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審決分類 審判 一部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X1418
管理番号 1295078 
審判番号 無効2013-890053 
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-08-05 
確定日 2014-12-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第5244937号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5244937号の指定商品中、第14類「身飾品(カフスボタンを除く。),キーホルダー,宝玉及びその模造品,貴金属製靴飾り,時計」及び第18類「かばん類,袋物,傘,革ひも,毛皮」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5244937号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成20年11月28日に登録出願、第14類「身飾品,キーホルダー,宝石箱,宝玉及びその模造品,貴金属製靴飾り,時計」、第18類「かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,革ひも,毛皮」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,べルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同21年5月22日に登録査定、同年7月3日に設定登録され、その後、商標登録の無効の審判により、その指定商品中の第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,べルト,履物」についての登録を無効とすべき旨の審決がされ、同25年11月13日にその確定審決の登録がされたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第5155384号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成18年10月30日に登録出願、第14類「貴金属,キーホルダー,身飾品(「カフスボタン」を除く。),貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその模造品,宝玉の原石,時計」、第18類「かばん類,袋物,傘,革ひも,原革,原皮,なめし皮,毛皮」及び第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,乗馬靴」を指定商品として、同20年8月1日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 無効理由
本件商標は、引用商標と外観において類似するものであり、また、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効とされるべきである。
2 無効原因
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、頭蓋骨と頭蓋骨の下部に交差した骨片を黒塗りしてなるものであり、特定の称呼及び観念は生じない。
(2)引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、頭蓋骨とその下部に交差した骨片を黒塗りしてなるものであり、特別な称呼及び観念は生じない。
(3)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本件商標の構成
本件商標は、頭蓋骨とその頭蓋骨の下部に交差した骨片からなり、頭蓋骨は、縦長で略中央左右には上下方向に切れ込みが形成され、左右の眼が下方向に傾斜した垂れ目となり、鼻部分には切れ込みが設けられている。さらに、口部分の歯は、左右の歯が下方向に突出している。このような頭蓋骨の下部に骨片が交差している外観である。
イ 引用商標
引用商標は、頭蓋骨と頭蓋骨の下部に交差した骨片からなり、頭蓋骨は、縦長で略中央左右には上下方向に切れ込みが形成され、左右の眼が下方向に傾斜した垂れ目となり、鼻部分には切れ込みが設けられている。さらに、口部分の歯が下方向に突出している。このような頭蓋骨の下部に骨片が交差している外観である。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標とは、頭蓋骨とその頭蓋骨の下部に交差した骨片を黒塗りしてなる外観では同一で、微細な部分については異なる点が存在する。
しかしながら、両商標は、ともに頭蓋骨と交差した2本の骨片の図形を黒塗りにして表記している点、交差している骨片の角度がほぼ同じ点、いずれの頭蓋骨も正面を向いている状態である点、目に相当する部分が両端で下がっている点、鼻に相当する部分の下端が二股に分かれている点などにおいて、その構成の軌を一にしている。
そのため、看者には、「正面を向いた頭蓋骨と交差した2本の骨片を組み合わせた図形を黒塗りに表した構図」として、強く記憶に印象付けられるものである。時と処を異にして離隔的に接する際には、必ずしも、常に、図形の細部まで正確に記憶されるとはいえないのが通常であり、両商標における微細な構成上の差異は、両商標の全体から受ける共通した印象からすれば、微差にすぎない。
また、両商標は、ともに特定の称呼、観念を生じることがないので、両商標を明確に区別することはできない。
それゆえ、両商標は、「正面を向いた頭蓋骨と交差した2本の骨片を組み合わせた図形を黒塗りに表した図形」から受ける共通の印象が、ほかの相違点を凌駕しており、時と処を異にする取引の実情において、これらを同一又は類似の商品に使用した場合には、同一事業者の製造、販売に係る商品であるかのように、需要者がその出所につき誤認、混同を生じるおそれがある。
したがって、本件商標は、引用商標に類似する商標であることが明白である。
(4)結論
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは外観が類似する商標であり、また、本件商標の指定商品中、第14類「身飾品(カフスボタンを除く。),キーホルダー,宝玉及びその模造品,貴金属製靴飾り,時計」及び第18類「かばん類,袋物,傘,革ひも,毛皮」は、引用商標の指定商品と同一又は類似するものである。
そして、出願の先後の関係においても、本件商標は、平成20年11月28日に出願され、同21年7月3日に商標登録されたものであるのに対し、引用商標は、平成18年10月30日に出願され、同20年8月1日に商標登録されたものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第105号証を提出した。
1 答弁の理由の要点
本件商標と引用商標とは、外観において顕著に相違し、また、観念及び称呼も類似するとはいえず、取引の実情等を考慮しても、本件商標がその指定商品に使用された場合に、引用商標との間で商品の出所に誤認、混同を生じさせるおそれはないから、両商標は類似しないと目するのが相当であり、よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。
2 答弁の具体的理由
(1)本件商標及び引用商標について
ア 本件商標
(ア)本件商標の採択の経緯について
本件商標は、被請求人の代表取締役社長の高原啓氏(以下「高原氏」という。)によって独自にデザインされたものである。高原氏は、平成4年(1992年)、株式会社アバハウスインターナショナルに入社し、同5年(1993年)、シューズブランド「alfredo BANNISTER(アルフレッド・バニスター)」のデザイナーに就任後、同10年(1998年)4月、秋冬東京コレクションで「irregular(イレギュラー)」を発表し、同13年(2001年)に独立し、被請求人を設立した。
高原氏が被請求人を設立した頃、頭蓋骨の構図や、頭蓋骨及び骨片からなる構図については様々なデザインが存在していたところ、本件商標の基本的なデザインは、高原氏により平成12年(2000年)頃には考え出されていたものである。
本件商標は、被請求人の英文商号の略称であり、代表的出所標識である「Roen」の漢字表記「狼煙」(のろし)の頭文字から連想した図形であるが、高原氏が「狼男」の頭蓋骨をイメージしてデザインしたものであるため、ほかの同種のデザインにはない牙・歯のあるデザインとなっており、また、「人が生きていく環境次第で育つ表面上の人格などではなく、人間という骨の上に肉と血がある、それが放つニオイや雰囲気にイロがある人でないと着こなせない服を創りたい」及び「生まれてから死ぬまでイロのある生き方をしている人、生きることを楽しんでいる人に、自分のブランドを身につけてもらいたい」という思いから生み出されたものである。
(イ)本件商標と発想の軌を一にする商標の使用状況について
多額の費用をかけた盛大な宣伝広告によって、本件商標と発想の軌を一にする商標が使用されたジャケット、パンツ、セーター、カットソー、帽子、ベルト、シューズ、バッグ、アクセサリー、浴衣等の各種商品は、著名なミュージシャン・バンドグループ・俳優及び芸能人に愛用されるに至っている。
また、本件商標と発想の軌を一にする商標は、映画の衣装や大ヒットしたロールプレイングゲームの衣装デザインに採用されており、平成24年(2012年)に宝島社から発売されたムック本については、即日完売し、増刷するという、宝島社始まって以来の快挙となっている。
さらに、本件商標と発想の軌を一にする商標は、現在、Roen直営店4店舗(青山店、新宿店、名古屋店、金沢店)のほか、卸先60数社に支持され、毎シーズンの商品に大きな期待を寄せられており、現在30数社にライセンスの許諾がなされており、そのアイテム数は多岐にわたっている。
(ウ)本件商標の著名性について
上記(ア)及び(イ)の各事実によれば、本件商標は、高原氏の独創的なデザインであるとともに、幅広い取引者、需要者において、被請求人の業務に係る商品の出所を表示するものとして、広く認識されるに至っているといえる。
(エ)本件商標の外観、称呼及び観念について
本件商標は、頭蓋骨及び骨片からなる構図からなるところ、以下のaないしiに述べる具体的構成態様からなり(乙第1号証)、格別の称呼及び観念を生じることはない。
a 構成される図形の個数
頭蓋骨と骨片が一体不可分に構成された1個の図形商標である。
b 頭蓋骨及び骨片の位置
交差した2本の骨片が頭蓋骨の上顎部に重なるように配されている。
c 頭蓋骨部
全体的な輪郭は縦長でスマートに形成されている。
d 眼窩部
下方向に傾斜した垂れ目状に白抜きされている。
e 側頭骨部
縦細の切り込みが白抜きされている。
f 鼻孔部
縦長h状に白抜きされている。
g 頬骨部
左右に膨出することなく下方に向かって略三角形状に突出している。
h 上顎部
下端は緩やかな弧を描いた形状であり、上顎部の下端には2本の長い牙が設けられ、該牙に挟まれる態様で略縦長長方形状の6本歯が並置されている。
i 骨片部
中央の交差する部分が頭蓋骨に隠れており全く描かれていないが、端部から頭蓋骨部にかけて漸次幅細になるように形成されてなり、端部には細い切り込みが白抜きされてなり、骨片の左右端部の横方向長さは、頭蓋骨部の左右側部の横方向長さの約3倍である。
イ 引用商標
引用商標は、頭蓋骨及び骨片からなる構図からなるところ、以下のaないしiに述べる具体的構成態様からなり(乙第1号証)、格別の称呼及び観念を生じることはない。
a 構成される図形の個数
頭蓋骨と骨片がそれぞれ分離した2個の構成要素を組み合わせた図形として構成されている。
b 頭蓋骨及び骨片の位置
交差した2本の骨片は、頭蓋骨の下部に分離した態様で配されている。
c 頭蓋骨部
全体的な輪郭は縦方向長さ及び横方向長さにおいてズングリするように形成され、全体的なシルエットがぼんやりと表現されている。
d 眼窩部
下方向に傾斜した外郭線を波状とする垂れ目状に白抜きされている。
e 側頭骨部
幅広の切り込みが白抜きされている。
f 鼻孔部
幅広逆v状に白抜きされている。
g 頬骨部
左右に膨出するように波状に突出している。
h 上顎部
下端は上記頬骨部と同様に波状に突出している。
i 骨片部
交差した2本の骨片が頭蓋骨の下部に描かれ、端部を除いてほぼ同じ幅で形成され、全体が黒塗りされてなり、骨片の左右端部の横方向長さは、頭蓋骨部の左右側部の横方向長さの約2倍である。
(2)商標の類否の判断基準について
商標法第4条第1項第11号に係る商標の類否は、同一又は類似の商品に使用された商標が外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号 同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号 同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号 同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)第223号 同20年9月8日第二小法廷判決・民集第228号561頁参照)。
ましてや、今日のように情報媒体が多様化し、情報量が飛躍的に増大した社会において、世人は多量の情報を識別認識することに慣れ、個々の情報間の差異に敏感に反応する習性が培われていることは顕著な事実であるから、商標の類否の判断において、商標の外観、観念、称呼の各要素は、あくまでも、総合的全体的な考察の一要素にすぎず、たまたま一要素が近似するからといって、ほかの要素との関連を無視して直ちに商標そのものが類似するとの判断に至ることは許されず、常に、情報社会といわれる今日の社会情勢に則した総合的全体的な考察を心掛けなければならないというべきである(東京高裁平成4年(行ケ)第93号 同5年2月17日判決、東京高裁平成6年(行ケ)第150号 同7年3月29日判決参照)。
(3)本件商標と引用商標との類否について
ア 共通点について
本件商標と引用商標とを比較検討するに、両者は、頭蓋骨及び骨片からなる構図であるという点、眼窩部に関し白抜きで両端が下がっているという点、側頭骨部に関し白抜きの曲線上の切り込みで側頭部の立体感を表現しているという点、鼻孔部が白抜きの折れ線状の切り込みで鼻孔部の空隙を表現しているという点において共通点がある。
しかしながら、本件商標における頭蓋骨及び骨片からなる構図は、上記(1)のア(エ)において述べた具体的構成態様からなるところ、このような構成においては、たとえ頭蓋骨及び骨片からなる構図に着目したとしても、その具体的構成態様に表れる部分から生ずる印象が、看者の記憶に強く印象付けられるものである。
そして、ファッション関連の商品を取り扱う業界において、頭蓋骨及び骨片からなる構図が多数採択され、商標登録されており(乙第2号証)、頭蓋骨と骨片を写実的に表現した商標が広く浸透していることはインターネット等で調査すれば容易に把握できる商品の取引の実情であること(乙第3号証ないし乙第14号証)を考慮すると、単なる頭蓋骨及び骨片からなる構図はありふれたものといえ、その抽象的な構図自体が、看者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるとは到底いえない。
むしろ、上記登録例や使用例を考慮すると、頭蓋骨と交差する骨片からなる図形商標に接する看者は、その商品の購入を検討するに際して、細部における図形商標の具体的な表現方法の違いまで着目して、各人の好みや用途に沿った商品を選択することも決して少なくないというのが相当であり、該商品に接する看者は、一層デザインの細部にわたる部分まで注意が惹かれてくるものといえる。
そうすると、本件商標と引用商標との類否を判断するに当たっては、その具体的構成態様に表れる部分から生ずる印象が、看者の記憶に強く印象付けられるものであるから、具体的構成態様に表れる部分の相違点は、離隔的観察においても、なお強い印象を看者に与えているといえる。
時と処を異にして離隔的に観察する場合、必ずしも常に図形の細部まで正確に記憶されているとはいえないのが通常であるとしても、具体的構成態様に表れる部分において明確な相違点を軽視して判断し得ないことは、過去の審決例、決定例からも明らかである(乙第15号証ないし乙第28号証)。いずれの審決例、決定例も、抽象的なモチーフを同じくする図形同士の類否について、具体的な構成が対比された結果、非類似の商標と判断されたものであり、このような例は枚挙に暇がないものである。
イ 相違点について
(ア)構成される図形の個数
本件商標は、頭蓋骨と骨片が一体不可分に構成された1個の図形商標であるのに対し、引用商標は、頭蓋骨と骨片がそれぞれ分離した2個の構成要素を組み合わせた図形として構成されているという相違点があり、黒塗りされた頭蓋骨と骨片という限られた構成部材で構成される両商標につき、構成される図形の個数が1個か2個かという差異により、異なるシルエットとして看者に記憶されるため、離隔的な観察において、該差異は、看者の記憶に強く印象付けられるものである。
(イ)頭蓋骨及び骨片の位置
本件商標は、交差した2本の骨片が頭蓋骨の背後に配されているのに対し、引用商標は、交差した2本の骨片が頭蓋骨の下部に分離した態様で配されているという相違点があり、頭蓋骨及び骨片の位置に関する該差異は、離隔的な観察において、看者の記憶に強く印象付けられる。
(ウ)頭蓋骨部
本件商標は、全体的な輪郭が縦長でスマートに形成されているのに対し、引用商標は、全体的な輪郭が縦方向長さ及び横方向長さにおいてズングリするように形成され、全体的なシルエットをぼんやりと表現しているという相違点があり、黒塗りされた頭蓋骨と骨片という限られた構成部材における図形商標の類否に当たっては、頭蓋骨部の輪郭の差異は、輪郭より生ずる印象に影響を与えるものであり、離隔的な観察においても、なお看者の記憶に残る差異といえる。
(エ)眼窩部
本件商標は、下方向に傾斜した垂れ目状に白抜きされているのに対し、引用商標は、下方向に傾斜した外郭線を波状とする垂れ目状に白抜きされているという相違点があり、引用商標において、頭蓋骨の眼窩部の外郭線が波状とされていることは、看者の記憶に強く印象付けられるものであり、頭蓋骨の眼窩部の外郭線が波状とされていない本件商標とは、外観上、明確に区別し得るものであり、該差異は、離隔的な観察においても、看者の記憶に強く印象付けられるものである。
(オ)側頭骨部
本件商標は、縦長の切り込みが白抜きされているのに対し、引用商標は、幅広の切り込みが白抜きされているという相違点があり、黒塗りされた頭蓋骨と骨片という限られた構成部材における図形商標の類否に当たっては、空洞部の一つ一つが看者の記憶に残るものといえ、頭蓋骨部の側頭部の差異は、離隔的な観察においても、なお看者の記憶に残るものといえる。
(カ)鼻孔部
本件商標は、縦長h状に白抜きされているのに対し、引用商標は、幅広逆v状に白抜きされているという相違点があり、黒塗りされた頭蓋骨と骨片という限られた構成部材における図形商標の類否に当たっては、空洞部の一つ一つが看者の記憶に残るものといえ、略中央部に比較的目立つように設けられた頭蓋骨部の鼻孔部の差異は、離隔的な観察においても、看者の記憶に残るものといえる。むしろ、折れ線状の切り込みで鼻孔部の空隙を表現していると認識、把握できる看者は、その形状が「縦長h状」か「幅広逆v状」か明確に理解できるものといえる。
(キ)頬骨部
本件商標は、左右に膨出することなく下方に向かって略三角形状に突出しているのに対し、引用商標は、左右に膨出するように波状に突出しているという相違点があり、引用商標において、頬骨部が波状とされ、かつ、左右に膨出していることは、看者の記憶に強く印象付けられるものであり、左右に膨出することなく下方に向かって略三角形状に突出している本件商標とは、外観上、明確に区別し得るものであり、該差異は、離隔的な観察においても、看者の記憶に強く印象付けられるものである。
(ク)上顎部
本件商標は、下端は緩やかな弧を描いた形状であり、上顎部の下端には2本の長い牙が設けられ、該牙に挟まれる態様で略縦長長方形状の6本歯が並置されているのに対し、引用商標は、下端が上記頬骨部と同様に波状に突出しているという相違点があり、黒塗りされた頭蓋骨と骨片という限られた構成部材で構成される本件商標につき、2本の長い牙と6本歯が並置されているという点は、強い印象を看者に与えるものであり、また、該牙及び歯の部分は、頭蓋骨の図形にあって自他商品を識別する機能がないということはできない。
引用商標については、そのような牙や歯は存在せず、下端は上記頬骨部と同様に波状に突出しているものであり、本件商標と引用商標とは、外観上、明確に区別できるものといえる。
それゆえ、上顎部の上記差異は、離隔的な観察において、看者の記憶に強く印象付けられるものである。
すなわち、本件商標の上顎部の下端は緩やかな弧を描いた形状であり、上顎部の下端には2本の長い牙が設けられ、該牙に挟まれる態様で略縦長長方形状の6本歯が並置されている構図として看者の記憶に強く印象付けられる。本件商標は、頭蓋骨部を縦長でスマートな形状とし、全体的なシルエットも明瞭に写実的に表現し、頬骨部を左右に膨出することなく下方に向かって略三角形状に突出させ、上顎部下端において、緩やかな弧を描いた形状であるとともに、2本の長い牙が設けられ、該牙に挟まれる態様で略縦長長方形状の6本歯が並置されてなることにより、恐怖感、骸骨の本物感、ワイルドでシャープという印象を看取できるものといえる。特に、該牙の存在が、上記狼の恐怖感、骸骨の本物感、ワイルドでシャープという印象を与える大きな要素となるものであるとともに、本件商標においては、2本の長い牙であたかも骨片をくわえているかのような表現がなされており、頭蓋骨部と骨片部の一体感を強める要素となっているものである。
これに対して、引用商標について、上顎部の下端は、上記頬骨部と同様に波状に突出してなる構図として看者の記憶に強く印象付けられるものである。引用商標は、人間の頭部をモチーフとした頭蓋骨部をズングリとし、全体的なシルエットもぼんやりと表現するとともに、頬骨部を波状に左右に膨出させ、上顎部下端において上顎部の下端も波状に突出してなることにより、ズングリしてぼんやり表現したことにより人間らしい愛嬌さを看取できるものである。
したがって、上顎部における牙、歯の存在の有無という差異は、離隔的な観察の下においては、看者において明確な印象の差として受け取られるものであり、両商標の類否判断に影響を与える顕著な差異というべきである、
(ケ)骨片部
本件商標は、中央の交差する部分が頭蓋骨の背後に隠れており、全く描かれていないが、端部から頭蓋骨部にかけて漸次幅細になるように形成されてなり、端部には細い切り込みが白抜きされてなり、骨片の左右端部の横方向長さは、頭蓋骨部の左右側部の横方向長さの約3倍であるという構成からなるのに対し、引用商標は、交差した2本の骨片が頭蓋骨の下部に描かれ、端部を除いてほぼ同じ幅で形成され、全体が黒塗りされてなり、骨片の左右端部の横方向長さは、頭蓋骨部の左右側部の横方向長さの約2倍であるという相違点があり、黒塗りされた頭蓋骨と骨片という限られた構成部材における図形商標の類否に当たっては、骨片の位置関係は看者の注意が向けられるものであり、全体のシルエットにも影響するため、その他の骨片部の形状の相違とも相まって、離隔的な観察においても、骨片部の差異は、看者の記憶に残るものといえる。
(コ)離隔的観察における共通点及び相違点について
上記のとおりであるから、時と処を異にして離隔的に接する場合、必ずしも、常に図形の細部まで正確に記憶されているとはいえないのが通常であるとしても、本件商標と引用商標とは、頭蓋骨及び骨片からなる構図における具体的構成態様に表れる部分において明確な相違点があるため、看者は、両商標を、外観上、明確に区別し得るのである。
ところで、本件商標の頭蓋骨部分については、被請求人が使用し、保有している商標(乙第29号証、乙第30号証)の頭蓋骨部分と同一の構成であり、また、本件商標と該登録各商標とは、骨片の位置及び角度の相違や骨片の有無の相違があるとしても、頭蓋骨部分のみをとらえた場合には、需要者をして、実質的には印象を同じくする商標というのが相当である。
そして、乙第29号証に係る登録商標に対する商標登録無効審判事件では、引用商標との関係で「本件商標は、頭蓋骨の背後に二本の骨を交差させていることから一体不可分の印象を受けるのに対して、引用商標は、頭蓋骨の下に間を空けて二本の骨を交差させていることから頭蓋骨と二本の骨が分離した印象を受ける点、本件商標は、二本の骨が頭蓋骨の背後にあることから立体的な印象を受けるのに対し、引用商標は、二本の骨が頭蓋骨の下にあることから平面的な印象を受ける」などを理由に、平成24年12月26日付けで「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との非類似性を認めた審決がなされており(乙第31号証)、また、乙第30号証に係る登録商標に対する商標登録無効審判事件では、引用商標との関係で「頭蓋骨の形状においては、両目、鼻、両目上部の両側部のあたりの、白抜きで描かれた部分が、それぞれ相違する」点及び「本件商標には、引用商標にはない上顎の歯も描かれているものである」点などを理由に、平成24年12月26日付けで「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との非類似性を認めた審決がなされている(乙第32号証)。まさに、これら審決からも、両商標の類否判断においては、骨片の位置関係や頭蓋骨部の具体的形状の相違が大きな影響を与えているものといえる。
また、両商標は、いずれも格別の称呼及び観念を生じないものであるため、両者が、称呼上及び観念上、相紛れるおそれはない。
さらに、本件商標と発想の軌を一にする商標は、被請求人が商品「被服」等アパレル製品に大々的に使用し、また、多数の企業にライセンスを許諾した事業を展開した結果、有名歌手や俳優に愛用される程になっており、いまや被請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く知られるに至っているものであるため、今現在に至るまで、引用商標を使用した商品との間で商品の出所に誤認、混同を生じさせるような事実も存しない。
(4)小活
上記のとおり、本件商標と引用商標との間に存する共通点は、個々に又は総体として考慮しても、上記相違点に凌駕されるものであり、両者を同一又は類似の商品に使用した場合でも、取引者、需要者がその出所について誤認、混同するおそれが皆無の非類似商標といえる。
(5)その他
無効2012-890067号審決及び平成25年(行ケ)第10008号審決取消訴訟事件判決において、本件商標と引用商標とが類似すると判断されたが、該判断は、経験則上是認できず、審理不尽、理由不備の違法があり、商標の類否に関する法令の適用を誤った違法があるため、被請求人は、現在、最高裁判所に上告書及び上告受理申立書を提出している。
3 上申の理由
被請求人は、既に頭蓋骨と骨片の商標の使用例として乙第3号証ないし乙第14号証に示す各証拠を提出しているが、正面を向いた頭蓋骨の下若しくは頭蓋骨の下方に2本の交差した骨を表した黒塗りの図形からなる商標又は該図形を含む商標は、ファッション関連の商品を取り扱う業界において、いまや慣用的図形として、多数の事業者により普通に採択、使用されていることは、新たに提出する乙第33号証ないし乙第105号証に示す各証拠から明らかである。
このような事案を勘案すると、正面を向いた頭蓋骨の下若しくは頭蓋骨の下方に2本の交差した骨を表した黒塗りの図形からなる商標又は該図形を含む商標それ自体は、ありふれた慣用的図形といえ、その抽象的な図形自体が取引者、需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるとは到底いえないものである。
また、正面を向いた頭蓋骨の下若しくは頭蓋骨の下方に2本の交差した骨を表した黒塗りの図形からなる商標又は該図形を含む商標に接する取引者、需要者は、その商品の購入を検討するに際して、細部における図形商標の具体的な表現方法の違いまで着目して、各人の好みや用途に沿った商品を選択するものであり、一層デザインの細部にわたる部分まで注意が惹かれてくるものである。
そして、正面を向いた頭蓋骨の下若しくは頭蓋骨の下方に2本の交差した骨を表した黒塗りの図形からなる商標又は該図形を含む商標に着目したとしても、数多のこの種図形が使用された商品が市場にあふれていることに鑑みれば、該図形に接した取引者、需要者は、具体的に表された構成に表れる部分から生ずる印象が記憶に強く印象付けられるものである。
さらに、ファッション関連の商品を取り扱う業界において、多数の事業者により普通に採択、使用されている正面を向いた頭蓋骨の下若しくは頭蓋骨の下方に2本の交差した骨を表した黒塗りの図形からなる商標又は該図形を含む商標を見ても、頭蓋骨に牙を設けたものは、一見して見当たらず、極めて特異なデザインともいえる。
したがって、本件商標と引用商標との間における基本的構成態様における牙、歯の存在の有無という相違点は、離隔的観察の下においても、取引者、需要者に強く支配的な印象を与えるものであり、両商標の類否判断に影響を与える顕著な差異というべきである。
4 結語
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観において顕著に相違し、また、観念及び称呼を対比すべき術もなく、取引の実情等を考慮しても、本件商標がその指定商品に使用された場合に、引用商標との間で商品の出所に誤認、混同を生じさせるおそれはないから、両商標は非類似の商標である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものであるから、請求人の主張が当を失することは明らかである。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、概略、正面を向いた頭蓋骨とその背後に扁平に交差させた2本の骨片を組み合わせた黒塗りの図形からなるものであり、特定の称呼及び観念を生ずることのないものである。
(2)引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、概略、正面を向いた頭蓋骨とその下に交差させた2本の骨片を組み合わせた黒塗りの図形からなるものであり、特定の称呼及び観念を生ずることのないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標との類否について検討するに、両商標は、それぞれ上記(1)及び(2)において述べたとおりの構成からなるところ、これらを子細に観察すれば、本件商標は、頭蓋骨と扁平に交差させた2本の骨片が重なっており、該頭蓋骨の犬歯が特徴的であるのに対し、引用商標は、頭蓋骨と扁平に交差させた2本の骨片が離れている点等において差異を有するものであるとしても、いずれも頭蓋骨と扁平に交差させた2本の骨片の図形を黒塗りに表してなる点、交差している骨の角度がほぼ同じである点、頭蓋骨が正面を向いている状態である点、目に相当する部分が両端で下がっている点、鼻に相当する部分の下端が二股に分かれている点等において、その構成の軌を一にするものであり、「正面を向いた頭蓋骨と扁平に交差させた2本の骨片を組み合わせた図形を黒塗りに表した構図」として、看者の記憶に強く印象付けられるものである。
そして、時と処を異にして離隔的に接する場合、必ずしも常に図形の細部まで正確に記憶されているとはいえないのが通常であり、被請求人が主張する両商標における構成上の差異は、両商標の構成全体から受ける共通した印象からすれば、微差の範囲にとどまるものというべきである。
また、本件商標と引用商標とは、いずれも特定の称呼及び観念を生ずることのないものであるから、看者をして、称呼及び観念により両商標を明確に区別し得るともいえない。
そうとすると、本件商標と引用商標とは、上記「正面を向いた頭蓋骨と扁平に交差させた2本の骨片を組み合わせた図形を黒塗りに表した構図」から受ける共通の印象がほかの相違点を凌駕するものといえるから、時と処を異にする取引の実情にあって、これらを同一又は類似の商品に使用した場合、取引者、需要者は、これらが同一の事業者の製造、販売に係る商品であるかのように、商品の出所について誤認、混同を生ずるおそれがあるといわなければならない。
したがって、本願商標は、引用商標と類似する商標である。
(4)指定商品の類否
本件審判の請求に係る指定商品は、本件商標の指定商品中の第14類「身飾品(カフスボタンを除く。),キーホルダー,宝玉及びその模造品,貴金属製靴飾り,時計」及び第18類「かばん類,袋物,傘,革ひも,毛皮」であるところ、これらの商品は、前記第2において記載した引用商標の指定商品のいずれかと同一又は類似するものと認められる。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標は、引用商標に類似する商標であり、かつ、本件商標の指定商品中の本件審判の請求に係る指定商品も、引用商標の指定商品と同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
2 被請求人の主張について
(1)被請求人は、本件商標と引用商標との類否について、両商標における相違点について詳述し、該相違点は両商標における共通点を凌駕するから、両商標は非類似である旨主張する。
しかしながら、被請求人が主張する本件商標と引用商標との相違点は、以下のとおり、いずれも微差にとどまるものというべきであるから、その主張を採用することはできない。
ア 構成される図形の個数
被請求人は、本件商標と引用商標とは図形の個数が異なる旨主張する。
しかしながら、本件商標は、平面視上、頭蓋骨と骨片とが重ね書きされたものであることは明らかであり、その2つを合成した図案とされているのではないから、看者は、頭蓋骨と骨片とをそれぞれに分離して独立の図形として観察、把握する場合もあるといえる。
したがって、本件商標と引用商標との間の上記部分に係る差異は、実質的には次のイにおいて判断する骨片の位置の相違に帰するものである。
イ 頭蓋骨及び骨片の位置
被請求人は、本件商標と引用商標とは、骨片の位置関係が相違する旨主張する。
しかしながら、扁平に交差された2本の骨片の交差角度は、本件商標と引用商標とでほぼ同一であり、その交差部も、引用商標が頭蓋骨のすぐ下であるのに対し、本件商標のそれは頭蓋骨の背後ではあるものの、その下部であり、看者に両商標における骨片部の位置関係の相違を印象付けるものとはいえない。なお、本件商標からは、頭蓋骨が骨片をくわえているとの印象を受けるものとは認められない。
そうとすると、本件商標と引用商標との間に頭蓋骨と骨片の位置関係が異なる差異があるとしても、離隔的観察の下においては、微差の範囲にとどまるというべきである。
ウ 頭蓋骨部
被請求人は、本件商標と引用商標とは頭蓋骨部の輪郭が異なる旨主張するが、その主張に係る点は、離隔的観察においては、およそ看者において見分けのつけ難いものであり、微差の範囲にとどまる。
エ 眼窩部
被請求人は、本件商標と引用商標とは眼窩部の輪郭線が異なる旨主張するが、その主張に係る点は、離隔的観察においては、およそ看者において見分けのつけ難いものであり、微差の範囲にとどまる。むしろ、このような微細な点の差異よりも、本件商標と引用商標とで眼窩部が白抜きで両端が下がっているという共通の構成をとっている点が、より強い印象を看者に与えているといえる。
オ 側頭骨部
被請求人は、本件商標と引用商標とは側頭骨部の白抜きの形状が異なる旨主張するが、その主張に係る点は、離隔的観察においては、看者において見分けのつけ難い形状の差であり、微差の範囲にとどまる。むしろ、このような微細な点の差異よりも、本件商標と引用商標とで白抜きの曲線上の切り込みで側頭部の立体感を表現しているという共通の構成をとっている点が、より強い印象を看者に与えているといえる。
カ 鼻孔部
被請求人は、本件商標と引用商標とは鼻孔部の白抜きの形状が異なる旨主張するが、その主張に係る点は、離隔的観察においては、看者において見分けのつけ難い形状の差であり、被請求人の主張によってようやく判明する微差の範囲にとどまる、むしろ、このような微細な点の差異よりも、本件商標と引用商標とで白抜きの折れ線状の切り込みで鼻孔部の空隙を表現しているという共通の構成が、より強い印象を看者に与えているといえる。
キ 頬骨部
被請求人は、本件商標と引用商標とは頬骨部の形状が異なる旨主張するが、その主張に係る点は、離隔的観察においては、看者において見分けのつけ難い形状の差であり、微差の範囲にとどまる。
ク 上顎部
被請求人は、本件商標と引用商標とは上顎部の形状が異なる旨主張しているところ、確かに、本件商標については、上顎部に人のものとしては不自然に長い2本の犬歯(牙とまでは直ちにいい得ない。)とその犬歯に挟まれた6本の歯が表現されているのに対し、引用商標にはそのような歯部が表現されていない点で、本件商標と引用商標とに差異がある(もっとも、上顎部の下端の形状が微差の範囲にとどまることは明らかである。)。
しかしながら、上記犬歯の長さですら頭蓋骨(頭頂部から上顎部下端まで)の長さの約7分の1程度にすぎず、犬歯間の歯は更に小さい上に、本件商標の上顎部は極端に狭く表現されているため、本件商標の上顎部と歯部を合わせたものが引用商標の上顎部にほぼ相当する位置、形状になっている。したがって、看者に両商標における歯部の有無が印象付けられるものとはいえない。
そうとすると、本件商標と引用商標との間に上顎部の形状又は歯部の有無に差異があるとしても、離隔的観察の下においては、微差の範囲にとどまるというべきである。
ケ 骨片部
被請求人は、本件商標と引用商標とは骨片部の形状が異なる旨主張する。
しかしながら、交差部が頭蓋骨の背後にあるとする点についていえば、上記イのとおり、骨片部の位置が本件商標と引用商標とで異なることは微差の範囲にとどまるものであり、そして、骨片部の位置が頭蓋骨の背後にあれば当然にその交差部は描画されないことになるから、該交差部の描画の有無に独立して看者の注意が向けられることはないというべきである。また、骨片部の幅や長さの相違、端部における白抜きの切り込みの有無の点については、離隔的観察の下においては、およそ看者において見分けのつけ難いものであり、微差の範囲にとどまる。
(2)被請求人は、乙第3号証ないし乙第14号証及び乙第33号証ないし乙第105号証を挙げて、正面を向いた頭蓋骨の下若しくは頭蓋骨の下方に2本の交差した骨を表した黒塗りの図形からなる商標又は該図形を含む商標は、ありふれた慣用的図形といえるから、その抽象的な図形自体が取引者、需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとは認められない旨主張する。
しかしながら、本件審判の請求に係る指定商品は、上記1(4)において述べたとおり、本件商標の指定商品中の第14類「身飾品(カフスボタンを除く。),キーホルダー,宝玉及びその模造品,貴金属製靴飾り,時計」及び第18類「かばん類,袋物,傘,革ひも,毛皮」であるところ、被請求人が挙げる証拠は専らシャツや帽子等の被服に係るものであるから、該請求に係る指定商品の取引の実情を推し量るには的確でなく、また、該指定商品に係る需要者が、商標の差異について殊更に細部にまで注意を及ぼす顧客に限定されていることを裏付ける証拠もないから、被請求人による主張は認められない。
(3)被請求人は、登録例や審決例を挙げて、本件商標と引用商標とはその具体的形状の相違が大きく影響し、明確に区別し得る旨主張する。
しかしながら、被請求人が挙げる例は、その商標の構成態様から受ける印象や記憶が本件商標及び引用商標から受けるそれとは異なるものであるから、そのような例が存することにより、本件商標と引用商標との類否の判断が左右されるものではない。
したがって、被請求人の主張は、認めることができない。
(4)被請求人は、本件商標は、幅広い取引者、需要者において、被請求人の業務に係る出所を表示するものとして、広く認識されるに至っている旨主張する。
しかしながら、被請求人の提出に係る証拠を総合してみても、その主張を認めるに足る事実は見いだせないから、被請求人による主張は認められない。
(5)被請求人は、本件商標についてされた別件の無効審判事件(無効2012-890067)に係る平成25年(行ケ)第10008号審決取消訴訟事件判決について、審理不尽、理由不備の違法があり、商標の類否に関する法令の適用を誤った違法があるため、最高裁判所に上告書及び上告受理申立書を提出していると主張する。
しかしながら、当審において職権をもって調査したところによれば、上記上告提起及び上告受理申立てについては、いずれも平成25年11月8日に、前者は棄却され、後者は不受理とされている。
したがって、被請求人の主張は、認めることができない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中、第14類「身飾品(カフスボタンを除く。),キーホルダー,宝玉及びその模造品,貴金属製靴飾り,時計」及び第18類「かばん類,袋物,傘,革ひも,毛皮」について、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号に基づき、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
1 本件商標


2 引用商標(登録第5155384号商標)


審理終結日 2014-03-10 
結審通知日 2014-03-14 
審決日 2014-04-10 
出願番号 商願2008-95923(T2008-95923) 
審決分類 T 1 12・ 261- Z (X1418)
最終処分 成立 
前審関与審査官 手塚 義明 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 田中 敬規
梶原 良子
登録日 2009-07-03 
登録番号 商標登録第5244937号(T5244937) 
代理人 山田 和明 
代理人 飯島 紳行 
代理人 藤森 裕司 
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