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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W0910
審判 一部申立て  登録を維持 W0910
審判 一部申立て  登録を維持 W0910
管理番号 1290786 
異議申立番号 異議2014-900056 
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-09-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2014-02-24 
確定日 2014-08-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第5632373号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5632373号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5632373号商標(以下「本件商標」という。)は、「PRF(IHY)セット」の文字を標準文字で表してなり、平成25年7月26日に登録出願、第9類「理化学機械器具」、第10類「おしゃぶり,氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,哺乳用具,魔法哺乳器,綿棒,指サック,医療用機械器具」及び第44類「美容,医業,歯科医業,栄養の指導,セラピー,動物の治療,動物の美容」を指定商品及び指定役務として、平成25年11月22日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性
本件商標は、「多血小板フィブリン」(Platelet Rich Fibrin)の略称である「PRF」を含むものであるから、「多血小板フィブリン作成用の商品」に使用するときは、商品の品質を表示するにすぎず、これ以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性
本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は、登録異議申立人(以下「申立人」という。)の関連子会社として平成18年8月4日に設立された会社であり、A氏は、本件商標権者の代表取締役である(甲14)。A氏は、平成24年10月15日に、申立人の代表取締役を辞任し、平成24年12月3日には取締役も辞任した。申立人の代表取締役として勤務していたA氏は、「PRP(IHY)セット」及び「PRF(IHY)セット」が申立人の販売する商品に関連するものであることを知っていたにもかかわらず、申立人がこれらの商標を登録していないことを奇貨として、申立人の取締役辞任の1週間後に「PRP(IHY)セット」の登録出願を、また、辞任の7ヶ月後に本件商標の登録出願をした。加えて、本件商標権者は、IPOI学会の会員に対し、PRPキットをはじめ、申立人が取り扱ってきたすべての商品について、平成24年9月5日より本件商標権者が引き継ぐことになった旨の偽りの通知を出し、顧客を獲得しようとした。
したがって、本件商標の登録出願は、悪意に基づくものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品及び指定役務中、第9類及び第10類の全指定商品について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号並びに同第7号に違反してされたものであるから、取り消されるべきである。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
申立人は、本件商標は、「多血小板フィブリン」(Platelet Rich Fibrin)の略称である「PRF」を含むものであるから、「多血小板フィブリン作成用の商品」に使用するときは、商品の品質を表示するにすぎない旨主張し、「PRP(IHY)セット」の文字を標準文字で書してなる商標登録出願(商願2012-99927)が商標法第4条第1項第16号に該当するとした拒絶理由通知書(甲2)等を提出する。
しかし、申立人は、「多血小板フィブリン」(Platelet Rich Fibrin)の略称である「PRF」が、本件登録異議の申立てに係る第9類及び第10類の全指定商品(以下「本件指定商品」という。)との関係において、いかなる意味・用途・作用・効果等をもって特定の商品の品質を表示するものであるかについて、これを明らかにする証拠を何ら提出していない。なお、「PRF」の検索結果(甲1)からは、「PRF」(Platelet Rich Fibrin)が19件ヒットしたことが分かるのみで、「PRF」の詳細については理解することができない。
加えて、商標法第3条第1項第3号は、「その商品の産地、販売地、品質・・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は、商標登録を受けることができないと規定しているところ、本件商標は、前記1のとおり、「PRF(IHY)セット」の文字を標準文字で表してなるものであって、少なくとも特定の意味合いを理解させない造語を表したと認められる「(IHY)」の文字を含む商標であるから、「PRF」のみからなる商標でないことは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する商標と認めることができない。
(2)商標法第4条第1項第16号について
上記(1)認定のとおり、申立人は、本件商標中の「PRF」の文字部分が、本件指定商品との関係において、いかなる商品の品質を表示するものであるかについて、これを明らかにする証拠を何ら提出していないのであるから、本件商標を本件指定商品に使用した場合において、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものと認めることはできないといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する商標と認めることはできない。
(3)商標法第4条第1項第7号について
ア 商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き、その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には、その商標は商標法第4条第1項第7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。しかし、同号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として、商標自体の性質に着目した規定となっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること、及び、商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである。(東京高等裁判所 平成14年(行ケ)第616号事件)
イ 本件商標は、「PRF(IHY)セット」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成が、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字よりなるものということはできない。
そこで、本件商標がその登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当するものであるか否かについて、以下検討する。
(ア)申立人の提出した証拠(各項の括弧内に掲記)によれば、以下の事実を認めることができる。
a 申立人は、平成17年(2005年)4月1日付けで、「PRPスピッツ(IHY)セット」及びこれを含む「PRP(多血小板血漿)IHY臨床セット」の販売に関するパンフレットを作成した(甲5)。
また、申立人は、平成19年1月5日付けで、遠心器等を含む「PRPスピッツセット(JP200)一式」や「PRP(多血小板血漿)スピッツ臨床セット」について、注文書及びその販売に関するパンフレットを作成した(甲6、甲7)。
b 申立人は、平成20年1月5日付けで、「PRPの分離から臨床応用/(一日実習&マスターコース)」、「講師 林 佳明(村松歯科医院院長)」と題するパンフレットを作成した(甲8)。該パンフレット中には、申立人の販売に係る「PRPスピッツセット(JP200)システム(美外・形成用)」の広告が含まれている。
c 表題を「サイナスフロアエレベーション/形態からみる難易度別アプローチ」(山道信之、糸瀬正通著、2008年(平成20年)6月10日、クインテッセンス出版株式会社発行)とする書籍には、PRPに関する技術が紹介されている(甲9)。
d 申立人は、2010年(平成22年)3月1日付けで、「PRP(IHY)キット、PRP(JP200)セットをご使用の院長先生へ。」と題し、「PRP(IHY)(JP200)システムの改良法について」を掲載し、当該商品の販売に関するパンフレットを作成した(甲10)。なお、同パンフレット4頁には、「PRP(IHY)キット、(JP200)セットでPRF作成法」の記載がある。
e 申立人は、平成23年10月1日改定版で、「PRPの分離から臨床応用/(一日実習&マスターコース)」、「内容;PRP(IHY)(JP200)システムに共用のマニュアル。/PRF作成の共用マニュアル。」と題する資料を作成した。同資料の5頁には、「PRF(CGF)の使用意義と作成法(1回法)」とあり、「糸瀬、林、山道(IHY)先生が考案の弊社システムは、PRF(省略)が同時に出来て簡単に作成できます。・・・自分のPRPセットで1度作成、1回法でできるジェルを確認して下さい。」などの記載がある(甲11)。
f 申立人は、平成23年7月2日に開催された「近未来オステオインプラント学会/第4回学術大会抄録集」において、「テーブルトップ遠心機/Model 2420 PRP仕様III 」の広告を掲載しており、そこには、「PRP(IHY)セット、各種パーツ、補填剤のご注文をお受け賜ります。」などの記載がある(甲12)。
g 本件商標権者は、「医療用機器及び器具の製造、販売及び輸出入」等を目的として、平成18年8月4日に設立された会社であり、その本店所在地は、平成25年3月4日に東京都文京区本郷三丁目9番9号に移転するまでは、申立人と同じであった。また、申立人は、「医療用機械器具の輸出入及び販売」等を目的として、平成4年8月21日に設立された会社であり、A氏は、その代表取締役を平成24年10月15日に辞任し、取締役を同年12月3日に辞任した。なお、A氏が本件商標権者の取締役に就任した日付は明らかではないが、平成25年3月4日に、その代表取締役として住所の移転があり、平成25年4月11日に本件商標権者の登記簿に登記された(甲4、甲14)。
h 本件商標権者は、「IPOI学会会員の先生各位」と題する書面において、申立人が提供してきた「PRPキット」をはじめとする全ての商品について、平成24年9月5日に申立人から本件商標権者が引き継ぐ旨の通知をし、当該書面において、申立人がIPOI学会の賛助会員でないことも付け加えた。ただし、当該書面には、日付が記載されていない(甲13)。
(イ)上記(ア)で認定した事実によれば、申立人は、遅くとも平成17年頃から、「PRPスピッツ(IHY)セット」、「PRP(多血小板血漿)IHY臨床セット」、「PRP(IHY)キット」、「PRP(JP200)セット」等を販売していたこと、平成22年3月頃から、「PRP(IHY)キット」、「PRP(JP200)セット」を用いたPRFの作成法を紹介していたことなどを認めることができる。
また、申立人の代表取締役であったA氏は、平成24年10月15日に申立人の代表取締役を辞任し、同年12月3日に取締役を辞任したこと、本件商標は、本件商標権者により平成25年7月26日に登録出願されたところ、本件商標の登録出願時には、A氏は、本件商標権者の代表取締役に就任していたこと、を認めることができる。
してみると、A氏は、申立人が平成17年頃から「PRPスピッツ(IHY)セット」、「PRP(多血小板血漿)IHY臨床セット」、「PRP(IHY)キット」、「PRP(JP200)セット」等の商品を販売していた事実、平成22年3月頃から、「PRP(IHY)キット」、「PRP(JP200)セット」を使用してPRFの作成法を紹介していた事実を十分に知っていたものと推認することができる。
しかし、申立人の提出した証拠からは、申立人が、「PRF(IHY)セット」の表示を用いた医療機械器具の販売を行っていたと認めるに足りる明確な証拠の提出はない。加えて、本件商標権者がIPOI学会の会員に宛てた書面(甲13)には、申立人が提供していたすべての商品を本件商標権者が引き継ぐ旨の記載があるものの、申立人が「PRF(IHY)セット」の表示を用いた医療機械器具の販売を行っていたと認めるに足りる明確な証拠がない以上、「申立人が提供していたすべての商品」中に「PRF(IHY)セット」と表示した医療機械器具は含まれていないと優に推認することができる。付言すれば、上記IPOI学会の会員に宛てた書面(甲13)には、この種の通知に通常あるべき通知した日付の記載がなく、しかも、この通知が偽りのものであったと認めるに足りる裏付けとなる証拠の提出もない。
そうすると、本件商標権者による本件商標の登録出願は、申立人の使用する「PRF(IHY)セット」の表示を剽窃したなど悪意に基づくものということはできないから、本件商標は、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くと認めるべき事情があるものと認めることができない。
その他、本件商標が、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」とみるべき理由があると認めるに足りる証拠の提出はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない商標と認める。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品及び指定役務中、申立てに係る指定商品について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号並びに同第7号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2014-07-30 
出願番号 商願2013-58194(T2013-58194) 
審決分類 T 1 652・ 272- Y (W0910)
T 1 652・ 22- Y (W0910)
T 1 652・ 13- Y (W0910)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 斎 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 田中 亨子
井出 英一郎
登録日 2013-11-22 
登録番号 商標登録第5632373号(T5632373) 
権利者 ビーエスメディカル株式会社
商標の称呼 ピイアアルエフアイエッチワイセット、ピイアアルエフアイエイチワイセット、ピイアアルエフアイエッチワイ、ピイアアルエフアイエイチワイ、ピイアアルエフセット、ピイアアルエフ、アイエッチワイ、アイエイチワイ 
代理人 押本 泰彦 
代理人 松宮 尋統 

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