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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2013890003 審決 商標
無効2013890066 審決 商標
異議2013900218 審決 商標
平成23行ケ10399審決取消請求事件 判例 商標
無効2012890092 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Y0928
管理番号 1291685 
審判番号 無効2012-890075 
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-09-07 
確定日 2014-09-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第4700298号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件商標登録の無効の審判に係る登録第4700298号商標(以下「本件商標」という。)は、「遠山の金さん」の文字を標準文字により表してなり、平成14年11月12日に登録出願、第9類「耳栓,加工ガラス(建築用のものを除く。),アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,オゾン発生器,電解槽,検卵器,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,自動販売機,ガソリンステーション用装置,駐車場用硬貨作動式ゲート,救命用具,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,保安用ヘルメット,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,潜水用機械器具,業務用テレビゲーム機,電動式扉自動開閉装置,乗物運転技能訓練用シミュレーター,運動技能訓練用シミュレーター,理化学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極,消防艇,ロケット,消防車,自動車用シガーライター,事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,防火被服,眼鏡,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,パチンコ型スロットマシン,その他のスロットマシン,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,運動用保護ヘルメット,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,計算尺」及び第28類「スキーワックス,遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く。),愛玩動物用おもちゃ,おもちゃ,人形,囲碁用具,歌がるた,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具,釣り具,昆虫採集用具」を指定商品として、同15年6月20日に登録査定、同年8月15日に設定登録されたものである。

第2 請求人らの主張
請求人らは、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第54号証を提出した。
1 本件商標を無効とすべき理由
本件商標は、「遠山の金さん」の文字を書してなるところ、これは、我が国で周知・著名な歴史上の人物である遠山景元(通称は金四郎。以下「遠山金四郎」ということがある。)を容易に認識させるものであり、このようなものを商取引に使用する商標として、一民間企業である被請求人に商標登録を認めることは妥当でなく、本件商標は、遠山金四郎の著名性に便乗する行為であって、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するおそれがある商標に該当するものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号(以下、単に「7号」ということがある。)に該当する。
(1)商標法第4条第1項第7号の意義
商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、商標の構成自体が、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合が含まれる(平成18年9月20日知財高裁判決)。
そして、他人が築きあげた著名性を有する標章と同一又は類似の商標であって、その著名性にフリーライドすることや、その著名性や名声を希釈、毀損することなど不正の目的をもって出願したものは、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するというべきである(不服2006-18265、不服2006-18264)。
特に、「周知・著名な歴史上の人物名は、その人物の名声により、強い顧客吸引力を有するものと認められ、当該人物が商品又は役務と密接な関係にある場合はもちろん、商品又は役務との関係が希薄な場合であっても、当該地域においては強い顧客吸引力を発揮するものと考えられるから、周知・著名な歴史上の人物名を商標として使用したいとする者も、少なからずいると考えられる。他方、周知・著名な歴史上の人物であるが故に敬愛の情をもって親しまれているからこそ、特定個人による商標登録に対しては、国民又は地域住民全体の反発も否定できないところである。したがって、このような諸事情等を考慮すれば、周知・著名な歴史上の人物名についての一私人による商標登録に対しては、公正な取引秩序を乱し、公序良俗を害するおそれがあるものと判断するのが相当である」(不服2007-29500)。
(2)本件商標が遠山金四郎の人物名であること
本件商標は、「遠山の金さん」の文字を標準文字により表してなるところ、当該文字は、遠山金四郎の人物名として広く認識されている。
例えば、広辞苑(第四版)や日本語大辞典(第二版)の「遠山金四郎」の項に、遠山金四郎が「遠山の金さん」として親しまれている旨記載されている(甲第1号証及び甲第2号証)。これに関し、本件商標を引用商標として請求人の登録商標を無効とした審決に係る審決取消請求事件の判決(平成23年2月28日知財高裁判決)も、遠山金四郎が、「遠山の金さん」などと称呼されて大衆に親しまれている旨判示している(甲第3号証9頁)。
(3)遠山金四郎の人物名の商標登録を認めるべきでないこと
遠山金四郎は、周知・著名な歴史上の人物であり、その人物名は、同人の名声により強い顧客吸引力を備え、誰もがそれを商標として使用をすることを欲する、いわば万人の共有財産である。
それゆえ、単に先願者であるということだけで、一民間企業である被請求人が指定商品について独占排他的に遠山金四郎の人物名を使用することを認めることは、公正な取引秩序を乱すおそれがある上、遠山金四郎の名声を希釈・毀損し、同人を敬愛する国民又は地域住民の社会的感情を毀損し、さらに、同人の名称を利用した観光振興や地域興し等の公益的施策を希釈・阻害するおそれがある。
ア 遠山金四郎の周知・著名性
遠山金四郎は、江戸時代後期に江戸町奉行等を歴任した人物であるが、その名声は、生前すでに広く知られていた。このことは、例えば、遠山金四郎が死去した翌年に、遠山金四郎について、「・・・市民は服従し、そのころの芙蓉の間のお役人の一枚看板と賞された。また、遠山の金さんと尊んだ」と書かれたこと(甲第4号証20頁)に現れている。
また、広辞苑(第四版)や日本語大辞典(第二版)の「遠山金四郎」の項に、遠山金四郎が下情に通じた名奉行とうたわれた旨の記載があるのみならず(甲第1号証及び甲第2号証)、同人を取り上げた書籍、テレビ番組等が今日においても多数存在すること、さらに、インターネット情報(「財団法人まちみらい千代田のウェブサイト」(甲第5号証及び甲第6号証)や後記イ、ウに引用した甲第27号証ないし甲第38号証)でも同人に関する多数の記事や記載があることから、遠山金四郎は、今日においても周知・著名であるといえる(同人を取り上げた近時の書籍として、前掲の甲第4号証のほか、「実説 遠山の金さん 名奉行遠山左衛門尉景元の生涯」(1996年8月)、「遠山金四郎」(2008年12月)、「捏造されたヒーロー、遠山金四郎」(2010年2月)、「遠山金四郎の時代」(1992年9月)等があり(甲第7号証)、同人を取り上げた近時のテレビ番組として、1995年4月9日に日本テレビ系列で放送された「知ってるつもり?!」(甲第8号証)、2009年10月28日にNHKで放送された「歴史秘話ヒストリア・一件落着!?桜吹雪伝説?遠山の金さん きまじめ官僚の正体?」(甲第9号証)等がある。
以上によれば、遠山金四郎は、生前から今日に至るまで、その名声が我が国で広く知られており、周知・著名な歴史上の人物であることは明白である。
イ 遠山金四郎に対する国民又は地域住民の認識
遠山金四郎に関連する旧跡、文化財等が全国各地に残されており、地方公共団体等によって保存・管理等され、同人の功績等を称える記念碑が建てられている。
例えば、遠山金四郎を描いた「遠山金四郎景元画像」が千葉県いすみ市の市指定文化財として保存されており(甲第10号証)、東京都豊島区巣鴨にある遠山景元墓が東京都指定旧跡として保存されている(甲第11号証)。
また、上記の遠山景元墓には、「下情に通じた江戸時代屈指の名奉行といわれ、遠山の金さんとして様々な伝説がある」などと書かれた碑(甲第11号証)が、東京都八重洲の北町奉行所跡には、「『いれずみ奉行』として名高い遠山左衛門尉景元(遠山金四郎)は天保十一年(一八四〇)三月から三年の間北町奉行の職にあった。」などの碑文の彫られた碑(甲第12号証)が、遠山金四郎の知行地であったといわれる千葉県いすみ市岬町岩熊地区には、「景元は才幹あり、小普請奉行・作事奉行・勘定奉行・北町奉行・大目付・南町奉行を歴任して世に名奉行として知られる。特に天保の改革に際し、事績あがる。」という碑文の彫られた碑(甲第13号証)がそれぞれ建てられており、さらに、東京都墨田区菊川の遠山金四郎の屋敷跡付近には、説明板・モニュメント(甲第14号証及び甲第15号証)が建てられている。なお、当該モニュメントは、都営新宿線菊川駅のスタンプの図柄にも用いられている(甲第16号証)。
以上によれば、遠山金四郎は、そのゆかりの地において、郷土の偉人として敬愛の念をもって親しまれている実情があるといえる。
加えて、遠山金四郎については、同人を題材とする講談、歌舞伎、小説、映画等の大衆娯楽作品が無数に存在する(甲第17号証ないし甲第26号証)。
このように、遠山金四郎を題材とする大衆娯楽作品が無数に存在することの背景には、国民一般が、遠山金四郎に対して親しみと敬愛の念を持ち続けてきた事実がある。
これに関し、フリー百科事典ウィキペディアのウェブサイトの「遠山景元」の項目には、「当時から裁判上手だったという評判はあり、名裁判官のイメージの元になったエピソードも存在する。・・・景元のこうした『能吏中の能吏』としての名声は、時代が江戸から明治に移っても旧幕臣をはじめとした人々の記憶に残り、景元を主人公とした講談を生み、映画やテレビの時代劇へ継承される大きな要因となったと言えよう」との記載がある(甲第7号証)。
ウ 遠山金四郎の名称の利用状況
以下の(ア)ないし(カ)に一例を挙げたように、各地の地方公共団体・観光協会等は、インターネット上で、遠山金四郎の名称を利用して同人に関連する旧跡や名所を観光スポットとして紹介するなど、遠山金四郎の名称を観光振興や地域興しに役立てようとしている。
(ア)東京都豊島区等は、遠山金四郎の名称を利用して遠山景元墓を紹介している(甲第27号証ないし甲第30号証)。
(イ)東京都墨田区等は、遠山金四郎の名称を利用して遠山景元の屋敷跡を紹介している(甲第31号証ないし甲第33号証)。
(ウ)東京都港区は、遠山金四郎の名称を利用して遠山金四郎の屋敷跡を紹介している(甲第34号証)。
(エ)特定非営利活動法人東京中央ネットは、遠山金四郎の名称を利用して北町奉行所跡を紹介している(甲第35号証)。
(オ)岐阜県恵那市明智町(日本大正村)は、遠山金四郎の名称を利用して「遠山家累代の墓所」及び「遠山桜」を紹介している(甲第36号証及び甲第37号証)。
(カ)遠山郷観光協会は、遠山金四郎の名称を利用したイベント(遠山金四郎プロジェクト)に関する情報を紹介している(甲第38号証)。
以上のとおり、遠山金四郎の名称は、全国各地で観光振興や地域興しのために利用されている。
エ 遠山金四郎の名称の利用状況と本件商標の指定商品との関係
一般に歴史上の人物の生誕地やゆかりの地においては、その地の特産品や土産物に、その者の名称や肖像が表示されて、観光客を対象に販売されているところ、本件商標の指定商品中の商品には、「おもちゃ」、「人形」など、観光地の特産品や土産物となり得る商品が含まれている。
したがって、遠山金四郎の名称は、本件商標の指定商品を取り扱う者によって使用される可能性が高い。
なお、被請求人の著作権管理窓口業務担当者は、被請求人が「遠山の金さん」といった名称を用いたTシャツの作成を第三者に許諾するなど、「遠山の金さん」につきブランド管理を行ってきた旨陳述していることから(甲第39号証5頁)、第三者が「遠山の金さん」を用いた特産品・土産物の販売を行った場合、それがTシャツのように本件商標の指定商品に含まれない商品であったとしても、被請求人は、当該販売行為を中止させる可能性が高いといえる。
オ 遠山金四郎と被請求人の関係
被請求人は、遠山金四郎を題材とする映画やテレビドラマを制作したことがあることを除き、遠山金四郎と何らの関係のない一民間企業である。被請求人が、本件商標の出願や登録にあたって、遠山金四郎の遺族等の承諾を得たという事情もうかがえない。
カ 出願の経緯・目的・理由
上記オのように、被請求人は、遠山金四郎と特段の関係のない一民間企業であるから、遠山金四郎の名声、評価を維持、管理するなどの公益に資するために本件商標の登録を取得したのではなく、私的な利益を追求するために本件商標の登録を受けたことは明白である。
そして、上記アないしウのように、遠山金四郎は、周知・著名かつ国民が親しみや敬愛の念を持つ人物である。加えて、「遠山の金さん」の文字は、同人を主人公とする大衆娯楽作品において、主人公のキャラクターの愛称として繰り返し使用されてきた。それゆえ、本件商標の出願当時、「遠山の金さん」の文字には、遠山金四郎の名声に基づく信用力・顧客吸引力が化体していたことが明白であり、被請求人は、これに便乗し、指定商品についての使用の独占を図る目的で本件商標を出願したものと考えられる。
しかも、本件商標は、第9類及び第28類において広範囲にわたる商品を指定しているところ、被請求人は、映画の制作、配給等を業とする株式会社であるから、本件商標の指定商品のほとんどすべてについて業務をなすものではない。それゆえ、被請求人には、本件商標を自ら使用する意思がないことは明らかであり、本件商標は、自ら使用する意思のない商標登録を原則として認めない商標法の趣旨(同法第3条第1項柱書参照)に反するものである。しかるに、商標登録の更新が容易に認められており、その権利行使が半永久的に継続されることになることを考慮すると、かかる商標登録を是認する必要性は低いというべきである。
(4)まとめ
以上によれば、遠山金四郎が周知・著名な歴史上の人物であり、その人物名は、同人の名声により強い顧客吸引力を備え、公益的施策に利用されており、誰もがそれを商標として使用をすることを欲するものであることは明らかである。
したがって、被請求人が、本件商標をその指定商品について使用することは、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第7号該当性の判断基準について
被請求人は、(a)商標の構成自体に公序良俗違反のない商標が7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠く場合に限られること、(b)7号に該当するか否かは、本件商標の登録査定時を基準に判断すべきであることを主張する。
しかしながら、商標法上、商標登録後に7号に該当するものになったことが無効事由とされているから、7号に該当するのは、登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠く場合に限られない。また、商標登録後に無効事由が生じた場合には、その無効事由の生じた時点が基準時であり、基準時が登録査定時に限られるわけではない。
これに関し、上記(a)と同様の主張がなされた事案について、近時の裁判例(平成24年11月15日知財高裁判決)は、「商標法46条1項5号は,商標登録がされた後,当該登録商標が同法4条1項7号に掲げる商標に該当するものとなったことを登録無効事由として規定しているところ,商標登録後であっても,当該商標を指定商品又は指定役務について使用することが、社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳的観念に反するなどの特段の事情が生じた場合には,当該商標は同法4条1項7号に該当すると解すべき余地があるといえる」と判示し、商標登録後に生じた事由により7号に該当し得るとした。
また、被請求人は、本件審判の請求の目的は、パチンコ器具について「名奉行金さん」という商標の使用を正当化し、本件商標の登録を排除することにあり、請求人らは、7号を私的領域にまで拡大解釈しようとするものである旨主張する。
しかしながら、請求人らは、被請求人が本件商標をその指定商品について使用することは、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反すると主張しているのであり、自らの商標の使用を正当化する目的などない。
このことは、「名奉行金さん」が使用されたパチンコ器具として、被請求人が指摘する乙第49号証に記載のパチンコ機(「CR松方弘樹の名奉行金さん」)は、平成22年3月にすべての販売活動が終了しており(甲第40号証)、その後、請求人らがパチンコ器具に「名奉行金さん」の文字を使用していないことからも明らかである。
したがって、7号を私的領域にまで拡大解釈するものであるという被請求人の主張には、理由がない。
(2)歴史上の人物名からなる商標の7号該当性について
被請求人は、(a)本件商標の登録査定時の需要者、取引者には、歴史上の人物名からなる商標であることで、公序良俗を害するおそれがあるという認識がなかったこと(b)本件商標の登録査定時に、平成21年10月21日付け商標審査便覧(42.107.04)「歴史上の人物名(周知・著名な故人の人物名)からなる商標登録出願の取扱いについて」が未公表であったことを主張する。
しかしながら、上記(1)で述べたように、7号該当性の基準時は、登録査定時に限定されないから、いずれも本件商標の7号該当性を否定する理由にならない。
仮に、上記(a)や(b)に基づいて、本件商標の登録査定時における7号該当性を否定し得るとしても、審判請求書の「本件商標を無効とすべき理由」において主張した事実によれば、商標登録後、遅くとも上記商標審査便覧が公表された平成21年10月21日までに7号に該当する状況が生じたことは否定し得ず、本件商標は、商標法第46条第1項第5号により、無効となるというべきである。
また、仮に、被請求人の主張するように、7号該当性について、登録査定時を基準に判断する必要があるとしても、上記(a)や(b)は、いずれも本件商標の7号該当性を否定する理由にならない。
本件において、被請求人は、遠山金四郎が国民に広く認識されているのは「金さん」テレビシリーズがあったからこそである、などと主張しているが、仮に、「金さん」テレビシリーズが遠山金四郎の周知著名性に何らか寄与したと解する余地があるとしても、一私人たる被請求人による「遠山の金さん」の商標登録・使用は、7号に該当することとなる。
(3)「遠山の金さん」に関する被請求人の主張について
被請求人は、主に「金さん」テレビシリーズを商品化する意図で本件商標を登録出願したこと、遠山金四郎が純粋に歴史上の人物としてではなく、「金さん」テレビシリーズの主人公として認知されていること、「遠山の金さん」が公益的施策に利用されていないことを理由に、本件商標は、7号に該当しないと主張するが、いずれも7号該当性を否定する理由にならない。
ア 出願経緯に関する被請求人の主張が理由にならないこと
(ア)「金さん」テレビシリーズが被請求人の創作した空想上のキャラクターないし物語であるとすることについて
「基本パターン(基本的な筋立て)」が被請求人の創作に係る「金さん」テレビシリーズにおいて確立されたキャラクターないし物語であるという被請求人の主張は、全くの誤りであって、そのようなキャラクターないし物語は、遠山金四郎を題材とする歌舞伎、文献、映画等を通じて作り上げられた既存のものにすぎない。このことは、遠山金四郎を題材とした時代劇が、講談・歌舞伎で基本的な物語のパターンが完成し、陣出達朗の時代小説「遠山の金さん」シリーズなどで普及したこと(乙第8号証)、「金さん」テレビシリーズのプロデューサーを務めた亀岡氏が、被請求人の「遠山の金さん」シリーズの原作者が陣出達朗とされており、被請求人の片岡千恵蔵主演映画は、陣出達朗の書籍と同じような内容で脚本が作られていたようである旨を陳述(乙第31号証の2)していることからも明らかである。
したがって、被請求人が遠山金四郎に係るキャラクターないし物語を創作したとの主張は、誤りであり、出願経緯に不正な目的がなかったという被請求人の主張は、理由にならない。
(イ)「金さん」テレビシリーズに基づく顧客吸引力について
「遠山の金さん」は、「金さん」テレビシリーズの創作・放映前から、歌舞伎狂言や講釈等を通じて、遠山金四郎の人物名として一般に広く定着しており、遠山金四郎の名声に基づく信用力・顧客吸引力を有していた(甲第48号証)。
仮に、「金さん」テレビシリーズの存在、人気が「遠山の金さん」の顧客吸引力に何らかの寄与をしたとしても、かかる寄与は、ごく部分的なものにすぎない。
したがって、被請求人が否定し得るのは、せいぜい、「遠山の金さん」の有する信用力・顧客吸引力のうち、「金さん」テレビシリーズの存在、人気に起因する部分に便乗する目的のみであり、「遠山の金さん」の有する信用力・顧客吸引力に便乗する目的を全部否定することはできない。
(ウ)商品化の意図について
被請求人に「金さん」テレビシリーズを商品化する意図があったとしても、本件商標は、「遠山の金さん」を標準文字で表したものであり、外観、称呼、観念のいずれにも、「金さん」テレビシリーズとの結びつきのみに限定するような要素が含まれない。
本件商標は、その構成に何ら特殊性がないため、被請求人が指定商品について、本件商標に基づき主張することができる禁止権の範囲は、「金さん」テレビシリーズのタイトルやキャラクターを表す場合に限定されず、歴史上の人物としての遠山金四郎を表す場合に及ぶものであり、現に、被請求人は、本件商標の有効性が争点となっている現在係属中の訴訟において、「本件商標から歴史上の人物である『遠山金四郎』、及び時代劇等で演じられる『名奉行として知られている遠山金四郎』の観念が生じる」(甲第49号証)と述べ、本件商標が歴史上の人物としての遠山金四郎を表すことを認めている。
したがって、被請求人は、本件商標の登録出願時に、遠山金四郎の名声に基づく信用力・顧客吸引力に便乗し、指定商品についての使用の独占を図るという不正の目的があったことを否定できない。
イ 遠山金四郎が純粋に歴史上の人物として十分に認知されていないという被請求人の主張が理由にならないこと
被請求人は、甲第7号証、甲第28号証及び甲第34号証における遠山金四郎の説明の中に「テレビドラマや映画でお馴染み」等の記載があることの事情に照らすと、遠山金四郎が実際にどのような人物で、何をした人であるかについて広く認識、理解されているか疑問であるとして、同人の周知著名性が不十分であると主張するが、歴史上の人物名からなる商標について、当該人物の周知著名性を考慮するのは、「その歴史上の人物名の名声、評価、顧客吸引力の高さに関する貴重な情報であるのはもちろん、さらには,出願人の認識(歴史上の人物名の名声等を承知していたか否か、便乗を目的としていたか等)を判断するための情報の一つにもなり得るものと考えられる」からであり(商標審査便覧(42.107.04))、「歴史上の人物名の名声、評価、顧客吸引力」は、当該人物が実際にどのような人物で、何をした人であるか等、当該人物の実像のみによって生じるわけではなく、逸話、伝説やフィクション作品に由来する当該人物に係る虚像によっても生じるのであるから、周知著名性を判断する際に、当該人物が実際にどのような人物で、何をした人であるか等、当該人物の実像が広く認識、理解されているか否かを考慮することは必要ないと解するべきである。
このことは、過去の審決で、実際にどのような人物で何をした人であるかについて、国民に広く知られているとはいい難い「二宮尊徳」や「篤姫」について、周知著名性が認められていることからも明らかであり、また、周知著名な歴史上の人物として被請求人が挙げる、水戸黄門(徳川光圀)や坂本龍馬も、主に講談や歴史小説を通じて国民に知られたものであり、実像が国民に広く認識、理解されているかは疑わしい。
したがって、仮に、遠山金四郎が実際にどのような人物で何をした人であるかが広く認識、理解されていないとしても、遠山金四郎の周知著名性を否定する理由にはならない。
ウ 本件商標から「金さん」テレビシリーズに関する認識が生じるという被請求人の主張が理由にならないこと
被請求人が指摘する遠山金四郎に関する説明に「テレビドラマや映画でお馴染みの名奉行『遠山の金さん』」等の記載がある事実は、歴史上の人物としての遠山金四郎とテレビドラマや映画に登場する遠山金四郎とが、一般には、明確に区別されずに認識されていることを示しているため、仮に、「遠山の金さん」から「金さん」テレビシリーズのタイトル又は主人公が認識されたとしても、遠山金四郎の認識が生じたことに変わりはない。
したがって、歴史上の人物である遠山金四郎よりも、「金さん」テレビシリーズのタイトル又はその主人公として認識されるという、被請求人の主張は成り立たない。
なお、「遠山の金さん」というタイトルのテレビドラマや時代劇は、被請求人以外の業者により制作放映されたものが多数存在し、また、遠山金四郎の人物名として「遠山の金さん」が広く知られていることを考えると、仮に「遠山の金さん」からテレビドラマや時代劇の主人公を想起することがある場合、遠山金四郎を主人公とするテレビドラマや時代劇を想起することが考えられるところ、かかるテレビドラマや時代劇には、被請求人以外の業者の制作に係るものが無数に存在する(甲第53号証及び甲第54号証)。
したがって、「遠山の金さん」から、テレビドラマや時代劇のタイトル又は主人公を想起することがあるとしても、それが「金さん」テレビシリーズとは限らない。
エ 遠山金四郎の名称を活用した観光振興や地域興しなどの施策の遂行を阻害するおそれがあること
(ア)「遠山の金さん」は、遠山金四郎として広く知られた人物名であるから、「遠山の金さん」以外の遠山金四郎の人物名を利用した公益的な施策等の遂行を阻害し、公共的利益を損なう危険性が多分に存在するため、「遠山の金さん」に限らず、遠山金四郎の人物名全般の利用状況を考慮することが必要である。
(イ)請求人らが挙げる利用例(甲第27号証ないし甲第38号証)は、利用の主体が、観光協会や区の観光課・振興課など観光振興や地域興しを行う団体・部署である上、遠山金四郎が記載されている文書・ウェブページが観光地や観光ルートの案内など観光振興や地域興しを目的とするものであることから、観光振興や地域興しのための利用であることは明らかである。
(ウ)被請求人は、遠山金四郎の利用例と本件商標の指定商品との間に関係がないことを主張しているが、仮に、指定商品における使用の実例が見られないとしても、指定商品における使用の可能性があるから、遠山金四郎の人物名を利用した公益的な施策などの遂行を阻害し、公共的利益を損なうことがあり得るのであり、商標法第4条第1項第7号該当性を否定することはできない。
(4)むすび
よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効とすべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第49号証(枝番を含む。)を提出した。
1 被請求人の主張
(1)はじめに
被請求人は、映画の製作及び配給等を業とする株式会社であって(乙第1号証)、「笛吹童子シリーズ」、「旗本退屈男シリーズ」等の劇場用映画に加え、「銭型平次シリーズ」や「桃太郎侍シリーズ」、「暴れん坊将軍シリーズ」等のテレビ放映用ドラマを数多く制作しており、時代劇の制作において極めて代表的な存在である(乙第2号証ないし乙第7号証)ところ、その時代劇の最も代表的な作品の一つが「遠山の金さん」シリーズである(乙第8号証)。
被請求人は、1950年代から遠山金四郎景元をモデルとした主人公が活躍する劇場用映画を合計20本制作し、また、1970年から現在に至るまで、「遠山の金さん」シリーズとしてテレビ放映用番組を合計7シリーズ(以下、「『金さん』テレビシリーズ」という。)にわたって制作したところ、「金さん」テレビシリーズの各作品は、いずれも高い人気を獲得した(乙第9号証ないし乙第27号証)。
そして、被請求人は、30年を超える期間にわたり全国的にテレビ放映され、人気テレビ番組となった「金さん」テレビシリーズの名称からなる商標として、「遠山の金さん」の文字からなる商標を、第9類及び第28類に属する複数の商品を指定商品として、2002年11月12日に登録出願したところ、同商標は、2003年8月15日に登録された(乙第28号証の1)。
なお、請求人(株式会社サンセイアールアンドディ)は、「名奉行金さん」の文字からなる商標について、第28類の「遊戯用器具」を指定商品として商標登録を受けたが、これに対して、被請求人が登録無効審判を請求した結果、「名奉行金さん」からなる商標は、本件商標に類似する商標であって、同一又は類似の商品に使用されるものであるから商標法第4条第1項第11号に該当するという理由で無効審決がされ、当該審決は確定した(乙第28号証の2)。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 商標法は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」について、商標登録を受けることができず、また、無効理由に該当する旨定めている。7号が、本来、商標を構成する「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」(標章)それ自体が公の秩序又は善良な風俗に反するような場合に、そのような商標について、登録商標による権利を付与しないことを目的として設けられた規定であることはいうまでもなく、本件商標を構成する「遠山の金さん」の文字それ自体が公の秩序又は善良な風俗に反するようなものではないことも明らかである。
そして、その構成自体に公序良俗違反のない商標について7号を拡大解釈することは、特段の事情がある場合を除き、許されない(乙第29号証及び乙第30号証)。
イ 被請求人は、昭和25年ごろから遠山金四郎景元をモデルとした主人公が活躍する映画を多数制作、配給し、さらに、昭和45年から30年以上の長期間にわたって同じく遠山金四郎景元をモデルとした主人公が活躍する合計750話を超えるテレビドラマを創作・放映し、当該テレビドラマについて、「遠山の金さん捕物帳」、「ご存知遠山の金さん」、「ご存知金さん捕物帳」、「遠山の金さん」、「名奉行 遠山の金さん」など、「遠山の金さん」又はこれを含むタイトルを使用してきたものであり、いずれも高い人気を博してきた。被請求人のドラマは、江戸時代に徳川幕府の奉行であった遠山金四郎景元をモデルにした主人公が活躍するという内容ではあるが、歴史上実際に遠山金四郎景元が行った行為を忠実に再現し、ドラマ化したようなものではなく、テレビドラマとして成立させるため、非常に多くの創作性が付加されたものであって、歴史上の人物としての遠山金四郎景元そのものとは異なる空想上のキャラクターが、架空の物語設定の中で、痛快な勧善懲悪の大活躍をするというものである(乙第8号証、乙第31号証の1及び2)。
これに対して、歴史上の人物としての遠山金四郎景元は、複雑な家庭環境から、若いころ一時家出をして放蕩生活をしていたという説があるが、その真偽は定かではないし、江戸幕府の高級官僚である江戸町奉行として抜擢された後になって、「金さん」テレビシリーズの主人公のように日ごろ身分を隠して江戸市中を徘徊していたなどということはあり得ない。また、遠山金四郎景元が、幕府の高級官僚であるにもかかわらず、「彫り物」をしていたという伝承も、その真偽は定かではなく、仮に「彫り物」があったとしても、高級官僚である遠山金四郎景元が、お白洲の場で片肌脱いで「彫り物」を被露することはあり得ない。請求人らの提出に係る甲第7号証にも、「現在では、テレビドラマの影響を受けて名奉行として世に認知され、大岡忠相と人気を二分するところもあるが、ドラマのような名裁きをした記録はほとんどない」と記載されており、「金さん」テレビシリーズにおける物語の主人公のように、犯罪容疑者を直接取り調べ、裁断を下すという行為すら、実際に日常的に行っていたのか不明である。
したがって、被請求人の制作に係る「金さん」テレビシリーズは、歴史上の人物である遠山金四郎をモデルにしたものではあるが、歴史上の人物である遠山金四郎の人物像に束縛されることなく、被請求人の自由な創作の下において作り出された空想上のキャラクターであり、物語なのである。
そして、このように特徴的で創意に溢れたドラマが30年以上にわたって放送され、全国のお茶の間で視聴された結果、遅くとも本件商標の登録査定時において、「遠山の金さん」といえば、遠山金四郎景元という歴史上の人物というよりも、上記のような特徴的な筋立てを骨子とする被請求人の「金さん」テレビシリーズ又は当該シリーズにおいて遊び人と江戸町奉行としての二つの顔を使い分けて、痛快な活躍を繰り広げる正義のヒーローを観念させるものとなったものである。
そこで、被請求人は、自らの創意、工夫と努力によって長寿人気番組に育て上げた「金さん」テレビシリーズが有する人気と、ほかでもない被請求人自身の長年にわたる使用により「遠山の金さん」の文字に蓄積・化体した顧客吸引力を利用した商品化事業を展開することを意図して、本件商標を登録出願し、登録されたものであるから、本件商標の登録出願の経緯に「著しく社会的妥当性を欠くもの」があったとは到底認められない。
ウ 被請求人は、その使用権者である株式会社大一商会に対し、本件商標をパチンコ器具について使用させている(乙第32号証の1ないし乙第33号証)。当該パチンコ器具は、「金さん」テレビシリーズの主人公の肖像や、裁きのお白州で主人公が「彫り物」を被露するシーンなど、「遠山の金さん」シリーズの物語中の代表的な設定を液晶画面に表示し、利用するものである。本件商標は、このような「金さん」テレビシリーズに基づき、これを商品化した商品について、その出所が正当なものであることを表示するものであり、被請求人の許諾を受けた者以外の者が、同様の商品について、「遠山の金さん」又はこれに類似する商標を使用することによって、「遠山の金さん」に係る被請求人の業務上の信用を破壊、毀損したり、需要者の間で出所の混同が生じることを防止するものである。
したがって、本件商標の登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認できないものであるといい得る事情は、何ら見いだせない。
仮に本件商標の登録を無効とするならば、「金さん」テレビシリーズの人気や、周知・著名性に便乗し、あやかって、「遠山の金さん」に類似する商標を使用して、被請求人の使用権者が製造・販売するパチンコ器具と同種の商品を製造・販売するような違法な行為は野放しとなり、被請求人の業務上の信用は破壊され、出所の混同を防止することはできなくなる。
してみれば、本件商標は、「商標法の予定する秩序」の維持に必要不可欠なものであって、かえって、本件商標の登録を無効とすることこそが「商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認できない」といわなければならない。
エ まとめ
以上のとおり、本件商標は、歴史上の人物である遠山金四郎に由来するものではあるが、上述した被請求人による「金さん」テレビシリーズの著名性等からすれば、単に歴史上の人物ということではなく、被請求人のテレビドラマシリーズによって有名になった架空のキャラクターとしての遠山金四郎を想起するものである。
また、「遠山の金さん」が歴史上の人物名そのものであるか否かにかかわらず、商標の構成自体に公序良俗に違反するおそれがない以上、本件商標が7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるところ、本件商標の出願の経緯にそのような事情はなく、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないといえるものでもない。
よって、本件商標は、7号にいう公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当するものではない。
2 請求人らの主張に対する反論
(1)請求人らは、本件商標が歴史上の人物としての遠山金四郎の人物名であるから、商標法第4条第1項第7号に該当すると主張する。
しかし、本件商標は、上述したとおり、歴史上の人物である遠山金四郎に由来するものではあるが、単に歴史上の人物ということではなく、被請求人の人気テレビドラマシリーズによって有名になった架空のキャラクターとしての遠山金四郎を想起するものである。
(2)本件商標が、商標法第4条第1項第7号に該当するか否かは、本件商標の登録査定時である平成15年6月20日を基準として判断されるべきである(知的財産高等裁判所平成21年(行ケ)第10057号 平成21年12月21日判決参照)。
しかるところ、本件商標の登録査定時において、「遠山の金さん」が歴史上の人物としての遠山金四郎の人物名そのものとして通用していたとしても、そうであるからといって、直ちに本件商標が7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するということにはならない。
そもそも、歴史上の人物名は、かねてより商標として採択されることの多いものである。歴史上の人物名からなる商標としては、例えば、本件商標が登録された平成15年8月15日時点において、乙第34号証ないし乙第47号証に示すような商標が存在し、これらは、現在も有効な商標として存続している。
このように、本件商標が登録された平成15年8月15日当時の時点において、歴史上の人物名からなる商標又はこれを一部に含む商標が多数採択され、いずれも何ら7号に該当するとされることなく登録されていた事実に照らすと、当時の需要者、取引者における一般の認識としては、歴史上の人物名からなる商標又はこれを一部に含む商標が、それが歴史上の人物名からなる商標であること又は歴史上の人物名を一部に含む商標であるということのみをもって、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものであるという認識はなかったということができる。
本件商標は、歴史上の人物である遠山金四郎に由来するものではあるが、上述したとおり、単に歴史上の人物ということではなく、被請求人の人気テレビシリーズによって有名になった架空のキャラクターとしての遠山金四郎を想起するものであるが、仮に、本件商標が歴史上の人物名そのものに相当するものであったとしても、本件商標が設定登録をされた平成15年8月15日の時点において、上記のように歴史上の人物名からなる商標又は歴史上の人物名を一部に含む商標が多数登録されていたという事実がある中で、本件商標のみが、それが歴史上の人物名であるということそれ自体によって、その登録査定時において公序良俗に反するおそれがあるものであったとは到底いえない。
(3)そもそも、請求人らにおいて、本件商標が7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれにある商標」に当たると主張するが、その理由は明確でない。
この点、請求人らは、「他人が築き上げた著名性を有する標章と同一又は類似の商標であって、その著名性にフリーライドすることや、その著名性や名声を希釈、毀損することなど不正の目的をもって出願したものは、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するというべきである」との別異の事件における審決理由中の記載を引用しているが、既述のとおり、本件商標は、被請求人が自らの創意、工夫と努力によって長寿人気番組に育て上げた「金さん」テレビシリーズが有する人気を利用した商品化事業を展開することを意図して出願、登録されたものであり、他人が築き上げた著名性を有する表示へのフリーライドや、その著名性や名声を希釈、毀損することなど、不正の目的をもって登録出願されたものではない。
したがって、上記別事件における審決理由中の記載をもってする請求人らの主張は、いずれも的を得ない。
(4)請求人らは、平成21年10月21日に公表された商標審査便覧(42.107.04)「歴史上の人物名(周知・著名な個人の人物名)からなる商標登録出願の取扱いについて」に則って、本件商標が7号に該当するとの主張を展開しているが、そもそも商標審査便覧は、特許庁の内部基準であって、法律上の商標の登録要件を判断するに当たって適用される絶対的な基準ではない上、平成21年に公表された審査便覧で提示された基準を平成15年に登録された本件商標に対して遡及させて適用しようとすること自体誤りであり、仮に、今日における審査便覧に基づいて検討した場合であっても、本件商標は、以下のとおり、7号に該当しない。
ア 「遠山の金さん」の人物名の周知・著名性
請求人らは、「遠山金四郎」の人物名が周知・著名であると主張するが、本件商標は、「遠山の金さん」であって、「遠山金四郎」ではないから、あくまでも「遠山の金さん」の周知・著名性の程度及びその内容が問題となるべきである。
そして、「遠山の金さん」が周知・著名であるとしても、それが歴史上の人物名としてではなく、「金さん」テレビシリーズの主人公又はタイトルとして周知・著名である場合には、純粋に歴史上の人物名として周知・著名であるというべきではない。遠山金四郎が、実在した歴史上の人物として今日においても広く知られているとしても、純粋に歴史上の人物としての認知の程度をみたときには、遠山金四郎が実際にどのような人物で、現実に何をした人物であるかが、広く国民の間において認識され、理解されているかは疑問があるといわざるを得ない。
また、請求人らの提出に係る書証(甲第7号証、甲第28号証、甲第34号証及び甲第35号証)に照らしてみると、需要者、取引者の間では、歴史上の人物としての遠山金四郎景元と、ドラマの空想上のキャラクターとしての「遠山の金さん」は、前者を説明するために後者が引き合いに出されるという関係にあるといえ、これよりは、前者の認知の程度が後者ほど高いものではないことが容易にうかがえる。
イ 「遠山の金さん」に対する国民又は地域住民の認識
本件商標は、「遠山の金さん」であって、「遠山金四郎」ではないから、問題とされるべきは、「遠山金四郎に対する国民又は地域住民の認識」ではなく、あくまでも「遠山の金さん」という表示に対する国民又は地域住民の認識である。
「遠山の金さん」は、フリー百科事典「ウイキペディア」によれば、「江戸町奉行・遠山金四郎景元を主人公にした時代劇」であるとされている(乙第8号証)。そうすると、「遠山の金さん」という表示は、歴史上の人物の人物名というよりは、むしろ時代劇ドラマのタイトル又はその主人公の名前として認識されているというべきである。
なお、請求人らは、遠山金四郎を題材とする大衆娯楽作品が無数に存在すると主張するが、ここで引用されているものは、明治から昭和30年代までのものがほとんどであって、最も新しい甲第26号証であっても、昭和44(1969)年のものであって、40年以上前のものである。
ウ 「遠山の金さん」の名称の利用状況
本件商標の登録査定時において、「遠山の金さん」の表示を用いて地方公共団体が主催する祭り、イベントが開催されていたとか、「遠山の金さん」の表示を用いて博物館・展示館が運営されているとか、「遠山の金さん」をシンボルとした観光案内を行っているといった事実はないし、公的機関の施策の下で「遠山の金さん」を使用する事業者が多数存在するという事実もない。
また、「遠山金四郎」について、請求人らが挙げる書証では、東京都豊島区巣鴨の本妙寺に遠山金四郎の墓がある事実、東京都墨田区菊川駅近辺に長谷川平蔵・遠山金四郎が住んだ住居があった場所がある事実、東京都港区新橋に遠山金四郎の屋敷があったといわれる場所がある事実及び東京都八重洲口近辺に遠山金四郎が執務したといわれる北町奉行所が存在した事実並びに遠山金四郎に関する伝承を説明・記述するために遠山金四郎の名称が記載されている事実があるにすぎず、これらの事実及び記載をもってして、遠山金四郎の名称が「全国各地で観光振興や地域興しのために利用されている」ということはできない。
エ 「遠山の金さん」の利用状況と指定商品・役務との関係
「遠山の金さん」は、具体的な商品や役務、あるいは観光推進策において使用されている事実がない。
また、「遠山金四郎」についてみた場合であっても、遠山金四郎に係る旧跡地において、当該旧跡地を説明・記述する上で「遠山金四郎」の記載があるにとどまる。
したがって、「遠山の金さん」の利用状況というものが、そもそも、存在しない上、請求人らが主張する「遠山金四郎の名称の利用状況」と本件商標の指定商品との関係を検討した場合であっても、両者の間には何ら関係がないというほかない。
オ 出願の経緯・目的・理由
本件商標「遠山の金さん」は、被請求人が自らの創意、工夫と努力によって長寿人気番組に育て上げた「金さん」テレビシリーズが有する絶大な人気を利用した商品化事業を展開することを意図して出願、登録されたものである。
そして、本件商標は、被請求人のライセンシーによって、パチンコ器具について使用されているものである。当該パチンコ器具は、被請求人が制作した「金さん」テレビシリーズを題材として、これを商品化したものであり、かかる「金さん」テレビシリーズのヒットにより、被請求人自身が築き上げた顧客吸引力を利用するものであり、歴史上の人物としての遠山金四郎景元の功績などに基づく顧客吸引力に便乗することを目的としたものでないことは明らかである。
カ 当該歴史上の人物と出願人(被請求人)との関係
被請求人は、1950年から1965年にかけて、遠山金四郎をモデルとした主人公が活躍する「いれずみ判官 桜花乱舞の巻」、「いれずみ判官 落花対決の巻」等の題名で公開された劇場用映画を制作、配給し、さらに、テレビ放映用の時代劇ドラマ番組として、1970年から2007年にかけて、「遠山の金さん捕物帳」、「ご存知遠山の金さん」、「遠山の金さん」、「名奉行遠山の金さん」等のタイトルの下に、合計全7シリーズを制作した。当該時代劇テレビ番組は、1970年の放映開始以来、全7シリーズ合計750話を超える長寿シリーズとなったものである。
すなわち、被請求人は、遠山金四郎をモデルとした主人公が正義の味方となって活躍する時代劇映画・テレビドラマを半世紀以上にわたって継続的に制作してきた結果、遠山金四郎にまつわる史跡・旧跡などにおいても、「テレビドラマ(時代劇)『遠山の金さん』のモデルとして知られる」(甲第7号証)、「ドラマ『遠山の金さん』などでその名を知られる」(甲第28号証)、「テレビドラマや映画でお馴染みの名奉行『遠山の金さん』は、背中の『桜吹雪(遠山桜)』で有名ですが、実在の金四郎も若いときに放埒し、彫り物を入れていたと伝えられています」(甲第34号証)、「ところで遠山の金さんといえばやはり『サクラ吹雪の刺青』ですが、実際には刺青があったという記録はなく、テレビや映画での作り話のようです」(甲第35号証)などのように、遠山金四郎の功績を説明するに当たって、被請求人の制作した人気ドラマや映画が引き合いに出されることが多いという関係にあるといえる。
(5)まとめ
ア 以上を総合して考察すると、歴史上の人物としての「遠山金四郎」は、江戸時代の旗本で、天保年間に江戸北町奉行、南町奉行を務めた人物であるが、本件商標は、「遠山金四郎」ではなく、「遠山の金さん」の文字からなるものであること、被請求人が制作した「金さん」テレビシリーズが30年以上にわたってテレビで放映された結果、「遠山の金さん」というときには、歴史上の人物としての「遠山金四郎」ではなく、被請求人の制作に係る「金さん」テレビシリーズの主人公又は人気時代劇のタイトルとしての「遠山の金さん」を想起・連想することが圧倒的に多いと思われること、歴史上の人物としての「遠山金四郎」を説明・記述する際に、「テレビでお馴染みの」というように、被請求人の制作に係るテレビドラマ「金さん」テレビシリーズが引き合いに出される場合が少なくないこと、被請求人は、自らが制作した人気テレビドラマを題材とした商品化事業を展開するに当たって、当該ドラマの主人公又はタイトルである本件商標を登録出願したのにすぎず、そこに歴史上の人物名が有する顧客吸引力に便乗するような不正な目的はないこと、「金さん」テレビシリーズは、被請求人の制作に係る連続テレビドラマとして、30年以上にわたって放映され、日本全国で人気を博したものであること、その結果、当該ドラマの主人公のモデルとなった遠山金四郎も「テレビドラマ(時代劇)『遠山の金さん』のモデルとして知られる」(甲第7号証)のように紹介されるなど、遠山金四郎の声望、功績を今日に伝える上で多大な貢献をしたものであること、被請求人がかかるドラマの制作者であることなどを総合的に考慮すれば、本件商標は、その登録出願の経緯や目的に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するような場合に当たるということはできない。
また、被請求人において、遠山金四郎に関する公益的な施策に便乗して、その遂行を阻害し、公共的利益を損なう結果になることを知りながら、利益の独占を図る意図をもってしたものということもできない。その他、本件商標が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標として、7号に該当するものというべき理由は、何ら見いだせない。
イ 請求人らは、自ら「名奉行金さん」の文字からなる商標を出願、登録したが、当該商標は、本件商標との関係で商標法第4条第1項第11号に該当することを理由として無効とされている。そうであるにもかかわらず、請求人らは、「名奉行金さん」の文字からなる商標の使用を公然と使用してきたものである(乙第49号証)。
このことからすると、本件審判の請求は、パチンコ器具についての「名奉行金さん」の使用の正当性を主張せんと欲する請求人らが、自らの私益のために本件商標の登録を排除しようとするものであって、まさに「私的な利益を追求する為に」7号を悪用し、先願登録主義の趣旨を潜脱して、自らの不正な行為を継続することを可能ならしめようとの挙に出たものといわざるを得ず、この点からみても、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈しようとするものであって、本件商標について、7号を適用すべき余地はない。
3 結語
以上述べたとおり、本件商標は、被請求人が自らの創意、工夫と努力によって長寿人気番組に育て上げた「金さん」テレビシリーズが有する人気を利用した商品化事業を展開することを意図して出願、登録されたものであり、本件商標を構成する「遠山の金さん」の文字それ自体が、公の秩序又は善良な風俗に反するようなものではなく、被請求人が本件商標を採択し、登録出願した経緯に照らせば、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが、商標法の予定する秩序に反するものとして、到底容認し得ないような場合に当たるということもできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

第4 当審の判断
1 はじめに
商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」については、当該商標の構成に、非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字、図形等を含む商標が、これに該当することは明らかである。また、当該商標の構成に、そのような文字、図形等を含まない場合であっても、当該商標を指定商品又は指定役務について使用することが、(a)法律によって禁止されていたり、(b)社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳的観念に反していたり、(c)特定の国若しくはその国民を侮辱したり、国際信義に反することになるなど特段の事情が存在するときには、当該商標は同法第4条第1項第7号に該当すると解すべき余地がある。ただし、(a)商標法は,同法第4条第1項第7号の外に、同項各号の規定によって、公益との調整、既存の商標権者や既に同一又は類似の商標を使用している者との利益調整など、さまざまな政策的な観点から、登録されるべきでない商標を具体的かつ網羅的に列挙していること、(b)公の秩序又は善良の風俗を害するか否かの判断は、社会通念によって変化し、客観的に確定することが困難であること等に照らすならば、当該商標の構成それ自体ではなく、当該商標を使用することが、いわゆる公序良俗に反するとして同法第4条第1項第7号に該当するとされる場合は、自ずから限定して解釈されるべきものといえる(知財高裁平成21年(行ケ)第10055号及び同第10057号、同年12月21日判決参照。)。
上記の観点を前提に、本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について、検討する。
2 「遠山の金さん」及び「遠山(金四郎)景元」の名称に対する社会一般の認識並びにその関係について
請求人らは、本件商標「遠山の金さん」が我が国で周知・著名な歴史上の人物である遠山景元(通称:金四郎)を容易に認識させるものであり、このようなものを一民間企業である被請求人に商標登録を認めることは妥当でなく、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するおそれがある商標であるとして、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する旨主張する。
そこで、請求人及び被請求人の両当事者による主張並びに両当事者の提出に係る証拠により、「遠山の金さん」及び「遠山(金四郎)景元」の名称に対する社会一般の認識並びにその関係について検討する。
(1)辞書類における記載
ア 「広辞苑第四版」(1991年(平成3年)11月15日第1刷発行)に、「遠山金四郎」について、「江戸後期の江戸町奉行。左衛門尉。名は景元。下情に通じ、名奉行をもって聞え、『遠山の金さん』として親しまれ、歌舞伎狂言や講釈などに脚色。」との記載がある(甲第1号証)。
イ 「日本語大辞典第二版」(1995年(平成7年)7月3日第1刷発行)に、「遠山金四郎」について、「江戸末期の江戸町奉行。名は景元。金四郎は通称。下情に通じた名奉行とうたわれた。歌舞伎・講談で『遠山の金さん』として知られる。」との記載がある(甲第2号証)。
ウ 「日本史リブレット人 053/遠山景元/老中にたてついた名奉行」(2009年(平成21年)10月26日発行)に、「遠山景元」について、「市民は服従し、そのころの芙蓉の間のお役人の一枚看板と賞された。また、遠山の金さんと尊んだ」との記載がある(甲第4号証)。
エ 「財団法人まちみらい千代田」に係る「千代田区地域ポータルサイト」に、「大岡越前VS遠山金四郎」の見出しの下、大岡越前とともに紹介され、「テレビの時代劇の人気シリーズでもお馴染みの大岡越前と遠山金四郎。この二人は江戸時代の名奉行と呼ばれ、江戸の庶民たちの間でも人気者だった。・・・遠山金四郎といえば“遠山の金さん”として親しまれ、背中に彫られた桜風吹の刺青で有名だが、こちらの逸話も実際には眉唾。」との記載があり、同じく、「遠山金四郎(とうやまきんしろう)」の見出しの下、「若い頃は無頼生活を送り、入墨をしていたと言われる。大岡越前守に並ぶ名奉行として市井の評判を集め、講談化された。」との記載がある(甲第5号証及び甲第6号証)。
なお、上記各見出しのあるページの左上には、それぞれ「江戸開府400年」との表示があることからすれば、該ページの内容は、いずれも2002年(平成14年)に掲載されたものと推認される。
オ 「フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』」を用いた「遠山景元」の語の検索結果(最終更新 2012年3月23日)に、「遠山景元(とうやまかげもと)は、江戸時代の旗本で、天保年間に江戸北町奉行、後に南町奉行を務めた人物である。テレビドラマ(時代劇)『遠山の金さん』のモデルとして知られる。幼名は通之進、通称は金四郎(きんしろう)。・・・景元の死後、講談・歌舞伎で基本的な物語のパターンが完成し、陣出達朗の時代小説『遠山の金さんシリーズ』などで普及した。現在では、テレビドラマの影響を受けて名奉行として世に認知され、大岡忠相と人気を二分することもあるが、ドラマのような名裁きをした記録はほとんどない。・・・ただし、当時から裁判上手だったという評判はあり、名裁判官のイメージの元になったエピソードも存在する。天保12年8月18日の『公事上聴』(歴代の徳川将軍が一代に一度は行った、三奉行の実際の裁判上覧)において、景元は将軍徳川家慶から裁判ぶりを激賞され、奉行の模範とまで讃えられた。景元が、たびたび水野や鳥居と対立しながらも、矢部のように罷免されなかったのは、この将軍からの『お墨付き』のおかげだと考えられる。景元のこうした『能吏中の能吏』としての名声は、時代が江戸から明治に移っても旧幕臣をはじめとした人々の記憶に残り、景元を主人公とした講談を生み、映画やテレビの時代劇へ継承される大きな要因となったと言えよう。」との記載がある(甲第7号証)。
カ 同「フリー百科事典」を用いた「遠山の金さん」の語の検索結果(最終更新 2009年6月8日)に、「遠山の金さん(とうやまのきんさん)は、江戸町奉行・遠山金四郎景元を主人公にした時代劇」との記載があるほか、作品一覧として、「片岡千恵蔵主演の東映時代劇シリーズ」では、「いれずみ判官(東映)」、「血ざくら判官(東映)」、「はやぶさ奉行(東映)」、「火の玉奉行(東映)」、「たつまき奉行(東映)」及び「さくら判官(東映)」との表示があり、また、テレビドラマでは、「遠山の金さん捕物帳(フジテレビ)」、「遠山の金さん(日本テレビ)」、「遠山の金さん捕物帳(1970年、NET)(関西地区はMBS)」、「ご存知遠山の金さん(NET)(関西地区はMBS)」、「ご存じ金さん捕物帳(NET)(関西地区はMBS)」、「遠山の金さん(NET→テレビ朝日)(関西地区はこの作品以降ABC)」、「名奉行遠山の金さん(テレビ朝日)」、「遠山の金さん(テレビ朝日/2007年版)」との表示がある(乙第8号証)。
(2)史跡や墓などについて
ア 「平成七年三月三十一日建設\東京都教育委員会」に係る「遠山景元墓」の碑(写真)には、「下情に通じた江戸時代屈指の名奉行といわれ、遠山の金さんとして様々な伝説がある。」との記載がある(甲第11号証)。
イ 「豊島区文化観光課」に係る「東京都立染井霊園MAP」(2010年4月(第2版)発行)に、「このマップは、染井霊園と、隣接する寺院に眠る人々の連環を巡って『点』が『線』となるように墓石を紹介しています。」との記載とともに、該マップ上に存する「本妙寺」に係る紹介文として、「ご存知、桜吹雪の金さん\遠山金四郎景元\江戸時代の旗本。江戸町奉行を勤めた。小説・ドラマの『遠山の金さん』などでその名を知られる。」との記載がある(甲第28号証)。
ウ 「豊島区観光協会」に係る「ビジットシティとしま」のウェブサイトに、「ぐるっと豊島/AREA.D 散歩コース」の見出しの下、「本妙寺」に係る紹介文において、「江戸町奉行遠山金四郎、北辰一刀流の開祖千葉周作、本因坊代々の墓などがある。」との記載がある(甲第29号証)。
エ 「巣鴨地蔵通り商店街振興組合」に係る「巣鴨散策周辺の名所探訪」のウェブサイトに、「巣鴨周辺マップ」上に「遠山の金さんの墓」が表示があるほか、「本妙寺」に係る紹介文において、「遠山の金さんこと遠山金四郎景元、千葉周作の墓がある。」との記載がある(甲第30号証)。
オ 「平成十九年三月 墨田区教育委員会」に係る「長谷川平蔵・遠山金四郎住居跡」の説明板(写真)に、「・・・替わって入居したのは遠山左衛門尉影元です。通称は金四郎。時代劇でおなじみの江戸町奉行です。」との記載がある(甲第14号証)。
カ 墨田区の公式ウェブサイト「すみだ」に係る「すみだ散策ツアー」のうちの「本所・両国・錦糸町コース」の見出しの下、「長谷川平蔵住居跡、遠山金四郎住居跡(歩く時間の目安:10分以上)」に係る紹介文において、「そして、その同じ場所に40年後、ドラマや芝居でお馴染みの『遠山の金さん』こと『北町奉行遠山金四郎』も屋敷を構えました・・・背中の桜吹雪の刺青はフィクションのようですが、彼もまた有能な役人だったということです。」との記載がある(甲第31号証)。
キ 「一般社団法人墨田区観光協会」に係る「観光スポット」のウェブサイトに、史跡として「長谷川平蔵・遠山金四郎住居跡」との紹介がある(甲第32号証)。
ク 「東京都商店街振興組合連合会」に係る「江戸東京商店街・買物独案内/舟めぐりまち歩き」のウェブサイトに、「歴史名所スポット/墨田区」の見出しの下、「(鬼平)長谷川平蔵の役宅跡」に係る紹介文において、「(ちなみに、この役宅は約40年後、鬼平の孫の代に屋敷替えとなり、遠山の金さんこと、遠山金四郎の下屋敷になりました。)」との記載がある(甲第33号証)。
ケ 「港区産業・地域振興支援部 産業振興課」に係る「MINATOあらかると」のウェブサイトに、「港区江戸古地図めぐり」の見出しの下、「『遠山の金さん』の屋敷を求めて」として、「◆遠山金四郎屋敷跡(第2東洋海事ビル)◆」に係る紹介文において、「このあたりに遠山左衛門尉(さえもんのじょう)こと金四郎景元の屋敷があったとか。テレビドラマや映画でお馴染みの名奉行『遠山の金さん』は、背中の『桜吹雪(遠山桜)』で有名ですが、実在の金四郎も若いときに放埒し、彫り物を入れていたと伝えられています。」との記載がある(甲第34号証)。
コ 「NPO法人東京中央ネット」に係る「中央区のまちづくり」のウェブサイトに、「八重洲界隈」の見出しの下、「名奉行 遠山の金さん(北町奉行所跡)」に係る紹介文において、「その北町奉行所にはサクラ吹雪の刺青でおなじみ、遠山の金さんこと遠山左衛門尉景元が任務にあたっていました。・・・実際には刺青があったという記録はなく、テレビや映画での作り話のようです。」との記載がある(甲第35号証)。
サ 「日本大正村」のウェブサイトに、「旗本領主\遠山家累代の墓所」の見出しの下、「名奉行遠山金さんも合祀されていると言われている」との記載があり(甲第36号証)、同じく、「遠山桜」の見出しの下、「土地の人はこれを『遠山桜』と呼び江戸時代に名を馳せた江戸町奉行で、時代劇や芝居で有名な『遠山の金さん』こと遠山金四郎(遠山左衛門慰景元)の“遠山桜”を偲ぶことができます。」との記載がある(甲第37号証)。
シ 「遠山郷観光協会」に係る「信州遠山郷」のウェブサイトに、「遠山の金さんと遠山\遠山つながりで桜吹雪にあやかろう!遠山金四郎プロジェクト」の見出しの下、「遠山金四郎景元は、天保の改革で取り潰されそうになった芝居小屋を救うなどの功績によって、のちに刺青姿の名奉行として時代劇のヒーローになりました。・・・信州遠山氏の出自が美濃だとすれば、信州遠山と金さんとの関係が見えてきます。」との記載がある(甲第38号証)。
ス 「平成四年十月吉日 遠山講一同」に係る「名奉行遠山金四郎家顕彰碑」(写真)に、「景元は・・・作事奉行・勘定奉行・北町奉・・・南町奉行を歴任して世に名奉行として・・・特に天保の改革に際し、事績あがる。」との記載がある(甲第13号証)。
(3)「遠山金四郎」及び「遠山の金さん」を登場人物とする作品が以下のように存在する。
ア 書籍類
(ア)明治32年1月18日発行の「歌舞伎座心狂言筋書『敵討護持院原』」(甲第17号証)
(イ)大正14年12月1日発行の「幕政秘聞/刺青奉行遠山左衛門」(甲第21号証)
なお、同書の588頁には、「・・・流石に遠山の金さんです、萬延元年六十四を以て病死いたし本郷丸山の本妙寺にその石碑は今以て残り居ります、花の春遠山櫻と題した講談これを以て終りといたします。」との記載がある。
(ウ)昭和32年6月1日松竹大谷図書館蔵書の「遠山の金さんと鼠小僧」(甲第19号証)
(エ)昭和36年11月3日発行の漫画「遠山金四郎」(甲第25号証)
(オ)2008年2月15日第1刷発行の「遠山の金さん」(甲第20号証)
なお、本書には、「第二章 遠山の金さん<遠山金四郎>映画主要作品目録」として、大正13年、昭和4年ないし昭和8年、昭和10年ないし昭和16年、昭和22年、昭和23年及び昭和25年ないし昭和29年における映画の封切年月日、製作映画会社(被請求人を含む。)、映画タイトル及び遠山の金さん(遠山金四郎)を演じた俳優などが掲載されている。
イ 台本類
(ア)昭和32年12月新宿松竹座における「遠山桜江戸ッ子奉行」の脚本(甲第24号証)
(イ)昭和32年12月29日放送のタイトルが「大江戸人気男\遠山の金さん」のNTV放送台本(甲第23号証)
(ウ)昭和44年11月名古屋御園座における「いれずみ判官\遠山の金さん」の上演台本(甲第26号証)
ウ 映画
(ア)1950年(昭和25年)4月14日封切の「いれずみ判官 桜花乱舞の巻」(出演者:片岡千恵蔵ほか)及び同月23日封切の「いれずみ判官 落花対決の巻」(出演者:片岡千恵蔵ほか)(乙第9号証)
(イ)1951年(昭和26年)11月27日封切の「飛びっちょ判官」(出演者:片岡千恵蔵ほか)(乙第9号証)
(ウ)1953年(昭和28年)3月17日封切の「血ざくら判官」(出演者:片岡千恵蔵ほか)(乙第9号証)
(エ)1957年(昭和32年)11月17日封切の「はやぶさ奉行」(出演者:片岡千恵蔵ほか)(乙第9号証)
(オ)1958年(昭和33年)5月12日封切の「火の玉奉行」(出演者:片岡千恵蔵ほか)(乙第9号証)
(カ)1959年(昭和34年)3月10日封切の「たつまき奉行」(出演者:片岡千恵蔵ほか)(乙第9号証)
(キ)1962年(昭和37年)2月28日封切の「さくら判官」(出演者:片岡千恵蔵ほか)(乙第9号証)
(ク)上記したもののほか、被請求人は、片岡千恵蔵主演で遠山の金さんシリーズを17本撮ったとされている(乙第24号証)。
エ テレビ
(ア)1970年(昭和45年)7月12日から1971年(昭和46年)6月27日までの間、「NET」をキー局として、51本放送された「遠山の金さん捕物帳」(出演者:中村梅之助ほか)(乙第9号証)
(イ)1973年(昭和48年)10月7日から1974年(昭和49年)9月22日までの間、「NET」をキー局として、51本放送された「ご存知遠山の金さん」(出演者:市川段四郎)(乙第9号証)
(ウ)1974年(昭和49年)9月29日から1975年(昭和50年)3月30日までの間、「NET」をキー局として、27本放送された「ご存じ金さん捕物帳」(出演者:橋幸夫ほか)(乙第9号証)
(エ)1975年(昭和50年)10月2日から1976年(昭和51年)9月30日までの間、「NET」をキー局として、52本放送された「遠山の金さん」(出演者:杉良太郎ほか)(乙第9号証)
(オ)1979年(昭和54年)2月15日から10月18日までの間、「ANB」をキー局として、30本放送された「遠山の金さん」(出演者:杉良太郎ほか)(乙第9号証)
(カ)1982年(昭和57年)4月8日から1983年(昭和58年)3月24日までの間、「ANB」をキー局として、49本放送された「遠山の金さん」(出演者:高橋英樹ほか)(乙第9号証)
(キ)1983年(昭和58年)4月14日から1984年(昭和59年)3月29日までの間、「ANB」をキー局として、43本放送された「遠山の金さん」(出演者:高橋英樹ほか)(乙第9号証)
(ク)1984年(昭和59年)4月5日から1985年(昭和60年)3月21日までの間、「ANB」をキー局として、44本放送された「遠山の金さん」(出演者:高橋英樹ほか)(乙第9号証)
(ケ)1985年(昭和60年)4月18日から1986年(昭和61年)9月16日までの間、「ANB」をキー局として、62本放送された「遠山の金さん」(出演者:高橋英樹ほか)(乙第9号証)
(コ)1988年(昭和63年)4月21日から11月24日までの間、「ANB」をキー局として、23本放送された「名奉行遠山の金さん」(出演者:松方弘樹ほか)(乙第9号証)
(サ)1989年(平成元年)5月25日から11月30日までの間、「ANB」をキー局として、24本放送された「名奉行遠山の金さん」(出演者:松方弘樹ほか)(乙第9号証)
(シ)1990年(平成2年)7月5日から1991年(平成3年)3月28日までの間、「ANB」をキー局として、27本放送された「名奉行遠山の金さん」(出演者:松方弘樹ほか)(乙第9号証)
(ス)1991年(平成3年)10月10日に、「ANB」をキー局として放送された「名奉行遠山の金さんスペシャル 江戸城転覆! 女忍者の復讐」(出演者:松方弘樹ほか)(乙第9号証)
(セ)1991年(平成3年)11月7日以降、1992年10月1日時点で「放送中」とされている、「ANB」をキー局として放送された「名奉行遠山の金さん」(出演者:松方弘樹ほか)(乙第9号証)
(ソ)上記したものを含め、被請求人に係るテレビ放映用番組は、1970年の放映開始から2007年までの間、全7シリーズ合計750話を超えるものであり、そのうちの「松方弘樹」主演に係る「名奉行遠山の金さん」、「遠山の金さんVS女ねずみ」及び「金さんVS女ねずみ」は、1988年(昭和63年)4月21日から1998年(平成10年)10月31日までの間、全218話が放映され、その視聴率は、最高で21.9%、全話平均で14.0%とされている(乙第27号証)。
オ 映画及びテレビの再放送
(ア)2005年(平成17年)2月1日から10月18日までの間、CS放送「東映チャンネル」により、「片岡千恵蔵」主演に係る「いれずみ判官」、「さいころ奉行」及び「さくら判官」、「鶴田浩二」主演に係る「いれずみ判官」、「大川橋蔵」主演に係る「橋蔵のやくざ判官」、「中村梅之助」主演に係る「遠山の金さん捕物帳」、「市川段四郎」主演に係る「ご存知遠山の金さん」、「橋幸夫」主演に係る「ご存じ金さん捕物帳」、「杉良太郎」主演に係る「遠山の金さん捕物帳」、「高橋英樹」主演に係る「遠山の金さん」及び「松方弘樹」主演に係る「名奉行遠山の金さん」が再放送された(乙第27号証)。
(イ)1975年から2013年までの間、被請求人は、多数の地上波放送局及びCS放送局との間で、自己の制作に係る映画及びテレビ放映用番組の再放送を認める旨の契約を締結した(乙第27号証)。
(4)事実認定
上記(1)ないし(3)を踏まえれば、「遠山の金さん」とは、後述する「遠山(金四郎)影元」の死後、同人をモデルとして、遅くとも明治時代の末ころから講談、歌舞伎、書籍類等を通じて作り上げられた架空の人物であって、昭和の初期から30年代までは、主として時代劇映画の主人公名として、その後は、時代劇テレビ番組、特に被請求人の制作に係るテレビ番組のタイトル名やその主人公名として、一般に広く知られるに至っており、その状態は、本件商標の登録出願時はもとより、本件商標の登録査定時を経て現在に至るまで継続しているものと認められる。
他方、「遠山(金四郎)影元」とは、江戸時代の旗本で、天保年間に江戸北町奉行、後に南町奉行を務めたとされる実在した人物であり、同人の墓(東京都豊島区)や住居跡(東京都墨田区及び港区)のほか、北町奉行所跡(東京都中央区)やゆかりある地とされる「日本大正村」(岐阜県)及び「信州遠山郷」(長野県)に関するインターネット情報等においては、同人を紹介する際に、その略歴等のほかに、例えば、「小説・ドラマの『遠山の金さん』などでその名を知られる」、「ドラマや芝居でお馴染みの『遠山の金さん』こと『北町奉行遠山金四郎』」、「テレビドラマや映画でお馴染みの名奉行『遠山の金さん』」のように、看者の理解を容易にすべく、テレビドラマ等を通じて一般に広く知られた同人をモデルとする架空の人物である「遠山の金さん」を引用することが少なからず行われているというのが実情である。
してみれば、「遠山の金さん」の文字からなる本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、これを歴史上実在した人物である「遠山(金四郎)影元」を表したものとして看取、理解するというよりは、むしろ時代劇、特に被請求人の制作に係るテレビ番組のタイトル名やその主人公名を表したものとして認識するとみるのが相当である。
3 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、上記2(4)のとおり、取引者、需要者をして、時代劇、特に被請求人の制作に係るテレビ番組のタイトル名やその主人公名を表したものとして認識されるものである。
そして、被請求人が本件商標を採択し、登録出願した目的は、被請求人による「遠山の金さん」を主人公とする時代劇制作の実績に鑑みれば、自己の制作に係る時代劇において使用する「遠山の金さん」の語に蓄積された信用と顧客吸引力を保護するためであったといえる。
してみれば、本件商標は、我が国で知られた歴史上の人物である「遠山(金四郎)影元」を認識させるものではなく、また、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当するとはいい得ない。
また、本件商標は、その構成態様に照らし、きょう激、卑わい若しくは差別的な文字又は図形からなるものでないことは明らかであるばかりでなく、請求人らの主張及びその提出に係る証拠のいずれを見ても、本件商標をその指定商品に使用することが、社会公共の利益、社会の一般的道徳観念に反するものとはいえない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標には該当せず、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものとはいえない。
4 請求人らの主張について
請求人らは、「遠山金四郎は、周知・著名かつ国民が親しみや敬愛の念を持つ人物である。加えて、『遠山の金さん』の文字は、同人を主人公とする大衆娯楽作品において、主人公のキャラクターの愛称として繰り返し使用されてきた。それゆえ、本件商標の出願当時、『遠山の金さん』の文字には、遠山金四郎の名声に基づく信用力・顧客吸引力が化体していたことが明白であり、被請求人は、これに便乗し、指定商品についての使用の独占を図る目的で本件商標を出願したものと考えられる。」旨主張している。
しかしながら、上記2(4)のとおり、取引者、需要者は、本件商標の登録出願時はもとより、本件商標の登録査定時を経た現在においても、「遠山の金さん」と「遠山(金四郎)影元」とを別異のものとして理解、認識していることからすれば、後者の名声に基づく信用力、顧客吸引力が、直ちに前者の「遠山の金さん」の文字に化体していたとはいい難く、よって、上記請求人らの主張は、その前提において失当である。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2013-04-09 
結審通知日 2013-04-12 
審決日 2013-07-05 
出願番号 商願2002-95791(T2002-95791) 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (Y0928)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 今田 尊恵 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 田中 敬規
酒井 福造
登録日 2003-08-15 
登録番号 商標登録第4700298号(T4700298) 
商標の称呼 トーヤマノキンサン、トーヤマノキン 
代理人 秋山 洋 
代理人 大河原 遼平 
代理人 中村 勝彦 
代理人 太田雅苗子 
代理人 田中 克郎 
代理人 池上 慶 
代理人 廣中 健 
代理人 黒田 健二 
代理人 野本 健太郎 
代理人 稲葉 良幸 
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