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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20139009 審決 商標
不服201317977 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W20
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W20
管理番号 1284285 
審判番号 不服2013-4069 
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-03 
確定日 2014-01-16 
事件の表示 商願2012- 14204拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第20類「保護帽収納掛け具」を指定商品として、平成24年2月27日に立体商標として登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は、「本願商標は、指定商品との関係において、その指定商品の形状の一形態を認識させる立体的形状よりなるものの範疇と認識されるものであって、これをその指定商品に使用するときは、単に商品の形状を表示するにすぎないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、出願人は、本願商標が商標法第3条第2項に該当する旨主張しているが、本願商標がその指定商品について使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとは認められない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号について
(1)立体商標における商品の形状に係る判示
ア 商品の形状は、多くの場合、商品に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように、商品の製造者、供給者の観点からすれば、商品の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、商品の形状を見る需要者の観点からしても、商品の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。
そうすると、商品の形状は、多くの場合に、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり、客観的に見て、そのような目的のために採用されたと認められる形状は、特段の事情のない限り、商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。
イ また、商品の具体的形状は、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるが、一方で、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。しかし、同種の商品について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品の機能又は美感に資することを目的とする形状として、商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。その理由は、商品の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から必ずしも適切でないことにある。
ウ さらに、商品に、需要者において予測し得ないような斬新な形状が用いられた場合であっても、当該形状が専ら商品の機能向上の観点から選択されたものであるときには、商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。その理由として、商品が同種の商品に見られない独特の形状を有する場合に、商品の機能の観点からは発明ないし考案として、商品の美感の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると、特許法、意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反することが挙げられる(知的財産高等裁判所 平成18年(行ケ)第10555号判決、平成19年(行ケ)第10215号判決、平成22年(行ケ)第10253号判決)。
(2)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性
本願商標は、別掲のとおりの構成からなるものであり、これによれば、本願商標に係る立体的形状は、長方形の板状体に、楕円形状の2つの穴を逆ハの字状に開け、その2つの穴のそれぞれに、2段階に湾曲した板状の突起物が接合された構成からなるものであり、その2つの突起物は、丸いものを左右の斜め下から支えるような形状に湾曲している。
ところで、本願の指定商品は、前記1のとおり「保護帽収納掛け具」であり、これは、保護帽、すなわち保安用ヘルメット(以下「ヘルメット」という。)を収納するための掛け具であると認められる。
そして、請求人の提出に係る資料1ないし4によれば、「保護帽収納掛け具」は、一般には、半円状の凹部又は2本の棒を有する構造よりなり、そこにヘルメットを収納するものである。
本願商標に係る立体的形状も、前述のとおり、2つの突起物が丸いものを左右の斜め下から支えるような形状に湾曲している構成を有していることから、ヘルメットを収納する構成を有しているといえる。
そして、本願商標に係る立体的形状と、半円状の凹部を有する構造よりなる一般的な「保護帽収納掛け具」の形状とを比較すると、突起物や穴の有無、ヘルメットを収納する部分の中央下部が開いているか否かなどの違いがあるが、本願商標に係る立体的形状は、どのようなサイズのヘルメットでも収納できるといったことや、ヘルメットに機材が取り付けられたまま収納できるといったことなど、「保護帽収納掛け具」について、その機能に資することを目的として、又は見た目の美感に資することを目的として採択されたものといえ、その機能上又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものとみるのが相当である。
そうとすれば、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
(3)請求人の主張について
請求人は、本願商標に係る立体的形状は、需要者において全く予測し得ないような極めて新規、斬新かつ奇抜な形状を有していると主張し、アンケート結果(資料16-7ないし9)を提出している。
当該アンケート結果によれば、本願商標に係る立体的形状からなる商品について、専業主婦を対象として、該商品の使用目的などを聞く質問に対して、ほとんどの者が「わからない」と回答していることが認められる。
しかしながら、商標が自他商品の識別標識としての機能を有するか否かの判断は、その指定商品の取引者、需要者の認識を基準に判断すべきと解するのが相当であり、本願商標に係る立体的形状は、その指定商品との関係では、取引者、需要者をして、機能上又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであること前記(2)のとおりである上に、およそ、本願の指定商品の需要者とはいえない専業主婦を対象としたアンケート結果によって、前記(2)の判断が左右されるものではない。
2 商標法第3条第2項について
(1)請求人は、本願商標は、長期間の販売実績及び使用実績により自他商品の識別力を獲得している旨主張しているので、本願商標が商標法第3条第2項に該当するに至ったものであるかについて、以下判断する。
(2)商品の立体的形状からなる商標が使用により自他商品の識別力を獲得したかどうかは、当該商標ないし商品の形状、使用開始時期及び使用期間、使用地域、商品の販売数量、広告宣伝のされた期間・地域及び規模、当該形状に類似した他の商品の存否などの諸事情を総合考慮して判断するのが相当である。
そして、使用に係る商標ないし商品の形状は、原則として、出願に係る商標と実質的に同一であり、指定商品に属する商品であることを要するというべきである(前記知的財産高等裁判所判決)。
(3)本願商標の商標法第3条第2項該当性
ア 事実認定
請求人の提出に係る証拠(資料5ないし16(枝番を含む。)及び写真1ないし23)によれば、次のとおりである。
(ア)本願商標及び使用に係る商品の立体的形状
本願商標は、前記1(2)において認定したとおりの構成からなるものである。
請求人は、「エコラック」と称する商品「保護帽収納掛け具」(以下「本件商品」という。)を販売していることが認められる。そして、本件商品の形状は、色彩が施されていること、上部に2つの壁面取付用ビス穴部を有していること、下部に名札シール貼り付け部及び2つのフックを有していることといった違いはあるものの、前記1(2)において認定した本願商標の特徴と同様の特徴を有しているものと認められる(資料9ないし14(資料14については枝番8、9、11、13、14、20及び22を除く。以下同じ。))。
そうとすれば、本願商標と本件商品の立体的形状とは、実質的に同一のものであるといえる。
(イ)使用開始時期及び使用期間
請求人は、本件商品を遅くとも平成16年6月から使用をしていることが認められ(資料5)、その使用は現在まで継続していることが認められる(資料6ないし8及び11ないし15)。
(ウ)使用地域、商品の販売数量
写真1ないし23及び請求人の主張によれば、本件商品が、北海道、岩手県、茨城県、東京都、京都府及び岡山県で使用されていることが認められるから、本件商品の使用地域は、日本全国であると推認し得る。
また、請求人の主張によれば、本件商品の販売数量は、年間約10万個から16万個である。
(エ)広告宣伝のされた期間・地域及び規模
請求人は、本件商品のパンフレット及びカタログを作成していることが認められるが(資料9ないし12)、その作成部数、配布部数及び配布時期は不明である。
また、インターネット上のウェブサイトにおいて本件商品の広告を掲載していることが認められ(資料14-28)、さらに、トラスコ中山株式会社の2006年の総合カタログやインターネット上の各種のショッピングサイトにおいて、本件商品が掲載されていることが認められる(資料13及び14(資料14-28を除く。))。
そして、これら本件商品の広告宣伝においては、必ず「エコラック」の文字商標の下に、本件商品が掲載されていることが認められる。
(オ)当該形状に類似した他の商品の存否
本願商標に係る立体的形状に類似した他の商品は見当たらない。
(カ)その他
株式会社リサーチワークスによる「立体商標に関するアンケート調査報告書」(資料16)によれば、全国の土木・建築関係者1000件を対象としたアンケートにおいて、本件商品の写真を見て、そのメーカー名及び製品名を7つの選択肢から選ぶ質問に対して、回答数134件のうち、正解率が17.9%であったことが認められる。
イ 判断
前記アの事実からすると、本願商標と実質的に同一の立体的形状からなる本件商品が、遅くとも平成16年6月から日本全国で使用されていることは認められる。
しかしながら、本件商品の広告宣伝については、トラスコ中山株式会社の2006年の総合カタログやインターネット上の各種のショッピングサイトにおいて、本件商品が掲載されていることは認められるものの、請求人自身による広告宣伝としては、ウェブサイト上への広告の掲載(資料14-28)1件並びに本件商品のパンフレット及びカタログの作成のみであり、そのパンフレット及びカタログの作成部数、配布部数及び配布時期は明らかではない。
また、「立体商標に関するアンケート調査報告書」によれば、本願の指定商品の需要者といえる土木・建築関係者の間においても、本件商品を見て、そのメーカー名及び製品名を認識した者は、回答数が134件と少ない上に、わずか17.9%にすぎないものである。
そして、本件商品の広告宣伝においては、必ず「エコラック」の文字商標と共に本件商品が掲載されていることからすると、本件商品は、「エコラック」の文字商標によりその出所を識別されているといえる。
以上を総合考慮すれば、本願商標に係る立体的形状のみが独立して自他商品の識別標識としての機能を有するとは未だ至っていないとみるのが相当である。
そうとすれば、本願商標は、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとはいうことはできない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項に該当するものではない。
3 むすび
以上のとおりであるから、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものであって取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本願商標




審理終結日 2013-11-07 
結審通知日 2013-11-19 
審決日 2013-12-03 
出願番号 商願2012-14204(T2012-14204) 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (W20)
T 1 8・ 13- Z (W20)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 浦崎 直之 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 大森 健司
山田 啓之
代理人 畑 泰之 
代理人 畑 泰之 

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