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審決分類 審判 一部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X12
審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X12
管理番号 1287644 
審判番号 無効2013-890008 
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-02-06 
確定日 2014-05-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第5422683号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5422683号の指定商品中、第12類「自動車並びにその部品及び附属品」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5422683号商標(以下「本件商標」という。)は、「i-DTEC」の文字を標準文字で表してなり、平成19年8月27日に登録出願、第7類「土木機械器具,荷役機械器具,動力機械器具(陸上の乗物用のもの及び「水車・風車」を除く。),陸上の乗物用の動力機械の部品,風水力機械器具,機械式駐車装置,乗物用洗浄機,バルブ,起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機」、第9類「火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,自動車用バッテリー,その他の電池,電気磁気測定器,電気通信機械器具」及び第12類「陸上の乗物用の動力機械器具(その部品を除く。),陸上の乗物用の機械要素,陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。),自動車並びにその部品及び附属品」を指定商品として、同23年5月10日に登録査定、同年7月1日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第4320397号商標(以下「引用商標」という。)は、「DTEC」の欧文字を標準文字で表してなり、平成10年3月11日に登録出願、第12類「自動車並びにその部品及び附属品」を指定商品として、同11年10月1日に設定登録され、その後、同21年7月7日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第47号証(枝番を含む。)を提出した。
1 無効理由
本件商標は、その指定商品中、第12類「自動車並びにその部品及び附属品」については、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とされるべきものである。
2 本件商標について
本件商標は、「i」の欧文字と「DTEC」の欧文字とを「-」(ハイフン)で結合した構成態様からなり、欧文字1文字は、商品の規格・品番等を表示するための記号・符号の一類型として、本件の指定商品を取り扱う業界にとどまらず、各種業界において取引上普通に使用されていると認められるものである。
これは、本件の指定商品と同一の商品を含む、不服2004-9064号(甲3)及び不服2009-5886号(甲4)の審決例で説示されていることからも明らかである。
確かに、各構成文字を「-」(ハイフン)で結合してなる商標は、外観上まとまりよく一体的に看取し得ると判断される場合もある。
しかしながら、引用商標「DTEC」は、請求人が採択した独創性のある造語であり、一般に、独創的な商標は強い自他商品識別力を有すると判断されることが多い。さらに、後述するとおり、引用商標「DTEC」は、請求人が長年にわたって継続的に使用を続けた結果、本件商標の登録出願日及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者、取引者に広く認識されている商標であったことがいえる。
そのため、「DTEC」の文字部分は、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであると認められるべきである。
また、本件商標は、その構成全体をもって特定の親しまれた意味合いを理解・認識させるものであるとはいえず、これを常に一体不可分のものとして把握しなければならないとする格別の事情も見いだせない。
そうとすれば、本件商標は、その構成中、自他商品の識別標識として機能を果たすのは「DTEC」の文字部分にあるものというべきであり、本件商標に接する取引者・需要者は、後半の「DTEC」の文字部分に着目して取引に当たる場合も決して少なくないとみるべきである。
3 請求人商標「DTEC」の周知・著名性について
(1)請求人「神奈川トヨタ自動車株式会社」について
請求人である神奈川トヨタ自動車株式会社(以下「神奈川トヨタ」という場合がある。)は、1946年10月15日に創業・設立された旧・神奈川トヨタ自動車株式会社(現・株式会社KTグループ)の平成20年4月1日を効力発生日とする会社吸収分割により、自動車販売に関わるすべての事業を承継した会社であり、株式会社KTグループの完全子会社である。主な事業として、トヨタ車新車の販売、レクサス販売、輸入車の販売、中古車の販売、自動車整備及び部品の販売などがあり、現在、資本金3億円、年間売上高は717億2,000万円、従業員数1,672名を擁している(2012年3月)。
また、子会社ではあるが、グループ内の中核企業であり、その規模も最大である。
このように、資本金、年間売上高、従業員数のいずれをとっても、我が国の自動車販売業界では最大手の会社である(甲5の1?3)。
(2)「DTEC」の周知・著名性について
請求人は、自動車のチューニング等において高い評価を得ており、引用商標の「DTEC」ブランドは、指定商品「自動車並びにその部品及び付属品」のほか、指定役務である「自動車の修理及び整備」等において長年使用され、周知著名性を獲得している。
まず、請求人は、チューニングブランド「DTEC」を展開すると同時に、これまで積み上げてきた経験や技術力をベースにノウハウと創造力を集結させ、クルマに合わせたアイテムを企画し、ひとつひとつのパーツを自社で開発している。
実際、「DTEC」専用ウェブサイト内において、車種別・パーツ別の商品紹介がされており、「DTEC」ブランドの名の下、自動車の部品及び付属品を幅広く製造・販売していることがうかがえる(甲6)。また、店頭カタログや書籍「RVドレスアップガイドシリーズトヨタプリウス」等においても、「DTEC」ブランドの商品が掲載されており、このことからも「DTEC」の商標を使用して、自動車の部品及び付属品を幅広く製造・販売していることが容易に理解できるものと考える(甲7,甲8)。
さらに、請求人が引用商標を長年使用して、本件商標の登録出願日前に需要者、取引者に広く認識されていることを立証するため、以下、「雑誌等における広告又は記事掲載状況」及び「広告宣伝状況」を示す。
ア 雑誌等における広告又は記事掲載状況
(ア)雑誌「CAR GRAPHIC」(株式会社二弦社発行)
同誌は、1962年4月創刊の日本で最も権威のある自動車雑誌といわれている。
甲第9号証は、2001年2月発行の「CAR GRAPHIC」である。目次の欄に「チューニングカー最新事情」として、「DTECアルテッツア」が紹介され、94頁から97頁にかけて大々的に掲載されている。この記事の中で、タイヤホイール等の部品に「DTEC」の標章が付されており、その品質を保証するために当該標章が用いられていることがわかる。
甲第10号証は、2002年10月発行の同誌「40周年記念第7号」である。マツダロードスター車のボディーに「DTEC」の広告が見られる。
甲第11号証は、2002年11月発行の同誌である。同じくマツダ車のボディーに「DTEC」の広告が見られる。
甲第12号証は、2003年6月発行の同誌であり、136頁から139頁にかけてマツダ車のボディーに「DTEC」の広告が見られる。
以下、2003年8月発行の同誌の142頁(甲13)、同年10月発行の同誌の138頁及び139頁(甲14)、同年11月発行の同誌149頁(甲15)、2004年4月発行の同誌164頁(甲16)、及び2005年5月発行の同誌136頁及び137頁(甲17)にも「DTEC」の広告や記事が掲載されている。
特に、甲第17号証には、「真の“チューニング”を賞味あれ」のタイトルの下、「DTECクラウン・アスリート」の記事が掲載されている。ここで、「DTEC」については、「神奈川県全域に営業拠点を持つトヨタ車ディーラー、神奈川トヨタ自動車が立ち上げたチューニング・ブランドである。」と紹介されている。さらに、「一般的にディーラーに置いてあるチューニング・パーツといえば、・・・とにかく見た目を派手にして差別化を図る類のものが思い浮かぶ。ところがDTECブランドを冠した商品群は、これとはまるで正反対と言っていい。『アシがきちんと動かない車は嫌だ』と車高の低下量を抑えたサスペンション・キット、ダイレクトな操縦感覚を求めたピロホールや強化ブッシュ、シャシーの要所を強化するリインフォースメント、冷却性能を高めたブレーキディスク&パッドなど、外観からは分からないような玄人好みの製品が多くを占める。“チューニング”という言葉の本来の意味に基づき『イメージとおりにクルマが動く』ことを命題とする、それがDTECブランドの根底に流れるコンセプトである。」と書かれている。
すなわち、請求人のチューニング自体だけではなく、「DTECブランド」の商品群に対しても高い評価を得ていることが見受けられる。
また、2006年7月発行の同誌の130頁及び131頁には、「DTEC CROWN ATHLETE 3.5」が掲載されている(甲18)。
(イ)雑誌「CARトップ」(株式会社交通タイム社発行)
雑誌「CARトップ」は、1968年創刊の自動車情報誌(月刊誌)である。
2005年4月発行の同誌215頁に「請求人がプロデュースする新スタイルのカスタムファクトリー」「きめ細かなパーツのラインナップに注目」「クラウン・アスリートのDTEC仕様」などと紹介されている。また、全面広告もなされている(甲19)。
甲第20号証は、2007年2月発行のもので、同誌に「DTECチューンが冴える」「DTECが手がけたエスティマは、ミニバンとは思えない抜群の走りを被露した。」などの紹介がされている。
甲第21号証は、2007年7月発行で、同誌に「DTECのバックライトコントローラーが静かなブームに)と紹介されている。
(ウ)雑誌「アクティブビークル」(株式会社交通タイム社発行)
雑誌「アクティブビークル」は、1990年6月創刊の総合ワゴン専門誌(月刊誌)である。
2004年10月発行の同誌102頁に、「神奈川トヨタ MASTER ONEプロデュース DTEC CALDINA」のタイトルの下に記事が掲載されている(甲22)。ここでは、「効果的なオリジナルパーツでポテンシャルを最大限に引き出す」の見出しの下、各種部品が紹介されている。
同じく、2007年1月発行の同誌に、「神奈川トヨタ マスターワン DTEC ESTIMA」が紹介されている(甲23)。
同年5月発行の同誌に「DTEC ESTIMA」が紹介されている(甲24)。ここでは、「DTEC」ブランドで発売している「インサイド・ドアコントール・スイッチ」や「サスペンションキット」などが、非常に優れた商品であると記載されている。
同年10月発行の同誌には、「マスターワンは、…DTECという高性能なオリジナルパーツを発信している。」と紹介されている(甲25)。また、同年11月発行の同誌にも「DTEC ESTIMA」が紹介されている(甲26)。
なお、2010年4月発行の同誌には、「DTECチューニング・サスペンションキット」の紹介がされており、ここではパーツの部分に焦点を当てた記事が掲載されている(甲27)。同様に、同年6月発行の同誌116頁及び117頁においても「DTECチューニング・サスペンションキット」が紹介され、同様にパーツ部分に焦点を当てた記事が掲載されている(甲28)。
(エ)雑誌「ザッカー/XaCAR」(株式会社三栄書房発行)
カーマガジンの一つである「ザッカー/XaCAR」に掲載されたものを挙げると、2004年10月発行の同誌は、「XaCAR特別連載企画」で「スポーツカー」を特集し、9頁に、アルテッツアRF200をベースに徹底的にリファインした車として「DTECアルテッツア」が紹介されている(甲29)。
また、2005年6月発行の同誌は、102頁及び103頁に「DTEC CROWN ATHLETE」「もはやこれはクラウンではない!?」の見出しの下、「今回は、神奈川トヨタのオリジナルブランド『DTEC』のアスリートに試乗した。・・・実に巧みな『調律』だ。日本においては『時代を先取りした』といっても過言ではない。」と絶賛されている(甲30)。
2007年2月発行の同誌は、146頁及び147頁に、チューニングブランドとしての「DTEC」を大々的に紹介し、「DTECがつくり上げたエスティマは驚くべきポテンシャルを発揮した」として、神奈川トヨタのチューニング技術を高く評価している(甲31)。
さらに、2007年5月発行の同誌は、84頁に、「DTECエスティマ」を紹介し、ここでも「DTEC」ブランドが賞賛されている(甲32)。
(オ)雑誌「CarGoodsMagazine」(株式会社三栄書房発行)
同誌は、1999年6月創刊のカー用品専門誌(月刊誌)である。
2011年1月発行の同誌は、「DTEC COX ボディダンパー」を紹介しており、当該商品が神奈川トヨタ全店舗及び特約店で販売されていることが紹介されている(甲33)。
なお、2012年3月発行、同年8月発行、同年10月発行の同誌において、「DTEC」ブランドによる「COXボディダンパー」の紹介がされており、当該商品が同誌の「CarGoods of the Year」を受賞している(甲34?甲36)。
これらの事実に鑑みれば、今現在においても変わらず専門誌等において「DTEC」ブランドが取り上げられていることがわかる。
これらの証拠に鑑みれば、「DTEC」ブランドは、商品「自動車の部品及び付属品」について、その高い品質に対する多大な信用を獲得しており、それは現在においても何ら変わることがない事実であることがいえる。
なお、請求人は、神奈川県全域に販売網を有し、事業展開を行っているものであるが、上記の(ア)ないし(オ)の雑誌は、全国誌であるから、「DTEC」ブランドの周知著名性は、神奈川県のみならず、全国的に知れわたっているとみて差し支えない。
イ 広告・宣伝について
請求人は、これまで「DTEC」ブランドを含む広告・宣伝を多数行っている。以下は、そのうち2005年3月から2006年12月まで6回にわたって作成、配布されたチラシの総数量及びその内容である。
2005年3月 1,091,000部 2,238,000部 (甲37)
2005年10月 1,095,500部 1,961,600部 (甲38)
2006年1月 1,129,500部 1,187,500部 (甲39)
2006年7月 1,123,500部 1,143,500部 (甲40)
2006年9月 1,113,500部 1,128,500部 (甲41)
2006年12月 1,119,500部 1,167,500部 (甲42)
2005年3月分ないし2006年12月分の折込チラシ(注文)部数リスト(甲43)
上記のとおり、一回につき最低でも約112万部以上を頒布しているから、その広告・宣伝の量は極めて多く、このことからも「DTEC」ブランドは、本件商標の登録出願日前に自動車関係の需要者、取引者に広く認識されていたといえる。
なお、今現在においても、DMやリーフレットなども含めて、「DTEC」ブランドの商品を積極的に広告・宣伝している(甲44,甲45)。
以上の「雑誌等における広告又は記事掲載状況」及び「広告宣伝状況」によって、請求人が引用商標「DTEC」を自動車の部品等に長年使用して、本件商標の登録出願日及び登録査定時において、需要者、取引者に広く認識されていることは容易に理解し得るところである。
4 本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、「i」の欧文字と「DTEC」の欧文字とをハイフンで結合し、「i-DTEC」と標準文字により表してなるところ、これらが結合して、特定の成語を形成するものではないことは明らかである。
そして、自動車関連の分野においては、欧文字の一字又は二字が商品の規格・品番等を表示する記号・符号として、一般的に用いられており、例えば、被請求人が開発したエンジン「VTEC」のバリエーションに「i-VTEC」、「VTEC-E」などが採択されている事実からもそれがうかがえる(甲47)。
それらに鑑みれば、本件商標は、その構成中の「i」の欧文字部分は識別力がなく、自他商品の識別標識としての機能を果たす文字部分は「DTEC」であるため、よって、「DTEC」の文字に相応して「デイテック」の称呼をも生ずるものである。
他方、引用商標「DTEC」からは「デイテック」の称呼を生ずることは明らかである。
そうとすれば、両商標は、共に「デイテック」の称呼を共通にする類似の商標といわざるを得ない。
また、外観も「DTEC」の文字部分において同一であり、かつ、観念においては何れも造語であるから比較できない。
したがって、両商標は「デイテック」の称呼を共通にする類似の商標であり、外観上も「DTEC」の文字部分において同一であるから、両商標の類似性の程度は極めて高いといわなければならない。
さらに、請求人は、長年にわたり、同社のチューニングに係る自動車や自動車部品などに「DTEC」ブランドを継続して使用し、その高い技術が評価されて、雑誌などにも大々的に掲載されており、また、長年にわたる大量の広告・宣伝の効果も相俟って、周知・著名に至ったものであることは、既に述べたとおりである。
そして、本件の指定商品が属する分野において、引用商標「DTEC」は、需要者、取引者に広く認識されている商標といえることから、特許庁の商標審査基準で示されている「指定商品について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする」にのっとり(甲46)、本件商標と引用商標との類否は認定されるべきである。
そうとすれば、「DTEC」商標は、「自動車並びにその部品及び附属品」については、当然のことながら、商標権者である請求人のみが使用しているものであり、さらに、引用商標が需要者、取引者の間に広く認識された商標であることも考えれば、これと同一の商品に本件商標「i-DTEC」が使用された場合、商標の要部である「DTEC」の文字を共通にするところから、需要者、取引者は、出所を同じくする商品であると混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標と引用商標とは、その出所について混同を生ずるおそれのある類似の商標といわざるを得ない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標は、指定商品中の第12類中の「自動車並びにその部品及び附属品」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は、請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第130号証を提出した。
1 本件商標の一体不可分性について
(1)本件商標は、英字「i-DTEC」を標準文字で表し、英字の大小文字の相違はあるが、同書、同大、等間隔で、外観上極めてまとまりの良い構成である。また、ハイフンは、英文等で、二語を連結して一語相当の語としたり、一語が二行にまたがって書かれたりするときに用いる符号であり(乙1)、前後の語句を密接不可分に結合させる機能を有するから、本件商標は、「i」と「DTEC」とが密接不可分に結合し、構成全体の一体感が強いと認められる。さらに、本件商標は、全体で英5字、ハイフンを考慮しても全6字で、決して冗長な構成とはいえない。
よって、本件商標は、外観構成上、これを分離し、あるいは要部観察すべき必然性は存在しない。
(2)次に、本件商標の自然的称呼「アイディーテック」は、日本語の発音では7音(7拍)だが、英語の発音に照らせばわずか3音節で、共に格別冗長ではなく、全体的な語呂・語調も平滑・流ちょうにして歯切れ良く、語頭から語尾まで一息で一気一連に発音するに何ら難くない端的な称呼である。
よって、本件商標は、称呼上も、これを分離し、あるいは要部観察すべき必然性は存在しない。
(3)また、本件商標は、全体として特定の観念を有さない造語であるが、「i-D」が「身分証明書」等を意味する「ID(identification)」と同一の称呼で、「TEC」が「技術」等を意味する「technology」の略語として種々の商標又は商号に好んで使用されていることから、構成全体で「身分証明書の技術」等の如き印象・イメージを想起させ、観念的にも一体感が強いといい得る。
よって、本件商標は、これを殊更「i-」と「DTEC」とに分離し、あるいは要部観察すべき必然性は何ら存在しない。
(4)以上のとおり、本件商標は、外観構成、称呼、観念或いはイメージにおいて、いずれも密接不可分に構成された一連の商標であり、標準文字「DTEC」の引用商標とは、頭文字「i-」の有無で顕著に相違し、明らかに非類似である。
(5)なお、請求人は、引用商標が、独創性のある造語で、一般に、独創的な商標は強い自他商品識別力を有すると判断されると主張する。
しかし、前述のとおり、「TEC」は種々の商標又は商号に好んで使用されており、例えば、引用商標と同様、英一字と「TEC」を結合させた登録商標が極めて多数存在し(乙2)、その商標権者も、「株式会社イーテック」、「株式会社アイテック」、「株式会社ジェイテック・ゴルフ」等の如く、英一字の片仮名表記と「テック」との結合を商号として採択し使用する企業が多数存在する。
したがって、引用商標が、自他商品識別力を有することは否定しないが、決して独創性が高いとはいえず、自他商品識別力が、さほど強いとはいい難い。
また、本件商標は、前述のとおり、「DTEC」が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとは認められず、また、前半「i-」が単純に商品の規格、品番等を表示する記号、符号等を表すというよりは、構成全体で特定の観念を生じない一種の造語として認識するのが自然で、「DTEC」以外の部分「i-」から出所識別標識としての称呼、観念が一切生じないとすることもできない。
よって、本件商標は、構成部分の一部である「DTEC」のみを抽出し、その部分だけを引用商標と比較して、商標そのものの類否を判断することは許されないというべきである。
2 本件商標の語頭「i」の記号性について
(1)請求人は、本件商標の構成中「i」が、商品の規格・品番等を表示するための記号・符号の一類型に該当し、自他商品識別標識として機能するのは「DTEC」の部分であると主張し、わずかに2件の審決例を挙げている。
しかし、甲第3号証の審決は、英一字と後続語とがスペースにより物理的に二つの部分に分離された商標に関するもので、前後を繋ぐ符号であるハイフンで結合された本件商標とは事例が異なり、また、甲第4号証の審決は、上段に大書された英一字が、下段の文字と大きさ及び太さが異なり、明らかに上下段が分離する態様であるから、これも本件とは事例が全く異なり、いずれも本件の類否判断において参考にすべきものとはいい得ない。
(2)また、英1字が上記記号・符号に該当するとして無視されるのは、一般的に固有の商標の後に付記されて規格、品番等を表す場合であり、表示全体の前半部、特に語頭に配されることは社会通念上あり得ず、我々の日常経験則や取引の実情に反する。すなわち、「DTEC-i」の如き構成であれば、「『DTEC』ブランドの商品でi品番のもの」というニュアンスで認識、把握され得るが、本件商標の如く、語頭に英1字「i」が配され、結合符であるハイフンを介して、後続語「DTEC」に連なる場合、前述した外観・称呼・観念イメージをも併せ考慮すれば、なおさら、頭文字「i」を、単純に記号・符号と把握して無視することは極めて不自然といわざるを得ず、同旨の審決も多数存在する。
まず、英1字「i(I)-」を語頭に冠した商標が、「i(I)-」以外の部分の商標と非類似と判断された多数の審決例(乙3?乙32)が存在する。
これらの各審決は、もちろん、本件商標と事案を異にするが、いずれも被請求人主張と全く同様の論法により、語頭の英一字を記号・符号には該当しないと判断しており、本件の類否判断に際しても、十分参酌すべきであると考える。
なお、参考までに、英1字をハイフンで語頭に結合した商標と、当該英1字を除いた商標との類否に関する審決を、アルファベットごとに一覧表にしたものと(乙33?乙57)、これらの審決において、語頭の英一字が記号・符号に該当すると判断されたか否かを年代毎に分類して対比させた一覧表(乙58)を提出する。
これによれば、語頭「i(I)-」の記号性が争われた審決は、全32件確認できるが(乙33)、「i(I)-」を記号・符号に該当するとした審決は2件存在するのみで、他の30件は全て記号性を否定しており(乙3?乙32)、これら多数の審決により被請求人主張は裏付けられている。
よって、本件商標は、頭文字「i」が、商品の規格・品番等を表示する記号・符号に該当するとして識別力を欠き、類否判断に際して無視すべきか否かという点からも、これを無視すべきではなく、一連でのみ判断すべきである。
3 併存登録例の存在について
(1)本件商標は、引用商標のほか、これと同一の称呼を生じ得る以下の各商標と併存登録されている。このうち、乙第61号証及び乙第62号証は、請求人所有の登録商標である。
「D-Tek」(乙59)、「DAYTEK」(乙60)、「ディーテック/DTEC」(乙61)、別掲のとおりの「ロゴ(DTEC)」(乙62)の登録例により、本件商標を構成全体で一体不可分の商標と捉え、各登録商標と非類似とした特許庁の判断が明確に示されている。
(2)上記のほか、英1字「i(I)-」を語頭に冠した商標と、それ以外の部分の商標が、非類似と判断されて併存登録されている事実は多数存在する。なお、これらは、本件の類否判断に当たり、被請求人が厳選した併存登録例(乙63?乙118)である。
これらのうち、乙第63号証の商標は、被請求人所有の登録商標で乙第64号証及び乙第65号証の商標と指定商品「自動車並びにその部品及び附属品」で併存登録されている。
また、乙第88号証及び乙第90号証の商標も指定商品「自動車並びにその部品及び附属品」で、乙第68号証の商標は指定商品「陸上の乗物用の機械要素」で、乙第115号証の商標は指定役務「自動車の修理又は整備」で、それぞれの商標と併存登録されている。これらの事実は、請求に係る指定商品「自動車並びにその部品及び附属品」やこれに関連性を有する商品「陸上の乗物用の機械要素」又は役務「自動車の修理又は整備」の分野で、商標の語頭「i(I)-」が、商品又は役務の規格・品番等を表示する記号・符号として認識されることはないことを明確に示している。
また、乙第63号証ないし乙第78号証の併存登録例は、語頭の頭文字以降が、一定の意味を有する既成語ではなく、ハイフンの直後の英字も、アルファベット読みされる点で、本件と共通している。のみならず、乙第66号証の商標は、語頭部の「i-D」の構成が本件商標と同一である。
さらに、乙第63号証ないし乙第81号証及び乙第115号証ないし乙第118の併存登録例は、商標の構成音数が8音ないし10音と、本件商標のそれより多いにも拘らず、「i(I)-」と後続語とで分離されることなく、それぞれ比較する商標と非類似であると判断されており、これらと比較すれば、本件商標は構成音数7音で称呼も簡潔といえ、一連?体に認識されると判断されるべきである。
4 被請求人による本件商標の使用態様について
(1)本件商標は、ディーゼルエンジンの名称として被請求人により商標として使用されており、被請求人のホームページ(乙119)のみならず、個人編纂のインターネット百科事典「Wikipedia」(乙120)、男性向け情報サイト「誠Style」(乙121)、自動車専門誌「CAR GRAPHIC」のweb版「webCG」(乙122)、個人のブログ(乙123)等、種々のサイトで一連一体の態様で使用されている。
(2)検索エンジンGoogleで、本件商標と「ホンダ honda 本田」をAND検索すると、全約115,000件(乙124)、似た頁を排除した有効件数は768件で(乙125)、この検索件数だけでも、被請求人商品の話題性及び本件商標の周知性の高さ等がうかがい知れる。
また、同検索語入力欄に「i-dtec」を入力すると、当該語句と他の語句が同欄下部にプレビューされる(乙126)。これは、コンピュータが機械的に収集・処理した結果を基に、検索キーワードと関連性の高い単語を抽出して、検索語とのAND検索語句の候補としてプレビュー表示する機能である。そして、ここに表示された「cr-v」は、被請求人の取り扱いに係る自動車の名称で、「1.6」は「i-DTEC」エンジンの排気量を表す数値、その他「ディーゼルエンジン」、「エンジン」、「engine」、「diesel engine」及び「honda」も、いずれも「i-DTEC」エンジンと関連性の高い語で、この事実より同検索画面中の「i-dtec」、「i-dtec wiki」及び「i-dtecとは」の表示も、被請求人商品に興味を示すユーザーが多数存在することをうかがわせる。すなわち、乙第126号証に表示された「i-dtec」の語句は、いずれも被請求人商品である「i-DTEC」エンジンを指すものと推定でき、本件商標が、被請求人による使用により、ある程度の周知性を獲得しているといっても過言ではない程度に至っていると認められる。
(3)被請求人の実際の使用状況からみても、本件商標は、一連一体でのみ判断すべきであると思料する。
5 引用商標の周知性について
(1)請求人は、引用商標が、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者、取引者に広く認識されている商標であるとし、商標審査基準「九、第4条第1項第11号6.(6)」の記載を引用しているが、請求人提出の全証拠をもってしても、引用商標の周知著名性を認めることは、およそ困難である。
(2)請求人は、甲第5号証の1の会社案内、甲第5号証の2ないし甲第6号証の自社ホームページ、甲第7号証のカタログにおいて、引用商標のみならず、別掲のロゴ(乙62)を使用しており、これらの商標が周知性を有するのであれば、一定の形態で把握、使用されてしかるべきところ、甲第10号証及び甲第23号証ないし甲第28号証の各雑誌では、「D-TEC」、「D・TEC」、別掲のロゴ又は「D TEC」と、様々な表記がなされており、引用商標の態様が需要者又は取引者に広く認識されているとは考え難い。
(3)また、請求人は、計29件の書籍・雑誌を証拠として提出するが(甲8?甲36)、発行時期は異なるもののわずか6誌にすぎず、各誌の具体的な販売部数、販売地域等も明らかではない。さらに、甲第34号証ないし甲第36号証は、本件商標の登録査定時(平成23年5月10日)後の発行で、本件商標の登録出願時(平成19年8月27日)及び登録査定時における引用商標の周知性を判断する証拠とはならない。
なお、請求人は、甲第9号証ないし甲第36号証が各雑誌が全国誌であるから、引用商標は、神奈川県のみならず全国的に知れわたっていると見て差し支えないと主張するが、上記のとおり、各誌の販売部数、販売地域等が不明で、これらの雑誌に掲載された事実のみをもって、引用商標が全国的に知れわたっているとは到底いい難い。
(4)甲第37号証ないし甲第43号証の広告・宣伝チラシは、相当部数が存在した事実はうかがい知れるが、本件商標の登録出願時より1年又は2年以上前のもので、その間の部数も年々減少しており、かつ、当該チラシがどの地域で頒布されたのかも不明である。
また、甲第44号証及び甲第45号証は、記載された日付から、本件商標の登録査定時頃に頒布されたと推定できるが、具体的な頒布部数、頒布地域等が明らかにされていない。
(5)なお、請求人は、自社が、資本金、年間売上高、従業員数のいずれをとっても、我が国自動車販売業界では最大手の会社であると主張するが、当該業界の競業他社の資本金、年間売上高、従業員数等が明らかでなく、対比することができないから、最大手との上記主張は認め難い。
(6)請求人ホームページによれば、請求人は「神奈川県内を中心に展開」していると自認しており(乙127)、実際に請求人に属する支店も神奈川県内にしか存在しない(乙128)。一方、請求人と同列のトヨタ自動車販売会社は、基本的に各都道府県に一つずつ存在する(乙129)。すなわち、請求人が存する神奈川県と隣接する東京都、山梨県、静岡県にも、各々「東京トヨタ自動車株式会社」、「山梨トヨタ自動車株式会社」又は「静岡トヨタ自動車株式会社」が存在し、各々販売網の棲み分けがなされており、更に、「静岡トヨタ自動車株式会社」でも、独自に「T’s Advance」の名称で自動車のカスタマイズサービスを行っている(乙130)。
したがって、請求に係る指定商品の性質上、引用商標を付した商品が請求人所在地から相当離れた地点まで走行することを想定しても、需要者は、隣接都県では他のトヨタ自動車販売会社による商品又は役務の提供を受けることが可能であり、引用商標が隣接都県で周知性を獲得する余地はなく、まして全国的な周知性を有するとは到底認め難い。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標は、外観構成上、称呼上及び取引の実情を総合勘案すれば、構成全体で一体にのみ判断されるべきもので、また、語頭「i-」は商品の規格・品番等を表示するための記号・符号には該当せず、引用商標とは「i-」の有無で顕著に相違するから、明らかに非類似である上、引用商標が本件商標の指定商品の分野において周知性を有するとは認められず、商標法第4条第1項第11号には該当しない。

第5 当審の判断
1 引用商標及び「DTEC」に係る商標の周知性等について
(1)請求人の提出に係る証拠(甲5の1?3,甲9?甲33,甲37?甲42)及び請求人の主張の趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人「神奈川トヨタ」は、1946年10月15日に創業・設立された旧・神奈川トヨタ自動車株式会社(現・株式会社KTグループ)の2008年4月1日を効力発生日とする会社吸収分割により、自動車販売に関わる事業を承継した会社であって、株式会社KTグループの完全子会社であり、自動車の販売、整備及び部品の販売などを行う会社である(甲5の1?3)。
イ 本件商標の登録査定日前の発行の自動車専門雑誌である「CAR GRAPHIC」(株式会社二弦社発行:甲9?甲18)、「CARトップ」(株式会社交通タイム社発行:甲19?甲21)、「アクティブビークル」(株式会社交通タイム社発行:甲22?甲28)、「ザッカー/XaCAR」(株式会社三栄書房発行:甲29?甲32)、「CarGoodsMagazine」(株式会社三栄書房発行:甲33)に、「DTEC アルテッツア」、「DTEC」、別掲に記載のとおりのロゴ化した「DTEC」、「ディーテック」、「DTEC(ディーテック)」の標章が表記されて、自動車のチューニング、チューニング用部品、チューニングされた自動車などについての紹介がされていたことが認められ、それらは、2001年1月から2011年1月にわたるものである。
例えば、「CAR GRAPHIC」(2005年5月号:甲17)の136頁に「真の“チューニング”を賞味あれ/DTEC CROWN ATHLETE/DTEC クラウン・アスリート」のタイトルの下、「・・・DTECは、神奈川県全域に営業拠点を持つトヨタ車ディーラー、神奈川トヨタ自動車が立ち上げたチューニング・ブランドである。・・・一般的にディーラーに置いてあるチューニング・パーツといえば、・・・。ところがDTECブランドを冠した商品群は、・・・車高の低下量を抑えたサスペンション・キット、ダイレクトな操縦感覚を求めたピロホールや強化ブッシュ、シャシーの要所を強化するリインフォースメント、冷却性能を高めたブレーキディスク&パッドなど、外観からは分からないような玄人好みの製品が多くを占める。」と紹介されている。
同じく、「CarGoodsMagazine」(株式会社三栄書房発行:甲33)において、「ボディの振動や変形を吸収!『不快なゴツゴツ感や突き上げ感を緩和』」の見出しの下、「そこに目をつけたのが『コックスボディダンパーSetting by DTEC』。段差を乗り越えたときなどに変形したボディが元に戻ろうとする反発力を、特殊ダンパーの減衰力で穏やかにしようというもの。」の記載があり、「DTEC/COX ボディダンパー/Setting by DTEC」の表示及びその画像の下、「作業自体はボルトオンだが、ダンパーの位置が中立になっていること、またタイヤが接地した状態で取り付けないと本来の機能を出せない。そのためマスターワン、神奈川トヨタ全店舗および特約店での販売、装着となる。」との記載がある。
ウ 甲第37号証ないし甲42号証は、2005年3月から2006年11月に至る6回にわたる特定の月における「大日本印刷株式会社」から「神奈川トヨタ自動車(株)」あてのチラシの請求書とするものであり、各証拠にはチラシの写しといえるものが添付されており、自動車又はその部品の画像ともに、別掲のロゴ又は「DTEC」若しくは「ディーテック」の文字が表されていることが認められる。そして、各月のチラシの大日本印刷株式会社の作成数量は、1,091,000部、1,095,500部、1,129,500部、1,123,500部、1,113,500部、1,119,500部であったといえる。
(2)上記(1)によれば、請求人は、自動車の販売、整備及び部品の販売などを行う会社であり、自動車のチューニングブランドとして立ち上げた「DTEC」の標章を使用して、チューニング及びそれに係る商品の販売等を長年にわたって行っており、「DTEC」の標章は、本件商標の登録査定時において、「自動車並びにその部品及び附属品」に係る取引者、需要者に相当程度認識されていたものと認められる。
2 被請求人及びその使用に係る本件商標について
(1)被請求人の提出に係る証拠(乙119?乙122)によれば、以下の事実が認められる。
ア 被請求人ホームページ(乙119)において、「ディーゼルエンジン『i-DTEC』」の表題の下、「Hondaの第2世代ディーゼルエンジン『i-DTEC』(写真左)と搭載予定の次期型欧州アコード。」の説明が付された画像とともに、「Hondaはガソリンエンジンに匹敵するレベルにクリーン化する画期的な新世代ディーゼルエンジン用のNOx触媒を新開発、ガソリン車と同等のNOx排出レベルが求められる米国の排出ガス規制・・・排出ガスレベル(社内値)を達成した。・・・」との記載がある。
イ フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の「ホンダ・N型エンジン」(乙120)の項において、「2006年9月25日には、N22Aを改良したエンジンが米国の排出ガス規制・・・を達成したと発表した。2007年はi-DTECの名称が発表された。」との記載がある。
ウ ウェブサイト「誠Style」(2013/04/22打ち出し)(乙121)において、「ホンダ、『シビック Type-R』を2015年に欧州投入--レース仕様車からフィードバック」の表題の下、「本田技研工業は、開催中の『パリモーターショー2012』において、2015年を目標に欧州市場で投入する『シビック Type-R』を開発中だと発表した。また、クリーンディーゼルエンジン『i-DTEC』を搭載するモデルも登場する。」との記載がある。
エ 「CAR GRAPHIC」のウェブサイト版「webCG」の「ホンダ・アコード・ディーゼル(i-DTEC搭載/プロトタイプ)【短評】」の欄(乙122)において、「i-DTECの概要・・・新型ディーゼルとは、昨2006年9月25日に発表した『i-DTEC』ユニットのこと。2003年に登場した2.2リッター『i-CTDi』を発展させたもので、ガソリンエンジンに匹敵するクリーンさを謳う。」との記載がある。
(2)上記(1)によれば、本件商標「i-DTEC」が欧州地域で「自動車のエンジン」について使用され、それがその関係者において一定程度知られていたことはあるにしても、それが本件商標の指定商品中の「自動車並びにその部品及び附属品」における我が国の取引者、需要者の間に、本件商標と引用商標との類否判断に影響を与える程度に知られるに至っていたとは認めることができない。
3 本件商標について
本件商標は、前記第1のとおりの構成からなるところ、「i」の欧文字と「DTEC」の欧文字とを「-」(ハイフン)で結合した結合商標であることは明らかである。
本件商標である「i-DTEC」は、「i」及び「DTEC」という二つの欧文字の構成部分をハイフンで結合しているものであり、「i」と「DTEC」との間には、明確にハイフンが存在するのであって、しかも、語頭の「i」の欧文字が小文字で表され、「DTEC」の欧文字が大文字で表されていることから、視覚上、本件商標がハイフンの前後で「i」と「DTEC」に分離されて看取されることは明らかである。
また、「i」の欧文字は、「DTEC」の欧文字の各文字と比較して、縦の長さが短いことは小文字と大文字とであるから当然のことであるほか、横の長さが半分にも満たないことから、本件商標の構成中、「DTEC」の欧文字部分が、看者をして、視覚上強く印象づけられるといえるものである。
そして、「-」(ハイフン)は、言語表記の補助記号として使用され、英文などで、完全に複合語をなすに至らない2語の連結、1語が行末までに収まりきれず2行またがるときのつなぎ、また、1語内の要素の区切りを示すのに使われるものである(乙1(大辞林第三版)及び「広辞苑第六版」参照)ところ、「DTEC」の文字は、辞書等に載録されている成語であるとは認められないものであるのに対し、「i」の文字は、「英語アルファベットの第9字」と各種英和辞典等に収録されているほか、「現代用語の基礎知識」(自由国民社、2010年1月1日発行)において、「i-」を見出しとして、「〔information,internet〕情報・インターネット(用)の。」と記載されており、「information」又は「internet」の略語として使用されていることがうかがわれる。
次に、本件商標を構成する「i-DTEC」の欧文字が一体のものとして、どのような意味内容を有する語であるかについてみるに、上記2のとおり、これが、「自動車並びにその部品及び附属品」の取引社会において、一連一体の語句として特定の意味合いをもって一般に親しまれていると認めるに足りる証拠はなく、他にも、上記欧文字が全体としてみて一体不可分のものとしてのみ理解されると認めさせる証拠は、本件全証拠を検討しても見いだすことができない。
一方、「DTEC」の欧文字については、上記1のとおり、請求人が使用する「DTEC」の標章が、本件商標の登録査定時において、「自動車並びにその部品及び附属品」に係る取引者、需要者に相当程度認識されていたと認められるものである。
そうとすると、本件商標に接する一般の取引者、需要者は、これを分離して把握し、認識し、称呼することが十分にあり得るものであって、本件商標からは、全体として「i-DTEC」の文字部分に相応する称呼が生ずるとともに、「DTEC」の文字部分に相応する称呼をも生じ得るものと認められる。
したがって、本件商標は、全体として「アイディーテック」の称呼を生ずるほか、単に「ディーテック」の称呼をも生ずるものといえる。そして、本件商標は、特定の観念を有しないものである。
4 引用商標について
引用商標は、前記第2のとおり、「DTEC」の欧文字を標準文字で表してなるものである。「DTEC」の文字は、辞書等に載録されている成語であるとは認められないものであるところ、これよりは「ディーテック」の称呼が生ずるものといえる。
また、引用商標は、特定の観念を有しないものである。
5 本件商標と引用商標との類否について
(1)外観
本件商標と引用商標とは、両者の外観を全体観察により視覚上対比観察した場合には、引用商標には本件商標の「i-」に相当する部分がないから、全体の外観は相違する。
しかしながら、本件商標の「DTEC」の文字部分と引用商標の「DTEC」の文字とは、大文字で書された欧文字である「D」、「T」、「E」及び「C」の綴りを同一とし、かつ、本件商標の「DTEC」の部分が、上記3のとおり、取引者、需要者をして、分離して認識、把握される場合も少なくないから、この部分においては外観上同一であり、本件商標全体としては近似した印象を与えるというのが相当である。
(2)観念
本件商標及びその「DTEC」の文字部分が、特定の観念を有しないことは上記3のとおりであり、また、引用商標も特定の観念を有しないことは上記4のとおりである。
したがって、本件商標と引用商標とは、観念において共通するものではないが、観念上区別し得る相違も有するものでもない。
(3)称呼
本件商標は、上記3のとおり、その構成中の「DTEC」の文字部分に相応して「ディーテック」の称呼を生ずるものである。
一方、引用商標も、その構成文字「DTEC」の文字に相応して「ディーテック」の称呼を生ずるものである。
(4)本件商標及び引用商標に係る指定商品並びに関連する取引の実情
前記第1及び第2によれば、本件商標の指定商品中の「自動車並びにその部品及び附属品」(第12類)と引用商標の指定商品である「自動車並びにその部品及び附属品」とが同一である。
また、上記1及び2によれば、本件商標は、実際に「自動車のエンジン」に使用されているものであり、これがその指定商品である「自動車並びにその部品及び附属品」には含まれない商品であるところ、引用商標が「自動車並びにその部品及び附属品」に含まれる商品に使用されて、それらに係る取引者、需要者に相当程度認識されていたものと認められるのに対して、本件商標にはそのような事情はないものといえる。
その他、両当事者からは、取引の事情に関する証拠の提出はない。
(5)小括
上記のとおり、本件商標と引用商標とは、本件商標の「DTEC」文字部分と引用商標とが「D」、「T」、「E」及び「C」の文字の綴りを全く同じくし、かつ、双方とも特定の意味を有しない造語であって観念上区別できないこと、さらに、本件商標の「DTEC」文字部分と引用商標とが共通していることから外観上において近似した印象を与えること、その上で「ディーテック」の称呼を共通にするものである。
以上を総合すると、本件商標は、その「i-」の部分と「DTEC」との各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとも認められないし、また、特定の観念を有しない大文字で表されている「DTEC」の欧文字部分が支配的な印象を与える場合があるというのが相当である。
そうすると、本件商標と引用商標とは、「自動車並びにその部品及び附属品」の取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品に係る取引の実情を踏まえて全体的に考察すると、商標及び指定商品において類似し、かつ、両商標をその指定商品について使用したときは、これに接する「自動車並びにその部品及び附属品」の取引者、需要者をして誤認混同を生じさせるおそれがある類似の商標というべきである。
6 被請求人の主張について
(1)被請求人は、本件商標は、外観上極めてまとまりの良い構成であり、ハイフンが前後の語句を密接不可分に結合させる機能を有するから構成全体の一体感が強いと認められ、また、自然称呼「アイディーテック」も一息で一気一連に発音するに何ら難しくない端的な称呼であるから、これを殊更「i-」と「DTEC」とに分離し、あるいは要部観察すべき必然性はない旨主張する。
しかしながら、本件商標が結合商標として全体としてまとまりよく一つの商標を形成しているとしても、ハイフンによって結合されていること自体、本件商標が完全な複合語をなすに至っていないことを示しているということができ、その他、本件全証拠によっても、本件商標が、ハイフンで結合したことによって、「i」と「DTEC」とを分離して観察することが取引の実情に照らして不自然であると思われるほど不可分一体に結合していると認めさせる事実は見いだすことができない。
(2)被請求人は、本件商標の語頭「i」の記号性について、英1字が記号・符号に該当するとして無視されるのは、一般的に固有の商標の後に付記されて規格、品番等を表す場合であり、表示全体の前半部、特に語頭に配されることは社会通念上あり得ず、我々の日常経験則や取引の実情に反する旨主張する。
しかしながら、少なくとも、請求人が提出した甲第47号証(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)の「VTEC」の項に「VTEC(ブイテック、・・・)は、本田技研工業が開発した4サイクルエンジン用の可変バルブタイミング・リフト機構および、その名称である。・・・VTECのバリエーション・・・i-VTEC 2000年10月26日のストリームの発表において、VTCを採用したK20A型エンジン(2.0L 直4)に初めて搭載された。以後、同社のカム切り替え機構を備えたエンジンはi-VTECと称され、VTCに限らず何らかの新機軸を盛り込んだVTECのことを指す。そのため、名称は同じでも機構面ではいくつかのバリエーションが存在する。」との記載があり、「i-VTEC」がVTECのバリエーションの一つであることからすれば、語頭の「i」が符号・記号であるともいい得るものであり、ハイフンを含むこのような構成において、英1字が記号・符号に該当するとして無視されることが語頭に配されている場合は社会通念上あり得ないとはいい切れない。
(3)被請求人は、拒絶査定不服審判2006-12064「i-MFP」ほか21の登録審決(甲3?甲32)及び商標登録第4729782号「i-DSI」と商標登録第2443221号・商標登録第4181648号「DSI」ほか18組の併存登録例を挙げて、本件の類否判断に際しても十分参酌されるべきであって、本件商標と引用商標とは非類似と判断すべきである旨主張する。
しかしながら、被請求人が挙げるこれらの例は、これらが商標登録の実務において登録されたとして、ただそれらを列挙しただけであるところ、その判断時、商標全体の構成・態様が本件無効審判の場合と相違するものであって、事案を異にするものであるから、上記判断を左右するものではない。
(4)したがって、被請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
7 むすび
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中、本件審判の請求に係る指定商品である「自動車並びにその部品及び附属品」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、「結論掲記の指定商品」についての登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
請求人の使用ロゴ
(被請求人の主張としては、乙第62号証におけるもの。)


審理終結日 2013-08-26 
結審通知日 2013-08-28 
審決日 2013-10-29 
出願番号 商願2007-92082(T2007-92082) 
審決分類 T 1 12・ 262- Z (X12)
T 1 12・ 261- Z (X12)
最終処分 成立 
前審関与審査官 矢澤 一幸 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 酒井 福造
手塚 義明
登録日 2011-07-01 
登録番号 商標登録第5422683号(T5422683) 
商標の称呼 アイデイテック、アイデイテイイイシイ、デイテック、デイテイイイシイ 
代理人 特許業務法人松田特許事務所 
代理人 笠松 直紀 
代理人 萼 経夫 
代理人 山田 清治 
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