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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y28
管理番号 1281520 
審判番号 取消2012-301010 
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-12-27 
確定日 2013-10-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第2355606号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第2355606号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2355606号商標(以下「本件商標」という。)は,「UNITE」の欧文字と,「ユナイト」の片仮名とを上下二段に書してなり,平成元年2月16日に登録出願,第24類「運動具」を指定商品として,同3年11月29日に設定登録されたものである。
その後,同13年11月27日に商標権の存続期間の更新登録がなされ,また,指定商品については,同16年4月21日に,第28類「運動用具」のほか,第6類,第8類,第9類,第18類ないし第22類,第25類及び第27類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品に指定商品の書換登録がなされ,さらに,同23年12月13日に,第28類について商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成25年1月24日である。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,第28類「運動用具」について,継続して3年以上,日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は,本件商標に関して,商品「ゴルフクラブ」について株式会社イング(以下「イング」という。)に使用許諾をしているところ,本件商標は,通常使用権者(イング)により,本件商標に係る指定商品中の「ゴルフクラブ」について,本件審判の請求登録前3年以内に日本国内において使用されている,とのことである。
しかし,イングが本件商標を使用していることの合理的な説明もなければ,その事実を直接的に示す証拠も提出していない。
また,被請求人は,イングとの間に通常使用権の許諾契約があったと主張するが,それを示す証拠は何ら提出していない。
(2)被請求人は,インターネット上の電子商店街「楽天市場」に平成24年3月26日付けで掲載された広告(乙1)を根拠に,本件商標が使用されている事実を主張しており,さらに,当該広告に係るゴルフクラブは,イングから株式会社広田ゴルフ(以下「広田ゴルフ」という。)に販売されたものであるとされている(乙2及び乙3)。
ア 上記広告は,広田ゴルフが,インターネット上の電子商店街で本件商標をゴルフクラブに使用しているかのような外形を示すにすぎない。仮にこの広告により,広田ゴルフが,本件商標を「ゴルフクラブ」に使用している外形が示されているとしても,同社が本件商標を「ゴルフクラブ」について正当に使用する権原があることについて合理的な根拠が示されていない。
また,その根拠が乙第2号証及び乙第3号証であるとすれば,これらの証拠が示す販売の日付けが,それぞれ平成24年5月17日及び同年11月27日であるのだから,広田ゴルフが平成24年3月26日にインターネット上に掲載したゴルフクラブは,被請求人の販売に係るものであるとのことを,その掲載日よりも2ヶ月も後の日の販売記録(伝票)により証明しようとするものであり,論理的に矛盾する。
すなわち,広田ゴルフは,イングから購入する前のゴルフクラブをインターネット上の電子商店街に掲載し販売していることになる。もっとも,インターネット上の電子商店街等のいわゆるバーチャル市場では,このように商品現物の受け渡しの前に商品の広告が掲載されるという形態もあり得ないわけではないが,本件においては,広田ゴルフがインターネット上の電子商店街に掲載したゴルフクラブが,イングから適法に購入したものであるかどうかは,重要な問題である。
イ 広田ゴルフがインターネット上の電子商店街に掲載しているゴルフクラブの広告画面(乙1)では,「【ING UNITE IRON Set 8本 LH】」や「アイアンセット8本」なる表記があるのに対し,上記ゴルフクラブが被請求人から広田ゴルフに販売されたことを示すとされている乙第2号証及び乙第3号証には,「UNITE(左)I×9」と記載されているのみである。
上記証拠に記されている「UNITE」や「I」は何を示すのか,「9」とは何を意味するのかについても被請求人が明確にし,上記証拠に記載されているものが上記インターネット上の電子商店街に掲載されているゴルフクラブと同一であることを説明しない限り,前述の疑義は解消しない。
ウ なお,上記ゴルフクラブについては,実店舗が存在しない営業形態であり,かかる営業形態では,商品の実体及び取引の実体がまったく無い状況においても,インターネット上であたかも実際の商品が市場におかれ,現実に取引がなされているかのように見せることは,画像処理によっていとも簡単に行える。
もっとも,本件に関して,平成23年12月20日以降,請求人が再三にわたって本件商標の使用事実の提示を要求しているにもかかわらず,まったくこれに応じようとしない被請求人には,かかる疑義が生じるのもまたやむを得ないのであり,被請求人はこの点も明らかにしなければならない。
(3)被請求人は,請求人が本件商標と同一の商標を継続して使用していると主張する(乙4)。
しかし,乙第4号証が示しているものは,ゴルフ用品販売会社であるラッセル株式会社が「Golfhands」なる名称で出店しているインターネット上の電子商店街「楽天市場」のサイト画面であって,請求人のインターネットサイトの広告ではない。しかも,同社と請求人との間にはまったく取引関係がなく,請求人は,何故に同社のインターネット上の電子商店街に請求人のブランド名を付した商品が掲載されているのか不知である。
したがって,このような見当違いの証拠に基づく被請求人の主張には根拠がなく,該主張自体失当である。
(4)本件審判は,本件商標と同一の商標が日本国内で正当に使用されているかどうかを審理するものであり,使用されていないのであれば,その使用を欲する第三者に当該商標の使用の途を開いて第三者を保護する一方で,使用行為がなされている限りでは,実際に使用されている商標と登録商標との同一性を緩やかに解釈(社会通念上の同一)することによって権利者を妥当な範囲で保護し,対立当事者の利益のバランスを図っているのである(商標法第50条第1項)。
したがって,被請求人は,広田ゴルフが,正当な権原のもとに本件商標を上記ゴルフクラブについて使用したことを,信憑性の高い証拠に基づいて合理的に証明しなければならない(同条第2項)。
(5)以上のように,被請求人が主張する本件商標の通常使用権者による使用の事実には,その根拠がなく,本件商標は,その指定商品について本件審判請求登録前3年以内に請求人(審決注:「被請求人」の誤記と認められる)又は使用権者により日本国内において使用されているとはいえないものである。
3 上申書
(1)本件商標権の現状を含め,10年も前に解散した会社がどのような特別な事情で精算手続きの完了をみないのかについて,被請求人は,在庫の売却が終わらないから精算手続きが結了しない旨を述べているにすぎない。在庫の換価は通常の精算手続きであるが,その通常の手続きがなぜ10年が経過しても終わらないのかについて不明のままである。被請求人が,解散した会社であるにもかかわらず意図的に会社法上形式的に存続させ,使用意思もない本件商標を形式的に保有していただけてあると判断するに十分な情況である。
(2)被請求人は,「イングとは同族会社であるから両者間には本件商標の使用許諾契約書がなく,またそうであったとしても,本件商標が事実上使用許諾され,関連商品に使用され続けてきた」旨を何らの証拠も無しに漠然と主張し,さらに,同族会社間にて契約書の不存在を理由に通常使用権の地位が認められないのは酷であると主張するが,本件審判では,使用許諾の事実,通常使用権者の地位の「証明」が重要なのであって(商標法第50条第2項),同族会社であればその証明を要しないかのような被請求人の主張は,本件審判の趣旨並びに法律を理解しないあるいは無視した見解であるといわざるを得ない。
(3)乙第1号証に記されたアドレスからは,当該証拠がイングの広告を示すものであることを確認できない点について,被請求人は,当該証拠が広田ゴルフの広告サイトを示すものであることを認めながらも,その画面上に「ING」なる文字が表示されていることのみをもって,これがイングの広告を示すものであると主張するが,かかる被請求人の主張は見当違いも甚だしく,失当であるといわざるを得ない。
(4)乙第2号証に記された内容と乙第1号証に掲載された事項とが対応せず,乙第2号証からは,如何なる商品の取引であるのかを確認することができない点について,被請求人は,「ゴルフクラブの一般取引においては,その商品のみでなくいくつかの商品をまとめて納品するものであるから,納品書の記載と実際に納品された商品とが一致しない」旨を主張するが,つまり,乙第2号証は,乙第1号証に記された製品を,イングから広田ゴルフに納品したものであるかどうかを客観的に証明することができないと自ら主張されていることになる。
また,広田ゴルフに宛てた「領収書」の発行者がイングではない点について,被請求人は,実質的にイングが発行したものであると主張するが,かかる主張は意味不明,かつ,失当である。乙第2号証に記されているのは,住所も名称もイングとは異なる自然人であり,当該自然人が,たとえイングの代表者であったとしても,両者の人格は法的にまったく異なるものである。
さらに,被請求人は,「イングと広田ゴルフとの間の取引は,・・・その他にも継続して取引を行っている」旨主張するが,それを示す証拠は,一切提出されていない。
ところで,請求人は,ゴルフクラブ及びゴルフ用品の製造及び販売を行っているが,被請求人が主張される上記取引形態(納品書と商品との不一致が通常であるという点)がゴルフクラブの一般的な取引であるとは聞いたことがなく,そもそも会社法及び税法上,納品書・請求書と実際に納品する商品とは,完全にー致させなければならない。加えて,被請求人は,イングとその代表者を実質的に同一であると主張して,イングの売上げをその代表者の売上げとして計上していることを自ら明らかにしたが,かかる被請求人の主張及び行為は,イングの会計に脱税等の違法行為があったかのような疑義を十分に生じさせるものである。
(5)イングと被請求人との関係並びにイングが通常使用権者であることが明確でない点について,被請求人は,何ら明らかにしていない。被請求人は,「黙示の使用許諾があった」旨を主張するが,本件において,その「証明」は一切なされていない。
(6)被請求人は,本件審判の請求は,請求人の権利濫用であると主張され,その理由を工業所有権法逐条解説第19版(特許庁編)の記載に求められ,請求人が,被請求人を害する意図があったからとされている。
しかしながら,かかる論理は,商標法第50条の趣旨を無視した自己中心的な解釈に基づく論理であり,本件審判の請求に至った経緯は,そもそも被請求人が本件商標権を侵害するとの理由で請求人に金銭の要求をしたにもかかわらず,いつまで経っても係争に決着を付けようとしない被請求人の態度に,請求人が痺れを切らしてやむなく審判請求に及んだものであり,被請求人を害する目的など最初から無いことは明白である。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
1 答弁の理由
本件商標は,第28類「運動用具」について,本件商標の通常使用権者である「イング」が,本件審判の請求の登録前3年以内に,我が国において,その請求に係る指定商品中「ゴルフクラブ」について使用をしている。
(1)本件商標の使用の事実
本件商標の使用証拠として,平成24年3月26日インターネット掲載広告(乙1),広田ゴルフヘの販売を示す,平成24年5月17日の領収書仕入れ伝票(乙2),同年11月27日の領収書仕入れ伝票(乙3)を提出する。
ゴルフクラブのヘッドにも「UNITE」の商標が鮮明に刻印されているとともに,広告及び仕入れ伝票等においても「UNITE」の商標で取引されていることが明らかである。
したがって,通常使用権者が本件商標の使用を長年行っており,本件商標は使用されていたため,審判請求登録前3年以内に使用されていることは明白である。
(2)請求人について
請求人は,商標権者が商標権侵害の警告を行っている相手であり,乙第4号証に示すように,請求人は本件商標と同一である「Unite」を使用しているにもかかわらず,侵害警告に対して,侵害の事実を認めず,使用料の支払い(商標法第38条第3項)にも全く応じないものであり,自己の違法行為を反省するどころか,本件審判に及んで自己の違法行為を隠蔽しようとしたものである。
2 上申書
(1)被請求人及び商標の通常使用権者であるイングの両会社について,被請求人は,清算手続きを開始したものの,本件商標を付した商品の在庫が各々に存在し,それらの商品が売却できるまで清算結了とはしてもらえないため,現在も清算手続きの一環として商品の売却を少しずつ行っており,イングは,継続的に商品の販売を続けている。
被請求人は,青田昇次が創業者で,高齢にて病に伏したこともあり,イングを息子である青田隆夫が設立したとの経緯がある。イングは,被請求人関係の商品も徐々に取り扱うようになり,平成13年度頃から「UNITE」の商標も黙示の使用許諾のもと使用し,商標「UNITE」関連商品の販売を現在に至るまで継続している。
使用許諾に係る書面での契約書は,同族会社であるため作成していないが,このような同族会社で使用許諾を書面で交わすのはまれであり,契約書面の不存在のみを理由に通常使用権者の地位が認めらないのは被請求人にとって極めて酷である。
(2)提出した乙第1号証の広告の商品8本との表記と,乙第2号証及び乙第3号証の領収書の商品9本との表記のゴルフクラブの本数の表記の相違は,ゴルフクラブの一般取引においては,その商品のみでなくいくつかの商品をまとめて納品する為であり,9本の中に乙第1号証の広告の商品(8本セット)が含まれている。むしろ,完全にゴルフクラブの本数まで一致する方が珍しいかと思われる。
また,乙第1号証の広告につき,イングは,自社のホームページを持つ余裕がないため,従来から取引関係のあった広田ゴルフのページを借りて広告を掲載しているものであり,乙第1号証には,商品表記中に「ING」とイングの名称が入っており,イングによる広告であることは明らかである。
さらに,乙第2号証の領収書は,イングの代表者である青田隆夫名義にて発行したものであり,実質的にイングが発行したものといえる。
乙第2号証及び乙第3号証の平成24年5月17日の取引と平成24年11月27日の取引以外にも取引を継続的に行っており,広田ゴルフヘの取引は,月に数度商品を納品する程度である。
(3)工業所有権法逐条解説には「請求人適格を『何人』としても,当該審判の請求が被請求人を害することを目的としていると認められるような場合には,その請求は権利濫用として認められない可能性がある。」(商標法第50条「工業所有権法逐条解説」(第19版)1460頁-1461頁)と記載されている。
請求人は,「Unite」との商標を使用していたものの自社ホームページにおいて商標を「Unit Belly」に変更し(乙6),「Unite」との商標は一切使用の必要が無いことを,再三当方との交渉において主張している。にもかかわらず,このような審判を起こしているのは,商標侵害に関する損害金としての使用料の支払いや販売先への警告を極度に恐れ,当社への嫌がらせ目的と,当社を取消審判に対応させることでこれら恐れている販売先への警告を暗に防止しているものと見受けられ,本件審判は,明らかに被請求人を害する目的でなされたものであり,権利濫用にあたるため,審判請求は,認められるべきではない。このような審判の利用は,断じて許されるものではなく,また,仮に商標が何らかの原因で消滅しても,過去の侵害事実と使用料の支払い義務は消滅するわけでもない。
また,本件商標を侵害していた請求人への警告を行ったのは,使用料相当額の損害を得て必要な費用に充当するためと,最終的に商標権も財産権であるところから売却先を見つけなければならないが,侵害状態であれば,売却もままならず,清算にも大いに支障をきたすためである。
(4)以上のように,本件審判は不当な請求であり,また,本件商標は,権利者である被請求人から使用許諾を受けてイングにより継続的に使用されている。

第4 当審の判断
1 不使用取消審判
商標法第50条に規定する商標登録の取消しの審判にあっては,その第2項において,「その審判の請求の登録前3年以内(本件の場合,平成22年1月24日から平成25年1月23日,以下「要証期間」という。)に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り,使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにした場合を除いて,商標権者は,その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」旨規定されている。
2 本件商標の使用について,被請求人の主張及び提出に係る証拠並びに請求人の提出に係る証拠によれば,以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は,要証期間である平成24年3月26日の日付けが印刷された,作成者不明の,インターネットのウェブページ(http://item.rakuten.co.jp/auc-r...)である。
そして,これには,「左用 アイアンセット【ING UNITE IRON Set 8本 LH】」,「UNITE アイアンセット8本(♯4?9,PW,SW)・・・」等の記載と,「UNiTE」の欧文字が刻印された商品「ゴルフクラブ」の写真が掲載され,その下には,「UNITE IRON レフティー 4-9PW,SW 8本セット」の記載と該商品の値段が掲載されている。
該証拠に示された「ゴルフクラブ」は,本件指定商品である「運動用具」に含まれる商品であり,また,「ゴルフクラブ」に刻印されている「UNiTE」及び「UNITE」の欧文字は,「UNITE」の欧文字と「ユナイト」の片仮名とを上下2段に表してなる本件商標と,社会通念上同一のものと認められる。
しかしながら,該情報は,そのアドレス表示「http://item.rakuten.co.jp/auc-r...」から「楽天」のウェブサイトに掲載されたものであって,その他,該ウェブページの作成者等の情報は,確認できないものであるから,該証拠によっては,被請求人等による商品の広告ということができない。
また,被請求人は,イングが広田ゴルフのウェブページを借りて広告を掲載している旨主張するが,上記ウェブページが,広田ゴルフのウェブページであるならば,これは,広田ゴルフが上記「ゴルフクラブ」を販売しているものと理解されるものであって,イングによって,該「ゴルフクラブ」が広告されている事実はどこにも見あたらないから,広田ゴルフによる商品の広告というのが相当である。そして,広田ゴルフとイングとは,別の会社であることから,イングによる商品の広告ということができない。
さらに,被請求人は,「乙第1号証には商品表記中に『ING』とイングの名称が入っており,イングによる広告である」旨主張するが,「【ING UNITE IRON Set 8本 LH】」の表示中の「ING」部分が,いかなることを表すものであるかを確認することができず,他に,該文字がイングを表したものといえる記載は見あたらない。
そうとすれば,要証期間に,本件商標と社会通念上同一と認められる表示が,「ゴルフクラブ」に付されて,当該商品に関する広告がなされていたとしても,該広告は,本件商標の商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによりされたものということができない。
(2)乙第2号証の上段は,平成24年5月17日付けの「青田隆夫」から「広田ゴルフ」に宛てた「領収書」であり,その金額は,「47,350」円である。
また,下段は,平成24年5月17日を納品日とする「仕入伝票」であり,「社名」の欄には「株.広田ゴルフ」及び「取引先名」の欄には「(株)イング」の記載がある。
そして,「品名・規格」の欄には「UNITE(左)I×9」の記載があり,その「単位」の欄には「セット」及び「数量」の欄には「4」と記載されている。また,「品名・規格」の欄には「パター」の記載があり,その「単位」の欄には「本」及び「数量」の欄には「1」と記載されている。さらに,該仕入伝票の「原価金額合計」の欄には「47,300」と記載されている。
該証拠によれば,要証期間である平成24年5月17日に,イングと広田ゴルフとの間に「UNITE(左)I×9」が「4セット」と,「パター」が「1本」取引され,その代金として,47,300円が支払われたものと認められる。
しかしながら,「品名・規格」に記載された「UNITE(左)I×9」は,いかなる商品であるかを確認することができず,仮に,その「I×9」が「アイアン9本」を表すものであるとしても,乙第1号証で広告された商品は,「アイアンセット8本」であることから,その記載内容が一致しておらず,乙第1号証に示す「UNiTE」の欧文字が付された「ゴルフクラブ」に関する取引ということができない。
また,上記「領収書」の発行者である「青田隆夫」は,個人の氏名であって,その住所は「神崎郡市川町西田中8番地」と記載されているものであり,イングの住所である「神崎郡市川町谷936番地3」(乙5)とは相違するものであるから,イングが発行したものということもできない。
(3)乙第3号証の上段は,平成24年11月27日付けの「イング」から「広田ゴルフ」に宛てた「領収書」であり,その金額は,「150,000」円である。
また,下段は,平成24年11月27日を納品日とする「仕入伝票」であり,「社名」の欄には「(株)広田ゴルフ」及び「取引先名」の欄には「(株)イング」の記載がある。
そして,「品名・規格」の欄には「UNITE(左)I×9」の記載があり,その「単位」の欄には「セット」及び「数量」の欄には「15」と記載され,該仕入伝票の「原価金額合計」の欄には「150,000」円と記載されている。
該証拠によれば,要証期間である平成24年11月27日に,イングと広田ゴルフとの間に「UNITE(左)I×9」が「15セット」取引され,その代金として,「150,000円」が支払われたものと認められる。
しかしながら,「品名・規格」に記載された「UNITE(左)I×9」は,いかなる商品であるかを確認することができず,仮に,その「I×9」が「アイアン9本」を表すものであるとしても,乙第1号証で広告された商品は,「アイアンセット8本」であることから,その記載内容が一致しておらず,乙第1号証に示す「UNiTE」の欧文字が付された「ゴルフクラブ」に関する取引ということができない。
なお,被請求人は,乙第1号証の広告の商品8本との表記と,乙第2号証及び乙第3号証の領収書の商品9本との表記の相違について,「ゴルフクラブの一般取引においては,その商品のみでなくいくつかの商品をまとめて納品する為であり,9本の中に乙第1号証の広告の商品(8本セット)が含まれている」旨主張する。
しかしながら,乙第2号証及び乙第3号証の仕入伝票の「品名・規格」の欄に記載されている「UNITE」,「I」及び「9」の記載が,何を示すものであるかについては,未だ明確ではない。
そして,該仕入伝票の「品名・規格」の欄に記載された「UNITE(左)I×9」について,仮に,この記載中の「I」が「ゴルフクラブ」の「アイアン」を示し,「9」がその本数を示すのであれば,「ゴルフクラブ」の「アイアン」が,「9本」を「セット」として取引されたことを表すものとみることができるのみであり,かかる記載からは,「セット」として取引された商品「ゴルフクラブ」自体を特定することができない。
これに対し,乙第1号証には,「ゴルフクラブ」の写真とともに,「アイアンセット8本(♯4?9,PW,SW)」と記載されていることから,「セット」として販売される商品は,写真に示される「ゴルフクラブ」の「アイアン」であり,その内容は,「♯4?9」の6本と,「PW」及び「SW」を加えた合計「8本」であるものとみることができる。
してみれば,上記のとおり,該仕入伝票により取引された商品が,その記載のみによっては特定することができず,他に,被請求人からは,上記主張を裏付ける証拠は提出されていないものであるから,該仕入伝票に記載されている商品についての取引が,乙第1号証に掲載されている「ゴルフクラブ」を含む取引であるということを確認することができない。
(4)乙第4号証は,「楽天」に掲載されたウェブページの情報であるが,本件商標の使用に関するものではない。
(5)乙第5号証は,イングの「履歴事項全部証明書」であり,その「役員に関する事項」の欄には「取締役」として「青田隆夫」,「青田昇次」及び「青田八重子」の各氏名が記載されている。
そして,イングが本件商標の通常使用権者か否かについては,商標権者である有限会社ユナイトゴルフの「履歴事項全部証明書」(甲5)によれば,その「役員に関する事項」の欄に,「清算人」として「青田昇次」,「青田隆夫」及び「青田八重子」の各氏名が記載されており,これらの者は,イングの「取締役」の欄に記載された者と一致しているものであるから,両社は,同族会社(親族・使用人など相互に特殊な関係をもつ者だけから成る会社。)と認められる。
そうとすると,被請求人の主張のとおり,イングは,商標権者から本件商標について黙示の使用許諾がなされているものと推認できるものであるから,イングは,本件商標の通常使用権者とみて差し支えないものである。
(6)乙第6号証は,請求人のウェブページの情報であるが,本件商標の使用に関するものではない。
3 小活
以上のとおり,イングが広田ゴルフに販売したとする,商標権者の在庫の商品「ゴルフクラブ」が特定されておらず,かつ,被請求人の提出に係る乙各号証によっては,本件商標(社会通念上同一のものを含む。)が,要証期間に,取消請求に係る指定商品に含まれる「ゴルフクラブ」について,イングによって,使用されたものと認めることができない。
なお,被請求人は,「商標権者が清算手続きを開始してから相当程度の年月が経過するも,未だ,本件商標を付した商品の在庫があり,現在もそれらの商品の売却を行っている」旨主張するが,被請求人の提出に係る証拠を勘案しても,商標権者が製造又は販売した本件商標を付した商品「ゴルフクラブ」が定かでなく,また,その商品の在庫がどの程度あるのかも不明であり,さらに,通常使用権者が,要証期間に取引したとする商品が,商標権者の商品と同一のものであるかについても,その事実を確認することができない。
4 むすび
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,取消請求に係る指定商品のいずれかについて,本件商標を使用していることを証明したものと認めることができない。
また,被請求人は,本件請求に係る指定商品について,本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2013-08-30 
結審通知日 2013-09-04 
審決日 2013-09-18 
出願番号 商願平1-16900 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y28)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 修 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 田中 亨子
谷村 浩幸
登録日 1991-11-29 
登録番号 商標登録第2355606号(T2355606) 
商標の称呼 ユナイト 
代理人 松田 朋浩 
代理人 西木 信夫 
代理人 内山 美奈子 

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