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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X35
管理番号 1281453 
審判番号 取消2012-300357 
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-05-02 
確定日 2013-10-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第5190076号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5190076号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成19年4月1日に登録出願、第35類に属する「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、平成20年12月19日に設定登録されたものであり、その後、指定役務中の「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,牛乳の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,茶・コーヒー及びココアの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」についての登録は、平成24年5月2日付けの審決により取り消され、その確定の登録が平成24年7月5日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定役務中、第35類「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を、要旨次のとおり述べ、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、上記に記載のとおりの本件審判の請求に係る指定役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実がないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人(商標権者)は、本件審判の請求に係る指定役務に含まれる「エコバッグの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,名刺入れの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,マネークリップの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,腕時計の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について、本件商標と同一の態様の商標を本件審判の請求の登録前3年以内に使用していると主張し、乙第1号証ないし乙第3号証を提出する。
しかしながら、以下のとおり、被請求人の提出する乙各号証は、いずれも本件商標が使用されていたことを証明するものではない。
(1)乙第1号証
乙第1号証は、2012年3月2日の時点で、商標権者の通常使用権者と推認される株式会社ブルーノートジャパンInc.(以下「ブルーノートジャパン」という。)の営業に係る「ブルーノート東京」のスーベニア・ショップにおいて、「マグカップ、Tシャツ、フェイスタオル、キャップ、ライターの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」が行われていたということを示すものであり、本件審判の請求の登録前3年以内に、被請求人が主張する商品に係る小売等役務が行われていたことを示すものではない。
さらに、1988年から南青山でジャズクラブレストラン「ブルーノート東京」(以下、単に「ブルーノート東京」という。)の営業が行われてきたとしても、スーベニア・ショップはいつから開業されていたのか、その時期を証明する書面等の提出もされていない。
(2)乙第2号証
被請求人は、乙第2号証が、2009年8月から2012年6月までの「ブルーノート東京」スーベニア・ショップの月毎の棚卸表及び売上表であると説明する。
しかしながら、これらの表は、いずれも市販の表計算ソフトで作成されたと思われるが、その作成者、作成日及び「ブルーノート東京」スーベニア・ショップの名称の記載もないものであり、当該ジャズレストランにおいて正規に使用されている帳票であることを示す記載は一切ない。また、市販の表計算ソフトによる表は、容易に作成又は修正することができるものであり、このような表のみをもって、本件商標を使用していたことを証明する証拠としては、その客観性を著しく欠くものである。
(3)乙第3号証
乙第3号証の写真から、撮影された場所を明確に示す被写体がなく、撮影場所が「ブルーノート東京」スーベニア・ショップであることを特定することはできない。さらに、日付を特定するものも表示されておらず、本件審判の請求の登録日前3年以内に、商標権者及び通常使用権者が、本件審判の請求に係る小売等役務を行ったことを示す証拠とはなり得ない。
3 口頭審理における陳述
(1)乙第2号証
被請求人は、棚卸表及び売上表(乙2)がブルーノートジャパンの社内で毎月管理され、決算時に用いられる真正なデータであると主張し、同社代表者兼ゼネラルマネージャー中村氏の陳述書(乙8)を提出している。
しかし、ブルーノートジャパンは、商標権者から使用許諾を受けた通常使用権者であり、本件商標が取り消されることについて直接の利害関係を有する者にあたるため、当該陳述書は客観的な証拠能力の低いものといえる。
また、ブルーノートジャパンが小売等役務を提供していた以上(甲2)、売上や仕入れに係る帳票が必ず保管されているはずであるにもかかわらず、客観性を著しく欠く乙第2号証及び乙第8号証のみによって証明を行うのは不自然かつ不合理である。
(2)乙第3号証
乙第3号証の写真は、被請求人、自らが述べるとおり、日付や撮影場所を示していない点で、証拠能力が極めて低いものといえる。
4 平成25年1月10日付けの上申書
(1)乙第9号証及び乙第10号証について
乙第9号証の写真は、被請求人自らが平成24年12月3日に撮影されたものとしており、要証期間内に撮影されたものではない。
また、ブルーノートジャパンは本件商標の通常使用権者であり、本件商標が取り消されることについて直接の利害関係を有する者にあたるため、この関係者である中村氏の陳述書(乙10)は極めて客観性の低い証拠である。
(2)乙第11号証
乙第11号証-1ないし4は、2011年8月に「ブルーノート東京」のスーベニア・ショップで購入された商品の売上レシートの一部とされるものであり、被請求人の主張するとおり、「エコバック」及び「マネークリップ」という品名が表示されたレシートが含まれている。
しかし、これらのレシートに表示される品名や売価は、POSレジスターやスタンドアローン・タイプのレジスターであれば、容易に変更が可能であるから、これらのレシートだけでは十分、客観性があるとはいえない。仮にこれらのレシートが真正なものだとすれば、表示された品名の商品が要証期間内に販売されたことを裏付ける他の書証、例えば、日付の記載のある製品の企画や仕様に係る書面、業者間での納品書や請求書などの書類が多数保管されているはずであるが、このような書類は依然として提出されておらず、店舗側控えのうち僅か1か月間分のレシートの写しのみであって、乙第11号証は、本件審判の請求の登録前3年以内に、本件審判請求の対象である小売等役務に本件商標の使用をしていたことの証拠としては不十分なものである。
(3)乙第12号証
乙第12号証は、被請求人自らが述べているように、取扱商品との関係も配布の時期も全く不明であり、本件審判の請求の登録前3年以内に、本件審判請求の対象である小売等役務に本件商標の使用をしていたことを証明するものではない。
5 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかにより請求に係る指定役務について使用されている事実を立証できておらず、また使用していないことについての正当な理由とその証明も行っていないものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第15号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 被請求人の答弁
被請求人(商標権者)は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標と同一の商標を、本件審判の請求に係る指定役務中の「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に含まれる「エコバッグの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,名刺入れの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,マネークリップの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,腕時計の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について使用していた。
(1)小売店舗の名称として使用されている事実の証明
乙第1号証は、1988年から南青山で営んでいる「ブルーノート東京」の地下1階にあるスーベニア・ショップに関するウェブサイトからのプリントアウトであり、その左上に表示された本件商標と同一の態様の商標は、「ブルーノート東京」スーベニア・ショップの店舗名称であり、同ショップでは、ジャズクラブレストランに関連した商品として、マグカップ、Tシャツ、フェイスタオル、キャップ、ミニライター等の関連グッズが販売されている事実が明らかである。
(2)過去3年以内に小売店舗で取り引きが行われた事実の証明
乙第2号証は、2009年8月から2012年6月までの期間における、「ブルーノート東京」スーベニア・ショップの月毎の棚卸表及び売上表であり、「商品名」及び「品名」欄に列挙された商品のうち、エコバッグ・名刺入れ・マネークリップの小売サービスは、「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に、また、腕時計の小売サービスは、「時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に含まれる。
加えて、これらの商品が実際に同店舗において販売されている事実を裏付けるため、「ブルーノート東京」スーベニア・ショップの店舗内で撮影されたエコバッグの写真(乙3)を提出する。
2 口頭審理における陳述
(1)本件商標を使用している者
本件商標は、ブルーノートジャパンが運営する「ブルーノート東京」内のスーベニア・ショップの店舗名称として使用されている。乙第4号証は、「ブルーノート東京」のホームページの「COMPANY PROFILE(会社概要)」のプリントアウトであるところ、ブルーノートジャパンの直営店舗として「BLUE NOTE TOKYO(ブルーノート東京)」が明記されていることから、ブルーノートジャパンが「ブルーノート東京」及びスーベニア・ショップの実質的な運営者であり、同社が本件商標を使用している者である事実が明らかである。
(2)被請求人(商標権者)とブルーノートジャパンの関係
ア 「ブルーノート東京」について
「ブルーノート東京」は、米国のBENSUSAN社からライセンス契約を受けた株式会社ライカが、1988年(昭和63年)に東京の南青山でジャズクラブレストランを開業した。その後、株式会社ライカは、ブルーノートジャパンに一般承継された。
被請求人は、平成16年9月28日に、当該ジャズクラブレストランの営業権を譲り受けるとともに、この頃から、ブルーノート東京内に小売店舗(スーベニア・ショップ)を設け、関連グッズの販売を開始した。なお、「ブルーノート東京」及びスーベニア・ショップの実際の運営は、被請求人からの使用許諾に基づき、ブルーノートジャパンが引き続き行っていた。その後、経営形態に変化が生じ、被請求人は「ブルーノート東京」の営業権を株式会社ブルーノートミュージックに譲渡したが、実際の運営は、ジャズクラブレストラン、スーベニア・ショップともに、現在に至るまで継続してブルーノートジャパンが行っている。
イ ジャズクラブレストランに関する商標登録
ジャズクラブレストランに関する役務については、ブルーノートジャパンが登録第3072603号商標(第42類「飲食物の提供」)及び登録第4015109号商標(第42類「宴会のための施設の提供」)の商標権を保有していたところ、営業権の譲渡に伴い、平成18年1月26日付で被請求人が商標権者となった。その後、上記商標権は、一旦被請求人から株式会社ブルーノートミュージックに移転譲渡された後、被請求人が譲渡担保権者、株式会社ブルーノートミュージックが専用使用権者として設定登録され、現在に至っている(乙5及び6)。
ウ スーベニア・ショップに関する商標登録
スーベニア・ショップに関する役務については、被請求人が、平成19年4月1日付で本件商標の登録出願を行い、現在も商標権者の立場にある。
実際の運営は、上記アのとおり、現在に至るまでブルーノートジャパンが継続して行っている。
エ 被請求人とブルーノートジャパンの使用許諾関係
上記のとおり、過去8年にわたり被請求人がブルーノートジャパンにジャズクラブレストラン及びスーベニア・ショップの実際の運営を委ねてきた事実から、スーベニア・ショップに関する役務を指定する本件商標の使用権設定登録契約書は締結していないが、両者が「ブルーノート東京」スーベニア・ショップの運営にあたり密接な関係にあり、黙示の使用許諾関係が成立しているといえ、これにより、ブルーノートジャパンが被請求人より黙示の使用許諾を受けて本件商標を使用する使用権者であることが明らかである。
(3)乙第1号証に、本件審判請求に係る役務における取扱商品が掲載されていないことについて
ア 乙第1号証
乙第1号証におけるウェブサイトに掲載された商品は、「ブルーノート東京」スーベニア・ショップの取扱商品の代表的な一部のみが掲載されている。当該ウェブサイトは、「ブルーノート東京」スーベニア・ショップの店舗の広告宣伝を旨とするものであり、被請求人は、乙第1号証をもって本件審判請求にかかる役務における取扱商品が販売されている事実の立証を試みるものではなく、本件商標が「小売店舗の名称として」使用されている事実の証左として提出したものであって、「ブルーノート東京」スーベニア・ショップが現在も実際に存在することの証左として有効である。
イ 乙第1号証と乙第2号証との相関関係
乙第1号証に一部掲載された商品であるマグカップ、Tシャツ、フェイスタオル、キャップ、ミニライターは、乙第2号証の表中の「商品名」「品名」欄にすべて含まれており、乙第1号証と乙第2号証があいまって、「ブルーノート東京」スーベニア・ショップが2009年8月から2012年6月の間に、実際に営業を行っていた事実が裏付けられる。
(4)乙第2号証に、本件商標の表示がなく、誰が使用しているのか不明であることについて
乙第2号証のエクセルデータ中には、本件商標や作成者に関する情報は掲載されていないが、当該データが、実際に、ブルーノートジャパンの社内で経理担当者に毎月管理されており、同社の決算時に用いられる真正なデータであることを裏付けるべく、乙第8号証として、同社の代表者兼ゼネラルマネージャーである中村氏による陳述書を提出する。
(5)乙第3号証がどこで撮影されたのか不明であることについて
乙第3号証は、将来の不使用取消審判の請求に備えたものではないため、日付や撮影場所を示す店舗看板は写真中に写りこんでいない。
3 平成24年12月21日付けの上申書
(1)「ブルーノート東京」スーベニア・ショップの店舗・陳列写真
乙第9号証-1ないし4の写真は、「ブルーノート東京」スーベニア・ショップの店舗外観及び商品の陳列写真であり、平成24年12月3日に当該スーベニア・ショップにおいて撮影されたものであるところ、「ブルーノート東京」が現在の所在地である南青山に移転した平成10年11月以降、同スーベニア・ショップの店舗レイアウト及び取扱商品の陳列方法自体は変わっていない(乙10)。
(2)店舗側の売上レシート控(写し)
乙第11号証-1ないし4は、「ブルーノート東京」スーベニア・ショップで商品が購入された際の売上レシート(店舗側控え)の写しである。
レシートの上部には本件商標と同一態様の商標が付され、その下には「Blue Note Tokyo」の店舗名称と共に、電話番号及び住所、及びその中央部に、購入日時、購入商品の名称・単価・購入点数の内訳等が表示されている。
一般慣行に照らせば、レシート上部に大きく表された本件商標と同一態様の商標が小売店舗の名称の表示であると一般に理解されるものであるから、当該レシートの印字内容及び配置から、「Blue Note Tokyo」なる名称の小売店舗における購入明細を示すレシートであると容易に理解されるものである。
乙第11号証-1ないし4は、本件審判の要証期間内である2011年8月に「ブルーノート東京」スーベニア・ショップで購入された商品の売上レシートのうちの一部であり、その中には、本件審判請求に係る指定役務の取扱商品である「エコバッグ」及び「マネークリップ」の販売購入記録を示すレシートが含まれている。
したがって、本件商標と同一態様の商標を付したレシートに購入商品の明細等の情報を印字して顧客に手渡す行為は、小売等役務の提供に当たり、顧客の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為として、商標法第2条第3項第4号に規定する商標の使用に該当するものである。
(3)包装用袋の写真
乙第12号証は、「ブルーノート東京」スーベニア・ショップで用いられているビニール製の包装用袋の写真(第1頁目が表、第2頁目が裏)であり、袋の表側に本件商標と同一態様の商標が付されている。
(4)履歴事項全部証明書及び戸籍謄本の写し
被請求人の黙示の使用権者であるブルーノートジャパンと中村氏との関係を示すべく、ブルーノートジャパンの履歴事項全部証明書写し(乙13)及び戸籍謄本写し(乙14)を提出する。
(5)フリーペーパー写し
乙第15号証は、「ブルーノート東京」の店内等に置かれているフリーペーパー「JAM」の一部記事の抜粋の写しであり、2008年9?10月号であるところ、第2頁目の右下に「ブルーノート東京」スーベニア・ショップを紹介する記事が掲載されている。
したがって、乙第15号証は、2008年9月時点において「ブルーノート東京」スーベニア・ショップが現に存在していたことの証左である。そして、乙第1号証、乙第4号証、乙第9号証及び乙第10号証とあいまって、本件審判の要証期間中も同スーベニア・ショップが継続して存在してきた事実を裏付けるものである。
(6)まとめ
乙第1号証ないし乙第15号証を総合すれば、本件商標が本件審判請求に係る指定役務について使用されていることは明らかである。
特に、乙第11号証の売上レシートから、被請求人(商標権者)の黙示の使用権者であるブルーノートジャパンにより、日本国内で、過去3年以内に、本件審判請求に係る指定役務の中「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に含まれる「エコバッグ・マネークリップの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について、本件商標と同一態様の商標が使用されたとの事実が明らかである。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出した証拠及び職権調査によれば以下の事実を認めることができる。
(1)乙第4号証及び乙第13号証について
乙第4号証は、ブルーノートジャパンのウェブサイトにおける会社概要であり、ブルーノートジャパン(東京都港区南青山6-3-16ライカビル)について、設立が平成15年7月11日であること、直営店舗が「BLUE NOTE TOKYO(ブルーノート東京)」であることが記載されている。
なお、ブルーノートジャパンの「履歴事項全部証明書」(乙13)における「本店」及び「会社成立の年月日」の欄に記載の住所及び成立日は、乙第4号証の当該記載内容と一致する。
(2)乙第11号証について
ア 乙第11号証-1ないし4は、別掲2のとおりの商標(以下「使用商標」という。)、「Blue Note Tokyo 03-5485-0088」及び「港区南青山6-3-16 ライカビル」の文字(全てに記載されている。)及び2011年8月13日ないし同月31日の日付が表示されたブルーノート東京に係るレシート控23枚の写しであると認められる。
イ また、上記各レシートには、マネークリップ、エコバック、フェイスタオル、マグカップ、ライター、Tシャツ等の各種商品の表示が認められる。
ウ 特に、乙第11号証-1の「No.8983」レシートには、「2011年8月13日(土)」の日付の下「マネークリップ @4,200× 3 ¥12,600-」「エコバックM WE LOVE JAZZ ¥3,780-」及び「エコバックM JAZZ FOOL ¥3,780-」の表示があり、以下同様に、乙第11号証-2の「No.9067」レシートには、「2011年8月16日(火)」の日付の下「エコバックM・・・」、乙第11号証-3の「No.9308」レシートには、「2011年8月21日(日)」の日付の下「エコバックL・・・」、乙第11号証-4の「No.9775」レシートには、「2011年8月31日(水)」の日付の下「エコバックM・・・」及び「No.1442」レシートには、「2011年8月31日(水)」の日付の下「マネークリップ・・・」と表示されている。
エ そうすると、乙第11号証のレシートの記載内容によれば、ブルーノート東京において、2011年8月13日ないし31日にマネークリップ、エコバッグ(なお、乙第11号証のレシートに記載の「エコバック」は「エコバッグ」を表示しているものと認められる。)、フェイスタオル等の各種商品、特に、8月13日、16日、21日及び31日にはエコバッグ及びマネークリップが販売されたことを認めることができる。
(3)乙第5号証は、登録第3072603号商標に係る、また、乙第6号証は、登録第4015109号商標に係る商標登録原簿の写しである。職権調査によれば、両商標は、別掲3のとおりの構成からなり、本件商標と同一の商標と認められるものであって、それらの指定役務は、前者が「飲食物の提供」、後者が「宴会のための施設の提供」である。そして、両商標権は、ともに、平成18年1月にブルーノートジャパンから伊藤忠商事株式会社(本件商標の商標権者(被請求人))に移転された経緯が認められ、その後、権利の移動等があったものの、現在、伊藤忠商事株式会社をその商標権者とするものである(なお、専用使用権が設定されている。)。
(4)乙第15号証について
乙第15号証は、ブルーノート東京の2008年9-10月号フリーペーパー「Live Schedule″Jam″」とするものであり、1枚目左上には使用商標が表示されている。また、2枚目右下の「MEMBERS CLUB JAM SESSION」の欄に「お問い合わせ:03-5485-0088」の記載、及び3枚目の「HOW TO RESERVE」の欄における「2.Reservationご予約」の項に「Call:03-5485-0088」「4.Check outお会計」の項に「スーベニア・コーナーでは、今夜の記念になるオリジナルグッズや出演者のCDなどをご用意しています。」の記載があることから、2008年秋頃、ブルーノート東京におけるスーベニア・コーナーでオリジナルグッズ等を販売していたことが窺える。なお、記載された電話番号は、上記(2)のレシートに記載されたものと一致する。
(5)甲第2号証について
甲第2号証は、購入者に渡されたものと認められるレシート写し、及び領収書写しであり、当該レシートには、使用商標、「Blue Note Tokyo 03-5485-0088」「港区南青山6-3-16 ライカビル」の文字(これらの記載は、上記(2)のレシートに記載されたものと一致する。)、2009年4月30日の日付、Tシャツ、ゴルフマーカー、ピンズ、マグカップ、フェイスタオル、キャップ、ライター等の10点の商品表示、及び合計金額が「¥25,620」と記載されている。一方、宛先が記入された領収書には、「但し、商品10点代として」の記載、及び上記レシートの記載と一致する店名、電話番号、住所、日付、金額の記載が認められるものであるから、ブルーノート東京において、2009年4月30日に、上記商品が販売され、購入者に発行されたレシートに使用商標が付されていたことが認められる。
2 判断
(1)「ブルーノート東京」における使用について
ア ブルーノートジャパンは、ブルーノート東京を経営していると認められる(上記1(1))ことから、ブルーノート東京における、2011年8月13日ないし31日に、エコバッグ及びマネークリップを含む各種商品の(小売)販売を行った(上記1(2)エ)のは、ブルーノートジャパンであるといえる。
イ そして、一般に、小売店においては、最終的に商品の販売により利益を上げるために、商品の品揃え、陳列、接客サービス等といった総合的なサービス活動が商品の販売とともに行われている実情にある。
ウ これを、本件についてみると、ブルーノートジャパンは、ブルーノート東京において、上記期間に、エコバッグ及びマネークリップを含む各種商品の小売販売に際して、当該商品の品揃え、陳列等による顧客に対する便益の提供を行ったものとみるのが相当である。
してみると、ブルーノートジャパンは、2011年8月頃、「エコバッグ及びマネークリップの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「使用役務」という。)を行ったとみて差し支えないものである。
そして、「エコバッグ及びマネークリップ」は、「かばん類 袋物」の範ちゅうに属する商品であるから、使用役務は、本件審判請求に係る指定役務中「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の範ちゅうに属する役務であると認めることができる。
エ また、乙第11号証のレシートは、店舗側控えであるところ、購入者に渡された甲第2号証に表示された、使用商標、「Blue Note Tokyo 03-5485-0088」及び「港区南青山6-3-16 ライカビル」の記載は、乙第11号証のレシートのそれらと一致することから、乙第11号証に係る購入者に渡されたレシートにも、甲第2号証と同様に使用商標及びその他の上記表示が記載されていたものと推認することができる。
さらに、小売等役務の提供を伴う商品の販売店において、レシートは、金銭の領収をしるし支払者に渡す受取り及び領収証であるから、該レシートは、販売した商品についての小売等役務に関する「取引書類」とみることができるものである。
オ したがって、ブルーノートジャパンは、2011年8月頃、使用役務の取引書類に使用商標を付して顧客に配布したものであるとみるのが相当である。
カ また、本件商標は、別掲1のとおりの構成からなるものである。
他方、使用商標は、別掲2のとおりの構成からなり、本件商標と同一の構成態様の下部に「TOKYO」の文字を配した構成からなるものであるが、「TOKYO」の文字は、小売等役務における提供の場所を理解させる「東京」の文字を欧文字で表したものであると認識されるものであるから、本件商標と同一の構成態様の部分が、独立して認識され、使用商標の要部といえる部分である。
そうとすると、使用商標の要部である部分は、本件商標と同一の構成態様であるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
キ したがって、上記アないしカからすれば、ブルーノート東京を経営しているブルーノートジャパンは、2011年(平成23年)8月頃、本件審判請求に係る指定役務中「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の範ちゅうに属する「エコバッグ及びマネークリップの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に係る取引書類であるレシートに、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付して頒布したというべきである。
(2)ブルーノートジャパンについて
ア 登録第3072603号商標及び登録第4015109号商標(乙5及び6)は、その指定役務が「飲食物の提供」及び「宴会のための施設の提供」であることから、両商標はブルーノート東京が提供している「ジャズクラブレストラン」の業務に係る登録商標であるといえるところ、平成18年頃及び現在における上記両登録商標の商標権者と本件商標の商標権者(被請求人)が同一人であること、及び上記1(3)のとおり、上記両商標と本件商標とが同一の商標であることを考慮すると、本件商標の商標権者は、2006年(平成18年)頃から「ブルーノート東京」の経営について何らかの関係を有しているものであるとみるのが相当である。
イ 加えて、2008年(平成20年)秋頃にはブルーノート東京に「スーベニア・コーナー」があったこと(上記1(4))、及び2009年(平成21年)4月頃及び2011年(平成23年)8月頃、ブルーノート東京で各種商品が販売されたこと(上記1(2)及び(5))が認められることから、その間、ブルーノート東京において各種商品の販売が継続的に行われていたと推認することができる。
ウ そうとすると、ブルーノート東京の経営に関わりのある本件商標の商標権者は、ブルーノート東京(ブルーノートジャパン)の「スーベニア・コーナー」で各種商品の販売を行っていたことを認識していたというべきであるから、ブルーノートジャパンが、平成23年8月頃、本件審判請求に係る指定役務の範ちゅうに属する使用役務に係る取引書類に、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付して頒布したこと(上記(1)キ)について黙示的に許諾をしていたものであると判断するのが相当である。
エ したがって、ブルーノートジャパンは、本件商標に係る通常使用権者というべきである。なお、請求人は、ブルーノートジャパンが、本件商標の通常使用権者であることについて、争っていない。
(3)小括
したがって、本件商標の通常使用権者(ブルーノートジャパン)は、本件審判の請求の登録前3年以内である平成23年8月頃に、その請求に係る指定役務中「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の範ちゅうに属すると認められる「エコバッグ及びマネークリップの小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に係る取引書類に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して頒布したと認められる。
3 請求人の主張について
請求人は、乙第11号証について「これらのレシートに表示される品名や売価は、POSレジスター等であれば、容易に変更が可能である。仮にこれらのレシートが真正なものだとすれば、それらの商品が要証期間内に販売されたことを裏付ける他の書証、例えば、日付の記載のある製品の企画や仕様に係る書面、業者間での納品書や請求書などの書類が多数保管されているはずであり、僅か1か月間分のレシートの写しのみで、本件商標の使用をしていたことの証拠としては不十分なものである。」と主張する。
しかしながら、乙第11号証のレシートに何ら不自然な点はなく、しかも、ブルーノート東京における継続的な各種商品の小売販売及び本件の要証期間前に使用商標を付したレシート(甲2)が発行されていたことが認められることから、ブルーノートジャパンは、平成23年夏頃に、購入者に渡された乙第11号証に係るレシートにも、甲第2号証と同様に使用商標が付されていたことが推認されるものである。そして、その他に、乙第11号証のレシートが修正されたものであるとする証拠は見あたらない。
そうすると、たとえ、ブルーノートジャパンの取扱商品について、業者間の取引書類等の提出がないとしても、上記2(3)のとおり、ブルーノートジャパンは、要証期間内に使用役務に係る取引書類(レシート)に使用商標を付して頒布したと判断するのが相当である。
したがって、上記請求人の主張は採用することができない。
4 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が、その請求に係る指定役務中の第35類「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について、本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)を使用していたことを証明したものというべきである。
したがって、本件商標についての登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)




別掲2(使用商標)



別掲3(登録第3072603号商標及び登録第4015109号商標)




審理終結日 2013-05-24 
結審通知日 2013-05-28 
審決日 2013-06-13 
出願番号 商願2007-30107(T2007-30107) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保田 正文 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 堀内 仁子
梶原 良子
登録日 2008-12-19 
登録番号 商標登録第5190076号(T5190076) 
商標の称呼 ブルーノート 
代理人 杉山 直人 
代理人 竹内 耕三 
代理人 深見 久郎 
代理人 向口 浩二 
代理人 森田 俊雄 
代理人 齋藤 恵 

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