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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
管理番号 1283341 
異議申立番号 異議2013-900147 
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2013-05-21 
確定日 2013-12-20 
異議申立件数
事件の表示 登録第5560379号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5560379号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5560379号商標(以下「本件商標」という。)は、「mandarino」の文字を標準文字で表示してなり、平成24年7月26日に登録出願、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、同24年12月14日に登録査定、同25年2月22日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録第3233683号商標(以下「引用商標」という。)は、「MANDARIN」の欧文字を書してなり、平成4年9月30日に登録出願、第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,美容,理容,入浴施設の提供,ベビーシッター,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供,宴会のための施設の提供,多目的に利用される集会所の提供,通訳,翻訳,施設の警備,身辺の警備,あん摩・マッサージ及び指圧,老人の養護,展示施設の貸与,デザインの考案,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の貸与,衣服の貸与」を指定役務として、同8年12月25日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由(要旨)
申立人は、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第64号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、その欧文字「mandarino」に相応して「マンダリノ」の称呼を生じるのが自然である。
他方、引用商標は、「MANDARIN」の欧文字に相応して「マンダリン」の称呼を生ずる。
そこで、本件商標から生ずる「マンダリノ」の称呼と引用商標から生ずる「マンダリン」の称呼とを比較すると、両者は、同数の5音より構成され、このうち、称呼における識別上重要な要素を占める語頭音を含め「マンダリ」の4音を共通にし、異なるところは語尾における「ノ」と「ン」の音の差に過ぎず、該差異音は、共に弱く響く鼻音であり、語尾に位置するために一層弱い発音となり、明確に聴取されるとはいい難いことから、この音の差が称呼全体に及ぼす影響は極めて小さく、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語調、語感が相似たものとなり、彼此聞き誤るおそれがある。
また、本件商標は、全体で9文字中、語頭から8文字までが引用商標「MANDARIN」の構成文字と同じくし、語尾に「o」があるか否かの違いがあるにすぎず、両商標を一見した程度であれば、末尾の「o」の有無は見過ごしがちであるため、両商標は外観上、近似したものである。
さらに、本件商標は全体の9文字でみれば特定の意味を有しない造語であるのに対し、語頭から8文字までの「mandarin」は、後述するとおり世界的に著名なホテルグループ「MANDARIN ORIENTAL HOTEL GROUP」(以下「申立人ホテルグループ」という。)の略称を表示したものであり、この種ホテルを利用する需要者、取引者は勿論のこと、レストラン・バーの需要者等の間でも容易に世界的に著名なホテルグループを想起せしめる程に高い自他役務の識別力を有するものである。
しかも本件商標の使用態様(甲5?甲7)は、これを構成する9文字が近接して表示され、末尾の「o」のみが目立った態様でもない。
してみれば、本件商標をみる者は、簡易迅速を尊ぶ取引の場において、9文字全体で本件商標を認識するよりも、高い識別力があり、しかも語頭から8文字までを占める「mandarin」の部分から世界的に著名なホテルグループを印象付け、記憶、連想させると考えるのが相当である。
他方、引用商標は、申立人ホテルグループの略称を表示したものであるから、両商標は何れもこれを見る者に同じ印象、記憶、連想させるものである。
よって、本件商標と引用商標とは称呼において類似し、外観において近似し、しかも両商標をみる者に同じ印象、記憶、連想を与えるため、両商標は、役務の出所につき誤認混同を生じるおそれのある類似の商標であり、かつ、本件商標の指定役務「飲食物の提供」は引用商標の指定役務中に包含されているものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 商標「MANDARIN」、「mandarin」、「マンダリン」(以下、これらをまとめて「『MANDARIN』等の商標」という。)の著名性
(ア)申立人ホテルグループについて
海外ホテル協会のホームページ(甲8)によれば、申立人ホテルグループは、「『マンダリンオリエンタル香港』、130年以上の歴史を誇る『マンダリンオリエンタルバンコク(旧ザ・オリエンタルバンコク)』の他、ニューヨーク、ロンドンなど世界の主要都市やリゾート地でラグジュアリーホテルを展開しています。現在、開業予定のホテルを含め世界27カ国に42のホテル(アジア18、北米12、ヨーロッパ・中東・北アフリカ12)、約10,000室を所有ならびに運営するほか、新たに13の居住施設『レジデンス・アット・マンダリン・オリエンタル』の開発ならびに運営を行っています。」とあるとおり、世界的規模のホテルグループである。
そして、このホテルグループに属する各国のホテルは、そのサービスが高く評価され、種々の団体若しくはホテルの評価機関から賞を受けたり(甲9)、また、「世界の有名ホテルチェーンストーリー」に紹介され(甲10)、日本でも注目された例として、「マンダリン・オリエンタル・パリ」が紹介されている(甲20、甲26)。
(イ)「MANDARIN ORIENTAL TOKYO」(以下「ホテル東京」という。)について
申立人ホテルグループの中で、日本の「ホテル東京」は2005年末開業以来、他のグループホテルと同様に日本を代表する超高級ホテルの一つとして高い評価を得ている(甲11?甲17)。
このように「ホテル東京」は、申立人ホテルグループの一員として、他国のホテルと同様、我が国でも世界一のサービスを顧客に提供し、日本の需要者、取引者から高い評価を受け、同時に該グループ名も広く知らしめているのである。
このことは、「ホテル東京」自身が各種のメディアを通じて宣伝広告している他、世界一のサービスに注目した雑誌、インターネットのホームページ、新聞等で「ホテル東京」を再三話題としていることからも裏付けることができる(甲18、甲19、甲21?25、甲27?甲30)。
(ウ)「MANDARIN」等の商標の著名性
以上より、申立人ホテルグループは、世界中で質の高いサービスを提供する超高級ホテルグループとして広く知られており、我が国でも「ホテル東京」によって、この種ホテル業界の需要者、取引者に対し超高級ホテルグループとしての認識を確固たるものにしたのである。
同時に、申立人ホテルグループが複数の語を並べた冗長なものであるため、これを「MANDARIN」、「mandarin」、「マンダリン」と略して認識することも一般的である。
そうすると「MANDARIN」等の商標は、申立人ホテルグループの略称として、需要者、取引者の間で少なくとも「ホテル東京」が2005年に開業した以降、我が国で広く認識され、著名の域に至ったものと考えるのが相当である。
イ 「飲食物の提供」と「宿泊施設の提供」との関係
高級ホテルには、ホテル内に必ずレストラン、バー、ラウンジ等の「飲食物を提供する」場を設けていることから、「飲食物の提供」と「宿泊施設の提供」とは役務を提供する場所を共通とする場合があり、また、需要者、取引者も共通しており、両役務は極めて密接な関係があることは明らかである(甲31?甲64)。
ウ 出所混同のおそれ
「MANDARIN」等の商標は、上記のとおり、申立人ホテルグループの略称として、我が国でも本件商標の登録出願日以前の、少なくとも「ホテル東京」が日本で開業した2005年頃には需要者、取引者の間で広く認識され、著名になっていたと考えるのが相当である。
また、本件商標と「MANDARIN」、「mandarin」の欧文字とは、本件商標の9文字の構成中、語頭から8文字までが「MANDARIN」、「mandarin」と一致しているため、全体として外観上、極めて近似しており、両商標は類似するものである。
さらに本件商標の指定役務「飲食物の提供」と「宿泊施設の提供」とは、役務を提供する場所や需要者、取引者を共通とする場合もあり、実際に、申立人ホテルグループの「ホテル東京」は館内のレストランやバー等を通じて「飲食物の提供」を行っており、両役務は極めて密接な関係があるといえる。
してみれば、本件商標は、「MANDARIN」等の商標と類似するものであり、その指定役務「飲食物の提供」に使用する場合には、需要者、取引者は、その提供する役務が申立人ホテルグループ又は該グループと経済的、組織的に何等かの関係を有する者の業務に係るものであると役務の出所につき混同を生じるおそれがあることは明らかである。
エ 小括
よって、本件商標は、その指定役務に使用された場合、その役務の需要者、取引者が、申立人ホテルグループに係る役務と出所について混同するおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第19号について
ア 「MANDARIN」等の商標は、上記したとおり本件商標の登録出願よりも前の少なくとも2005年頃には、世界的な超高級ホテルグループの略称として、我が国を含む世界中の人々に知られており、著名の域にあったことは明らかである。
イ また、「MANDARIN」等の商標と本件商標とは、外観、称呼上近似するものであり、互いに類似するものであることは明らかである。
ウ 本件商標権者の不正の目的
本件商標の登録出願日前には、ホテル業界において我が国でも「ホテル東京」が既にトップクラスに入る超高級ホテルとして認識され、そのホテルの属する世界的に著名なホテルグループである申立人ホテルグループの存在も、上記した雑誌、新聞、インターネット等を通じて大々的にとりあげられていた事情がある。
そうであれば、ホテル業界と密接な関係のある飲食業を営む本件商標権者であれば、申立人ホテルグループの存在と、「MANDARIN」等の商標が該グループの著名な略称として広く知られていたことは、極めて容易に知り得たと考えるのが相当である。
そして本件商標は全体として特定の意味がなく、一方で9文字中、語頭から8文字までを、その著名なホテルグループの略称として認識されている「MANDARIN」、「mandarin」の欧文字と一致していること自体、偶然と言うには不可解であり、本件商標をみる者に、申立人ホテルグループと何らかの関連があるかの如くの印象をもたせようとする意図さえも推認することができるのである。
してみれば、本件商標は、世界的に著名なホテルグループの名声にただ乗り(フリーライド)し、不正の利益を得る目的など不正の目的をもって使用するものであることは明らかである。
エ 小括
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消されるべきである。

4 当審の判断
(1)「MANDARIN」等の商標の周知・著名性について
申立人ホテルグループは、130年以上の歴史を誇る「マンダリンオリエンタルバンコク」を始めとし、ニューヨーク、ロンドンなど世界の主要都市等でホテルを展開し、現在、開業予定のホテルを含め世界27力国に42のホテルを運営していることが認められる(甲8)。
我が国においても、2005年に開業した「ホテル東京」は、世界20万人以上の旅行者の調査に基づくガイドブックである「ザガットサーベイ」において「トップホテルジャパン」を2008年1月に受賞し(甲12)、また、「ホテル東京」は、各種の雑誌・新聞等において紹介されていることが認められる(甲12、甲17?甲19、甲23、甲30?甲62)。
そうしてみると、「ホテル東京」は、申立人ホテルグループの一員として、我が国の需要者の間において、広く認識されていたものといえる。
しかしながら、「ホテル東京」についての上記紹介記事等において、当該ホテル名を「マンダリンオリエンタル東京」と紹介し、また、申立人ホテルグループを「マンダリンオリエンタルグループ」と紹介しているのがほとんどであり、単に「MANDARIN」、「マンダリン」等として略称している事実は見当たらない。
なお、本件商標登録出願後に提出した証拠をみても、「ホテル東京」及び申立人ホテルグループを、単に「MANDARIN」、「マンダリン」等として略称している事実は見当たらない。
したがって、申立人が提出した証拠によっては、「MANDARIN」等の商標が、申立人ホテルグループの略称として、本件商標の登録出願時に、我が国又は外国の取引者、需要者の間で広く認識されて著名になっていたと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は、上記1のとおり、「mandarino」の文字からなるところ、その構成文字に相応して「マンダリノ」又は「マンダリーノ」の称呼を生ずるものである。そして、該文字は、「マンダリン(オレンジ)」の意味を有するイタリア語及びスペイン語であるとしても、いずれも日本においては馴染みのない語であるから、特定の観念を生じない一種の造語とみるのが相当である。
一方、引用商標は、上記2のとおり、「MANDARIN」の文字からなるところ、該文字は、「植物マンダリン(中国原産のミカン科の木);その実」の意味を有するものであり、その構成文字に相応して「マンダリン」の称呼を生じ、「マンダリンオレンジ」程の観念を生ずるものである。
そこで、本件商標と引用商標との類否について検討するに、外観においては、本件商標と引用商標の構成は、上記したとおりであり、本件商標は、全てが小文字から構成されているのに対し、引用商標は、全て大文字から構成されている点において差異を有するものである。また、本件商標の9文字中、語頭から8文字目までが引用商標と同じ綴りであることを考慮しても、語尾に位置する文字は「o」と「N」の差異があることから、両商標は、全体の印象が異なり、外観上区別し得るものというべきである。
また、称呼においては、本件商標より生ずる「マンダリノ」又は「マンダリーノ」の称呼と引用商標より生ずる「マンダリン」の称呼とは、前者が5音又は6音なのに対し、後者は5音と、いずれも比較的短い音構成からなり、共に「マンダリ」の音を共通にするものの、語尾において「ノ」と「ン」又は「リ」の長音と「ノ」を併せた「(リ)ーノ」と「ン」の音に差異を有するものである。
しかして、「ノ」と「ン」の差異音は、調音位置などを異にする音質が相違する音であるばかりでなく、「ノ」の音は、有声弾音をもって調音される比較的明瞭に聴取され得るものであるのに対し、「ン」の音は、前音の「リ」の母音「イ」に吸収され、弱く聴取されるものである。
また、「(リ)ーノ」と「ン」の差異音は、明らかに相違するものである。
そうしてみると、上記の差異音が、両称呼の全体に及ぼす影響は大きく、両称呼を一連に称呼しても、その語調、語感を異にし、聞き誤るおそれはないものというのが相当である。
さらに、本件商標は、特定の観念が生じない以上、両商標は、比較することができないものであり、類似するとはいえない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
なお、申立人は、本件商標の構成中の「mandarin」の部分から、高い識別力があり、しかも語頭から8文字までを占める「mandarin」の部分から世界的に著名なホテルグループを印象付け、記憶、連想させるとし、引用商標と類似する旨、主張する。
しかしながら、上記したとおり、「mandarin」を含む「MANDARIN」等の商標が、申立人ホテルグループの略称として、需要者の間で広く認識されていたものとはいえないから、かかる申立人の主張は採用することができない。
したがって、本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(3)商標法第4条第1項第15号及び同第19号該当性について
上記したとおり、「MANDARIN」等の商標が、申立人ホテルグループの略称として、我が国の取引者、需要者の間で広く認識されていたものということはできないし、また、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、相紛れるおそれのない別異の商標といえるものである。
してみれば、本件商標に係る指定役務「飲食物の提供」と申立人の業務に係るホテル事業、すなわち、「宿泊施設の提供」とが提供場所及び需要者等を共通にする密接な関係を有していることを考慮しても、本件商標は、これをその指定役務について使用したときは、これに接する取引者、需要者をして、申立人又は申立人の使用に係る「MANDARIN」等の商標を連想又は想起させるものとは認められず、その役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
さらに、「MANDARIN」等の商標は、「植物マンダリン(中国原産のミカン科の木);その実」の意味を有する成語であること、また、「MANDARIN」等の商標が、申立人の業務に係る「宿泊施設の提供」を表示するものとして我が国または外国における需要者の間に広く認識されていた商標と認めることはできない以上、「MANDARIN」等の商標が需要者の間に広く認識されていた商標であることを前提に、本件商標は不正の利益を得る目的をもって使用されるとする申立人の主張は、その前提を欠くものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2013-12-11 
出願番号 商願2012-60265(T2012-60265) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W43)
T 1 651・ 261- Y (W43)
T 1 651・ 262- Y (W43)
T 1 651・ 271- Y (W43)
最終処分 維持  
前審関与審査官 杉本 克治 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 小川 きみえ
井出 英一郎
登録日 2013-02-22 
登録番号 商標登録第5560379号(T5560379) 
権利者 ウディン モハメド ナシール
商標の称呼 マンダリーノ、マンダリノ 
代理人 特許業務法人 松原・村木国際特許事務所 

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