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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2013900091 審決 商標
異議2013900358 審決 商標
不服20137406 審決 商標
不服20137631 審決 商標
不服201316054 審決 商標

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審決分類 審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) W363742
審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) W363742
管理番号 1287671 
異議申立番号 異議2013-900094 
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-06-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2013-04-05 
確定日 2014-04-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第5548472号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5548472号商標の指定役務中、第36類「全指定役務」、第37類「全指定役務」及び第42類「建築物の設計,測量,デザインの考案,建築又は都市計画に関する研究」についての商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第5548472号商標(以下「本件商標」という。)は、「0.5世帯」の文字を標準文字で表してなり、平成24年8月1日に登録出願され、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」、第37類「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」、第42類「建築物の設計,測量,地質の調査,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,デザインの考案,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究」を指定役務として、同年12月12日に登録査定、同25年1月11日に設定登録されたものです。

2 登録異議申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、その指定役務中、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」、第37類「建設工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」及び第42類「建築物の設計,測量,デザインの考案,建築又は都市計画に関する研究」(以下「申立てに係る指定役務」という。)について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきものである旨申立て、その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として、甲第1号証ないし甲第31号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標について
ア 本件商標の構成態様及び観念に関して
本件商標「0.5世帯」は、「0.5」という「0」と「1」の中間を示す数字と「世帯」という既成語が結合された標準文字の商標である。
「世帯」の語は、一戸を構えて独立の生計を営むこと、住居および生計を共にする者の集団、という意味を有する既成語であり、「住居および生計を共にする者の集団」としての世帯を数えるときは、一世帯、二世帯、三世帯等と数える。二世帯及び三世帯の語は、従来から「住宅」の語と結びつけられ、「二世帯住宅」及び「三世帯住宅」という語が広く一般に使用されてきた。なお、「二世帯住宅」は、普通名詞として辞書にも意味が掲載されている(甲2及び甲3)。
甲第4号証には、「2010年の国勢調査によると、60代が世帯主の家族では、これまで最多だった夫婦だけの世帯より単身の成人の子と一緒に暮らす1.5世帯が増え、約300万軒にも上った。この傾向は都市部に多い現象で、東京都だけを見ると、『親と単身の子』の1.5世帯が常に『夫婦のみ』を上回っている。」との記載がある。ここで用いられている「1.5世帯」という語は、同居する「成人の子」や「祖父又は祖母」を「0.5世帯」と捉え、それを「夫婦のみ」又は「夫婦とその未成年の子」からなる「一世帯(単世帯)」に付加した語であり、「一世帯」と「二世帯」の中間の構成人員からなる世帯を端的に表現した語である。端的さゆえに使い勝手がよく、近年増加しつつあるこのような世帯を「1.5世帯」と呼ぶようになっている状況がある(甲5ないし16、甲19、甲21、甲28ないし30)。
このような状況の下で、「2.5世帯」という語が「1.5世帯」と同様のネーミング手法により、「二世帯」と「三世帯」の中間の構成人員からなる世帯を端的に表現する語として、使用されるようになっている(甲8、甲16ないし21、甲28、甲30及び甲31)。
従来から存在した「一世帯住宅」及び「二世帯住宅」に加え、成人の単身家族(「0.5世帯」)が同居するために独自のスペース又は間取りを加えた住宅を「1.5世帯住宅」及び「2.5世帯住宅」として提案している実例がある(甲28)。当該実例においては、一世帯又は二世帯を構成する家族に対し、成人の単身家族を「0.5世帯」という概念で捉えている。
すなわち、「1.5世帯」及び「2.5世帯」の語が使用されると、必然的に「0.5世帯」の語又は概念も使用される関係にある。
イ 本件商標の独占不適応性について
本件商標は、その文字構成から一世帯の半分を示していることは自明であり、一世帯を構成するに至らない成人の単身家族を指して「0.5世帯」と呼んでいることが明らかである。
この語を住宅関連の役務に使用する際は、住宅の取引者・需要者は、「成人の単身家族(即ち0.5世帯)用の住宅スペース又は間取りを付加した住宅(すなわち1.5世帯向き住宅や2.5世帯向き住宅)に関する役務」であると直接的かつ具体的に認識するといえる。
したがって、本件商標は、住宅の需要者・取引者の何人も取引に際し必要適切な表示としてその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであり、東京高裁平成13年(行ケ)第207号判決の趣旨からすれば、本件商標が自他役務識別力を欠くと判断するにあたり、本件商標の登録査定時に指定役務の質を表すものとして現実に使用されていることは、必ずしも必要でない。
また、特許庁の審査において、「0.5世帯」と同様のネーミング手法により採択された「1.5世帯」という商標が、自他役務識別力を欠くと認定された事例が存在する。
(2)「0.5世帯」の語の住宅業界における使用例
「0.5世帯」の語は、住宅建設会社及び建築設計事務所並びに個人のブログにより、インターネット上において使用されている(甲28ないし31)。
上記使用例によると、「0.5世帯」の語はいずれも、「1.5世帯住宅」及び「2.5世帯住宅」の特徴を説明する文章中で、同居することになる成人の単身家族を指して使用されていることが認められる。
(3)総括
したがって、本件商標は、「一世帯を構成するに至らない成人の単身家族」を認識させるにとどまるものであるから、本件商標を標準文字をもって普通に用いられる方法で申立てに係る指定役務中、「成人の単身家族用スペース又は間取りを付加した住宅に関する役務」に使用するときは、単に役務の質を表すにすぎず、自他役務識別標識としての機能を果たし得ない。
さらに、本件商標を前記以外の申立てに係る指定役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがある。

3 当審における取消理由
当審において、登録異議申立に基づき、商標権者に対して平成25年9月19日付けで通知した取消理由の内容は、要旨以下のとおりである。
(1)「世帯」の語について
「住居および生計を共にする者の集団。」との記載(甲2(広辞苑))及び「住居・生計を同じくしている者の集団。親族以外の者が含まれている場合や、一人の場合もある。」との記載がある(甲3(大辞林))。
(2)「0.5世帯」の語について
ア 「有限会社栃木建築社」のウェブサイトには、「二世帯・三世帯デザイン注文住宅」の表題の下、「お客様のライフスタイルに合わせて、子夫婦とお父様やお母様、両親と社会人のお子様などで住まわれる1世帯プラス0.5世帯の1.5世帯住宅プラン。」との記載及び「1.5世帯住宅\プラス0.5世帯の住まい」として、「シングルファミリーと父・母、親夫婦と社会人のお子様など、単世帯の住まいにプラス0.5世帯の同居スタイルが増えています。LDKや浴室、キッチンなどの共用部分を持ちつつも、0.5世帯のプライベートな居住空間の確保が必要な同居スタイルです。例えば1階にみんなが集まるLDKと、0.5世帯の専用ミニLDKを配置 楽しさの中にもプライバシーを確保する工夫のある空間作りをご提案します」と記載されている(甲28)。
イ 「マイベストプロ」のウェブサイトには、「素材を生かした自然派住宅のプロ 浅井知彦 レヴォントリ株式会社一級建築士事務所」のコラムが掲載されており、2012年3月26日付けで、「子育てを応援する家/1.5世帯住宅【その2】」に、「今回は、同居=2世帯住宅ほどではないけど、ゲストが長期滞在できる部屋を作る『1.5世帯住宅』について、その2です。1.5世帯住宅とは、子供が小さいときの祖父祖母からの育児支援をイメージしていますが、それだけではなく、病気になったときの支援滞在、高齢になった祖父母の一時的な介護同居なども対象になるかもしれません。ゲストルームとして用意する『0.5世帯』側の使い方は、いろいろあると思います。」と記載されている(甲29-1)。
また、2013年2月8日付けで、「あなたに使いやすいキッチンとは【神戸、芦屋、西宮で建築士と注文住宅を建てる】」に、「すべての家に、多機能のシステムキッチンが必要である訳ではありません。コンパクトでデザイン性の高いキッチンが似合う家もあります。1.5世帯住宅では、0.5世帯側にはシンプルなキッチンが良いかもしれません。」と記載されている(甲29-2)。
ウ 「株式会社ユース建築設計事務所」のウェブサイトには、「これからのリフォームのご提案」として、「素敵な家族関係を大切にしたいあなたに 2.5世帯リフォーム 親世帯(夫婦)と子世帯(夫婦と子ども1人等) そこに、子世帯の姉妹(0.5世帯)が同居している家族構成の家。そんなスタイルを今の呼び方で2.5世帯住宅と言います。」と記載されている(甲30)。
エ 2012年8月29日付けの「マジメな税理士のいいかげん日記」のブログ記事には、「2.5世帯住宅」として、「先日のことですが、新聞で『2.5世帯住宅』を取り上げた記事を読みました。親子2世帯にプラスして独立していない子供を『0.5世帯』として独立性の高い間取り(専用の洗面台などを設ける)を加えるといったものだそうです。」と記載されている(甲31)。
(3)商標法第3条第1項第3号該当性について
本件商標は、前記1のとおり、「0.5世帯」の文字を標準文字により表してなるものである。
しかして、「世帯」の語は、上記(1)のとおりの意味合いの語として、一般に理解されおり、上記(2)のとおり、同居する「成人の子」や「祖父又は祖母」を「0.5世帯」と称され、あるいは説明され、そのような一世帯に満たない成人の単身用の住宅スペース又は間取りを付加した住宅の建築工事の提案、住宅の建築工事の実績の紹介がされていることが認められる。
そうとすれば、本件商標を申立てに係る指定役務に使用した場合、成人の単身向けの役務であること、すなわち、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められる。
したがって、本件商標は、申立てに係る指定役務について、商標法第3条第1項第3号に該当する。

4 商標権者の意見
前記3の取消理由に対し、商標権者は、要旨以下のように意見を述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第41号証(枝番号を含む。)を提出している。
(1)「0.5世帯」の語について
「世帯」の語は、総務省の統計局・政策統括官・統計研修所のウェブページにおいて「世帯人員が一人の世帯」を「単独世帯」としていることから、「単身の成人」についても「世帯」の語が使用されるとの認定自体は、誤りではない(乙1の1)。
しかしながら、上述のウェブページ中の「G 世帯の決め方」の項目によれば、「住居と生計を共にしている人々の集まりを一つの世帯とし、(中略)生計が別であれば別々の世帯として扱われる」としている(乙1の2)。
したがって、「夫婦と子供からなる世帯」は、「1世帯」であり、仮に「子供」が独立して生計を立てていれば、夫婦と子供が1つの住宅に同居をしていても「2世帯」ということになり、「親夫婦・子供夫婦・子供夫婦のいずれかの兄弟姉妹」とからなる世帯は、その「兄弟姉妹」の生計が別であれば、「3世帯」ということになり、「兄弟姉妹」の生計が親夫婦と同じであれば,親世代の「1世帯」に含まれてカウントされる。
このように「世帯」をカウントする数字としては、「1世帯」、「2世帯」、「3世帯」と表現されても「0.5世帯」、「1.5世帯」、「2.5世帯」と表現されることはありえない。
(2)各証拠資料について
商標法第3条第1項第3号の該当性の判断時は、査定時であり、異議申立において提出された各証拠資料の2012年12月18日以降(決定注:「12日」の誤記と認める。)の資料については、証拠能力がない。
取消理由通知書で挙げられている各甲号証中、第29号証-2は証拠能力は認められず、その他の甲号証の中、甲第6号証-2、甲第8号証のいずれも証拠能力が認められない。
また、各甲号証中、取消理由で挙げられている甲号証以外の証拠資料は、「0.5世帯」の記述がないものであり、甲第4号証の記述はさながら、2010年の国勢調査において「1.5世帯の家族」といった表現が記載されているかの如き記述となっているが、上述したように、国勢調査においてかかる記述はないし、甲第30号証は、商標権者の「2.5世帯住宅」を取り上げた新聞記事に基づいている。
さらに、甲第5号証及び甲第6号証-1の各証拠資料中の「1.5世帯」の「1.5」は、明らかに「1世帯」と「2世帯」の中間的な世帯を表現する便宜的な数字として「0.5」としているにすぎず、商標権者が創出をし、かつ、住宅業界を中心に認識されつつある「0.5(世帯)」とはコンセプトが全く異なるものである。
このように、これら各甲号証は、本件商標の商標法第3条1項3号の該当性の判断にとって証拠価値が低いものである。
(3)「0.5世帯」の語が商標権者を認識せしめる商標として機能していることについて
住宅分野を含む建築業界で最も歴史が長く権威のある「日本建築学会」の論文データベースで「0.5世帯」のキーワード検索をしても、ヒットする論文は、1件も存在しない(乙2)。
本件商標は、商標権者が2012年8月に「二世帯住宅の進化形」としての「住宅」を表現する語として住宅業界において初めて採択をし、商品発表を2012年8月11日に行った後も、「2.5世帯」及び「2.5世帯住宅」の各語と商標権者とを結びつけるべく積極的に訴求活動を行ってきた過程で「2.5世帯」における「0.5世帯」の意味の理解を広めてきたことや「0.5世帯」の語が商標権者の「2.5世帯住宅」とともに新聞、雑誌等にも数多く取り挙げられてきたことによるものである。
(4)「0.5世帯」及び「2.5世帯」の採択の趣旨及び訴求活動等について
ア 「2.5世帯住宅」に関する新聞記事は、2012年8月6日の日刊工業新聞、同年8月8日の日本経済新聞、日経産業新聞及び日刊工業新聞(乙4の1ないし4)であり、これらの記事は、商標権者が親世帯と子供世帯、単身の姉妹や兄弟が同居する「2.5世帯住宅」を2012年8月11日に発売をすること、この新商品である「2.5世帯住宅」が、単身者が同居するスペースを取り入れ、単身者の独立性(プライバシー)を確保している点に特徴があることを報じている。
イ 2012年8月23日の毎日新聞、同年8月25日の日本プレハブ新聞及び毎日新聞のインタビュー記事において、「2.5世帯」とは聞き慣れない言葉ですとのインタビュアー質問がなされたのに対し、二世帯住宅研究所所長が「2.5世帯住宅」のコンセプト及び「2.5世帯住宅」が国政調査の結果の分析から開発をされたことを述べている(乙5、乙6の1及び2、乙7)。
ウ 2012年8月28日の住宅新報(乙8)及び週刊住宅(乙9)ほか、乙第10号証ないし乙第17号証のように、商標権者の「2.5世帯住宅」は、販売時からかなり注目されている。
エ 「2.5世帯住宅」の新聞媒体を使った広告活動は、2012年8月8日の日本経済新聞1面全面広告(乙18)及び同年8月13日から同年8月19日に第1話から第7話からなる新聞広告を、1話毎に、毎日、日本経済新聞に掲載した(乙19の1ないし7)。
そして、同様の新聞広告を商標権者は、秋編として1話(乙21)、年末年始編第1話から第3話(乙22の1ないし3)、及び、完結編第1話と第2話(乙23の1及び2)を、いずれも日本経済新聞に掲載した。
また、2012年8月24日に「2.5世帯住宅」のコンセプトに関する広告を行っている(乙24)。
かかる商標権者による「2.5世帯住宅」の広告活動は、第61回(2012年)日経広告賞において「長く続いているブランド『ヘーベルハウス』と消費者の関係を「2.5世帯住宅」というあらたなコンセプトのシリーズ広告で鮮やかに打ち出したとして最優秀賞を獲得し(乙25の1及び2)、日経流通新聞の2012年ヒット商品番付において「2.5世帯住宅」という「新概念の住宅の登場は久々」と評価され,技能賞を獲得している(乙26)。
そして、広告活動の評価測定を行っているデスクワンによる2012年度広報評価ランキングの住宅メーカーランキングにおいて第3位にランキングされた(前年第5位)(乙27)。
オ 「2.5世帯住宅」に関する雑誌記事は、2012年9月18日号の雑誌「財界」(乙28)、同年9月号「日経ホームビルダー」(乙29)、同年10月16日の「DIME」No.21(乙30)のほか、乙第31号証ないし乙第40号証などである。
(5)商標権者が提唱する「0.5世帯」について
「2.5世帯」の語は、国勢調査を含めた社会通念上、「2世帯」と考えられている「親世帯・子世帯が生計を分け、加えて子世帯の兄弟姉妹に当たる単身者が親世帯と生計を一にする同居スタイル」において、自立できる収入を持ちつつ親世帯と生計を分けていない単身者を新たに「0.5世帯」という言葉で表現し、2世帯にこのような単身者が加わった同居スタイル、商標権者による「集居スタイル」を「2.5世帯」と表現したものであり、(乙41の1及び2)、「0.5世帯」の語は、社会通念上の「1世帯」では表現しきれない単身者を表現するユニークな語であるとの認識は住宅業界を中心に定着している。
(6)以上からも明らかなように、「2.5世帯」及び「0.5世帯」の各語は、商標権者の創作にかかるものであり、かつ、これらの言葉は「集居」の住宅形態として商標権者のみが使用しているものである。現に、申立人である同業の住宅メーカーは、「2.5世帯」及び「0.5世帯」の各語を使用しておらず、各甲号証の幾つかにおいて使用されている事実が散見されるにすぎない。
かかる事実は、情報の拡散が瞬時に行われるインターネット時代においても、これら各語が商標権者を特定する語として住宅業界において広く認知されていることを示すものである。
そもそも「親世帯と生計を共にしつつ同居する単身者」を商取引において表現する場合は国勢調査等に準拠して一世帯に含めた表現をすれば足り、殊更に「0.5世帯」の語を使用する必然性を認めることはできない。
その上、上述のとおり、本件商標「0.5世帯」の語は、商標権者による広告等の訴求活動で「2.5世帯」を広めていった結果、広く住宅業界でも知られている。
したがって、本件商標は、住宅業界において、商標権者を指称する語として十分に自他役務の識別力を有するものである。

5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本件商標は、前記1のとおり、「0.5世帯」の文字よりなるところ、その構成は、「0.5」の数字と、「住居および生計を共にする者の集団。住居・生計を同じくしている者の集団。親族以外の者が含まれている場合や、一人の場合もある。」(広辞苑第六版)を意味する語である「世帯」の語との組合せからなるものである。
そして、「0.5世帯」の文字は、申立てに係る指定役務との関係において、同居する「成人の子」や「祖父又は祖母」を「0.5世帯」と称され、あるいは説明され、そのような一世帯に満たない成人の単身用の住宅スペース又は間取りを付加した住宅の建築工事の提案、住宅の建築工事の実績の紹介がされている事実が存することは前記3の取消理由のとおりである。
そうとすれば、「0.5世帯」の文字からなる本件商標を、その指定役務中、申立てに係る指定役務に使用した場合、成人の単身用の住宅スペース又は間取りを付加した住宅に関する役務の提供であることを表すにすぎず、本件商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められる。
したがって、本件商標は、申立てに係る指定役務について、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標権者の主張について
ア 商標権者は、商標法第3条第1項第3号の判断時期が登録査定時であるから、異議申立てにおいて提出された各証拠資料の2012年12月18日(決定注:「12日」の誤記と認める。)以降の資料は、証拠能力がなく、また、「1.5世帯」の証拠も直接関係のないものである旨主張する。
商標法第3条第1項第3号は、指定商品の品質、用途を表すものとして取引者、需要者に認識される表示態様の商標につき、そのことゆえに商標登録を受けることができないとしたものであって、同号を適用する時点において、当該表示態様が、商品の品質、用途を表すものとして現実に使用されていることは必ずしも必要でないものと解すべきである。」旨、判示されている(東京高裁平成13年(行ケ)第207号)。
そこで、申立人が提出した各甲号証をみると、甲第5号証は、「One+deuxワン・プラス・デュー」と題する冊子であり、その38頁には、「積水ハウスが考えるライフステージmap ver.2005」及び「日本人のライフステージmap」において、「アダルトファミリー『1.5世帯(仮称)』とは?『2世帯家族』(夫婦とその親からなる)でもなく、『核家族』(夫婦とその若い子からなる)でもない、大人として独立した子とその親からなる家族を指す言葉として定義。」の記載がある。
また、甲第6号証-1は、「住宅 VOL.56,2007」(平成19年1月20日社団法人日本住宅協会発行)であり、その21頁には、「◆新しい家族の模索」の項目の下、「形式的には、夫婦と子供という核家族でありながら、実体的には『1世帯』と呼ぶには少し戸惑いがあり、かといって『2世帯』ではないこの家族形態を仮に中間的な『1.5世帯』と名付け、その家族が幸せを育む住宅を『1.5世帯住宅』としてその住まい方、暮らし方を模索するに至った。」の記載がある。
前記3の取消理由で開示したイ及びエ並びに以上からすると、申立てに係る指定役務を取り扱う業界において、2002年頃から、「1.5世帯住宅」の語が使用され始め、「1.5世帯」のための住宅の提案や考え方があったものといえ、「1.5世帯」及び「1.5世帯住宅」の語は、「世帯に成人の単身を加えた家族」及び「世帯に成人の単身を加えた家族向けの住宅」程の意味合いを表示するものとして認識されている実情がある。
そして、上記実情からすれば、「0.5世帯」の文字は、申立てに係る指定役務との関係において、「1.5世帯」のための住宅の提案や考え方における「成人の単身者」を指すものと理解、認識させるといえるものであり、複数の事業者が同様の意味合いにおいて表現している実情がある。
そうとすれば、たとえ「0.5世帯」の文字が、申立てに係る指定役務について、直接使用されていないとしても、本件商標の登録査定時における「1.5世帯」の考え方や住宅の提案をもって、該文字の意味合いを理解、認識させるものというべきである。
イ 商標権者は、同居スタイルにおいて自立できる収入を持ちつつ親世帯と生計を分けていない単身者を新たに「0.5世帯」という言葉で表現し、「親世帯」の1世帯にこのような単身者が加わった同居スタイル、商標権者による「集居スタイル」を新たに提唱したものであり、「0.5世帯」の語は、社会通念上の「1世帯」では表現しきれない単身者を表現するユニークな語であるとの認識は、住宅業界を中心に定着し、広く認識されている旨主張する。
しかしながら、商標権者の提出にかかる乙第4号証ないし乙第41号証によれば、「0.5世帯」の文字が、平成24年10月15日発行の雑誌「DIME」(乙30)の2葉目に、「2.5世帯での『集居』という選択」の見出しの下、「『0.5世帯』とは『LITS(リッツ=living together singleの略)」と呼ばれる、親元に同居するシングルを指しているのだ。」、4葉目に「2F 0.5世帯の部屋と共用スペースが中心」との記載、平成24年8月3日発行の「都市型親族集住 2.5世帯同居の実体 調査報告書」(乙41-1及び2)の「はじめに」の見出しの下、「この2.5世帯住宅」の特徴は、同居している兄弟姉妹を独立性を持った一つの世帯(一人なので0.5世帯と表現)としてとらえ、より豊かな世帯間の交流や将来対応力の強化を図ったことにあります。」との記載や、「2.5世帯同居とは」の見出しの下、「単身者は親世帯と生活を重ねつつも自立できる収入を持つ場合が多く、従来の2世帯同居+0.5世帯の同居形態と考えられます。」との記載があるが、これらの記事や報告書における「0.5世帯」についての使用例は、成人の単身者を「0.5世帯」と表現しているものであって、上記アのとおり、その意味合いは取消理由通知で開示した商標権者以外の者の表現と変わるものではないことからすれば、本件商標の登録査定時における「1.5世帯」の考え方や住宅の提案をもって、該文字の意味合いを理解、認識させるものというべきであって、「0.5世帯」の文字が、商標権者が提案する集居スタイルを表すものとして、取引者、需要者に広く認識されているということができない。
したがって、商標権者の主張は採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定役務中、申立てに係る指定役務については、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものであって、かつ、本件商標が、使用された結果、需要者が商標権者の業務に係る役務であると認識されている旨の商標権者の主張も上記のとおり採用することができないから、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2014-03-07 
出願番号 商願2012-62283(T2012-62283) 
審決分類 T 1 652・ 17- Z (W363742)
T 1 652・ 13- Z (W363742)
最終処分 取消  
前審関与審査官 海老名 友子 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 原田 信彦
田中 亨子
登録日 2013-01-11 
登録番号 商標登録第5548472号(T5548472) 
権利者 旭化成ホームズ株式会社
商標の称呼 ゼロテンゴセタイ、レーテンゴセタイ 
代理人 特許業務法人あーく特許事務所 
代理人 特許業務法人あーく特許事務所 
代理人 特許業務法人あーく特許事務所 
代理人 小暮 君平 
代理人 工藤 莞司 
代理人 浜田 廣士 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 特許業務法人あーく特許事務所 

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