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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2013900055 審決 商標

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審決分類 審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) W3543
管理番号 1285662 
異議申立番号 異議2012-900346 
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-04-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2012-11-30 
確定日 2014-03-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第5517611号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5517611号商標の指定役務中、第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」についての商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5517611号商標(以下「本件商標」という。)は、「エクストラコールド」の文字を標準文字で表してなり、平成24年3月2日に登録出願、第11類、第14類、第16類、第18類、第21類、第24類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品並びに第35類「広告業,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,輸出入に関する事務の代理又は代行,建築物における来訪者の受付及び案内,自動販売機の貸与,飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用食器乾燥機の貸与,業務用食器洗浄機の貸与,加熱器の貸与,食器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,おしぼりの貸与,タオルの貸与」を指定商品及び指定役務として、平成24年8月31日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の指定商品中、第35類「ビールの小売り又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」について、本件商標の登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第132号証(ただし、甲第104号証ないし甲第131号証は欠号である。なお、括弧内の証拠番号については、以下「甲104ないし甲131」のように省略する。)を提出した。
1 本件商標について
本件商標は、「エクストラコールド」の文字を標準文字で表してなるところ、「エクストラ」が「EXTRA」の表音であること、「コールド」が「COLD」の表音であることは明らかであり、その各単語の語義から「特別に冷たい」という意味合いを有する複合語として一般に認識されるものである。
2 「EXTRA COLD」「エクストラコールド」の使用状況について
(1)申立人は、現在、世界第3位のシェアを誇る世界的ビール会社であるところ、広告物、「EXTRA COLD」説明用資料、商品カタログ、営業ツール説明資料等に通常の温度(5度?7度)より低い温度(0度以下)であること、すなわち「特別に冷たい」ことを示すために、「EXTRA COLD」の語を使用したビールを、世界140カ国85,000店舗にて、販売及び提供を行っている(甲8ないし甲32)。
日本において「エクストラコールド」の語を使用したビールの販売及び提供が開始されるにあたって開催された2008年5月8日付けの「日本初上陸(Heineken Extra Cold)体験イベント」をはじめとして、多数の新聞、雑誌、テレビ、インターネット等で取り上げられている(甲36ないし甲65)。
(2)ギネス社(Guinness & Co)は、世界150カ国以上で愛用されている世界第1位のスタウトビールを販売するところ、そのスタウトビールをのうち、スーパークーラーを通じてサーブされる商品をエクストラ・コールド・ドラフト」と称して展開し、ボールジョッキー等に「EXTRA COLD」が使用されこと、その他インターネットにおいて、ギネス社の「Extra Cold」「エクストラコールド」について記載した記事が多数存在する(甲66ないし甲88)。
(3)カールスバーグ(Carlsberg)社は、現在、世界第4位のシェアを誇る世界的ビール会社であり、標準的なラガービールよりも数度冷やした状態で飲めるビールとして「Carlsberg Export」を販売しており、すごく冷えた状態を「Extra Cold」と表現するとともに、特別に冷えたビールの提供にあたって「Extra Cold」を使用していること、その他インターネットにおいて、カールスバーグ社の「Extra Cold」「エクストラコールド」について記載した記事が多数存在する(甲91ないし甲95)。
(4)クアーズ社は、アメリカの世界的ビール会社であるが、2002年頃から摂氏2度に冷やされた「Carling Extra Cold」を販売していること、その他、クアーズ社の「Carling Extra Cold」について記載した記事が存在する(甲96ないし甲101)。
(5)以上によれば、申立人及び他の世界的ビールメーカーが販売し、提供する「ビールにおいて、「EXTRA COLD」の語が「格別に冷たい」の意味合いを有する語として広く使用されていた事実は明らかである。また、「エクストラコールド」の語が「EXTRACOLD」の表音であることも、ビール取引者、需要者であれば、容易に理解し得るものである。
3 まとめ
本願商標は、「エクストラコールド」の文字からなるところ、上記のとおり「特別に冷たい」という意味合いを有する複合語として一般に認識されるものであるから、これをその指定役務中、第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」について使用する際には、商品の特性を表示記述するものであって、自他役務の識別力を発揮するとみることはできないとものというのが相当である。
よって、本件商標は、その指定役務中、第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」について、商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。

第3 取消理由通知
当審において、平成25年5月22日付けで、商標権者に対し通知した取消理由は、次のとおりである。
1 「extra cold」及びその片仮名表記である「エクストラ コールド」の語について
(1)申立人の提出した英和辞典(甲2ないし甲4、甲6)によれば、「extra」の英単語は、形容詞として、第一義的には、「余分の、臨時の、特別の」などを意味する語として掲載され、また、副詞として、「余分に、特別に」などを意味する語として掲載されていること、「cold」の英単語は、形容詞として、「寒い、冷たい、冷やした」などを意味する語として掲載されていることから、これら2語を結合した「extra cold」の語からは、全体として、「通常とは違って寒い又は冷たい」、あるいは、「特別に寒い又は冷たい」なる意味合いを表したと理解されるとみるのが相当である。
(2)「extra cold」及びその片仮名表記である「エクストラ コールド」の語が、本件商標の登録査定時(平成24年7月3日)において、ビールの小売等の業務において行われる顧客に対する便益の提供及びビールの提供等の分野において、「格別に冷たいビール」等の意味合いをもって、役務の質を表示する語として使用されていたか否かについて検討する。
ア 申立人の提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)申立人の製造・販売に係る「Heineken Extra Cold/ハイネケンエクストラコールド」について
a 申立人は、1863年に設立されたオランダのビール醸造会社であり、2010年(平成22年)2月8日に発表した調査会社プラトー・ロジックの調査によると、世界のビール市場シェアにおいて第3位であって(甲8ないし甲10)、申立人の製造・販売に係るビールの日本への販売事業は、キリンビール株式会社との合弁会社であるハイネケン・キリン株式会社(2010年(平成22年)3月にハイネケンジャパン株式会社から商号変更)を通じて展開されている(甲8)。
b 申立人は、2005年(平成17年)からオランダにおいて、一般的な樽詰生ビールの温度(5°C?7°C)よりも低い“-2°C?0°Cまで冷えた”温度の生ビールについて、「Heineken Extra Cold」と表示して販売(提供)を開始した(甲22)。上記商品は、我が国では、2008年(平成20年)5月に、飲食店において顧客に提供されるビールとして販売が開始され、さらに、2011年(平成23年)4月には、同商品の瓶詰めビールも、飲食店において顧客に提供されるビールとして販売が開始された(甲12、甲17、甲22、甲25等)。
申立人は、これらの商品について、「0°C以下で味わうハイネケン」(甲11、甲13等)、「0°C以下で味わう、ハイネケン。Heineken Extra Coldが飲めるお店はこちら」(甲14)、「0°C以下、飲みやすいプレミアミテイスト/Heineken Extra Cold」(甲15、甲16、甲17等)、「特別に開発されたボトルクーラーを使い、氷点下直前まで冷やされた、ハイネケン グリーンボトル。/Heineken Extra Cold Bottle」(甲19)、「ハイネケン エクストラコールドとは/一般的な樽詰生ビールの温度(5°C?7°C)よりも低い温度でご提供するハイネケン樽詰生のことです。氷のついた専用ドラフトタワーからの抽出直後の温度は-2°C?0°Cまで冷えています。ハイネケンでは通常のビールより最低5°C以上温度が低い状態でのご提供をしています。」(甲22?甲24)などとチラシや説明資料等をもって広告をした。
c 前記b.のとおり、申立人は、2008年(平成20年)5月に、我が国において、樽詰め生ビール「Heineken Extra Cold」の発売をしたが、その発売の前後には、例えば、2008年5月10日付け東京新聞(甲37)において、「0度以下のビールどうぞ/ハイネケン12日販売へ」の見出しの下、「ハイネケンジャパンは9日、零度以下に冷やした生ビールを東京・六本木ヒルズの飲食店で・・12日から売り出す、と発表した。『ハイネケン エクストラ コールド』と呼ばれるビールで、氷で覆われたサーバーから注がれる。世界100カ国余りで飲まれているが、日本での発売は初めて。一般的な生ビールの温度は6度前後だが、零度から零下2度の、凍る寸前の低温で提供する。」と掲載された。その他、同日付けのSANKEI EXPRESS(甲38)、上毛新聞(甲39)、下野新聞(甲40)、高知新聞(甲41)、熊本日日新聞(甲42)、宮崎日日新聞(甲43)、2008年5月12日付け南日本新聞(甲44)、2008年5月17日付け産経新聞(東京:甲45)、同日付けの産経新聞(大阪:甲46)、2008年6月13日付け食糧醸界新聞(甲47)、同日付けの産経新聞(大阪:甲48)、日刊スポーツ(大阪:甲49)、日刊スポーツ(名古屋:甲50)、2008年6月14日付け大阪日日新聞(大阪:甲51)、2008年5月16日付け及び同年5月23日付け日経MJ(東京:甲52、甲53)、2008年6月16日付けBigin(世界文化社発行:甲54)、2008年6月17日付けTOKYO1週間(講談社発行:甲55)にも同様の記事が掲載された。
また、当該商品は、「ワールドビジネスサテライト」(2008年5月16日放映)、「スーパーニュース」(2008年5月30日放映)、「ニューススクランブル」(2008年6月27日放映)といったテレビ放送を通じても一般の消費者に紹介がされた(甲56ないし甲58)。
さらに、当該商品は、インターネット上でも、例えば、2010年(平成22年)3月15日に掲載の「日経ビジネス 時事深層」(甲59)には、「氷点下で飲むビール/エクストラコールドビール(ハイネケン・キリン、アサヒビール)」の見出しの下、「・・同じビールでも、そんなひと味違う体験をハイネケン・キリンとアサヒビールが、飲食店などを通じて提供し始めている。それが『エクストラコールドビール』。通常のビールは温度が4?6度であるが、エクストラコールドビールは格別に冷たいという名の通り、氷点下の温度帯で飲めるものだ。・・先行したのはハイネケン・キリンで、国内開始は2008年5月。既に130店舗で提供する。一方、アサヒビールは2008年秋頃からエクストラコールドビールの開発を開始。2009年9月から試験的に一部店舗で提供し始め、2010年3月1日から本格的に取扱店舗の拡大に乗り出した。エクストラコールドビールは新たに開発したビールではない。普段口にするビールを、通常より冷やしたものだ。・・」と掲載されたのをはじめ、2010年(平成22年)6月25日に掲載の「東急本店 GREEN GARDEN@渋谷」(甲60)には、「ここのビアガーデンの今年のウリは『ハイネケン エクストラ コールド』600円が飲めること。エクストラコールドとは、通常のビールが5?7°Cでサーブされているところ、それを『0°C以下』で味わえるようにしているということなのです。」などのように、インターネット上で、申立人の製造販売に係る「ハイネケン・エクストラ・コールド」として紹介された(甲61ないし甲65)。
d 我が国における「ハイネケンエクストラコールド(Heineken Extra Cold)」の導入店舗数は、首都圏を中心に、2008年(平成20年)に52店舗、2009年(平成21年)に92店舗、2010年(平成22年)に85店舗、2011年(平成23年)に9店舗(これらのうち、閉店又は撤去した店舗数は31店舗)の導入があり、2011年(平成23年)の時点において、総計で200店舗以上あった(甲31、甲33)。
(イ)申立人以外のビール醸造会社の製造・販売する「Extra Cold」、「エクストラコールド」について
a ギネス社(甲66ないし甲88)
ギネス社は、黒スタウトビールを生産するアイルランドのビール醸造会社として著名である(甲66、甲67等)ところ、その主要産品に、小樽入りで売られ、スーパークーラーを通してサーブされる「エクストラ・コールド・ドラフト」が含まれることが認められ(甲66)、例えば、「ギネスビールとは」(甲69)には、「1990年代前半、ギネス社はギネス・エクストラ・コールドGuinness Extra Coldという、2、3度で飲む商品も開発した。今や、これもすっかり定着し、少なくとも作者が見た限りでは、アイルランド国内のどこのパブに行ってもたいていは置いてある。」と記載され、「おいしいSNAP」(2012年(平成24年)7月23日:甲70)には、「ハイネケンが提供する『Heineken Extra Cold』もまた氷点下に冷やして楽しむビール。そもそもヨーロッパでは1990年代からこの『キンキン』に冷やして飲むビールが親しまれていたらしく、ギネスビールの『Guinness Extra Cold』とこの『Heineken Extra Cold』が、超冷却ビールの先駆けといえる存在なのだ。」と記載されている。また、「外資系 戦略コンサルタントの着眼点」(2010(平成22年)8月16日:甲72)には、「エクストラコールドですが、ビールの凝固点がマイナス3度であることを活かし、ゼロ度?マイナス2度に冷やしたビールです。・・もともとエクストラコールドは欧州のパブから2002年頃に展開されたビールで、私がイギリスにいた当時も、ギネスやカールスバーグのエクストラコールドをよく飲んでいました。日本では2年ほど前に六本木で導入されたましたが、今年になってアサヒのスーパードライがエクストラコールドを展開し始め、火がついたようです。」と記載され、「あんだんご」(2010(平成22年)5月15日:甲75)には、「ビールを氷点下まで冷やしたextracoldな状態で飲むと、ビールの苦みが消えて口当たりが軽くなり、スッキリと飲める!・・そもそもこのエクストラコールドというのは、ヨーロッパでギネスビールがはじめた、新しいビールの飲み方のスタイルなのです。・・そこで今年からアサヒビールでは、このエキストラコールドな状態でスーパードライを飲んでもらいたいということで、『氷点下のスーパードライ・・エクストラコールド』をプッシュします。」と記載されている。さらに、「Poohotosama’s Joke Diary/英語(British)と英国に関するブログです。」(2004(平成16年)5月21日:甲79)には、「こちらにきてから、ギネス(黒ビールの代名詞)が好きになりました。・・もともとギネスは、冷やして飲まないものだったそうです(温度がある程度高い方が味が活性化されるという理由で)が、いまはギネス・エキストラコールドと言うのがあり、大抵それを飲みます。初めはキンキンに冷えたビールののど越しを楽しめ、・・」と、また、「酔いどれ夫婦のウチ飲みコレクション/アサヒ エクストラコールドセミナー」(2011(平成23年)5月28日:甲82)には、「新しくなった梅田の富国生命ビル・・エクストラゴールドは、元々ビール離れしている若者にもっとビールを飲んで貰うためにギネスビールが始めた飲み方なんだそうです。通常のビールの提供温度が4°C?6°Cなのに対し、エクストラコールドのビールの提供温度は0°C?-2°C!ビールの氷点が-3°Cらしいので、ほんとうに凍るギリギリの温度ということになります。」と記載されている。また、「Machrihanish Bar 金沢」(2007(平成19年)8月24日:甲87)には、「日本初!?エクストラ コールド ギネス/マクリハニッシュ(金沢)では、夏期間、冷たーい生ギネスを販売中です!」などと記載され、さらに、「Shot Bar Cheers blog/温度の御話:超、冷たい」(2010(平成22年)6月5日:甲88)には、「最近、徐々に流行りつつあるのが『キンキンに冷えた』ビール。・・先鞭をつけたのは、世界一有名な黒ビールを作るギネス社。ぬるいのを飲むのが旨い!とされていたギネスが通常よりも冷たい『ギネス エクストラコールド=超冷たい』を開発。これが若者を中心にウケてギネスはヨーロッパにおいてシェアを伸ばしました。最近になってこの流れは加速している模様。オランダの大手ハイネケンが、なんと氷点下近くまで冷えた樽生ビールを投入。日本でも飲めます。国産メーカーではアサヒがやはり0°C付近まで冷やした、スーパードライのエクストラコールドを売り出しています。」などと記載されている。
b カールスバーグ社(甲89ないし甲95)
カールスバーグ社は、1847年に設立されたデンマークのビール醸造会社である(甲89)ところ、同社の「Carlsberg Extra Cold」に関するインターネット記事のうち、「日本初上陸」として、第1号店のレストランについての広告がされ(2件のうち1件は、2011年(平成23年)6月28日付けで、他の1件は掲載日が不明。)、当該商品の紹介には、「その極限まで研ぎ澄まされた喉ごしを是非ともお楽しみください。」(甲93)、「氷点下-2°Cで抽出されるシャープな切れ味の氷点下ビール」(甲94)と記載されている。その他、香港やイギリスなどにおける「Carlsberg Extra Cold」に関するインターネット記事において、「香港のレストランで飲んだカールスバーグ。『エクストラ・コールド』と書いてあります。確かにアサヒの氷点下のビールに近いかも。」と記載され、(甲92)、さらに、「それにここにはカールスバーグのextra coldがあるのよ♪ビールは喉越し&冷たさ重視の私には、extra coldの冷たさがたまりませんね?」の記載がある(甲95)。
c クアーズ社(甲96ないし甲101)
クアーズ社は、1873年に設立されたアメリカのビール醸造会社である(甲96)ところ、「RAILWAY TAVERN」(甲97)には、同社製の「Caling Extra Cold」は、摂氏2°Cに冷やされたビールで、2002年(平成14年)に発売されたことが記載され、その他のインターネット記事は、外国における当該商品に関するものがほとんどであるが、日本におけるインターネット記事(甲101)には、「このカーリングの缶には、抽象化されたライオンのマークが描かれているんですが、温度によって色が変わるという芸の細かさ。よく冷えた状態だと、マークが青くなります。『ENJOY EXTRA COLD』(意訳:せいぜいしっかり冷やして飲れや)って書いてあるくらいだから、ライオンをしっかり青くしてから飲むわけですね。」と記載されている。
d なお、甲第102号証は、上記(ア)及び(イ)における各ビール醸造会社や他の企業が販売していると推認される「エクストラコールド」についての外国における広告とみられる。
イ 前記アで認定した事実によれば、一般的に、飲むのに適したビールの温度は、5度前後であるといわれているところ、申立人は、2005年(平成17年)に、オランダにおいて、0°C以下に冷やして飲む樽詰めの生ビールである「Heineken Extra Cold」の販売(提供)を開始した。その後、申立人は、2008年(平成20年)5月に、当該商品を我が国の飲食店向けに、「Heineken Extra Cold/ハイネケンエクストラコールド」等と表示して販売(提供)を開始し、さらに、2011年(平成23年)4月には、0°C以下に冷やして飲む瓶詰めビールを飲食店向けに販売(提供)を開始した。当該ビールについて使用される「Extra Cold/エクストラコールド」の語が「0°C以下に冷やした格別に冷たいビール」などを意味するものであることは、新聞やテレビ、あるいはインターネット等で盛んに紹介された。そして、2011年(平成23年)の時点において、これらのビールは、首都圏を中心に200店舗以上の店舗に導入されていた。
もともと、ビールの温度を通常のビールの温度よりさらに低くして飲むスタイルは、1990年代に、ギネス社が若者向けに開発した商品である「Guinness Extra Cold」を販売(提供)したのが始まりであったことをうかがうことができ、その後、ヨーロッパでは、ギネス社をはじめ、申立人、カールスバーグ社、クアーズ社などが通常のビールの温度より低い温度のビールを、自社のハウスマークないし代表的マークに、「Extra Cold」ないし「EXTRA COLD」の語を結合した商標を付して販売(提供)を継続していた。
一方、我が国においては、申立人の「Heineken Extra Cold/ハイネケンエクストラコールド」の販売開始より遅れて、アサヒビール株式会社が、通常のビールの温度より低い温度のビールについて、「アサヒ エクストラコールド」などと表示して、2010年(平成22年)3月頃から本格的に販売(提供)を開始した。その他、ギネス社の「Guinness Extra Cold」、カールスバーグ社の「Carlsberg Extra Cold」などが日本の飲食店に導入されていたとみられるインターネット情報が存在するが、その数は決して多いものとはいえない。
以上によると、通常のビールの温度よりさらに低くしたビールの提供について、「Extra Cold/エクストラコールド」と表示して、我が国に最初に導入したのは、申立人であったことがうかがわれ、本件商標の登録査定(平成24年7月3日)の時点における我が国において、通常のビールの温度よりさらに低くしたビールの提供について、自社のハウスマークないし代表的マークに、「Extra Cold/エクストラコールド」との表示を使用していたのは、主として申立人とアサヒビール株式会社であったとみるのが相当である。
2 本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである(東京高等裁判所平成12年(行ケ)第76号、平成12年9月4日判決参照)。
(2)本件商標は、「エクストラコールド」の文字を標準文字で書してなるものであるところ、該文字は、「extra」の片仮名表記である「エクストラ」の語と、「cold」の片仮名表記である「コールド」の語を結合したものと容易に理解され得るものである。
そして、前記1(1)認定のとおり、「extra cold」の語は、全体として、「通常とは違って寒い又は冷たい」、あるいは、「特別に寒い又は冷たい」なる意味合いを表したと理解されるとみることができる。
してみると、本件商標は、構成する文字それ自体から、「通常とは違って寒い又は冷たい」、あるいは、「特別に寒い又は冷たい」なる意味合いを表したと理解されるものといえる。
(3)前記1(2)イによれば、「Extra Cold」又は「エクストラコールド」の語は、本件商標の登録査定日(平成24年7月3日)において、通常のビールの温度よりさらに低くしたビール、すなわち、「格別に冷たいビール」の意味合いをもって、我が国のビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供及びビールの提供等の分野で、役務の質を表示するものとして多数の事業者により使用されていなかったとしても、少なくとも申立人とアサヒビール株式会社とが、本件商標の登録査定前に、それぞれ通常のビールの温度よりさらに低くしたビールについて、自社のハウスマークないし代表的マークに、「Extra Cold/エクストラコールド」との表示を使用していた事実が存在し、特に申立人の「Heineken Extra Cold/ハイネケンエクストラコールド」における「Extra Cold/エクストラコールド」の語が「0°C以下に冷やした格別に冷たいビール」などを意味するものとして、新聞やテレビ等で盛んに紹介され、その意味が取引者及び需要者の間に浸透していたと推認されること、イギリス等のヨーロッパにおいては、本件商標の登録出願前には既に、「Extra Cold」(EXTRA COLD)の語が、「格別に冷たいビール」の意味合いをもって、「ビールの提供」の質を表示するものとして普通に使用されている事実が存在していたこと、世界各地の様々な情報が我が国においても極めて速く伝達される状況にあることに加え、観光や仕事などでヨーロッパやアメリカ等を訪れる我が国の国民が増大している昨今の状況において、当該地で、通常のビールよりさらに冷やして飲むビールについて「Extra Cold」等の語が使用されている場面に触れる機会も決して少なくないと推認されることなどを総合し、本件商標それ自体から生ずる意味合いを併せて考慮すると、本件商標をその指定役務中の「ビールの提供」についてはもとより、「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について使用するときは、その取引者、需要者は、「特別に冷たいビール」に関連する役務の提供のごとき意味合いを表したと直ちに認識するとみるのが相当である。
そうすると、本件商標は、これをその指定役務中の第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」について使用するときは、その取引者、需要者をして、「通常のビールの温度よりさらに冷やしたビール、すなわち、格別に冷たいビールについての役務の提供」の意味合いをもって、役務の質を表示したものと認識するにとどまるものというべきであるから、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、その登録査定時において、その指定役務中の第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」について、商標法第3条第1項第3号に該当する商標であったというべきである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定役務中の第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」について、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものと認める。

第4 商標権者の意見
商標権者は、前記第3の取消理由通知に対し、平成25年7月8日付けで意見書を提出し、その要旨を以下のとおり述べ、証拠方法として、参考資料1ないし115(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第3条第1項第3号の判断について
(1)本願商標は、「エクストラコールド」の片仮名からなり、「エクストラコールド」は直ちに特定の意味合いを有する既成語として辞書等に掲載されている語ではなく、また、飲食料品を取り扱う分野において、「エクストラコールド(EXTRA COLD)」の語が普通に使用されているという事実はない。
そうとすれば、本件商標は、創作された一種の造語よりなる商標であるとみるのが相当であり、「何人も使用する必要がある」標章ではないことは明らかである。
また、「エクストラコールド」の語は、本件商標権者と本件商標権者のグループ会社であるアサヒビール株式会社が使用している以外では、申立人による使用がわずかにみられるだけであり、“我が国において”一般的に使用されているものではないことも明らかである。
さらに、我が国における本件商標の具体的な使用の事実によれば、これに接する需要者、取引者は、本件商標権者の役務の出所表示標識として認識すると認められるべきである。
2 「extra cold」及びその片仮名表記である「エクストラコールド」の語について
「エクストラコールド」の語自体が、辞書等に掲載されている事実は見当たらず、親しまれた既成の観念を有する一連の語として一般に知られているといった事実ない。それはビールに限らず、飲食料品を取り扱う分野において、「0℃以下」「氷点下」のことを「エクストラコールド(extra cold)」と称して一般的に使用されている事実がないことからも明らかである。
そうとすれば、本件商標に接する需要者、取引者は、せいぜい「特別に冷たい」という極めて漠然とした広範な意味合いを看取し得るに過ぎず、本件の指定役務である第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」との関係において、役務が有する一定の質を直接的かつ具体的に認識・把握することは困難であり、むしろ、このように役務の質の良さや魅力を間接的に暗示又は連想できる商標は、特定の使用者による識別標識として、かえって取引者・需要者に強い印象を与えるものといえる。
3 申立人等の「EXTRA COLD」の使用状況について
(1)申立人は、ギネス社、クアーズ社、カールスバーグ社といった各ビール会社が、海外において「EXTRA COLD」の語を使用している事実をあげているが、日本において出願及び登録された商標は、あくまでも日本の商標法及び日本における商取引の実情に照らして判断されるものであり、商標の自他役務識別力についても、日本における商標の使用状況等を勘案して判断されるべきであるから、これらの事実が我が国における本件商標の自他役務識別力を否定する根拠にはなり得ないと考える。
(2)取消理由通知では、イギリス等のヨーロッパにおいて、本件商標の登録出願前に、「Extra Cold」(EXTRA COLD)の語が、「格別に冷たい」の意味合いをもって「ビールの提供」の質を表示するものとして普通に使用されていること等を述べていますが、我が国における本件商標の使用状況を鑑みれば、需要者、取引者は、「エクストラコールド」の語を本件商標権者の出所標識として認識する機会の方が圧倒的に多いといえる。
(3)申立人が挙げる資料をみると、「エクストラコールド専用ボトルクーラーは、ハイネケンボトル専用です。他の商品の保管は、凍結、混濁、破びんのおそれがありますので、絶対におやめください。」(甲第12号証)、「ギネス社はギネス・エクストラ・コールド(Guinness Extra Cold)という、2,3度(通常のギネスより2、3度低い温度)で飲む商品を開発した。」(甲第69号証)、「1990年前半、ギネス社はギネス・エクストラ・コールドという若者向けの2、3℃(通常のギネスより2、3℃低い温度)で飲む商品も販売しています。」と記載あり、ギネス・エクストラ・コールドが商品として流通してるといわざる得ない。そうとすれば、第35類の指定役務「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」における使用ではないことは明らかであり、さらに、第43類の指定役務「ビールの提供」における商標の使用に該当するかも疑問である。
4 結び
以上のとおり、本件商標は、指定役務中の第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」について使用しても、その取引者、需要者に役務の質を表示したものであると認識されることはなく、自他役務の識別標識として機能を十分に果たすものである。

第5 当審の判断
1 本件商標の取消理由は、前記第3のとおりであり、本件商標が商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるとした認定、判断は、妥当なものである。
2 これに対して、商標権者は意見を述べているが、以下の理由により採用することはできない。
(1)商標権者は、本件商標「エクストラコールド」の語は、辞書等にも載録されている既成語ではなく、飲食料品を取り扱う分野においても普通に使用されていないものであり、仮に「特別に冷たい」程の意味合いを直感させる場合がありうるとしても、それは極めて漠然とした広範な意味合いを看取し得るに過ぎず、本件の指定役務との関係において、役務が有する一定の質を直接的かつ具体的に認識・把握することは困難であることからすれば、本件商標は、創作された一種の造語よりなる商標である旨主張する。
しかしながら、本件商標の構成文字である「エクストラ」及び「コールド」の各文字は、それぞれ我が国において親しまれた語であることから、これらを結合させた本件商標よりは、「特別に冷たい、格別に冷やした」程の意味合いを容易に理解、認識させるものであり、さらに、我が国においては、現在、ハイネケン・キリンと商標権者の双方が、「0℃以下」、「氷点下」、「2℃?0℃の氷点下」に冷やしたビールについて、「EXTRA COLD(エクストラコールド)」と表示して、ビールの提供を行っている事実がある。
以上からすれば、たとえ、「0℃以下」、「2℃?0℃の氷点下」等のように具体的ではないとしても、「エクストラコールド」の文字に接する需要者は、提供に係るビールが、通常提供されるものより「特別に冷たい,格別に冷やした」状態であることが認識できるから、本件商標をその指定役務中「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び「ビールの提供」について使用するときは、「特別に冷たいビール」に関連する役務の提供のごとき意味合いを表したと認識するとみるのが相当であって、その役務の提供の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められるということができる。
(2)商標権者は、「エクストラコールド」の使用例について、参考資料6ないし参考資料112に鑑みれば、「エクストラコールド」の文字が、商標権者の業務に係る商品又は役務の出所を表示する標識として、需要者・取引者の間で広く認識されており、著名な商標であることが容易に理解し得るものであり、また、日本において「エクストラコールド」が広まったのは、商標権者の貢献によるところが極めて大きい旨主張する。
しかしながら、甲第59号証によれば、「・・・先行したのはハイネケン・キリンで、国内開始は2008年5月。既に130店舗で提供する。一方,アサヒビールは・・・2009年9月から試験的に一部店舗で提供し始め、・・・」の記載よりすると、我が国おいては、ハイネケン・キリンが商標権者より先行して「エクストラコールドビール」の語を使用していたと認められるものである。また、商標権者による「エクストラコールド」の文字を使用してビールの提供を行う飲食店が相当程度展開されているとしても、他方で、ハイネケン・キリンによる同様のビールの提供が行われているものであり、かかる事実からすれば、商標権者のみの使用をもって、我が国において、該文字が、広く知られるに至ったものということができない。
(3)商標権者は、申立人が提出している証拠資料については、商標権者以外のビール会社が海外において「EXTRA COLD」の語を使用している事実を挙げているが、これらの事実が我が国における本件商標の自他商品識別力を否定する証拠にはなり得ない旨主張する。
確かに、証拠資料の多くが海外で体験した日本人によるものであるとしても、前記第3の1(2)のように,イギリス等のヨーロッパ及びアメリカ合衆国においては、本件商標の登録出願前には既に、「Extra Cold」の文字が、「格別に冷たい、特別に冷えた」程の意味合いをもって、いずれもよく知られたビール醸造会社による「ビールの提供」に使用されていたものである。
そして、前述のとおり、日本国内においても、飲食店等において通常提供されるビールより、さらに冷やした状態で提供されるビールについて「エクストラコールド」の文字が使用されているものであるから、海外で体験した者又は該情報に接する者が、我が国において「エクストラコールド」の文字に接した場合、提供に係るビールが「格別に冷たい,特別に冷えた」状態であることを表すものと理解、認識するということができる。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品及び指定役務中、第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」について、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
異議決定日 2014-01-27 
出願番号 商願2012-15794(T2012-15794) 
審決分類 T 1 652・ 13- Z (W3543)
最終処分 取消  
前審関与審査官 小田 明 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 手塚 義明
酒井 福造
登録日 2012-08-31 
登録番号 商標登録第5517611号(T5517611) 
権利者 アサヒグループホールディングス株式会社
商標の称呼 エクストラコールド、エクストラ 
代理人 萼 経夫 
代理人 笠松 直紀 
代理人 山田 清治 
代理人 飯島 紳行 

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