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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201220726 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない X41
審判 全部無効 称呼類似 無効としない X41
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X41
審判 全部無効 称呼類似 無効としない X41
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない X41
管理番号 1287596 
審判番号 無効2013-890059 
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-08-19 
確定日 2014-04-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第5503406号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5503406号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成23年5月13日に登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,教材として用いる教本の制作,教材として用いるビデオ・DVDの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,録音済み磁気テ?プ・ビデオディスクの貸与,録画済み磁気テ?プ・ビデオディスクの貸与」を指定役務として、平成24年5月29日に登録査定、同年6月29日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録第4644951号商標(以下「引用商標」という。)は、「日本ストリートダンス協会」の文字を標準文字で表してなり、平成12年8月10日に登録出願、第41類「ダンスの教授,ダンス検定員及びダンスインストラクターの育成及び認定,ダンサーの能力に関する検定の実施,ダンス競技会(スポーツ)の企画・運営又は開催,ダンスの興行の企画・運営又は開催」を指定役務として、平成15年2月14日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人(以下、同様に被請求人二者をまとめて「被請求人」という場合がある。)の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第24号証(枝番を含む。)を提出した。
1 理由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
2 具体的理由
(1)「日本ストリートダンス協会」の概要・沿革及びその周知・著名性について
ア 「日本ストリートダンス協会」(以下「請求人協会」という。)は、「仕事としてのダンスの確立」「ダンスの普及・振興」「ダンスの社会的環境作り」を目的として、2001年(平成13年)に設立された(甲3)。それから、すぐにダンスの普及活動を開始し、2004年からはエイベックス・グループが開発した、初心者からプロダンサーまでを完全サポートしたダンスのレッスンプログラムを公認し、そのレッスンプログラムを導入したスポーツクラブ等の加盟店が2010年には100店舗を突破し、受講生は1万人を越えた(甲4)。この請求人協会公認のレッスンプログラムはスポーツクラブだけでなく、学校や企業でも導入され(甲5)、現在、その数は全国160店舗・拠点に及び、この公認プログラムでダンスを学ぶ受講生は現在15,000名に達する(甲6)。
イ 請求人協会の貢献もあり、ダンス人口は、近年目覚ましい拡大をみせ、これを受け請求人協会は、いち早く2010年から「ストリートダンス検定」を始めた(甲7)。検定合格を目標とすることで、体系化した練習、ダンス技術のレベルアップやモチベーション向上にもつながるからである。そして、これらのダンスレッスンや検定は、「習い事」としてのダンスの普及のみでなく、上級クラスでは、将来の指導者の育成をも目的とするものであり、請求人協会は雇用の場の創出にも積極的に取り組んでいる(甲8)。
ウ また、各種のイベント、セミナー、ワークショップ、オーディションの開催、後援と、請求人協会は支援活動にも力を入れている。
開催、後援するダンスイベントは、多数あるが、その中でも「DANCE NATION」は世界最大級のダンスイベントであり、回を重ねるごとに規模が大きくなり、2011年には出演者総数約3,000人、延べ30,000人以上の観客を動員するまでに拡大している。昨年、文科省、外務省等の後援を得て開催された国民的ダンス大会、「2012ダンスサミット in Japan」にも協賛(甲9)し、賞の贈呈(甲9、甲10)、審査員の派遣等を行っている。また、滋賀県、大阪、岐阜、北海道等等、各地方のダンスイベントを後援したり、地域の学生支援イベントに請求人協会公認インストラクターを審査員として派遣したり、「世界ダウン症の日」のイベントを後援したり、大阪府立中央図書館等主催の若者ダンス・カーニバルを後援したりと、請求人協会は全国的にメジャーなものはもとより、いろいろな地域・年齢層・角度から、たとえ小規模であっても積極的にダンスの普及・振興を図り、誰でもがダンスに親しむという環境作りを行っている(甲13、甲14)。
エ 2012年度から学習指導要領の改訂で公立中学校の保健体育授業でダンスが必修化され、ヒップホップなど「現代的なリズムのダンス」もその一つに取り入れられている。それに伴い、請求人協会では、2012年4月から早速、全国各地で指導者向けに「現代的なリズムのダンス」の無料研修会を開催している(甲15)。
オ 上述のとおり、請求人協会は、現在まで10年以上にも亘り継続してストリートダンスに関する活動を行ってきている。引用商標「日本ストリートダンス協会」は協会名そのものであるから、商標「日本トリートダンス協会」(以下、請求人協会が使用する商標についても「引用商標」という場合がある。)は、同協会の業務(役務)と常に一体となって、現在まで使用され続けている。そして、その活動は上述のとおり、幅広く着実であり、また、専門家、素人、年齢層、性別等を問わず、あらゆる需要者層に向けられたものである。
したがって、引用商標には請求人団体のイメージがこれらの需要者にそのまま強く刻み込まれているのである。
引用商標は、全国的に、少なくともストリートダンスの愛好者や関係者にとって周知著名であることは顕著な事実といえる。その信用は請求人協会と完全に結びつき、引用商標に蓄積されている。
(2)本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標について
(ア)本件商標は、「アルファベット『D』を奥に倒した図形の内部に地球儀の様な円的図形を嵌合したもの」(図形部分)と、「一般社団」「ストリートダンス協会」「Street Dance Association」の大小各語を縦三段に横書きに表したもの(文字部分)で構成されるところ、商標構成中の図形部分と文字部分は、常に一体のものとして把握されなければならない程に密接不可分に表されている訳ではなく、文字部分単独にて需要者・取引者に認識される場合もあり得ると考えられる。
そして、本件商標の文字部分については、上段の「一般社団法人」、下段の「Street Dance Association」がともに小さく表されているのに対して、中段の「ストリートダンス協会」の文字は、他の文字よりも非常に大きく目立つように表されている。
(イ)また、上段の「一般社団法人」は、当該団体が「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)」に基づいて設立された社団法人であることを示すにすぎず、自他役務の識別機能を発揮しない部分である。
(ウ)そして、下段の「Street Dance Association」は、自他役務の識別機能こそ一定程度備えると解されるものの、中段の「ストリートダンス協会」との文字の大小の対比上、単に当該「ストリートダンス協会」の英語表記であることを示すにすぎないと考えられる。
(エ)すなわち、本件商標の指定役務に係る需要者・取引者は、これらの商標を「イッパンシャダンホウジン ストリートダンスキョウカイ ストリートダンス アソシエイション」の全体で認識、称呼するのみならず、中段に大きく表された「ストリートダンス協会」の文字部分を取って、端的に「ストリートダンスキョウカイ」と認識、称呼する場合もあるというべきである。
イ 引用商標について
(ア)引用商標は、「日本」の漢字、「ストリートダンス」の片仮名及び「協会」の漢字を一連に書してなる商標であるが、構成中の「日本」の表示は我が国を指称する文字として極めて親しまれており、商号や団体名等の名称を構成する場合、その冒頭に付してありふれて使用採択されるものといえることから、引用商標の指定役務との関係では役務の提供地であることを認識させるに止まり、自他役務識別標識としての機能は極めて微弱であると認められる(先例審決及び審査例:甲17?甲19)。
(イ)また、本件商標のメインの指定役務の範囲(第41類:類似群コード「41A01」)で、「日本○○協会」からなる(あるいは要部とする)登録商標が630余りも存在する(甲20)が、これら「日本○○協会」と商標「○○協会」が併存登録されている例はほとんど見当たらない。
これは、例えば、「日本レコード協会」が「レコード協会」(甲21)、「日本相撲協会」が「相撲協会」(甲22)と普通に略称されている事実から考えて、「日本相撲協会」「日本サッカー協会」「日本英語検定協会」なる商標(名称)と、「相撲協会」「サッカー協会」「英語検定協会」「知的財産協会」なる商標(名称)とが、全く異なる権利主体によりそれぞれ登録・使用された場合、彼此の間で出所の混同が生じる蓋然性は極めて高く、需要者への不利益の発生は必定であるので、そのような商標(名称)の採択を事前に取りやめ、健全な経済秩序の維持を図ろうとする賢明な選択を行っている証左といえる。
(ウ)すなわち、商標「日本○○協会」からなる商標に接した取引者・需要者は、構成中「日本」の表示を省略して取引し認識することは十分に考えられるから、引用商標を「ニホンストリートダンスキョウカイ」と認識、称呼するのみならず、「ストリートダンスキョウカイ」と認識、称呼する場合もあるというべきである。
ウ 小結
以上のとおり、本件商標と引用商標からは、共に「ストリートダンスキョウカイ」の称呼を生じるものと認められるから、本件商標と引用商標は相紛れるおそれのある類似の商標である。
そして、本件商標の指定役務中「第41類 技芸・スポーツ又は知識の教授」と引用商標の指定役務中「第41類 ダンスの教授、ダンス検定員及びダンスインストラクターの育成及び認定、ダンサーの能力に関する検定の実施」、本件商標の指定役務中「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営」と引用商標の指定役務中「ダンスの興行の企画・運営又は開催」は、互いに類似の役務である。
したがって、本件商標は、引用商標に商標及び役務が共に類似する商標ということになる。
3 根拠条文に該当する理由について
(1)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、その構成中に「ストリートダンス協会」の文字を含む文字であるところ、該文字はダンスや音楽等の教育の事業を目的として、本件商標の出願前の2001年に設立された請求人協会の名称「日本ストリートダンス協会」の一部と同一である。
また、請求人協会は、その名称の下、上述のとおり、ストリートダンスの普及・発展に向けた各種活動を行っている。
これらの事情よりすれば、2009年設立の被請求人の「社団法人ストリートダンス協会」(以下「被請求人協会」という。)が本件商標中の「ストリートダンス協会」の文字を採用使用するについては偶然の一致によるものとは到底認め難く、むしろ、該協会の存在を知った上で採択し、出願・登録したものといわざるを得ない。
したがって、被請求人(社団法人ストリートダンス協会)が、本件商標をその指定役務について使用することは、一般的社会通念に照らし、社会的妥当性を欠くものであって、公正であるべき商取引の秩序を乱すおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第10号について
引用商標は、本件商標出願前に既に全国的に周知著名な商標である。そして、本件商標は引用商標と類似関係にある。
したがって、本件商標は、その出願前に周知であった引用商標に類似する商標であり、引用商標の役務に類似する役務を指定役務に含むものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、先願先登録の引用商標と類似関係にある。そして、本件商標の指定役務は引用商標の指定商品と類似関係にある。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、本件商標出願前に既に全国的に著名な商標である。そして、本件商標と引用商標の指定役務と密接に関係する。このような状況下において、本件商標が指定役務に使用された場合には、需要者は請求人協会あるいは同協会と何等か関係がある者の業務に係る役務であるかのごとく誤認し、役務の出所について混同の生じるおそれがあるといわざるを得ない。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(5)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、引用商標に類似する商標であって、引用商標の著名性に鑑みれば、その出所表示機能を希釈化させる等の目的をもって、出願・登録したものといわざるを得ない。よって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
4 答弁に対する弁駁
(1)本件商標の一体性について
本件商標の構成中の図形部分と文字部分は、渾然一体となっているものではなく、整然と一定の距離を置き、左側に図形、右側に文字部分が配置されている。本件商標が常に一体で認識されているといったことは論理的に、また、常識的にありえない。本件商標は文字部分単独にても需要者・取引者に把握・認識されるものである。
つぎに、被請求人(以下、被請求人2名を「被請求人」という場合がある。)は、本件商標の文字部分は、「一般社団法人ストリートダンス協会」と一連のものとして認識されるとし、しきりに、「一般社団法人」は非営利の登記された法人の意であるから識別力を有するといった旨を述べているが、これは語義と識別力を混同したものである。
需要者は役務の出所の主体である法人の性質などには大した関心はないであろう。「日本野球機構」や「日本相撲協会」がどのような法人であるか、野球や相撲に興味のある者でも何人が知っているであろうか。簡易迅速を尊ぶ商取引の場のおいては、省略される場合が実際多い。答弁書添付の新聞記事等においても、単に、「ストリートダンス協会」と表示されている場合がほとんどである。取引の場で必ず「イッパンシャダンホウジンストリートダンスキョウカイ」とのみ称呼されるとするのは不自然といえ、審決でも同旨の判断がされている(甲23)。
このように、需要者・取引者は、本件商標の文字部分から、「ストリートダンス協会」の文字部分を抽出し、端的に「ストリートダンスキョウカイ」と認識、称呼する場合もあるのであるから、本件商標の場合、「ストリートダンス協会」をその要部として、引用商標と比較して類否判断をすべきである。
なお、被請求人は、「ストリートダンス協会」の部分を「ストリートダンス」「協会」の語義を述べ、「ストリートダンス協会」の語自体識別力が高いとはいえない旨を述べているが、商標の類否判断においてこのような考え方が成り立たないのは言を俟たない。
(2)引用商標「日本ストリートダンス協会」の一体性について
ア 被請求人は、引用商標「日本ストリートダンス協会」が既に周知性を獲得していることを引用商標は一連のものと認識される理由の一つとしているが、周知性の獲得と要部の認定とは必ずしも合致するものではない。商標が周知著名になったがゆえに需要者は省略して称呼・観念する傾向が強まることは通常みられるところであり、語の持つ本来的性質といったものも関連してくるからである。
イ 上述の語の持つ本来的性質といった点から、本件では、引用商標の「日本」の部分が省略され、称呼、観念されるかについて
構成中の「日本」の表示は、わが国を指称する文字としてきわめて親しまれており、商号や団体名、あるいは大会名等の名称で構成される商標の場合、その冒頭に付してありふれて使用採択されるものであり、役務の提供地であることを認識させるものに止まるものであるから、しばしば省略されて使用され、認識される。答弁書添付の新聞記事の数多くにおいて、「日本高校ダンス選手権」を「高校ダンス選手権」と表記しているのは、その典型例といえる。このように、引用商標の場合、「日本」の語の自他役務識別標識としての機能は弱いものであると認められる。
被請求人は、答弁書で「日本○○協会」と「○○協会」の併存登録として3例を挙げている。しかし、うち2例の場合は、「京都」、「石川県」という地域的結びつきの強い表示(これを省略することは考え難い)を冠した「○○協会」との併存例であるから、「日本○○協会」と「○○協会」の併存を示すものとはいえず、登録実質的な併存例としては1件のみであり、被請求人の反論を裏付けものではなく、むしろ、「ほとんど見当たらない」ことを示しているものである。
また、過去の審決例は先例としての意義は薄いとしているが、先例として参酌されるべきものである。参考となる審決例を1件追加する(甲24)。
商標「日本○○協会」と商標「○○協会」が併存登録された場合の需要者に与える不利益は、審判請求書で述べたとおりである。
(3)本件商標が周知性を獲得している旨の主張について
被請求人は、本件商標が周知性を獲得している旨を述べているが、この点についても言及することとする。
被請求人の一人である「一般社団法人ストリートダンス協会」(以下「被請求人協会」という。)の設立は、請求人協会の設立から遅れること8年の平成21年である。引用商標が既に周知性を獲得している時期には本件商標は使用されてもいないことになる。
開催事業として挙げている日本高校ダンス部選手権の第1回開催は、平成20年、もう一つのストリートダンス検定の第1回の開催時期は不明であるが、おそらく平成20年前後であろう。使用の期間は長いとはいえない。また、日本高校ダンス部選手権はそこそこ知られてきているようではあるが、それが「ストリートダンス協会」も周知度と結び付いているようには思えない。如何せん、別名「DANCE STADIUM」、また、「ダンス甲子園」とも呼ばれる「高校ダンス部選手権」の方が前面に出てきてしまうからである。
ストリートダンス検定の方も請求人協会が既に平成22年からストリートダンス検定を実施しており、二番煎じの感を免れない。法人名である本件商標の性格及びその役務の性質から考えて、本件商標自体が周知性を獲得するためには、ある程度の期間の継続的かつ幅広い範囲の役務の提供が重要なポイントとなる。「日本ストリートダンス協会」も長年の広範囲に及び活動の結果、周知性を獲得している。
このような状況から考えて、本件商標は、未だ周知性を獲得するには至っていないと考えるのが相当である。
5 まとめ
本件商標は、引用商標に類似し、請求人の業務に係る役務と混同を生じるおそれのあるものであり、また、その採択等において社会通念上妥当性を欠く事情が存する。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号、第10号、第11号、第15号及び第19号に違反して登録されたものであることは明らかである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第17号証(枝番を含む。)を提出した。
1 本件商標の構成について
本件商標は、別掲のとおり、ダンスの「D」を地球に回した図形部分と、「一般社団法人」「ストリートダンス協会」「Street Dance Association」の各語を縦三段に横書きに表した文字部分とからなり、図形部分は全体の約3割を占める大きさで表されている。
本件商標の構成中、(a)「一般社団法人」の語は、被請求人が「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)」に基づいた非営利の登記された法人であること、(b)全体の約3割を占める図形部分は、「ストリートダンスを世界に広める」という被請求人の目的・理念の表明であることが端的に表されており、本件商標は、図形部分と文字部分とが一連一体のものと認識されて「ストリートダンスを世界に広める非営利の登記された法人のストリートダンス協会」の観念を生じると共に、「イッパンシャダンホウジンストリートダンスキョウカイストリートダンスアソシエイション」又は「イッパンシャダンホウジンストリートダンスキョウカイ」の称呼を生じるものである。
2 本件商標の内容について
(1)本件商標の周知性
ア 被請求人協会は、ストリートダンスを国内外で普及促進するための各種支援事業を通して、青少年の心身の健全な発達に寄与し、併せて国際相互理解の促進を図ることを目的として、平成21年9月29日に設立されたものである(乙1、乙2)。なお、もう一人の被請求人である西元陽一は当協会の理事である(乙1、乙2)。
被請求人協会の上記設立目的に基づく事業は、公的機関からも推奨されており、平成22年以降はおおさか地域創造ファンドから公的支援を受けて(乙3)ストリートダンスの振興に努めている。その結果、現在ではほぼすべての都道府県において登録スクールを展開するまでに事業規模が拡大している(乙4)。
イ 被請求人協会が、本件商標を付して、公に実施する事業のうち主なものとして、以下の2つがある。
(ア)ストリートダンス検定の実施(乙5)
具体的には、ストリートダンスをJAZZやHIPHOPなど6つのジャンルに分け、それぞれ1?10級までに細分化して、日本初のストリートダンスの指針となる検定試験を実施している。検定合格という新たな目標を設定することで、ダンサーの技術と意欲の向上を果たし、また日本全国に存在するダンススタジオやダンス系の専門学校を検定会場とすることで、それぞれの地域の活性化を図り、インストラクターやスタジオ運営などダンスに携わる者の雇用を創出する効果ももたらしている(乙6)。
(イ)日本高校ダンス部選手権の開催(乙7、乙8)
同大会は、森喜朗元首相を大会名誉顧問に迎え(乙2、乙7)、公益財団法人全国高等学校体育連盟の後援を得ると共に(乙8の4?5)、文部科学省の後援を得るまでになっており(乙9)、株式会社産業経済新聞社主催の下に、被請求人が主管となり2008年を第1回として以来毎年開催している。その模様はDVDに収録されて一般に頒布されると共に(乙10)、新聞・雑誌等で紹介されている。2013年の第6回を例にとると、7月23日?8月14日にかけて各地区で開催された予選大会及び8月19日に開催された全国大会の模様が全国紙等で紹介されている(乙11の1?41)。
ウ 以上の事実により、本件商標が、被請求人協会の業務を表示するものとして取引者・需要者の間に広く知られていることは明らかである。
なお、上記日本高校ダンス部選手権の第2回(2009年)及び第3回()2010年)においては、請求人も審査員を派遣するなど協力企業として名を連ねており(乙10)、少なくとも当時は、被請求人協会が本件商標を付して同大会を開催することについて、明示又は黙示に承諾していたということができる。
(2)本件商標の図形部分
本件商標のうち、ダンスの「D」を地球に回した図形部分は独創性の程度が極めて高く、かつ、「ストリートダンスを世界に広める」との観念を生じさせるものである。これは、被請求人協会の設立目的である「ストリートダンスを国内外で普及促進するための各種支援事業を通して、青少年の心身の健全な発達に寄与し、併せて国際相互理解の促進を図る」こととも合致し、当該図形部分の識別力は非常に高いものである。
(3)本件商標の文字部分
ア 「一般社団法人」の語は、被請求人が「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)」に基づいた非営利の登記された法人であることを示すものである。ここで、商品・役務の出所が非営利法人であるか営利法人であるかは取引者・需要者にとって大きな関心事である。
請求人は、「『一般社団法人』は、・・・自他役務の識別機能を発揮しない部分である」としているが、これは不当である。
「一般社団法人」と「ストリートダンス協会」とが一連に表記されることにより、取引者・需要者は、本件商標中の「一般社団法人ストリートダンス協会」が「非営利の登記された法人のストリートダンス協会」であることを認識するのである。
イ 「ストリートダンス協会」の語自体は、「ストリートダンス」の語が「ストリート、つまり路上で踊られることから発生したダンスの一種」(フリー百科事典「Wikipedia」)として広く知られており、「協会」の語単体では識別力を有しないことから、識別力が高いとはいえない。
ウ 以上のア及びイの各事実より、本件商標の文字部分は、「一般社団法人ストリートダンス協会」と一連のものとして認識されることにより、「非営利の登記された法人のストリートダンス協会」の観念を生じさせ、識別力を発揮するものである。
(4)上記(1)のとおり、本件商標は、被請求人の業務を表示するものとして、取引者・需要者の間に広く知られていること、上記(2)のとおり、本件商標のうち図形部分は、独創性の程度が極めて高く、かつ、「ストリートダンスを世界に広める」との観念を生じさせるものであり、識別力は非常に高いものであること、上記(3)のとおり、本件商標のうち「ストリートダンス協会」の語自体は識別力が高いとはいえないが、「一般社団法人ストリートダンス協会」と一連に表記されることにより「非営利の登記された法人のストリートダンス協会」であることを認識させ識別力を発揮するものであることを総合すると、本件商標について、(a)「ストリートダンス協会」の語のみをもって取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる事情はなく、(b)それ以外の「ダンスの『D』を地球に回した図形部分」から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる事情もないので、「ストリートダンス協会」の部分のみを抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断すべきではない。
以上より、本件商標は、「ストリートダンス協会」の語のみを抽出するのではなく、本件商標全体を引用商標と比較して類否を判断すべきものである。
3 引用商標について
(1)請求人は、引用商標を「ストリートダンスキョウカイ」と認識、称呼する場合もあると述べている。
しかし、(a)上記2(3)イで述べたとおり、「ストリートダンス協会」の語自体は識別力が高いものではないこと、(b)甲第3、6、8及び13号証によると、引用商標は多くの場合「JSDA」(JAPAN STREET DANCE ASSOCIATION)の語と併記されて使用されており、しかも先頭の「J」の文字が「JAPAN=日本」を表すことは明白であること、(c)請求人自身が「日本ストリートダンス協会」と一連の商標は既に周知であると主張していることを総合すると、引用商標は、「日本ストリートダンス協会」と一連のものと認識され、「ニホンストリートダンスキョウカイ」の称呼のみを生じると共に、「日本在のストリートダンス協会」の観念を生じるものである。
(2)請求人は、甲第20号証を示して、「日本○○協会」からなる商標と「○○協会」からなる商標が併存登録されている例はほとんど見当たらないことから、「日本○○協会」からなる商標に接した取引者・需要者が「日本」の表示を省略して取引し認識することは十分に考えられるとしている。しかし、甲第20号証の内容を精査すると、「全日本きものコンサルタント協会」(乙12)と「京都きものコンサルタント協会」(乙13)、「全日本和装協会」(乙14)と「日本和装協会」(乙15)、「石川県リズムダンス協会」(乙16)と「日本リズムダンス協会」(乙17)、が併存登録されていることがわかる。
このことからすると、「日本○○協会」からなる商標は、「○○」の部分自体が識別力を有する場合を除き、「日本○○協会」が一連のものと認識されることにより識別力を発揮するとみるのが妥当である。
(3)請求人は、過去の審決及び審査結果(甲17?甲19)を引用して自己の主張の正当性を述べている。しかし、これらの審決及び審査結果は、本件審判に対する判断を左右するものではない。
4 本件商標と引用商標の類否について
本件商標は、上記1のとおり、「イッパンシャダンホウジンストリートダンスキョウカイストリートダンスアソシエイション」又は「イッパンシャダンホウジンストリートダンスキョウカイ」の称呼を生じると共に、「ストリートダンスを世界に広める非営利の登記された法人のストリートダンス協会」の観念を生じるものである。
引用商標は、上記3(1)のとおり、「ニホンストリートダンスキョウカイ」の称呼を生じると共に、「日本在のストリートダンス協会」の観念を生じるものである。
これらの称呼と観念の違いに加えて外観の違いも総合考慮すると、本件商標と引用商標とは、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第19号にいう「類似」とはいえないものである。
5 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人は、引用商標が本件商標登録出願前に既に全国的に著名であり、指定役務が密接に関係する状況において、本件商標が指定役務に使用された場合には、需要者は請求人協会あるいは同協会と何等か関係がある者の業務に係る役務であるかのごとく誤認し、役務の出所について混同の生じるおそれがあると述べている。
しかし、甲第7号証?甲第16号証は本件商標の出願後のものであり、引用商標が本件商標の出願前から周知あるいは著名であったことの証拠足り得ない。
(2)上記2(3)アのとおり、商品・役務の出所が非営利法人であるか営利法人であるかは取引者・需要者にとって大きな関心事であるところ、本件商標は、構成中に「一般社団法人」の語を含み、この記載より非営利の登記された法人であることが明白であるのに対し、引用商標の構成中にはこの種の語を有しないことより、非営利の登記された法人が使用する商標であるとは認識されないものである。
(3)上記2(1)のとおり、被請求人協会が本件商標を付して行う事業は、おおさか地域創造ファンドの公的支援や文部科学省の後援を受けるなど公的機関の協力を得られており、取引者・需要者もこのことを了知して本件商標が付された事業に参加するのである。これに対し、引用商標からは非営利の登記された法人ゆえに公的機関の協力を得られているとの認識は得られず、実際にも甲第13号証等を見る限り協力企業は営利企業のみであり、取引者・需要者もこのことは容易に了知し得るものである。
(4)以上の(1)?(3)の各事実に加え、上記4のとおり、本件商標と引用商標とが互いに類似するものではないことを考慮すると、被請求人協会の本件商標に係る事業と請求人協会の引用商標に係る事業とは、取引者・需要者において明確にすみ分けがされており、誤認混同を生じるおそれのないものである。
6 商標法第4条第1項第7号について
(1)請求人は、被請求人が本件商標中の「ストリートダンス協会」の文字を採用使用するについては偶然の一致によるものとは到底認め難く、むしろ、請求人協会の存在を知った上で採択し、出願・登録したものといわざるを得ず、被請求人が、本件商標をその指定役務について使用することは、一般的社会通念に照らし、社会的妥当性を欠くものであって、公正であるべき商取引の秩序を乱すおそれがあると述べている。
(2)しかし、商標法第4条第1項第7号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として、商標自体の性質に着目した規定となっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法4条1項各号に個別に不登録事由が定められていること及び商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法4条1項7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものである(平成14年(行ケ)第616号)。
(3)そうとすると、本件商標と引用商標とが、その構成中に、単に「ストリートダンス」と「協会」の両語を結合しただけで何人も採択使用する可能性があり、かつ、上記2(3)イのとおり、識別力が高いとはいえない「ストリートダンス協会」の語を有することをもって、「その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」に該当するものではない。
(4)また、被請求人が本件商標を採択したのは独自の理念と創意によって行ったものであり、その商標採択行為について「登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くもの」があるものではないし、その創意採択に基づく本件商標の登録出願について「登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するもの」に該当するものではない。
7 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものでなく、商標法第46条第1項第1号に該当しない。

第5 当審の判断
1 事実認定
(1)請求人協会及び引用商標の周知・著名性について
ア 請求人協会(「日本ダンスストリート協会(JAPAN STREET DANCE ASSOCIATION)」(略称:JSDA))は、2001年10月1日に設立され、事務局を「東京都港区南青山3丁目1番30号エイベックスビル エイベックス・プランニング&デベロップメント株式会社内に置き、ダンサーの活動支援・社会的地位の向上、ストリートダンスの普及・発展等を目的とするものである(甲3)。
イ エイベックス・プランニング&デベロップメント株式会社(以下「APD社」という。)は、フィットネスクラブ向けのダンスのレッスンプログラム「エイベックス・ダンスマスター」を2004年に開発し、ライセンス提供を開始した(甲4、甲5)。請求人協会は、上記プログラムを公認している(甲4)。
APD社による上記プログラムのライセンスは、2010年8月には、100店舗を超え、延べ受講生は、10,000人を超え(甲4)、2011年8月ころには、契約加盟店舗数は120を超え、受講生は約12,000人である(甲7)。
ウ 請求人協会は、2010年にストリートダンスに関する検定「JSDAストリートダンス検定」を始めた(甲7)。
エ エイベックスダンスマスター導入店舗及び請求人協会推奨スタジオが参加するダンスイベント「Dance NATION」が2006年から開催され、2011年(12月24日に開催)は約30,000人が参加した甲9、甲10)。
オ 請求人協会は、本件商標の登録査定後においても「2012ダンスサミット in Japan」のほか、各地のダンスイベントに協賛、後援し、審査員としてインストラクターの派遣等を行っている。なお、これらの開催パンフレト等において請求人協会について、「日本ストリートダンス協会(JSDA)」、「JSDA日本ストリートダンス協会」若しくは「JSDA」の文字をモチーフとした協会のロゴマークが記載されている(甲11、甲12)。
カ 請求人協会は、2012年3月及び4月に教員向けのダンス教室や講習会を開催した(甲15)。
キ 以上によれば、請求人協会は、2004年に設立され、ストリートダンスの講習会の開催などの普及活動を行ってきたこと、各種ダンスイベントに講演、協賛してきたこと、及び2010年からストリートダンスに関する検定を開始したことが認められ、また、請求人協会は、APD社によるストリートダンスのレッスンプログラムを公認し、その普及に貢献していることが認められる。
しかしながら、本件商標の出願時又は登録査定時前に開催した普及活動の回数やそのための宣伝広告の内容等は不明であるし、また、ダンスイベントに協賛していることは認められるものの、当該イベントのパンフ等には、多数の協賛者の一つとして紹介されているものも多く、更にその紹介において、「JSDA」のロゴマークだけが記載されたものや「JSDA日本ストリートダンス協会」などとして紹介されていること、また、ストリートダンスの検定を行っていることは認められるものの、開始が2010年(平成22年)であって、本件商標の登録出願前の開催数が多いものではなく、また、当該宣伝のための広告の内容、受験者の規模等も明らかではない。
さらに、請求人協会がAPD社のレッスンプログラムを公認し、その普及の際に一定の役割を果たしていることは認められるものの、2011年8月ころにおいて、当該レッスンプログラムの契約は120店舗と必ずしも広く普及しているとまではいえず、また、その宣伝広告の内容も不明である。
以上によれば、提出された甲第3号証?甲第16号証によっては、引用商標は、ダンスの教授、ダンス検定等のダンスに係る取引者、需要者の間に広く認識されているとまではいうことができない。
(2)被請求人協会及び本件商標の周知、著名性
ア 被請求人協会は、平成21年9月29日にストリートダンスの普及促進のための支援事業を通して、青少年の心身の健全な発達に寄与すること等を目的として設立された。なお、被請求人の一人、西元氏は、当該団体の理事である(乙1、乙2)。
イ 被請求人協会は、平成22年から平成25年にかけて「おおさか地域創造ファンド中央地域支援事業助成金」から、100万円から500万円の助成金を受けていること(乙3)、2013年10月頃には全国各地にある106のストリートダンススクール、フィットネスクラブ等が被請求人協会に登録していること(乙4)、被請求人協会が中高生のダンス大会及びストリートダンスの検定を主催していること(乙5?乙11)が認められる。
しかしながら、被請求人協会の設立は、本件商標の登録査定時の3年ほど前であり、「日本高校ダンス部選手権」(なお、第1回の開催は被請求人協会設立以前である。)が被請求人協会が主催者の一つとして開催されていることが認められるものの、当該競技会に係る新聞報道(なお、乙11の1?41はいずれも本件商標の登録査定後になされたものである。)には、被請求人協会についての記載がないものも多くある。また、被請求人協会が行う「ストリートダンス検定」は、開催開始日が不明であり(なお、乙5によれば、2013年5月に第9回が開催され、年間4回が開催されている。)、当該検定への参加人数等も不明である。そうとすると、提出された証拠によっては、本件商標が、その登録出願日及び査定時において、取引者、需要者の間に広く認識されて周知・著名になっていたとは認められない。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
ア 本件商標は、別掲のとおり、緯度と経度が白抜きで表されている地球状の球体に「D」状の外枠を土星のように配した図形を配し、その右に「一般社団法人」、「ストリートダンス協会」及び「Street Dance Association」の各文字を3段に横書きして表したものである。
そして、本件商標の図形部分と上記文字部分とを常に一体不可分のものとして認識し把握しなければならないとする格別の理由は見当たらず、図形部分からは、特段の称呼及び観念は生じないものである。
また、上記「一般社団法人」の文字は、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)に基づいて設立された社団法人として、その名称中に使用することが義務付けられている表示であり、「ストリートダンス」の文字は、「路上で踊られることから発生したダンスの一種」(Wikipedia)。「協会」の文字は、「ある目的のため会員が協力して設立・維持する会」(広辞苑第六版)を意味する語である。そうすると、本件商標の「一般社団法人」及び「ストリートダンス協会」の部分は、全体として一般社団法人の名称として認識されるものというべきであるから、「イッパンシャダンホウジンストリートダンスキョウカイ」の称呼を生じ、一般社団法人」の文字部分は、上記のとおり法人格を表すものであって、「ストリートダンス協会」の文字部分が自他役務の識別標識としての機能を果たすものといえるから、該文字部分より、「ストリートダンスキョウカイ」の称呼を生じる。そして、その構成態様より、団体の名称としての「一般社団法人ストリートダンス協会」の観念を生ずるものと認められる。そして、下段の「Street Dance Association」の文字部分は、「ストリートダンスアソシエーション」の称呼を生じ、上段の法人名の英語表記と認められるものである。
したがって、本件商標は、その文字部分から「イッパンシャダンホウジンストリートダンスキョウカイ」、「ストリートダンスキョウカイ」及び「ストリートダンスアソシエーション」の称呼を生じ、団体の名称としての「一般社団法人ストリートダンス協会」の観念を生ずるものというのが相当である。
(2)引用商標について
引用商標は、上記第2のとおり、「日本ストリートダンス協会」の文字を標準文字で一連一体に表してなるものである。そして、我が国を表す「日本」の文字と前記「ストリートダンス」及び「協会」の文字よりなるものであるから、構成全体として団体名としての「日本ストリートダンス協会」の観念を生じ、「ニホンストリートダンスキョウカイ」の称呼のみを生ずるものと認められる。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標とは、別掲及び上記第2のとおりであるから、両者の全体をもって比較した場合はもちろん、本件商標の文字部分と引用商標とを比較しても両者は外観上明らかに異なるものである。
次に、称呼についてみるに、本件商標の文字部分全体より生じる「イッパンシャダンホウジンストリートダンスキョウカイ」、「ストリートダンスキョウカイ」及び「ストリートダンスアソシエーション」と引用商標より生じる「ニホンストリートダンスキョウカイ」の称呼とは、いずれも構成音数及び構成音において、顕著な差異を有するものであるから、両者は明らかに聴別し得るものである。
また、本件商標から生じる「一般社団法人ストリートダンス協会」の観念と引用商標から生ずる「日本ストリートダンス協会」の観念は、観念上においても区別し得るものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4)請求人の主張について
請求人は、引用商標は、構成中の「日本」の表示は我が国を指称する文字として極めて親しまれており、商号や団体名等の名称を構成する場合、その冒頭に付してありふれて使用採択されるものといえることから、引用商標の指定役務との関係では役務の提供地であることを認識させるに止まり、自他役務識別標識としての機能は極めて微弱であるなどとし、取引者・需要者は、構成中の「日本」の部分を省略して取引することから、「ストリートダンスキョウカイ」の称呼を生ずる場合がある旨主張している。
しかしながら、引用商標の構成中の「ストリートダンス」の文字部分は、第41類の指定役務中の「ダンスの教授」等との関係においては、役務の内容を表すものであり、引用商標は、これと「日本」及び「協会」の語を前後に結合し、全体として団体名称として認識されるというべきである。そして、提出された証拠によっても「日本」の文字を冠した団体名等において、「日本」部分を省略して称呼する場合があることが一般的であるとまではいうことができないから、引用商標は、「日本ストリートダンス協会」の全体をもって役務の提供者を識別するとみるのが自然である。
したがって、この点に関する請求人の主張は、採用の限りでない。
(5)小結
以上のとおり、本件商標は、引用商標と類似しない商標であるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
3 商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号について
引用商標は、前記1(1)のとおり、本件商標の登録出願日において、請求人協会の業務に係る役務を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識され、周知・著名となっていたとは認められず、また、前記2のとおり、本件商標は、請求人協会の使用する引用商標とは非類似の商標である。
そして、上記のとおりであるから、本件商標の指定役務が、引用商標に係る役務と同一又は類似であるとしても、被請求人が本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者・需要者をして引用商標を連想又は想起させるものとはいえないものであって、その役務が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生じさせるおそれはないというのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものとはいえないものである。
4 商標法第4条第1項第7号について
請求人は、2009年設立の被請求人協会が本件商標中の「ストリートダンス協会」の文字を採用使用するについては偶然の一致によるものと到底認め難く、請求人協会の存在を知った上で採択し、被請求人出願・登録したものといわざるを得ない。したがって、被請求人が本件商標をその指定役務について使用することは、一般社会通念に照らし、社会的妥当性を欠くものであって、公正であるべき商取引の秩序を乱すおそれがある旨主張しているが、本件商標は、前記のとおり、引用商標とは非類似の商標であり、さらに申立人提出の証拠によっても被請求人らに本件商標の出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠く等の事実は認められず、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号にも該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項7号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものでないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標


審理終結日 2014-03-06 
結審通知日 2014-03-10 
審決日 2014-03-19 
出願番号 商願2011-36087(T2011-36087) 
審決分類 T 1 11・ 222- Y (X41)
T 1 11・ 252- Y (X41)
T 1 11・ 271- Y (X41)
T 1 11・ 22- Y (X41)
T 1 11・ 262- Y (X41)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 真規子 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 小川 きみえ
井出 英一郎
登録日 2012-06-29 
登録番号 商標登録第5503406号(T5503406) 
商標の称呼 ストリートダンスキョーカイ、ストリートダンス、ストリートダンスアソシエーション、デイ 
代理人 福島 三雄 
代理人 志賀 正武 
代理人 高柴 忠夫 
代理人 福島 三雄 
代理人 塩田 哲也 
代理人 高崎 真行 
代理人 高崎 真行 
代理人 塩田 哲也 
代理人 田中 彰彦 

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