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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y3233
管理番号 1285514 
審判番号 取消2013-300032 
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-01-17 
確定日 2014-02-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第1810981号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1810981号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、漢字を縦書きしてなる「常陸野」と、平仮名を横書きしてなる「ひたちの」を二段に書してなり、昭和58年10月12日に登録出願、第28類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として同60年9月27日に設定登録され、その後、平成7年12月25日及び同17年12月20日の2回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同18年1月18日に、その指定商品を、第32類「ビール」及び第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」とする指定商品の書換登録がなされているものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成25年2月1日になされている。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、本件審判請求の登録前3年以上継続して日本国内において、商標権権利者が使用した形跡がない。
よって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定によりその登録を取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙第1号証について
ア 詰め合わせ用の箱に付された商標について
乙第1号証は、「梅酒と日本酒のそれぞれ300m1を計5本詰め合わせた『常陸野』『蔵物語』と二種の商標を明示したパッケージの箱体及び内容物を示した画像」と記載されている。
確かに、乙第1号証は、筆で書かれた書体の「常陸野」と「蔵物語」とで構成された商標であるが、「常陸野」の文字列の右横に小さく記された平仮名は「ひたちの」ではなく「ひたち」である。このため、商標法第50条第1項括弧書の「書体のみに変更を加えた商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」に該当しないものとなっている。
さらに、「常陸野」と「蔵物語」の他に、常陸国風土記にも登場する筑波山を連想させる山の図形が、「常陸野」の文字の背景と同じ系統の色で表され、「蔵物語」の文字列は、大きく、目立つように黒色の筆で書かれたような書体で表されているが、上述したとおり、「常陸野」の文字列とその文字列が表された部分の地色と山の図形とは、いずれも同系色で表されている。
そして、本件商標の商標権者である石岡酒造の所在地である石岡市は、「古くは常陸国分寺や、国府が置かれた常陸国の中心地」であったこと、そして「古来より関東有数の銘醸地と知られて」いた。
このため、「蔵物語」の文字列が要部を構成するものと考えられ、乙第1号証に示された箱に付された上記の商標は、「ひたち(常陸)」という土地で醸造された酒を示すための表示といえる。
したがって、乙第1号証は、本件商標である「常陸野」を本件商標の指定商品に使用したものとはいえない。
イ 商標の「使用」について
「蓋の上辺部『常陸野』の商標を使用している」と記載されているが、商標登録出願に当たっては、商標を使用する商品を指定しなければならず(商標法第6条第1項)、この指定は、商品及び役務の区分にしたがってしなければならない(同条第2項)と規定されている。このため、商標法第2条第3項第1号でいう「商品の包装」は、商標法上の商品である、日本酒、果実酒を入れる容器(ビンや紙パック等の容器)、及びこれらを個別に収納する化粧箱をいうものとなり、化粧箱に収納される商品に付された商標と収納された容器に付された商標とは同じものとなるときに、商標の使用行為が成立する(甲1)。
しかし、乙第2号証に示された箱に詰め合わされている商品に付されているラベルは、大きく縦書きされた「筑波」と「日本酒から生まれた梅酒」であり、「常陸野」は使用されていない。
商標法第2条第3項第1号に規定する商標の「使用」では、乙第2号証のように、中に入れる商品と異なる商標を箱に付すことは、想定されていない。
このことは、指定商品に「日本酒の詰め合わせセット」のようなものが商品として含まれていないことからも裏付けられる。
したがって、この詰め合わせセットを収納する箱は、商標法上の「商品」の包装とはいえず、商標の「使用」には該当しない。
また、本件審判の請求前に、商標権者に「常陸野のブランドの商品が存在するか否か」を電話で問い合わせた際には、「そのようなブランドの商品はない」との回答がなされている。
したがって、商標権者は、上記の「日本酒詰め合わせセット」を商標権者のホームページにアップした日付及び販売を開始した日付がいつであるかが、第三者によって確認されている真正な記録を提出すべきである。
(2)乙第2号証について
乙第2号証には、「取扱商品には『常陸野蔵物語300mlAセット』が販売されていることが示されている」と記載されている。
しかし、ここで使用されている「常陸野蔵物語300mlAセット」の表示は、「常陸野蔵物語」が同じ大きさかつ同じ書体の一連の文字列として構成されており、「常陸野」という登録商標の使用とはいえない。すなわち、被請求人のホームページ上では、「常陸野蔵物語300m1Aセット」という表示が一体となって宣伝広告機能を有しているため、この表示の中から「常陸野」だけを切り出して、登録商標「常陸野」を使用しているとはいえない。
また、この表示は、「日本酒と梅酒の詰め合わせセット」であるが、本件商標の指定商品は、「日本酒」、「梅酒」である。このため、上記の表示は、「日本酒と梅酒」を詰め合わせセットとして販売する際のみに使用される表示であり、個々の商品に付されたものではないことから、こうした使用は、商標的使用態様であるとはいえない。
(3)乙第3号証について
乙第3号証に、「紙製の2000m1の容器に『常陸の』の商標を使用している事実を示すものであり、・・・『常陸の』『辛口』『ひたちのからくち』の表示があります」と記載されている。
しかし、乙第3号証に示された「常陸の」は、大きくデフォルメされた書体で表されていること、「常陸」が大きく漢字で表されているのに対し「の」はひらがなで小さく表されていることから、商標法第50条第1項括弧書の「書体のみに変更を加えた商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」に該当しない。
3 平成25年8月27日付け口頭審理陳述要領書
(1)乙第4号証ないし乙第7号証について
ア 「常陸野」商標について
被請求人の口頭陳述要領書には、乙第4号証ないし乙第7号証の提出によって、「・・・『常陸野』商標を付した商品を現実にインターネットを介して販売していることを立証します。」と記載されている。
しかし、乙第4号証ないし乙第7号証には、「常陸野蔵物語」の表示しかなく、「常陸野」という表示は確認できない。すなわち、乙第4号証ないし乙第7号証は、「常陸野蔵物語」という標章が付された箱に詰め合わされた、日本酒セットの取引実態を示しているにすぎない。
被請求人のホームページを見ると、「常陸野蔵物語300mL Aセット」及び「常陸野蔵物語300mL Cセット」という表示はなされている(甲3)。しかし、「常陸野蔵物語300mL Aセット」は、日本酒から生まれた梅酒1本、「筑波」の商標が付された日本酒4本が詰め合わされたものであり(甲4)、「常陸野蔵物語300mL Cセット」は日本酒から生まれた梅酒2本、「筑波」の商標が付された日本酒3本が詰め合わされたものである(甲5)。
そして、詰め合わされた日本酒及び梅酒のいずれにも、「常陸野蔵物語」の商標は使用されていない(甲4及び甲5)、さらに、「茨城の地酒の飲み比ベセット」、梅酒と日本酒の「コラボレーション」と明記されているように、上記の5本の酒をひとまとめのセットとして詰め合わせた箱に「常陸野」と「蔵物語」を異なる書体及び色で表示して使用している(甲6及び甲7)、加えて、「常陸野」の脇には、被請求人が提出した乙第1号証に示されているように「ひたち」の読み仮名が付されている(甲6及び甲7)。
被請求人は、「常陸野蔵物語」という表示の中から「常陸野」だけを取り出して、「常陸野」という登録商標が使用されていると主張しているが、上述したように、乙第1号証ないし乙第7号証を見ても、「常陸野」という標章が付された商品が実際に取引されていたと判断することはできない。
イ 登録商標を使用すべき指定商品について
商標法第50条には、「商標権者、使用権者のいずれもが、継統して3年以上、日本国内で登録商標を指定商品に使用していないときは、商標登録の取消を請求することができる」旨が記載されている。
このため、「登録商標」は「指定商品」に使用されない限り、上記の要件を満たさないことになる。
そして、請求人が審判請求書で主張したとおり、商標法の指定商品には、「日本酒」、「洋酒」、「果実酒」、「中国酒」、「薬味酒」が含まれているが、これらは、ビン詰又は紙パック詰めの状態で、1本ずつ棚に並べられて販売されている。高級品の場合には箱に入った状態で展示され、販売されることもあるが、箱に記載された商標と箱に入っている酒のビンに付された商標とは同じものである。
したがって、「常陸野」という登録商標は、個々の日本酒のビンに付されて初めて、「登録商標を指定商品に使用した」ということができる。過去の不使用取消審判の審決例を見ても、このことは、明らかである(甲8及び甲9)。
被請求人の日本酒には、「常陸野」の商標が付されたものはないため、「登録商標を指定商品に使用した」ということはできない。
ウ 登録商標の「使用」について
被請求人の口頭陳述要領書には、乙第4号証ないし乙第7号証の提出によって、「・・・乙第1号証の登録商標の使用説明書1に示す梅酒及び清酒に使用している・・・ことを立証します。」と記載されている。
しかし、商品内容に関する規格の欄はすべて空欄になっており、「梅酒」及び「清酒」に使用されていたことは立証されていない。
このため、乙第4号証ないし乙第7号証は、何らかの詰め合わせセットとして商品が販売されたことを示しているにすぎず、「梅酒」及び「清酒」の個々の商品に商標が使用されているということはできない。
(2)乙第1号証について
ア 商標について
乙第1号証に示されている商標について、被請求人は口頭審理陳述要領書において、該蓋箱に「常陸野」商標が明示されていることを繰り返し主張している。
しかし、乙第1号証に示されている商標は、筆で書かれた書体の「常陸野」と「蔵物語」とで構成され、「蔵物語」の文字列は、大きく、目立つように黒色の筆で書かれたような書体で表されている。このため、このような構成態様では、「蔵物語」の文字列が要部を構成するものと考えることが自然であり、「常陸野」商標が明示されているとはいえない。
さらに、乙第1号証に示されている「常陸野」の文字列の右横に小さく記された平仮名は「ひたちの」ではなく「ひたち」である。
商標の審査基準においても、出願人が読み方を指定した場合には、その読み方の称呼も生じるとされているため、乙第1号証の「常陸野」からは「ヒタチ」の称呼も生じる。
加えて、特許庁の審判便覧では、登録商標が二段併記等の構成からなる場合、「太陽/SUN」のように各要素の称呼・外観は違っても観念を同一とするときに、その一方の使用は「その他社会通念上同一と認められる商標」に該当すると記載している。
本件商標の構成要素である「常陸野」の文字列からは「常陸の国に広がる平野」という観念が生じるのに対し、同じ構成要素の「ひたちの」の文字列からは特定の観念が生じないので、両文字列は外観・称呼・観念ともに相違している。このため、「ひたちの」の文字列が表示されていない点で、乙第1号証に示されている商標は当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標とはいうことができない。
そうすると、乙第1号証に示されている商標は、商標法第50条第1項括弧書の「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」のいずれにも該当しないものという他ない。
イ 商標の「使用」について
被請求人は口頭審理陳述要領審において、「・・・包装する商品が複数存在していても現実に商品を包装する容器に商標を使用しているものであり、商標法上の使用に該当するものである。」と述べている。
しかし、商標法第2条第3項第1号でいう「商品の包装」は、商標法上の商品である、日本酒、果実酒を入れる容器(ビンや紙パック等の容器)、及びこれらを個別に収納する化粧箱をいうものである。
そして、上述したように、通常は、日本酒1本が入った箱に付された商標と箱に入れられた日本酒に付された商標とは同一である。
これに対し、乙第2号証では、箱に詰め合わされている商品に付されているラベルは、大きく縦書きされた「筑波」と「日本酒から生まれた梅酒」であり、「常陸野」は使用されていない。
商標法第2条第3項第1号は、中に入れる商品と異なる商標を箱に付すことを想定していないため、乙第2号証は商標法上の使用に該当するものとはいえない。
この点に関し、被請求人は、一商標一出願という要件を満たすため、「詰め合わせセット」を指定商品から除外している旨を述べている。しかし、指定商品に「詰め合わせセット」を含むことができない以上、本件商標の指定商品である「日本酒」、「梅酒」の容器自体に「常陸野」商標を付さなければ、商標法上の「商品」の包装とはいえず、商標の「使用」には該当しないものといえる。
4 平成25年10月1日付け上申書
(1)乙第8号証ないし乙第11号証について
被請求人の上申書には、乙第8号証ないし乙第11号証の提出によって、「以上により各日付におけるそれぞれの取引があったことをより詳細に立証するものです。」と記載されている。
しかし、乙第8号証ないし乙第11号証は、「常陸野蔵物語」という標章が付された箱に詰め合わされた、日本酒セットの取引実態を示しているにすぎず、この点につき、被請求人は「常陸野」という標章が付された商品が実際に取引されていたことに関する説明をしていない。
さらに、乙第4号証ないし乙第7号証、甲第4号証及び甲第5号証に示されるように、「常陸野蔵物語Aセット」は、大吟醸筑波天平の峰1本、純米吟醸筑波翔雲の峰1本、吟醸酒筑波薫風の峰1本、特別純米筑波1本及び日本酒から生まれた梅酒1本という4種類の日本酒と1種類の梅酒とを化粧箱に詰め合せたものである。また、「常陸野蔵物語Cセット」は、特別純米筑波3本及び日本酒から生まれた梅酒2本という1種類の日本酒と1種類の梅酒とを化粧箱に詰め合せたものである。このため、詰め合わされた商品の構成が異なっている。
そして、詰め合わされた個々の日本酒及び梅酒のビンに付されたラベルやレッテルには、いずれも「常陸野」という商標は全く使用されていない。このため、乙第8号証ないし乙第11号証を見ても、「常陸野蔵物語」という標章が付された化粧箱に、上記のような日本酒と梅酒とが詰め合わされて取引されたことは確認できるが、「常陸野」という標章が付された日本酒や梅酒等の商品が実際に取引されていたと判断することはできない。
(2)第1回口頭審理において合議体より説明を求められた事項に関する回答について
被請求人は、上申書の中で、a乙第4号証ないし乙第7号証の商品売上票の当月売上数量について、b乙第4号証ないし乙第7号証の出荷伝票(控)に記載されている業態区分「1」及び「3」について、c乙第4号証ないし乙第6号証と乙第7号証の出荷伝票(控)に記載されている単価の相違について及びd乙第7号証の請求書(控)の規格欄が空白の理由について、それぞれ説明をしている。
ア 乙第4号証ないし乙第7号証の商品売上票の当月売上数量について
乙第4号証ないし乙第7号証の商品売上票に、本日売上本数や本日売上数量、当月売上数量の記載があるにもかかわらず、当月売上本数の記載がない点は、やや不自然な感じである。この点について、被請求人からは何の説明もなされていない。
イ 乙第4号証ないし乙第7号証の出荷伝票(控)に記載されている業態区分「1」及び「3」について
乙第4号証ないし乙第7号証の出荷伝票(控)に記載されている業態区分について、被請求人は、「『1』は購入者が卸業者である場合の区分」であり、「『3』は一般最終消費者である場合の区分」と説明している。しかし、個人名が「?サービス」であるということは、常識的に考えられず、卸業者であるものと推察される。
業態区分の一例を示す受注表(甲10)によれば、ある業者の場合には、ある県内の卸を1000番台、同県内の小売を2000番台、県外の卸を4ないし5000番台、県外の小売を6000番台、業務店を7000番台として管理している。したがって、一般最終需要者と業者とを誤って記入するということは、通常は考えられない。
そうすると、この業態区分に関する被請求人の説明は、上記の相違の説明としては不十分といわざるを得ない。
ウ 乙第4号証ないし乙第6号証及び乙第7号証の出荷伝票(控)に記載されている単価の相違
被請求人は、業態区分に応じて取引金額が異なり、卸充業者に対する金額は卸売価格となるから、一般最終消費者に販売する場合とは異なると説明しており、一般論としては納得できるものである。しかし、業態区分は「3」であり、金額も一般最終消費者への販売価格でありながら、一般最終消費者とは考えることができない者が記載されていることについては、合理的な説明がなされていない。
エ 乙第7号証の請求書(控)の規格欄が空白の理由について
被請求人は、「・・・『常陸野蔵物語300mlAセット』は、梅酒であるリキュール類及び吟醸酒、純米吟醸、大吟酸、純米の各規格の酒類に該当するものです。この請求書の『規格』欄に関するシステム上、予め定めている各種の規格のうち一種を明示するシステムとなっているものです。したがいまして、複数該当する場合には空欄で示すシステムが構成されているものであり、その関係上、空欄となっているにすぎないものです。」と述べている。
このことは、請求人が「常陸野蔵物語300mlAセット」として、複数の異なる商品の詰め合わせセットが販売されたことを認めたものであり、「梅酒」や「清酒」等の個々の商品に「常陸野」商標が使用されていないことを示したものである。
「登録商標を指定商品又はその包装に使用した」というためには、個々の商品、具体的には、300mL入りの日本酒のビン又は梅酒のビンという容器に「常陸野」という登録商標が付されていることが必要である。本件の場合、個々の商品の容器(ビンのラベルやレッテル)に「常陸野」の商標が付されておらず、「登録商標を指定商品又はその包装に使用した」ということはできない。すなわち、請求人は「常陸野」という標章が付された商品を実際に取引していたということを示す証拠を挙げていない。
5 まとめ
以上より、「継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品についての登録商標の使用をしていない」という商標法第50条第1項の審判の請求要件はすべて満たされることとなる。
そして、本件商標の使用については、使用しなかったことについての正当理由はない。
したがって、当該登録商標の登録は取り消されるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、答弁、口頭審理陳述要領書及び上申書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第11号証を提出した。
1 答弁の理由
乙第1号証の登録商標の使用説明書1に示す商標の使用の事実を示す書類に梅酒と日本酒のそれぞれ300mlを計5本詰め合わせた「常陸野」「蔵物語」と二種の商標を明示したパッケージの箱体及び内容物を示した画像データを示す。
この様に商品梅酒と日本酒に関して「常陸野」商標をその包装箱に明確に明示して販売している。
さらに、該パッケージの箱体の蓋を示した画像データを示すものであって、「常陸野」が蓋の表面と共に更に蓋の上辺部に「常陸野」の商標を使用しているものである。
また、蓋の下辺部には、商標権者であり、使用である被請求人の住所と社名が明確に示されている。
したがって、少なくとも商標権者の所在地である商標権者の住所において使用しているものであり、その他の各種の酒類販売所及び商標権者のホームページ等を通したインターネット等で現在販売しているものである。
次に、乙第2号証の登録商標の使用説明書2には被請求人であって商標権者の会社のホームページを示すものであり、まずそのホームページ表紙部分と商品案内のうちギフトとして取り扱っている商品を示すページからなる画像データである。
特に取扱商品には「常陸野蔵物語300mlAセット」が販売されていることが示されている。
したがって、このギフトである梅酒と清酒の詰め合わせセットとして「常陸野蔵物語300mlAセット」が販売していることが明確に示されている。
この場合、乙第1号証の登録商標の使用説明書1に示すように「常陸野蔵物語300mlAセット」の包装には明確に「常陸野」商標が使用されているものである。
次に、乙第3号証の登録商標の使用説明書3に紙製の2000mlの容器に「常陸の」の商標を使用している事実を示すものであり、商標の使用の事実を示す書類の紙製容器の正面には「常陸の」「辛口」「ひたちのからくち」の表示がある。
したがって、この「辛口」「からくち」の表示は品質表示であるので誰でもが使用するものであり、「ひたちの」或いは「常陸の」の商標を使用していることを示すものであるので実質的に「常陸野」商標を使用しているものである。
この場合この容器内には商品「清酒」が入っているものであるから、清酒に関して使用していることが明確である。
また、この容器の裏側には販売者である被請求人の住所と社名が明確に入っており、使用していることが明確であると共に現在これを使用中である。
以上のように、本件の商標権者は、自ら「常陸野」商標を梅酒・日本酒・清酒に使用していることが明確であり、古くよりこの使用を行っていると共に現在使用中である。
2 平成25年8月14日付け口頭審理陳述要領書
(1)被請求人提出の乙第1号証及び乙第2号証の各書証に関し、「常陸野」商標の販売をしたことを示す被請求人の平成12年12月7日付の商品売上表、発送用宅配便伝標写し、出荷伝票、本商品のインターネット販売に際して送信した受注完了メールの写しを提出する(乙4)。
これにより、乙第1号証の登録商標の使用説明書1に示す梅酒及び清酒に使用している「常陸野」商標を付した商品を現実にインターネットを介して販売していることを立証する。
なお、購入者のプライバシーの保護及び営業秘密保持の観点から一定個所に関して黒字でマスキングを行っている。
(2)被請求人提出の乙第1号証に関し、「常陸野」商標の販売をしたことを示す被請求人の平成12年12月29日付の商品売上表、入金票、出荷伝票の写しを提出する(乙5)。
これにより、乙第1号証の登録商標の使用説明書1に示す梅酒及び清酒に使用している「常陸野」商標を付した商品を現実に販売していることを立証する。
(3)被請求人提出の乙第1号証及び乙第2号証の各書証に関し、「常陸野」商標の販売をしたことを示す被請求人の平成12年12月30日付の商品売上表、出荷伝票、本商品のインターネット販売に際して送信した受注完了メールの写しを提出する(乙6)。
これにより、乙第1号証の登録商標の使用説明書1に示す梅酒及び清酒に使用している「常陸野」商標を付した商品を現実にインターネットを介して販売していることを立証する。
(4)以上のとおり、登録商標に関しては、審判請求前3年以内に現実に使用しているものであることを立証するものである。
(5)平成25年5月27日付の請求人提出の弁駁書に対して、乙第1号証の登録商標の使用説明書1に示す「常陸野」商標は、梅酒及び清酒を包装する包装はこの蓋箱に明確に明示されているものであり、その蓋箱の正面に紫色の帯体の中に白抜きにて一行一連に明示されているものである。
したがって他の異なる表示に該当するものではなく、まさに「常陸野」商標を明示するものに他ならない。
なお、横に極めて小さく「ひたち」の平仮名が明示されているものである。この表示があるからといって「常陸野」商標の表示の存在が阻却されるものではない。例えば、読みにくい部分に振り仮名を振ることは現在多面において多用されているものである。
さらに、該蓋体の側面にも黒文字で一行一連に「常陸野」商標を明示しているものである。
特に「蔵物語」の表示も併記されているが、字体と色彩を異にしており、明確に「常陸野」商標を使用していることが把握されるものである。
商品を包装する蓋体に「常陸野」商標を明確に明示しているものであり、包装する商品が複数存在していても現実に商品を包装する容器に商標を使用しているものであり、商標法上の使用に該当するものである。
なお、「詰め合わせセット」は法上の商品でないと請求人は言及している。
しかし、これは一商標一出願という出願に際しての要件において一出願に含まないとして「詰め合わせセット」を除外したものであり、商標の使用の対象である商品に該当するか否かの要件とは異なるものである。
しかして、請求人の主張は失当と言わざるを得ない。
(6)以上のとおり、少なくとも被請求人は登録商標である「常陸野」商標を商標法第2条第3項第2号に定める使用を行っているものである。
3 平成25年9月19日付け上申書
(1)乙第4号証として提出している発送用宅配伝票写し、乙第5号証として提出している入金票及び乙第6号証として提出している出荷伝票(控)・の写しに対応する一部マスキンクを開示した証拠類として乙第9号証ないし乙第11号証を提出する。以上により各日付におけるそれぞれの取引があったことをより詳細に立証するものである。
(2)乙第4号証ないし乙第7号証の売上伝票の当月売上数量について
「当月売上数量」に示された数字は、その月における当該日までの売上数量をリットル換算にして示した売上数量を示すものである。
(3)乙第4号証ないし乙第7号証の出荷伝票(控)に配載されている業態区分「1」「3」について
業態区分については、購入者の業態を示すものである。この場合「1」は、購入者が卸業者である場合の区分であり、「3」は、一般最終消費者である場合の区分である。
なお、今回の提出証拠中には明示されていないが、業態区分が「2」の場合には小売業者が購入者である場合の業態区分となる。
(4)乙第4号証ないし乙第6号証及び乙第7号証の出荷伝票(控)に記載されている金額の相違について
乙第4号証ないし乙第6号証に示す取引は、一般最終消費者に対する取引となる。このことを示すように出荷伝票には業態区分として「3」が明示されている。
したがって、この金額は希望小売価格での販売となる。
次に、乙第7号征に示す取引は卸業者に対する取引となるので、その価格は卸価格となる。このことを示すように出荷伝票には業態区分として「1」が明示されている。
したがって、この金額は卸価格での販売となる。
以上より、両者間においては単価が異なるものとなる。
なお、販売先が卸業者であることから請求書(控)(乙7・乙11)を作成しているものである。
(5)乙第7号証の請求書(控)の規格欄が空白の理由について
本来この規格の欄には、清酒の種別やその他のリキュール類等であることを示す規格、あるいは消費税であることの明示を示す当該費用部分の内容の規格を示す欄である。
この場合、「常陸野」商標を使用している「常陸野蔵物語300mlAセット」は、梅酒であるリキュール類及び吟醸酒、純米吟醸、大吟醸、純米の各規格の酒類に該当するものである。
この請求書の「規格」欄に関するシステム上、予め定めている各種の規格のうち一種類を明示するシステムとなっている。
したがって、複数該当する場合には空欄で示すようシステムが構成されているものであり、その関係上、空欄となっているにすぎないものである。

第4 当審の判断
1 被請求人提出の証拠(乙1、乙4及び乙8)及び請求人提出の証拠(甲6及び甲7)によれば、次の事実を認めることができる。
(1) 乙第1号証
ア 2枚目は、商品及びその包装箱の写真と認められるところ、該包装箱には、日本酒4本と梅酒1本が包装箱に詰められ、上蓋部分には、紫色の長方形の下部が切り取られているかの如く表した図形内に、白抜きで大きく「常陸野」の漢字が縦書され、「常陸」の漢字の右側には白抜きで小さく「ひたち」の平仮名が縦書され、該図形の左側には、大きく筆書き風に「蔵物語」の漢字が縦書されている。そして、それらの右側には、薄紫で山並み、濃淡の灰色で雲と思しき図形が配されているものである。
イ 5枚目は、商品の包装箱の上蓋の側面の写真と認められるところ、「常陸野」の漢字が縦書され、「常陸」の漢字の右側には小さく「ひたち」の平仮名が縦書され、該文字の左側には、紫色の長方形内に、大きく筆書き風に「蔵物語」の漢字を白抜きで縦書されている。
ウ 6枚目は、上記5枚目と反対側の蓋の側面の写真と認められるところ、「石岡酒造株式会社 茨城県石岡市・・・」と記載されている。
(2)乙第4号証
1枚目は、「商品売上表」の写しと認められるところ、該売上表には、「作成日:12.12.07」、「品名 常陸野蔵物語300mlA」、「容器 1.5L」、「本数 1」、「売上数量 1.500l(「l」の文字は、筆記体で書かれている。)」と記載されている。
(3)乙第8号証
ア 1枚目は、「宅配便伝票」の写しと認められるところ、「お問い合わせ伝票番号 2588-6310-8991」、「受付日 24年12月7日」、「品名 清酒 常陸野蔵物語Aセット」、「お届け先 郵便番号 240■■■(「■■■」はマスキングされている。以下同様。)、電話番号 045■■■、住所 神奈川県横浜市保土ヶ谷区■■■、氏名 高橋■■■」、「ご依頼主 郵便番号 312■■■、電話番号 029■■■、住所 茨城県ひたちなか市■■■、氏名 菊本■■■様」と記載されている。
イ 2枚目は、「出荷伝票(控え)」の写しと認められるところ、「2012年12月7日、「住所 ひたちなか市■■■、店名 菊本■■■殿」、「売上区分 11(コード表には「11」は「酒売上」と記載されている。)」、「業態区分 3」、「商品名 常陸野蔵物語300mlAセット」、「容器 1.5L」、「入数 3」、「数量 バラ 1」、「単価 3800」、「金額 3800」、「本数 1」、「l(筆記体で書かれている。)数 1.500」、「消費税 190」、「合計3990」などが記載され、右下には、「石岡酒造株式会社/茨城県石岡市東大橋2972」と記載されている。
ウ 3枚目及び4枚目には、インターネット販売時の注文完了時に自動的に送信される「確認メール」の写しと認められるところ、「送信日時:2012年12月6日」、「件名 【石岡酒造】受注確認です。」、「***受注完了***」、「【送り主(お客様)情報】氏名:菊本■■■様TEL:029-■■■住所:・・・茨城県ひたちなか市■■■」、「受注日時:2012/12/06 22:11:22 連絡事項:「お歳暮」としてお願いします。」、「【配送先情報】名称:高橋■■■住所:神奈川県横浜市保土ヶ谷区■■■」、「商品名:常陸野蔵物語 Aセット・・・商品合計額3990円(税込)」、「その他、ご不明な点などございましたら、下記までご連絡くださいますようお願いいたします。石岡酒造株式会社」などの記載があり、3枚目の中央右寄りには、手書きで「2588-6310-8991」と記載されているものである。
(4)甲第6号証及び甲第7号証は、それぞれ商品及びその包装箱の写真と認められるところ、該包装箱には、上記1(1)アと同様に、日本酒4本と梅酒1本が包装箱に詰められ、上蓋部分には、紫色の長方形の下部が切り取られているかの如く表した図形内に、白抜きで大きく「常陸野」の漢字が縦書され、「常陸」の漢字の右側には白抜きで小さく「ひたち」の平仮名が縦書され、該図形の左側には、大きく筆書き風に「蔵物語」の漢字が縦書されている。そして、それらの右側には、薄紫で山並み、濃淡の灰色で雲と思しき図形が配されているものである。
また、甲第6号証には、「【楽天市場】茨城県 石岡酒造 常陸野蔵物語飲み比べセット」、「価格3,990円(税込)送料別」などが記載され、甲第7号証には、「常陸野蔵物語 Aセット(石岡酒造株式会社)」、「常陸野蔵物語 Aセット¥3,990(税込)」などが記載されている。
2 以上を総合すると、石岡酒造株式会社は、本件審判の請求の登録日(平成25年2月1日)前3年以内である2012(平成24年)年12月6日にインターネット注文により、茨城県ひたちなか市在の菊本氏から、「常陸野蔵物語 Aセット」を、「お歳暮」用として、神奈川県横浜市保土ヶ谷区在の高橋氏宛に送ってほしい旨受注し、同月7日に「商品売上表」、「出荷伝票」に品名等の内訳を記載し、宅配便を用いて、菊本氏の名前で高橋氏宛に商品「清酒」を配達するように依頼したことを、推認することができる。
そして、上記「常陸野蔵物語 Aセット」は、乙第1号証、甲第6号証及び甲第7号証の写真に示す包装箱に詰め合わされた「日本酒」及び「梅酒」であると認め得るものである。
(1)使用者について
商品の包装箱の上蓋の側面(乙1)、「商品売上表」、「発送用宅配伝票」などの商品の取引伝票(乙4及び乙8)に記載されている「石岡酒造株式会社」は、本件商標の商標権者と認められる。
(2)指定商品について
「商品についての登録商標の使用」があったというためには、当該商品の識別表示として商標法第2条第3項各号に規定する行為がされることを要するというべきであるところ、同第3項第2号は、「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回路を通じて提供する行為」と規定されている。
また、本件における被請求人(商標権者)の包装箱に詰め合わされた清酒は、乙第4号証及び乙第8号証によれば、一般市場で流通に供されることを目的として生産され又は取引される有体物であるといい得るものであるから、商標法における商品に該当するということができる。
してみれば、被請求人(商標権者)は、本件審判の請求の登録日(平成25年2月1日)前3年以内に日本国内において、本件請求に係る指定商品中の「日本酒」及び「果実酒」の範ちゅうに属する「梅酒」について、本件商標を使用していたことを証明したと認め得るものである。
請求人は、本件商標の指定商品である「日本酒」、「梅酒」の容器自体に「常陸野」商標を付さなければ、商標法上の「商品」の包装とはいえず、商標の「使用」には該当しない旨主張する。
しかしながら、商標法上の商品とは、商標制度の目的に照らすと、流通性があり市場で取引の対象となり得るものをいうと解するのが相当である。
(3)使用商標について
商品の包装箱の上蓋の側面(乙1)には、「常陸野」の漢字が縦書され、「常陸」の漢字の右側には小さく「ひたち」の平仮名が縦書され、該文字の左側には、紫色の長方形内に、大きく筆書き風に「蔵物語」の漢字を白抜きで縦書されているところ、「ひたち」の平仮名は、「常陸」の漢字の読みを特定するために表示されているにすぎないものというのが相当である。
そして、該「常陸野」の漢字と紫色の長方形内に白抜きで縦書された「蔵物語」の漢字とは、明らかに態様が異なることから、両文字部分は、視覚上分離して看取され得るものであるから、それぞれ独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものというのが相当である。
してみれば、使用商標は、商品の包装に表示された縦書きの「常陸野」の漢字及び「ひたち」の平仮名からなる商標といえるものであり、また、「ひたち」の平仮名は、上記のとおり「常陸」の漢字の読みを特定しているにすぎないものであるから、「常陸野」の漢字部分から「ヒタチノ」の称呼を生じるものといえる。
(4)本件商標と使用商標との同一性について
本件商標は、前記第1のとおり、「常陸野」の漢字と「ひたちの」の平仮名を二段に書した構成よりなり、また、使用商標は、前記(3)のとおり、「常陸野」の漢字と「ひたち」の平仮名からなるものである。
そして、本件商標と使用商標とは、漢字の綴り字を同じくするものであり、両者はともに「ヒタチノ」の称呼を生じるものであるから、社会通念上同一の商標といえる。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件商標の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が請求に係る指定商品中の「日本酒」及び「果実酒」の範ちゅうに属する「梅酒」について、本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)の使用をしていたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標




審理終結日 2013-12-03 
結審通知日 2013-12-06 
審決日 2013-12-25 
出願番号 商願昭58-97039 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Y3233)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 前山 るり子
大森 健司
登録日 1985-09-27 
登録番号 商標登録第1810981号(T1810981) 
商標の称呼 ヒタチノ 
代理人 柴田 富士子 
代理人 旦 武尚 
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