 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものであるから、その登録は無効とされるべきものである。 (6)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由について 本件商標は、本件商標に接した需要者が、請求人の周知・著名な商標である「シータヒーリング」若しくは「THETAHEALING」と誤認混同を生ずるおそれがある。また、請求人は、米国を始めとする多数の国において、セミナーの開催やインストラクターの育成並びに書籍の出版やメディアを通じて広告宣伝を行い世人に広く知られているものであるから、被請求人が本件商標を使用する場合には、請求人の会社若しくは関連会社等の経済的又は、組織的に何らかの関連性がある者による役務であると誤認し、その出所について混同を生じるおそれがある。 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、その登録は無効とされるべきものである。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証(枝番を含む。)を提出した。 1 被請求人による本件商標の採択について (1)日本では、古来、気功や祈祷などの心理的エネルギーを用いることで病気を癒やしたり、災を逃れたりするという考え方が受け継がれている。被請求人は、江戸時代の禅僧・白隠が著した『夜船閑話』(乙1)に出てくる「内観の秘法」や「軟酥の法」といった「気」を用いた心身の健康法を学び、研究してきた。また、このような気功法のメカニズムを科学的に解明する試みも行われており、その種の著作も日本国内には多数存在する。被請求人が参考にした平成8年6月15日久米清による『気と波動医学の驚異』(乙2)では、「気によるヒーリング(癒やし)」という言葉を用いて、「気」で病を癒やす方法が紹介されている。また、同年6月27日政木和三による『未来への発想法』(乙3)では、「脳波をシータ波に下げれば奇跡が可能になる」として、脳波をシータ波にすれば病気も回復すると紹介されている。 被請求人は、日本古来の気功術を「脳波をシータ波に下げることによって可能となるヒージング術」と理解し、その「シータ波」と「ヒーリング」の2語を組み合わせて「シータヒーリング」の名称を用いて、平成11年から被請求人の顧客に対し心理療法によるカウンセリングの役務を実施してきた。「シータヒーリング」(心理療法によるカウンセリング)に関する顧客からの依頼内容は、体の不調や病、健康の悩みが主であり、被請求人が日本古来の気功術を基に独自に編み出した技法により、心理的エネルギーを用いた心理療法によるカウンセリングを行ってきた。その証拠として、平成11年から被請求人にシータヒーリングを依頼している河邊永江氏の陳述書を乙第4号証の1に、平成14年から被請求人にシータヒーリングを依頼している松浦かね子氏の陳述書を乙第4号証の2に、同越谷江美氏の陳述書を乙第4号証の3に示す。 なお、被請求人は、シータヒーリングの名称のもとで行う心理療法によるカウンセリングの実施時に、依頼者の体の不調の原因を特定するにあたって、昭和61年3月大村恵昭著『図説バイ・デジタル0-リングテストの実習』(医道の日本社)を参考にし、バイ・デジタル0-リングテストの手法を用いてきたが、この手法については、シータヒーリングの名称を使い始める以前の平成元年(1989年)から使用している。 このように、被請求人は心理療法によるカウンセリングとして、平成11年から日本国内において「シータヒーリング(Thetahealing)」の名称を商標として使用している。 2 被請求人と請求人との関係について (1)被請求人がはじめて請求人が使用するThetahealing(以下、請求人が使用するシータヒーリングは英語で、被請求人が使用するシータヒーリングは片仮名で表記する。)を認知したのは平成16年である。乙第5号証の2014年4月30日付陳述書を作成した被請求人の社員である若林洋二郎が米国赴任中に偶然にThetahealingのヒーラーと称する近所の女性からThetahealingに関する話を聞いたことがきっかけであった。これを受けて被請求人は、被請求人の実施するサービスと同一称呼であるThetahealingについて調査を行った。陳述書にもあるように、当時、人口100万人規模のソルトレイク郡においてThetahealingのヒーラーは10名に満たず、マスメディアを用いた広告等も行っていなかったことから需要者に広く知られているとは到底考えらなかった。 (2)しかし、Thetahealingは、被請求人のシータヒーリングと同一称呼であり役務にも重なりがあると考えられたため、被請求人は引き続き調査を継続し、平成17年から平成19(2007)年にわたって、若林洋二郎は、乙第5号証の陳述書にあるように請求人のオフィス内にてThetahealingを提供していたケイティ・ラム氏のセッションを数回体験した。 (3)平成19年に、サンディー市近辺でセミナーを実施しているThetahealingのヒーラーであるボビー・ヘンリー氏をインターネットで知り、調査の一環として、若林洋二郎と、同じく被請求人の社員である横田理宇が同年11月30日から12月6日にかけてボビー氏のセミナーを受講した。ボビー氏は、甲第15号証の陳述書を作成した人物である。 (4)乙第5号証の陳述書にも記載のとおり、この時点においても、人口100万人規模のソルトレイク郡においてThetahealingのヒーラーは10数名であり、マスメディアを用いた広告等も行っていなかった。また、米国に住む若林洋二郎の知人の中にもThetahealingを知るものは一人としていなかった。 (5)平成19年12月19日、被請求人は、被請求人の使用するシータヒーリングの商標を保護するため、本件商標の登録出願を行った。 (6)なお、被請求人は、平成20年1月および3月にボビー氏によるThetahealingのセミナーを日本において主催している。これも調査の一環として行ったものであり、通常の企業活動として他社のサービスを研究することは一般的である。 3 被請求人による本件商標出願の正当性 (1)前記1(1)及び(2)のように、被請求人は独白の心理療法によるカウンセリングを「シータヒーリング」の名称で平成11年、つまり、請求人のThetahealingを知る以前から商標として使用し、顧客にサービスとして提供していた。 (2)請求人のThetahealingは造語であるのに対し、本件商標は、シータ波のシータ(Theta)と癒やしを意味するヒーリング(Healing)の2語を組み合わせた言葉である。商標法第4条第1項第19号に規定される不正の目的を持って取得するのであればThetaとhealingの間にスペースを入れずに同様の造語として出願するべきであったと考えられる。この事実からも被請求人が不正の目的をもって本件商標を取得したものでないことが分かる。 (3)請求人は、平成25年(行ケ)審決取消請求事件において被請求人が提出した準備書面(2)(甲6の3)の乙第16号証(甲6の3の2)、乙第17号証(甲6の3の3)、乙第18号証(甲6の3の4)に使われている挿絵について、甲第7号証「上昇して存在の根源と共に働きかけよ BOOK2・・・」と「上昇して存在の根源に求めよ BOOK1・・・」(平成17(2005)年12月赤松 瞳&大久保 恵による日本語版出版もしくは平成12(2000)年に出版された英語版)の表紙の絵が使用されていると主張しているが、挿絵は乙第6号証の「Thetahealing-Go up and Seek God、Go up and Work with God、Revised and Expanded-」(平成18(2006)年Vianna Stibalによる英語版)の表紙であり、2008年1月にボビー氏が日本でセミナーを実施した際に人手したものである。したがって、甲第7号証「上昇して存在の根源と共に働きかけよ BOOK2・・・」と「上昇して存在の根源に求めよ BOOK1・・・」(平成17(2005)年12月赤松 瞳&大久保 恵による日本語版出版もしくは平成12(2000)年に出版された英語版)の存在を知っていた事実はない。 (4)請求人は、甲第15号証及び甲第16号証を引用して、外国で周知な商標を、我が国で登録されていないことを奇貨として取得したと主張しているが、甲第15号証及び甲第16号証では、Thetahealingという商標が外国で周知であったという事実も、被請求人がその商標を不正の目的を持って取得したという事実も立証していない。 (5)請求人は、甲第17号証にて被請求人の社員である横田理宇とシータヒーリング・ジャパン代表宮崎氏との電子メールでのやりとりを引用し、日本で登録されていないことを奇貨として取得したと主張しているが、横田理宇が宮崎氏に宛てた電子メールには、被請求人が独自に使用しているシータヒーリングという名称が他人に悪用されることを避けるために取得した事実が記されているのみであり、それ以外の理由(不正な目的など)で取得した事実は示されていない。 (6)請求人は、甲第16号証の被請求人の代表である神崎良太郎がヴァイアナ氏に宛てた書簡(原文は英文)の中に「我々は、ヴァイアナのネイチャーパスの全ての権利を放棄しています」と記載されていることを指摘しているが、神崎は翻訳されたマニュアルに付随する全ての権利(一般的には、翻訳料や著作権料等がそれに当たる)を放棄する旨のみを伝えたものである。 (7)請求人が示す海外での商標登録実績(甲10ないし甲12)や日本及び海外でのセミナー実施実績(甲13及び甲14)では、Thetahealingが、一つ以上の外国あるいは日本国内において周知・著名であったとはいえない。 (8)請求人は、甲第7号証のヴァイアナ氏の著書中の「この療法は今でも何千万人もの健康状態を回復・改善しています。」を引用し、Thetahealingが需要者の間に広く認識されていると主張しているが、これは請求人の代表が主観的に述べているものであり、客観的な証拠は何も示されていない。 (9)請求人は、甲第5号証の2の審決「6頁3判断(3)使用する役務について」を引用し、Thetahealingの商標に関する周知・著名性には、特殊な事情があると主張しているが、個人別に行われるのは役務の実施に際してのみであり、周知度を高めるために広告・宣伝する上では個別に行われる必要性は見当たらず、周知・著名性に関して特殊な事情があるとはいえない。 (10)請求人は、甲第6号証の3の1の被請求人が発行したシータヒーリング・セミナーの広告物中の「いまや世界30カ国でシータヒーリング・プラクティショナーやインストラクターが活躍しています。」との記載を引用し、Thetahealingの周知・著名性を主張しているが、具体的な周知・著名な事実は立証しておらず、少なくとも1か国に1人以上のプラクティショナーまたはインストラクターが存在すればこの記載に間違いはないため、一つ以上の外国または日本国内での周知・著名性を証明するものではない。 (11)乙第5号証の陳述書にあるように、被請求人の社員である若林洋二郎は、平成6年から平成22年まで、被請求人がユタ州サンディー市に持つ教育施設に赴任しており、統合失調症や片足を失った生徒など、様々なカウンセリングを必要とする生徒を預かっていた。若林洋二郎はその職務として科学的・非科学的を問わず彼らの治療に関する情報を収集していた。したがって、若林洋二郎は心理療法によるカウンセリング業界の取引者に含まれるともいえる。 しかしながら、Thetahealingに関する情報は近所の女性と偶然出会うまでは認知しておらず、またその後も、平成22年に帰国するまでThetahealing関係者以外からその情報を耳にすることは一度もなかったと陳述している。したがって、本件商標の登録出願時において、米国におけるThetahealingの周知・著名性はなかった。 (12)以上のことから、Thetahealingは、本件商標の登録出願時において、一つ以上の外国または日本国内で周知・著名だったとはいえない。Thetahealingの名称を認知していたのは、主にセミナー受講者およびセッション体験者のみと考えられ、最終消費者はもちろんのこと、取引者の間においても広く認識されていた事実はない。また、ある一地方で広く認識されていた事実もない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 4 また、被請求人のThetahealingは周知・著名性を有するものではなく、被請求人は本件登録商標を独自に採択して商標として用いたものであるから公序良俗に反することはなく、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 前述のように、被請求人のThetahealingは周知・著名性を有するものではないから商標法第4条第1項第10号にも該当しない。 同様に、被請求人のThetahealingは著名性を有するものでもないから、商標法第4条第1項第15号(商標法第46条第1項第1号)に該当するものでもない。 5 以上述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同第19号にそれぞれ該当せず登録的確性を具備した商標であるというべきものである。 第4 当審の判断 1 審判請求の利益について 請求人は、本件商標が引用された登録出願をしていることが確認できる(甲4)。 したがって、審判請求の利益を有するとの請求人の主張は妥当なものといえる。 請求人の上記主張に対して、被請求人は何ら反論をしていない。 よって、請求人は、本件審判の請求の利益を有するものである。 2 商標法第4条第1項第19号について 請求人及び被請求人が提出した各号証によれば、以下の事実が認められる。 (1)請求人の使用に係る商標の周知・著名性について ア 株式会社ナチュラルスピリットにより2009年11月11日に初版が発行された「シータヒーリング」(2011年5月16日に第5刷発行:甲8)は、著者をヴァイアナ・スタイバル、監修をシータヒーリング・ジャパンとするものであって、裏表紙には「この本はシータヒーリングの研究結果を総合的にまとめたもので、この手法がヴァイアナに発見された頃から最も優れたヒーリング・テクニックのひとつに数えられるようになった今日までの流れが初心者にも分かるようになっています。/テリー・オコーネル(編集者)」の記載がある。 イ 「Go Up and Work with God/Book Two in a Series」(甲7)には、「日本語出版にあたって」の表題の下、「この度、念願のヴァイアナ・スタイバル女史の著書である『上昇して存在の根源と共に働きかけよ Book2-Go Up and Work with God』と『上昇して存在の根源に求めよ Book1-Go Up and Ask God』の日本語版がセミナー用の教材として出版されました。」との記載、「また、『上昇して存在の根源と共に働きかけよ Book2-Go Up and Work with God』と『上昇して存在の根源に求めよ Book1-Go Up and Ask God』の改訂版でもあるため、この日本語版ではBook2を先におさめました。\2005年12月 赤松 瞳&大久保 恵」との記載、Book2の3頁には、「追記:『シータヒーリングTM(ThetahealingTM)』は主に欧米諸国で認められている代替医療法・セラピーであり、宗教ではありません・・・英語版初版2000年・・・」との記載がある。 ウ 「シータヒーリングジャパン」のホームページ(甲9の1)の会社概要には、「ヴァイアナのシータヒーリング(tm)は米国Vianna’s nature’s path(略称VNP)の代表、ヴァイアナ・スタイバルにより1994年に開発されました。日本において2003年に、日本におけるシータヒーリングの普及を目的としてシータヒーリング・ジャパンの活動を開始しました。そして、近年のシータヒーリングの広がりに伴い、2008年10月よりシータヒーリング・ジャパンの推進・運営はフェニックス株式会社に業務委託され、同社のシータヒーリング・ジャパン事業部にて運営されています。シータヒーリング・ジャパン代表者:宮崎裕之(フェニックス株式会社代表)」との記載がある。 また、シータヒーリング・ジャパンの業務内容は、「シータヒーリング・ジャパンの公式ホームページの運営/日本におけるシータヒーリング関連商品の開発・販売(書籍やCD等)/日本におけるシータヒーリング・インストラクター認定セミナーの企画・開催/日本におけるシータヒーリング関連資料の翻訳、販売、配布」と記載されている。 エ 「THETAHEALING」は、2000(平成12)年8月16日に商標としての使用が開始され、請求人により商標第3798383号として米国において登録されており、また、国際登録日を2009年4月17日とする国際登録1001032号及びカナダ国において登録されている(甲10ないし甲12)。 オ 日本における「シータヒーリング」セミナーの開催は、2007年10月1日から3日までの「基礎DNAセミナー」、同年10月1日、15日及び22日の「シータヒーリング基礎DNA1&2セミナー 京都セミナー」、同年10月6日から8日の「応用DNA(2.5)シータヒーリング」同年10月13日の「基礎DNA1&2シータヒーリング 3日間 東京 白石聖美」、同年11月22日の「シータヒーリング 実践会 in 東京」、同年11月23日から25日の「シータヒーリング応用DNA(2.5) in 東京」として行われ、該セミナーを申し込むとヴィアナ著の本を送る旨が記載されている(甲13の1)。 また、前記同様に2007年11月17日、18日及び25日に「基礎DNAセミナー in 千葉」(甲13の3)、同年12月7日ないし9日に「基礎DNAセミナー in 愛知」、同月9日、15日及び16日に「応用DNAセミナー in 東京」(甲13の4)、同月18日ないし20日と同月22日ないし24日に「基礎DNAセミナー in 東京」(甲13の5)、2008年3月23日に「シータヒーリング実践会 in 東京」(甲13の6)、同月28日ないし30日に「応用DNAセミナー in 福岡」、同月29日に「シータヒーリング実践会 in 埼玉」(甲13の7)として行われている。 カ 「ThetaHealing English Website サイトマップ 管理用ログイン」(甲14)には、「シータヒーリング・ジャパンからのお知らせ」の中に「2007年8月 シータヒーリング開発者 ヴィアナ・スタイバル女史 待望の初来日!」、「ヴィアナとシータヒーリング・ジャパンの奨学金プロジェクト in 開発途上国」、「ヴィアナの奨学金プロジェクト in アイダホ、USA」等の掲載とともに「セミナー&練習会のスケジュール」及び「海外セミナー情報」が掲載されている。 キ 以上からすると、請求人の代表者であるヴァイアナ・スタイバル女史が開発した「THETAHEALING/シータヒーリング」とは、代替医療法・セラピーであって、少なくとも本件商標の登録出願前である2000年(平成12年)8月16日から米国において使用されており、また、日本においては、2003年からシータヒーリングの普及を目的として、シータヒーリング・ジャパンの活動を開始し、2007年頃からシータヒーリングに関するセミナーを各地で開催しており、本件商標の指定役務を取り扱う業界において、請求人の業務に係る役務を表すものとして相当程度知られているものといい得る。 (2)請求人と被請求人である株式会社レイコー(株式会社つくばアソティック・フーズ)との関係について ア 甲第15号証は、「Bobbi J.Henry」の2009年5月11日付け陳述書であり、「今晩の私たちの会話に従って、私の出会いの経緯と司会者としてレイコー主催のシータヒーリングを教えるために日本を訪れた同意内容を申し上げます。」として「2008年の1月に日本へ行き、ベーシッククラスとアドバンスクラスを教えることを了承しました。」との記載がある。 イ 甲第16号証は、株式会社レイコーの代表取締役「神崎 良太郎」から「Vianna’s Nature Path」の代表取締役「Vianna Stibal」への2008年1月22日付け書簡であり、「日本でのシータヒーリング講習を持つ機会を与えて下さり、誠にありがとうございました。尊敬すべきインストラクター資格者のボビー ジェー ヘンリー氏と共に我々は大変な成功を収めることが出来ました。・・・マニュアルに関しては、それを翻訳するのは面白い試みでしたし、今後日本においてシータヒーリングを広めていく為に、重要な礎となるでしょう。また、『ベーシック&アドバンスDNA クラス マニュアル』の翻訳の許可をいただきありがとうございました。」との記載がある。 ウ 甲第17号証は、株式会社レイコーの横田理宇氏と請求人の日本の業務委託会社シータヒーリング・ジャパン代表の宮崎氏との間で交わされた2008(平成20)年11月20日付け及び25日付けのメール(写し)であり、宮崎氏から被請求人による「シータヒーリング」の登録出願したことについての問い合わせに対して、「商標の件ですが、『シータヒーリング』という名称を悪用されないために申請しております。」の記載がある。 エ 甲第6号証の3は、請求人が訴えを提起した平成25年(行ケ)第10123号審決取消請求事件において被請求人(被告)が提出した準備書面(2)であって、米国籍の女性インストラクター「Bobbi J.Henry」氏が、甲第15号証の2009年5月11日付け陳述書を作成したボビーヘンリー氏であり、株式会社レイコーの横田理宇に「シータヒーリング」を教えた人であることを示す証拠を被請求人が提出したものである。 オ 乙第5号証の被請求人の社員である若林洋二郎の陳述書には、「平成6年から同22年まで米国に赴任した際、平成16年頃「ThetaHealing」のヒーラーから「ThetaHealing」の話を聞き社長へその報告をした旨、平成17年から同19年にかけて「ThetaHealing」の調査を行い、請求人のオフィス内でヒーリングを提供していたヒーラーのケイティ・ラム氏とのThetaHealingセッション及びボビー・ヘンリー氏のセミナーを横田理宇を含めた数名で受講した。」旨が記載されている。 カ 以上によれば、被請求人の社員である若林洋二郎は、平成6年から同22年までに米国へ赴任した際、平成16年頃に「ThetaHealing」のヒーラーから聞いた「ThetaHealing」の話を被請求人の社長へ報告をしたこと、平成17年から同19年にかけて「ThetaHealing」の調査を行い、請求人のオフィス内でヒーリングを提供していたヒーラーのケイティ・ラム氏とのThetaHealingセッション及びボビー・ヘンリー氏のセミナーを横田理宇を含めた数名で受講した事実のあること、そして、株式会社レイコーの代表取締役は、請求人代表取締役に対する2008年1月22日付けの書簡にてシータヒーリング講習を行ったこと及び「ベーシック&アドバンスDNAクラス マニュアル」の翻訳の許可についてのお礼の内容であるから、被請求人は、請求人が行っていた「ThetaHealing/シータヒーリング」の存在を知っていたといい得る。 (3)本件商標と請求人の使用に係る商標の類否について 本件商標は、前記第1に示したとおり、「シータヒーリング」の片仮名及び「Theta Healing」の欧文字を2段に書した構成からなるところ、片仮名部分は欧文字の読みを特定するものと認識されることから、「シータヒーリング」の称呼が生じ、該構成文字は、辞書等に載録が認められない造語といえるものである。 他方、請求人の使用に係る商標は、「THETAHEALING」の欧文字又は「シータヒーリング」の片仮名(以下「使用商標」という。)からなり、これらは、辞書等に載録が認められなく、一般に欧文字にあっては、英語読みに倣って称呼されるものであるから、該欧文字部分からも「シータヒーリング」の称呼が生じ得るものである。 また、本件商標は、その構成中の欧文字部分は、「Theta」と「Healing」の文字の間に1文字ほどの空間があり、語頭のみを大文字で表し、他の文字を小文字で表しているとしても、使用商標とは、その文字綴りを同一にするものである。 以上からすると、本件商標と使用商標とは、その構成中、欧文字部分の比較においては、その文字綴りを同一にし、また、片仮名部分において、共通にするものであって、「シータヒーリング」の称呼を共通にするものであるから、両商標は互いに類似するというのが相当である。 そして、使用商標は、療法に関するセミナー及び療法によるカウンセリングの役務に使用するものであるから、本件商標の指定役務とは同一又は類似するものである。 (4)不正の目的について 請求人の代表者であるヴァイアナ・スタイバル女史が開発した「THETAHEALING」は、本件商標と類似する使用商標を、本件商標の登録出願前である2000年8月16日に米国で使用していたこと及び2003年からシータヒーリングの普及を目的として日本におけるシータヒーリング・ジャパンの活動を開始し、2007年頃からシータヒーリングに関するセミナーを開催していることからすれば、本件商標の指定役務を取り扱う業界においては、シータヒーリングが請求人に係る業務であると相当程度知られているといい得る。 また、被請求人の代表取締役は、平成16年に社員の若林氏から請求人に係る「ThetaHealing」に関して報告があったこと及び請求人の代表取締役へ「ThetaHealing」に関するセミナー開催と「ベーシック&アドバンスDNAクラス マニュアル」の翻訳に対するお礼の書簡を出していること、また、被請求人の社員である若林氏と横田氏を含めてセミナーを受講している事実から、被請求人は、本件商標の登録出願前に請求人が療法に関するセミナー及びカウンセリングについて、「ThetaHealing」の欧文字及び「シータヒーリング」の片仮名を使用していることを知っていたといえる。 なお、被請求人は、平成11年頃から或いは同14年頃から本件商標を使用しているとする陳述書(乙4)を提出しているところ、該陳述書以外に被請求人の業務に係る役務について本件商標を平成11年頃から使用しているとする客観的な証拠の提出がない。 そうとすると、被請求人は、本件商標と類似する使用商標が請求人の使用に係る役務「療法に関するセミナー及び療法によるカウンセリング」に使用されていることを知りながら、それが我が国で登録されていないことを奇貨として、請求人に承諾を得ずに剽窃的に本件商標を登録出願したものと推認できるものである。 (5)小活 してみれば、本件商標は、請求人の業務に係る役務「療法に関するセミナー及び療法によるカウンセリング」を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録時において、米国において使用され、日本において相当程度知られている使用商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものというべきであるから、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、請求人の主張する他の理由について言及するまでもなく、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-09-22 |
結審通知日 | 2014-09-26 |
審決日 | 2014-11-06 |
出願番号 | 商願2007-129063(T2007-129063) |
審決分類 |
T
1
11・
222-
Z
(X41)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 堀内 真一 |
特許庁審判長 |
関根 文昭 |
特許庁審判官 |
手塚 義明 寺光 幸子 |
登録日 | 2009-03-06 |
登録番号 | 商標登録第5210394号(T5210394) |
商標の称呼 | シータヒーリング、シータ、ヒーリング |
代理人 | 羽切 正治 |