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審判番号(事件番号) データベース 権利
取消2013300235 審決 商標
取消2013300263 審決 商標
取消2013300398 審決 商標

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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 025
管理番号 1287617 
審判番号 取消2011-301114 
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-12-08 
確定日 2014-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第3288564号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成24年12月3日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成25年(行ケ)第10010号平成25年7月4日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3288564号商標(以下「本件商標」という。)は、「ウイルス」の片仮名と「VIRUS」の欧文字を上下二段で表した構成からなり、平成6年11月18日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボン吊り,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同9年4月25日に設定登録され、その後、同18年11月14日に商標権の存続期間の更新登録がされ、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成23年12月28日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第25類「被服,運動用特殊衣服」についてその登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び平成24年2月10日付けの答弁(以下「第1答弁」という。)に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第5号証(弁駁書に添付の「甲第1号証ないし甲第3号証」を「甲第3号証ないし甲第5号証」と読み替える。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、「被服,運動用特殊被服」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 本件商標の使用の事実について
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、本件商標を付した商品「ジーンズパンツ」(品番84002:以下「使用商品」という。)の写真4枚である(以下、上から下に向って順に「写真A」ないし「写真D」という。)。
ア 商標の作成時期についての疑義
写真Dには、包装袋上に、「VIRUS」、「定番デニムパンツ」、「デニムパンツ」、「ブラック/50」、「¥11,500」の各文字が表示されているところ、このような表示は、大事な情報であるので、包装袋の表面ではなく、使用商品本体の尻ポケットのあたりに貼付されるのが普通であると思われる。しかるに、本件商標の使用を立証するために、慌てて写真を撮る必要ができ、その際に本件商標を書したラベルを作成したので、不自然な場所に上記表示がついたラベルを貼ってしまったものと推察される。
イ 色についての疑問
写真Dにおける表示中の「ブラック/50」は、色を表示しているものと思われるが、写真AないしDを見るに、使用商品の色がブラック(黒色)であるとは到底感じられない。むしろ、インディゴの色をしている。使用商品は、色自体に非常なこだわりと関心を示す若者向けの商品であるので、色の表示を間違えるなど考えられないことである。写真を撮る際に慌てて本件商標を書したラベルを作成したので、間違った色の表示をしたラベルを使用商品に付してしまったものと推察される。
ウ 使用商品に付された金額が異なることについての疑問
写真Bは「¥12,800」とあるが、写真Dは「¥11,500」となっている。これより考えられることは、2種類のラベルを写真を撮る際に慌てて作成したので、値段が一致しないラベルを作ってしまった。被請求人は、当該2種類のラベルは貼る場所が異なっているために、その不一致に最後まで気付かずに、一方は「ジーンズパンツ」に、他方は、包装袋に貼付して写真の撮影をしたものと推察される。
(2)乙第2号証及び乙第3号証について
乙第2号証は、使用商品(乙1)と同型の商品3点を、平成23年10月21日に企業A(以下「企業A」という。)ヘ販売した際の請求書(控)であり、乙第3号証はこれに対する領収書(控)である。
領収書(控)(乙3)には、商品代としか書されていない。この領収書は、商標権者が、使用商品(品番84002)を販売した事実を立証できるものではない。なぜならば、当該領収書(控)には、販売者としての商標権者の名称・住所等を示すものも、また、使用商品の商品名の特定もない。
もし、商標権者が、使用商品を平成23年10月21日に、企業Aヘ販売したのならば、その販売責任者が発行した商標権者あての使用商品の受取証を提出すべきであったが、乙第1号証ないし乙第11号証中には、これに該当するものは見当たらない。
したがって、乙第2号証及び乙第3号証は、商標権者が使用商品を販売したという事実を証左するものではない。
(3)乙第4号証について
ア 乙第4号証の1及び乙第4号証の2
ティーシャツ、タンクトップ、ジャケット等の在庫を示すものであるが、本件商標を表示したものはどこにも見いだすことができないので、本件商標の使用を示す証拠となるものではない。
イ 乙第4号証の3
ティーシャツの襟元に本件商標の表示があるが、この写真は、2012年(平成24年)2月4日に本件商標が「ティーシャツ」に貼付されていたという事実を示すとしても、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間」という場合がある。)に日本国内において使用されていたという事実を立証するものではない。
(4)乙第5号証ないし乙第7号証について
乙第5号証に示す雑誌は2003年4月号、乙第6号証に示す雑誌は2001年10月号、乙第7号証に示す雑誌は2003年3月号である。したがって、乙第5号証ないし乙第7号証は、本件商標が要証期間に日本国内において使用されていたという事実を立証するものではない。
(5)乙第8号証について
乙第8号証の1は、古着屋(ブランド・リサイクル・ブティック アクセント)の販売情報であるが、その日付が不明であり、また、乙第8号証の2は、販売情報の日付が2012年1月18日である。したがって、これらの証拠は、本件商標が要証期間に日本国内において使用されていたという事実を立証するものではない。また、被請求人は、「ブランド・リサイクル・ブティック アクセント」及び「ブランド古着屋エキゾースト」との関係について、何ら主張・立証していないから、両者が、本件商標に係る通常使用権者として雑誌やホームページに広告を掲載していたものとは認められない。
(6)乙第9号証について
ア 乙第9号証の1及び2は、掲載情報の日付(2012年2月8日)が本件審判の請求の登録日以後であり、また、被請求人は、「楽天」との関係について通常使用権者であるとの主張・立証をしていないから、同人が、本件商標に係る通常使用権者としてインターネットに情報を載せていたものとは認められない。
イ 乙第9号証の3は、掲載情報の日付(2012年2月8日)が本件審判の請求の登録日以後であり、また、被請求人は、「クラウン ジュエル」との関係について通常使用権者であるとの主張・立証をしていないから、同人が、本件商標に係る通常使用権者としてインターネットに情報を載せていたものとは認められない。
(7)乙第10号証について
商標権者が米国雑誌へ掲載した広告の日は、要証期間内ではない。
(8)乙第11号証について
乙第11号証は、要証期間に日本国内において、本件商標の使用をしていたという事実を証明するものではない。
(9)商標の同一性について
本件商標は、片仮名と欧文字とが上下二段によりなる商標であるが、乙第1号証ないし乙第4号証によると、欧文字「VIRUS」のみの商標(以下「使用商標」という。)が使用されている。
商標法第50条第1項括弧書き例示の類型以外の使用商標が登録商標と社会通念上同一といえるか否かを判断する場合には、審判便覧の53-01「登録商標の不使用による取消審判」に示す「登録商標の認定に関する運用の事例」(以下「事例」という。)が実務上の判断の基準となるところ、本件の場合には、片仮名と欧文字の登録商標に対し、使用商標が片仮名であるので、事例の中では例2を採用するのがふさわしいと思われる。これによると、「ラブ」と「love」、「ポスト」と「post」のように、登録商標と使用商標から同一の称呼及び観念が生じる場合、いわゆる「一対一対応」の場合に社会通念上同一の商標と判断される。
これを本件についてみると、両者は観念的には同じであると思われるが、本件商標からは「ウイルス」のみならず「ビールス」の称呼をも生じ得る(甲1)から、本件商標と使用商標とは、同一の称呼及び観念が生じる関係、いわゆる「一対一」の関係にないことは明らかである。本件商標の上段の「ウイルス」と下段の「VIRUS」から生じる称呼は、同一ではないことから、上段・下段との間に同一性はなく、上下二段の商標を使用して初めて登録商標の使用に該当することになる。
したがって、本件商標と使用商標は、社会通念上同一のものではなく、その使用は、本件商標の使用の事実を示すものではないことは明らかである。
(10)以上のとおり、乙第1号証ないし乙第11号証によっては、本件商標が要証期間に使用されていたことは何ら証明されていない。
提出された証拠には、請求書(控)、領収書(控)について第三者による証明がなされていない。これら第三者による証明書が提出されない限り、乙第2号証及び乙第3号証の写真で示された使用商品の使用は、単なる展覧にすぎず、商標法第2条第3項第2号の使用には該当しない。この点について、東京高裁平成4年(行ケ)第144号判決(甲第4号証)は、不使用取消の審判を免れる目的で名目的に商標を使用するかのような外観を呈する行為があっただけでは、改正前商標法第2条第3項第3号の使用には該当しないと判示しており、また、知財高裁平成20年(行ケ)第10317号判決(甲5)は、取消審判事件では、原則は具体的取引書類であって、例えば、注文書、納品書、支払伝票等の提示がされるべきであると判示しているところ、本件においては、使用商品の具体的取引書類(例えば、第三者による証明書が付いた注文書、納品書、支払伝票等)の提示がないこと、商標権者が第三者の販売店において本件商標を使用しているとの陳述書がないことの点において、上記知財高裁が示した要件を満たしていない。これらのことからみれば、被請求人の行為は、単に不使用取消の審判を免れるための商標の名目的使用に該当するものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第45号証(枝番号を含む。なお、平成25年9月6日付け回答書に添付の証拠「甲第21号証の1ないし甲第52号証」を「乙第13号証の1ないし乙第45号証」と読み替える。)を提出した。
1 使用の事実
(1)乙第1号証は、本件商標を付した商品「ジーンズパンツ」(品番84002:使用商品)の写真AないしDである。乙第1号証の2は、写真Aを拡大した写真(ア)及び乙第1号証の3は、写真Aの一部を拡大した写真(イ及びウ)である。
(2)乙第2号証は、使用商品(乙第1号証)と同型の「ジーンズパンツ」3点を、平成23年10月21日に企業Aヘ販売した際の請求書(控)であり、乙第3号証はこれに対する領収書(控)である。また、乙第3号証の2及び乙第3号証の3は、乙第3号証の前後に連なる領収書の写真である。そして、乙18の写真及び乙25の領収書綴りから、領収書の控えは時系列順に並んでいる。
(3)乙第26号証は、品番・型番一覧表である。型番「PRVCA84002」のジーンズパンツは、色はインディゴとブラックの2種類ある(定価はインディゴ1万2800円、ブラックが1万1550円〔乙1、乙1の2、乙1の3、乙13の1ないし乙13の3、乙15の1、乙15の2の写真で確認される商品タグに記載された定価も同じ。〕)。そして、乙1、乙1の2、乙1の3、乙13の1ないし乙13の3、乙15の1、乙15の2、乙20の3の写真には、タグに型番「PRVCA84002」の記載がなされ、色も2種類ある。同種ジーンズパンツには、ズボンベルト近くの皮革部分には「VIRUS DENIM LINE dl 704」、とバックポケットに「VIRUS STARTED IN 1996.- VIRUS DENIM LINE STARTED IN1997.(中略)THE VIRUS DENIM LINE IS CREATED THROUGH THE INSPIRATION FOUND IN ALL OF THESE THINGS.」と記載され、該「VIRUS」の商標も本件商標と社会通念上同一の商標である。
(4)乙第27号証は、企業Aの履歴全部事項証明書であり、乙第28号証は、同社のホームページである。企業Aは、衣料品の販売等を行っているところ、同社社長の人物Aは、平成23年10月21日に48サイズのインディゴのジーンズパンツ3本を1万5750円で購入した旨陳述している(乙16)。そして、平成24年3月20日に実施された展示会で、同社の社員である人物Bはこのジーンズパンツを譲り受けた旨陳述している(乙17)。
(5)領収書綴りにある企業B(乙3の2)の代表取締役である人物Cは、商標権者の東京事務所において商標権者の在庫(商標は本件とは別のもの)を半額で買い取った旨陳述している(乙30)。
(6)乙第1号証に示す値札と乙第2号証の請求単価の金額が異なるのは、在庫限りの販売のため、値引きして販売したことによる。
(7)以上により、平成23年10月21日に、本件商標を付したデニム3点を企業Aに販売したことを立証する。
(8)むすび
以上のとおり、商標権者が、本件審判の請求に係る指定商品中の「被服」について、要証期間内に日本国内において本件商標を使用していた事実は明らかである。

第4 当審の判断
1 使用の事実の認定
(1)被請求人が平成23年10月21日に本件商標を使用した証拠として提出している乙2の請求書の品番の欄には「VIRUS 84002」の記載があるところ、乙26の品番・型番一覧表によれば、これが型番「PRVCA84002」のジーンズパンツで、色はインディゴとブラックの2種類あることが認められる(定価はインディゴ1万2800円、ブラックが1万1550円(乙1、乙1の2、乙1の3、乙13の1ないし乙13の3、乙15の1、乙15の2の写真で確認される商品タグに記載された定価も同じ。))。そして、乙1、乙1の2、乙1の3、乙13の1ないし乙13の3、乙15の1、乙15の2、乙20の3の写真によれば、タグに型番「PRVCA84002」の記載がなされ、色も2種類あることが認められ、少なくとも48、50というサイズが存在し、かつ、同種ジーンズパンツには、ズボンベルト近くの皮革部分に「VIRUS DENIM LINE dl 704」、バックポケットに「VIRUS STARTED IN 1996.- VIRUS DENIM LINE STARTED IN 1997.(中略)THE VIRUS DENIM LINE IS CREATED THROUGH THE INSPIRATION FOUND IN ALL OF THESE THINGS.」と記載されている。そして、これら商品に使用されている「VIRUS」の商標も本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
そして、乙2の請求書の宛名は「企業A」であり、単価5000円、数量3で税込み価格が1万5750円、作成日付は平成23年10月21日であるところ、商標権者の保有する乙3の領収書(控)には「企業A様」「商品代として」「¥15、750-」「入金日 2011年10月21日」と記載されており、両書類の記載は、品番や色などが書かれているか否かにおいて違いがあるものの、宛先、商品代金及び日付が一致している。
乙27の履歴全部事項証明書及び乙28のホームページによれば、企業Aは、衣料品の販売等を行う実在の会社と認められるところ、同社社長の人物Aは、平成23年10月21日に48サイズのインディゴのジーンズパンツを3枚合計1万5750円で購入した事実を陳述書において自認している(乙16)。同陳述書で、各ジーンズパンツは、平成24年3月20日に実施された合同展示会で着用するユニフォームとして同社社員の人物Bが譲受けの事実を認めているし(乙17)、実際に商標権者ブランドが参加したか否か、本件ジーンズパンツが使用されたか否かは必ずしも明らかではないものの、少なくとも同日に合同展示会があったことは客観的な事実である(乙29)。
以上の事実によれば、商標権者が平成23年10月21日に企業Aに対して、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる「VIRUS」の商標が付された型番「PRVCA84002」のジーンズパンツを3枚合計1万5750円で売却したことを推認することができる。
そして、乙18の写真及び乙25の領収書綴りによれば、領収書の控えは時系列順に並んでいて、上記乙3の領収書もそのように編綴されているうちの1枚として、後から偽造、加工した形跡は認められないし、未使用の領収書には原告の記名印が押捺されたものもあるが、領収書の控えだけが残っているものも多数存在し、全体を概観すると、実際に使用されたもの、未使用のものが混在していると認められるのであって、後日体裁を整えたものとはうかがわれない。また、その領収書綴りの1枚の領収書(控)(乙3の2)には、「企業B様」「お品代として」「¥44、856-」「入金日 2011年10月15日」と記載されているところ、同社の代表取締役である人物Cは、商標権者の東京事務所において商標権者の在庫(商標は本件とは別のもの)を半額で買い取った事実を認めており(乙30)、この点でも領収書綴りが後日作成されたものでないことが裏付けられる。
(2)この点、被請求人の提出する証拠の中には、逆に商標権者が宛名になったり、本来領収書本体を商標権者が所持すべきなのに控えだけが残っているものが散見される(乙33の1ないし乙33の4)。しかしながら、ただし書部分を見るとモデル代、アルバイト代金等であり、モデルやアルバイトをした人物が領収書を手元に持ち合わせておらず、代金を支払った際に商標権者の領収書綴りを用い支払者の商標権者が控えを所持することになったとしても事実としてあながち不自然とまではいえない。また、一般的に控えの方は切り取れるようになっていないから、領収書と控えを厳密に使い分けなかった点をもって不自然ともいえない。乙33の1の領収書を受け取った人物Dがモデルをしていたことについては裏付けがあり(乙34、乙35)、このことからしても、宛名が逆である点をもって領収書の信用性を覆すには至らない。
また、被請求人の提出する領収書綴り(乙25)は枚数にしてみれば使用期間があまりに長い点において不自然さが看取される。しかしながら、この点、被請求人は、商標権者の東京事務所において販売した際に使用していた領収書綴りであると説明しているところ、現に記名印の住所は、商標権者の本店のある横浜市戸塚区ではなく「住所A」となっており(乙25)、東京事務所で受け取ったとする上記人物Cの陳述内容(乙30)とも合致している。また、商標権者は、大口の取引については銀行振込を利用しており(乙37)、必ずしも領収書を発行する必要がなかった取引があったと認められる上に、乙25の領収書綴り以外の領収書を使用していた事実(乙40の1、乙40の2。乙40の2の取引については裏付けのメモ〔乙42〕や、取引された商品の売却に関するホームページ〔乙43の1、乙43の2〕が存在する。)もまた認められるから、この点をもって必ずしも不自然とはいえない。
さらに、本件取引では定価である1万2800円を大幅に下回る5000円で3本売却されたことになる。しかしながら、本件取引以外にも、商標権者の東京事務所で行われた上記人物Cに対する売却代金は半額であったというし(乙30)、被請求人の主張するように値下げの理由が在庫処分ということであれば、値下げの動機はあり、3本というまとめ買いであったことも合わせ考えると、売却価格の点においても不自然とはいえない。
以上によれば,上記推認を覆すだけの事実関係は認められず,商標権者が平成23年10月21日に企業Aに対して本件商標が付されたジーンズパンツを売却した事実が認められ,商標法2条3項2号に該当する使用の事実があったと認めることができる。
2 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録(平成23年12月28日)前3年以内に日本国内において、商標権者が請求に係る指定商品に含まれる「ジーンズパンツ」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと認めることができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (参考)
第1次審決(平成24年12月3日審決)

審 決

取消2011-301114

請求人 三浦商事 株式会社
代理人弁理士 特許業務法人浅村特許事務所
特許業務法人浅村特許事務所
代理人弁理士 浅村 皓
特許業務法人浅村特許事務所
代理人弁理士 浅村 肇
特許業務法人浅村特許事務所
代理人弁理士 岡野 光男
特許業務法人浅村特許事務所
代理人弁理士 高原 千鶴子

被請求人 株式会社 タートルストーン
ゆう国際特許事務所
代理人弁理士 川浪 順子
ゆう国際特許事務所
代理人弁理士 飯塚 智恵

上記当事者間の登録第3288564号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。

結 論
登録第3288564号商標の指定商品中、第25類「被服,運動用特殊被服」については、その登録は取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理 由
第1 本件商標
本件登録第3288564号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成6年11月18日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボン吊り,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同9年4月25日に設定登録され、その後、同18年11月14日に商標権の存続期間の更新登録がされ、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成23年12月28日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び平成24年2月10日付けの答弁(以下「第1答弁」という。)に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第5号証(弁駁書に添付の「甲第1号証ないし甲第3号証」を「甲第3号証ないし甲第5号証」と読み替える。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中の「被服,運動用特殊被服」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 第1答弁に対する弁駁
(1)商標の同一性について
本件商標は、片仮名と欧文字とが上下二段によりなる商標であるが、乙第1号証ないし乙第4号証によると、欧文字「VIRUS」のみの商標(以下「使用商標」という。)が使用されている。
商標法第50条第1項括弧書き例示の類型以外の使用商標が登録商標と社会通念上同一といえるか否かを判断する場合には、審判便覧の53-01「登録商標の不使用による取消審判」に示す「登録商標の認定に関する運用の事例」(以下「事例」という。)が実務上の判断の基準となるところ、本件の場合には、片仮名と欧文字の登録商標に対し、使用商標が片仮名であるので、事例の中では例2を採用するのがふさわしいと思われる。これによると、「ラブ」と「love」、「ポスト」と「post」のように、登録商標と使用商標から同一の称呼及び観念が生じる場合、いわゆる「一対一対応」の場合に社会通念上同一の商標と判断される。
これを本件についてみると、両者は観念的には同じであると思われるが、本件商標からは「ウイルス」のみならず「ビールス」の称呼をも生じ得る(甲第1号証)から、本件商標と使用商標とは、同一の称呼及び観念が生じる関係、いわゆる「一対一」の関係にないことは明らかである。本件商標の上段の「ウイルス」と下段の「VIRUS」から生じる称呼は、同一ではないことから、上段・下段との間に同一性はなく、上下二段の商標を使用して初めて登録商標の使用に該当することになる。
したがって、本件商標と使用商標は、社会通念上同一のものではなく、その使用は、本件商標の使用の事実を示すものではないことは明らかである。
(2)乙号証について
ア 乙第1号証について
乙第1号証は、本件商標を付した商品「ジーンズパンツ」(品番84002:以下「使用商品」という。)の写真4枚である(以下、上から下に向って順に「写真A」、・・・、「写真D」という。)。
(ア)商標の作成時期についての疑義 写真Dには、包装袋上に、「VIRUS」、「定番デニムパンツ」、「デニムパンツ」、「ブラック/50」、「¥11,500」の各文字が表示されているところ、このような表示は、大事な情報であるので、包装袋の表面ではなく、使用商品本体の尻ポケットのあたりに貼付されるのが普通であると思われる。しかるに、本件商標の使用を立証するために、慌てて写真を撮る必要ができ、その際に本件商標を書したラベルを作成したので、不自然な場所に上記表示がついたラベルを貼ってしまったものと推察される。
(イ)色についての疑問
写真Dにおける表示中の「ブラック/50」は、色を表示しているものと思われるが、写真AないしDを見るに、使用商品の色がブラック(黒色)であるとは到底感じられない。むしろ、インディゴの色をしている。使用商品は、色自体に非常なこだわりと関心を示す若者向けの商品であるので、色の表示を間違えるなど考えられないことである。写真を撮る際に慌てて本件商標を書したラベルを作成したので、間違った色の表示をしたラベルを使用商品に付してしまったものと推察される。
(ウ)使用商品に付された金額が異なることについての疑問
写真Bは「¥12,800」とあるが、写真Dは「¥11,500」となっている。これより考えられることは、2種類のラベルを写真を撮る際に慌てて作成したので、値段が一致しないラベルを作ってしまった。被請求人は、当該2種類のラベルは貼る場所が異なっているために、その不一致に最後まで気付かずに、一方は「ジーンズパンツ」に、他方は、包装袋に貼付して写真の撮影をしたものと推察される。
イ 乙第2号証及び乙第3号証について
乙第2号証は、使用商品(乙第1号証)と同型の商品3点を、平成23年10月21日に企業A(以下「企業A」という。)ヘ販売した際の請求書(控)であり、乙第3号証はこれに対する領収書(控)である。
領収書(控)(乙第3号証)には、商品代としか書されていない。この領収書は、商標権者が、使用商品(品番84002)を販売した事実を立証できるものではない。なぜならば、当該領収書(控)には、販売者としての商標権者の名称・住所等を示すものも、また、使用商品の商品名の特定もない。
もし、商標権者が、使用商品を平成23年10月21日に、企業Aヘ販売したのならば、その販売責任者が発行した商標権者あての使用商品の受取証を提出すべきであったが、乙第1号証ないし乙第11号証中には、これに該当するものは見当たらない。
したがって、乙第2号証及び乙第3号証は、商標権者が使用商品を販売したという事実を証左するものではない。
ウ 乙第4号証について
(ア)乙第4号証の1及び2
ティーシャツ、タンクトップ、ジャケット等の在庫を示すものであるが、本件商標を表示したものはどこにも見いだすことができないので、本件商標の使用を示す証拠となるものではない。
(イ)乙第4号証の3
ティーシャツの襟元に本件商標の表示があるが、この写真は、2012年(平成24年)2月4日に本件商標が「ティーシャツ」に貼付されていたという事実を示すとしても、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という場合がある。)に日本国内において使用されていたという事実を立証するものではない。
エ 乙第5号証ないし乙第7号証について
乙第5号証に示す雑誌は2003年4月号、乙第6号証に示す雑誌は2001年10月号、乙第7号証に示す雑誌は2003年3月号である。したがって、乙第5号証ないし乙第7号証は、本件商標が要証期間内に日本国内において使用されていたという事実を立証するものではない。
オ 乙第8号証について
乙第8号証の1は、古着屋(ブランド・リサイクル・ブティック アクセント)の販売情報であるが、その日付が不明であり、また、乙第8号証の2は、販売情報の日付が2012年1月18日である。したがって、これらの証拠は、本件商標が要証期間内に日本国内において使用されていたという事実を立証するものではない。また、被請求人は、「ブランド・リサイクル・ブティック アクセント」及び「ブランド古着屋エキゾースト」との関係について、何ら主張・立証していないから、両者が、本件商標に係る通常使用権者として雑誌やホームページに広告を掲載していたものとは認められない。
カ 乙第9号証について
(ア)乙第9号証の1及び2は、掲載情報の日付(2012年2月8日)が本件審判の請求の登録日以後であり、また、被請求人は、「楽天」との関係について通常使用権者であるとの主張・立証をしていないから、同人が、本件商標に係る通常使用権者としてインターネットに情報を載せていたものとは認められない。
(イ)乙第9号証の3は、掲載情報の日付(2012年2月8日)が本件審判の請求の登録日以後であり、また、被請求人は、「クラウン ジュエル」との関係について通常使用権者であるとの主張・立証をしていないから、同人が、本件商標に係る通常使用権者としてインターネットに情報を載せていたものとは認められない。
キ 乙第10号証について
商標権者が米国雑誌へ掲載した広告の日は、要証期間内ではない。
ク 乙第11号証について
乙第11号証は、要証期間内に日本国内において、本件商標の使用をしていたという事実を証明するものではない。
ケ 以上のとおり、乙第1号証ないし乙第11号証によっては、本件商標が要証期間内に使用されていたことは何ら証明されていない。
提出された証拠には、請求書(控)、領収書(控)について第三者による証明がなされていない。これら第三者による証明書が提出されない限り、乙第2号証及び乙第3号証の写真で示された使用商品の使用は、単なる展覧にすぎず、商標法第2条第3項第2号の使用には該当しない。この点について、東京高裁平成4年(行ケ)第144号判決(甲第4号証)は、不使用取消の審判を免れる目的で名目的に商標を使用するかのような外観を呈する行為があっただけでは、改正前商標法第2条第3項第3号の使用には該当しないと判示しており、また、知財高裁平成20年(行ケ)第10317号判決(甲第5号証)は、取消審判事件では、原則は具体的取引書類であって、例えば、注文書、納品書、支払伝票等の提示がされるべきであると判示しているところ、本件においては、使用商品の具体的取引書類(例えば、第三者による証明書が付いた注文書、納品書、支払伝票等)の提示がないこと、商標権者が第三者の販売店において本件商標を使用しているとの陳述書がないことの点において、上記知財高裁が示した要件を満たしていない。これらのことからみれば、被請求人の行為は、単に不使用取消の審判を免れるための商標の名目的使用に該当するものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第12号証(枝番を含む。)を提出した。
1 第1答弁
(1)使用の事実
ア 乙第1号証は、本件商標を付した商品「ジーンズパンツ」(品番84002:使用商品)の写真である。
イ 乙第2号証は、使用商品(乙第1号証)と同型の「ジーンズパンツ」3点を、平成23年10月21日に企業Aヘ販売した際の請求書(控)であり、乙第3号証はこれに対する領収書(控)である。
これらにより、平成23年10月21日に、本件商標を付したデニム3点を企業Aに販売したことを立証する。
なお、乙第1号証に示す値札と乙第2号証の請求単価の金額が異なるのは、後述のように、在庫限りの販売のため、値引きして販売したことによる。
ウ 乙第4号証は、本件商標を付した「ティーシャツ、タンクトップ、ジャケット」等の写真である。商標権者は、使用商品以外にも、これら商品の在庫を有し、求めに応じて直接販売している。
(2)本件商標の使用実績と現状
ア 本件商標は、商標権者によるオリジナルブランドの一つである。その販売経路は、商標権者の自社ショップ(現在は閉店)のほか、バイヤーのセンスで様々なブランドの商品を数点ずつ販売するセレクトショップ等であり、百貨店や専門店、量販店で、大量生産、大量販売される商品とはその性質が異なる。例えば、その製造方法も、大量製造するのではなく、各アイテムについて、デザイナーのコンセプトによりセレクトされた生地、ボタン等の材料を仕入れ、これらをその商品にふさわしい縫製工場、仕上げ工場を選択して製造していくもので、製造数もアイテムによって30点ないし600点とばらつきがあり、それが逆に在庫限りの稀少アイテムとなり人気を呼んでいる。
イ 本件商標は、特に90年代半ばから2000年代半ばにかけて、若い世代から圧倒的な支持を得て当時の流行を大きくリードした独立系ドメスティックブランドである。その後、自社ショップは閉店したが、本件商標を含むブランドそのものは継続しており、2007年までは、セレクトショップを通じて販売していたが、近年はレディスブランド「OKIRAKU」を中心に展開しているため、メンズブランドについては在庫限りの直接販売で、バイヤーや熱心な顧客の求めに応じて継続的に商品を販売している。
このようなコアなファンが多数存在するため、一般の需要者の中には、古着屋やオークションで本件商標の商品を入手する者もおり、単なる衣服としてではなくヴィンテージ的価値を有するブランドとして存在し続けている(乙第5号証ないし乙第9号証)。
ウ 本件商標を付した商品は、国内のみならず、海外、特に欧米で人気を博した。本件商標を海外7力国で商標登録し、宣伝・販売していたが、現在は海外展開はしていない(乙第10号証及び乙第11号証)。
しかしながら、商標権者は、近年、アジアで「OKIRAKU」ブランドを積極展開しているので、いずれは「VIRUS」についても展開する可能性はある。
エ 以上のとおり、商標権者が、本件審判の請求に係る指定商品中の「ジーンズパンツ」について、本件商標を、要証期間内である平成23年10月21日に使用した事実は明らかである。あわせて、商標権者による、国内外での17年間にわたる本件商標の使用実績、及び、熱心なファンの存在を総合的に考慮すれば、不使用に該当しないことは明らかである。
(3)むすび
以上のとおり、商標権者が、本件審判の請求に係る指定商品中の「被服」について、要証期間内に日本国内において本件商標を使用していた事実は明らかである。
2 平成24年6月20日付けの答弁(以下「第2答弁」という。)
(1)商標の同一性について
請求人は、本件商標と使用商標とが、社会通念上同一の商標ではないと主張する。
しかしながら、本件商標は、二段併記の構成からなる場合であって、上段「ウイルス」と下段「VIRUS」が観念を同一とするときの、その一方「VIRUS」の使用であるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。加えて、本件商標は、「ウイルス」とのみ称されて使用されている(乙第6号証及び乙第7号証)から、本件商標と使用商標の同一性に疑義を挟む余地は全くない。
(2)乙号証について
ア 乙第1号証
(ア)請求人は、写真Dのラベルが包装袋に貼付されていることを理由にラベルの不正作成をにおわしているが、包装袋に、商標、商品名、色、サイズ、価格、バーコードなどを表記したラベルを貼付することは、包装袋の外側からも商品を確認できるようにするために、ごく当然のことである。
写真Aを拡大した写真(ア)(乙第1号証の2)の右下部にも、中央及び下部の使用商品の包装袋に貼付されたラベルが表れている。
(イ)使用商品の色については、写真(ア)(乙第1号証の2)に示す一番上の使用商品のタグ部分を拡大した写真(イ)(乙第1号証の3)、中央の使用商品のタグ部分を拡大した写真(ウ)(乙第1号証の3)の両タグから明らかなように、使用商品(型番84002)には、インディゴとブラックの2色があり、平成23年10月21日に販売した商品は、写真(イ)で示した商品と同じインディゴである。写真Dは、単に誤って、色違い商品「ブラック」の包装袋ラべルを拡大したものにすぎない。
なお、乙第9号証の3に、オークション商品として同種商品(サイズ違い)が明示されているので確認されたい。
(ウ)使用商品の金額について
使用商品は、生地により定価が異なり、インディゴが12,800円で、ブラックは11,550円である(乙第1号証の3)。
イ 乙第2号証及び乙第3号証
請求人は、企業Aによる受領証がないことをもって、本件商標を付した商品の販売の事実を否定する。
しかしながら、卸売や通販サイトでのネット販売であればともかく、平成23年10月21日付け企業Aヘの販売は、在庫商品の直接販売である。このような形態の取引において、注文書や納品書、支払伝票、ましてや購入者からの受領証がやりとりされるような事実がないのは、商習慣上当然のことである。
また、領収書(控)(乙第3号証)には、「商品代」とのみ記載してあるが、これも通常のことであるし、領収証(控)に販売者としての商標権者の名称・住所がないのは、乙第3号証が「控え」であるからであって、購入者に渡す「本証」には、商標権者の名称・住所等を示すゴム印を押印する(乙第3号証の2及び3)。
以上のような取引の実情を前提とすれば、商標権者が、企業Aより口頭で注文を受け、請求書を発行し、本件商標を付した商品3点を直接引き渡すのと同時にその代金を現金で受け取り、領収証を手渡したことは紛れもない事実であり、本件商標の使用の事実に疑義を挟む理由はない。
ウ 乙第4号証
乙第4号証は、本件商標を付した「ティーシャツ、タンクトップ、ジャケット」等の商品在庫の存在を示したもので、商品が存在する以上、現実使用の可能性を示す証拠として提出したものである。
エ 乙第5号証ないし乙第11号証
商標権者は、乙第5号証ないし乙第11号証をもって、「VIRUS」ブランドの長い使用実績と人気、そして、現在でもこのブランドが需要者に広く知られていることを示すことを意図したものである。
なお、海外での登録証の写しを乙第11号証の2ないし8として提出する。
オ 乙第12号証
乙第12号証は、商標権者がメンズブランドして展開している「PiedPiper」に係るウェブサイト情報である。

第4 当審の判断
1 使用の事実
被請求人は、商標権者が、本件商標を付した「ジーンズパンツ」(使用商品)を、かつて、同人の有していた自社ショップ(現在は閉店)やセレクトショップ(2007年(平成19年)まで)で販売しており、現在は、在庫限りの使用商品を顧客の求めに応じて継続的に販売をしていることから、商標権者は、要証期間内に日本国内において、本件商標を使用商品について使用していた旨主張し、乙第1号証ないし乙第12号証(枝番を含む。)を提出する。
そこで、乙第1号証ないし乙第12号証(枝番を含む。)を検討する。
(1)乙第1号証、乙第1号証の2及び3について
ア 乙第1号証は、使用商品の写真4葉(写真AないしD)であり、乙第1号証の2及び3は、写真Aの拡大写真(写真(ア)ないし(ウ))と認められ(いずれの写真も撮影日を2012年2月4日とする。)、各写真の内容は、以下のとおりである。
(ア)写真Aは、ビニール製又はプラスチック製の透明の包装袋に入った使用商品3点の写真である(3点中、右の商品は、上記包装袋を臀部まで取り除いてある。)。写真Aに示す使用商品には、いずれも商品の腰部にタグが直接付されているところ、写真Aを見る限りにおいては、これらタグは小さく写されており、タグに書された文字は不鮮明ではあるものの、そのうちの値段の表示は、右の商品から左の商品に向かって順に、「¥12,800」、「¥11,500」、「¥11,500」と記載されていることを読み取ることができる。この点について、第2答弁書に添付された写真(ア)も同様に、タグに表示された文字のうち、値段の表示しか読み取ることができないが、写真(イ)及び(ウ)によれば、右の商品に付されたタグ(写真(イ))には、値段のほか、「PRVCA84002」、「インディゴ」などと記載されており、また、中央の商品に付されたタグ(写真(ウ))には、値段のほか、「PRVFA84002」、「ブラック」などと記載されている。
また、写真A(写真(ア))における包装袋に入っている左と中央の各商品の包装袋上には、写真Dに示すラベルと同種のラベルが貼付されているとみられる(写真A(写真(ア))における左と中央の各商品の包装袋上に貼付されたラベルは、不鮮明で、表示された文字が読みにくい上に、ラベルの上半分しか写されていない。)ところ、写真Dのラベルには、バーコードの下に、「VIRUS」、「定番デニムパンツ」、「デニムパンツ 84002」、「ブラック/50」、「50075143 ¥11,500」の各文字が表示されている。
(イ)写真Bは、使用商品の腰部付近を拡大した写真と認められるところ、該商品に付されたタグには、最上段に「VIRUS・VIRUS DENIM LINE」などと記載され、タグの下半分には、「RVCA84002」、「48 インディゴ」、「¥12,800」などと記載されており、写真Aの右の商品と色、価格等の表示が同じであるが、品番「84002」の前に付された欧文字の記号が相違するので、写真Aの右の商品と同種の商品と認められる。
(ウ)写真Cは、使用商品(透明の包装袋に入った状態のもの)のバックポケットに表示された文字部分を拡大した写真であり、バックポケットには、「VIRUS STARTED IN 1996.」、「VIRUS DENIM LINE STARTED IN 1997.」などの文字が記載されている。
イ 以上によれば、写真AないしD(写真(ア)ないし(ウ))に示す使用商品は、タグ及びラベルの表示からすると、色がインディゴとブラックの2種類があることが認められるが、写真で見る限りにおいては、使用商品の色彩は同一のように見られなくもなく、インディゴとブラックの相違を見分けることは困難である。そして、タグ及びラベルの表示上、インディゴの小売価格が¥12,800、ブラックの小売価格が¥11,500であること、それぞれの商品に「VIRUS」の文字よりなる商標(使用商標)が付されていたことが認められる。
しかし、写真AないしD(写真(ア)ないし(ウ))は、いずれも本件審判の請求の登録日後の2012年(平成24年)2月4日に撮影されたものであり、それ自体、要証期間内における本件商標の使用の事実を証明するものではない。さらに、使用商品の色彩について、請求人より、写真AないしDによっては、ブラックが存在するとは思えない旨の指摘がされたにもかかわらず、この点について、被請求人は、新たな写真等の提出により、使用商品の色彩がインディゴとブラックの2種類あることを明らかにすべきところ、タグ及びラベルの表示のみから、使用商品の色彩がインディゴとブラックの2種類あると主張するにすぎず、使用商品の色彩と使用商品に付されたタグ及びラベルの表示とが一致していないのではないかとの疑問を払拭することができない。なお、被請求人が、使用商品と同種商品であると指摘する乙第9号証の3におけるジーンズパンツは、その色彩がインディゴブルーのみであり、ブラックは存在しない。
(2)乙第2号証及び乙第3号証について
ア 乙第2号証は、その最上段に、「Turtle Stone co.,ltd」、「(株)タートルストーン」の文字と共に本社及び東京事務所の住所並びに電話番号等が記載され、その下には、「企業A御中」、「Date:2011.10.21」と記載され、さらに、「請求書」の文字の下に、「品番」、「色」、「単価」、「金額(税抜)」などを「項目」欄とした一覧表が記載されているところ、該一覧表における「品番」欄には「VIRUS 84002」と、「色」欄には「indigo」と、「48」の数字の下には「3」と、「金額(税抜)」欄には「¥15,000」と、「税込合計金額」欄には「¥15,750」と、それぞれ記載され、また、欄外下部には、「振込み先」として、「三菱東京UFJ銀行 戸塚駅前支店 普通口座(及びその番号)」、「株式会社 タートルストーン」、「以上、宜しくお願い申し上げます。」と記載され、その右の「経理」欄の長方形枠内には、「印」の文字が記載されている。
イ 乙第3号証は、「領収書(控)」と認められるところ、これには、「領収書(控)」、「入金先 様」、「但」、「入金日 年 月 日」の各文字があらかじめ印刷されており、その空欄に、「入金先」として「企業A」の文字を、その下に「¥15,750-」の文字を、「但」として「商品代として」の文字を、「入金日」として「2011 10 21」の文字を、いずれも手書きで埋めたものである。なお、顧客に発行する「領収書」には、商標権者の住所・名称等がゴム印で押印されている(乙第3号証の3)。
ウ 以上によれば、乙第2号証は、商標権者が企業Aに対して発行した2011年(平成23年)10月21日付けの請求書の控えと認められる。また、乙第3号証の入金先・入金日・入金額は、請求書の控え(乙第2号証)のあて先・請求の日付・税込合計金額と一致していることが認められる。
この点に関し、被請求人は、乙第2号証及び乙第3号証により、平成23年10月21日に、本件商標を付したデニム3点を企業Aに販売したことを立証する旨主張する。
しかし、乙第2号証及び乙第3号証は、上記一致点が認められるものの、以下の点において、一連の取引があったと推認する証拠としては、極めて不自然なものといわなければならない。
(ア)被請求人は、使用商品の販売に関し、「メンズブランドについては在庫限りの直接販売で」(第1答弁)、「平成23年10月21日付け企業Aヘの販売は、在庫商品の直接販売である。このような形態の取引において、注文書や納品書、支払伝票、ましてや購入者からの受領証がやりとりされるような事実がないのは、商習慣上当然のことである。・・・商標権者が、企業Aより口頭で注文を受け、請求書を発行し、本件商標を付した商品3点を直接引き渡すのと同時にその代金を現金で受け取り、領収証を手渡したことは紛れもない事実であり・・・」(第2答弁)旨述べるところ、使用商品が在庫限りの直接販売商品であって、商品を直接引き渡すのと同時にその代金を現金で受け取るという取引形態をとっているのであれば、そもそも比較的詳細事項にまで記載が及んでいる請求書(乙第2号証)が発行されること自体疑念を抱かざるを得ないし、また、請求書に「振込み先」として、口座番号など必要もない事項をわざわざ記載することも不可解であるといわざるを得ない。
(イ)請求書の控えは、比較的詳細事項にまで記載が及んでいるのに対し、領収書(控)は、既に印刷されている「領収書(控)」、「入金先 様」、「但」、「入金日 年 月 日」の各文字以外はすべて手書きで書され、その内容も極めて粗雑で簡略化されており、これら取引書類は、一連の取引が行われたことを示すものとしては、関連性が薄弱といわざるを得ないし、かつ、いつでも簡単に作成することが可能な証拠といえる。付言すれば、顧客に発行する「領収書」に押印されている商標権者の住所・名称等が表示されているゴム印についても、当該ゴム印がありさえすれば、いつでも簡単に押印することが可能である。
(ウ)そして、商標権者と企業Aとの間で取引があった事実を裏付ける証拠として、極めて客観性に乏しい取引書類といえる請求書の控え(乙第2号証)及び領収書(控)(乙第3号証)以外に、上記事実を裏付ける証拠の提出が一切なく、しかも、使用商品に関し、要証期間内に、顧客との取引が上記のもの1回だけであったとすれば、2011年(平成23年)10月21日に行われたとする取引自体極めて疑わしいものといわざるを得ない。なお、乙第3号証の「領収書(控)」の前後の「領収書(控)」(乙第3号証の2)が、本件商標を付した使用商品の取引であったことを裏付ける証拠の提出はない。
したがって、乙第2号証及び乙第3号証によっては、「VIRUS」ブランドの品番「84002」の「色:インディゴ」の商品3点が、要証期間内である平成23年10月21日に、商標権者から企業Aに販売されたことを推認することはできない。
(3)乙第4号証の1ないし3について
乙第4号証の1ないし3は、在庫商品としての「ティーシャツ、タンクトップ、ジャケット」等の写真(撮影日:2012年2月4日)と認められるところ、これら商品中の「ティーシャツ」に使用商標が付されていることが認められるものの、ほかの商品に使用商標が付されているかは、写真からでは明らかではなく、また、仮に上記「ティーシャツ」以外の商品に使用商標が付されていたとしても、「ティーシャツ」を含む写真に示す商品が、要証期間内に日本国内の市場において、取引に資されたと認めるに足りる証拠の提出はない。
したがって、乙第4号証の1ないし3は、要証期間内における本件商標の使用の事実を証明する証拠とはなり得ない。
(4)乙第5号証ないし乙第12号証について
ア 乙第5号証(講談社発行「ホットドッグ・プレス」2003年4月号)、乙第6号証(マガジンハウス発行「popeye」2001年10月8日号)、乙第7号証(宝島社発行「smart」2003年3月17日号)は、いずれも要証期間内よりはるか以前に発行されたものである。
イ 乙第8号証の1(「Brand Recycle Boutique Accent」のウェブサイト)及び同2(「ブランド古着屋エキゾースト」のウェブサイト)において、「virus/ウィルス」、「VIRUS(ウィルス)」の表示が付されたメンズパンツが掲載されているが、その掲載日は共に不明である(なお、後者の紙出力日は、本件審判の請求の登録日後の2012年1月18日である。)。
また、乙第9号証の1及び2(「楽天オークション」のウェブサイト)並びに同3(「CROWN JEWEL」のウェブサイト)において、「VIRUS」、「VIRUS/ウイルス」等の表示が付されたジャケット、セーター、デニムパンツが掲載されているところ、これらのネットオークションの「開始時間」又は「開始日」として、それぞれ「2012年02月05日 23:13」、「2012年02月03日 2:57」、「9月27日 12時00分」と記載されており、前2者は、本件審判の請求の登録日後の日付のものと認められ、後者は、何年のものであるか不明である。
そして、乙第8号証の1及び2並びに乙第9号証の1ないし3の広告は、いずれも商標権者が行ったものではない。
ウ 乙第10号証(「Black Book/Summer’99」)は、要証期間内よりはるか以前の1999年(平成11年)に外国で発行された雑誌である。
エ 乙第11号証(「VIRUS」の文字からなる商標の海外における登録状況一覧表)、乙第11号証の2ないし8(海外における「VIRUS」商標の登録証(写))及び乙第12号証(商標権者が取り扱う商品に使用される「PIED PIPER」なる商標に関するウェブサイト情報)は、本件商標の使用の事実を立証する証拠とは何ら関係を有しないものである。
オ 以上によれば、乙第5号証ないし乙第12号証は、要証期間内における本件商標の使用の事実を証明する証拠とはなり得ない。
この点に関し、被請求人は、乙第5号証ないし乙第11号証について、「『VIRUS』ブランドの長い使用実績と人気、そして、現在でもこのブランドが需要者に広く知られていることを示すことを意図したものである。」と主張する。
しかし、仮に「VIRUS」ブランドが、過去において需要者の間に知られていた、あるいは、現在も知られているものであるとしても、商標法第50条に基づく本件審判において、本件商標の登録の取消しを免れるためには、被請求人は、要証期間内に、本件商標を使用していた事実が存在していたことを証明することが重要視されるというべきであるから、「VIRUS」ブランドの周知性を問題視する被請求人の主張は理由がない。
(5)以上のとおり、乙第1号証ないし乙第12号証(枝番を含む。)を総合しても、使用商標が、商標権者により、要証期間内に日本国内において、使用商品について使用されていたものと認めることはできない。
2 本件商標と使用商標の同一性
使用商標が、本件商標と社会通念上同一と認められる商標であるか否かについて、当事者間に争いがあるので、この点について判断する。
本件商標は、前記第1のとおり、「VIRUS」の文字を大きく横書きしてなり、その上に、やや小さい文字で「ウイルス」の文字を横書きしてなるものであって、その構成中の片仮名部分は、欧文字の読みを特定したものと理解されるから、これより「ウイルス」の称呼のみを生ずるものであって、「ウイルス」の観念を生ずるものである。これに対して、使用商標は、「VIRUS」の文字を横書きしてなるものであるところ、「VIRUS」の語は、我が国において一般的には、「ウイルス」と称呼、観念されて使用されている語といえる。
してみると、使用商標は、本件商標中の欧文字部分のみの使用であるといえるが、これより「ウイルス」の称呼、観念が生ずるものである。
したがって、使用商標は、本件商標とは、同一の称呼、観念を生ずるものであるから、社会通念上同一と認められる商標というのが相当である。
この点に関し、請求人は、本件商標と使用商標は、観念においては同一であるが、本件商標は、上段の「ウイルス」と下段の「VIRUS」から生じる称呼は、同一ではないことから、上段と下段との間に同一性はなく、上下二段の商標を使用して初めて登録商標の使用に該当するところ、使用商標は、欧文字部分のみの使用であるから、本件商標と使用商標とは、同一の称呼が生じる関係にないことは明らかである旨主張するが、上記認定のとおり、本件商標から生ずる称呼は、「ウイルス」の称呼のみとみるのが相当である。仮に「VIRUS」の語から、「ウイルス」又は「ビールス」の称呼が生ずるとした場合(甲第3号証)においても、本件商標と使用商標とは、「ウイルス」又は「ビールス」の称呼を同一にするものといわなければならない。
したがって、上記請求人の主張は、理由がない。
3 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標の使用をしていることを証明し得なかったといわざるを得ない。また、被請求人は、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定商品中「結論掲記の指定商品」についての登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。

平成24年12月 3日

審判長 特許庁審判官 寺光 幸子
特許庁審判官 酒井 福造
特許庁審判官 田中 敬規

別掲
本件商標

審理終結日 2013-11-22 
結審通知日 2013-11-28 
審決日 2014-03-24 
出願番号 商願平6-116294 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (025)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加園 英明箕輪 秀人 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 原田 信彦
手塚 義明
登録日 1997-04-25 
登録番号 商標登録第3288564号(T3288564) 
商標の称呼 ウイルス、ビールス 
代理人 飯塚 智恵 
代理人 岡野 光男 
代理人 特許業務法人浅村特許事務所 
代理人 浅村 肇 
代理人 川浪 順子 
代理人 浅村 皓 
代理人 高原 千鶴子 

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