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審決分類 |
審判 判定 その他 属する(申立て成立) X26 |
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管理番号 | 1288842 |
判定請求番号 | 判定2014-600001 |
総通号数 | 175 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標判定公報 |
発行日 | 2014-07-25 |
種別 | 判定 |
2014-01-20 | |
確定日 | 2014-06-12 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1261355号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | 商品「スライドファスナー」に使用するイ号標章は、登録第1261355号商標の商標権の効力の範囲に属する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第1261355商標(以下「本件商標」という。)は、「VISLON」の欧文字を書してなり、昭和48年8月9日に登録出願され、第21類「スライドフアスナー」を指定商品として同52年4月1日に設定登録され、その後、3回にわたる商標権の存続期間の更新登録のほか、平成19年12月19日に指定商品を第26類「スライドファスナー」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。 2 イ号標章 特定できない輸入者により日本国に輸入された商品「スライドファスナー」に使用された標章として、請求人が示した標章(以下「イ号標章」という。)は、別掲のとおり、「スライドファスナー」のスライダー胴体部分の裏面上部に刻印されている「VISION」の文字からなる標章である。 3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)判定請求の必要性 請求人は、本件商標の商標権者であり、イ号標章を使用する「スライドファスナー」が、日本国に輸入された事実が認められる。今後、イ号標章のような標章を使用する侵害品の輸入差止請求や国内における使用差止請求を行う際に、これら請求書の添付資料として用いるため、本件商標に係る商標権の効力範囲について確認を求めるものである。 (2)イ号標章について イ号標章は、「スライドファスナー」のスライダー胴体部分の裏面上部に刻印されているものであり、独立して自他商品識別標識としての機能を果たすものである(甲第2号証)。 (3)本件商標の周知性について 請求人は、1934年創業の「ファスニング・建材・ファスニング加工機及び建材加工機械等の製造・販売」を事業内容とする会社であって、特に、「スライドファスナー」においては、国内では95%、世界でも45%のシェアを持つトップ企業となっている(甲第3号証の1)。 また、請求人の「スライドファスナー」は、日本国内全域で製造・販売されているばかりでなく、世界71か国・地域のグループ会社等(甲3号証の2)を拠点として、世界各国にも輸出又は製造・販売されているものである。 そして、本件商標は、請求人が製造・販売する商品「樹脂製スライドファスナー」の主たる識別標識(商標)として、1975年に採択し、使用を開始して以来38年間にわたり、スライダー胴体に本件商標を刻印した上記商品(約3倍に拡大した商品現物の写真、甲第4号証)を製造・販売するとともに、商品カタログ・各種新聞・雑誌・インターネット等を通じて盛大に広告・宣伝をしてきた結果、既に請求人の業務に係る上記商品を表示する商標として、国内はもとより世界各国においても、取引者・需要者の間に広く認識されるに至っているものということができる(甲第5号証の1ないし5)。 (4)本件商標とイ号標章の類否について 商標の類否は、同一又は類似の商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察し、しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである。 ア 本件商標は、「VISLON」の文字を表してなり、イ号標章は、「VISION」の文字を表してなるものである。 イ 本件商標とイ号標章の外観についてみるに、前者は「VISLON」、後者は「VISION」の文字よりなるものであるから、両者は、看者の注意を最初にひき、かつ強く印象に残る冒頭の「V」、「I」、「S」及び後に続く5文字目以降の「O」、「N」の欧文字5文字を共通にし、異なるところは4文字目における前者の「L」、後者の「I」の欧文字に差異を有するのみである。そして、異なる「L」と「I」の文字とても、共に「VIS」と「ON」の文字に挟まれた4文字目に位置するところから、その印象は稀薄になるといい得るものである。 また、本件商標とイ号標章の使用をする「スライドファスナー」は、特殊なものを除き、スライダー部分が通常1ないし2センチ程度の極めて小さなものであって、そこに表示される標章は、スペースの関係上、小さい文字で表され、前者の「L」の文字の横線部分も短く刻印されるのが実情であるから、両者を比較観察(甲第6号証)すると、外観上酷似するものであることは明白である。 してみれば、本件商標とイ号標章は、同一書体で表されているばかりでなく、前述のように、異なる「L」と「I」の文字が印象の薄い中間に位置するものであること、小さいスペースに小さな文字で表され、「L」の欧文字も横線が短く刻印されることなどを併せ考慮すれば、上記差異が必ずしも正確に記憶されるとはいい得ないから、これを時と所を異にして離隔的に観察したときには、外観上彼此相紛れるおそれがあるものとすべきである。 ウ 本件商標とイ号標章の観念について比較すると、本件商標は、上記(3)で述べるとおり、「スライドファスナー」を表示する商標として、周知なものであるから、本件商標と外観上酷似するイ号標章に接する取引者、需要者は、「YKKのVISLONファスナー」の観念をもって取り引きに当たる場合も決して少なくないから、観念上も類似するものといわなければならない。 エ したがって、本件商標とイ号標章は、少なくとも外観において紛らわしい関係にあることは明らかであり、観念においても、上記ウで述べる程度に紛らわしいものであるから、イ号標章は、これを「スライドファスナー」に使用した場合、本件商標と、その商品の出所について混同を生ずるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。 4 当審の判断 (1)本件商標について 本件商標は、前記1のとおり、「VISLON」の欧文字を書してなり、その構成文字に相応して、「ビスロン」の称呼が生ずるものであり、また、特定の観念を生ずるものではない。 (2)イ号標章について イ号標章は、前記2のとおり、「VISION」の欧文字を書してなり、該文字は、「視力、視覚、見通す力、空想」の意味を有する英単語であるから、特段の事情がなければ、通常、その構成文字に相応して、「ビジョン」の称呼及び上記意味の観念を生ずるものである。 (3)商品「スライドファスナー」について 商品「スライドファスナー」は、留め金具を上下にすべらせて開閉する締め具であり、その構造は、かみ合う部分である務歯(むし)、務歯をかみ合わせる役目をするスライダー及び務歯を取り付けたテープからなり、務歯が左右からかみ合って機能するものである。また、スライダーの大きさは、一般的に、1センチないし2センチ程度のものである。 (4)本件商標とイ号標章との類否について 本件商標とイ号標章は、それぞれ上記(1)及び(2)のとおり、いずれも欧文字6字からなり、語頭から3字の「VIS」及び後半の「ON」の2字の配列を共通にするものであって、わずかに中間部の4文字目における「L」と「I」に差異を有するものである。加えて、「L」と「I」の文字の形状には共通する部分があり、それぞれの構成全体としてみれば、似た印象を与えるものといい得るものである。 そして、指定商品「スライドファスナー」は、上記(3)のとおりの構造及び大きさであり、該商品の取引の実情に照らせば、スライダー部分に対応した大きさの標章を商品に付して取引する場合も少なくないといえるところ、実際に、本件商標及びイ号標章は、スライダー胴体部分の裏面に付して取引されている(甲第4号証及び甲第2号証)ものである。 これらの実情を踏まえて、本件商標とイ号標章とを比較した場合、両者の「L」と「I」の差異は、微差にとどまるものといわざるを得ず、両者は、酷似した印象を与えるものというのが相当である。 してみれば、本件商標とイ号標章とは、子細にみれば、その称呼及び観念において相違するものであるとしても、取引の実情を総合して全体的に考察してみた場合、外観において酷似した印象を与えるものであって、それにより、同じ文字からなる商標であるかのごとく誤認する可能性も大きく、商品の出所について混同を生ずるおそれのある類似の標章といわなければならない。 そして、イ号標章を使用する「スライドファスナー」は、本件商標の指定商品と同一の商品である。 (5)まとめ したがって、商品「スライドファスナー」について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
別掲(上部に刻印されている文字がイ号標章:色彩については原本参照) |
判定日 | 2014-06-03 |
出願番号 | 商願昭48-127928 |
審決分類 |
T
1
2・
9-
YA
(X26)
|
最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
酒井 福造 |
特許庁審判官 |
手塚 義明 浦辺 淑絵 |
登録日 | 1977-04-01 |
登録番号 | 商標登録第1261355号(T1261355) |
商標の称呼 | ビスロン、バイスロン |
代理人 | 為谷 博 |