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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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異議2014900024 | 審決 | 商標 |
異議2014900113 | 審決 | 商標 |
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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W0942 審判 全部申立て 登録を維持 W0942 審判 全部申立て 登録を維持 W0942 審判 全部申立て 登録を維持 W0942 審判 全部申立て 登録を維持 W0942 審判 全部申立て 登録を維持 W0942 審判 全部申立て 登録を維持 W0942 |
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管理番号 | 1292897 |
異議申立番号 | 異議2014-900083 |
総通号数 | 179 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2014-11-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2014-03-17 |
確定日 | 2014-10-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5637189号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5637189号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5637189号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成25年9月10日に登録出願、第9類「電子計算機用プログラム」及び第42類「電子計算機用プログラムの提供」を指定商品及び指定役務として、同年12月2日に登録査定、同月13日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、登録異議の申立ての理由において、以下の3件の商標(以下、3件の商標を総称するときは、「引用商標」という。)を引用している。 (1)商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標 申立人は、以下の2件の登録商標(以下、2件の登録商標を総称するときは、「引用登録商標」という。)を引用している。 ア 登録第5660902号商標(以下「引用商標1」という。)は、「Dolphin」の欧文字を横書きしてなり、平成25年8月23日に登録出願、第42類「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,電子計算機システムの設計・開発・運用又は電子計算機システムの導入に関する助言,電子計算機端末による通信を用いた電子計算機・医療機器その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法に関する紹介及び説明,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,インターネットサーバーの記憶領域の貸与」を指定役務として、同26年4月4日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 イ 登録第5446560号商標(以下「引用商標2」という。)は、「OpenDolphin」の欧文字を横書きしてなり、平成22年10月28日に登録出願、第42類「電子計算機のシステム設計・開発・運用又は保守,電子計算機のシステム導入に関する助言,電子計算機用プログラムの提供」を指定役務として、同23年10月28日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 (2)商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号に該当するとして引用する商標 申立人は、引用登録商標のほか、別掲2のとおりの構成からなり、「電子計算機用プログラム」及び「電子計算機用プログラムの提供」について使用している商標(以下「引用商標3」という。)を引用している。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである旨申し立て、その理由を要旨次のように述べ、その証拠方法として、甲第1号証ないし甲第20号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)引用商標の周知性について 申立人は、電子カルテシステムの開発及びその商品又は役務の提供を主な業務とする者であり、引用商標、特に「ドルフィン」及び「Dolphin」を付して当該業務を長年一貫して行ってきている者である(甲第8号証ないし甲第10号証及び甲第15号証)。そして、そのクラウド型電子カルテシステムのシェアは、2012年次で約25%にまで達し、業界トップブランドに至っている(甲第15号証)。 引用商標は、申立人の斬新な造語であって、電子カルテシステムの提供に係る申立人の商品又は役務の内容が高品質であることと当該商品又は役務における長年の使用の継続をもって、「ドルフィン(Dolphin)」といえば、診療所用電子カルテの業界では、「OpenDolphin」の商標を意味し、「ドルフィン(Dolphin)」の商標は、「OpenDolphin」の商標及び「イルカの図形」の商標とともに、その業界においては周知著名な商標となっている(甲第6号証ないし甲第8号証、甲第11号証、甲第12号証、甲第15号証、甲第17号証及び甲第18号証)。そして、引用商標は、本件商標の登録出願時はもちろんのこと、登録査定時においても、わが国において広く知られ、周知著名な商標に至っているものである。 (2)本件商標と引用商標の類似性について 本件商標は、「Dolphin Evolution」の欧文字と「イルカ」の図形を結合したものであるところ、周知著名な引用商標の重要な主要イメージ部分と類似する「Dolphin」の欧文字と「イルカの図形」を要部とするものであるから、引用商標と本件商標とは、高い程度で類似するものであり、市場において混同をひきおこす。 本件商標の称呼は、「ドルフィンエボリューション」、「ドルフィン」又は「エボリューション」であり、「Dolphin」の文字と「Evolution」の文字とが分離して表示され、かつ、「Dolphin」の文字と「Evolution」の文字とが何らの脈絡もなく、何らの観念的な関連もない場合、引用商標1の「ドルフィン(Dolphin)」の文字があまりに周知著名であるため、取引の実際では「ドルフィン」と略称されて取引されるといえるから、本件商標からは、「ドルフィン」と略称された称呼が生じる。 他方、引用商標1の称呼は、「ドルフィン」である。また、引用商標2の称呼は、「オープンドルフィン」であるところ、本件商標の場合と同じ理由により、「ドルフィン」と略称された称呼が生じる。そうすると、本件商標と引用登録商標は、「ドルフィン」の称呼を中核として混同するものであり、称呼において類似する商標である。 さらに、本件商標が「ドルフィン」又は「Dolphin」と略称されて使用されることは明らかであり、本件商標と引用商標3の「イルカの図形」は、向いている方向の相違はあるが、外観において類似する商標である。 したがって、本件商標は、その要部が広く知られた引用商標の主要部分と共通し、本件商標と引用商標とは、類似の商標といえる。 (3)商標法第4条第1項第7号について 申立人とは何らの関係も有しない者が本件商標を使用することは、本来、自らの営業努力によって得るべき業務上の信用を、申立人の広く知られた引用商標の周知著名性にただ乗り(フリーライド)することによって得ようとすることにほかならず、引用商標に化体した莫大な価値を希釈化させるおそれがあり、加えて、本件商標の商標権者は、申立人との許諾等の契約を基に、引用商標を、申立人の業務と同じ第42類「電子計算機用プログラムの提供」及びこれに類似する第9類「電子計算機用プログラム」について使用してきた経緯があり、しかも、本件商標の登録出願の前後をもって、申立人との当該契約を解消し、不正の目的をもって本件商標を使用し、引用商標の顧客吸引力等にただ乗りしようとする確信的な強い意図が推認できる。そうすると、そのような行為は、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。 (4)商標法第4条第1項第10号について 引用商標は、長年、わが国で使用された結果、遅くとも、本件商標の登録出願時より前に、医療に従事する業界において広く認識されており、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されるようになった商標である。 本件商標は、周知著名な引用商標の重要な主要イメージ部分と類似する「Dolphin」の文字と「イルカの図形」を要部とするものであるから、引用商標と高い程度で類似するものであり、市場に混同をひきおこす。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。 (5)商標法第4条第1項第11号について 本件商標と引用登録商標の称呼は上記(2)のとおりであって、両商標は、「ドルフィン」を中核として、称呼において類似する商標である。 また、本件商標の指定商品及び指定役務である第9類「電子計算機用プログラム」及び第42類「電子計算機用プログラムの提供」は、引用登録商標の指定役務である第42類の「電子計算機用プログラムの提供」と同一又は類似のものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。 (6)商標法第4条第1項第15号について 本件商標は、申立人の所有する周知著名な引用商標と、重要な主要イメージ文字部分と中核部分が共通し、類似するものであり、本件商標と引用商標とは、相紛らわしい類似の商標といえる。 そうすると、本件商標は、その指定商品又は指定役務に使用された場合、取引者、需要者をして、その商品又は役務が、申立人の提供に係るものであるかの如く、または、申立人と何らかの経済的又は組織的に関連がある者の提供に係るものであるかの如く認識され、その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものといえる。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。 (7)商標法第4条第1項第19号について 本件商標の商標権者は申立人とは何らの関係も有しないところ、本件商標の商標権者が、申立人の周知著名な引用商標、特に、引用商標1及び3の重要な主要イメージ部分と類似する「Dolphin」及び「イルカの図形」を要部とする商標を採択して、本件商標の指定役務及び指定商品について使用することは、本来、自らの営業努力によって得るべき業務上の信用を、その引用商標の著名性にただ乗りすることによって得ようとすることにほかならず、引用商標1及び3に化体した価値を希釈化させるおそれがある。さらに、本件商標の商標権者は、申立人との許諾契約を基に、引用商標と同じ第42類「電子計算機用プログラムの提供」及びこれに類似する第9類「電子計算機用プログラム」に使用してきた経緯からみても、明らかに不正の目的による使用といえるものである。 加えて、本件商標は、その要部において、申立人の所有する周知著名な引用商標の重要な主要イメージ文字部分と中核部分が共通するものであり、本件商標と引用商標とは、相紛らわしい類似の商標といえる。また、引用商標は、申立人の斬新な造語であり、市場シェアが大きく、高い顧客吸引力を有するものであり、しかも、その構成上、顕著な特徴を有するものであるから、申立人の周知著名な引用商標の中核をなす重要な部分をほぼそっくり取り込んで、商標として採択することは許されないものといえる。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。 (8)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は、取り消されるべきものである。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知著名性について 申立人は、引用商標について、申立人の斬新な造語であって、「ドルフィン(Dolphin)」といえば、診療所用電子カルテの分野では、「OpenDolphin」の商標を意味し、「ドルフィン(Dolphin)」の商標は、「OpenDolphin」の商標及び「イルカの図形」の商標とともに、周知著名となっている旨主張している。 しかし、引用商標のうち、引用商標1は、「Dolphin」の欧文字からなるところ、該欧文字が「イルカ」を意味する英語の成語であるから、申立人による造語でないこと明らかである。また、引用商標2は、「OpenDolphin」の欧文字からなるところ、それを構成する「Open」の欧文字が「開く、公開する、開いた」の意味を有する英語の成語であり、また、「Dolphin」の欧文字が上述のとおりであるから、その各構成文字が申立人による造語でないことは明らかである。さらに、引用商標3は、イルカと思しき輪郭を塗りつぶした図形と認識されるものであるから、申立人による高い特異性や創作性があるとまではいい難いものである。 しかも、申立人提出の甲第6号証の「情報共有型電子カルテによる熊本地域健康福祉オープンネットワーク」と題した「吉原博幸(熊本大学医学部附属病院)」名のインターネット情報においては、その2頁に「3.1 Dolphin Project(ドルフィンプロジェクト)」として「予算の有効利用の点からも、共通利用可能なシステムに関しては共同開発を行うこととなり、熊本、宮崎両地域共同開発によるDolphin Projectとしてスタートした。」と、その3頁に「電子カルテの開発」として「本プロジェクトの為にクリニック用電子カルテ(開発コード名“Dolphin”)を開発した。」と、同じく3頁に「クリニック用電子カルテDolphin」として「(株)ディジタルグローブを中心に開発された。」との記載がある。また、甲第6号証の「皆川和史(株式会社デジタルグローブ)」名の「OpenDolphin(前eDolphin)の設計及びオープンソース化」と題したインターネット情報においては、「1.はじめに」として「ドルフィンプロジェクトで開発された電子カルテeDolphinをさらに発展させるため、ソースコードを公開するとともに、名前をOpenDolphinに変更して新しいバージョンをリリースした。」との記載がある。さらに、甲第11号証の「ドルフィン・プロジェクトが歩んだ道:これからの電子カルテの進化を考える」と題した「吉原博幸」氏と「藤本司郎」氏の対談に関するインターネット情報においては、「求められる『Dolphin』の進化」として「藤本:ドルフィン・プロジェクトは、地域レベルのiDolphin、国レベルのSuper Dolphinなど規模にあわせたいくつかの構成にわかれていますね。国際レベルでのGlobal Dolphinでは中国浙江大学ともEHR相互接続に取り組まれているのも興味深いですね。」及び「吉原:因みにiDolphinは、沖縄県の『琉球ネット』、滋賀県の『ながはまネット』、京都府の『まいこネット』、あと全国規模のミッドタウンクリニックなどで、共同利用という形で札幌のデータセンターを活用しています。」との記載がある。そして、これらの記載に照らすならば、診療所用電子カルテの分野においては、「Dolphin(ドルフィン)」の文字には、申立人の業務に係る商品又は役務を表すもの以外にも、種々の使用状況があるといえる。 加えて、甲第6号証、甲第7号証の1、甲第8号証の1ないし3、甲第15号証における申立人のパンフレットやインターネット情報の記事をみても、「Open Dolphin」の文字は、顕著に表示されているが、「Dolphin(ドルフィン)」のみの文字については、表示されてはいるものの、該文字のみが看者に強く印象付けるように顕著に表示されているということはできないものである。 してみれば、引用商標は、診療所用電子カルテの分野においては、そのうちの引用商標2が、「Open Dolphin」の文字全体として、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとしてある程度知られている可能性までは否定しないとしても、「Dolphin(ドルフィン)」のみの文字には種々の使用状況があり、「ドルフィン(Dolphin)」といえば、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者に広く認識されているということはできないものである。 (2)本件商標と引用商標の類否について ア 本件商標 本件商標は、別掲1に示すとおり、イルカと思しき図形と「Dolphin Evolution」の欧文字とを組み合わせてなるところ、外観上、図形部分と文字部分の一部が重なって表されているものである。 そして、その構成中の図形部分がイルカと思しき図形であるとしても、イルカを図形で表わすにも種々の態様があり得るのであって、加えて、上記(1)のとおり、診療所用電子カルテの分野においては、「Dolphin(ドルフィン)」の文字には種々の使用状況があることをも勘案するならば、これに接する取引者、需要者は、出所表示として図形部分を単に「イルカ」とのみ認識し、取引に資するとは考え難く、むしろ、文字部分と一体のものとして把握するか、または、図形部分の形や向き、色遣い等の具体的な構成態様にも注意を払って取引に当たるとみるのが自然といえる。 また、その構成中の「Dolphin Evolution」の欧文字は、外観上、「Dolphin」の文字と「Evolution」の文字の間に間隔があるとしても、同じ書体及び大きさをもって、まとまりよく一連に表されているものである。そして、その構成文字の全体から生ずる「ドルフィンエボリューション」の称呼も、多少冗長な点があるとしても、それを構成する「Dolphin」の文字が「イルカ」を意味する英語として、また、「Evolution」の文字が「進化、発展」を意味する英語として、それぞれ親しまれていることをも勘案するならば、淀みなく一気に称呼し得るものといえる。そうすると、本件商標は、その構成中の文字部分も、その文字部分の全体を一体不可分のものとして認識されるとみるのが相当であり、「ドルフィンエボリューション」とのみ一連に称呼され、特定の観念を生じない一種の造語として認識されるといえるものである。 してみると、本件商標は、「ドルフィンエボリューション」の称呼のみが生じ、特定の観念は生じないというべきものであり、図形部分をみても、また、文字部分をみても、申立人が主張するような「ドルフィン」(イルカ)の称呼及び観念は生じないものである。 イ 引用商標 (ア)引用商標1 引用商標1は、上記2(1)アのとおり、「Dolphin」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成文字に相応して、「ドルフィン」の称呼及び「イルカ」の観念が生じるものといえる。 (イ)引用商標2 引用商標2は、上記2(1)イのとおり、「OpenDolphin」の欧文字を横書きしてなるところ、各文字を同じ書体、大きさ及び間隔をもって、まとまりよく一連に表されているものであり、その構成文字の全体から生ずる「オープンドルフィン」の称呼も、多少冗長な点があるとしても、それを構成する「Dolphin」の文字が「イルカ」を意味する英語として、また、「Open」の文字が「開く、公開する、開いた」を意味する英語として、それぞれ親しまれていることをも勘案するならば、淀みなく一気に称呼し得るものといえる。そして、診療所用電子カルテの分野においては、上記(1)のとおり、「Dolphin(ドルフィン)」の文字には種々の使用状況があることをも勘案するならば、引用商標2は、その構成文字全体が一体不可分のものとして認識されるものであり、「オープンドルフィン」の称呼のみが生じ、特定の観念を生じない一種の造語として認識されるものといえる。 (ウ)引用商標3 引用商標3は、別掲2のとおり、「イルカ」と思しき図形からなるものである。そして、診療所用電子カルテの分野においては、上記(1)のとおり、「Dolphin(ドルフィン)」の文字には種々の使用状況があることをも勘案するならば、これに接する取引者、需要者は、出所表示として、図形部分を単に「イルカ」とのみ認識し、取引に資するとは考え難い。特に、引用商標3は、写実的に表すのではなく、「イルカ」と思しき輪郭を一色に塗りつぶしてなる点に特徴があることから、単なる「イルカ」としてではなく、むしろ、その図形部分の形や向き、色遣い等の具体的な構成態様にも注意を払って取引に当たるとみるのが自然といえるから、引用商標3からは、単なる「イルカ」の称呼及び観念は生じないといえる。 ウ 本件商標と引用商標との対比 本件商標は、その外観は上記1のとおりである。また、その称呼及び観念については、上記アのとおり、その文字部分の全体に相応して「ドルフィンエボリューション」の称呼のみが生じ、特定の観念が生じないというべきものであり、図形部分をみても、また、文字部分をみても、申立人が主張するような「ドルフィン」(イルカ)の称呼及び観念は生じないものである。 他方、引用商標は、その外観は上記2のとおりである。また、その称呼及び観念については、上記イのとおりであるところ、引用商標1は、「ドルフィン」の称呼及び「イルカ」の観念が生ずるものであり、引用商標2は、その構成文字の全体に相応して「オープンドルフィン」の称呼のみが生じ、特定の観念を生じない一種の造語として認識されるものであり、さらに、引用商標3は、それを構成する図形から、単に「イルカ」の称呼及び観念が生じるとは考え難いものである。 そうすると、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても、相紛れるおそれがない非類似の商標ということができるものである。 (3)商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、上記(2)のとおり、引用登録商標とは非類似の商標といえるものであるから、その指定商品又は指定役務が引用登録商標の指定役務と同一又は類似のものであったとしても、商標法第4条第1項第11号に該当するということはできない。 (4)商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号について 引用商標は、我が国においても、また、外国においても、上記(1)のとおり、診療所用電子カルテの分野において、「ドルフィン(Dolphin)」といえば申立人の業務に係る商品又は役務を表示するという程に需要者の間で広く認識されているということはできないものである。 しかも、本件商標と引用商標とは、上記(2)のとおり、相紛れるおそれがない非類似の商標であり、本件商標をその指定商品又は指定役務について使用しても、その出所について混同を生ずるおそれがあるということができないものである。 そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するということはできない。 (5)商標法第4条第1項第7号について 申立人は、本件商標について、引用商標の周知著名性や顧客吸引力にただ乗りしようとするものであり、また、引用商標に化体した価値を希釈化させるおそれがあり、社会公共の利益に反する旨主張する。 しかし、引用商標は、上記(1)のとおり、診療所用電子カルテの分野において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されているということはできないものであり、しかも、本件商標と引用商標とは、上記(2)のとおり、相紛れるおそれがない非類似の商標であるから、本件商標をその指定商品又は指定役務について使用しても、取引者、需要者が引用商標や申立人を想起するとはいうことができないものである。 そうすると、本件商標は、引用商標の周知著名性や顧客吸引力にただ乗りしようとするものであるということはできないし、また、引用商標に化体した価値を希釈化させるものであるということもできないものである。 その他、本件商標について、公序良俗に反するとしなければならない事情も見いだし得ない。 してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するということはできない。 (6)むすび 以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものではない。 したがって、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標)(色彩は原本参照) 別掲2(引用商標3)(色彩は原本参照) |
異議決定日 | 2014-09-26 |
出願番号 | 商願2013-70525(T2013-70525) |
審決分類 |
T
1
651・
262-
Y
(W0942)
T 1 651・ 271- Y (W0942) T 1 651・ 222- Y (W0942) T 1 651・ 263- Y (W0942) T 1 651・ 25- Y (W0942) T 1 651・ 22- Y (W0942) T 1 651・ 261- Y (W0942) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小出 浩子 |
特許庁審判長 |
野口 美代子 |
特許庁審判官 |
中束 としえ 林 栄二 |
登録日 | 2013-12-13 |
登録番号 | 商標登録第5637189号(T5637189) |
権利者 | エス・アンド・アイ株式会社 |
商標の称呼 | ドルフィンエボリューション、ドルフィン、エボリューション |
代理人 | 前田 和男 |
代理人 | 下山 冨士男 |
代理人 | 岡本 敏夫 |