• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W33
審判 全部申立て  登録を維持 W33
審判 全部申立て  登録を維持 W33
管理番号 1284380 
異議申立番号 異議2013-900298 
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-03-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2013-08-29 
確定日 2014-01-23 
異議申立件数
事件の表示 登録第5591207号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5591207号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5591207号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成25年2月22日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒,梅酒」を指定商品として、同年5月28日に登録査定、同年6月14日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由として引用する登録商標は、以下の3件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第5458072号(以下「引用商標1」という。)は、「凜」の文字を毛筆体で表してなり、平成22年5月18日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同23年12月16日に設定登録されたものである。
2 登録第1690214号商標(以下「引用商標2」という。)は、「凛」の文字を明朝体で表してなり、昭和56年3月10日に登録出願、第28類「酒類」を指定商品として、同59年6月21日に設定登録され、その後、平成16年3月31日に、指定商品を第32類「ビール」及び第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」とする指定商品の書換登録がされたものである。
3 登録第4618373号商標(以下「引用商標3」という。)は、「凛」の文字を標準文字で表してなり、平成13年12月27日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同14年11月1日に設定登録されたものである。
以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめて「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。
1 具体的理由
(1)本件商標の理解
ア 本件商標は、「伝心」と「凜」の二語の間に約1文字分の空白を設けて表されてなるから、視覚上、それぞれの部分が分離・独立して看取されるばかりでなく、構成全体としても、一体の意味合いは全く見出せないから、これらの文字を常に一体のものとして把握すべき格別の事情は存しない。
してみれば、本件商標中、分離して表された「凜」の部分は、独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものであるから、「凜」の部分から生ずる「リン(凜)」の称呼・観念により取引される場合も大いにあるとみるのが妥当である。
イ 商標権者は、本件商標を構成する「伝心」と「凜」の二語からなる商標を現に使用しており、以下のとおり、「凜」の部分が「伝心」とは分離・独立した態様にて使用されている。本件商標を理解するには、こうした実情を前提とすべきである。
(ア)甲第6号証は、本件商標の使用商品(以下「使用商品」という。)のボトル及び包装箱の写真である。
ボトル側面に貼付されたラベルには、「凜」の文字が単独で大きく表されており、その右に「純米大吟醸」の小さな文字が添えられ、「凜」の文字の下には、原材料・販売者・注意事項等の表示がなされ、あたかも「凜」なる銘柄の商品であるかの如く把握され得る態様で使用されている。
また、ボトル正面に貼付されたラベルには、大きく表された「伝心」の文字の左下に「凜」の落款が表されて、独立して把握される態様で使用されており、商品の包装箱においては、「伝心」の文字が、大きく、勢いある筆書きの特徴的な書体により青色で表され、「凜」の文字は、その下に、空白を設けてやや小さく、隷書体風の書体により銀色で表されて、明らかにそれぞれの部分が独立して把握される態様で使用されている。
(イ)甲第7号証は、商標権者のホームページ中の使用商品についての紹介ページである。
同ページにおいて、「凜」の文字が、「伝心」シリーズの「純米大吟醸」の商品を識別するためのサブブランドまたは個別ブランドとして使用されており、「…個別の呼称として『凜』という名前を付けました。」との記述があり、また、「伝心 [凜]」として、[ ](角括弧)内に分離させた態様で使用されている。
(ウ)甲第8号証は、使用商品についての販売サイト「酒商松本屋」での掲載例である。
「伝心「凛」」として、「 」(鈎括弧)内に分離させた態様で紹介されており、「伝心」シリーズ中の「凛」ブランドとして把握される。また、同サイトには、前記(ア)と同じ商品(甲6)についての写真も掲載され、商品パッケージ中の「凜」の文字と、商品正面に貼付されたラベル中の落款の「凜」の文字が、独立して把握される態様で使用されている。
(エ)甲第9号証は、使用商品についての販売サイト「SAKESHOP島津屋・ぐるなび食市場店」での掲載例である。
「伝心「凛」」として、「 」(鈎括弧)内に分離させた態様で紹介されており、「伝心」シリーズ中の「凛」ブランドとして把握され、また、同サイトには、商品写真も掲載され、商品正面に貼付されたラベルにおいて、落款の「凜」の文字が、独立して把握される態様で使用されている。
(オ)甲第10号証は、使用商品についての販売サイト「ますや・楽天市場店」での掲載例である。
商品写真が掲載され、商品包装箱中の「凜」の文字が、独立して把握される態様で使用されている。
(カ)甲第11号証は、使用商品についての販売サイト「中村屋初依酒店・楽天市場店」での掲載例である。
「凛」の文字が独立して把握される態様で使用されている他、「伝心・凛」または「伝心【凛】」として、「伝心」シリーズ中の「凛」ブランドとして把握される。
(キ)甲第12号証は、使用商品についての販売サイト「越後屋丸忠・楽天市場店」での掲載例である。
商品写真及び商品のラベル拡大写真、商品包装箱正面部分の写真が掲載され、「凛」の文字が、独立して把握される態様で使用されている。
(ク)甲第13号証は、使用商品について紹介する販売店「かもす屋酒店」のサイトでの掲載例である。
商品写真等が掲載され、「凜」の文字が、独立して把握される態様で使用され、また、商品について、「凛 純米大吟醸」として紹介されており、「伝心」シリーズ中の「凛」ブランドとして把握される。
(ケ)甲第14号証は、使用商品について紹介する生活総合情報サイト「AllAbout」での掲載例である。
「凛」の文字が、独立して把握される態様で、商品画像とともに使用されている他、紹介記事において、「…『凛』は華やかさと繊細さと切れのよさを兼ね添えるタイプで…」等と紹介され、「凛」ブランドとして把握される。
(コ)以上の点よりみれば、本件商標は、実際に、「伝心」がメインブランド、「凜」がサブブランドまたは個別ブランドとして使用されており、本件商標が使用された商品に接する取引者・需要者においても、そのように把握され、取引されていることは明白である。
ウ 以上のとおり、本件商標の構成自体、視覚上も観念上も「伝心」部分と「凜」部分が分離・独立して看取されるばかりでなく、現実にも、「凜」の文字が、メインブランドの「伝心」に対するサブブランドまたは個別ブランドとして、独立して使用されている実情がある。
そうとすれば、本件商標は、構成全体を必ず一体のものとして理解すべき事情は全く存せず、「凜」の文字が独立して把握されて取引されるとみるのが妥当である。
(2)本件商標と引用商標の比較
ア 本件商標は、上記したとおり、視覚上も観念上も、「凜」の文字が分離し、かつ、独立して把握されるものであって、この「凜」の文字部分より、「リン」の称呼と、「冷たい。氷に触れたようにぴりっと身が引き締まる感じをいう。/りりしいさま。きっぱりとしているさま。」の観念(甲5)を生ずるものである。
イ 引用商標1は、毛筆体の「凜」の文字よりなるものであるから、「リン」の称呼と、「冷たい。氷に触れたようにぴりっと身が引き締まる感じをいう。/りりしいさま。きっぱりとしているさま。」の観念(甲5)を生ずるものである。
ウ 引用商標2及び引用商標3は、明朝体の「凛」または標準文字の「凛」の文字よりなるところ、「凛」は、「凜」の異体字であって、「凜」と同義・同音の文字として通用している文字であり(甲5)、販売者等のサイト(甲8?甲14)では「凜」に代えて「凛」の文字が使用されていることからすれば、引用商標2及び引用商標3は、引用商標1と同じく、「リン」の称呼と、「冷たい。氷に触れたようにぴりっと身が引き締まる感じをいう。/りりしいさま。きっぱりとしているさま。」の観念を生ずるものである。
エ してみれば、本件商標は、引用商標と、「リン」の称呼及び「冷たい。氷に触れたようにぴりっと身が引き締まる感じをいう。/りりしいさま。きっぱりとしているさま。」の観念を共通にし、かつ、「凜」(または異体字の「凛」)の構成文字も共通にする、類似の商標である。
そして、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と抵触する。
(3)小活
上記(1)及び(2)よりすれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、同第43条の2第1号によりその登録は取り消されるべきものである。

第4 当審の判断
申立人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであると主張しているので、以下、本件商標と引用商標の類否について検討する。
1 本件商標について
本件商標は、別掲に示すように、「伝心」の漢字二文字と「凜」の漢字一文字とをやや間隔を空けて横書きした構成よりなるものであるところ、その構成前半の「伝心」の文字は「心を伝えること。」の意味を有し(日本語大辞典(第1刷) 株式会社講談社)、同後半の「凜」の文字は、「冷たい。氷に触れたようにぴりっと身が引き締まる感じをいう。/りりしいさま。きっぱりとしているさま。」などの意味を有する語であること(漢字源(改訂第5版) 株式会社学研教育出版 (甲5))が認められる。
そして、本件商標は、全体としては同書・同大の文字で表された漢字三文字という比較的簡潔な構成であって、「伝心」の文字と「凜」の文字との間に1文字弱分の間隔があるものの、両語の間には、互いの意味上において関連性及び軽重の差を見いだせるものではなく、その構成中の特定の文字部分が、本件指定商品の出所を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるとみるべき特別な理由・事情も見いだせないものである。
そうとすれば、本件商標は、その構成全体をもって、一体不可分のものと認識、把握されるとみるのが相当であり、これからは、「デンシンリン」の一連の称呼のみが生じ、特定の観念は生じないというべきである。
2 引用商標について
引用商標は、それぞれ前記第2のとおりの構成よりなるところ、引用商標1は「凜」の文字を毛筆体により、引用商標2は「凛」の文字を明朝体により、さらに、引用商標3は「凛」の文字を標準文字によりそれぞれ表してなるものである。
そして、引用商標2及び引用商標3を構成する「凛」の文字は、「凜」の異体字であって「凜」と同義・同音の文字として通用している文字である(甲5)から、引用商標は、「凜」又は「凛」の文字から、「リン」の称呼及び「冷たい。氷に触れたようにぴりっと身が引き締まる感じをいう。/りりしいさま。きっぱりとしているさま。」の観念を生ずるものである。
3 本件商標と引用商標との類否について
(1)外観について
本件商標と引用商標の外観を比較するに、本件商標は、上記1のとおり、構成全体が一体のものとして把握されるものであるから、本件商標と引用商標とは、漢字「伝心」の有無において外観上顕著な差異を有し、外観において類似するということはできない。
(2)称呼について
本件商標から生ずる「デンシンリン」の称呼と引用商標から生ずる「リン」の称呼は、「デンシン」の音の有無という明らかな差異を有するもので、その語調、語感が全く異なることから、互いに十分聞き分けることができるものである。
(3)観念について
本件商標は、上記1のとおり、特定の観念を生じないのに対し、引用商標は、「冷たい。氷に触れたようにぴりっと身が引き締まる感じをいう。/りりしいさま。きっぱりとしているさま。」の観念を生ずるものであるから、本件商標と引用商標とは、観念において類似するということはできない。
(4)小活
以上によれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれからみても、類似する商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 申立人の主張について
申立人は、甲第6号証ないし甲第14号証を示して、本件商標権者の使用商品「日本酒」について、「凜」の文字が「伝心」とは分離・独立した態様で使用されており、本件商標と引用商標の類否を判断するに際しては、こうした実情を前提とすべきである旨主張している。
しかしながら、登録異議申立事件における商標の類否は、本件商標及び引用商標それぞれの願書に記載した商標に基づいて判断されるべきものであって、申立人が提出した前記甲各号証に示された商標の使用事実をもって本件商標と引用商標の類否判断を行うことは適切ではなく、また、本件商標は、上記1のとおり、同書、同大により表されている構成などからして一体的に把握されるといえるものであって、引用商標とは類似するものではないから、申立人の上記主張は採用することはできない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものではないから、同法第43条の3第4項に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲(本件商標)

異議決定日 2014-01-15 
出願番号 商願2013-12031(T2013-12031) 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W33)
T 1 651・ 262- Y (W33)
T 1 651・ 263- Y (W33)
最終処分 維持  
前審関与審査官 茂木 祐輔 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 村上 照美
大森 健司
登録日 2013-06-14 
登録番号 商標登録第5591207号(T5591207) 
権利者 株式会社一本義久保本店
商標の称呼 デンシンリン、デンシン、リン 
代理人 大槻 聡 
代理人 特許業務法人みのり特許事務所 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ