• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 判定 その他 属する(申立て成立) Y11
管理番号 1291793 
判定請求番号 判定2014-600016 
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2014-10-31 
種別 判定 
2014-05-09 
確定日 2014-09-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第4895484号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 商品「家庭用電気瞬間湯沸器」に使用するイ号標章は、登録第4895484号商標の商標権の効力の範囲に属する。
理由 1 本件商標
本件登録第4895484号商標(以下「本件商標」という。)は、「エマックス」の片仮名を標準文字で表してなり、平成17年1月25日に登録出願、第11類「家庭用電気瞬間湯沸器,その他の家庭用電熱用品類」を指定商品として同年9月16日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

2 イ号標章
被請求人が商品「家庭用電気瞬間湯沸器」について使用する標章(以下「イ号標章」という。)は、別掲のとおりの構成からなるものである。

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
(1)判定請求の必要性
請求人は、本件商標の商標権者であり、本件商標を付した家庭用電気瞬間湯沸器を輸入し販売し、該行為が商標権侵害とならないよう、本件商標について登録出願を行い、商標権を取得した。該商標権は、本来権利者となるべき米国エマックス社に返還することを前提に交渉をしている。
このような状況において、被請求人が本件商標を付した商品の輸入代理店である旨を主張し、本件商標に係る商標権の存在を無視して商品の販売を継続し、請求人の営業を妨害しているため、本件商標に係る商標権の効力範囲について判定を求めるものである。
(2)イ号標章について
被請求人は、商品「家庭用電気瞬間湯沸器」について、上段に白地に青色の欧文字「EemaX」を「ema」部分に下線を引いた態様で書し、下段には青地に片仮名「エマックス」を上段と等幅となるよう白抜きで書し、これらを二段に罫線で囲んでまとまりよく配置したイ号標章を使用している(甲第2号証)。
被請求人は、イ号標章が付された家庭用電気瞬間湯沸器をインターネットサイトで宣伝広告し、継続して販売している。
(3)本件商標とイ号標章の類否について
ア 本件商標は、「エマックス」の片仮名を標準文字で表した態様からなり、その構成文字から「エマックス」の称呼が自然に生ずるものであり、また、「エマックス」の語は、辞書等に掲載されていない造語であるから、本件商標からは特段の観念は生じない。
イ イ号標章は、上記(2)のとおりの構成からなり、その構成中の片仮名部分から「エマックス」の称呼が自然に生ずるものであり、また、「EemaX」及び「エマックス」の語は辞書等に掲載されていない造語であるから、イ号標章からは特段の観念は生じない。
ウ 本件商標は、イ号標章の片仮名部分が一致し、欧文字の構成要素と商標全体を囲む枠を有しないことにおいてイ号標章と相違する。本件商標とイ号標章との一致点は、これに接する需要者・取引者に対して他の相違点を凌駕する程に類似する印象を与えるというのが自然であるから、両者は外観において類似する。
本件商標とイ号標章とは、「エマックス」の称呼を共通にすることから、称呼において同一である。
本件商標とイ号標章とは、共に特段の観念を生じない造語であるから、観念において比較し得ない。
したがって、本件商標とイ号標章は、外観において類似し、称呼が同一であることから、観念が比較し得ないとしても、両者は彼此混同を生じ得る類似の商標である。
エ 被請求人は、上記(2)のとおり、家庭用電気瞬間湯沸器の販売を業とし、被請求人が提供するインターネットサイトにおいて、イ号標章を使用して、該商品の紹介・宣伝及び販売業務を行っており、かかる使用態様は、商標法第2条第3項第8号に規定する商標の使用に該当するものといえる。
オ 以上のとおり、本件商標とイ号標章は相互に類似するため出所混同を生ずる蓋然性の高い商標であり、また、被請求人はイ号標章を本件商標の指定商品と同一の商品「家庭用電気瞬間湯沸器」に使用しているから、イ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属すると評価されるものである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、本件判定請求を却下するとの判定を求めるとともに、予備的に、結論同旨の判定を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
(1)イ号標章について
ア 本件商標の登録出願の日である平成17年1月25日時点において、被請求人が、その販売する電子瞬間湯沸器に付していた商品表示「エマックス」、「EemaX」、「Eemax」(いずれも「エマックス」の称呼を生ずる。前2標章を構成要素として含むものが本件イ号標章であり、以下、これらを併せて「被請求人使用標章」という場合がある。)は、被請求人が多くの資金を投下してなした宣伝広告活動、これによる販売実績と市場浸透性並びにその波及効果等により、既に需要者の間において周知であった。
イ 被請求人は、平成6年11月1日、米国コネティカット州モンロー、ペッパー街所在の米国エマックス社(以下「米国エマックス社」という。)との間で、同社製電子瞬間湯沸器「EemaX」の日本国内における独占販売代理店契約を締結し、同社から当該電子瞬間湯沸器の購入及び日本国内における顧客への販売を目的としたすべての行為に関する一切の権利を委託された。なお、当該電子瞬間湯沸器は、断熱放射線材による特殊ヒーターを内蔵し、ガスを使用せず、瞬時に温水を給湯することができる電子タイプの湯沸器である。
ウ 被請求人は、上記契約の締結の段階から現在に至るまで、被請求人使用標章を用いた米国エマックス社の電子瞬間湯沸器(以下「被請求人商品」という。)について、新聞各紙向けの商品紹介、広告記事の掲載、各種展示会への出展等の大々的な宣伝広告活動をなしてきており、その結果、平成12年7月までに、同種他社製品との比較において、他に例をみないほどの販売実績を達成してきた。
エ 以上からすれば、被請求人使用標章(イ号標章を含む。)が、その称呼とともに、需要者の間において、遅くとも平成12年7月時点までに広知性、周知性を備えていたことは明らかである。
(2)請求人との紛争について
ア 被請求人と請求人代表者とは、請求人の設立前である平成15年秋以降、米国エマックス社製の電子瞬間湯沸器「エマックス」の日本国内仕様品に関する販売代理店契約の交渉を行っていたが、請求人は、その交渉が決裂する過程における同年11月14日に、被請求人に対する事前相談等なく、その商号を「株式会社エマックス東京」として設立されたものである。
イ 請求人は、上記交渉が決裂した後、請求人独自の方法で、被請求人商品に類似の商品を仕入れ、これに「エマックス」、「EemaX」又は「Eemax」の表示を付して販売を開始し、以後、これを継続した。なお、請求人が販売した前記商品に同梱された取扱説明書は、被請求人が被請求人商品のユーザー向けに同梱していた取扱説明書を模倣して作成されたものであった。
ウ 上記の実情等により、被請求人と請求人の間では電子瞬間湯沸器に係る販売代理店契約を築くことができないことが確定的になり、平成16年2月頃には、請求人が電子瞬間湯沸器に「エマックス」等の表示を使用することについて両者の間で紛争が生じ、被請求人は請求人に対し、前記表示の使用を禁止する旨催告し続けていたところ、このような経過のなか、請求人は、電子瞬間湯沸器に「エマックス」等の表示を付して販売する行為をなおも続け、同17年1月25日に本件商標の登録出願をなし、さらに、同22年3月23日に重ねて同一の称呼を生ずる商標の登録出願(登録第5366316号商標)をなした。
エ 請求人による本件商標の登録出願には不正の目的不正競争の目的ないし被請求人への害意が優に認められる。また、被請求人を原告、請求人を被告とした不正競争防止法による差止等請求事件(乙第1号証(大分地方裁判所 平成21年(ワ)第783号 平成22年12月22日判決言渡))においても、本件商標は「被告が、原告からエマックス社製の電子瞬間湯沸器の販売代理店契約の締結に向けて話し合い、また紛争も生じていた後の出願に係るものであり、・・・これらの商標権の存在は原告の本訴請求の当否を判断するに当たっての妨げとなるものではない。」と判示されている。
オ 被請求人使用標章と本件商標は、いずれも同一の商品であって、電子瞬間湯沸器に付されていることは当事者間において明らかであり、両表示は混同のおそれがあるところ、現に、請求人が販売した電子瞬間湯沸器の不備について、請求人から購入した顧客からのクレームが被請求人に相次いで寄せられている実情がある。
(3)本件商標の無効理由について
本件商標は、前記(1)及び(2)のとおり、その登録時点において、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に反することにより商標登録を受けることができないものであったにもかかわらず登録された無効な商標であり、かつ、請求人が本件商標を出願した目的には、不正競争の目的が認められるところ、請求人はこれらの経緯を殊更に秘し、請求人が正当な商標権者であるからその保護を求めたいとするかのごとく、本件判定請求を申し立てている。

5 当審の判断
本件商標は、前記1のとおり、「エマックス」の片仮名を標準文字で表してなり、その構成文字に相応して、「エマックス」の称呼が生ずるものである。
また、「エマックス」の語は、辞書等に載録されている語ではなく、一種の造語からなるものとして認識し把握されるものであるから、本件商標は、既成の親しまれた観念を有するものとはいえない。
他方、イ号標章は、別掲のとおり、青色で表された横長矩形からなり、その矩形内上部5分の3程を白抜きし、「EemaX」の欧文字を「ema」部分に下線を引いた態様で大きく青色で書し、その下部の青地に白抜きで「エマックス」の片仮名を欧文字よりもやや小さいものの顕著に書してなるものであり、その構成上、片仮名部分に着目して取引に資される場合も少なくないものといえる。
また、イ号標章は、その構成各文字が辞書等に載録されている語ではなく、一種の造語からなるものとして認識し把握されるものであり、既成の親しまれた観念を有するものとはいえない。
そして、イ号標章中の「エマックス」の片仮名部分から「エマックス」の称呼が生じること明らかであるところ、一般に、欧文字と片仮名からなる標章において、片仮名部分が欧文字部分の称呼を特定すべき役割を果たしているものと無理なく認識し得る場合は、片仮名部分から生じる称呼が当該標章より生じる称呼とみるのが自然であり、イ号標章も同様に、「エマックス」の称呼を生じるものというべきである。
そこで、本件商標とイ号標章の類否について検討するに、本件商標とイ号標章は、観念において比較することができないとしても、「エマックス」の称呼を共通にするものであり、かつ、イ号標章の要部となり得る「エマックス」の片仮名部分は本件商標と同一であることからすれば、本件商標とイ号標章とは類似の標章というべきである。
そして、イ号標章を使用する被請求人商品(電子瞬間湯沸器)は、「家庭用電気瞬間湯沸器」の範ちゅうに属する商品といえるものであり、該商品は、本件商標の指定商品「家庭用電気瞬間湯沸器,その他の家庭用電熱用品類」と同一又は類似の商品である。
したがって、商品「家庭用電気瞬間湯沸器」について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力に属するものである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 別掲 イ号標章(色彩については原本参照)

判定日 2014-08-26 
出願番号 商願2005-5101(T2005-5101) 
審決分類 T 1 2・ 9- YA (Y11)
最終処分 成立  
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 根岸 克弘
酒井 福造
登録日 2005-09-16 
登録番号 商標登録第4895484号(T4895484) 
商標の称呼 エマックス 
代理人 末岡 秀文 
代理人 広瀬 文彦 
代理人 上野 貴士 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ