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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X16
管理番号 1286674 
審判番号 取消2012-300379 
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-05-11 
確定日 2014-04-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第5197011号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5197011号商標(以下「本件商標」という。)は、「GALE」の欧文字を標準文字により表してなり、平成20年6月16日に登録出願、第16類「テキストブック・参考書・学術論文・雑誌及びその他の印刷物」及び第41類「学生・司書・教員その他の教育関係者・研究者向けの検索可能なデータベースを利用した教育に関する情報の提供並びに図書及び記録の供覧,電子出版物の提供」を指定商品及び指定役務として、同21年1月16日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成24年5月31日にされている。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第16類「テキストブック・参考書・学術論文・雑誌及びその他の印刷物」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べた。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第16類「テキストブック・参考書・学術論文・雑誌及びその他の印刷物」(以下「取消請求に係る商品」という。)について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実が存しないから、その登録は上記指定商品について商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人は、答弁書において、本件商標を「各種百科事典」に使用していると述べて、被請求人とは異なる「センゲージラーニング(株)」に関するウェブページの写しと、同社と別の「CENGAGE LEARNING ASIA PTE LTD」(以下「CLasia」という。)が「丸善(株)」に宛てた請求書の写しとを本件商標の使用の証拠として提出している。
しかしながら、被請求人の提出した各号証からは、取消請求に係る商品に本件商標を使用しているとは認められない。
被請求人が使用の証拠として提出した乙第1号証の1は、書籍を紹介するウェブページと認識できるものの、その書籍が商品として販売されていることが確認できない。当該ウェブページは、販売する書籍を展示したページであるのか、書籍に関する情報を提供したページであるのか明らかでない。
この他に、被請求人が使用の事実を示す証拠として提出した乙第1号証の2は、教育情報サービスの提供を業務内容とする「センゲージラーニング(株)」の「Gale図書館営業部」が、「図書館・大学・学校向けに図書館レファレンス/データベースを販売」していることを説明する資料である。
乙第2号証は、「GALE CONTXTL ENCY AM LIT V1ないしV4」より構成される何らかのシステム「GALE CONTXTL ENCY AM LIT 4V」が、「CLasia」と「丸善(株)」との間で取引された際の請求書である。乙第2号証に記載されたISBNは、乙第1号証の1に列記された書籍のISBNと一致せず、両者の相関関係が明らかでない。
よって、これら証拠は、単に被請求人とは異なる者が、書籍に関する情報を提供すると共に図書データベースを販売しており、そしてまた別の者が取消審判の請求に係る指定商品とは無関係の何らかのシステムを取引したことを示すにすぎないものである。
したがって、被請求人の提出資料は、いずれも取消請求に係る商品について、本件商標が本件審判の登録前3年以内に使用されたことを示す証拠とは認められない。
3 口頭審理陳述要領書
被請求人は、要証期間内に本件商標が使用されていたことを立証する必要があるところ、乙第1号証の1から推定される事実は、「『2010年6月』に発行された百科事典についての情報を掲載したウェブサイトが2012年9月12日の時点で存在した」ということのみであって、該ウェブサイトが要証期間内に存在していたことについて、客観的な立証をしていない。
被請求人は、乙第1号証の2について、請求人の弁駁及び合議体の暫定的見解に対して、何ら陳述していないから、「センゲージラーニング株式会社が書籍の販売にあたり、『Gale』商標を用いているとはいえない」ことについて、被請求人は争わないものである。
被請求人は、被請求人とCLasiaとは、グループ会社であり、契約があることから黙示の使用許諾を付与された通常使用権者と解されるとのことであるが、両者の関係について、何ら実質的な立証がなされていない。
また、CLasiaが黙示の通常使用権者である証拠として、新たな乙第4号証及び乙第5号証が提出されたが、乙第5号証は、そのタイトルを「TRADING TERMS AGREEMENT(取引条件契約)」とするものであって、内容は専ら取引用語の定義であったり、支払条件や支払方法に関するものにすぎない。この契約書の中には、本件商標を含めて、そもそも商標に関する条項が一切存在していない。すなわち、被請求人とCLasia間で何らかの契約があったとしても、それが本件商標を付した商品に係るものであるのか、我が国を対象地域とするものであるのか、全く明らかにされていないから、これをもって、CLasiaが本件商標の使用について、黙示の許諾を受けていたとはいえない。
また、乙第2号証及び乙第6号証は、本件商標が日本国内において使用されたことを証明していない。なぜならば、乙第2号証及び乙第6号証には、「Sold to」と「Ship to」の欄があるところ、「Sold to」の欄には、「TOKYO」(乙第2号証)と「SAITAMA」(乙第6号証)の「MARUZEN CO.,LTD」が記載されているものの、実際に商品が送られた先を示す「Ship to」の欄の住所は、いずれもアメリカ合衆国である。
さらに、乙第2号証及び乙第6号証によると、商品は、アメリカ合衆国において、CLasiaからMARUZEN CO.,LTDへ引き渡されているから、仮に、CLasiaが本件商標の通常使用権者であったとしても、CLasiaによる本件商標の使用行為(譲渡及び引き渡し)が我が国において使用されたものでない以上、乙第2号証及び乙第6号証をもって、本件商標が我が国において使用されていたことの証拠とはなり得ないし、本件商標について使用許諾を受けた者に係るインボイスとも認められない。
したがって、本件審判の請求の登録前3年以内に商品「百科事典」について、本件商標の使用をしていたとは認められない。
4 被請求人提出の回答書に対する主張
被請求人提出の回答書(平成25年8月26日付け及び同年同月27日付け提出)において、被請求人と各会社及びセンゲージラーニング株式会社の関係については、明らかにされていない。
また、乙第35号証によると、「航空貨物運送状のShipper(荷送人)は、Maruzen International Co.,Ltdであり、Consignee(荷受人)は、該書籍の注文者である丸善株式会社」であり、「Maruzen International Co.,Ltdは、米国で購入した書籍の取りまとめをしている」とある。すなわち、被請求人は、日本国外において、第三者に商品の譲渡を完了しているのであって、該書籍を日本に輸入したのも、日本国内において販売(譲渡)したのも、被請求人とは法的に無関係な第三者であって、何ら被請求人のコントロールが及ぶものではない。
したがって、新たに提出された証拠は、むしろ、被請求人が我が国で本件商標を使用していなかったことを明らかにしているものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第36号証を提出した。
1 答弁の理由
本件商標は、ザ ゲイル グループ インコーポレイテッド(以下「前商標権者」という。)によって各種百科事典に本件審判の請求の登録前3年以内に使用されていた。
前商標権者は、該事実を立証するため、センゲージラーニング株式会社のホームページの紙出力及びCLasiaから丸善株式会社宛てのインボイスの写しを提出する(乙第1号証及び乙第2号証)。
乙第1号証の1のウェブサイトには、「遺伝子疾患百科事典」、「癌百科事典」、「新カトリック百科事典補遺2010年版」が掲載され、これら百科事典の発行日が「2010年6月」である旨及び発行者「Gale」と記載されている。また、「遺伝子疾患百科事典」、「癌百科事典」には、本件商標と社会通念上同一と認められる「GALE」が表示されている。
したがって、本件商標がその取消請求に係る「その他の印刷物」に本件審判の請求の登録前3年以内である2010年6月時点で使用されていたことは明らかである。
上記百科事典は、我が国ではセンゲージラーニング株式会社が取り扱ってきたが、同社は大学テキスト等の専門書の輸入卸売りを行っており(乙第1号証の2)、これらの百科事典を取り扱っている。「Gale」は、センゲージラーニング株式会社が取り扱ってきた四つの営業の品目の一つとなっている(乙第1号証の2)。
前商標権者は、センゲージラーニング株式会社を通じて(センゲージラーニング株式会社を問屋として)、本件商標が使用されている百科事典を我が国で販売していたことから、同人が本件商標を使用していたといえる。仮に、前商標権者が使用されていないとされたとしても、センゲージラーニング株式会社に上記百科事典を販売させたことによって黙示の使用許諾をしていたと解される。
したがって、本件商標は、前商標権者自身、あるいは使用権者によって使用されていたといえるから、乙第1号証により、商標法第2条第3項第2号の使用がされていたことが明らかである。
その名称からセンゲージラーニング株式会社の関連会社であることが明らかなCLasiaから丸善株式会社宛ての2010年1月15日付けインボイスには「GALE」が付されている(乙第2号証)。その販売先とされた「MARUZEN CO.,LTD 1-9-18 KAIGAN MINATO-KU TOKYO」が丸善株式会社であることを証するため同社のウェブサイト(乙第3号証)を提出する。
上述した前商標権者とセンゲージラーニング株式会社の関係と同じものと解される前商標権者とCLasiaとの関係からして、前商標権者自身、あるいは使用許諾を受けた者が取引書類に本件商標を付して頒布したといえる。すなわち、乙第2号証から、本件商標は前商標権者自身、あるいは使用権者によって商標法第2条第3項第8号の使用がされていたことが明らかであり、また、日本の会社である丸善株式会社に販売されていたことから、商標法第2条第3項第2号の使用がされていたともいえる。
2 口頭審理陳述要領書
(1)前商標権者とCLasiaとの関係
前商標権者は、CENGAGE LEARNINGの一部分となっていたが、法律上及び納税者としての名称及び番号は、従前のままであった。一方、取引においては、GALE CENGAGE LEARNINGの名称で事業を行っていた。
前商標権者は、上記事実を立証するために2010年5月11日付けのCLasia宛てのインボイスの写し(乙第4号証)を提出する。
このインボイスには、「The Gale Group inc. is now part of CENGAGE Learning. The company's legal/taxpayer name and number remain in the same.」の記載、また、直接の連絡先(DIRECT ALL CORRESPONDENCE TO)として「Gale 27500 Drake Rd. Farmington Hills, MI 48331」と前商標権者の住所と実質的に同一の住所が記載されており、かつ、GALE CENGAGE Learningの表示がある。
次に、CENGAGE LEARNING又は前商標権者とCLasiaとの関係は、その名称中の「CENGAGE LEARNING」が共通することから明らかなようにグループ会社である。
前商標権者とCLasiaは、2009年3月11日に取引条件契約を締結し、前商標権者が発行する印刷物をCLasiaが販売する権利が認められた(乙第5号証)。
さらに、乙第4号証のインボイス中の商品「GALE CONTXTL ENCY AM LIT 4V」がCLasiaによって、丸善株式会社に販売されたことを証するために、2010年6月4日付けの同社のインボイスの写し(乙第6号証)を提出する。
CLasiaは、取引条件契約の締結に伴って、前商標権者から黙示の使用許諾を付与された通常使用権者と解される結果、通常使用権者によって、本件商標を付した印刷物を日本の会社に販売していたことになる。また、黙示の使用許諾を付与されなかったと解する場合には、前商標権者が、CLasiaを通じて、本件商標を付した印刷物を日本の会社に販売していたことになる。
(2)指定商品についての使用
乙第2号証、乙第4号証及び乙第6号証において、「ISBN」の文字が見いだせるが、これは「International Standard Book Number」(国際標準図書番号)の略であり、書籍を識別するための番号である(乙第7号証及び乙第8号証)。この「ISBN」から、インボイスに記載された商品が、本件商標の取消請求に係る商品であったことが明らかである。
以上からすると、本件商標は、前商標権者、あるいは通常使用権者によって、商標法第2条第3項第8号の使用がされていたことが明らかであり、また、日本の会社である丸善株式会社に販売されていたことから、商標法第2条第3項第2号の使用がされていたともいえる。
(3)ウェブサイトの記載について
乙第1号証のウェブサイトは、答弁書の提出にあたり紙出力したものであって、本件審判の取消請求の登録後のものであっても、その中で、該登録前3年以内の使用についての記述があれば、その使用を立証できるといえる。
確かに、ウェブサイトは、容易に改変が可能であるとしても、個人のものならともかく、乙第1号証のウェブサイトは、営業活動を行っている営利法人が自己の取り扱っている書籍の宣伝広告のためのものであって、その内容は、真正なものといえる。なぜなら、取引の経験則上、あえて、虚偽の事実を述べて、その販売する商品に対する需要者の信用を損なうことはないからである。「Gale」を付した書籍の刊行日を偽って「2010年6月」とする営業上のメリットは、全くない。
前商標権者は、営業活動で行っている営利法人がそのウェブサイトでその取り扱う商品について虚偽の陳述をした事例を見聞きしたことはない。
そして、乙第1号証のウェブサイトで「2010年6月」に刊行された「Gale」を付した書籍を販売、広告しているセンゲージラーニング株式会社は、CENGAGE LEARNINGの100%子会社だから、CENGAGE LEARNINGの一部分であった前商標権者から黙示の使用許諾を受けていたことは明らかである。また、黙示の使用許諾を受けていない場合には、前商標権者は、センゲージラーニング株式会社を通じて「2010年6月」に刊行された「Gale」を付した書籍を販売、広告していたといえる。
3 上申書等で主張する本件商標の使用について
(1)通常使用権者の許諾
本件商標の前商標権者は、CLasiaとの取引条件契約締結(乙第5号証)と同時に、CENGAGE LEARNINGグループの一員としてCLasiaに、同社の行う事業がスムーズにいくように、本件商標について、通常使用権を同社の子会社に再使用許諾できる権限を付与した使用許諾を行った。
そして、CLasiaは、上記取引条件契約締結と同時にその子会社であるセンゲージラーニング株式会社に本件商標について、通常使用権を許諾した。
上記事実を立証するために、センゲージ ラーニング インコーポレイテッド(以下「現商標権者」という。)の法人証明書及びCLasiaの宣誓書(乙第9号証及び乙第10号証)を提出する。
前商標権者のザ ゲイル グループ インコーポレーテッドは、2013年2月28日に現商標権者に吸収合併されたので、現時点では、同社が証明せざるを得ない。現商標権者は、本件商標の商標権の一般承継による移転申請を近日中に行う。
商標法上、通常使用権は、商標権者の一方的な意思表示により発生するものであり、かつ、その意志表示は、口頭によってされたものも有効なものであるから、CLasia及びセンゲージラーニング株式会社の使用は、商標法上、通常使用権者の使用となる。
(2)CLasiaの使用について
丸善株式会社の輸入部は、2010年5月20日にCLasiaに対して、「UXL Encyclopedia of Diseases and Disorders 5Volume」の注文を行った。
この注文にあたり、上記書籍は、航空貨物で「“K”LINE LOGISTICS(U.S.A)INC」に送るように指示があり、CLasiaは、2010年6月10日に埼玉県桶川市在の丸善株式会社を販売先とし、「丸善株式会社/“K”LINE LOGISTICS(U.S.A)INC.気付」で同書籍を送った。「“K”LINE LOGISTICS(U.S.A)」は、輸送業務を行っているケイラインロジスティック株式会社の米国法人であり、また、トーハンとは、出版物の卸売を主な業務としている。
以上の事実を立証するために、丸善株式会社の輸入部の注文書の写し(乙第11号証)、CLasiaのインボイス(請求書)の写し(乙第12号証)、「“K”LINE LOGISTICS(U.S.A)」(乙第14号証)及びトーハンのウェブサイトの紙出力(乙第15号証)を提出する。
注文書及びインボイスにおける丸善株式会社の輸入部の発注番号「8866352」及びISBN「9781414430652」が共通していることから、丸善株式会社の輸入部の注文を受けて、CLasiaが書籍「UXL Encyclopedia of Diseases and Disorders 5Volume」を販売したことは明らかであり、本件商標が該書籍の表紙及び裏表紙に付されている(乙第13号証)。
また、乙第6号証の2010年6月4日付けのインボイスで記載されている書籍も丸善株式会社の輸入部から、2010年5月18日にCLasiaに対して注文され、同様なルートで丸善株式会社に譲渡又は引渡しがされている事実を立証するために、丸善株式会社の輸入部の注文書の写し(乙第16号証)を提出するとともに乙第6号証のインボイスを再度乙第17号証として提出し、この書籍に本件商標が付されていることを立証するために、当該書籍の背表紙の写し(乙第18号証)を提出する。
ほかに、丸善株式会社の輸入部の注文書の写し(乙第19号証及び乙第22号証)を提出し、CLasiaのインボイス(乙第20号証、乙第23号証、乙第26号証及び乙第29号証)を提出し、当該書籍の表紙又は裏表紙の写し(乙第21号証、乙第24号証、乙第27号証及び乙第30号証)を提出する。
(3)丸善株式会社が受領した旨の証明
乙第12号証、乙第17号証(乙第6号証)、乙第20号証、乙第23号証、乙第26号証及び乙第29号証のインボイスの書籍が埼玉県桶川市に所在する「丸善株式会社学術情報ソリューション事業部商品センター」で受領されたことを証するために、同商品センターの担当者の証明書(乙第31号証)を提出する。
埼玉県桶川市に所在する丸善株式会社が同社の一部門であることを示すため、当該会社のホームページの紙出力(乙第32号証)を提出する。
“K”LINE LOGISTICS(U.S.A)INCが書籍を丸善株式会社に送ったことを立証するために、同社の航空貨物運送状の写し(乙第35号証)を追加する。
この航空貨物運送状のShipper(荷送人)は、Maruzen International Co.,Ltdであり、Consignee(荷受人)は、該書籍の注文者である丸善株式会社の書籍輸入部である。また、荷送人であるMaruzen International Co.,Ltdは、丸善株式会社の米国子会社である(乙第36号証)。航空貨物運送状において、乙第20号証のインボイス番号「S0553389」が記載されている。
なお、Maruzen International Co.,Ltdは、米国で購入した書籍の取りまとめをしており、これら書籍を同社が受け取ってから日本に送るよりも、手間を省くために実際は、「“K”LINE LOGISTICS(U.S.A)INC気付Maruzen Co.,LTD」として直接米国の輸送業者の元に送っていた。
(4)乙第18号証の書籍について
乙第18号証の書籍のISBNは、「978-1-4144-3130-7」であって、これは、乙第17号証のインボイスの「GALE CONTXTL ENCY AM LIT 4V」に付されている。これを立証するために乙第33号証を提出する。
該書籍の発行者は、その背表紙に表示されている「CENGAGE LAEARNING (INC.)」であって、現商標権者は、前商標権者から使用許諾を受けていたことを証する宣誓書(乙第34号証)を提出する。
4 まとめ
以上からすると、本件商標が本件審判の取消請求に係る商品について予告登録前3年以内に被請求人によって使用されていたことが客観的に証明されたから、本件商標の登録は、取消を免れる。

第4 当審の判断
1 乙号証について
本件商標の使用について、被請求人(前商標権者及び現商標権者)の主張及び提出に係る証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)乙第4号証は、2010年5月11日付けのGALE CENGAGE LEARNINGの表示のあるCLasia宛てのインボイスの写しであり、このインボイスには、「The Gale Group inc. is now part of CENGAGE Learning. The company's legal/taxpayer name and number remain the same.」の記載、また、直接の連絡先(DIRECT ALL CORRESPONDENCE TO)として「Gale 27500 Drake Rd. Farmington Hills, MI 48331」と前商標権者の住所と実質的に同一の住所が記載されている。
(2)乙第9号証は、2013年4月15日付けの現商標権者の副社長が署名をしている現商標権者の法人証明書であり、「1.2009年3月11日、センゲージ並びにデラウェア州法人であり、アメリカ合衆国 48331 ミシガン州 ファーミントン・ヒルズ ドレイク・ロード 27500に所在のザ ゲイル グループ インコーポレイテッド(以下「ゲイル」という。)は、シンガポール国法の下で設立され、・・・所在のCENGAGE LEARNING ASIA PTE LTD・・・に、アジアにおいてセンゲージ及びゲイルの商品、多様なセンゲージ及びゲイルの商品を販売し、これら商品に関連するセンゲージ及びゲイルの商標を使用できるライセンスを許諾した。」との記載がある(なお、証明書中「センゲージ」は、現商標権者を示すものである。)。
(3)乙第31号証は、平成25年8月13日付けの埼玉県桶川市上日出谷原新田に所在の丸善株式会社学術情報ソリューション事業部商品センター担当者のインボイス記載の書籍の受領に関する証明書であり、インボイス番号に対応する受領年月日が記載されている表が示され、例えば、インボイス番号の「S0433470」が受領年月日として「6/14/2010」との記載がある。
(4)乙第3号証は、丸善株式会社のホームページ中の会社案内の紙出力であり、「会社概要」には、明治2(1869)年1月1日創業、内外図書・雑誌、文具事務用品などの販売業及び輸出入業を事業内容とする記載があり、乙第32号証は、丸善株式会社の「営業拠点一覧」の見出しの下、「教育・学術事業」として「学術情報ソリューション事業部」があり、その中に「流通管理部」が「埼玉県桶川市上日出谷原新田」に所在している。
(5)乙第33号証は、CLasiaから被請求人代理人に宛てたEメールの写しであり、そこには、「gale contextual ENCYCLOPEDIA of AMERIC
AN LITERATURE」の書籍の表紙及びISBNが「978-1-4144-3130-7」との記載がある。
(6)乙第16号証は、丸善株式会社の輸入部の注文書の写しであり、丸善株式会社の輸入部から、2010年5月18日にCLasiaに対する注文として、発注番号「8864410」の記載、「978-1-4144-3130-7」及び「Gale Contextual Encyclopedia of Americ」の記載がある。
(7)乙第17号証(乙第6号証と同一である。)は、CLasiaから丸善株式会社宛てのインボイスであり、そこには、「Invoice No:S0433470」の記載、「Invoice Date:6/04/10」の記載、「ISBN」の欄には、「9781414431307」の記載、「Title」の欄には、「GALE CONTXTL ENCY AM LIT 4V」との記載がある。
(8)乙第18号証には、「gale contextual ENCYCLOPEDIA of AMERICAN LITERATURE」の記載のある「volume1ないし4」の書籍の背表紙の写しであり、背表紙の最上段に「GALE」の記載、同最下段に「GALE/CENGAGE learning」の記載がある。
(9)乙第34号証は、2013年8月21日付けのコネチカット州サンフォード在の現商標権者のアシスタントセクレタリー(ビンセント ソメッラ)の署名のある宣誓書であり、「ザ ゲイル グループ インコーポレイテッド(以下「使用許諾者」という。)から2013年2月28日にされた合併により権利を承継したセンゲージ ラーニング インコーポレイテッドのアシスタントセクレタリーのビンセント ソメッラは、日本における商標「GALE」(以下「商標」という。)の法律上の権利者であった使用許諾者が、2009年3月11日に、センゲージ ラーニング グループのメンバーとして、日本を含めて全世界で商標を使用できる、子会社へのサブライセンスを許諾できる権限を認めた使用権を、アメリカ合衆国コネチカット州 06902 サンフォード・・・に主たる事務所を有し、デラウェア州の法により設立されたセンゲージ ラーニング インコーポレイテッドに許諾したことを宣誓します。」との記載がある。
2 判断
(1)本件商標の使用者
本件商標の前商標権者は、2009年3月11日に、センゲージ ラーニング グループのメンバーとして、日本を含めて全世界で商標「GALE」を使用できる、子会社へのサブライセンスを許諾できる権限を認めた使用権を、アメリカ合衆国コネチカット州 06902 サンフォードに主たる事務所を有する現商標権者に許諾したといえる(乙第34号証)。
また、前商標権者及び現商標権者は、CLasiaに対し、アジアにおいて前商標権者及び現商標権者の商品を販売し、これら商品に関連する商標の使用のライセンスを2009年3月11日に許諾したものといえる(乙第9号証)。
(2)本件商標の使用について
丸善株式会社は、書籍の販売などを業とする会社であって、「学術情報ソリューション事業部」を有し、「埼玉県桶川市」に所在する「流通管理部」を有する(乙第32号証)。
2010年6月4日付けのCLasiaから丸善株式会社宛てのインボイス(No:S0433470)は、「ISBN」が「97814144431307」であって、「Title」が「GALE CONTXTL ENCY AM LIT 4V」とする書籍に関するものと認められ(乙第17号証)、該書籍は、丸善株式会社が日本へ輸入するために2010年5月18日にCLasiaに注文し、2010年6月14日に埼玉県桶川市に所在する丸善部式会社学術ソリューション事業部にて受領されている(乙第31号証)。
また、「ISBN」が「97814144431307」の書籍は、「gale contextual ENCYCLOPEDIA of AMERICAN LITERATURE」を表題とし、その背表紙の最上段には、「GALE」との記載があり、最下段に「GALE/CENGAGE learning」の記載がある(乙第18号証)。
そして、該背表紙の最上段の「GALE」と本件商標とは、文字の外観及び称呼において共通し、両者は、社会通念上同一の商標である。
また、乙第18号証の書籍は、最下段に記載されている「GALE/CENGAGE learning」の部分から、前商標権者の発行に係る書籍といい得る。
そうすると、乙第18号証の書籍は、前商標権者によって本件商標と社会通念上同一の商標を付され、これが日本に輸入されていることが認められるから、本件商標の指定商品中、第16類「テキストブック・参考書・学術論文・雑誌及びその他の印刷物」中、「書籍」について本件商標を使用したものといえる。
3 請求人の主張について
請求人は、被請求人が日本国外において、第三者である丸善株式会社に商品の譲渡が完了しているものであり、書籍を日本に輸入したのも、日本国内において販売(譲渡)したのも、被請求人と法的に無関係な第三者であるから、被請求人が本件商標の使用をしているとはいえない旨主張している。
しかしながら、商標法2条3項が同法上の標章の「使用」の定義を規定した趣旨は、商品に標章が表示される場合において、それが何人の使用と認められるものであるかについては社会通念にゆだねるとともに、同法の目的との関係を考慮し、特に商品の識別標識として機能すると認められる事実についてのみ、これを「使用」であると定義することにより、同法上の「使用」としての法的効果を認めるべき行為の範囲を限定したものであると解される。そして、商標権者等が商品に付した商標は、その商品が転々流通した後においても、当該商標に手が加えられない限り、社会通念上は、当初、商品に商標を付した者による商標の使用であると解されるから、その商品が実際に何人によって所有、占有されているとを問わず、同法2条3項に該当する行為が行われる限り、その行為は、当初、商品に商標を付した者による商標の「使用」行為であるというべきである。これを本件のような我が国で商標登録を有する外国法人との関係についてみれば、商標権は、国ごとに出願及び登録を経て権利として認められるものであり、属地主義の原則に支配され、その効力は当該国の領域内においてのみ認められるところから、当該外国法人が商標を付した商品が我が国外において流通している限りは、我が国の商標法の効力は及ばない結果、我が国の商標法上の「使用」として認めることはできないものの、その商品がいったん日本に輸入された場合には、当該輸入行為をとらえ、当該外国法人による同法2条3項2号にいう「商品に標章を付したものを輸入する行為」に当たる「使用」行為として、同法上の「使用」としての法的効果を認めるのが相当である。(東京高裁平成14年(行ケ)第346号同15年7月14日判決参照)
そうとすれば、本件においては、前記2(2)のとおり、本件商標の商標権者が本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付した商品について、本件審判の請求の予告登録日前3年以内である時期に、取引先の「丸善株式会社」がこれを輸入したとの事実を認定できるから、該輸入行為をもって、商標法第2条第3項第2号にいう「商品に標章を付したものを輸入する行為」に当たる「使用」行為として、同法第50条に規定する前商標権者による本件商標の「使用」があったものと認めることができるというべきである。4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において前商標権者によって本件審判の請求に係る指定商品中、「書籍」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと認めることができる。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2013-10-31 
結審通知日 2013-11-05 
審決日 2013-11-26 
出願番号 商願2008-47331(T2008-47331) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X16)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 手塚 義明
寺光 幸子
登録日 2009-01-16 
登録番号 商標登録第5197011号(T5197011) 
商標の称呼 ゲール、ゲイル 
代理人 山崎 和香子 
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 
代理人 青木 篤 
代理人 齋藤 宗也 
代理人 田島 壽 

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