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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない Y09
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y09
審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y09
審判 全部無効 外観類似 無効としない Y09
管理番号 1282402 
審判番号 無効2013-890030 
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-04-10 
確定日 2013-11-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第5127147号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5127147号商標(以下「本件商標」という。)は、「Legacy Unit」の文字を横書きしてなり、平成18年9月6日に登録出願、第9類「電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、同20年2月28日に登録審決がなされ、同年4月11日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4519184号商標(以下「引用商標」という。)は、「LEGACY」の文字を標準文字で表してなり、平成12年9月18日に登録出願、第1類ないし第32類及び第34類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同13年11月2日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第55号証を提出した。
1 請求の利益について
本件商標は、その出願前の出願に係る引用商標と類似するものであるところ、引用商標は、請求人の製造・販売に係る製品を示すものとして、広く認知されている事実がある。また、請求人は、自動車、航空機、産業機械、エコテクノロジー等多岐にわたる分野における様々な機械の製造・販売を業とするものであるところ、産業用製品の製造及び販売を業とする被請求人が、本件商標を付した製品を製造・販売すれば、請求人の商品との間に出所の混同を生ずることにより、引用商標に化体した業務上の信用が著しく損なわれるおそれがあり、請求人の不利益は極めて大きい。
したがって、請求人は、本件審判を請求するにつき、法律上の利害関係を有する。
2 請求の理由
本件商標の登録は、以下のとおり、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効とされるべきである。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標について
(ア)本件商標は、その構成中の「Legacy」と「Unit」の各文字の間に1文字分の間隔をもって表されているものである(甲2)。このうち、「Legacy」の語は、「受け継いだもの。遺産。」の意味を有する英語の既成語として親しまれたものであり(甲5、甲6)、その指定商品との関係では、何らその品質等を表す語ではなく、自他商品の識別機能を発揮するものである(甲7)。
また、「Unit」の語は、「(機械などでひとまとまりになった)部品;設備一式,セット」を意味する英語の既成語であって、「機械器具」又は「その部品」そのものを直接的に指標する語であるところ、とりわけ、本件商標の指定商品との関係では、コンピュータ用語として、「【コンピュータ】装置,単位,ユニット《他の機能単位と接続して全システムの一部を構成する単位となるもの》」の意味を有するものと明確に定義され(甲8)、実際に、コンピュータの中心的な装置であるCentral Processing Unit(CPU)(甲9)に代表されるように、「装置」や「部品」を表す語として広く親しまれており、以下のとおり、自他商品の識別機能を発揮し得ないものである。
a.指定商品表示
「類似商品・役務審査基準〔国際分類第10-2013版対応〕(英語訳付)」において、「電子応用機械器具及びその部品」の英訳として、「Electronic machines,apparatus and their parts」の表示が公表されている(甲10)。当該英訳における「machine」、「apparatus」及び「parts」の各語は、それぞれ「機械、装置」、「器具」及び「部品」を表す語であるところ、「unit」の語も、これらの各語と同様に、「装置」、「部品」等を表す言葉の一つとされており(甲11)、実際に、同義の意味合いにおいて使用されている事実が存在する(甲12)。
また、指定商品の表示としても、例えば、第10類「ユニット」、第11類「浴室ユニット」のように、「ユニット」の語が多数採用されているほか(甲13、甲14)、「電子応用機械器具及びその部品」の下位概念には、「ユニット」又は「Unit」の表示を用いた各商品が含まれるものとして取り扱われている(甲15?甲27)。
b.実際の取引における使用例
本件商標の指定商品の分野における現実の取引では、「Unit」又は「ユニット」の語は、器具、部品、装置又はユニット式部品を意味するものとして、一般的に使用されている(甲28?甲34)。
c.審査及び審決における拒絶例
「UNIT」又はその複数形「UNITS」及び片仮名表記「ユニット」の各語は、指定商品との関係において、識別機能を発揮しないと判断するのが、これまでの一貫した特許庁の判断である。とりわけ、本件商標の指定商品との関係では、英文表記、片仮名表記ともに、識別力を発揮しないものとして拒絶の判断が示されている(甲35?甲42)。
(イ)以上のとおり、本件商標中、「Unit」の語に識別力がないことは明らかである。そして、「Legacy」の語は、「Unit(器具、部品、装置又はユニット式部品)」との関係において、特段の意味合いを有するものではなく、上記のとおり、独立した別個の意味合いを有するものであるから、「Legacy」及び「Unit」の各語が常に一体として用いられるべき特段の事情はない。
また、外観においても、上記のとおり、これらの各語の間には、1文字分の間隔があるほか、「U」が大文字で表されていることからすれば、外観上各語それぞれが独立して認識され把握される。
そうとすれば、これらの各語の間の識別力の著しい高低及びその外観よりすれば、本件商標中、「Legacy」の文字部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものということはできない。
この点、平成20年(行ケ)第10178号審決取消請求事件判決(甲7)では、商標「Legacy Factory Automation Computer」につき、「『Factory Automation Computer』は、工場自動化のために用いられるコンピュータを意味するものとして取引者・需要者に認識されるものであるのに対して、『Legacy』は『Factory Automation Computer』との関係で特定の意味を有するものとして用いられるものではないから、本願商標は『Legacy』と『Factory Automation Computer』に分離して印象される。そして、上記のとおり『Factory Automation Computer』は工場自動化のために用いられるコンピュータを意味し、本願商標の指定商品である『コンピュータ』の種類の一つを指すものであって、自他商品識別機能を有しないものであるから、結局、本願商標中、自他商品識別機能を有するのは『Legacy』部分のみである」として、本件における引用商標と類似と判断している。
上記判断の見地を本件商標にそのまま当てはめれば、「Unit」は、単に、器具、装置、部品又はユニット式部品等を意味するものとして、取引者・需要者に認識されるものであるのに対して、「Legacy」は「Unit」との関係で特定の意味を有するものとして用いられるものではないから、本件商標は、「Legacy」と「Unit」に分離して認識し把握されることになる。そして、「Unit」は、器具、装置、部品又はユニット式部品を意味し、本件商標の指定商品については、商品そのものを指標し、あるいは、その種類の一つを指すものであって、自他商品識別機能を有しないものであるから、結局、本件商標中、自他商品識別機能を有するのは「Legacy」部分のみということとなる。
したがって、本件商標に接した需要者・取引者は、「Legacy」という名の「電子応用機械器具」又はこれに関する「装置、部品又はユニット式部品」であることを示したものと認識するにとどまるものといわざるを得ない。
以上よりすれば、本件商標は、その指定商品との関係においては、「Legacy」の文字部分に相応する「レガシー」の称呼が生ずるものであり、また、本件商標全体からは、「Legacyという名称のユニット(器具、装置、部品又はユニット式部品)」程の意味合いを想起させるにすぎず、「Legacy」の文字部分に相応する「受け継いだもの。遺産。」の観念が生ずるものである。
イ 引用商標について
引用商標は、前記第2のとおり、「LEGACY」の文字を標準文字で表してなるものであるから、「受け継いだもの。遺産。」との観念を生ずるほか、その構成文字に相応して、「レガシー」の称呼を生ずる(甲4)。
ウ 両商標の類否
本件商標からは、「レガシー」の称呼を生じ、「受け継いだもの。遺産。」の観念を生ずる点において、引用商標と共通する。
また、本件商標中の「Legacy」の文字部分は、第2文字目以降の「egacy」の各文字を小文字で表してなる点のみが引用商標と相違するが、語頭のみを大文字とすることは、英語表記において一般に用いられているものであって、社会通念上同一の範ちゅうを超えるものではなく、この点、前掲平成20年(行ケ)第10178号判決においても、「当該相違が及ぼす印象が僅かなものであって、外観上も近似した印象を与えるもの」と判断している(甲7)。
エ 取引の実状
上記ア(ア)b.で述べたような取引の実情(甲28?甲34)に加え、引用商標は、後述のとおり、自動車関連分野の需要者・取引者において、請求人又はその製品を示す商標として、広く親しまれたものであるところ、請求人が、多種多様な機械器具を取り扱う者であることからすれば、現実の取引においては、むしろ、本件商標に接した取引者・需要者は、著名な請求人製品「LEGACY」のための「部品」又は「ユニット製品」であるとの意味合いを直ちに想起するのが取引の実情である。
したがって、特定の商品の部品やユニット製品を、「○○ユニット」といった表示をもって表すという、指定商品の取引者・需要者において普通に親しまれた用例に従い、請求人の著名商標に「Unit」の文字を付加した本件商標は、現実の取引において、直ちに、請求人製品を想起せしめ、あるいは、その関連ブランドであるかのような誤認を生ぜしめるものであり、商品の出所の混同を生ぜしめるおそれの極めて高い類似の商標であるといわざるを得ない。
この点、平成13年(行ケ)第277号(東京高裁平成14年1月30日)判決は、周知・著名な引用商標との関係における商標法第4条第1項第11号の判断において、相違する部分が取引者、需要者に両商標の差異を特段印象付けるほどのものでない場合は出所の混同を生ずるおそれがあるとの趣旨の判断を示している(甲43)。
オ 指定商品
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は、互いに同一又は類似の関係にあることが明らかである。
カ 以上より、本件商標は、引用商標と同一又は類似の商標であって、同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 商標の類似性の程度について
本件商標と引用商標は、上記(1)のとおり、互いに類似するものであり、類似性の程度は極めて高いものである。
イ 引用商標の著名性について
商標審査基準の第3、十三「第4条第1項第15号(商品又は役務の出所の混同)」の9.において準用される同第3の八、「第4条第1項第10号」の7によれば、「防護標章登録を受けている商標又は審決若しくは判決で需要者の間に広く認識された商標と認定された商標については、その登録又は認定に従い需要者の間に広く認定された商標と推認して取り扱うものとする。」とされている。
過去のほかの事件をみた場合、例えば、請求人の製造・販売に係る一車種を示す商標「IMPREZA」の著名性等が認定されており(甲43)、「IMPREZA」よりも、永年使用され、一車種のみならず、全車種について使用され、より多くの広告、販売実績のある「LEGACY」に使用される引用商標の著名性は、なおさら否定し得ないものである。当該事実は、商標法第56条で準用する特許法第151条において準用される民事訴訟法第179条における「顕著な事実」にも相当する事実であると思料される。
したがって、上記事実のみをもってしても、引用商標の著名性は明らかであるが、これを補足するため、本件審判においては、本件商標の登録時前後における引用商標の使用状況を示す証拠(甲44?甲55)を提出する。これらの証拠によれば、引用商標に係る請求人製品である自動車「レガシィ」が、平成元(1989)年1月23日に、品川高輪プリンスホテルにおいて発表されたこと、「レガシィ」は、発売初年度で平均月販が約4,200台と計画を上回る実績となり、さらに、平成元年10月、新しいカテゴリの車として発売された「LEGACY ツーリングワゴンGT」の大ヒットを受け、「LEGACY」は、一気に販売を伸ばし、月販7,715台の記録を達成したこと、発表以後、「レガシィ」は、数々のマイナーチェンジ又はフルモデルチェンジを重ね、現在に至るまで、継続的に生産され、販売されていること、初代セダンの「LEGACY」は、世界ラリー選手権(WRC)に参戦し、1993年(平成5年)、請求人として初の世界制覇を成し遂げ、LEGACYの名は、我が国のみならず、一躍世界にとどろくこととなったこと、本件商標の登録出願直前である2004年(平成16年)、「LEGACY」は、請求人初の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、これに関する記事は、多数の新聞、雑誌等の多くのメディアで取り上げられたため、当該受賞は、更に「LEGACY」の知名度をアップさせるに至ったこと、2005年(平成17年)5月6日時点で、「レガシィ」の世界累計生産台数が300万台を突破し、それを記念したキャンペーンが行われたこと、などが明らかである。
ウ 引用商標の独創性
引用商標が、機械器具分野の商品に関する国際分類をすべて含み登録されていることからすれば、自動車を始めとする機械器具分野において、「LEGACY」の文字を製品名として使用する者は、請求人以外に存在しないことが明らかであり、引用商標の独創性が極めて高いものであることは明らかである。
エ 商品の性質、用途、目的における関連性の程度、商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等について
引用商標の指定商品との関係において、本件商標は、上記(1)のとおり、同一又は類似の関係にあるから、それらの関連性の程度は極めて高いものといわざるを得ない。
混同を生ずるおそれについて
以上のとおり、引用商標の著名性に加え、請求人は、自ら自動車用の電子制御装置、ETC車載器等の電子応用機械器具の製造又は販売を行っており、産業機械器具、自動車、航空機、その他多種多様な機械器具を取り扱うほか、多様な分野における子会社を有し、さらには、様々な商品を取り扱う大型ショッピングモール等も展開すること等からすれば、本件商標が付された製品に接した需要者・取引者が、請求人又は請求人と資本関係若しくは業務提携関係にある会社の業務に係る商品、あるいは、請求人製品「LEGACY」の専用部品又はユニット製品であるとの誤認混同を生ずるおそれは極めて高いものといわざるを得ない。
カ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第17号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)平成20年(行ケ)第10178号判決(甲7)は、被請求人の出願に係る件外商標「Legacy Factory Automation Computer」は、全体として称呼した場合は24音と極めて冗長にわたることから、「Legacy」なる語が自他商品識別機能を有すると判断したものであり、「レガシーユニット」とまとまりよく称呼される本件商標とは全く異なる事件である。
(2)請求人は、「Unit」の語は、「(機械などでひとまとまりになった)部品;設備一式,セット」を意味し、「類似商品・役務審査基準〔国際分類第10-2013版対応〕(英語訳付)」において、「浴室ユニット」や「ハードディスクユニット」等の記載があり、さらには、実際の取引においても、「ミラーユニット」や「FDDドライブユニット」等として使用されている例から、「装置」、「部品」等を表す語であると主張する。
しかしながら、これらの使用例は、いずれも具体的な装置や器具などの普通名称に「Unit」又は「ユニット」なる語が付加されたものであり、本件商標を構成する「Legacy」のような抽象的又は観念的な名詞又は形容詞に「Unit」又は「ユニット」が付加された場合の意味合いとは全く異なる例であるため、本件商標に当てはまらない。
(3)審査及び審決における拒絶例
請求人は、「UNIT」や「ユニット」等の商標出願が審査又は審決において登録が拒絶された例を挙げるが、これらの商標は、いずれも「UNIT」や「ユニット」等の一語で構成されるものであり、抽象的又は観念的な名詞又は形容詞である「Legacy」と「Unit」が結合した本件商標には当てはまらない事例である。
(4)「UNIT」又は「ユニット」を含む登録商標の例
請求人は、本件商標を構成する「Unit」は、自他商品識別機能を有さないことから、本件商標の要部は「Legacy」であり、その結果、引用商標に類似すると主張する。
しかしながら、類似群コードが互いに共通するものであって、「ある語」と「ある語に『UNIT』又は『ユニット』が結合された語」とが、それぞれ登録商標として併存する(乙1?乙14)ことからすれば、「UNIT」又は「ユニット」なる語が自他商品識別機能を有することは明らかである。
(5)両商標の類似
請求人は、本件商標を構成する「Unit」は、自他商品識別機能を有さないことから、本件商標と引用商標は、観念が共通し、互いに外観が類似し、さらには、両商標の指定商品が互いに同一又は類似の関係にあることから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当すると主張する。
しかしながら、不服2010-22667審決は、「本願商標は、その構成中の『ユニット』の文字が『単位。構成単位。ユニットーシステムに使う単位部分。』、同じく『網戸』の文字が本願指定商品の商品名であって、いずれも一般に知られた語であるとしても、これらの文字を結合してなる本願商標の構成全体から、これに接する者が特定の商品の品質を直接的かつ具体的に表したものと直ちに理解できるものとはいい難いばかりでなく、当審において調査するも、『ユニット網戸』の文字が、その指定商品を取り扱う業界において、商品の品質を表示するものとして、取引上、普通に使用されている事実を発見できなかった。してみれば、本願商標は、その構成全体をもって一体的に把握される特定の語義を有することのない一種の造語であると認識されるとみるのが自然である。」と判断した(乙15)。
また、本件商標は、不服2007-28294審決において、「本願商標は、前記第1のとおりの『Legacy Unit』の文字よりなるところ、『Legacy』と『Unit』の間が1文字分空いているとしても、構成各文字は、いずれも同じ書体で外観上まとまりよく一体的に表されており、また、全体の構成文字より生ずると認められる『レガシーユニット』の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものであるから、たとえ構成中の『Unit』の文字部分が、『(特定の機能を持つ)設備、装置、器具、(電算機などの)入力(出力)装置』(ランダムハウス英和大辞典 第2版 小学館)の意味を有する語であるとしても、かかる構成にあっては、特定の商品又は商品の品質、用途等を具体的に表示するものとして直ちに理解できるものともいい難いところであるから、構成全体をもって一体不可分のものと認識、把握し、取引に当たるものとみるのが相当である。そうとすれば、本願商標は、その構成文字全体に相応して、『レガシーユニット』の称呼のみを生ずるものとみるのが相当である。」として、引用商標と非類似であると判断した(乙16)。
これらのことから、本件商標は、その構成全体をもって、一つのまとまりのある商標として取引者又は需要者に看取、把握されるものである。
(6)小活
したがって、本件商標は、引用商標に類似しないことは明らかであり、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
2 商標法第4条第1項第15号について
請求人は、請求人が製造・販売する「LEGACY」なる車種に使用される引用商標が著名であるから、本件商標が請求人の業務に係る商品等と混同を生ずるおそれが極めて高いと主張する。
しかしながら、請求人の提出した証拠から、仮に引用商標が著名であると認められるとしても、その著名性は、引用商標が当該車種に使用された場合に限られるものであり、「電子応用機械器具及びその部品」について著名性を有することは何ら示していない。また、異議2005-90509決定は、「申立人より提出された証拠によれば、申立人が自動車に使用する引用商標3の構成よりなる『LEGACY』は、平成元年の販売開始から今日に至るまで、申立人の盛大な広告・宣伝及び営業努力により、この種業界及び需要者の間で広く知られていることは、認められるとしても、それはあくまでも自動車に関連する業界及びその需要者間についていえることであって、提出に係る証拠によっては、本件商標の指定商品である『雑誌、新聞』についてまで、英単語の一である『LEGACY』が著名性を獲得したとまでは、認め得ないところであり、加えて、本件商標は、『クラブレガシィ』の片仮名文字よりなるものであるから、本件商標をその指定商品に使用しても、申立人使用商標又は引用商標3などを連想・想起することはなく、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものとは、認められない。したがって、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するということはできない。」と判断した(乙17)。
上記判断と同様に、引用商標は、「電子応用機械器具及びその部品」についてまで著名性を獲得していない。また、本件商標は、上記1のとおり、引用商標とは非類似である。これらのことから、本件商標が「電子応用機械器具及びその部品」に使用されたことにより、その商品の出所について引用商標と混同を生ずるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
3 むすび
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当しないから、その登録について、同法第46条第1項第1号の無効理由は存在しない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、法律上の利益があることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って検討する。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標
ア 本件商標は、前記第1のとおり、「Legacy Unit」の文字を横書きしてなるものであるところ、該文字は、「Legacy」の文字と「Unit」の文字の間に、1文字程度の間隔があるとしても、いずれの文字も同一の書体をもって、外観上まとまりよく一体的に表されているものである。また、本件商標から生ずると認められる「レガシーユニット」の称呼は、これを例えば、「レガシー」と「ユニット」とに区切って称呼しなければならないほど冗長というものではなく、よどみなく称呼し得る程度のものといえる。そうすると、本件商標は、外観及び称呼の点からみれば、これを「Legacy」の文字部分と「Unit」の文字部分とに分離して、「Legacy」の文字部分のみを抽出して、観察しなければならない特段の理由は見いだせない。
次に、本件商標を観念の点からみると、その構成中の「Legacy」の文字部分は、「遺産、遺物」などを意味する英語であり(甲5、甲6)、平成20年(行ケ)第10178号判決(甲7)によれば、「legacy」の語は、上記意味を有するほか、コンピュータ分野において、「前世代の、前世代のもの」の意味合いをもって、例えば、「レガシー・インターフェース」(従来のパーソナル・コンピュータが採用してきた、SCSIやシリアルなどのインターフェースの総称)、「レガシー・システム」(前世代のシステム)、「レガシー・フリー」(SCSIやシリアルといった旧来のレガシー・インターフェースを取り外すこと)などのように、特定の語を伴って、コンピュータの品質等を表す場合があることが認められる。また、「Unit」の文字部分は、「単位」を意味するほか、「a kitchen unit(ユニット式台所)」、「unit furniture(ユニット式家具)」、「an air-conditioning unit(冷暖房装置一式)」などの用例にあるように、「(機械などでひとまとまりになった)部品、設備一式、セット、コンピュータ装置」などを意味する英語である(甲8)。そして、「Legacy」の文字と「Unit」の文字とを結合させた本件商標は、その指定商品との関係からみれば、いずれの文字も格別に自他商品の識別機能が高いものとはいえず、また、識別力ないし観念の点において軽重の差は見いだせない。これに、本件商標の外観及び称呼上の一体性を併せ考慮すれば、本件商標は、その構成全体をもって一体不可分の造語を表したと認識されるとみるのが相当である。
そうとすれば、本件商標は、その構成文字に相応して、「レガシーユニット」とのみ称呼される造語からなる商標というべきものであって、単に「レガシー」の称呼及び「遺産、遺物」などの観念は生じないというべきである。
イ 請求人は、本件商標の構成中の「Unit」の文字部分に関し、指定商品の表示例(甲10、甲13?甲27)、取引の実際における使用例(甲28?甲34)、「UNIT/ユニット」等の文字からなる商標の拒絶の事例(甲35?甲42)を挙げ、「Unit」の文字部分は、自他商品の識別機能を有しない部分であるから、本件商標は、「Legacy」の文字部分に自他商品の識別機能がある旨主張する。
しかし、指定商品の表示例や取引の実際における使用例は、「unit」の語の前には具体的な商品の普通名称等が配され、その構成全体が一体となって特定の商品を表すものであるといえるし、また、拒絶の事例にしても、「UNIT」、「ユニット」等の単独の文字からなる商標についてのものである。これに対し、本件商標における「Unit」の文字は、本件商標の指定商品との関係で、具体的な商品表示とはいえない「Legacy」の文字と結合されたものであって、本件商標の構成全体をもって、特定の意味合いを生ずることのない一体不可分の造語を表したと認識されるものである。
そうとすると、本件商標における「Unit」の文字部分と、請求人の挙げた指定商品の表示例、取引の実際上の使用例又は「UNIT」、「ユニット」等の文字のみの拒絶の事例とを同列に論ずることはできず、その存在をもって、上記認定が左右されるものではないから、請求人の主張は、理由がなく採用することができない。
(2)引用商標
引用商標は、前記第2のとおり、「LEGACY」の文字を標準文字で表してなるものであるから、これより「レガシー」の称呼を生ずるものであって、「遺産、遺物」の観念を生ずるものである。
(3)本件商標と引用商標との対比
本件商標と引用商標とは、それぞれ上記のとおりの構成からなるものであるから、外観上明らかに区別し得るものである。
また、本件商標から生ずる「レガシーユニット」の称呼と引用商標から生ずる「レガシー」の称呼とは、「レガシー」の音を共通にするものであるとしても、本件商標の称呼には、後半部において、引用商標の称呼には存在しない「ユニット」の音を有するものであるから、該音の有無の差異が両称呼に及ぼす影響は極めて大きく、それぞれの称呼を一連に称呼した場合においても、全体の語調、語感が著しく相違したものとなり、称呼上互いに紛れるおそれはない。
さらに、本件商標は、造語からなるものであって、特定の意味合いを生ずることのないものであるから、「遺産、遺物」の観念を生ずる引用商標とは、観念上相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
(4)小活
以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する商標と認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の著名性
甲第44号証ないし甲第55号証を総合すれば、引用商標を付した請求人の業務に係る自動車「レガシィ(LEGACY)」は、1989年(平成元年)1月に発表され、発売初年度で平均月販が約4,200台の実績をあげたこと、同年10月に発売された「LEGACY ツーリングワゴンGT」が好評を博し、「レガシィ(LEGACY)」は、一気に販売を伸ばし、1990年(平成2年)3月には月販7,715台を記録したこと、「レガシィ(LEGACY)」は、発表以後、数々のマイナーチェンジ又はフルモデルチェンジを重ね、現在に至るまで継続的に生産され、販売されていること、初代セダンの「レガシィ(LEGACY)」は、世界ラリー選手権(WRC)に参戦し、1993年(平成5年)、請求人として初の世界制覇を成し遂げ、「レガシィ(LEGACY)」の名は、我が国のみならず世界的にも知られるようになったこと、本件商標の登録出願前である2004年(平成16年)に、「レガシィ(LEGACY)」は、請求人初の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したこと、2005年(平成17年)5月6日時点で、「レガシィ(LEGACY)」の世界累計生産台数が300万台を突破し、それを記念したキャンペーンが行われたこと、などを認めることができる。
以上によれば、引用商標は、請求人の業務に係る商品「自動車」を表示するものとして、本件商標の登録出願日(平成18年9月6日)前には既に、我が国の自動車関連の商品及び役務の分野の取引者、需要者の間に広く認識されていたものであって、その著名性は、本件商標の登録審決日(平成20年2月28日)にも継続していたものと認めることができる。
(2)出所の混同
上記(1)のとおり、引用商標は、請求人の業務に係る商品「自動車」を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録審決時において、我が国の自動車関連の商品及び役務の分野の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。
しかしながら、上記1認定のとおり、本件商標は、その構成全体もって、一体不可分の商標を表したと認識されるものであるから、その構成中の「Legacy」の文字部分のみが独立して自他商品の識別機能を発揮するものではなく、引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、相紛れるおそれのない非類似の商標であること、さらに、引用商標は、「遺産、遺物」を意味する、我が国で知られた英語の普通名詞であり、その独創性は格別高いものとはいえないこと、引用商標が本件商標の指定商品である「電子応用機械器具及びその部品」の分野のみならず、その他自動車関連の商品及び役務の分野以外の分野において、著名性を獲得していたと認めるに足りる証拠の提出はないこと、などを併せ考慮すると、本件商標に接する需要者、取引者は、請求人の業務に係る自動車について使用される引用商標を想起又は連想することは極めて少ないというべきである。
したがって、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、該商品が請求人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
この点に関し、請求人は、自ら自動車用の電子制御装置、ETC車載器等の電子応用機械器具の製造又は販売を行っており、産業機械器具、自動車、航空機、その他多種多様な機械器具を取り扱うほか、多様な分野における子会社を有し、さらには、様々な商品を取り扱う大型ショッピングモール等も展開すること等からすれば、本件商標が付された製品に接した需要者・取引者が、請求人又は請求人と資本関係若しくは業務提携関係にある会社の業務に係る商品、あるいは、請求人製品「LEGACY」の専用部品又はユニット製品であるとの誤認混同を生ずるおそれは極めて高い旨主張する。
しかし、本件商標の指定商品と自動車用のコンピュータ関連の部品とは、全く関連性がないとはいえないが、本件商標の指定商品中には、一般の需要者向けの商品が多く含まれているのに対し、自動車用のコンピュータ関連の部品は、一般需要者向けの商品ではなく、その需要者は自動車メーカー等専門業者に限定されるものであるから、需要者、取引系統等が異なる場合が多いといえるばかりか、今日において、様々な商品にコンピュータやコンピュータ用プログラム等が組み込まれている実情からすると、コンピュータやコンピュータ用プログラム等とこれらが組み込まれた商品とは、商品そのものの用途、目的、取引形態、流通経路、需要者等が異なる場合が多く、常に密接な関係を有するとまでいうことはできない。
さらに、請求人が多角経営を行っている企業であることはうかがうことができるとしても、上記のとおり、請求人の業務に係る自動車以外の商品や役務に引用商標が使用され、引用商標がこれら様々な商品・役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている事実を認めることができる証拠は見いだせない。
したがって、上記に関する請求人の主張は理由がない。
(3)小活
以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する商標と認めることはできない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2013-09-30 
結審通知日 2013-10-02 
審決日 2013-10-17 
出願番号 商願2006-82923(T2006-82923) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (Y09)
T 1 11・ 262- Y (Y09)
T 1 11・ 263- Y (Y09)
T 1 11・ 261- Y (Y09)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 梶原 良子
田中 敬規
登録日 2008-04-11 
登録番号 商標登録第5127147号(T5127147) 
商標の称呼 レガシーユニット、レガシー 
代理人 大房 孝次 
代理人 板谷 康夫 
代理人 谷山 尚史 

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