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審決分類 審判 判定 その他 属する(申立て成立) X35
管理番号 1290797 
判定請求番号 判定2013-600031 
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2014-09-26 
種別 判定 
判定請求日 2013-09-25 
確定日 2014-08-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第5447872号商標の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 役務「経営に関する助言,財務書類の作成又は監査」について使用するイ号標章は,登録第5447872号商標に係る商標権の効力の範囲に属する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5447872号商標(以下「本件商標」という。)は,「優慶パートナーズ」の文字を横書きしてなり,平成22年9月13日に登録出願,第35類「経営の診断又は経営に関する助言,財務書類の作成又は監査若しくは証明,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,電子計算機又はこれらに準ずる事務用機器の操作」及び第45類「訴訟事件その他に関する法律事務,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介」を指定役務として,同23年11月4日に設定登録されたものである。

第2 イ号標章
請求人が,被請求人が役務「財務書類の作成並びに経営の診断又は経営に関する助言,財務書類の作成又は監査若しくは証明,書類の複製,文書または磁気テープのファイリング,電子計算機又はこれらに準ずる事務用機器の操作」について使用する標章として示した標章(以下「イ号標章」という。)は,別掲のとおり,「UKパートナーズ会計事務所」の文字を横書きしてなるものである。

第3 請求人の主張
1 請求の趣旨及び証拠方法
請求人は,被請求人が役務「財務書類の作成並びに経営の診断又は経営に関する助言,財務書類の作成又は監査若しくは証明,書類の複製,文書または磁気テープのファイリング,電子計算機又はこれらに準ずる事務用機器の操作」(以下,当該役務を「請求の趣旨に係る役務」という。)について使用するイ号標章は,本件商標に係る商標権の効力の範囲に属する,との判定を求め,その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ,証拠方法として,判定請求書において甲第1号証及び甲第2号証(枝番を含む。)を,判定請求弁駁書において甲第3号証ないし甲第9号証を提出した(審決注:請求人は,判定請求弁駁書において提出した甲号証を甲第1号証ないし甲第7号証としているが,判定請求書で提出した甲号証の番号と一部重複するので,当判定において,甲第3号証ないし甲第9号証に改める。)。
なお,判定請求書(平成25年12月18日付けで補正されたもの)には,「1 判定請求事件の表示」として「第5447873号商標登録判定請求事件」と書されているが(下線は当合議体が付加),「4 請求の趣旨」には「登録第5447872号商標の商標権の効力の範囲に属する」との判定を求める旨明記されており,被請求人も,登録第5447872号商標に対応して答弁しているので,上記「第5447873号商標登録判定請求事件」は,「第5447872号商標登録判定請求事件」の誤記であるものとして扱った。
2 請求の理由
(1)請求の必要性
請求人は,2008年9月に現在の事務所用ビルを購入し,「UK」ビルと命名,翌2009年4月に有限責任事業組合(LLP)を「優慶パートナーズ」の名称にて設立,同時にホームページを開設し,広く「優慶パートナーズ」の名称を告知した。請求人は,2010年9月13日に本件商標について商標登録出願し,2011年11月4日に商標登録された。その後,請求人は,全く同一の称呼を用いて,同じく税理士業務を営む会計事務所をインターネット上で発見したため,被請求人に2013年9月20日付にて警告状を送付した。翌10月9日付にて「貴殿の商標は存じていた」が「特に気にしませんでした。」との回答を受領した。そのため,請求人は,意図的な侵害(悪意)を感じ,今後,侵害訴訟を提起することを検討している状況である。そこで,提起前に特許庁に判定を請求し,その結果次第で最終決定したいと思料している。
(2)イ号標章の説明
イ号標章の態様は,別掲のとおりであり,被請求人は,2010年4月頃から2011年頃までは,東京都港区赤坂2-17-50及び東京都板橋区成増1-27-15NOGUCHIビル203の2箇所にオフィスが所在し,イ号標章を使用しており,2013年9月現在では,東京都港区赤坂2-17-50のみがオフィスとしてホームページに掲載されている。
インターネット上において,事務所の案内あるいはセミナーの案内広告にてイ号標章を使用していることを確認している。推定であるが,業務上の必要性から,当然に名刺・領収書にも使用していると考えられる。
(3)イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明
イ号標章との比較を外観・称呼・観念の各点から検討すると,
ア 外観
本件商標は,漢字と片仮名から構成され,イ号標章は,アルファベットと片仮名から構成されている。両標章の共通部分は,片仮名部分の「パートナーズ」であり,全く同一であるが,当該部分は一般名称であり,商標の主要部ではない。主要部は「ユウケイ」の部分である。これを比較すると,外観的には漢字とアルファベットと表記方法が異なっている。
イ 称呼
本件商標及びイ号標章の称呼は,共に「ユーケーパートナーズ」あるいは「ユウケイパートナーズ」で,両者は全く同一である。指定役務に係る税理士業務・コンサルティング業務は,商品の様な具体的な形を持たないサービスという無形物である。その無形物に係る商標では,称呼がきわめて重要な機能を果たしているため,需要者に与える影響が大きい。
ウ 観念
本件商標は,漢字を用いているため,漢字本来の意味が観念される。すなわち,「優」は優れている様,「慶」は,よろこぶ,めでたいことを意味しており,「優慶」で,「すぐれてめでたい」ことを観念させる造語である。
この由来は,商標の権利者である牛島(Ushijima)と喜多(Kita)の頭文字のUとKである。このUとKから,良い意味を持たせられるような漢字を選択し造語したものである。これに対し,イ号標章は,アルファベット大文字で記載されているため,「UK」単独であれば「United Kingdom」の略称として観念され,この理解によれば,観念としては異なっているが,イ号標章の使用者を見ると,代表者の内山のUと樺澤のKとを用いて「UK」の由来としているものと推定される。すなわち,本件商標と同じく,引用商標が名字の頭文字から作成されていることを考え併せると,本件商標とイ号標章は,共に,名字に基づいた標章であり,観念的に同一と考えられる。
以上より,本件商標とイ号標章は,称呼及び観念において完全に同一であるため,両者を識別することが著しく困難な状況にある。そのため,イ号標章の存在により出所の混同が生じ,自他役務識別力が喪失され,不正な競争状態がもたらされ,弊所の業務上の信用維持が図れず,ひいては需要者の利益保護をも図れず,正当な取引秩序を維持できない。また,イ号標章は,税理士として会計事務所の名称に使用しているので,権利者と全く同一の役務を提供しており,権利侵害が発生している。
(4)結び
こうしたことから,請求の趣旨のとおりの判定を求める次第である。
3 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は,平成22年4月1日から,屋号として「UKパートナーズ会計事務所」を使用し,税理士業務を行っていると答弁している。察するに,「先使用(権)」の抗弁をしようとしているものと考える。そこで,商標法32条1項の先使用についての規定を確認すると,要件1「他人の商標登録出願前から」,要件2「日本国内において」,要件3「不正競争の目的でなく」,要件4「商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について」及び要件5「(商標又はこれに類似する商標の使用をしていた結果,)商標登録出願の際現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとき」である。これら5つの要件全てを満足しているか否か,被請求人は,明確に判断できる資料を答弁書において提示していないので,以下,順次個別に確認する。
要件1について,被請求人は,本件商標の商標登録日である平成23年11月4日より以前の平成22年4月1日から,イ号標章の使用を開始したと主張するが,先使用の主張であるならば,その要件は商標登録日ではなく,登録商標の出願日であり,実際に被請求人が平成22年4月1日時点にて使用していたとする事実を証明する資料が何ら開示されていないから,当該日に本当に上記標章を使用していたのか疑わしく,かつ,客観的な証拠の提出がないので,現時点では要件1は満たしていない。
要件2について,本要件に関する何らの記述もなく,どこで使用していたのか不明であり,被請求人は,現実の使用状況を証明していないので,要件2も満たしていない。
要件3について,請求人は,不正競争の意図があったと考える。その根拠として,「優慶パートナーズ」及び「UK Partners」の両標章を,平成21年6月付郵便(甲3)及び同年8月21日付郵便(甲4)の時点にて既に使用開始していた客観的事実を請求人は証明できるからである。甲第1号証は,請求人からの優慶パートナーズ開設挨拶状に対する返信の封筒前面に記載されている宛先である。甲第4号証は,専門委員を務める知的財産高等裁判所からの事務連絡に関する封書で,その前面に標章(優慶パートナーズ)が記載され,第三者が優慶パートナーズを認識して使用していることを証明している。つまり,被請求人は,平成22年4月1日より使用開始したと答弁しているが,そのおよそ1年以前において,請求人は「優慶パートナーズ」/「UK Partners」を既に使用開始しており,また,ホームページも開設していたので,被請求人は,同ページを観て気に入り,税理士同業であるにもかかわらず敢えて使用を開始したと推定される。その理由は,平成25年9月20日付で被請求人に送付した「商標権侵害による警告通知書」(甲5)を,同年9月20日付にて受領したとの「配達証明書」(甲6),被請求人より同年10月9日付にて回答書(甲7)が返送されたところ,同回答によると「弊所も以前から貴殿の商標は存じておりましたが,貴殿と弊所の業務内容は異なるとの認識を持っていましたので,特に気にしていませんでした。」と記述しており,被請求人は,請求人が税理士業務に「優慶パートナーズ」あるいは「UK Partners」を商標として使用していることを知悉しながら,敢えて,「UK パートナーズ」を,同業の税理士として使用開始したものであり,被請求人が使用開始するまでに請求人が築いてきた業務上の信用にフリー・ライドするものであって,取引上の信義則に反すると共に,故意かつ重過失といわざるを得ない。なぜならば,同業の税理士でありながら「業務内容が異なるとの認識」と主張しており,もし請求人が弁理士で被請求人が税理士であれば業務内容は異なるとの主張は納得のいくものであるが,行える業務内容が税理士法により規定されている同業であるにもかかわらず,このような答弁をすることに不正競争の意図があり,要件3も満たしていない。
要件4について,請求人に係る本件商標は,第35類「経営の診断又は経営に関する助言,財務書類の作成又は監査若しくは証明,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,電子計算機又はこれらに準ずる事務用機器の操作」及び第45類「訴訟事件その他に関する法律事務,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介」を指定役務としているが,これに対し,被請求人の役務を,履歴事項全部証明書(乙2)の目的欄で確認すると,「(1)企業・税務会計事務所等における経理,給与計算,書類整理等の事務処理,書類提出代行業務」「(2)経営,財務会計,法務,税務等に関するコンサルティング業務」「(3)不動産の売買,賃貸,管理業務」「(4)前各号に附帯関連する一切の事業」と登記されている。
そこで両者(指定役務と登記簿目的欄)を比較すると,まず,請求人の「経営の診断又は経営に関する助言」が,被請求人の「(2)経営,財務会計,法務,税務等に関するコンサルティング業務」にそのまま該当する。法務・税務との記載が指定役務にないとの指摘があるかもしれないが,それらは当然に経営の診断又は助言の中に含まれるものであり,全く同一の役務といえる。次に,請求人の「財務書類の作成又は監査若しくは証明,書類の複製」に,被請求人の「(1)企業・税務会計事務所等における経理,給与計算,書類整理等の事務処理,書類提出代行業務」が該当し,請求人の「文書又は磁気テープのファイリング,電子計算機又はこれらに準ずる事務用機器の操作」は,被請求人の「(4)前各号に附帯関連する一切の事業」に読み込まれるので,これに類似する役務までをも対象として判断すると,被請求人は要件4に該当する。
要件5について,本件商標の登録出願日である平成22年9月13日時点において,被請求人の商標を役務について使用していることが「需要者の間に広く認識されている」ことが必要である。答弁書によれば,「平成22年7月9日以降1?2箇月に1回程度」折込みチラシに掲載されたとあるが,合計何回で,どれくらいの期間にわたり実施したのか不明であると共に,添付されている証拠が平成22年7月9日の1回分のみであり,「1?2箇月に1回程度」配布した証拠が提示されていない。そのため,実際に答弁どおり実行していたのか否か確認できないと共に,その手段は,新聞の「折り込みチラシ」にすぎず,配布された地域も特定されていない。「広く公に知られている」ということを証明するには,余りに脆弱な証拠であり,登録商標出願の時に既に「周知又は著名」になっている(商標法32条)との証明は,何らなされていない。さらに,チラシ広告は,不動産仲介会社の「大森センター」に係るものであり,自らの事務所が,事務所の宣伝をするために配布したものではなく,あくまでも不動産販売の広告付随的事項として記載され,また,極めて限定された地域に折り込みの広告として配布されたものであり,積極的な意味での宣伝とは解しがたい。以上より,被請求人が主張する「広く公に知られている」との主張は,商標法32条1項が予定する水準と大きくかけ離れたもので,反論としての有効性に乏しく,要件5を満たしていない。
加えて,この合同会社の成立日は平成23年2月4日とあり,チラシは平成22年7月9日とされ,チラシは何の誰を掲載したのかに係る主体が答弁内容と証拠との関係等において大変混乱しており,添付された証拠は,誰の活動を証明しているのか明確でない。合同会社と事務所との関係が何ら説明されていないため,主体が誰か何のための合同会社なのか被請求人の答弁に疑問を強く感ずる。この意味からも提出された証拠は意味をなさない。
以上のとおり,商標法32条1項の先使用に係る被請求人の主張は認められず,先使用権の抗弁は排除されるべきものである。
(2)請求人は,現在,第36類「税務代理・税務相談他」を指定役務として商標登録出願中である。被請求人は「税務相談・税務代理」を税理士業務として提供しているので,本件商標の指定役務と同一又は類似の範囲に属さないとの主張かと推察する。しかしながら,答弁書に添付の履歴事項全部証明書に記載の目的欄は,上記(1)で引用したとおりであって,このうち「(2)経営,財務会計,法務,税務等に関するコンサルティング業務」が税務相談に該当すると思われるが,「税務代理」は目的外であり,提供していないと判断できる。それにもかかわらず,「税務相談・税務代理」業務のみを提供しているとの主張と矛盾する。また,被請求人の会計事務所のホームページ(http://ukpartners.jp/service.html)(甲8)において,「税務・監査・会計経理支援」をベーシックサービスとし,コンサルティングサービスとして「事業承継・組織再編・相続税贈与税コンサルティング・不動産活用・M&A・経営コンサルティング・IPO」を提供するサービスとして掲載している。これらの業務のうち,ベーシックサービスは,本件商標の指定役務第35類中の「財務書類の作成又は監査若しくは証明」に該当し,コンサルティングサービスは,同じく第35類の「経営の診断又は経営に関する助言」に該当する。このことから,被請求人が第36類「税務代理・税務相談」のみを提供しているというのは虚偽の陳述である。
(3)被請求人は,答弁書において,「記載内容は誤りである。・・・判定請求人は税理士ではないため,税理士業務を行うことはできないからである。」と主張するが,請求人は,平成10年7月22日に税理士登録(甲9)済みであり,現在,優慶パートナーズ会計事務所の屋号にて営業中である。このことは,甲第5号証の右側上段に,発信元として「牛島正晴(優慶パートナース会計事務所・代表)」と記載してあり,この時点で,被請求人は,請求人が税理士あるいは公認会計士の資格者であることは容易に認識でき,併せて,税理士会の登録名簿等を確認することにより請求人が資格者か否かの裏付けを取ることは極めて簡単であり,少なくとも,過去において信託銀行の勤務経験があり,かつ,税理士登録できるほどの能力ある者であるならば,その豊富な実務経験からも,確認するのが実務家としての当然のスタイルかと思料する。それにもかかわらず,「記載内容は誤りである」と主張し,かつ「判定請求人は税理士ではないため,税理士業務を行うことはできない」との答弁を敢えて行う意図に強い疑念を禁じ得ない。
(4)請求人は,被請求人による,本件商標を侵害していないとの答弁を改めて否認する。理由は,上述のとおり,被請求人が答弁書に記載した「答弁の理由」は全て誤った認識によるものであり,それらの前提に基づいた被請求人の結論は,本件商標に対する侵害の事実を否定する根拠及び理由は何ら示されていない。以上より,再度,被請求人の答弁をここに否認する。

第4 被請求人の答弁
1 答弁の趣旨及び証拠方法
被請求人は,イ号標章は,本件商標に係る商標権の効力の範囲に属さないとの判定を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。
2 答弁の理由
(1)被請求人は,請求人が本件商標を商標権登録した平成23年11月4日より以前の平成22年4月1日から,樺澤智生税理士事務所(法律名)の屋号に「UKパートナーズ会計事務所」を使用し税理士業務を行っており,また,平成23年2月4日には「UKパートナーズ会計事務所合同会社」を設立登記し,税務コンサルティング業務を行っている。
(2)「UKパートナーズ会計事務所」は,平成22年7月9日以降1?2箇月に1回程度,日刊新聞(朝日,読売,日経等)の折込みチラシ(みずほ信不動産販売株式会社大森センター,本店,自由が丘センター,渋谷支店等の無料相談)に掲載され,広く公に知られている。
(3)被請求人の提供する役務内容は,税理士業務であり,本件商標の指定役務には属さず,第36類「税務相談,税務代理」に属する。被請求人は,現在,第36類の商標登録出願中である。
(4)請求人は,請求書の「請求の理由」において,「提供する業務が税理士業と同一のため指定役務が同一で権利侵害の状況にある」と記載しているが,記載内容は誤りである。なぜならば,請求人は,税理士ではないため,税理士業務(指定役務第36類「税務相談,税務代理」)を行うことはできない(第36類の商標登録をしていない。)からである。
(5)したがって,被請求人の提供する役務の内容は,本件商標の指定役務には該当しないため,被請求人は,請求人の権利を侵害していない。

第5 当審の判断
請求人は,被請求人が請求の趣旨に係る役務について使用するイ号標章は,本件商標に係る商標権の効力の範囲に属する,との判定を求めているので,以下,判断する。
なお,本件商標の指定役務は,前記第1のとおりであって,これに第36類「税務相談,税務代理」は含まれていない。また,上記のとおり,請求人は,「税務相談,税務代理について使用するイ号標章が本件商標に係る商標権の効力の範囲に属する」との判定を求めているものではない。
1 イ号標章について
(1)標章について
イ号標章は,別掲のとおり,「UKパートナーズ会計事務所」の文字をゴシック体で横書きしてなるものである。そして,甲第8号証は,被請求人に係るウェブサイトの写しと認められるものであるところ,当該証拠によれば,被請求人に係るウェブサイトにおいて,イ号標章と同一のものと認められる標章が使用されていることが認められる。
(2)イ号標章が使用される役務について
甲第8号証によれば,被請求人に係るウェブサイトにおいて,イ号標章の下,「業務内容」と大見出しが掲載され,その下に,「ベーシックサービス」の見出しにて,「当事務所には,大手監査法人で豊富な実務経験を経た公認会計士が在籍しています。その知識と経験を最大限に発揮し,貴社を全面的にサポートします。」の記載と共に,「法定監査」「任意監査等」と記載されている。また,「会計経理支援」の見出しにて,「記帳代行から資金繰りまで,会計業務を幅広くサポートしています。また,定期的な巡回監査によるお客様とのコミュニケーションを大切にしています。」の記載と共に,「財務諸表作成」「連結決算書作成」が記載されている。さらに,「経営コンサルティング」の見出しにて,「業績向上,売上アップ,事業再生等,お客様の状況に応じ,様々なサービスを提供します。」と記載されている。
これらは,「UKパートナーズ会計事務所」の標章の下,被請求人が提供するサービス(役務)内容を表示しているとみるのが自然であるから,被請求人は,イ号標章を,法定監査,任意監査,財務諸表の作成,連結決算書作成及び経営コンサルティングの役務について使用しているということができる。
2 本件商標とイ号標章の類否について
(1)本件商標について
本件商標は,前記第1のとおり,「優慶パートナーズ」の文字を横書きしてなるから,該構成文字より「ユーケーパートナーズ」の称呼を生じ,「優慶」は,辞書等に掲載の見受けられない一種の造語と認められるから,「優慶パートナーズ」全体としても特定の観念を生じないものである。
(2)イ号標章について
イ号標章は,別掲のとおり,「UKパートナーズ会計事務所」の文字をゴシック体で横書きしてなるところ,この構成中,「会計事務所」の文字部分は,税理士業務やコンサルティング業務を行う事務所の名称として,「○○会計事務所」というように広く多用されており(例えば「税理士法人アルタ東京会計事務所」http://www.alta-tokyo.com/,「ベンチャーインク会計事務所」http://ventureinq.jp/,「ART会計事務所」http://www.artkaikei.com/pc/など),自他役務を識別する機能を有さないか,有するとしても極めて弱いものと認められるから,イ号標章は,「UKパートナーズ」の文字部分のみをもって取引に資されることも決して少なくないというのが相当である。
してみれば,イ号標章は,「UKパートナーズ」の文字部分から「ユーケーパートナーズ」の称呼をも生じ,「UKパートナーズ」は,辞書等に掲載の見受けられない一種の造語と認められるから,特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標とイ号標章の類否について
本件商標とイ号標章は,上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるものであるから,両者は,外観において,全体としては相違するが,本件商標及びイ号標章は,いずれもその構成中に「パートナーズ」の片仮名を有しているから,一定程度の類似性を有するといえるものである。また,本件商標とイ号標章は,「ユーケーパートナーズ」の称呼を共通にしており,しかも,両者共に特定の観念を生じないものであるから,観念上も両者を区別することはできない。
そうすると,本件商標とイ号標章は,これらを総合的に勘案すれば,互いに類似のものというのが相当である。
3 本件商標の指定役務とイ号標章を使用する役務との類否について
本件商標の指定役務は前記第1のとおりであり,請求の趣旨に係る役務は前記第3,1のとおりであり,イ号標章は,上記1のとおり,法定監査,任意監査,財務諸表の作成,連結決算書作成及び経営コンサルティングの役務について使用されていると認められるものである。
そして,イ号標章が使用される役務中「法定監査,任意監査,財務諸表の作成,連結決算書作成」が,請求の趣旨に係る役務中「財務書類の作成又は監査」の範ちゅうに含まれることは明らかである。
また,イ号標章が使用される役務中「経営コンサルティング」は,「コンサルティング」が「専門的な事柄について,相談に乗ったり指導したりすること。」(広辞苑第六版)の意味を有することから,その役務の内容は経営に関する相談に乗ったり指導したりすることと認められ,請求の趣旨に係る役務中「経営に関する助言」の範ちゅうに含まれるものである。
さらに,上記請求の趣旨に係る役務「財務書類の作成又は監査」及び「経営に関する助言」は,本件商標の指定役務中「経営の診断又は経営に関する助言,財務書類の作成又は監査若しくは証明」に含まれるものである。
4 小括
上記2及び3からすれば,被請求人が「経営に関する助言,財務書類の作成又は監査」の役務について使用するイ号標章は,本件商標と類似するものであって,かつ,本件商標の指定役務中「経営の診断又は経営に関する助言,財務書類の作成又は監査若しくは証明」に含まれる役務について使用をするものであるから,本件商標の効力の範囲に属するというべきである。
5 被請求人の主張について
(1)被請求人は,被請求人の提供する役務内容は,第36類「税務相談,税務代理」に属し,本件商標の指定役務には属さない旨主張し,3件の商標登録願の写しを提出している(乙4)。(なお,これら3件の商標については,既に「税務相談,税務代理」を指定役務とし,登録第5678557号商標,登録第5678558号商標及び登録第5678559号商標としてそれぞれ登録されている。)
しかしながら,被請求人が「税務相談,税務代理」についてイ号標章を使用しているとしても,上記1のとおり,被請求人は,法定監査,任意監査,財務諸表の作成,連結決算書作成及び経営コンサルティングの役務についてもイ号標章を使用しているものである。また,そもそも請求人は,「税務相談,税務代理」に使用するイ号標章が,本件商標に係る商標権の効力の範囲に属するとの判定を求めているものではない。
したがって,上記被請求人の主張は,採用することができない。
(2)被請求人は,「UKパートナーズ会計事務所」は,広く公に知られている旨主張し,乙第3号証を提出する。イ号標章が,被請求人の名称若しくは著名な略称普通に用いられる方法で表示する商標である場合には,商標法26条1項1号にいう「自己の…名称…若しくはこれらの著名な略称普通に用いられる方法で表示する商標」に該当し,したがって,本件商標に係る商標権の効力がイ号標章に及ばないこととなるが,被請求人の答弁及び乙号証によれば,平成23年2月4日に「UKパートナーズ会計事務所合同会社」が設立され(乙2/履歴事項全部証明書),同名義において商標登録出願を行っていることが認められる(乙4)一方,「UKパートナーズ会計事務所」の名にてパンフレットが作成され(乙1),折り込みチラシが作成されていることが認められる(乙3)。
これらからすると,被請求人の名称は「UKパートナーズ会計事務所合同会社」であり,「UKパートナーズ会計事務所」はその略称と認められる。
そして,被請求人は,「UKパートナーズ会計事務所」は,平成22年7月以降,1?2箇月に1回程度,日刊新聞の折り込みチラシに掲載された旨主張し,乙第3号証を提出するが,これのみによって,「UKパートナーズ会計事務所」が,「UKパートナーズ会計事務所合同会社」の略称として,全国的規模の需要者に広く知られるようになったものとはいい難い。また,職権による調査によっても,例えば,「UKパートナーズ会計事務所」が,広い範囲の新聞,雑誌において長年にわたって継続的に広告されていること,継続的にテレビ広告されていることなどを確認することができなかった。 そうすると,「UKパートナーズ会計事務所」が「UKパートナーズ会計事務所合同会社」の略称として著名であるとはいい難い。
したがって,イ号標章は,商標法26条1項1号にいう「自己の名称」に該当するものではなく,「著名な略称」に該当するものということもできないから,同条項を根拠に,本件商標に係る商標権の効力がイ号標章に及ばないということはできない。
6 結語
以上の次第であるから,被請求人が役務「経営に関する助言,財務書類の作成又は監査」について使用するイ号標章は,本件商標に係る商標権の効力の範囲に属するものである。
よって,結論のとおり判定する。
別掲 別掲(イ号標章)




特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
判定日 2014-08-12 
出願番号 商願2010-75362(T2010-75362) 
審決分類 T 1 2・ 9- YA (X35)
最終処分 成立 
特許庁審判長 土井 敬子
特許庁審判官 梶原 良子
守屋 友宏
登録日 2011-11-04 
登録番号 商標登録第5447872号(T5447872) 
商標の称呼 ユーケーパートナーズ、ユーケー、パートナーズ 
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