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審判番号(事件番号) データベース 権利
取消2012300230 審決 商標
取消2012300151 審決 商標

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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 012
管理番号 1281452 
審判番号 取消2012-300291 
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-04-12 
確定日 2013-10-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第3194846号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3194846号商標(以下「本件商標」という。)は、「ASPIRE」の文字を書してなり、平成5年6月30日に登録出願、第12類「自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,陸上の乗物用の機械要素,乗物用盗難警報器」を指定商品として、同8年9月30日に設定登録され、その後、同18年7月18日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成24年5月1日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中の「自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車又は自転車のタイヤ及びチューブ」の登録は取り消す、審判費用は被請求人の負担とする旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証(なお、括弧内の証拠番号は、以下「甲1」などのように省略して表す。)を提出した。
1 請求の理由
被請求人は、本件審判の請求前3年以内に、日本国内において、本件商標をその指定商品中の「自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車又は自転車のタイヤ及びチューブ」について使用していないから、本件商標は、商標法第50条の規定により、取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)中古自動車の販売について
被請求人は、本件商標を付した自動車を新車として、1998(平成10)年8月から2003(平成15)年3月まで販売したとする。そして、これに続けて、商品カタログや契約書等の資料を証拠として提出するが、これらによっては、本件審判の請求前3年以内に本件商標がその指定商品について使用されたことは証明されない。
確かに、2003(平成15)年3月までは、本件商標を付した自動車が販売されていたかもしれないが、これは、現在より10年近く前における事実であって、以下に述べるとおり、本件商標は、過去3年以内に被請求人や使用権者によって使用されたことはない。
ア 商品カタログ(乙1)及び受注票(乙3)について
(ア)被請求人は、まず、商品カタログ(乙1)に記載された型式「EA7APRGC」の自動車が、受注票(乙3)のとおり、平成23年7月1日に販売されたものであると主張する。
しかし、当該カタログの表紙に「00・5・29/発表・発売」とあるように、また、被請求人も自認するように、これらは中古自動車の販売がなされたことを示そうとするものであって、中古自動車は、後述のとおり、本件商標についての指定商品であるとはいえない。
また、受注を行っているのみでは、本件商標が商品に付されて使用されていたということはできない。商標は、商品やその包装に付された状態で取引に資されて初めて、その使用を認めることができる(商標法第2条第3項各号)。しかし、受注票(乙3)のみでは、需要者が、どのような状態で商標を認識して、商品を購入しようとしたものかが分からない。
ほかに、商品に関する広告や取引書類に商標を付して展示等することも「使用」に該当するが、上記カタログ(乙1)が当該取引書類の一種であるとしても、これは表紙の記載に従えば、2000(平成12)年5月29日発売の商品についてのものである。このようなカタログが、10年以上を経過した現在において流通しているとは思われず、ここに本件商標が付されていたとしても、それを需要者らが識別標識として認識すべき機会は現在はないと考えるのが自然である。
このように、本件で提出される商品カタログ(乙1)や受注票(乙3)からは、本件商標の使用は証明されない。
なお、被請求人のホームページのプリントアウト(乙2)は、本件審判の請求の予告登録日より後の資料であり、ここに掲載される商品を誰がいつどのように販売しているかを示すものでもなく、証明力はない。しかも、この乙第2号証は、中古自動車に関するもので、既に登録商標が使用された後のものであるので、当該新車に関する商標権も消尽している。
(イ)被請求人は、平成24年12月17日付け答弁(以下「第2答弁」という場合がある。)において、追加の証拠として、カタログ(乙1の2)を提出し、受注票(乙3)と併せて本件商標の付された商品が販売されたとする。
しかし、請求人が指摘するのは、受注票のみでは需要者が本件商標を認識して当該商品を購入したのか不明であるという点である。本来なら、商標を認識すべき媒体となるカタログ(乙1)も、その日付が2000年5月29日付けであって、受注票の2011年7月1日から10年以上も前のものであるので、そのようなカタログが受注票と対応して、その時点でも流通しているとは思われないのである。受注票は、単にこれを発行した者が本件商標の文字を記載したことが分かるのみで、需要者が本件商標を認識していたか不明である。
イ 雑誌広告(乙10)及び広告用チラシ(乙11)について
被請求人は、第2答弁において、その100%子会社である関東三菱自動車販売株式会社による雑誌広告(乙10)及び広告用チラシ(乙11)を追加の証拠として提出して、本件商標が「中古自動車」について使用されていたと主張する。
しかし、仮に「中古自動車」に関し広告がなされていたとしても、それは、権限のある者によって改めて商標の使用にあたる行為がなされているものでない限り、本件商標の使用を行ったことにはならない。
また、広告それ自体にしても、雑誌(乙10)がどのような地域でどれくらいの部数が発行されたかが不明であって、このことは、同時に、同広告が需要者らの目に入ったものか具体的には不明であることを意味する。チラシ(乙11)にしても、いつどのような期間において、どこでどれくらいの数が配布されたものか不明であって、具体的に商標の使用の事実を認定することができない。
さらに、上記の広告には、それぞれ「アスパイア 2.0VR-G」(乙10)、「アスパイヤ ビエント 2000」(乙11)との記載があるが、これらは、本件商標「ASPIRE」と同一性を欠くものである。
ここで、仮に「ASPIRE」と「アスパイア(ヤ)」との同一性に限って検討するとしても、「ASPIRE」をローマ字読みすれば、「アスピレ」となったり、「アスピーレ」となったりするものであり、必ずしもこれを「アスパイア(ヤ)」と読む必然性はない。仮に「ASPIRE」が英語であるのなら、これは、「アスパイア(ヤ)」と読むかもしれないが、一般的な英和中辞典では、「aspire」には「熱望する、大志を抱く、あこがれる」といった意味がある旨掲載されている(甲1)が、需要者がこのような意味を理解しているかは大いに疑問である。そして、該語が、仮に我が国で最も認知度の高い外国語である英語であるとしても、単語としては難しい部類に属するものであり、これを知っているのは相当程度の高い知識、理解力を持った者に限られるといえる。
したがって、「ASPIRE」の文字からなる本件商標は、一般の需要者を基準とすれば、その称呼、観念が「アスパイア(ヤ)」の表示と一致することはないから、本件商標と「アスパイア(ヤ)」とが同一の商標であると認めることはできない。
通常使用権について
(ア)上記受注票(乙3)には、被請求人がその子会社であるとする東日本三菱自動車販売株式会社の名称が記載されているところ、被請求人は、同社が本件商標の通常使用権者であると主張する。
しかし、仮に同社が被請求人の子会社であるとしても、それだけではもとより、通常使用権が同社に付与されているということはできない。また、被請求人と同社との特約販売契約書(乙5)によっても、同社が本件商標の通常使用権者であるということはできない。
この点、被請求人は、当該契約書9頁の第36条(商号等の表示)2項を根拠に、同社に本件商標の通常使用権が付与されていると主張する。
しかし、同項は、単に、被請求人が「所有権又は使用権を有し、かつ」、「別に定める商標或いは営業を象徴若しくは識別する名称」等につき、同社がこれを表示することができる旨を定めるにすぎない。
本来、商標の使用権は、個々の商標につき定められるものでなければ、当事者間において、どの商標につき使用権が存在するのかしないのか疑義が生じ、また、第三者においても、商標を使用する者をどのように扱ってよいのか困惑を生ずる。このような状況を商標の使用権制度が許容するはずはないので、本件商標につき使用権が設定されているというためには、個別に商標が明示されていてしかるべきであるが、上記の定めのみによっては、本件商標について個別に通常使用権が設定されているかを読み取ることはできないので、これを根拠とする被請求人の主張は認められるものではない。
また、この第36条2項は、商標の使用対象商品として、「第2条1項に規定する商品」を規定するところ、ここでは「(1)商品」として、「イ 三菱自動車又は三菱自動車の指定する者が製造し、三菱自動車が供給する自動車」が掲げられている。これは、要するに、商標の使用対象が被請求人の製造・供給した自動車であることを意味するのであって、ほかの条項を含めても、これと同視し得る範囲の商品が対象として規定されているにすぎない。
しかし、被請求人が販売を主張するのは中古自動車であって、これは、被請求人の供給による商品であるとはいえないものである。商品としての中古自動車は、ユーザーがこれを中古自動車販売業者に提供・供給するものであり、新車販売メーカーである被請求人は、上記規定に従って、新車を販売会社に供給するのみである。
したがって、本契約によって商標の使用対象とされる商品には、被請求人がその販売を主張する中古自動車は含まれないのであり、仮に使用権の設定がなされていたとしても、その範囲・対象には当初より中古自動車は含まれていないのである。
さらに、上記の契約書(乙5)では、第5条(販売会社が販売する自動車)として、販売対象となる自動車を「別紙のとおりとする」と定め、当該別紙には、販売会社の販売する車種が列記されているところ、その対象車種として「ギャランフォルティス」や「ギャランフォルティススポーツバック」などが明記されているにもかかわらず、本件商標「ASPIRE」と対応すべき車種は、ここには見いだすことができない。
もともと、本契約書は、2009(平成21)年7月1日に交わされたものであり(17頁)、これは、本件商標を付した自動車の販売が終了した2003(平成15)年よりも相当に後のことである。それゆえ、当初より本件商標を付した自動車の販売は、この販売契約には想定されていないのであり、その販売対象には本件商標に対応する自動車が含まれていないのである。
仮に販売会社に何らかの商標使用許諾がなされる状況があったとしても、本契約においては、そもそも本件商標が使用許諾の対象となっているものではなく、したがって、同社も本件商標の通常使用権者ということはできない。同社は、本件商標に関しては、何らの権限を有するものではなく、本契約をもって、本件商標の使用を証明する証拠とすることはできない。
(イ)被請求人は、第2答弁において、東日本三菱自動車販売株式会社が、被請求人の100%子会社であることをもって、同社が通常使用権者であると主張する。
しかし、商品の種類を問わず、一般的に小売店がその取扱商品のすべてについてメーカーの商標の通常使用権者と評価されるものではないし、また、本来別会社であるのに、子会社であるからというだけで通常使用権者と認めることができないのは当然である。
被請求人は、黙示的に通常使用権が許諾されている契約は必ずしも書面による必要はないなどと述べるが、それでは、上記契約書は一体何のために交わされるものであるのか、その存在意義が疑われることになってしまう。契約書が交わされているということは、当事者間の権利義務関係を書面により明確に画定し、互いに疑義のないように法律上の関係を結ぼうということであり、ここに当事者の意思が表示されているとみるのが自然である。
また、本契約書では、第5条(販売会社が販売する自動車)に、販売対象となる自動車を「別紙のとおりとする」と定め、その別紙では、対象車種として、本件商標「ASPIRE」と対応すべき車種は除外されている。これは、当事者間においては、本件商標につき通常使用権を設定する意思はないことの表れであり、それに反する当事者間の意思を認定することはできない。
(ウ)被請求人が第2答弁において提出した雑誌広告(乙10)及び広告用チラシ(乙11)への広告の掲載が関東三菱自動車販売株式会社によるものであるとしても、同社が、本件商標の通常使用権者であるとは認めることができない。
被請求人は、同社が100%子会社であることの一点をもって、同社が本件商標の通常使用権者であることの主張を行うが、この点、同社は、東日本三菱自動車販売株式会社と同様の関係よりなる会社とのことであるので、東日本三菱自動車販売株式会社を通常使用権者と認めることができないことと同様の推論が働き、同社が単に子会社であるだけで、本件商標につき、使用許諾があったということはできない。
エ 商品としての中古自動車について
(ア)被請求人が主張する本件商標の使用対象商品である中古自動車は、新車とは異なり、その流通において、自動車メーカーのコントロールが及んでいない商品である。中古自動車については、旧所有者から供給された自動車をもって市場が成立しているが、旧所有者は、自動車メーカーとは何ら法的な関係を有しない者である。また、販売業者もそれぞれ独立した業者として存在するため、いったん新車として販売された後の段階にある中古自動車については、自動車メーカーとは離れた自由な市場において流通されているという事実があるのみである。
換言すれば、自動車に付される商標について、商標権者である自動車メーカーの意思によるコントロールが及ぶのは、新車の販売段階までである。その後の中古自動車の流通段階に至っては、自動車メーカーとは何ら法的な関係には立たない者によって、様々に自由な取引が行われている。仮に中古自動車に商標が付されていたとしても、それは、単に新車販売時に付されていたものがあるというだけであって、独自の商品市場を有する中古自動車の販売において、そこにある商標は、権限を有する者により付された実体的なものとはいえない。
商品としての中古自動車は、上記のような性質を有するものであり、これを流通させているのは自動車メーカーではない。また、そこに表れる商標も、自動車メーカーの意思を実体的に反映するものではないので、これをもって、商標の使用ということはできない。中古自動車に付された商標は、新車販売の段階において既に、その使命を全うして権利も消尽しているのであり、その後は、商標権者のコントロールから離れた自由な市場において、形式的に当該商標を目にするというにすぎない。
そうすると、本件商標の使用対象商品とされる中古自動車は、その商品の性質として、ここに新たに商標が付されるのでなければ、これを流通させる権限ある者の意思に基づいて商標が使用されたということはできない。
仮に、中古車販売業者を、商標を使用する主体ととらえるとしても、本件のように、車種の商標について、商標の使用主体としてとらえるのは不自然である。中古車販売業者の商標は、その業者の名称をいうのであって、取り扱う車種の商標それぞれを、何らかの権限に基づいて使用しているとみることは到底できない。中古車販売業者が様々な車種を扱っているのは、既にそこに付された商標の権利が新車販売段階でその使命を終え、中古自動車を自由に流通に置くことができるからであり、当該業者が、この段階で各車種の商標を使用しているとはいうことができない。
したがって、本件ではそもそも商標の使用対象とされる商品が、商標の使用を証明する適格を欠いており、さらに、その使用を行っているとされる販売業者も、使用権設定を受けた者でないことは上記のとおりであるので、本件は、二重の意味で商標の使用がなされているものとはいえない。
(イ)被請求人が本件商標の使用がされたとする商品「中古自動車」について、これは、本件商標についての指定商品とはいえない旨の請求人の主張に対して、被請求人は、第2答弁において、「中古自動車」が「自動車」に含まれる商標法上の指定商品であるとするが、請求人は、「中古自動車」が商標法上、指定商品として取り扱われることがないということを述べているわけではなく、被請求人との関係で、本件商標が「中古自動車」に付されているとしても、それは本件商標の使用とはいえないということを述べるものである。すなわち、仮に、被請求人が、かつて「新車の自動車」について本件商標を使用していたとしても、その後の中古自動車については何ら関与がないのであるから、被請求人の主張中に登場する「中古自動車」を本件商標の付された指定商品とは評価できないということである。
(ウ)被請求人は、第2答弁において、第三者が本件商標を使用した場合の被請求人商品との出所混同を述べ、流通秩序の混乱を主張する。
しかし、10年も以前の商品であって、市場に出回るか出回らないかも不明な中古品につき、流通に関与していない被請求人に、いつまでも継続して独占排他権たる商標権が付与されるものではない。仮に中古品が存在するとしても、そのような自身のコントロールの及ばない市場を背景に業務上の信用が蓄積するということはできず、中古品市場においては、被請求人の商標は、既にその役割を終えている。
中古品が市場に流通することは、どのような商品についても想定され、その中には当然に、商標権が消滅して相当期間が経過したものも含まれるが、中古品の市場は、新製品と併存する場合を除き、現在の商品ではないという共通認識の下に成り立つ市場であるので、そのそれぞれについて、出所の混同などは逐一問題とならない。
そして、こうした中古品に付された商標は、もともと真正な権利者により付されたものであるから、そのような適法な商品が後から違法となる理由はなく、従来の物そのままである限り、仮に新たな権利者が登場しても、「○○年○○社製」のような説明とともに流通に置かれ、適法性も失われない。この意味で、中古品は、独自の市場を形成しているのであり、新製品の市場とは異なったものである。
(エ)被請求人は、第2答弁において、形式的には商標権侵害に該当するにもかかわらず、中古自動車販売業者による真正品販売が許されるのは、それが発揮する出所表示機能又は品質保証機能を害しないからであると主張する。
しかし、これは、中古品ではない通常の商品が真正品として小売店で販売される際、それが商標権の侵害にならないのと同じことであり、何も中古品の市場に限った事情ではない。そして、通常の商品の場合、それは権利者(メーカー)の意思により流通に置かれ、そこに業務上の信用が蓄積されていくが、むしろ、中古品の場合は、権利者の意思とは無関係の市場で商品が供給されるのみであるため、そのような自身のコントロールが及ばない他人任せの市場で、商標法上の保護すべき信用が蓄積されるものとはいえない。
被請求人のいう商標の出所や品質の表示機能は、商品が被請求人の手により流通に置かれ、そのコントロールの下にあってはじめて発揮されるものであり、それは、「新車の自動車」の市場であるので、これと「中古自動車」の市場とが混同されるべきではない。
(オ)加えて、被請求人は、自動車の耐久年度を考慮すれば、販売停止された自動車に付された本件商標が、依然出所表示機能を発揮していると主張する。
しかし、それは、単に消費者がその自動車を使用しているだけで、いつまでも当該機能が発揮されているというに等しい主張である。メーカーを示すという点では、ある意味正しい主張かもしれないが、新車と中古車は、別の商品なのであり、商品が物として存在するからといって、あらためて商標が使用されたことにはならない。
(カ)以上のとおり、かつて本件商標が付されたものであっても、「中古自動車」がそのまま販売された場合は、権利者たる被請求人とは無関係に、そのコントロールの範囲外で流通されている商品に当該商標が付着しているというだけであるので、そこに商標の使用は観念できず、指定商品について商標の使用がされたということはできない。
(2)自動車部品の販売について
被請求人は、上記のほか、本件商標が自動車部品について使用された旨主張するが、これも提出される資料によっては認められるものではない。
まず、部品検索両面(乙6)という資料には、型式や品名コードなどが示されているが、これは、被請求人会社の社内資料のようであり、これが当該商品の販売事実を表すこともない。
また、アクセサリカタログ(乙7)は、表紙に「00/05」と記載されているが、先の商品カタログ(乙1)と照らし合わせても、これは2000(平成12)年5月に発売された商品に関するカタログであることが分かる。被請求人は、商標法第2条第3項第8号所定の「使用」を立証しようとしているようであるが、「取引書類」の場合、標章を付すのみでは足りず、付したものを展示し、頒布し、又は電磁的方法で提供することが必要である。しかし、このような10年以上も前のカタログが、上記態様において現在流通していると考えることは不自然であり、製造終了となった車種についてのものであることをも考慮すれば、このカタログに基づいて需要者が商標を認識することはなく、これ自体商品の販売を示すものでもない。
さらに、附属品の価格表(乙8)という資料についても、これは、本件審判の請求の予告登録の後に打ち出されたものであり、実際に商品が販売されたことを示すものでもない。乙第8号証のタイトルに「価格表マイクロフィッシュリスト」とあるが、「マイクロフィッシュ」は、現在のようにデータの電子化が進んでいない時代の遺物であり、写真を微細なマイクロフィルムに焼き写して保管する技術である。これを読み取るには、特殊なリーダーが必要とされるように、忙しい現代では非実用的なメディアであり、単に保存機能があるのみで、被請求人が日常の業務においてこれを使用しているとは考えられないものである。
このように、自動車部品という商品についても、本件商標がこれについて使用されたことを示す証拠はない。
被請求人が、本件商標は自動車部品について使用されていると主張するのであれば、現実に需要者との間で売買が行われていることを示す証拠を提出すれば足りるが、本件で提出される資料は、いずれも商品が実際に流通していることを示すものではなく、また、本件商標が識別標識として機能していることを示すものでもない。
したがって、これらによって本件商標の使用を証明することはできない。
(3)まとめ
本件商標に係る自動車は、被請求人の述べるように、2003(平成15)年をもって製造が終了したものであり、本件商標もこれを最後に使用が行われなくなったものである。過去に販売した商品の商標であっても、それが使用されずに3年以上を経過したのであれば、商標法の規定によって登録が取り消されるのは致し方のないことであり、これによって商標採択の幅を適切に確保し、産業の発達を図っていくのが法の趣旨である。
なお、仮に現在も本件商標の付された中古自動車がどこかに存在するとしても、それは、既に被請求人の手から離れた商品なのであり、真正品である以上、本件商標権も及ばない範囲のものである。もちろん、適法に商標の付された商品が、後から違法になることはないのであって、当該中古自動車がこれから流通することがあるとしても、これが他人の商標権を侵害することはなく、この点で本件商標の登録が取り消されても、被請求人には何ら痛痒はない。
さらに、その附属品の販売が行われる場合があったとしても、そこで使用される表示は、商標というよりも、単に過去の車種の説明にすぎないものであるから、ここでも被請求人に不利益はない。
以上のとおり、答弁書及びその証拠からは、本件審判の請求前3年以内に、本件商標が、その指定商品について、被請求人や権限を有する使用権者により使用されたことは証明されていないから、本件商標は、その登録の取消しを免れないものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第13号証(枝番を含む。)を提出した。
1 平成24年6月19日付け答弁の理由
被請求人は、1998年8月から2003年3月まで本件商標を付した車両(以下「本件商品」という場合がある。)を新車として販売した。
乙第1号証は、本件商品カタログコピーの要部抜粋であり、被請求人は、本件商品の2WD車のVR-Gグレードに、型式三菱GH-EA7A類別PRGCを設定し、販売していたことを示すものである。型式は、三菱GH-を省略し、単にEA7Aと表記される場合や、型式と類別とを組み合わせてEA7APRGCと表記される場合がある。
乙第2号証は、被請求人が運営するホームページの平成24年5月31日時点の画面を印刷したものである。被請求人は、被請求人が運営するホームページにて中古車情報を提供しており、乙第2号証は、検索可能な車種として本件商品が含まれていることを示すものである。
乙第3号証は、平成23年7月1日に、東日本三菱自動車販売株式会社(以下「本件子会社」という場合がある。)にて、本件商品を販売したことを示すものである。車名(銘柄名)アスパイア及び型式EA7APRGCの表示が確認できる。なお、2011年度に小売販売した本件商品数は5台であり、いずれも被請求人との間に後述の乙第5号証に示す特約販売契約を締結した販売会社にて販売している。
乙第4号証は、被請求人が発行する2011年度版ファクトブックの要部抜粋であり、被請求人が運営するホームページ中にて公開しているものである。乙第4号証6頁(ファクトブック中4頁)にて、本件子会社は、被請求人が議決権の所有率100%の連結子会社であることが確認できる。
乙第5号証は、被請求人と本件子会社との間で2009年7月1日に締結した特約販売契約書(以下「本件契約」という。)のコピーである。乙第5号証11頁(本件契約9頁)にある第36条(商号等の表示)2項にて、被請求人は、本件子会社に対して、被請求人が所有する商標権の通常使用権を付与していることが確認できる。
乙第6号証は、本件商品の部品検索システムの画面を印刷したものであり、平成24年6月15日時点で被請求人が販売可能な部品を示すものである。乙第6号証1頁には、型式EA7A及び類別PRGCの表示とともに、品名コードとして97402、品名としてマーク、ASPIREの表示が確認できる。また、乙第6号証2頁には、型式EA7A及び類別PRGCの表示とともに、右下枠内に品名コード97402の表示及び本件商標を付した部品の表示が確認できる。
乙第7号証は、本件商品のアクセサリカタログコピーの要部抜粋であり、被請求人が本件商標を付した付属品を販売していることを示すものである。具体的には、乙第7号証2頁(アクセサリカタログ中14頁)下段に、本件商標を付した付属品として、スカッフプレートの表示とともに、部品番号MZ526907が示されており、また、同3頁(同アクセサリカタログ中18頁)に、本件商標を付した付属品として、シートカバー(折柄)の表示とともに、部品番号MZ501462、MZ501463が、また、シートカバー(2トーン)の表示とともに、部品番号MZ501464、MZ501465が示されている。
乙第8号証は、被請求人が取り扱う付属品の価格票であり、平成24年5月31日時点で被請求人が販売可能な付属品を示すものである。乙第8号証1頁60行目及び同号証2頁66行から69行には、それぞれ乙第7号証にて示した部品番号及び部品名称が表示されている。
よって、本件商標は、「自動車並びにその部品及び付属品」について3年以内に、日本国内において、被請求人及び通常使用権者によって使用されており、取り消されるべき事由は存在しない。
2 平成24年12月17日付け答弁(第2答弁)の理由
(1)中古自動車の商品該当性について
請求人は、「中古自動車」について、本件商標についての指定商品であるとはいえない旨主張するが、「中古自動車」を指定商品とする登録商標は、多数存在しており(乙9)、「中古自動車」は、商標法上の指定商品としての「自動車」の範疇に含まれる商品であることが明らかである。
また、請求人は、中古自動車に付された商標は、新車販売の段階において既にその使命を全うして権利も消尽している旨主張するが、現実に被請求人の製造販売した自動車がいまだに中古車市場に流通している状況下において、被請求人とは無関係な第三者が自動車について本件商標を使用した場合には、当該自動車と被請求人の中古自動車とで彼此誤認混同を生じさせ、流通秩序をいたずらに混乱させることは明らかであるから、請求人の主張は、失当である。第三者といえる中古自動車販売業者により、本件商標の使用に係る中古自動車の販売が認められているのは、被請求人の製造販売に係る真正品が本件商標の付された状態で中古自動車として第三者により市場を流通する場合には、形式的には本件商標の商標権の侵害に該当する行為であったとしても、本件商標が発揮する商標の出所表示機能又は品質保証機能を害することがないため、実質的に違法性を欠く行為として容認されているにすぎない。そして、昨今の技術的な進歩により長期間化している耐久年度を考慮した場合に、仮に本件審判の請求登録前3年より以前に新車の製造を停止しているとしても、本件商標が依然として出所表示機能を発揮していることは明白である。
(2)乙第3号証による立証内容について
請求人は、乙第3号証について、受注を行っているのみでは、本件商標が商品に付されて使用されていたということはできないし、受注票のみでは、需要者がどのような状態で商標を認識して商品を購入しようとしているかが分からない旨主張して、本件商標の使用の事実を否定しているが、乙第3号証には、「東日本三菱自動車販売株式会社」、「2011年7月1日」の日付、車名(銘柄名)の「アスパイア」などが明記されており、これにより、本件商標の使用に係る中古自動車について、本件商標の通常使用権者が受注し、これを販売した事実、すなわち、本件商標の使用の事実が立証されている。
そして、車名(銘柄名)「アスパイア」の自動車には、本件商標である「ASPIRE」が表示されている(乙1の2)。
(3)本件商標の通常使用権について
請求人は、乙第3号証の受注票の発行者である「東日本三菱自動車販売株式会社」について、請求人の子会社であるというだけでは通常使用権が付与されているということはできないし、乙第5号証の特約販売契約書によっても、同社が本件商標の通常使用権者であるということはできない旨主張する。
しかしながら、乙第5号証により、被請求人は、東日本三菱自動車販売株式会社に対して、被請求人が所有する商標を商品又は営業の広告・宣伝のために使用することを許諾していることは明らかである。
また、東日本三菱自動車販売株式会社は、被請求人の100%子会社であること(乙4)、被請求人の正規販売会社であること(乙4)、等を勘案すれば、被請求人が東日本三菱自動車販売株式会社に対して黙示的に通常使用権を許諾しているとみて差し支えはない。
さらに、一般的に通常使用権に関する契約は、商標権者(又は専用使用権者)との間で交わされる商標権使用許諾契約書に基づいて発生するものであって、この契約は、商標権者等と使用者との意思表示の合意によって成立するものであり、必ずしも書面による必要はないものであるから、仮に、本件商標を具体的に特定した商標権使用許諾契約書が存在しないとしても、そのことのみをもって、本件商標についての通常使用権の存在を否定する根拠とはなり得ないことは明らかである。
(4)中古自動車「ASPIRE」の雑誌広告について
乙第10号証は、中古車情報誌「カーセンサー関東版 2010 vol.7」(2010年3月4日発売)における広告ページの写しである。当該ページは、被請求人の100%子会社であり、正規販売会社である「関東三菱自動車販売株式会社」(乙4)が依頼して掲載された雑誌の広告記事であるところ、左から2列目、上から5番目に「アスパイア 2.0VR-G」、「シルバー 三菱認定中古車。一年間走行距離無制限保証。安心お勧め車です。」等の記載及び中古自動車の写真が掲載されている。
乙第11号証は、平成22年2月にダイレクトメールとして配布した、関東三菱自動車販売株式会社による広告用チラシである。同チラシ中、52番として、「アスパイヤ ビエント 2000」、「1 H13年式」、「2 シルバー」、「3 車検H22/12」、「4 26千km」、「39.8万円(税込)」等の記載及び中古自動車の写真が掲載されている。
そして、当該チラシ(乙11)の作成年月日については、同チラシ中、7番として、「デリカ:D5 Gパワーパッケージ 4WD 2400」の中古自動車の写真等が掲載され、そこには、「1 H22年式」、「3 車検H25/1」との記載があるところ、これは、この中古自動車の初年度登録が平成22年であり、当該車両の車検満了日が平成25年1月であることを意味しており、このチラシは、同22年以降に作成されたものであることが立証され、チラシの左上に「掲載車両は2/3現在の在庫車です。」と記載されていることから、これが同22年2月、同23年2月又は同24年2月のいずれかの時点で作成されたものであることが立証される。なお、被請求人は、このチラシが平成22年2月作成のものであることを確認しているが、同22年、同23年、同24年のいずれかの年の2月であるとしても、本件審判の請求の登録前3年に作成、配布されたものであることに相違ない。
これら乙第10号証及び乙第11号証から、被請求人の通常使用権者により本件商標の使用に係る中古自動車が実際に広告され、かかる広告における「アスパイア」、「アスパイヤ」の表示は、商標の使用の一類型であるので、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が「中古自動車」について使用されていることが立証される。
また、「関東三菱自動車販売株式会社」が被請求人の通常使用権者であることは、同じく100%子会社であり、正規販売会社である「東日本三菱自動車販売株式会社」と同様である。
なお、「三菱認定中古車」については、被請求人の正規販売会社による独自の品質基準を満たした十分な整備と、一年間の走行距離無制限の保証などがついた品質の高い中古車である(乙12)。それゆえ、需要者は、十分な整備と保証を期待して、被請求人の通常使用権者である正規販売会社から中古車を購入することが容易に想像できる。
(5)まとめ
以上のとおり、通常使用権者である正規代理店による本件商標の使用と、ほかの中古車販売業者による使用を同列に論じることはできないものである。正規販売店の中古車部門車両を購入する需要者は、その中古自動車を「三菱自動車のASPIRE(アスパイア)」であると正確に認識し、購入していることは明白だからである。
したがって、本件商標は、被請求人の通常使用権者により、本件商標の指定商品中「自動車」に含まれる「中古自動車」について、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において使用されていることが立証される。

第4 当審の判断
1 認定事実
被請求人の提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証及び同号証の2は、被請求人が本件商標「ASPIRE」を付して1998年8月から2003年3月まで新車として販売した車両の商品カタログのコピー(要部抜粋)とするものであり、この点に関し、当事者間に争いはない。
そして、乙第1号証には、1枚目に「ASPIRE」の文字がタイトルとして記載され、2枚目には、「VR-G」、「GDI 2000 DOHC 16V」、「2WD/4WD」の記載があり、3枚目の駆動方式が「2WD」の欄には、型式「三菱GH-EA7A」、類別として「GDI 2000 DOHC 16VALVE」、「VR-G」、「PRGC」等の記載がある。また、乙第1号証の2には、自動車の写真中のバックナンバープレート部分に「ASPIRE」の文字が表示されている。
乙第2号証は、被請求人が運営するホームページにおいて提供する中古車情報の検索結果を2012年5月31日に紙打ち出ししたとするものであり、検索結果として、メーカー「三菱」、車種「アスパイア」、グレード「VR-G」、年式「H10」、車検「2011/11」、保証「三菱認定中古車標準」等が記載されている。
乙第3号証は、「中古車受注票」のタイトルの下、「東日本三菱自動車販売株式会社」及びその住所・電話番号並びに「2011年7月1日」の記載があり、表中に、車名「アスパイア」、年式「H13-03」、車台番号「EA7A-0403727」、型式「EA7APRGC」、車検満了日「120315」、納車予定日「110710」の記載がある。
(2)乙第4号証は、被請求人が発行する2011年度版ファクトブックの要部抜粋であり、被請求人が運営するホームページ中にて公開しているとするものであり、その6枚目(ファクトブック中4頁)には、「関係会社の状況(2011年3月31日現在)」のタイトルの下、「日本における連結子会社」として、「東日本三菱自動車販売株式会社」(福島県福島市、議決権の所有割合100.0%)の記載がされている。
乙第5号証は、被請求人(乙5において、以下「三菱自動車」という。)と東日本三菱自動車販売株式会社(乙5において、以下「販売会社」という。)との間で2009年7月1日に締結した特約販売契約書(写し)であると認められ、第2条(定義)に「(1)商品 次に掲げるものをいう。イ 三菱自動車又は三菱自動車の指定する者が製造し、三菱自動車が供給する自動車(以下「自動車」という)・・・」、第27条(営業施設の設置・維持等)に「1 販売会社は、販売会社の負担と責任により、主たる責任地域内において、営業の責任を果たすために『三菱自動車ディーラースタンダード』に準拠した適切な数と形態及び質の新車店舗・中古車センター・サービス工場・広告塔・商品の保管施設等の営業施設(以下『営業施設』という)を配置し、その維持及び改善を行う。」、第28条(中古車販売)に「販売会社は、自動車の販売促進に資するため、中古車販売体制を充実させ、積極的で健全な中古車販売を行うことに努める。」、第34条(適正表示)に「販売会社は、お客様の信頼を確保するため、商品・中古車の販売並びにサービスの提供にあたり、性能・品質、提供するサービスの内容及びこれらの価格について、自動車公正競争規約等に基づく適正な表示を行うものとする。」並びに第36条(商号等の表示)に「2 販売会社は、三菱自動車が所有権又は使用権を有し、かつ三菱自動車が別に定める商標或いは営業を象徴若しくは識別する名称、その略称、標章、意匠その他の標識(以下「標章等」という)を、三菱自動車の定める基準に従って第2条1項に規定する商品又は営業の広告・宣伝のために、本契約期間中表示することができる。」及び「3 三菱自動車は、前二項の商号、商標及び標章等の表示について、三菱自動車はその図案・形式及びその表示方法等を指定し、販売会社はこれに従って表示する。」と記載されている。
(3)以上(1)及び(2)によれば、以下のことがいえる。
商標権者(被請求人)は、本件商標「ASPIRE」を付した自動車を1998(平成10)年8月から2003(平成15)年3月まで新車として販売したと推認される。
また、東日本三菱自動車販売株式会社は、商標権者の連結子会社であって、販売会社として、「三菱自動車(商標権者)又は三菱自動車(商標権者)の指定する者が製造し、三菱自動車(商標権者)が供給する自動車(以下「自動車」という。)の販売促進に資するため、中古車販売体制を充実させ、積極的で健全な中古車販売を行うことに努める」ことが課せられており、2011(平成23)年7月に、上記新車として販売された自動車のうちの1台(車台番号「EA7A-0403727」)を中古車として取引したことが認められる。
そして、上記の中古車が取引された平成23年7月は、本件審判の請求の登録前3年以内に該当するものである。
2 本件商標の使用についての判断
上記1において認定した事実を総合して判断すれば、商標権者である「三菱自動車工業株式会社」は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付した「自動車」について、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者の連結子会社である東日本三菱自動車販売株式会社を介在させ、中古車として販売したことが推認できる。
3 本件商標の使用が商標権者による使用に当たることについて
請求人は、「東日本三菱自動車販売株式会社が本件商標の通常使用権者であるということはできない。」旨主張する。
ところで、商標法第50条第1項には、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者(以下「商標権者等」という。)のいずれもが、同項に規定する登録商標の使用をしていないときは、取消しの審判により、その商標登録は取り消される旨規定されている。ここで、商標権者等が登録商標の使用をしている場合とは、特段の事情のある場合はさておき、商標権者等が、その製造に係る商品の販売等の行為をするに当たり、登録商標を使用する場合のみを指すのではなく、商標権者等によって市場に置かれた商品が流通する過程において、流通業者等が、商標権者等の製造に係る当該商品を販売等するに当たり、当該登録商標を使用する場合を含むものと解するのが相当である。このように解すべき理由は、今日の商品の流通に関する取引の実情に照らすならば、商品を製造した者が、自ら直接消費者に対して販売する態様が一般的であるとはいえず、むしろ、中間流通業者が介在した上で、消費者に販売することが常態であるといえるところ、このような中間流通業者が、当該商品を流通させる過程で、当該登録商標を使用している場合に、これを商標権者等の使用に該当しないと解して、商標法50条不使用の対象とすることは、同条の趣旨に反することになるからである。(知財高裁平成24年(行ケ)第10310号、同25年3月25日判決参照)
本件においてこれをみるに、東日本三菱自動車販売株式会社は、商標権者の連結子会社であって、販売会社として、「自動車の販売促進に資するため、中古車販売体制を充実させ、積極的で健全な中古車販売を行うことに努める」ことが課せられていることからすれば、商標権者の製造に係る商品を販売するに当たり、本件商標を使用したとみて差し支えないものであり、これを商標権者が本件商標を使用している場合に含むものと解することも可能であって、わざわざ東日本三菱自動車販売株式会社を本件商標の通常使用権者としなければならない理由はない。
したがって、上記2のとおり、本件商標の使用は、商標権者によるものであるとするのが相当である。
4 本件商標の中古車についての使用がその指定商品中の「自動車」についての使用に当たることについて
請求人は、「かつて本件商標が付されたものであっても、『中古自動車』がそのまま販売された場合は、商標権者とは無関係に、そのコントロールの範囲外で流通されている商品に本件商標が付着しているというだけであるので、そこに本件商標の使用は観念できず、指定商品について商標の使用がされたということはできない。」旨主張する。
しかしながら、小型乗用車などの自動車は、一般的な消費材と異なり、耐久年数が長く、フルモデルチェンジ等を経ても、従来の同車種が直ちに世上巷間から消え去ることはなく、取引者、需要者の目にみえる形で利用が継続されること、かつ、中古車市場においても流通過程におかれることは、取引の実情として顕著な事実といえるものであり、また、本件における上記の東日本三菱自動車販売株式会社による中古車の販売に当たり、本件商標の出所表示機能及び品質保証機能が発揮されていたことが認められる。
また、請求人がいうように、中古車の販売において、中古車販売業者の商標が使用され、その商標をもって取引に資されていることが通常行われているものであるが、一つの商品の販売において、複数の商標が使用されることも当然に行われていることからすれば、中古車販売業者自身の商標の使用の存在をもって上記の事実を否定することはできない。
したがって、本件においては、中古車についての本件商標の使用であっても、本件商標は、その指定商品中の「自動車」について使用されたとみるのが相当であり、請求人の上記主張は、採用することができない。
5 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者がその請求に係る指定商品中の「自動車」について、本件商標の使用をしていたことを証明したと認め得るところである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2013-03-28 
結審通知日 2013-04-01 
審決日 2013-06-14 
出願番号 商願平5-71393 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (012)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 酒井 福造
田中 敬規
登録日 1996-09-30 
登録番号 商標登録第3194846号(T3194846) 
商標の称呼 アスパイア 
代理人 伊東 美穂 
代理人 木村 吉宏 
代理人 水野 勝文 
代理人 保崎 明弘 
代理人 和田 光子 
代理人 岸田 正行 
代理人 小谷 武 
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