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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201123104 審決 商標
不服201317843 審決 商標
平成19行ケ10391審決取消請求事件 判例 商標
不服201313747 審決 商標
無効2013890066 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない X36
管理番号 1291653 
審判番号 不服2011-8833 
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-25 
確定日 2014-09-05 
事件の表示 商願2008-13443拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は,「富士山世界文化遺産センター」の文字を標準文字で表してなり,第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」を指定役務として,平成20年2月25日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由
原査定は,「本願商標は,富士宮市が世界文化遺産登録を目指している富士山の情報発信や訪問者の交流拠点として誘致することを計画している『富士山世界文化遺産センター』と同一の文字よりなるものであるから,このような商標を,出願人が自己の商標として採択,使用することは穏当でないものと認める。したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における審尋
当審において,請求人に対して通知した平成23年11月11日付けの審尋は,以下のとおりである。
本願商標は,「富士山世界文化遺産センター」の文字を書してなるところ,職権に基づく証拠調べをした結果,以下のとおり,文化庁,環境省,林野庁が共同推薦する「富士山」の世界文化遺産推薦に係る推薦書提出及びその登録をめざす静岡県による富士山の「世界遺産センター(仮称)」整備に関する情報があり,また,我が国の世界遺産には,その保全管理,調査研究,環境教育,情報提供,普及啓発活動などの活動拠点として,「○○世界遺産センター」等との名称の施設を公的機関が運営していることの事実を発見したので通知する。
以下の事実からすれば,「富士山世界文化遺産センター」の文字からなる本願商標の登録を認めることは,公益的な施策の遂行を阻害することになり,また,社会公共の利益に反することとなるものであるから,本願商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
(1)平成23年9月22日付け文化庁の報道発表によれば,『「武家の古都・鎌倉」及び「富士山」の世界文化遺産推薦に係る推薦書(暫定版)のユネスコへの提出について』と題して,『本日,外務省のおいて世界遺産条約関係省庁連絡会議(構成:外務省,文化庁,環境省,林野庁,水産庁,国土交通省,宮内庁)が開催され,「武家の古都・鎌倉」(文化庁・国土交通省の共同推薦)及び「富士山」(文化庁・環境省・林野庁の共同推薦)の世界遺産への推薦について検討が行われました。その結果,両資産の推薦書(暫定版)をユネスコ世界遺産センターへ今月末までの提出を行うことが決定されましたので,お知らせします。(本件同時発表:外務省,環境省,林野庁,国土交通省)』との記載がある
(http://www.fujisan-3776.jp/topics/H23.09.22bunkachouhoudouhappyou.pdf)。
(2)上記と同様の趣旨は,国土交通省(http://www.mlit.go.jp/common/000166841.pdf)及び環境省(http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=14227)においても確認することができる。
(3)新聞情報によれば,『県総合計画に意見を 「白書」に反映へ-14日まで募集』(2011.11.02 朝刊 25頁 静岡 政経2)の見出しのもと,『主な施策展開では,大震災の被害状況や東海・東南海・南海地震に対する国の新たな被害想定策定の動きを前提に,県内の地域防災計画や被害想定を見直す。浜岡原発(御前崎市佐倉)の安全性の点検徹底や,世界文化遺産登録を目指している富士山の「世界遺産センター(仮称)」の整備も行う。』との記載がある。
(4)「屋久島世界遺産センター」
『「屋久島世界遺産センター」は,1993年(平成5年)12月に屋久島が世界遺産に登録されたことを機に整備された環境省の施設で,1996年(平成8年)4月にオープン しました。当センターでは,世界遺産の概要,屋久島世界自然遺産登録地,屋久島全体の自然の成り立ちを学ぶことができます。また,館内には環境省屋久島自然保護官事務所を併設しており,屋久島の保全・管理,調査研究,普及啓発活動の拠点施設として様々な情報の収集と蓄積,発信を行っています。』との記載がある(http://www.env.go.jp/park/kirishima/ywhcc/center/shisetsu.htm)。
(5)「和歌山県世界遺産センター」
『和歌山県世界遺産センターは,保存と活用を大きな柱とし,平成17年4月1日,「紀伊山地の霊場」を結ぶすべての「参詣道」が集まるここ田辺市本宮町に開設いたしました。世界遺産への登録は「将来にむけてその価値を継承していくことを世界に対して約束する」ことになります。そのためには「紀伊山地の霊場」や「参詣道」の資産やそれらを取り巻く「文化的景観」を保存しながら,その適切な活用を地域の振興に結びつけていかなければなりません。そのために当センターは,世界遺産の保存と活用の活動拠点となることを目指します。』との記載がある(http://www.sekaiisan-wakayama.jp/center/index.html)。
(6)「白神山地世界遺産センター」
「白神山地世界遺産センター西目屋館と藤里館は,平成5年に世界自然遺産に登録された白神山地の保全管理,調査研究,環境教育,情報提供,普及啓発活動などの拠点として設置されました。」との記載がある(http://tohoku.env.go.jp/nature/shirakami/)。

第4 請求人の回答(要旨)
前記第3の審尋に対し,請求人は,平成23年12月26日付け回答書を提出し,要旨以下のように主張した。
1 商標法第8条は,主体についていわゆる先願主義を採用しており,先に出願している私人の権利を公序良俗に反するおそれがあるとして拒絶するためには格別の理由が要求される。
2 文化庁等の富士山世界文化遺産推薦に係る推薦書は暫定であり,その内容は明確ではなく,また登録をめざす静岡県による「富士山世界遺産センター」の情報はあるにしてもこれも仮称であって,いまだ具体的には進行しておらず,このような公的機関の進捗状態に加えて,そのほかの公的機関「○○世界遺産センター」に関する記載に何ら本願商標「富士山世界文化遺産センター」についての言及がなく,これらよりは,本願商標の登録を認めることが公益的な施策の遂行を阻害することになり,また,社会公共の利益に反することになるものとの認定は,認めることができない。
3 また,一部の公的機関が「和歌山世界遺産センター」「屋久島世界遺産センター」「白神山地世界遺産センター」を運営しているからといって,「世界遺産センター」及びそれに関連する施設の名称をすべて公的機関に独占させなければならない積極的な理由はない。
さらに,「富士山世界文化遺産センター」との商標が公的機関ではなく私人のものとになったとしても,施設としての「富士山世界遺産センター」の運営に問題が生じるものではない。
4 以上のとおり,先願主義を排して公序良俗に反するとして拒絶する格別の理由はない。また商標登録を受けようとする者が自ら商標登録出願することが可能であったにもかかわらずそれをしていない以上,それが公的機関であるとしても先願主義を適用するべきであって,先に出願している私人の権利を公序良俗に反するおそれがあるとして排除することは認めることができない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第7号該当性について
本願商標は,静岡県と山梨県との境にそびえる日本一高い山である「富士山」の文字,世界遺産の一種である「顕著な普遍的価値を有する記念物,建造物観など」(http://www.unesco.or.jp/contents/isan/about.html)を表すものとして使用されている「世界文化遺産」の文字及び「その分野の中心となる機関・施設。」等(広辞苑第六版)の意味合いを有する「センター」の文字とを,一連に「富士山世界文化遺産センター」と表してなるものであり,これよりは,全体として「富士山の世界文化遺産に関する中心となる施設」程の意味合いを容易に理解,認識させるものである。
そして,富士山の世界文化遺産推薦については,前記第3の審尋で開示した経緯が報道されていたところ,さらに,以下のとおり,平成24年1月25日に開催された世界遺産条約関係省庁連絡会議(構成:外務省,文化庁,環境省,林野庁,水産庁,国土交通省,宮内庁)において,我が国として,「富士山」を世界文化遺産に推薦すること,2月1日(水)までに世界遺産委員会事務局であるユネスコ世界遺産センターに推薦書(正式版)等の提出を行うことが決定され,外務省他関係各省庁により,同日付けでプレスリリースがなされたものである。
(1)外務省,プレスリリース,平成24年1月25日
『「武家の古都・鎌倉」及び「富士山」の世界遺産推薦』
『1 本25日(水曜日),外務省において世界遺産条約関係省庁連絡会議が開催され,我が国として,「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(通称:世界遺産条約)に基づく「世界遺産一覧表」への記載に向け,「武家の古都・鎌倉」及び「富士山」の2件を推薦することを決定しました。2 今回の決定を受け,2月1日(水)までに世界遺産委員会事務局であるユネスコ世界遺産センターに推薦書(正式版)等の提出を行い,その後,諮問機関による検討・審査を経て,平成25年の世界遺産委員会において記載の可否が審議される予定です。』(http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/24/1/0125_03.html)
上記と同様の趣旨は,文化庁(http://www.bunka.go.jp/ima/press_release/pdf/unesco_suisensho.pdf#search='富士山世界文化遺産 文化庁'),環境省(http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=14740),国土交通省(http://www.mlit.go.jp/report/press/toshi10_hh_000089.html)及び林野庁(http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/hozen/120125.html)においても確認することができる。

また,前記第3の審尋で開示したとおり,我が国の世界遺産には,その保全管理,調査研究,環境教育,情報提供,普及啓発活動などの活動拠点として,「○○世界遺産センター」等との名称の施設が設置され,これらを公的機関が運営している事実がある。
さらに,「富士山」についても,前記第3の審尋で開示したとおり,静岡県による「富士山世界遺産センター(仮称)」整備に関する情報が報道されていたところ,以下のとおり,静岡県において「富士山世界遺産センター(仮称)」の設立を目指す「基本構想策定委員会(委員長・芳賀徹県立美術館長)」が設置され,平成23年12月22日に,同センターの基本構想骨子案が示された事実が確認できる。
(2)「ふじのくに 静岡県公式ホームページ」(更新日:平成23年11月15日)『「富士山世界遺産センター(仮称)基本構想策定委員会」/「趣旨」/『富士山の包括的な保存管理や,自然,歴史,文化,周辺観光等の情報提供を行うなど,富士山を訪れる多くの人々のニーズに対応する拠点となる「富士山世界遺産センター(仮称)」の基本構想を策定する』との記載がある
(http://www.pref.shizuoka.jp/bunka/bk-120/sekai_106-1.html)。
(3)「マナー啓発や政策提言機能 富士山世界遺産センター骨子案=静岡」
2011.12.21 読売新聞東京朝刊 32頁
『2013年に世界文化遺産登録を目指す富士山の情報発信や研究,来訪者の交流拠点となる「富士山世界遺産センター(仮称)」の構想を検討する「第3回基本構想策定委員会」が20日,東京都内で開かれ,同センターの基本構想骨子案が示された。』
上記のほか,以下の新聞においても同様の趣旨の報道がなされていることが確認できる。
・「富士山世界遺産センター 保全活動の拠点に 基本構想委 骨子案提示 ガイド育成方針も明記」 2011.12.21 東京新聞朝刊 22頁 静岡版
・「静岡県/富士山世界遺産センター基本構想骨子案/5機能7エリアで構成」 2011.12.21 日刊建設工業新聞 8頁
・「富士山世界遺産センター基本構想骨子案を審議/静岡県が12月20日」2011.12.13 建設通信新聞

以上のとおり,平成24年1月25日に開催された世界遺産条約関係省庁連絡会議において,我が国として,富士山を世界文化遺産に推薦することが正式決定され,推薦書(正式版)が,2月1日までにはユネスコ世界遺産センターに提出されたと推認できるものである。
そして,静岡県においては,「富士山世界遺産センター(仮称)」の設立を目指す「基本構想策定委員会(委員長・芳賀徹県立美術館長)」が設置され,平成23年12月20日に開催された「第3回基本構想策定委員会」において,同センターの基本構想骨子案が示された。
また,我が国の複数の世界遺産において,「○○世界遺産センター」なる名称の施設が設置され,公的機関により運営されている事実がある。
上記の実情からすれば,「富士山世界文化遺産センター」の文字からなる本願商標は,公的機関が運営する「富士山の世界文化遺産に関する施設の名称」であることを容易に理解,認識させるものであり,また,静岡県が,富士山の世界文化遺産登録を機会に設置する予定の「富士山世界遺産センター」(仮称)の名称と極めて近似するものである。
そうとすれば,「富士山世界文化遺産センター」の文字からなる本願商標を,一私人である請求人が自己の商標として登録することは,国又は静岡県を含む地方公共団体が行う「富士山世界文化遺産」登録及び登録後に行う前記施策等の遂行を阻害するおそれがあって適切ではなく,社会公共の利益に反するものといわなければならない。
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。

2 請求人の主張について
請求人は,文化庁等の富士山世界文化遺産推薦に係る推薦書は暫定であり,また,静岡県による「富士山世界遺産センター」の情報はあるにしても仮称であって,いまだ具体的には進行しておらず,このような公的機関の進捗状態に加えて,そのほかの公的機関「○○世界遺産センター」に関する記載に何ら「富士山世界文化遺産センター」についての言及がなく,これらよりは,本願商標の登録を認めることが公益的な施策の遂行を阻害することになるものとは認めることができない旨主張する。
しかしながら,前記第3の審尋及び前記1に記載のとおり,「富士山」を世界文化遺産に推薦する推薦書(正式版)がユネスコ世界遺産センターに提出されたことが推認され,また,静岡県において「基本構想策定委員会」が設置され,「富士山世界遺産センター(仮称)」の基本構想骨子案が示されたように,それぞれの施策が具体的に進行していることが認められる。
そして,これらの状況に加え,複数の世界遺産における公的機関による「○○世界遺産センター」なる名称の施設の存在から,本願商標は,その構成自体から,公的機関が運営する富士山の世界文化遺産に関する施設の名称であることを容易に理解,認識させるのである。
さらにいうならば,静岡県が設置する予定の施設の名称が「富士山世界文化遺産センター」に変更される可能性を否定することはできず,また,「○○世界遺産センター」なる名称の施設を公的機関が運営していることからすれば,国又は静岡県以外の地方公共団体が「富士山世界文化遺産センター」なる名称の施設を設置する可能性も否定することができない。
これらのことから,本願商標の登録を認めることは公益的な施策の遂行を阻害するおそれがあると言わざるを得ないのである。
したがって,前記の請求人の主張は,いずれも採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり,本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして,本願を拒絶した原査定は,妥当であって,取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-01-19 
結審通知日 2012-01-20 
審決日 2012-02-17 
出願番号 商願2008-13443(T2008-13443) 
審決分類 T 1 8・ 22- Z (X36)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 熊谷 道夫 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 田中 亨子
瀬戸 俊晶
商標の称呼 フジサンセカイブンカイサンセンター、フジサンセカイブンカイサン、フジサン、セカイブンカイサンセンター、セカイブンカイサン 
代理人 平野 泰弘 

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