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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2013900254 審決 商標

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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W09
管理番号 1292893 
異議申立番号 異議2013-900253 
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-11-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2013-08-05 
確定日 2014-06-25 
異議申立件数
事件の表示 登録第5577368号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5577368号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5577368号商標(以下「本件商標」という。)は、「PCI DSS COMPLIANT ENTITY」の文字を標準文字で表してなり、平成24年11月13日に登録出願、第9類「金銭登録機,電気通信機械器具,電子計算機,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,レコード,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープその他の録画済み記録媒体,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像・映像・映画ファイル,電子出版物(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるものを含む。)」を指定商品として、同25年3月22日に登録査定、同年4月26日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
1 商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、登録異議申立人(以下「申立人」という。)の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、本件商標の出願日より前に需要者の間に広く認識されている商標「PCI DSS」と類似するものであって、その商品若しくは役務又はこれに類似する商品若しくは役務について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号について
本件商標を、その指定商品及び指定役務について使用した場合、需要者が申立人の業務に係る商品又は役務と、その出所について混同するおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、公正な取引秩序を乱すものであり、公の秩序を害するおそれがあるものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第3 本件商標に対する取消理由(要旨)
商標権者に対して、平成26年2月25日付けで通知した本件商標の取消理由(要旨)は、次のとおりである。
1 申立人の提出に係る甲第2号証ないし甲第10号証(枝番を含む。)によれば、「PCI DSS」の周知性について、以下の事実が認められる。
(1)申立人は、2004年12月、JCB、American Express、Discover、マスターカード、VISAの国際ペイメントブランド5社によって共同で設立されたものであり、「Payment Card Industry Data Security Standard」の頭文字である「PCI DSS」は、クレジットカード情報の保護を目的とする統一基準を表す標章として、申立人が考案、採択したものである。そして、申立人は、管理団体として「PCI DSS」の準拠基準の策定・維持、評価手順の確立、認定審査会社の教育・試験等を行うものであって、協力団体と連携して「PCI DSS」の周知・推進活動を行っていると認められる(甲2、甲3及び甲10)。
(2)前記の5社は、米国、英国等欧米諸国をはじめ、全世界規模で、加盟店とサービスプロバイダー等に対し、統一基準「PCI DSS」の準拠を推進するために、加盟店やアクワイアラ(クレジットカード会社)等に向けての教育、啓蒙活動、セミナー等を積極的かつ継続的に行ってきた。また、クレジットカード会社自体も、「PCI DSS」の準拠を推進するために積極的に普及・支援活動を行った結果、2011年2月の調査報告(経済産業省委託調査)において、「PCI DSS」は国際的なスタンダードとして評価されるに至っているとされており(甲4)、また、平成20年3月の調査報告(経済産業省委託調査)において「PCI DSS」は、我が国においても、2008年度には本格的な普及フェーズとして対応の要求が高まると予想されていたものである(甲5)。
(3)2008年8月7日の大日本印刷株式会社のニュースリリースをはじめ、本件商標の登録出願に至るまで間において、「株式会社J-Payment」「株式会社ゼウス」「ニフティ株式会社」「三井住友カード株式会社」「アリコジャパン」「株式会社日本カードネットワーク」「ソネットエンタテインメント株式会社」「株式会社アイアイジェイテクノロジー」「トヨタファイナンス株式会社」「三菱UFJニコス株式会社」「株式会社NTTデータ」「NECビッグローブ株式会社」「SBIベリトランス株式会社」「ソフトバンク・ペイメント・サービス株式会社」ほか、我が国の多数の企業(カード情報を取り扱う事業者)は、そのニュースリリース等において、国際統一基準「PCI DSS」の認定を取得したことや同基準に準拠したことなどを発表していたものである(甲6の1ないし29、31ないし39、41ないし43)。
(4)「PCI DSS」準拠認定の取得には、充たすべき要件が多く、難易度が極めて高いとされるものであるところ、我が国の多数の企業が、「PCI DSS」準拠認定取得のためとして、本件商標の登録出願前において、「PCI DSS」準拠支援サービスを提供していることが認められ(甲7の4、5、16、19、28、30)、それらのいずれにおいても、「PCI DSS」支援である旨を表示していることが認められる。
(5)2007年2月から本件商標の登録出願に至るまで間において、我が国内で国際統一基準「PCI DSS」に関するセミナーが頻繁に開催されており、いずれにおいても、その案内等に「PCI DSS」あるいは「PCIDSS」が表示されていたことが認められる(甲8の1ないし32)。
(6)2008年11月18日の「日経BPネット」において、「知っておきたいIT経営用語 PCI DSS」として「PCI DSS」に関する紹介記事が掲載された(甲9の1)ほか、本件商標の登録出願前において、「エンジニアも納得できる“PCI DSS”とは」や「国内企業のPCI DSSへの対応、2011年から本格化の見通し」等の表題のもと、「PCI DSS」に関する紹介記事が掲載されたものである(甲9の2ないし4、7ないし21)。
(7)小結
以上によれば、申立人が策定したクレジットカード情報の保護を目的とする国際統一基準を表す「PCI DSS」(以下「引用標章」という。)は、欧米の主要国をはじめ世界的に広く認知されるに至っており、我が国においても、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表すものとして、情報セキュリティツールの利用者に止まらず、これらツールを開発し、提供する事業者を含む取引者、需要者の間において広く認識されるに至っていたものと認められる。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標と引用標章について
本件商標は、「PCI DSS COMPLIANT ENTITY」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、「PCI」及び「DSS」の各文字は、特定の意味合いを有しないものであり、また、「COMPLIANT」の文字は、「従順な、 素直な」の意味を有し、「ENTITY」の文字は、「(実在する)物、(他から独立した)存在(物)」の意味を有するものであるが、これらの文字の全体からは、特定の意味合いを理解させるものといえないものであって、本件商標は、構成文字全体が常に不可分一体のものとしてのみ観察されるとすべき格別の理由は存しないといえるものである。
そして、本件商標に接した取引者、需要者は、その構成文字がやや冗長なものとして看取されるものであるから、比較的着目されやすい語頭部分の「PCI」又は「PCI DSS」に着目し、その構成中のこれらの語頭部分を抽出、分離し、後半部分の各部分を省略して取引に資する場合も少なくないというのが相当である。
一方、引用標章は、「PCI DSS」の欧文字からなるものであり、申立人の採択に係る標章であって、前記2のとおり、「クレジットカード情報の保護を目的とする国際統一基準」を表す標章として広く認識されているものである。
してみれば、本件商標は、その構成中に申立人の業務に係る役務を表すものとして取引者、需要者の間で広く認識されている「PCI DSS」を含むものと認められる。
(2)本件商標の指定商品と引用標章の役務について
本件商標の指定商品は、主として、コンピュータハードウエアやソフトウエアあるいはそれらが組み込まれた商品であり、特にコンピュータやデータ(情報)のセキュリティに関わりを持つ商品が幅広く存するものであり、さらに、ネット通販等で決済が行われることが少なくない商品を含むものと認められる。
他方、申立人が引用標章を表示して提供する役務も、クレジットカード情報の保護を目的とする国際統一基準に係り、その策定や普及等であって、情報のセキュリティに深く関わりを持つものであることから、両者は、その用途等において関連性の強い商品や役務ということができる。
また、データ(情報)のセキュリティに強い関心を寄せる者を取引者、需要者とするものであるから、取引者、需要者を共通にするものである。
(3)出所の混同について
以上のとおり、本件商標は、その構成中に申立人の業務に係る役務を表すものとして取引者、需要者の間で広く認識されている引用標章を含むものであって、本件商標と引用標章が使用される商品又は役務間の関連性及び取引者、需要者の共通性等を勘案すれば、本件商標は、これをその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者が、その構成中の「PCI DSS」の文字部分から、申立人に係る国際統一基準「PCI DSS」を連想し、当該商品を申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は関連する商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものと認められる。

第4 商標権者の意見
本件商標について、前記第3の取消理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。

第5 当審の判断
本件商標についてした前記第3の取消理由は、妥当なものと認められるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
異議決定日 2014-05-16 
出願番号 商願2012-91984(T2012-91984) 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (W09)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山田 正樹 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 井出 英一郎
田中 亨子
登録日 2013-04-26 
登録番号 商標登録第5577368号(T5577368) 
権利者 富士通株式会社
商標の称呼 ピイシイアイデイエスエスコンプライアントエンティティ、ピイシイアイデイエスエスコンプライアント、ピイシイアイデイエスエス、ピイシイアイ、デイエスエスコンプライアントエンティティ、デイエスエスコンプライアント、デイエスエス、コンプライアントエンティティ、コンプライアント、エンティティ 
代理人 北口 貴大 
代理人 岩瀬 吉和 
代理人 永岡 愛 
代理人 横山 淳一 
代理人 城山 康文 

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