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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X142830
管理番号 1288740 
審判番号 取消2012-300694 
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-08-31 
確定日 2014-06-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第5105804号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5105804号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5105804号商標(以下「本件商標」という。)は、「melonkuma」の欧文字を標準文字で表してなり、平成19年6月11日に登録出願、第14類「キーホルダー」、第28類「おもちゃ,人形」及び第30類「菓子及びパン,プリン,ゼリー菓子,即席菓子のもと」を指定商品として同20年1月18日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成24年9月26日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁並びに口頭審理における陳述を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証(以下「甲1ないし甲10」のように略記する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、本件審判の請求前3年以内に、継続して日本国内において、商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれもが、その指定商品について、本件商標を使用していない事実が判明したから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきである。
2 通常使用権者による商品「クッキー」の使用について
(1)商標使用許諾契約書(乙1)について
乙1は、被請求人と株式会社Pupu Berry(以下「Pupu Berry」という。)との間における商標使用許諾契約書と題する書類(以下「本件許諾契約書」という。)であるが、その信用性には重大な疑義があるといわざるを得ない。
本件許諾契約書は、契約締結日が平成23年12月10日、当事者として、甲が株式会社Ring International(以下「Ring International」という。)、代表取締役 川〔崎〕 毅(〔崎〕は、「崎」の文字の「大」の文字部分が「立」の最終画がないものである。以下同じ。)、乙がPupu Berry、代表取締役 川〔崎〕 舞砂であるが、乙2によれば、川〔崎〕舞砂は、平成23年5月31日に株式会社Pupu Berryの代表取締役を辞任しており、平成23年12月10日時点での代表取締役は、山崎 毅である。つまり、本件許諾契約書の乙欄の記名捺印は、代表者ではない者の名が記載されているというものである。被請求人は、諸般の事情から川〔崎〕舞砂の辞任日を社会保険資格喪失日に合わせた旨主張するが、あまりに場当たり的なその場しのぎの方便であり認めることはできない。
(2)取引書類(乙4、乙6)について
乙4及び乙6は、本件商標の通常使用権者であるPupu Berryの発行に係る見積書及び請求書であるが、該取引書類に記載の郵便番号「〒151-0053」は、東京都渋谷区代々木の郵便番号であって、東京都葛飾区新小岩の郵便番号ではない。たしかに、Pupu Berryは、平成22年2月2日以前は渋谷区代々木に本店を置いていたが(乙2)、2年近くを経過した平成24年(2012年)1月及び2月に発行の見積書及び請求書に、誤った郵便番号を記載しているのは、商売を行う者の書面としてはいかにも不自然であり、その証拠能力は皆無であるといわざるを得ない。
(3)注文書(乙5)について
乙5は、株式会社三喜(以下「三喜」という。)からPupuBerryに対する注文書のようであるが、当該注文書には、注文者である三喜の担当者名の記載や印鑑の押印がない上、注文書が郵送されてきたのかFAX送信されたのか等、不自然な点等が多く見受けられる。また、三喜とPupuBerryとの間に本件商標を使用した商品に関する取引があったとするならば、その際の商品の発送伝票や納品書書類等があるはずだから、それらの書類の提出を求める。
この点に関し、被請求人は、「中間流通における納品書や受領書を省くことは一般的な経費削減の手法であり、何ら珍しいことではない。」と主張し、乙5の注文書に記載された取引に係る発送伝票や納品書等が存在しないとするが、乙5の注文書に記載の取引において、納品先として記載された「川村運送株式会社」(以下「川村運送」という。)は、注文者である三喜とは別会社であるところ、このように注文者と納品者が異なる場合、商品に関する納品書や受領書は不可欠であり、経費削減等の理由により省略されるべき書類ではない。
(4)乙6(請求書)及び乙7(入金記録)について
乙6の請求書については、見積書(乙4)の段階ではなかった「パンダクッキー」なる商品の代金も一緒に請求されているが、約50万円にものぼる請求が生じる商品について、事前に見積額の提示がないのはいかにも不自然である。
乙7は、請求書(乙6)に対する支払いがあった事実を立証する証拠であるが、請求額(¥612,360)と入金額(¥580,119)とが異なっており、被請求人は、請求額の一部が入金されたものであると主張する。 また、被請求人は、「請求書(乙6)の請求金額と入金記録(乙7)の入金記録との差額の32,241円について、その差額を含む572,574円の入金があった。」旨を主張するが、明らかに失当である。確かに、入金記録(乙42)によれば、平成24年5月1日に「カ」サンキ」の名義で572,574円の入金があったことは確認できるものの、問題となっている差額は32,241円であるから、全く金額が異なる。この入金記録(乙42)の入金額(572,574円)と差額(32,241円)の差である540,333円に係る別の取引が立証されなければ、この入金記録(乙42)をもって差額の充当であるとの被請求人の主張は、全く根拠のない、その場しのぎの方便であると断ぜざるを得ないものである。
(5)商品写真(乙8)について
乙8の写真は、商品の一側面だけの写真であり、これが商品の包装用箱であるのか、単なるチラシなのかも不明確である上、実際にクッキーが封入されているか否かも不明である。
実際にクッキーを製造したのは株式会社エリザ(以下「エリザ」という。)と主張するが、それを立証する証拠は一切ない上、本件商標と無関係の「パンダクッキー」に関する主張は意味不明である。
また、被請求人は、「製造所固有記号も三喜(販売者)とエリザ(製造元)との間で取り決め、所管官庁へ届出済みである。」旨主張するが、エリザは現在も営業を続けているのであるから、被請求人がエリザに確認して、製造所固有記号を開示することは容易なはずである。また、仮に「所管官庁へ届出済み」なのであれば、所管官庁への届出の控書類を提出することは容易なはずである。
さらに、被請求人は、パッケージ参考写真(乙8)、注文書(乙5)、請求書(乙6)により、現実に商品を包装したことが不可避的にうかがえる事例である旨主張するが誤りである。注文書(乙5)、請求書(乙6)は、いずれも関連する事実との不一致又は齟齬が認められ、不自然極まりなく、当該証拠書類自体の内容の信用性を大きく減殺させるものであって、パッケージ写真(乙8)と同一の態様の包装容器に現実に「Melonkuma手焼きクッキー」を包装した事実がない以上、本件商標の使用にはあたらないというべきである。
3 商品「ぬいぐるみ」の使用について
被請求人は、アイピーフォー株式会社(以下「アイピーフォー」という。)がぬいぐるみ(乙13)を製造した旨を主張しているが、それらを裏付ける証拠はない。
また、被請求人は、「ニッセー工業株式会社(以下「ニッセーエ業」という。)も被請求人の協力会社であり、アイピーフォーから本件商標に係る商品『ぬいぐるみ』を複数個購入した。」旨主張するが、それらのいずれについても何らの証拠もなく、失当である。
さらに、請求人は、「ニッセー工業がアイピーフォーから本件商標に係る商品『ぬいぐるみ』のサンプルを購入したことがうかがえる資料として、電子メールの受信記録を提出する。」として乙12を提出するが、乙12は証拠能力に乏しい。
以上のとおり、被請求人の「B.指定商品『人形(ぬいぐるみ)』に関する資料」における主張を裏付ける証拠は何ら提出されておらず、いずれも認めることはできない。
4 ビジネスパートナーを交えての事業と商標の使用について
被請求人は、そのビジネスパートナー(事実上の通常使用権者)を交えて事業の準備を行い、本件商標を使用していた旨主張したいようであるが、その証拠として提出されたものは、メールや議事録、企画書といった内部文書であり、該文書をもって、本件指定商品に係る具体的な取引があったことを裏付ける取引書類とみることはできない。
5 まとめ
以上のとおり、被請求人の提出に係る取引書類は、いずれも関連する事実との不一致又は齟齬が認められ、不自然極まりなく、当該証拠書類自体の内容の信用性はもとより、これに関連する他の証拠書類全体の内容の信用性をも大きく減殺させるものである。
また、被請求人は、「請求人による本件商標権への侵害行為」において,請求人との折衝などについて種々述べているが、これは商標法第50条第2項ただし書の「使用をしていないことについて正当な理由があった」との主張であると読むこともできるが、その旨は記載されていない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第54号証を提出した。
1 通常使用権者による使用
(1)本件商標権者は、平成23年12月10日に、Pupu Berryとの間で、本件商標の商標権(以下「本件商標権」という。)の全範囲につき通常使用権の許諾契約を交わした(乙1)。Pupu Berry(東京都葛飾区新小岩一丁目55番4号)は、アクセサリー関連商品の企画開発、製造、販売及びコンサルティング事業や生鮮食品及び加工食品の企画開発、製造、販売及びコンサルティング事業などを業とする企業である(乙2)。(2)PupuBerryと三喜(東京都文京区湯島三丁目28番1号:乙3)との間でやり取りされた商品「クッキー、プリン、ゼリー、パン」に関する取引書類(写し)と三喜からの入金記録(写し)を提出し、本件商標の使用を立証する。なお、PupuBerryの代表取締役が「川〔崎〕舞砂」から「山〔崎〕 毅」へと変更する届出がなされたのは、履歴事項全部証明書に記載のあるように、平成23年12月20日である。つまり、「川〔崎〕舞砂」が「PupuBerry」の代表取締役を退き、「山〔崎〕 毅」がその地位に就任した日を平成23年5月31日としたのは、諸般の事情から「川〔崎〕舞砂」が(退職ではなく)社会保険の資格を喪失した日にこれを合わせたことによる。これにより、本契約書は実態に沿った自然な契約書である。
(3)見積書(乙4)、注文書(乙5)、請求書(乙6)について
乙4の品名欄に記載の「Melonkuma」の部分、乙5の商品名欄に記載の「MELONKUMA」部分及び乙6の品名の欄に記載の「Melonkuma」部分は、いずれも本件商標と社会通念上同一の範囲内である。 乙4及び乙6の郵便番号の違いについては、誤記であったというほかない。被請求人は、同書面を表計算ソフト「Excel」で管理しており、見積書の作成時に誤って古い雛形を利用したに過ぎない。
乙5及び乙6について、取引書類に関する指摘があるが、中間流通における納品書や受領書を省くことは一般的な経費削減の手法であり、何ら珍しいことではない。
(4)入金記録(乙7)について
見積書では「クッキー」、「プリン」、「ゼリー」、「パン」の各商品が記載されているが、実際に三喜が購入したのは、「クッキー」300個(30個入×10)である(当該商品のパッケージの参考画像:乙8)。なお、請求額(612,360円)と入金記録に示された下線部の入金額(580,119円)とは32,000円ほどの差はあるが、通常の商取引において一度に全額が入金されないことは珍しいことではない。なお、差額分32,241円は、平成24年5月1日に当該差額を含む572,574円の入金があった。これを示す通帳の入金記録の写しを提出する(乙42)。
(5)商品「クッキー」のパッケージ参考画像(乙8)について
乙8について、「現実に商品を包装した行為がない以上、商標法第2条第3項第1号に規定する商標の使用にあたらないとする」とする請求人の考えは、平成22年(行ケ)第10012号判決を引用したものと思われるが、本件は、パッケージ参考画像(乙8)、注文書(乙5)、請求書(乙6)及びその他の関連資料により、現実に商品を包装したことが不可避的にうかがえる事例である。
(6)上記に係る補足説明
ア 流通事情についての説明
乙5(三喜からPupu Berry宛ての発注書)について、「Pupu Berry」と「川村運送」及び「三喜」との取引に関する流通事情は以下のとおりである。
「メロンクマクッキー」は、「パンダクッキー」と台紙のデザインは異なるもののクッキー自体は同一である。すでに定期的に流通していた「パンダクッキー」と同じ発注者である三喜からの注文であったことからも、「メロンクマクッキー」は、「パンダクッキー」の流通形態に資するものであった。
(ア)パンダクッキーの流通事情について
三喜からの注文を受けてPupu Berryは、「クッキー」をエリザへ発注する。但し、発注書は事後的に発行される場合もあり、仕掛かり在庫としてクッキーの欠品が出ないように関係者からの事情の情報に基づき三喜の注文書が発行される前に「クッキー」を発注するケースもある。
Ring Internationalは、パッケージの材料である「外箱」、「台紙」、「封緘シール」をニッセーへ発注している。但し、ニッセーは、当該材料の最低受注数量を設けていることから、発注のタイミングはクッキーの注文を受けるタイミングではない。
三喜の指示の下、川村運送においてクッキー10枚を1セットとして外箱内に台紙とともに箱詰めし、箱ごとに封緘シールを貼るという一連のパッケージ詰め作業を行い、パッケージされたクッキーは、所定の配送先へ出荷され、その後、川村運送から出荷数の連絡を受けたPupu Berryの山崎氏が三喜へ請求書を発行するという流れである。
参考までに「パンダクッキー」の各材料の仕掛かり在庫等を示す最近の現場写真を提出する(乙43ないし乙47)。
(イ) メロンクマクッキーの流通事情について
「メロンクマクッキー」に関しては、「台紙」の供給元が三喜であった点と「メロンクマクッキー」用の「封緘シール」がセロハン・テープで代用された点を除き、「パンダクッキー」と同じである。「外箱」は、「パンダクッキー」と共通であるため「メロンクマクッキー」の販売に際して特別な対応は不要であった。
なお、これらは、口頭で行われたため、メールやファクシミリ等での交渉を示す書類は残っていない。また、パッケージされた「メロンクマクッキー」の販売先情報並びに関連書類は、Pupu BerryもRing Internationalも詳細を把握しておらず、関連書類は入手できなかった。
そして、本件メロンクマクッキーに関する川村運送から山崎氏への出荷連絡は、三喜宛てに請求書が発行され、支払いも受けていることから当該取引は問題なく完結しているものである。
(ウ)エリザからPupu Berryに対するクッキー代金の請求及び支払いについて
三喜からの注文書(乙5)に対するPupu Berryの請求書(乙6)には、「パンダクッキー 1500(単価より単位は「箱」=クッキー15000枚)」「Melonkuma手焼きクッキー300(単価よりは単位「箱」=クッキー3000枚)とある。そこで、ここに当該クッキー(18000枚)の売買に関する書面として、クッキーの製造者であるエリザからPupu Berry宛てに発行された請求明細書2通(乙48、乙50)と支払いを示すPupu Berryの預金通帳の写しを提出する(乙49、乙51)。該請求明細書には「Melonkuma手焼きクッキー」の表示はないがクッキー自体は同一であり、エリザにおいて両者の区別はないからである。
請求明細書(乙48)と預金通帳の写し(乙49)の金額が一致し、請求明細書(乙50)と預金通帳の写し(乙51)の金額が一致する。請求明細書(乙48、乙50)に対応する発注記録は残っていないが、発注行為があっての請求であり、これらに対する支払いも完了していることから、当該取引は問題なく完結しているものである。
(エ)「外箱」「台紙」(「封緘シール」)の請求及び支払いについて
三喜からの「メロンクマクッキー」の注文(乙5)の納期時において、「外箱」と「台紙」が仕掛かり在庫としてあったことがうかがえる材料について、2012年2月29日付け請求書(乙52)及び預金通帳の写し(乙53)を提出する。
イ 乙8について
乙8に写っているパッケージは「外箱」とこれに収める「台紙」とからなるパッケージ見本である。これを作成した三喜から電子メールで山崎氏宛に送られてきた画像である。
「メロンクマクッキー」は今回が初回注文であり、「パンダクッキー」の仕掛かり在庫に加えて、「メロンクマクッキー」の台紙相当数、すなわち2700枚をさらに仕掛かり在庫としてRing Internationalが負担することを避けたかった山崎氏が、三喜に対し初回注文数に応じた台紙の作成を依頼したのである。そして、これを承諾した三喜において作成された「パンダクッキー」用の台紙デザインが山崎氏のもとへ電子メールに添付して送られたものである。三喜からの当該メールの受信記録は残っていない。
ウ 製造所固有記号の届出の控え(乙54)について
製造者をエリザ、販売者を三喜として消費者庁長官へ申請した際の控え書類である。この申請に係る(「固有の記号」欄に記載された「OE」)は、乙37の販売者の欄に記載された「株式会社三喜」の右横に記載の記号「OE」と一致していることがわかる。
エ まとめ
本件商標若しくはこれと同一視し得る商標が、第三者との取引書面でその使用が確認できるのは、Pupu Berryが発行した三喜宛て見積書(乙4)と同請求書(乙6)、三喜が発行したPupu Berry宛発注書(乙5)、そして、「メロンクマ」のパッケージデザインを示す参考画像(乙8)にとどまる。また、クッキーや外箱などの発注記録やこれらの仕掛かり材料の納入先を示す書面など、被請求人の一連の主張を裏付ける一部の証拠を提出できなかったことは残念であるが、被請求人としては、これまでの主張と、提出した証拠資料に基づき、本件商標の使用が不可避的にうかがえる事案であると確信するものである。
2 商品「人形(ぬいぐるみ)」(乙13)について
本件商標の指定商品中の「ぬいぐるみ」について、以下の協力会社の下で製品化され、サンプル出荷を行っている。
(1)アイピーフォー(東京都豊島区東池袋一丁目13番6号JTB池袋ビル7F)は、人形、ぬいぐるみ、キーホルダーなどの企画、製造、販売や、キャラクター商品の企画、開発及び商品化権の取得・使用許諾・管理・販売・輸出入並びにこれらの仲介などを業とする企業であり(乙9)、本件商標権者の代表取締役(川〔崎〕毅)と共に、以前よりキャラクターライセンス事業を展開しており、キャラクターグッズの製作なども手がけている。本件商標のキャラクターデザインもアイピーフォーによるものであり、本件商標に係る商品の一つとして、「ぬいぐるみ」(乙13)を複数個製造し、ニッセーエ業株式会社(東京都千代田区外神田四丁目5番4号、(以下「ニッセー工業」という。))へ納品している。
(2)ニッセーエ業、包装用品及び印刷物の販売や、日用雑貨品等の企画、開発、製作、販売などを業とする企業であり(乙11)、アイピーフォーから本件商標に係る商品「ぬいぐるみ」を複数個購入した(乙12、乙13)。
3 ビジネスパートナー(事実上の通常使用権者)を交えての事業の準備と商標の使用
本件商標権者は、前述の法人に加えて、次のビジネスパートナーにも協力を仰ぎ、本件商標に係る商品のキャラクタービジネスを展開している。
(1)商品「ぬいぐるみ」等について
ア フライング・ボイス(東京都新宿区山吹町361番地)は、キャラクター商品の企画及び開発、おもちゃ、日用雑貨などの販売などを業とする企業であり(乙14)、本件商標権者と共に本件商標に係る商品につきキャラクター展開を行ってきた下記イの麺屋武蔵(東京都新宿区西新宿七丁目2番6号)の山田から平成24年6月19日に協力の要請を受け、本件商標に係るキャラクターの商品化に尽力している。
イ 麺屋武蔵は、飲食店の経営などを業とする企業であり、現在、東京都内で11店舗の人気ラーメン店を運営する(乙15、乙16)。麺屋武蔵の山田氏は、以前に、本件商標権者の代表取締役である川〔崎〕が代表を務める株式会社UMAI(代表取締役:山崎毅。後に婚姻により「川〔崎〕」姓となる。:乙17)で扱っていた缶詰入りラーメンの商品化に関連して繋がりがあった。
(2)Facebookのキャプチャ画像(平成24年6月19日付け:乙21)について
平成24年6月19日、フライング・ボイスの橋本は、麺屋武蔵の山田氏、ニッセーエ業の松下氏、山崎氏らとともに「melonkuma」について協議を行った。このとき、松下氏が持参した「ぬいぐるみ」の現物を橋本氏が写真撮影し、同日、白身のFacebookアカウントにおいて、「メロンクマプロジェクト始動」とコメントするとともに、この画像をアップロードしたものである。なお、乙22は、平成24年6月20日に、橋本氏と山崎氏の間で遣り取りされた電子メールの写しである。
(3)商品「パン」について
札幌において、株式会社札幌パリの矢野副社長、麺屋武蔵の山田社長、ニッセーエ業の嬉野部長、松下氏の間で、下記の期日に打ち合わせが行われた(乙24)。議事録は、当時ニッセーエ業の常務取締役であった松下康義による記録であるが、これらの資料により、本件商標に係る商品化が、ビジネスパートナー(事実上の通常使用権者)らの間で事業化に向けた具体的な準備段階にあったことが推測される。
なお、本件商標権者を含め、上記ビジネスパートナーらの事業への取り組み方は、その都度書面で契約書等を交わすことは少なく、多くは互いの信用の下、まずは自身のネットワークを利用して直ちに行動に移すというスタイルであり、当該業界において特に珍しいことではない。
4 請求人による本件商標権への侵害行為
(1)請求人は、平成22年4月9日に、商標「メロン熊」(標準文字)を第9類「携帯電話機用ストラップ」につき出願し、平成22年10月15日に登録を受けた(登録第5360884号)。
(2)請求人との協議申し入れに至る経緯
本件商標権者は、本件商標に係るキャラクター商品の開発及び市場調査に加え、ビジネスパートナーヘの協力要請など当該キャラクタービジネスを実現すべく、長期間にわたり、多方面で積極的に活動してきたところであり、前述のビジネスパートナーらとの地道な活動により、ようやく最近になって商品が具体化されるに至ったのである(乙32)。
平成24年に入り、Pupu Berry、株式会社ニッセーデリカ(東京都千代田区外神田4-5-4)による協力の下、札幌のキヨスク(北海道キヨスク株式会社、札幌市中央区北2条西2丁目8番地1)やJULUX(株式会社JALUX、東京都品川区東品川三-32-42I・Sビル)の売り場において、「melonkuma」のメロンパンやクッキーを販売する商談が進んでいたところ、商談先夕張の「メロン熊」の商品も一緒に販売したい、という申し出があった。
そこで、本件商標権者は、前記進行中の商談相手のみならず、本件キャラクタービジネスに参加が見込まれているビクターエンタテインメント株式会社(東京都渋谷区神宮前二丁目21番1号:乙25)らに対し、本件キャラクタービジネスの発起人としてコンプライアンスを明確に示すべきと考え、知的財産その他権利関係について今一度整理する必要を感じていたところであった。
(3)請求人との協議
以上を背景として、本件商標権者の代表者山崎は、請求人と協議すべく、平成24年8月上旬から数回にわたり、請求人の代表者へ電話で面談を申し入れたところ、請求人代理人に、「9月上旬に山崎が札幌へ行くので、請求人の代表者と北海道での販売について協議させてもらいたい」との伝言を依頼した。しかし、その後、請求人からも請求人代理人からも何の連絡もなく、進めている本件キャラクタービジネスにおける各方面での商売上のスケジュールもあったことから、9月3日に、山崎が札幌へ赴き(乙26)、協議を行った。
山崎は、請求人が本件商標の指定商品である「菓子」や「ぬいぐるみ(おもちゃ)」について商標「メロン熊」を使用している事実を事前に把握しており、この協議の場においても、請求人の行為が本件商標権を侵害している蓋然性が高い旨を指摘し、さらに、類似する二つの商標を付した商品が同じ売り場で販売されると需要者が混同する点を指摘するとともに、請求人の商標「メロン熊」を本件商標に係る商品について使用しないこと、共に協力して「メロンクマ」を盛り上げること、本件商標を買い取ること、など幅広い選択肢を提案した。しかし、請求人からは何の回答もなく、かつ、侵害状況が改善されることもないまま(乙27?乙31、乙33、乙34)に、本件審判を請求したのである。

第4 当審の判断
1 通常使用権者による使用について
(1)被請求人が提出した証拠等によれば、以下の事実を認めることができる。
通常使用権者について
大阪府大阪市中央区谷町7-3-4新谷町第三ビル305に所在のRing International(代表取締役 川〔崎〕毅、商標権者)は、平成23年12月10日に、東京都葛飾区新小岩1-55-4-203に所在のPupu Berry(代表取締役 川〔崎〕舞砂)との間で、本件商標権の使用を許諾(乙1)したことが認められる。
次に、Pupu Berryの履歴事項全部証明書(乙2)によれば、その代表取締役は、川〔崎〕舞砂が平成23年5月31日に辞任し、同日に、東京都中央区八丁堀三丁目7番4-1207号に所在の「山崎毅」が就任した(いずれも平成23年12月20日登記)ことが認められる。また、商標権者の履歴事項全部証明書(乙10)によれば、その代表取締役は、東京都中央区八丁堀三丁目7番4-1207号に所在の「川〔崎〕毅」であること(平成22年10月28日登記)が認められる。そして、Pupu Berryの代表取締役である「山崎毅」と商標権者の代表取締役である「川〔崎〕毅」とは、その住所を同一にするものであり、婚姻等により氏名が川〔崎〕姓から山崎姓に変わったとしても同一人であると推認し得るものである。
しかして、平成23年12月10日に本件商標権の使用許諾を受けたときのPupu Berryの代表取締役が山崎毅ではなく、辞任した川〔崎〕舞砂であることに疑義があるとしても、該山崎毅が商標権者の代表取締役であることは明らかであって、そうとすると、商標権者の代表取締役と通常使用権者の代表取締役が同一人であれば、そこに本件商標権に関する黙示の使用許諾があったとみて差し支えない。
したがって、Pupu Berryは、本件商標権の通常使用権者ということができる。
イ 取引書類等
(ア)見積書(乙4)
乙4は、Pupu Berryが三喜宛てに作成した2012年(平成24年)1月25日付け見積書である。該見積書の品名の欄には、「melonkumaシリーズ」として商品「1 melonkuma手焼きクッキー10枚入り(送料含む)」の記載があるが、本件商標は表示されていない。
(イ)注文書(乙5)
乙5は、三喜がPupu Berry宛てに送付した平成24年2月3日付け注文書である。該注文書には、MELONKUMA手焼きクッキーを30箱注文する旨の記載があるが、本件商標は表示されていない。
(ウ)請求書(乙6)
乙6は、Pupu Berryが三喜宛てに送付した2012年(平成24年)2月28日付け請求書である。該請求書には、表の項番「1」に、「品名/パンダクッキー」、「数量/1,500」、「単価/324」、「金額/486,000」と記載され、項番「2」には、「品名/Melonkuma手焼きクッキー」、「数量/300」、「単価/324」、「金額/97,200」、「合計(税込)/612,360」の記載があるが、本件商標は表示されていない。
(エ)入金記録(乙7及び乙42)
乙7は、Pupu Berryの普通預金通帳の表紙の写しと当該通帳の見開きの写しである。該見開きから、平成24年4月2日に“カ)サンキ”が580,119円を振り込んだことが認められる。
乙42は、Pupu Berryの普通預金通帳の見開きの写しである。該見開きから、平成24年5月1日に“カ)サンキ”が572,574円を振り込んだことが認められる。
これより、三喜がPupu Berryに平成24年4月2日に580,119円及び平成24年5月1日に572,574円を振り込んだことが推認し得るが、右金額は乙6の請求額に相当する振込額ではないため、これが乙6に記載されたMelonkuma手焼きクッキーに係る振り込みであるか確認できない。この点について被請求人は、上記2回の振り込みによって乙6の請求額は不足がない状態になっている旨主張するが、三喜からの注文がMelonkuma手焼きクッキーのみではないことからすると、被請求人の主張をそのまま採用することはできない。
(オ)パッケージ参照画像(乙8)
乙8は、「Melonkuma手焼きクッキー」のパッケージ参照画像である。該画像には、箱の中の果実メロンに目鼻口耳など動物の顔とおぼしき図形とともに、「MELONKUMA」(「O」の文字部分は、図案化されている。)の文字、図案化された「クッキー」の文字などが表されている。該画像が商品「melonkuma手焼きクッキー」の台紙に使用されたか確認できない。
(2)前記(1)で認定した事実を総合すると、本件取引に係る注文書及び請求書には本件商標が確認できず、また、図案化した「MELONKUMA」の欧文字が表示されたパッケージ参照画像(乙8)は確認できるものの、これにより本件商標が商品「melonkuma手焼きクッキー」の台紙に付されたとする事実も確認することができないことから、本件商標を「melonkuma手焼きクッキー」の台紙に表示した商品が、取引に資されたと認めることができない。
そうとすると、Pupu Berryは、本件請求に係る指定商品中の「クッキー」について、本件商標が使用したものと認めることはできない。
したがって、通常使用権者が本件審判の請求の登録(平成24年9月26日)前3年以内に日本国内において、本件請求に係る指定商品中の「クッキー」について、本件商標ないしこれと社会通念上同一と認められる商標の使用をしたものということはできない。
(3)被請求人の主張
ア 被請求人は、商品「melonkuma手焼きクッキー」なる商品は、
その手焼きクッキーがパンダクッキーと共通のクッキーであって、単に外箱に差し込む台紙によって商品「melonkuma手焼きクッキー」と商品「パンダクッキー」とに区別されるものであって、その台紙の差し込みは川村運送が行い、川村運送が注文先に商品を納品するとした商品の流通体制をつくっている旨主張し、その流通事情を商品「パンダクッキ-」に係る請求明細書など(乙43ないし乙51)で証明している。
しかしながら、本件商標の使用を立証するためには、手焼きクッキーが箱詰めされた外箱に本件商標を付した台紙が差し込まれた商品(melonkuma手焼きクッキー)が、注文先に納品されたことの証明が必要なところ、これに関する三喜、Pupu Berry及び川村運送間での取引書類などの証拠の提出はなく、依然として「melonkuma手焼きクッキー」なる商品そのものが流通段階で存在していたかすら確認ができない。
よって、本件取消に係る指定商品中の「クッキー」に本件商標を使用したものとする被請求人の上記主張は、認めることができない
2 請求人による本件商標権への侵害行為等について
被請求人は、本件商標権者は、本件商標を使用したキャラクタービジネスを実現すべく、長期間にわたり活動してきた結果、平成24年に入り、Pupu Berry、セブンイレブングループの株式会社ニッセーデリカによる協力の下、札幌のキヨスクやJULUXの売り場において「melonkuma」のメロンパンやクッキーを販売する商談が進んでいたところ、請求人から、請求人の取扱い商品も一緒に販売したい、という申し出があったので、本件商標権者の代表者は、9月3日に札幌で、請求人に対し、請求人の商標「メロン熊」を本件商標に係る商品について使用しないこと、共に協力して「メロンクマ」を盛り上げること、本件商標を買い取ること等を提案したが、請求人は、何らの回答もせず、かつ、侵害状況を改善しないまま、本件審判を請求した旨主張し、さらに、本来であれば、更なる使用実績を提出できていたところであるが、商品「クッキー」に関してリピートオーダーがないのは三喜側の事情によるものであり、進めていた他の方面での商談は上述した請求人との調整の必要性を感じたため、いったん中断せざるを得なかった。業界を問わず、事業決定後の計画変更は商習慣上極めて困難であり、指定商品について本件商標の使用に関する早計な判断を避けたのは、権利意識の乏しい請求人の違法行為が現実に存在する以上、先ずはこれを正した後でなければ他企業を交えてのビジネス展開に重大な支障を生じることを危惧した被請求人の順法精神の表れであるなどと主張する。
上記被請求人の主張は、商品「クッキー」に関し、本件商標のその指定商品への更なる使用実績を提出できなかったのは、三喜側の事情によるリピートオーダーがなかったこと、及び、本件商標を商品「ぬいぐるみ、菓子パン」について使用する準備を進めていたにもかかわらず、これが実現しなかったのは、請求人による本件商標権の侵害行為があったことによるものであると主張しているものと解される。そして、上記被請求人の主張が、商標法第50条第2項ただし書きにいう「正当な理由」に該当する旨の主張であるとすれば、その主張は、以下のとおり、理由がなく失当である。
すなわち、商標法は、使用により商標に蓄積された信用を保護することにより、産業の発達に寄与し、需要者の利益を保護することを目的としているものである。換言すれば、商標権者が登録商標を使用することを保護の前提としているものであって、一定期間登録商標を使用しない場合は、保護する対象がないものというべきであり、他方、不使用の登録商標を放置することは、商標の使用を欲する者の商標採択の範囲を狭める結果ともなり、国民一般の利益を損なうこととなる。商標法第50条の立法趣旨は、上記のような一定期間登録商標を使用していない登録商標については、請求により、商標登録を取り消すことにあると解される。
商標法の目的及び同法第50条の立法趣旨からみれば、登録商標を使用しているというためには、将来的に使用をする意思があり、その準備を進めていたにもかかわらず、例えば、地震、水害等の不可抗力、放火、破壊等の第三者の故意又は過失による事由、法令による禁止等の公権力の発動に係わる事由等商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰すことができない特別の事由が発生したために、当該審判の請求の登録前3年以内に現実に使用をすることができなかった場合のような、不使用についての正当な理由が必要というべきである。
これを本件についてみれば、本件商標権者又は通常使用権者において、本件審判の請求の登録前3年以内に、本件商標をその指定商品中の「菓子パン」に使用できなかったことについて、その責めに帰すことができない特別の事由が発生したと認めることができる具体的事情は見いだせない。
また、商品「クッキー」の販売に関しては、前記1認定のとおり、本件審判の請求の登録(平成24年9月26日)前3年以内に日本国内において、本件請求に係る指定商品中の「クッキー」について、本件商標ないしこれと社会通念上同一と認められる商標の使用をしたものと認めることはできないのであるから、商品「クッキー」に関する被請求人の上記主張は、前提において誤っているというべきであり、認めることはできない。
3 商品「人形(ぬいぐるみ)、パン」等の使用
被請求人は、商品「ぬいぐるみ」について、あるいは、ビジネスパートナーを交えての事業により、本件商標を使用している旨主張しているが、それを裏付ける証拠の提出はなく、本件商標の使用の事実を証明したとは認められない。
なお、口頭審理において、上記商品等についての本件商標の使用に係る立証に関する証拠は、今後一切提出しない旨陳述している。
4 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標の使用をしていることを証明したものと認めることはできない。また、被請求人は、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2013-12-19 
結審通知日 2013-12-24 
審決日 2014-04-22 
出願番号 商願2007-58813(T2007-58813) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (X142830)
最終処分 成立  
前審関与審査官 平松 和雄 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 酒井 福造
手塚 義明
登録日 2008-01-18 
登録番号 商標登録第5105804号(T5105804) 
商標の称呼 メロンクマ 
代理人 平木 健氏 
代理人 中井 信宏 
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所 

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