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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W18
審判 全部申立て  登録を維持 W18
審判 全部申立て  登録を維持 W18
管理番号 1293843 
異議申立番号 異議2014-900007 
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-12-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2014-01-14 
確定日 2014-10-31 
異議申立件数
事件の表示 登録第5621245号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5621245号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5621245号商標(以下「本件商標」という。)は、「VESP」の欧文字を標準文字で表してなり、平成25年5月16日に登録出願され、第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえの金具,つえの柄,皮革,皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類」を指定商品として、同年8月22日に登録査定、同年10月11日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第4031558号商標(以下「引用商標」という。)は、「VESPA」の欧文字をゴシック体で横書きしてなり、平成5年4月22日に登録出願され、第18類「かばん類,袋物,傘」を指定商品として、同9年7月18日に設定登録され、その後、同19年6月19日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)引用商標は、本件商標よりも先願先登録であり、また、引用商標の指定商品と本件商標の指定商品とは、一部において同一である。
(2)本件商標と引用商標との類似性
ア 外観について
本件商標を構成する4文字は、そのすべてが引用商標中に同じ配列で含まれており、相違する部分は、引用商標の右端の「A」の有無である。横書き文字の場合、通常は左から読むため、右端の文字はさほど重要視されずに見落とされる可能性がある。すなわち、引用商標の構成中の「VESP」の文字部分が本件商標と同一であるため、両商標は見誤るおそれがある。
特許庁の過去の審決等においても、一文字の相違により外観において類似すると判断された先例(2003年異議第90855号、2004年異議第90345号、2007年異議第900107号)があるところ、これらによれば、文字商標同士の外観の類否を判断する場合において、相違する文字が印象の残り難い位置に配されており、また、両商標が全体的に近似した印象を受けるときなどに類似すると判断されている。本件についてみると、本件商標と引用商標とにおいて、相違する一文字が商標の末尾であること、また、印象の強く残る語頭から4文字が一致していることにより、両商標は全体的に近似した印象を与える。
よって、本件商標と引用商標とは、外観上、類似するというべきである。
イ 観念について
本件商標「VESP」は英語等としてよく知られている語ではない一方、引用商標「VESPA」は「スズメバチ」を意味しているから、両商標は、観念上、類似する商標とはいえない。
ウ 称呼について
本件商標からは、通常、「ベスプ」の称呼が自然に生じるのに対し、引用商標からは「ベスパ」の称呼が生じるところ、これらの称呼を比較すると、両称呼は、いずれも3音からなり、前半の2音が同一であって、相違する語尾の「プ」と「パ」も同行音で共に両唇を合わせて破裂させる無声の破裂音であり、さらに、両称呼は、いずれも語頭の「ベス」の音にアクセントを置いて強く発音するものであるため、語尾の「プ」と「パ」が弱く発音されて聴き取り難くなる。
よって、「ベスプ」の称呼と「ベスパ」の称呼とは、全体として近似したものとなり、誤認混同を生ずることになる。
(3)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)「VESPA」商標の著名性
申立人は、以下のとおり、商標「VESPA」を「二輪自動車」について永年にわたり使用した結果、ヨーロッパ各国を始め、我が国を含む多くの国において広く知られるに至っている。
ア 申立人は、1884年にジェノヴァ近郊の船舶用家具を扱う製材工場が発祥で、その後、鉄道の客車の製造を行い、第一次世界大戦時には戦闘機や水上飛行機の製造も手掛け、航空機産業界における大手の一つに成長したが、第二次世界大戦後は製造方針の転換を迫られた。
申立人は、運送業界から乗りやすく、快適で、エンジンが外側から見えない乗り物の開発を任されたことから、自動車と同じようにエンジンをカバーで覆い、運転者から離れた位置に装備し、サスペンションは航空学から取り入れ、また、フレームの代わりにスチール製モノコックボディを採用するなど、これまでの伝統を打ち破る革新的なスクーターを開発し、1945年に試作車を発表して、1946年には最初の大量生産による98ccの「VESPA」を発売し、その後、1953年から1955年にかけてシート、ヘッドライト、ハンドル等のデザインを変更し、現在のデザインに落ち着いた。
そして、シートとハンドルの間から燃料タンクを無くしたことにより、スカート姿の女性も乗れるようになったため、需要者の幅が広がり、オートバイには無い、おしゃれな軽快なイメージを持った乗り物として普及することとなった。これにより、映画のワンシーンや有名スターの実生活においても使用され、それらが公表されることにより、更にこのスクーターの普及に拍車をかけることとなった(甲第3号証)。
また、スクーター「VESPA」の生産台数は、1950年代から60年代に飛躍的に伸び、1946年に2,484台だったものが、1951年に13万1,085台となり、1953年には50万台が生産され、1956年には通算して100万台目が生産された。100万台という生産台数は、二輪自動車の世界では達成されたことのないものであった。
上記のとおり、スクーター「VESPA」は、1946年に第1号のモデルが生産販売されて以来、現在までに数々のモデルが製造され、販売されてきたが、その一部が甲第3号証の168頁から175頁に掲載されている。
イ 我が国においても、1953年に制作された「ローマの休日」という映画が公開されると、その中で、主人公の男女が「VESPA」に乗ってローマ市内を巡るシーンが話題となり、その映画のヒットとともに「VESPA」というスクーターも広く知られるようになった。その後、若者を主人公とした映画などで使用されるようになり、また、テレビドラマでも主人公の探偵が白い「VESPA」を愛車として乗り回すシーンが毎週放送されるなど、一般にも広く見られるようになった(甲第4号証及び甲第5号証)。
ウ 「VESPA」のスクーターは、現在もその新車及び中古車が市場で販売されている。この点については、インターネット上の販売サイトにその新車及び多くの旧モデルの中古車が掲載されていることから(甲第6号証)、「VESPA」は、「スクーター」の商標として、現在も我が国において知られているといえる。
エ 「VESPA」商標は、商品名の辞典にも掲載されており、「世界のスクーターの代表的存在.」と明記されている(甲第7号証)。
オ 以上のとおり、「VESPA」商標は、「スクーター」の商標として、本件商標の登録出願及び登録査定の両時点において、我が国において広く知られていたということができる。
(2)「VESPA」のスクーターが女性や若者にも人気を博していることから、申立人は、「VESPA」ブランドの被服やかばん類も製造販売しており、これらの製品は、我が国においても、「VESPA」ブランドの下に販売されている(甲第8号証)。このため、本件商標の指定商品中、特に「かばん類、袋物」について本件商標が使用された場合、本件商標が申立人の周知商標である「VESPA」と4文字が共通しているため、需要者は、本件商標を申立人の「VESPA」商標と見誤るおそれがあり、また、上記以外の指定商品について本件商標が使用された場合も、申立人の「VESPA」商標と誤認するおそれがある。
よって、本件商標は、その登録出願及び登録査定の両時点において、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「VESP」の欧文字を標準文字で表してなるところ、該語は、特定の意味を有する外国語とは認められないものであるから、これを称呼する場合には、我が国において最も一般的に親しまれているローマ字又は英語における発音に倣って称呼されるとみるのが相当である。しかして、例えば、「vest」の語が「ベスト」と発音され、「grasp」の語が「グラスプ」と発音されることに照らせば、「VESP」の文字からなる本件商標からは「ベスプ」の称呼が生ずるとみるのが自然である。
また、本件商標は、上述のとおり、特定の意味を持たない語であることから、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
引用商標は、前記第2のとおり、「VESPA」の欧文字をゴシック体で横書きしてなるところ、該語は、「スズメバチ」の意味を有するラテン語やイタリア語の成語ではあるものの、我が国におけるそれらの語の普及の程度に照らし、一般に知られているとはいい難いものであるから、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として認識されるとみるのが相当である。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「ベスパ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものとみるのが自然である。
(3)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標とは、4文字と5文字といういずれも短い文字構成からなるものであって、末尾における「A」の文字の有無という差異があることから、外観上、容易に区別できるものといえる。
また、本件商標から生ずる「ベスプ」の称呼と引用商標から生ずる「ベスパ」の称呼とを比較するに、両称呼において相違する「プ」と「パ」の音は、ともに破裂音であって比較的強く発せられることから、これが3音という短い音数からなる両称呼に及ぼす影響は少なくなく、それぞれ一連に称呼するときには、互いに聞き分けることができるというのが相当である。
さらに、観念についてみるに、本件商標及び引用商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるところ、両商標が観念において相紛れるおそれがあるとするような特段の事情は見いだせない。
(4)小括
上記によれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当しないとしても、本件商標は、同項第15号に該当するものであると主張し、甲第3号証ないし甲第8号証を提出しているところ、それらによれば、申立人が引用商標を商品「二輪自動車(スクーター)」に1946年から使用しており、それが1953年に制作された映画「ローマの休日」に登場したこと、当該「二輪自動車(スクーター)」は1956年には累計100万台の生産がされたものであり、現在も販売されていることは認められるが、引用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は同人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていると認めるに足りる証拠はない。
また、仮に、引用商標が需要者の間においてある程度知られているものであるとしても、本件商標と引用商標とは、上記1のとおり、非類似の商標であって、十分に区別し得る別異の商標というべきものである。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、申立人又は引用商標を想起、連想させるものとは認められず、該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項により維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2014-10-23 
出願番号 商願2013-40428(T2013-40428) 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W18)
T 1 651・ 262- Y (W18)
T 1 651・ 271- Y (W18)
最終処分 維持  
前審関与審査官 青木 博文 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 手塚 義明
田中 敬規
登録日 2013-10-11 
登録番号 商標登録第5621245号(T5621245) 
権利者 有限会社プリフィクス
商標の称呼 ベスプ、ブイイイエスピイ 
代理人 特許業務法人 清水・醍醐特許商標事務所 

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