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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X35
管理番号 1284210 
審判番号 無効2013-890027 
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-04-01 
確定日 2014-01-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5216996号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第5216996号商標(以下「本件商標」という。)は、「ラヴェリオリンクスタッフ」の文字を横書きしてなり、平成20年4月28日に登録出願、第35類「人材派遣による職業のあっせんに関する情報の提供,人材派遣による職業の斡旋」を指定役務として、平成21年3月27日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
1 請求の理由
(1)引用標章
引用標章は、「リンクスタッフ」の片仮名を横書きしてなり、有料職業紹介業、労働者派遣事業等を営む株式会社の略称として、平成4年12月1日から使用され始め、現在まで使用されているものである。
「リンクスタッフ」との略称は、現在では、有料職業紹介業、労働者派遣事業を営んでいる株式会社として全国的に広く知られている。
(2)本件商標と引用標章との出所の混同を生ずるおそれ
本件商標は、「ラヴェリオリンクスタッフ」の片仮名からなるものである一方で、引用標章は、「リンクスタッフ」の片仮名からなるものである。
したがって、本件商標と引用標章とは、一部が相違するとしても、大部分である「リンクスタッフ」について呼称・外観を共通にする類似のものである。
また、本件商標の指定役務である「人材派遣による職業のあっせんに関する情報の提供,人材派遣による職業の斡旋」と引用標章の役務中、「有料職業紹介業」「労働者派遣事業」とは、いずれも人材の登録を受け、登録された紹介先に人材を紹介・派遣するものであるから、同一又は類似の役務である。
以上より、本件商標と引用標章とは、両者が関連企業であるという出所の混同を生ずるおそれがある。
2 弁駁の理由
(1)引用標章の周知性について
請求人は、平成8年以降、新聞等に掲載されるようになり、平成12年以降は、産経新聞、朝日新聞などの全国誌に掲載れている(甲4)。また、平成19年からインターネットを使用した広告も展開し(甲5)、1か月当たり100万回以上の表示回数を維持している。当該インターネットのサイトは、医療機関や医療従事者が頻繁に見るサイトに限っているわけではなく、無料で運用されているブログなどの一般的なサイトに記載している。また、インターネットの検索大手サイトにて、「ラヴェリオリンクスタッフ」と検索すると、スポンサーサイトとして請求人の広告が最上位に表示される。
このようなことから、引用標章が周知であることは明らかである。
(2)請求人業務と被請求人業務の関連性
一般的に有料職業紹介業と派遣業との違いは非常に見分けがつきにくい。また、被請求人は、社会福祉法人への介護スタッフの派遣事業を行っており、請求人は、全国に1000以上の社会福祉法人と取引を行い、社会福祉法人から医師紹介や看護婦の依頼を受けることも多く、両者の混同性は高い。「有料職業紹介業」と「労働者派遣事業」とは、いずれも人材の登録を受け、登録された紹介先に人材を紹介・派遣するものであるから、同一又は類似の役務である。請求人は、派遣業の許認可も保持しており、競合性は低いといえない。
以上により、本件商標と引用標章とは、両者が関連企業であるという出所の混同を生ずるおそれがある。
3 むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。
1 本件商標無効は成り立たない理由
(1)「ラヴェリオリンクスタッフ」は不可分的に結合した商標
「ラヴェリオリンクスタッフ」の名称の一部を成す「ラヴェリオ」は、株式会社ウェルネス(現・オールコーポレーションの前名)が平成6年10月に化粧品や洗剤などを取扱う株式会社ラヴェリオを設立するにあたり創出した商号であり、造語である。この「ラヴェリオ」の商標は平成9年に登録され、平成21年に再登録されている(乙1、乙2)。
株式会社ラヴェリオのリンクスタッフ事業部において、平成12年7月より、「ラヴェリオ リンクスタッフ」という人材派遣事業等を展開していたが、順調に事業が成長してきたことから、平成19年2月に事業名を社名として分社法人化することとなり、「ラヴェリオ」と「リンクスタッフ」を合一した「株式会社ラヴェリオリンクスタッフ」をその法人名としたものである。そして、本件商標を構成する造語商標「ラヴェリオ」と「リンク」「スタッフ」は一体不可分的に結合している。そもそも株式会社ラヴェリオの事業の一部として派遣事業を展開してきた経緯からすれば、需要者は当然にラヴェリオの社会的信用をベースとして、一体不可分な「ラヴェリオリンクスタッフ」を一連一体のものとしてのみならず、「ラヴェリオ」に関連づけて認識していたものである(乙3、乙4)。
なお、米国には30年以上前の1980年に設立されたLink Staffing Services,Ink(リンクスタッフィングサービス)という歴史的に実績のある人材派遣業者が存在しており、「リンクスタッフ」という名称は一般に知られた言い回しであったことが示唆される(乙5)。
また、請求人の「リンクスタッフ」は、普通名詞である「Link」と「staff」を結合した一般的な名称といえる。
(2)周知性に欠ける請求人「リンクスタッフ」
請求人の新聞記事の掲載状況をみると、平成8年10月から「ラヴェリオリンクスタッフ」の商標登録出願時点の平成20年4月までに、英字新聞や中国語新聞を除いた国内の新聞に17回と雑誌に1回、合計18回の掲載がある。このうち11回が経済・産業紙(日経産業新聞5回、フジサンケイビジネス4回、日本経済新聞2回)での単発的な記事掲載である(甲4)。
通算139か月で11回の掲載であるから、1年平均1回程度の掲載である。平成12年以降の9年に絞っても15件の掲載であるから、1年平均1.7回の掲載となる(乙6)。
さらに記事内容をみると、13回が医師紹介を中心とした医療関係のビジネスに関わる記事である。他の4回は中国人向けの職業紹介に関する記事である。
この頻度での掲載記事では、「リンクスタッフ」の一般企業や一般労働者での認知度はさほど高まらないと思われる。
請求人のWeb広告(甲5)によると、平成19年3月から本件商標の出願時点の20年4月までの広告費が11,800,212円(月平均約842,872円)、クリック数が209,451回(月平均14,961回)となっているが、その掲載が開始されてからの期間は14か月しかない。
本Web広告の主対象者は医師・看護師・病医院経営者と推測されるが、この規模の広告費やクリック数が請求人の認知度にどの程度影響しているのかを判断する材料がない。
また、請求人のホームページを閲覧した回数を表すセッション数グラフ(甲8)によると2006年10月29日から2008年4月28日までのほぼ18か月間におけるウェッブサイトヘの訪問回数は延972,262回で、1日平均1,774回となるが、同じ人が転職を求めて繰り返しアクセスしていることを考えれば1日の来訪者はせいぜい1000人前後であると思われ、周知性を判断するにはあいまいであり、検討に値しない。
また、サイトのメイン掲載事項が医師紹介事業と思われるから、医師や病医院経営者が中心に見ているものと判断され、一般企業や一般労働者への認知度は低いものと考えられる(乙6)。
(3)請求人「リンクスタッフ」と「ラヴェリオリンクスタッフ」との差別性と非混同性
被請求人は、平成19年2月から6年以上「労働者派遣事業」「有料職業紹介業」を行っており、株式会社ラヴェリオ内におけるリンクスタッフ事業部から数えると平成12年から12年以上にわたり同事業活動を継続している。「ラヴェリオリンクスタッフ」は、一般企業への労働者派遣に加えて社会福祉法人等への介護スタッフの派遣での実績を重ねてきている(乙7)。
一方、請求人は、平成4年12月から有料職業紹介業を始めるが、一般労働者派遣事業は、平成17年11月からの開始であり、同社ホームページや過去の新聞記事にあるように医師の転職紹介が事業の中核である(乙8)。
平成17年4月1日付けのフジサンケイビジネスアイ紙「人・Story」にて、請求人社長の杉多氏自らが「単なる人材紹介業では新参社は先行競争に勝てないと考え、医療分野に的を絞り、医師や看護師の人材紹介に特化した」と述べていることでも明らかである(甲4)。
したがって、請求人「リンクスタッフ」と「ラヴェリオリンクスタッフ」とは差別性があり、混同性は低いといえる。
ウェブサイトで「リンクスタッフ」を検索した結果において、最初の1ページに掲載された10サイトのうち(有料のスポンサードサーチを除く。)、請求人のサイトが7件、同社名で物流業を営む株式会社リンクスタッフ(平成8年創業、本社千葉県柏市)が1件、被請求人のサイトが1件、その他1件となっており、物流業の「株式会社リンクスタッフ」は、請求人と全く同一社名のための混同性が高く、「ラヴェリオリンクスタッフ」と請求人「リンクスタッフ」との混同性は低い(甲7)。
以上、顧客(雇用者及び被雇用者)が株式会社リンクスタッフと株式会社ラヴェリオリンクスタッフとは異なっているため、両社間での顧客市場における競合性や混同性は低いと判断される。
なお、特許庁は、平成25年5月31日に、請求人が最近出願した商標「リンクスタッフ/LINK STAFF」を登録している(商願2012-99736、登録第5587340号)。その指定役務は、「『第35類』広告印刷物の企画及び制作、その他の広告,経営の診断又は経営に関する助言、医院開業に関する経営についての助言,病院・医院の開業および増改築等の設備投資に関する相談,職業のあっせん、人材派遣による医療事務の代理または代行、求人情報の提供『第41類』技芸・スポーツ又は知識の教授、学会・セミナーの企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供、CD-ROM形式の電子出版物の制作、教育・文化・娯楽・スポーツに関する電子出版物の制作、出版物の企画・編集・制作『第44類』人材派遣による医業、人材派遣による健康診断、人材派遣による調剤、医療従事者の派遣による医療看護、医療情報の提供、医療機関の紹介、健康診断の予約の媒介又は取次ぎ、健康診断及びこれに関するコンサルティング、健康診断及びこれに関する情報の提供」である。
こうした登録がなされたことからしても、特許庁において本件商標と「リンクスタッフ」とが誤認混同しない、ということを前提に判断をしたものと思われる。
2 むすび
したがって、本件商標は、商標法4条第1項15号に違反していない。

第4 当審の判断
1 引用標章の周知性
請求人提出の甲各号証によれば、1996年10月16日付の「日経産業新聞」をはじめ、本件商標の出願前発行に係る「産経新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「ジャパンタイムス」「サンデー毎日」等の新聞や雑誌において、「リンクスタッフ」を小見出しの中、又は記事の主語として表示し、請求人あるいは同法人の代表者についての紹介記事が掲載されたことが認められ、請求人が医師や看護師等の医療関係に係る人材の仲介に携わっているとの内容が主に報じられている(甲4)。
しかし、これらの記事掲載は、1996年から2008年に亘り拡散しており、その頻度において必ずしも多いものとは認められない上、標章「リンクスタッフ」が殊更に印象付けられるものともいえないものである。
なお、甲第4号証には、28事例が示されているところ、1例は病院の医師募集に係るTBSの報道中に請求人の業務が取り上げられたことを伝える内容の請求人ウェブサイト(写し)であるが、残りのうちの6例は、本件商標の出願後の発行に係るものであり、他に外国語のみの記事の2例が含まれている。
また、ウェブ広告の費用や回数についての一覧(甲5)が示されているが、その広告開始は、平成19年3月であり、広告期間は、本件商標の出願日(平成20年4月28日)前14か月と長い期間ではなく、表示回数が、1か月当たり数百万回に達しているが、このような広告表示は、画面を切り替えても同様に表示されることから、必ず閲覧されるものではないし、クリック数も、20000回程度にすぎない。そして、当該広告における引用標章の使用の態様が如何なるものであるかなどは不明であり、当該広告の実態を把握し難いといわざるを得ないものである。
さらに、「リンクスタッフ」を検索キーワードとしたWEB検索結果(甲7)や、請求人ホームページへのセッション数とグラフ(甲8)が示されているが、WEB検索結果として唯一請求人が抽出されたものでもなく、また、当該セッション数が有力なデータであるか否かなど比較すべき基準(値)も定かでないこともあり、上記WEB検索の結果やホームページへのセッション数をもって、直ちに需要者の引用標章に対する認識の程度、あるいは需要者の請求人に対する認識の程度を的確に把握することは、容易とはいえないものである。
以上によれば、請求人が医師・看護師等の「職業紹介」や「労働者派遣」に係る事業を展開していることが優に推認され得るが、これに関連した標章「リンクスタッフ」の使用の実情が把握し難いものであって、全証拠を総合しても、本件商標の出願時において、引用標章が、請求人の業務に係る役務を表示する標章として、需要者の間に広く認識されて周知性や著名性を獲得するに至っていたということはできないものである。また、同じく、請求人の略称としての「リンクスタッフ」が周知性や著名性を獲得するに至っていたということもできない。
2 本件商標と引用標章の類似性の程度
本件商標は、「ラヴェリオリンクスタッフ」の文字からなるものであるところ、その構成各文字は、同じ書体、等間隔をもって一体的に表されており、視覚上も、観念上も、いずれかの部分で分離し、あるいは、いずれかの部分を抽出して観察すべきであるとする格別の理由はみいだせないものである。
したがって、本件商標は、一連の造語として看取されるというのが相当であるから、構成文字に相応して「ラヴェリオリンクスタッフ」の称呼を生じるものであり、また、特定の観念を生じさせないものである。
他方、引用標章は、「リンクスタッフ」の文字からなると認められるものであり、その構成文字に相応して「リンクスタッフ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じさせない造語として看取されるものである。
しかして、本件商標と引用標章とを比較すると、両者の外観構成は明らかに相違しているから、外観上相紛れるおそれはないものである。
また、本件商標の称呼「ラヴェリオリンクスタッフ」と引用標章の称呼「リンクスタッフ」を対比した場合、両者は、その構成音数が全く相違する上、語頭部で「ラヴェリオ」の音の有無の顕著な差異を有するから、彼此相紛れることなく区別し得るものである。
さらに、本件商標と引用標章とは、いずれも何らの観念を生じないものであるから、観念について比較することができないものであって、観念上相紛れる余地はないものである。
してみると、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれからみても、引用標章に類似するものであるということはできない。
そして、本件商標の構成の後半部には「リンクスタッフ」の文字部分が存するが、上記1で認定した引用標章の周知性の程度を勘案した場合、不可分一体に表されたといえる構成態様の本件商標にあって、当該部分が文字列で引用標章の構成文字と一致していることのみをもって、両標章が関連付けて見られるとは認め難いものであり、他に引用標章に更に関連付けて見るべき事情もみいだせないから、結局、両者は別異の出所を表示するものとして看取されるというべきである。
3 役務間の関連性及び需要者
本件商標の指定役務と請求人に係る役務とは、いずれも雇用を希望する者及び労働者を求める者との間に関わるものであり、「職業の斡旋」という共通の側面を有するものであるから、相当に関連性の高い役務といい得るものである。また、その需要者を共通にすることがあるということができる。
4 出所混同のおそれ及び本号該当の有無
上述したとおり、本件商標の指定役務と請求人に係る役務とは関連性の程度が高いものではあるが、引用標章の周知性の程度、商標間の類似性の程度を勘案した場合、本件商標を指定役務に使用しても、これに接する需要者が、引用標章を想起し連想して当該役務を請求人の業務に係る役務、あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く誤認するとは認め難いから、本件商標の出願時及び査定時において、役務の出所について混同を生じさせるおそれがあったと判断することはできないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するとはいえない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2013-11-05 
結審通知日 2013-11-08 
審決日 2013-11-29 
出願番号 商願2008-37249(T2008-37249) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (X35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 裕紀子 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 小川 きみえ
井出 英一郎
登録日 2009-03-27 
登録番号 商標登録第5216996号(T5216996) 
商標の称呼 ラベリオリンクスタッフ、ラベリオ、リンクスタッフ 

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