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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2012890098 審決 商標
無効2012890003 審決 商標
無効2013890003 審決 商標
不服20137986 審決 商標

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審決分類 審判 一部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X3543
管理番号 1281436 
審判番号 無効2012-890104 
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-11-30 
確定日 2013-10-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第5416687号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5416687号の指定商品及び指定役務中,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」についての登録を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5416687号商標(以下「本件商標」という。)は,「EXTRA COLD」の欧文字を標準文字で現してなり,平成22年9月9日に登録出願,同23年4月12日に登録査定,第35類「広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,輸出入に関する事務の代理又は代行,建築物における来訪者の受付及び案内,自動販売機の貸与,飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」,第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用食器乾燥機の貸与,業務用食器洗浄機の貸与,加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,タオルの貸与」,並びに,第14類,第16類,第18類,第24類,第25類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を,指定商品及び指定役務として,平成23年6月10日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第130号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定役務中,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」について,商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから,その各指定役務についての登録は,同法第46条第1項第1号により,無効とされるべきものである。
2 請求の利益について
請求人は,本件商標の登録出願前から「EXTRA COLD」の語を使用しているものであり,また,不服2012-650092事件において,「EXTRA COLD」の語を含む国際登録第1082593号と本件商標との非類似性を争っているものであるから,請求人が本件商標に対して無効審判の請求をすることについて利害関係を有するものである。
3 具体的理由
(1)商標の自他商品役務識別性について
商標法は,「商標を保護することにより,商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り,もって産業の発進に寄与し,あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」ものであるところ(商標法第1条),商標の本質は,自己の業務に係る商品又は役務と識別するための標識として機能することにあり,この自他商品・自他役務の識別標識としての機能から,出所表示機能,品質保証機能及び広告宣伝機能等が生じるものである。
単に商品の品質・役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は,商標登録の要件を欠くとされているのは(商標法第3条第1項第3号),このような商標は,商品や役務の内容に関わるものであるために,現実に使用され,あるいは,将来一般的に使用されるものであることから,出所識別機能を有しないことが多く,また,商品の特性を表示記述する標章であって,取引に際し,必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,これを特定人による独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであることによるものと解される(昭和53年(行ツ)第129号,平成11年(行ケ)第410号,平成13年(行ケ)第207号等)。
また,単に商品の品質・役務の質を普通に用いられる方法で表示する商標(他の商標の一部となっているものを含む。)には,商標権の効力が及ばないものとされている(商標法第26条第1項第2号及び同項第3号)。
そして,単に商品の品質・役務の質を普通に用いられる方法で表示するにすぎない部分であるか否かは,その指定商品及び指定役務の取引者,需要者によって,該部分が商品の品質や役務の質を示すものとして一般に認識され得るか否かにより決せられるものである(昭和60年(行ツ)第68号,平成11年(行ケ)410号,平成12年(行ケ)76号,平成13年(行ケ)第207号,平成13年(行ケ)第574号等)。
(2)「EXTRA COLD」の意味について
ア 「EXTRA」及び「COLD」に関する辞典の記載
(ア)株式会社小学館発行の「小学館ランダムハウス英和大辞典 第2版」(甲2)には,「extra」の語義として「特別の」,「規格外の」,「格別の」と,また,「cold」の語義として「冷たい」と記載されている。
(イ)株式会社研究社発行の「リーダーズ英和辞典 第2版」(甲3)には,「extra」の語義として「特別の」,「極上の」と,また,「cold」の語義として「冷たい」,「冷やした」,「冷えた」と記載されている。
(ウ)日本ブリタニカ株式会社発行の「ウェブスター英英和辞典」(甲4)には,「extra」の語義として「普通のもの,予期されたもの,あるいは当然のもの以上の,またはそれらより大きい」,「余分のもの,または特別のもの」,「普通の大きさ,量,または程度を超えて」と,また,「cold」の語義として「低い温度である」と記載されている。
(エ)ピアソンロングマン発行の英英辞典「LONGMAN Advanced American Dictionary」(甲5)には,特別に冷たい状態を示す「cold」の類義語「ice」,「freezing」等の説明として「extremely cold」との表現が用いられており,また,「extra」の語義として「extremely」と記載されている。
(オ)オンライン英語辞書「weblio英和辞典・和英辞典」(甲6)には,「extra」の語義として「特別な」,「格外の」,「特別上等の」,「特別に」,「格別に」と,また,「cold」の語義として「冷たい」,「冷やした」,「冷たくした」と記載されており,同サイトでは各語の学習レベルの目安が12段階で示されるところ(甲7),「extra」の学習レベルの目安は,「レベル2 高校1年以上の水準」であり,「cold」の学習レベル
の目安は,「レベル1 中学以上の水準」の語であると記載されている。
イ 「EXTRA COLD」の語義
以上の各事実によれば,我が国を含め英語圏ではない国の取引者,需要者にあっても,「EXTRA」の文字は,「特別に」との意味合いを有する語として,「COLD」の文字は,「冷たい」との意味合いを有する語として容易に認識し,理解されるものである。
そして,「EXTRA」と「COLD」の各単語を組み合わせても,格別特異性のない,ごく自然なものであることから,「EXTRA COLD」の文字は,「EXTRA」と「COLD」の各単語の語義から「特別に冷たい」という意味合いを有する複合語として一般に認識されるものである。
我が国においては,未成年者飲酒禁止法により,満20歳未満の者の飲酒が禁止されているところ,ましてや飲酒年齢に達した成人においては,「cold」の語と「extra」の語が結合された「EXTRA COLD」に接した場合には,「特別に冷たい」という意味合いを容易に認識し,理解するものである。
(3)「EXTRA COLD」の使用について
ア 甲第8号証ないし甲第101号証によれば,1990年代には,ギネス社が「特別に冷たいビール」の販売及び提供にあたって,「EXTRA COLD」の語を用い世界規模の展開をしており,次いで,クアーズ社(Coors),請求人及びカールスバーグ社も,「EXTRA COLD」の語を用いて「特別に冷えた」ビールの販売及び提供を世界規模で大々的に展開している状況が窺える。
したがって,請求人及び他の世界的ビールメーカーが販売し,提供する「ビール」において,「EXTRACOLD」の語が「格別に冷たい」の意味合いを有する語として広く使用されていた事実は明らかである。
イ そして,ギネス社,クアーズ社及びカールスバーグ社による「特別に冷たいビール」の販売及び提供方法は,請求人と販売及び提供方法と極めて酷似するものであるところ(甲102),いずれの企業も,殊更に自他商品・自他役務識別標識として使用しているのではなく,「EXTRA COLD」の語を「格別に冷たい」の意味合いを有する語として使用してきた事実は,我が国を含めて全世界的に,ビールの取引者,需要者であれば,容易に理解し得ることである。
(4)「EXTRA COLD」の語について
ア 審査における経緯
請求人は,既に世界展開をしていた「特別に冷たいビール」の販売及び提供について,日本へ導入を考えた2008年に,関連企業である「ハイネケンジャパン株式会社」(2010年に「ハイネケン・キリン株式会社」に商号変更。)を通じて,指定役務「飲食物の提供」等に係る商標「Extra Cold エクストラコールド」の登録出願(商願2008-033758号)をしたところ,特許庁は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する旨の判断を下し,該拒絶査定は確定しているものである(甲103)。
イ 「EXTRA COLD」の識別力について
(ア)「EXTRA COLD」の語義,世界的ビールメーカー各社による「EXTRA COLD」の語の使用状況,特許庁の過去の審査結果から,「EXTRA COLD」の語は,「特別に冷たい」という意味合いで現実に使用されている語であることから,「特別に冷たい」との意味合いを有する語として取引者,需要者に一般に認識されるものであって,これをその指定役務中,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」について使用された際には,自他役務の識別力を発揮するとみることはできないものというのが相当である。
(イ)また,「EXTRA COLD」の語は,「特別に冷たい」という商品の特性を記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,これを特定人による独占的使用を認めるのを公益上適当としないものというのが極自然である。
特に,世界的な規模での商品の流通,役務の提供,情報の行き来がなされている昨今において,日本の取引者,需要者は,日本のみならず,容易に海外の情報に容易に接する機会があることは顕著な事実であるところ,世界的ビールメーカー各社により,「特別に冷たい」の意味合いで現に使用されている「EXTRA COLD」の語を,引用商標の商標権者に唯一独占権を認めることになれば,該語を用いたビール自体の独占を許すことにもなりかねず,「特別に冷たい」の意味合いで「EXTRA COLD」を使用するビールメーカー各社の活動を大幅に制限するものに他ならないものであり,国際的な流通の混乱の原因,ひいては国際的な競業秩序に反する事態が生ずることがほとんど必定である。
(ウ)したがって,本件商標は,その指定役務中,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」に使用されても,取引者,需要者をして,「特別に冷たいビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」又は「特別に冷たいビールの提供」の意味合いを容易に想起するにすぎず,自他役務識別標識としての機能を発揮しない語と解釈する他になく,また,本件商標は標準文字にて表されてなるものであることから,単に役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものというのが相当である。
4 口頭審理陳述要領書(要旨)
(1)「EXTRA COLD」の使用状況について
1759年創業の世界的ビール会社であり,世界1位のスタウトビールを販売するギネス社は,1990年代から「特別に冷たいビール」の販売及び提供にあたって,「EXTRA COLD」の語を用い世界規模の展開をし(甲66ないし甲88),また,1873年にアメリカで設立された世界的ビール会社で主力ブランドとして,「カーリング(Carling)」を展開しているクアーズ社(Coors)は,2002年から摂氏2度に冷やされた「Carling Extra Cold」を販売している(甲96ないし甲101)。
そして,世界第3位のシェアを誇る世界的ビール会社である請求人は,2005年から通常の温度(5度?7度)よりも低い温度(0度以下)であること,すなわち「特別に冷たい」ことを示すために,「EXTRA COLD」の語を使用している(甲8ないし甲65)。
世界第4位のシェアを誇る世界的ビール会社であるカールスバーグ社は,標準的なラガービールよりも数度冷やした状態で飲める先導的ビールとして「Carlsberg Export」を販売しており,すごく冷えた状態を「Extra Cold」と表現するとともに,特別に冷えたビールの提供にあたって,「Extra Cold」を使用している(甲89ないし甲95)。
また,甲第102号証のとおり,ギネス社,クアーズ社及びカールスバーグ社による「特別に冷たいビール」の販売及び提供方法は,請求人と販売及び提供方法と極めて酷似するものであるところ,いずれの企業も,殊更に自他商品・自他役務識別標識として使用しているのではなく,「EXTRA COLD」の語を「格別に冷たい」の意味合いを有する語として使用しており,該事実は,我が国を含めて全世界的に,ビールの取引者,需要者であれば,容易に理解し得ることである。
さらに,甲第103号証のとおり,「近年,通常の温度より低い0度?-2度程度まで冷やしたビールが飲食店で提供されており,これについて『エクストラコールド』と指称されている実情」が認められる。
したがって,請求人及び他の世界的ビールメーカーが販売し,提供する「ビール」において,「EXTRA COLD」の語が「格別に冷たい」の意味合いを有する語として広く使用されていた事実は明らかである。
(2)本件商標の自他役務識別性について
以上の各事実に照らせば,本件商標がその指定役務中,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」に使用された場合には,本件商標の登録査定時において,該指定役務の取引者,需要者に,本件商標が「特別に冷たい」との意味合いを有する語であって,その役務の質を表示するものと認識されるものといえ,かつ,本件商標は,取引に際し必要適切な品質を表示するものであって,特定人による独占使用を認めるのは公益上適当ではないというべきである。
(3)審理事項通知書の暫定的見解に対する意見
請求人は,専用ビールサーバーによるドラフトビールの提供を行っているほかに,専用冷蔵庫を用いて瓶ビールの提供を行っている(甲12,甲13,甲18ないし甲20,甲25ないし甲30,甲32等)。
また,請求人は,例えば,台湾,南アフリカ,アメリカ合衆国,ブルガリアにおいては,量販店(コンビニも含む。以下,同じ。)で,同様の専用冷蔵庫を設置し,瓶ビールの販売を行っている(甲113)。
甲第31号証は,2006年から2011年までの全世界の店舗数に関する資料であるが,瓶ビールの販売又は提供の展開数は67,019件であり,その内約25,000件が量販店での専用冷蔵庫設置による販売であり,その販売行為は,請求人が「特別に冷たい」との意味合いを有する本件商標を,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の品質を表示するものとして使用している事実に他ならないものである。
世界的ビール会社が「EXTRA COLD」の語を用いて「特別に冷えたビール」の販売及び提供を世界規模で大々的に展開している状況を踏まえると(甲8ないし甲101),我が国の量販店で,専用冷蔵庫を用いて瓶ビールの販売が行われた場合には,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の取引者,需要者は,本件商標を「特別に冷たい」との意味合いを有する語であって,その役務の質を表示するものと認識するものであり,少なくとも,将来,そのように認識される可能性があるというのが相当である。
また,現実に請求人は,日本の量販店で専用冷蔵庫を用いて瓶ビールの販売を行う予定である。
(4)被請求人の主張に対する反論
ア 取引者・需要者の認識(認識可能性)について
被請求人は,「EXTRA COLD」の語から直感できる「特別に冷たい」という意味合いが「極めて漠然とした広範な意味合い」であるとして,本件商標が自他役務識別力を有するものであると主張するが,「EXTRA COLD」の語は,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」との関係において,提供されるビールの温度が「特別に冷たい」ことを直接的,かつ,具体的に表示したものであることは容易に認識し理解できるものであり,取引に際し必要にして十分な表示であって,何ら,「極めて漠然とした広範な意味合い」ではない。
本件商標は,「特別に冷たい」という意味合いを直感できるからこそ,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」の取引者,需要者は,提供されるビールが「特別に冷たい」ことを認識する(少なくとも認識される可能性がある)のである。
イ 本件商標に対する異議申立事件について
異議事件における異議申立人は,ギネス社,クアーズ社及びカールスバーグ社によって,「EXTRA COLD」が役務の質を表示するものとして使用されていることを示す証拠等を一切提出しておらず,具体的な主張内容も請求人のものと異なることは異議申立書と無効審判請求書を読めば容易に把握できるところである。
また,異議申立制度と無効審判制度が並存して存在する我が国法制度において,異なる判断がなされることは当然想定しているものであり,また,異議申立人提出の証拠及びそれに基づく主張(乙3)を前提として審理判断がなされた異議2011-900326号決定(乙4)における判断が,他の証拠及びそれに基づく主張をする本件無効審判の判断を拘束するものではないことは明らかなことである。
ウ 東京高裁平成10年(行ケ)第109号,同11年1月27日判決について
被請求人自身も認めるように「商標が自他役務識別標識として機能を有するか否かの判断は,査定時における具体的な取引の実情を勘案して,その指定役務の需要者,取引者の認識を基準に判断すべきものであり,この判断は他の審査例等の判断によって左右されるものではないことは明らかである」ところ,取引の分野も異なれば,本件商標とその構成が全く異なる商標について審理判断がなされた該判決は,全く考慮に値しない事案である。
エ 被請求人の使用について
請求人のほかにも,ギネス社,クアーズ社及びカールスバーグ社によって,「特別に冷たいビール」の販売及び提供が行われている状況において,たとえ被請求人が我が国において「EXTRA COLD」の語の普及に労力を費やしたとしても,「EXTRA COLD」が「特別に冷たい」ことを示すことを普及させるという効果に止まるというべきである。
また,被請求人は,甲第75号証,甲第81号証,甲第82号証,甲第92号証を提示するが,これらは,いずれも被請求人が本件商標を自他役務識別標識として使用していることを示す証拠ではないことは,その記事全体の内容からも容易に理解できるものである。
特に,甲第82号証は,被請求人が開催したイベントに関するものであるが,「前半はエクストラコールドの説明から。エクストラコールドは,元々ビール離れしている若者にもっとビールを飲んで貰うためにギネスビールが始めた飲み方なんだそうです。通常のビールの提供温度が4℃?6℃なのに対しエクストラコールドの提供温度は0℃?-2℃!ビールの氷点が-3℃らしいので,ほんとうに凍るギリギリの温度ということになります。」という記載から,被請求人自身が,「エクストラコールド」について,最初に展開した会社をギネス社と説明するとともに,「特別に冷たい」状態のビールを提供する際に表現する言葉として説明していることを容易に把握できるのである。
そうとすると,本件商標に接する取引者,需要者は,提供されるビールが「特別に冷たい」ことを認識する(少なくとも認識される可能性がある)にすぎないものであり,本件商標が被請求人の業務に係る商品又は役務の出所を表示する標識として,需要者・取引者の間で広く認識されている著名な商標といえないことは勿論,被請求人にのみ独占させるに適した商標ともいい難いものである。
オ 請求人等の使用について
商標法第3条第1項第3号は,取引者,需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき,それ故に登録を受けることができないとしたものであって,該表示態様が,商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか,現実に使用されている等の事実は,同号の適用において必ずしも要求されないものと解される(甲105ないし甲112)。
そして,インターネットなどの情報通信分野の発展による情報伝達の高速化という我が国の社会的状況においては,たとえ海外で体験したことを日本人がブログで紹介しているものであるとしても,我が国の取引者,需要者がこの情報に接することができる以上,考慮できないとする合理的な理由はないものである。
そうとすると,請求人の提出の各証拠から,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」の取引者,需要者は,本件商標を「特別に冷たい」との意味合いを有する語であって,その役務の質を表示するものと認識し,少なくとも将来的に認識する可能性があることは明らかである。
5 上申書
(1)狭義の識別力について
商標法第3条第1項第3号に掲げる商標は,狭義に解釈すると,日本において,取引上現実に多数人に商品の品質表示や役務表示の質などの記述的商標として使用されているため,商標登録をしても特定人の商品又は役務を識別する標識としての機能を営み難いようなものに限ることとなる。
このように商標法第3条第1項第3号に掲げる商標を狭義に解釈すると,日本において,取引上現実に多数人に商品の品質や役務の質など記述的商標として使用されていない場合には,当該商標は,自他商品又は自他役務識別力を有するものとして商標法第3条第1項第3号に掲げる商標に該当しないこととなる。
被請求人は,「日本において出願及び登録された商標は,あくまでも日本の商標法及び日本における商取引の実情に照らして判断されるものであり,商標の自他役務識別力についても日本における商標の自他役務識別力についても日本における商標の使用状況等を勘案して判断されるべき」,また,「本件商標の『EXTRA COLD』の語も一般的に用いられている語ということはできず,また,本件の指定役務との関係において役務の質等を具体的に表示するものとして広く使用されている事実がない」,さらに,「本件商標のように,構成中の各語がそれぞれ慣れ親しまれたものであったとしても,両語を結合してなる『EXTRA COLD』の文字が親しまれた既成の観念を有する一連の成語として知られておらず,本件指定役務の質等を具体的に表示するものとして使用されている事実が見いだせない場合,商標の自他役務識別力は肯定される」と主張することから,商標法第3条第1項第3号に掲げる商標を狭義に解釈しているものと推測される。
(2)広義の識別力について
商標法第3条第1項第3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは,このような商標は,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠くものであることによるものと解される(甲104:昭和53年(行ツ)第129号同54年4月10日判決参照)。
この趣旨に照らせば,商標法第3条第1項第3号に掲げる商標には,登録査定時において,当該商標が指定商品の品質等を表すものと,将来を含め,取引者,需要者にその商品の原材料又は品質を表すものと認識される可能性があり,これを特定人に独占使用させることが公益上適当てないものが含まれるものと広義に解釈するのが相当である。
このように商標法第3条第1項第3号に掲げる商標を広義に解釈すると,同号に掲げる商標には,たとえ現実に一般に使用されていなくても,将来記述的な意味を有するものとして需要者に認識されるおそれのあるものが含まれるものである(甲105ないし甲112,甲114ないし甲124)。
(3)以上のとおり,商標法第3条第1項第3号に掲げる商標を広義に解釈することは,判例・審決・学説ともに概ね一致した見解であり,商標法第3条第1項第3号に掲げる商標に該当するか否かを判断するにあたっては,将来を含め,取引者,需要者にその商品の原材料又は品質を表すものと認識される可能性があり,特定人に独占使用させることが公益上適当でないと判断されるものか否かが検討されるべきである。
(4)専用冷蔵庫を用いたビールの販売について
店舗内で冷蔵庫を用いて商品を販売する行為は,自動販売機による商品販売と近似する販売態様であり(甲126),自動販売機による商品販売は,消費税又は日本標準産業分類上,小売業に属するものである(甲127ないし甲130)。
店舗内の冷蔵庫や自動販売機には,冷蔵庫及び自動販売機に付される商品商標とは全く異なる商品が品揃え,陳列されている場合も決して少なくないものである(甲126)。そして,自動販売機による小売販売の場合,商品の製造者が設置する場合もあれば,小売業者が独自に設置する場合もあるものである。
将来的には,自動販売機による商品販売と同様に,小売業者が独自に専用冷蔵庫を設置し,その専用冷蔵庫に各社のビールの品揃え,陳列を行い,そこに,通常の瓶ビールと異なる特別に冷たい温度の各社のビールの品揃え,陳列を行う可能性も十分予想されるところである。
このような可能性をも考慮すると,海外において,請求人の取引先の量販店やコンビニなどの約25,000もの小売業者によって,同様の専用冷蔵庫が設置された上で,瓶ビールの小売販売が行われている事実は,本件商標の商標法第3条第1項第3号に掲げる商標の該当性に影響を与える事実である。
また,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の取引者,需要者が「EXTRA COLD」の語をどのように認識し理解するか判断するにあたって,日本の事情のみならず,海外の事情を考慮してはならないとする客観的な根拠もなければ,そのような合理的理由もない。
(5)以上の次第で,将来的に,日本においても,「EXTRA COLD」を表示した専用冷蔵庫が設置された上で,「特別に冷たい」ビールの小売販売が行われる可能性は十分にあり得るものであり,また,そのような使用がなされた場合に,「EXTRA COLD」に接する取引者,需要者は,冷蔵庫内に品揃え,陳列された商品が「特別に冷たい」という状態であることを表示するために,専用冷蔵庫に「EXTRA COLD」の語が使用されていると認識,理解するのが自然である。それ故,本件商標は,第43類「ビールの提供」との関係のみならず,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」との関係において,商標法第3条第1項第3号に該当するものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,本件請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める,と答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第117号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標に対する異議申立事件について
本件商標は,その指定役務中,第43類「ビールの提供」について商標法第3条第1項第3号に該当することを理由に登録異議の申立て(異議2011-900326号)がなされている。
異議2011-900326号事件における異議申立人は,キリンホールディングス株式会社であるが,申立てに係る具体的な理由は,本件無効審判において請求人が具体的な理由として主張している内容とほぼ同じといって差し支えない(乙3)。
異議2011-900326号の異議の決定(乙4)における特許庁の判断に鑑みれば,請求人が本件無効審判で挙げている証拠をみても,「EXTRA COLD」の文字が,本件商標の指定役務中「ビールの提供」の役務の質等を表示するためのものとして,本件商標の査定時において取引上普通に使用されていたとは認められないと考えられる。
(2)商標の自他商品役務識別性について
ア 請求人は,昭和53年(行ツ)第129号,昭和60年(行ツ)第68号,平成11年(行ケ)第410号,平成12年(行ケ)76号,平成13年(行ケ)第207号,平成13年(行ケ)第574号等の判決を検討するが,被請求人もあえて同判決を再掲する。平成10年(行ケ)第109号(乙5)によれば,「『ケミカルアンカー』の語の前半の『ケミカル』は,英語の『chemical』に通じ,一般の英和辞典によれば『化学の,化学的,化学薬品による』等の意味を,後半の『アンカー』は,英語の『anchor』に通じ,『定着,定着具』等の意味を認識させるものであり,この両者を一連に横書きした本件商標は,化学に何らかの関連を有する定着又は定着具を意味するものとの観念を生ずるとしても,それが化学的組成物からなるものか,あるいは定着に際して科学的作用を利用するものか,その一部に化学薬品等を用いたものかなど,極めて漠然とした広範な意味を生ずるものと認められ,指定商品との関係において商品が有する一定の品質を表示するものとして一般需要者・取引者に認識されると解することは困難である。したがって,本件商標は,登録査定時において,その構成全体として,特定の商品の品等を表示するものではなく,暗示的に表現したものと理解されることがあるというに止まる一種の造語である。」と判示されている。
イ これを本件商標について照らすと,請求人が「『EXTRA』及び『COLD』に関する辞典の記載」及び「『EXTRA COLD』の語義」において述べていることをみても,本件商標に接する需要者,取引者は「特別に冷たい」という極めて漠然とした広範な意味合いを看取し得るにすぎず,本件の指定役務との関係において,役務が有する一定の質を直接的,かつ,具体的に認識・把握することは困難であるといえる。
そうとすれば,上記判決で示されているとおり,本件商標は,登録査定時において,その構成全体として,特定の役務の質等を表示するものではなく,暗示的に表現したものと理解されることがあるというに止まる一種の造語であると判断されて然るべきである。
(3)被請求人の「EXTRA COLD」の使用状況について
ア 被請求人は,「EXTRA COLD」を取扱う飲食店の間口拡大を積極的に展開しており,2010年3月1日時点では全国30店舗における提供であったところ,メディア等で大きな話題となったことも相まって,消費者や飲食店からの要望や問い合わせが増加することとなり,同年末には633店舗が「EXTRA COLD」を取扱うこととなった(乙6)。
「EXTRA COLD」の取扱店は,今現在においてもさらに増え続け,2012年末時点では,2,815店に至り,2013年中には,5,000店舗に拡大させることを目標に推し進めている(乙7の1及び2)。また,2010年5月に期間限定で,「EXTRA COLD BAR」を銀座にオープンしたところ,その様子がTV番組で幅広く紹介されている事実がある。2010年5月から9月までの間に,東京で計29番組において「EXTRA COLD BAR」が取り上げられている(乙8)。
甲第8号証に載せている番組名及びその放送内容のキャプチャー画像からしても,朝のニュース番組,昼のワイドショー,バラエティ番組など様々なジャンルにおいて紹介されていることが分かり,幅広い視聴者層が大きな関心を寄せて見ていたことが容易に理解できる。
また,実際に店舗に行ったお客様がブログに書いた内容からも,その人気の高さを窺うことができる(乙9)。
実際,日経優秀製品・サービス賞2011を受賞したことを紹介している記事の中で,2010年5月21日から9月30日の間に東京・銀座店(1店舗)に約4万人が来店し,2011年には,東京・大阪・名古屋・博多の4店舗合計で6月1日から9月30日の4ヶ月の間に約13万人の来店があったことが記載されている(乙10の1ないし3)。
また,被請求人は,「氷点下の『アサヒスーパードライ』をご家庭で!『エクストラコールドクーラー』プレゼントキャンペーン実施!」として,家庭でも気軽に「EXTRA COLD」を楽しんで頂くため,対象商品についているシールを集めて応募すると「エクストラコールドクーラー」をプレゼントするキャンペーンを行った(乙11)。
当該キャンペーンは,平成22年5月21日から同年8月10日の応募期間に,応募数が94万件に達するという大変な好評を博することとなり,その好評を受けて平成23年7月1日から同年8月10日の期間においても「“氷点下のスーパードライ”をご家庭で!『必ずもらえる!』キャンペーン実施!」を行ったが,短期間の募集にも拘らず,約16万件の応募があった(乙12)。
これらの事実から,本件商標の査定日である平成23年(2011)4月12日には,需要者,取引者間では周知著名な商標となっていたことが容易に理解でき,また,その著名性は現在においてさらに高まっていることがわかる。
イ さらに,数多くの新聞・雑誌に被請求人の「EXTRA COLD(エクストラコールド)」が取り上げられている事実を挙げることで,その著名性の程度を裏付ける。
(ア)「EXTRA COLD BAR」のオープンに関する特集記事は,数多くの新聞・雑誌に取り上げられている(乙13ないし乙16)。
「EXTRA COLD BAR」は,期間限定の店舗であり,2011年のオープンイベントでも同様に新聞紙面で広く取り上げられている(乙17ないし乙24)。
また,「EXTRA COLD BAR」がオープンしたことは,その他の新聞,業界紙及び雑誌においても広く紹介されている事実がある(乙25ないし乙47)。
(イ)「EXTRA COLD BAR」の好評を紹介している記事
「EXTRA COLD BAR」は,期間限定の店舗にも関わらず,多数のお客様が来場し,非常に好評であったことは既に述べたとおりである(乙48ないし乙72)。
(ウ)「EXTRA COLD」キャンペーンの紹介記事
「EXTRA COLD」キャンペーンに多数の応募があったことは,既に述べたとおりであり,被請求人が当該キャンペーンに向けて,各種媒体において盛んにPRを行った成果であるともいえる(乙73ないし乙89)。
(エ)「EXTRA COLD」専用ディスペンサーに関する記事
「EXTRA COLD」を取扱う飲食店は,専用ディスペンサーを設置し,専用タンブラーを使用しなければならない。
ここで,被請求人の事業会社であるアサヒビール株式会社が,専用の小型ディスペンサーを開発し,取扱店の拡大に向けて,積極的に取り組んでいることが分かる記事を取り上げる(乙90ないし乙99)。
ウ 以上のとおり,これらの証拠資料に鑑みれば,「EXTRA COLD」の文字が,被請求人の業務に係る商品又は役務の出所を表示する標識として,需要者・取引者の間で広く認識されており,著名な商標であることが容易に理解し得るところである。
日本において「EXTRA COLD」が広まったのは,被請求人の貢献によるところが極めて大きいといっても過言ではなく,それは請求人の導入店舗数が2010年で計229店舗(甲33)であるのに対し,2010年時における被請求人の導入店舗数は,その倍以上の633店舗であることからも,被請求人が本件商標の普及に多大な労力を費やしたことが容易に理解できるところである。
実際,各メディア媒体での露出や積極的なプロモーション活動だけではなく,被請求人は,情報発信拠点として期間限定の「EXTRA COLD BAR」を自ら展開し,多くのお客様に「EXTRA COLD」を体感して頂けるように努めてきた。また,家庭でも気軽に「EXTRA COLD」を楽しんでもらうべく,“必ずもらえる”キャンペーンを実施しており,それが大変な好評を博していることは既に述べたとおりである。さらに,被請求人が提供する「EXTRA COLD」は高品質な状態での提供を常に心がけているところ,飲食店の様々な業態に合わせて専用ディスペンサー等の開発・改良に取り組み,高い品質を維持しつつも「EXTRA COLD」を取り扱う店舗が増えるように取り組んでいる。
日本において,「EXTRA COLD」の語が需要者,取引者の間に広く普及・浸透したのは,被請求人のこうした営業努力の成果に他ならず,このような「EXTRA COLD」に関する多角的な営業活動・広告宣伝・商品開発が他に類をみないものであることは,請求人が証拠資料に挙げる海外のビールメーカーの使用状況の例を見ても,容易に理解できるところである。そうとすれば,請求人を含めたごく僅かの使用例をもって,本件商標の査定時において取引上普通に使用されていたと判断されるのは極めて不合理であるといえる。
したがって,本件商標は,被請求人の業務に係る商品又は役務の出所を表示する標識として,取引者・需要者の間で広く認識されている著名な商標であり,十分に独占適応性を有する商標であることがいえる。
請求人は,自ら商標登録出願した商願2008-33758号が,商標法第3条第1項第3号に該当することを理由に拒絶査定となった事例を持ち出し,過去の審査結果からも本件商標が自他役務の識別力を発揮するとみることはできないと主張するが,商標が自他役務識別標識として機能を有するか否かの判断は,査定時における具体的な取引の実情を勘案して,その指定役務の需要者,取引者の認識を基準に判断すべきものであり,この判断は他の審査例等の判断によって左右されるものでないことは明らかである。
(4)請求人等の「EXTRA COLD」の使用状況について
ア 請求人が提出している証拠資料は,そのほとんどが海外で体験したことを日本人がブログで紹介しているものであり,そもそも日本において「EXTRA COLD」の語が各ビールメーカーによって広く使用されていることを示すものではない。
さらに,「ビールメーカー各社の活動を大幅に制限するものに他ならないものであり,国際的な流通の混乱の原因,ひいては国際的な競業秩序に反する事態が生ずることがほとんど必定である」と述べているが,「特に世界的な規模での商品の流通,役務の提供,情報の行き来がなされている昨今において」長年に亘って世界的に広く使用されているのであれば,日本においても過去に使用されている事実があるのが相当であるように思われるが,請求人が挙げている証拠によってはその事実を見いだすこともできない。
実際,甲第75号証,甲第81号証,甲第82号証などは,被請求人の業務に係る商品又は役務を紹介する際の一部で取り上げられているものであり,甲第92号証においては,「香港のレストランで飲んだカールスバーグ。『エクストラ・コールド』と書いてあります。確かにアサヒ(被請求人)の氷点下のビールに近いかも。エクストラコールドビールは,ハイネケン(請求人)が始めたんじゃなかったかな?ググってもちょっと分からんかった。カールスバーグのエクストラコールドは,グラスもカッコいいですね。」と書かれている。
この記載内容をみれば分かるとおり,日本以外の地域で提供されたビールに「EXTRA COLD」が使用されていたとしても,日本人は,我が国における被請求人の商品又は役務を想起するというのが明らかであり,「EXTRA COLD」の文字が自他商品役務識別力を有し,商標としての機能を果たし得ることは明らかな事実であるといえる。
イ そうとすれば,本件商標は,被請求人の業務に係る商品又は役務の出所を表示する標識として,取引者・需要者の間で広く認識されている商標に該当し,商標に化体する信用は極めて高いと考えられるものである。
商標法が「商標を保護することにより,商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り,もって産業の発達に寄与し,あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」ものであるところ(商標法第1条),この目的から離れて,本件商標を無効とすべき合理的な理由は全く見あたらず,また,国際的な流通の混乱の原因,ひいては国際的な競業秩序に反する事態が生ずるという請求人の主張は,その主張に具体的な根拠が無いものといわざるを得ない。
ウ また,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」については,請求人が提出する証拠をすべてみても,「EXTRA COLD」の語が使用されている事実が一切見あたらない。
さらに,請求人が挙げる甲第69号証では,「1990年代前半,ギネス社はギネス・エクストラ・コールド(Guinness Extra Cold)という,2,3度(通常のギネスより2,3度低い温度)で飲む商品を開発した。」とあり,甲第71号証では,「1990年前半,ギネス社はギネス・エクストラ・コールドという若者向けの2,3℃(通常のギネスより2,3℃低い温度)で飲む商品も販売しています。」と記載されているが,これらの資料からすれば,ギネス・エクストラ・コールドは商品として市場に流通しているといわざるを得ない。事実,甲第85号証では,数ある商品の一つとして取扱われており,実際の使用態様をみても,商品「ビール」における標章の使用であると考えられる。
また,クアーズ社の「カーリング(Carling)」における証拠資料をみても,甲第97号証にあるとおり,そもそも海外における使用例ではあるが,他の商品と併せてドラフトビールの一つとして取扱われている。
エ そうとすれば,請求人が挙げた証拠資料をみる限り,第35類の指定役務「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」における商標の使用でないことは明らかであるが,第43類の指定役務「ビールの提供」における商標の使用に該当するかも甚だ疑問に思わざるを得ない。
(5)小括
以上述べたとおり,「EXTRA COLD」の語は,「EXTRA」と「COLD」の各単語の語義から「特別に冷たい」程の意味合いを直感させるものであるとしても,極めて漠然とした広範な意味合いしか理解することができず,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」との関係において役務が有する一定の質を表示するものとして一般需要者・取引者に認識されると解することは困難であるといえる。
また,請求人は,「EXTRA COLD」の語が,各ビールメーカーによって使用されていると述べているが,請求人が提出した証拠資料によっては,我が国において役務の質を具体的に表すものとして広く使用されているという事実が見あたらず,本件商標が自他商品役務識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであるという証拠とはなり得ない。
さらに,本件商標の査定時において,本件商標は,被請求人の業務に係る商品又は役務の出所を表示する標識として,取引者・需要者の間で広く認識されていたことから,本件商標が自他役務識別力を有し,商標としての機能を十分に果たしていたことは明白な事実である。
なお,被請求人に本件商標の独占権を認めれば,ビールメーカー各社の活動を大幅に制限し,国際的な流通の混乱の原因,ひいては国際的な競業秩序に反する事態が生ずると請求人は述べているが,何ら具体的な根拠は無く,商標法の目的(第1条)を無視してまで係る主張を認めることは極めて妥当性に欠けるものである。
したがって,本件商標は,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」との関係において,十分に自他役務の識別標識として機能を十分に果たすものであって,単に役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標には該当しないと判断するのが相当である。
2 口頭審理陳述要領書(要旨)
(1)請求人の全主張の要約について
請求人は,「EXTRA」の文字が「特別に」の意味合いを有する語であり,「COLD」の文字が「冷たい」の意味合いを有する語であることから,「EXTRA COLD」の文字は「特別に冷たい」という意味合いを有する複合語であると一般に認識されていると述べる。
しかしながら,「EXTRA COLD」の語自体が,辞典等に掲載されている事実は見あたらず,親しまれた既成の観念を有する一連の成語として一般に知られているといった事実は何ら示されていない。
さらに,請求人が提出した甲第2号証ないし甲第4号証,甲第6号証からも明らかなとおり,「EXTRA」の文字は,「特別の」の他に「余分の,臨時の」等の意味合いも有し,「COLD」の文字は,「冷たい」の他に「寒い,冷淡な」等の意味合いも有している。両語とも種々の意味や用法をもつ語であることは容易に認識し得るところであり,「EXTRA COLD」の文字から,「特別に冷たい」程の意味合いを想起させる場合があり得るとしても,それに接する取引者,需要者が直ちに具体的な意味合いを想起するといえるほど強い観念表示力を備えた語であるとまではいえない。
そうとすれば,東京高裁昭和45年(行ケ)第61号判決(乙100)において,「本願商標は,商品(役務)の品質(質),性能をある程度暗示する要素を含むものといえないではないであろう。しかしながら,このように商品(役務)の品質(質)等を暗示する要素を含む商標が,つねに商標法第3条第1項第3号に該当し,商品(役務)の出所表示力を欠くものとはいえないことは,いうまでもない。」と判示されていることに照らせば,「EXTRA COLD」の文字も役務の質を暗示する要素を含むものであったとしても,そのことのみをもって商標法第3条第1項第3号に該当すると判断されるのは妥当ではない。
また,請求人は,ギネス社,クアーズ社,カールスバーグ社といったビール会社が,海外において「EXTRA COLD」の語を使用している事実を挙げているが,日本において出願及び登録された商標は,あくまでも日本の商標法及び日本における商取引の実情に照らして判断されるものであり,商標の自他役務識別力についても,日本における商標の使用状況等を勘案して判断されるべきものであるので,これらの事実が我が国における本件商標の自他役務識別力を否定する証拠とはなり得ないと考える。
すなわち,同一の標章が国によって商品又は役務の識別力を有するかどうかは異なり,これに応じて商標登録が区々になるという事態は,国際的にも制度上予定されている事柄であり,特定の国において商品又は役務の識別力を有する標章が,他国において商品又は役務の一般名称又は品質表示として用いられていることは稀ではないといえる。工業所有権の保護に関するパリ条約は,商標の登録出願及び登録の条件は,各同盟国において国内法令で定めることとし(6条(1)),いずれかの同盟国において正規に登録された商標は,他の同盟国(本国を含む。)において登録された商標から独立したものとする(6条(3))との各国商標の独立の原則を規定していることからもそれは明らかであるといえる。
したがって,本件商標を,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」に使用しても,これに接する需要者,取引者が役務の質等を直接的,かつ,具体的に表示したものとして認識し理解するようなことはなく,本件商標は自他役務の識別標識としての機能を十分に果たし得るものというべきである。
上記の主張は,例えば,知財高裁平成21年(行ケ)第10023号判決(乙101)からも首肯できるものと考える。
該判決は,本件の指定役務と異なる商品について判断されたものではあるが,本件商標の「EXTRA COLD」の語も一般的に用いられている語ということはできず,また,本件の指定役務との関係において役務の質等を具体的に表示するものとして広く使用されている事実がない以上,上記判決で示された判断は十分に参考となるものである。
なお,請求人は,甲第103号証として挙げた拒絶理由通知書内において,「近年,通常の温度より低い0度?-2度程度まで冷やしたビールが飲食店で提供されており,これについて『エクストラコールド』と指称されている実情」が認められると述べているが,これはあくまでも審査における一例であり,法的な最終判断を経ているものでもないから,請求人が挙げている審査例が本件商標についての識別性の判断にそのまま当てはまるものではない。
(2)審理事項通知書の暫定的見解に対する請求人の意見について
請求人は,専用ビールサーバーによるドラフトビールの提供を行っているほかに,専用冷蔵庫を用いて瓶ビールの提供を行っていると述べ,例えば,台湾,南アフリカ,アメリカ合衆国,ブルガリアにおいて,量販店(コンビニも含む。)で,同様の専用冷蔵庫を設置し,瓶ビールの販売を行っていると述べている。
まず,日本において出願及び登録された商標は,あくまでも日本の商標法及び日本における商取引の実情に照らして判断されるものであり,商標の自他役務の識別力についても日本における商標の使用状況等を勘案して判断されるべきものであるから,これらの台湾,南アフリカ等における使用の事実を勘案する必要がないことはいうまでもない。
また,甲第113号証で示されている使用は,「自らの商品を販売するために用いられる専用冷蔵庫」に標章が用いられているものであり,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」における使用には該当しないものと考える。
請求人は,「世界的ビールメーカー各社により『特別に冷たい』の意味合いで現に使用されている『EXTRA COLD』の語を,第35類『ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』について,被請求人に唯一独占権を認めることになれば,当該語を用いたビール自体の輸入・販売の独占を許すことにもなり,無用な紛争を引き起こしかねないものである。すなわち,『EXTRA COLD』を使用するビールメーカー各社の活動を大幅に制限するものに他ならず,国際的な流通の混乱の原因,ひいては国際的な競業秩序に反する事態が生ずることがほとんど必定である。」と述べている。
しかしながら,現実にそのような無用な紛争,国際的な流通の混乱,国際的な競業秩序に反する事態が生じているといった事実は全く存在しておらず,将来的に起こり得る蓋然性が高いと認めるに足る具体的な理由は何ら示されていない。
そうとすれば,乙第6号証ないし乙第99号証で示したとおり,本件商標は,被請求人の業務に係る商品又は役務の出所を表示する標識として,取引者,需要者の間で広く認識されているものであるので,商標法の目的を度外視してまで何ら法的根拠の無い請求人の主張を受け入れる余地は全くなく,被講求人が前記(1)で述べたことに何ら影響を与えないものと考える。
(3)被請求人の主張に対する請求人の反論について
ア 取引者・需要者の認識(認識可能性)について
請求人は,「『EXTRA COLD』の語は,第35類『ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』及び第43類『ビールの提供』との関係において,提供されるビールの温度が『特別に冷たい』ことを直接的かつ具体的に表示したものであることは容易に認識し理解できるものであり,取引に際して必要にして十分な表示である」と述べているが,請求人は「EXTRA」及び「COLD」の各語の語義について立証しているのみであり,我が国において「EXTRA COLD」の語が役務の質を直接的かつ具体的に表示したものであることを容易に認識し理解できるとする具体的な根拠は何ら示されておらず,また,我が国における商取引に際して必要にして十分な表示であるとする根拠も示してはいない。
イ 本件商標に対する異議申立事件について
請求人は,ギネス社,クアーズ社及びカールスバーグ社によって「EXTRA COLD」の語が役務の質を表示するものとして使用されていることを示す証拠を新たに提出している旨述べているが,該証拠は海外における使用の事実であり,本件においても証拠として採用される類のものではない。
また,異議第2011-900326号事件(乙4)において,「申立人が提出した甲第4号証ないし甲第44号証を徴するも,これらの証拠は,カタログ,新聞,雑誌及びインターネットの打ち出しの事例であるが,使用例は『ハイネケン エキストラ コールド』,『Haineken EXTRA(Extra) COLD(Cold)』等の「ハイネケン」のものがほとんどで少なく,また,その記載内容は,『ハイネケンビールが凍る寸前の0℃から-2℃で提供されること』を紹介するものであるから,『EXTRA COLD』の語が『凍る寸前まで冷やしたビールの提供方法の名称』,あるいは,『凍る寸前まで冷やして提供されるビールの名称』として広く使用されているものとは認められない。」と示されており,請求人の使用例のみをもって,本件商標が第43類「ビールの提供」との関係において役務の質それ自体を表示するものと認識されるものではないことは明らかである。
なお,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」において,請求人は,自らの使用の事実を主張しているが,前記(2)で述べたとおり当該主張は採用されるべきものではない。
ウ 東京高裁平成10年(行ケ)第109号,同11年1月27日判決について
請求人は,当該判決は,本件商標と取引分野も異なり商標の構成も異なることから,全く考慮に値しない事案であると述べている。
しかしながら,商標が自他役務識別標識としての機能を発揮できるか否かの判断は,構成各文字がどのような意味合いを有しているかのみにとどまらず,出願された商標それ自体が「構成全体」でどのように認識されるかによって判断されなければならないと考えられるところ,当該判決は2つの語を組み合わせた商標の自他商品役務識別力の判断について示されている事例であり,「EXTRA」の語と「COLD」の語を組み合わせてなる本件商標の自他役務の識別力の有無についても,当然に参酌されて然るべき事案であると考える。
また,請求人は,本件商標と取引分野も異なり商標の構成も異なる判決例を挙げているが(甲105ないし甲112),それらは商品の産地,原材料,用途,品質との密接な関連付けによって結論が導き出されているものであり,本件商標のように,構成中の各語がそれぞれ慣れ親しまれたものであったとしても,両語を結合してなる「EXTRA COLD」の文字が親しまれた既成の観念を有する一連の成語として知られておらず,本件指定役務の質等を具体的に表示するものとして使用されている事実が見いだせない場合,商標の自他役務識別力は肯定されることは,従前の審決例からも容易に理解できるところである(乙102)。
エ 被請求人の使用について
請求人は,「本件商標は,第35類『ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』及び第43類『ビールの提供』に使用されても,これに接する取引者,需要者は,提供されるビールが『特別に冷たい』ことを認識する(少なくとも認識される可能性がある)に過ぎないため,何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識できないものである。そして,請求人のほかにも,ギネス社,クアーズ社及びカールスバーグ社によって『特別に冷たいビール』の販売及び提供が行われている状況においては,たとえ被請求人が我が国において,『EXTRA COLD』の語の普及に労力を費やしたとしても,『EXTRA COLD』が『特別に冷たい』ことを示すことを普及させるという効果に止まるというべきである。」と述べている。
しかしながら,取引者,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるか否かについては,商標の使用状況に関する事実を具体的に把握し,それによって,その商標の取引者,需要者の認識の程度を推定し,自他役務の識別力の有無を判断しなければならないところ,乙第6号証ないし乙第99号証における被請求人の本件商標の使用状況に鑑みれば,これらの使用が何人かの業務に係る商品又は役務であるか認識できないと判断するのは著しく不合理であって,被請求人の出所標識として,本件の指定役務の取引者,需要者の間で広く認識,把握されていると判断されるのが相当である。
請求人は,甲第82号証の記載を取り上げているが,「去年東京で大盛況だったエクストラコールドBARですが,今年,大阪と名古屋でも開催する話が進んでいるのだそうです。あと,エクストラコールドを取り扱っているお店も増えていっているみたい。」との記載があり,被請求人の直営店舗である「エクストラコールドBAR」について具体的に認識しており,本件商標が被請求人の業務に係る商品又は役務の出所を表示する標識として十分に認識されていることが容易に理解できる。
このように,本件商標の登録査定日(2011年(平成23年)4月12日)より前から本件商標は,被請求人の業務に係る商品又は役務の出所を表示する標識として十分に認識されていたということは明らかであり,本件商標は十分に独占適応性が認められて然るべきであり,商標法の目的からしても業務上の信用が化体している本件商標は,保護されて然るべきである。
オ 請求人等の使用について
請求人は,「インターネットなどの情報通信分野の発展による情報伝達の高速化という我が国の社会的状況においては,たとえ,海外で体験したことを日本人がブログで紹介しているものであるとしても,我が国の取引者,需要者がこの情報に接することができる以上,たとえ,海外における情報であったとしても,考慮できないとする合理的な理由はないものである。」と述べている。
しかしながら,インターネット検索エンジンのGoogleで「EXTRA COLD ブログ」で検索すると,そのほとんどが被請求人の業務に関連して「EXTRA COLD」の文字が使用されていることが窺える(乙103)。この検索結果の一覧自体は,現時点におけるものではあるが,同様に証拠としてあげているブログ記事については,本件商標の登録査定日(2011年(平成23年)4月12日)より前に記載されたものが数多く存在し,また,被請求人が本件商標を登録査定日より前に広く使用してきたことは,各証拠から容易に理解できるものと考えるので,本件商標の登録査定日より前であっても我が国の取引者,需要者は,被請求人の業務に関連して「EXTRA COLD」の文字に接する機会が多かったことは容易に推測できるものである。なお,請求人が甲第94号証で挙げた「日本初上陸!Carlsberg EXTRA COLDはPLACE」だけ!!」のブログ記事は,2011年(平成23年)6月28日に掲載されたものであるので,当該事実が本件商標の識別力の判断に影響を与えるものではないと考える。
そうとすれば,我が国の取引者,需要者が請求人の示す海外における情報に接する機会はごく稀にしか存在しえず,「EXTRA COLD」の文字を被請求人の業務に係る出所標識として認識し把握するという機会が圧倒的に多いことがいえる。
請求人は,本件商標が役務の質を表示するものと認識され,少なくとも将来的に認識される可能性があることは明らかであると主張しているが,上記状況に鑑みれば,この主張は当を失するものであるといわざるを得ない。
3 上申書
(1)広義の識別力の解釈について
商標法第3条第1項第3号について,工業所有権法(産業財産権法)逐条解説では「これら本号列挙のものを不登録とするのは,これらは通常,商品又は役務を流通過程又は取引過程におく場合に必要な表示であるから何人も使用をする必要があり,かつ,何人もその使用を欲するものだから一私人に独占を認めるのは妥当ではなく,また,多くの場合にすでに一般的に使用がされあるいは将来必ず一般的に使用がされるものであるから,これらのものに自他商品又は自他役務の識別力を認めることはできないという理由による」と解説されている(乙114)。
請求人は,従前の裁判例等を取り上げ,「商標法第3条第1項第3号に掲げる商標を広義に解釈することは,判例・審決・学説ともに概ね一致した見解であり,商標法第3条第1項第3号に掲げる商標に該当するか否かを判断するにあたっては,将来を含め,取引者,需要者にその商品の原材料又は品質を表すものと認識される可能性があり,特定人に独占使用させることが公益上適当でないと判断されるものか否かが検討されるべきである。」と主張している。
ここで,「将来を含め,取引者,需要者にその商品の原材料又は品質を表すものと認識される可能性」について,請求人は「将来を含め」の部分を著しく拡大解釈しているが,被請求人は,将来一般的に使用される蓋然性が極めて高いと認めるに足る客観的,かつ,具体的な事実が伴わなければ,この判断は適用してはならないものと考える。
すなわち,程度を問わない将来的な使用の可能性をもって判断がなされるのは極めて不当であり,本件商標の識別力の有無については,登録査定時を基準として,本件商標に接する我が国の需要者,取引者がどのような認識を有するかによって判断されるべきである。
請求人が証拠として挙げている知財高裁平成21年(行ケ)第10351号,同22年5月19日判決(甲114)及び同24年(行ケ)第10197号,同年10月3日判決(甲115)では,当該商標が,その指定商品又は指定役務について,需要者又は取引者にどのように認識されるかの検討を,具体的な事実関係に基づいて一つ一つ認定・判断がなされており,「将来必ず一般的に使用される」ことを認めるに足る具体的な根拠が明確に示されたものである。
上記裁判例で具体的に判示されている内容を踏まえれば,本件商標とその指定役務である第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(第43類「ビールの提供」も含む)との関係においては,具体的な事実関係を著しく異にするものであるから,この裁判例で示された判断を踏襲する必要は全く無く,「将来を含め,取引者,需要者にその商品の原材料又は品質を表すものと認識される可能性」のみを本件に無理やり当てはめるのは妥当ではないと考える。
(2)本件商標の商標法第3条第1項第3号の該当性について
本件商標は,直ちに特定の意味合いを有する既成語として辞書等に掲載されている語ではなく,ビールに限らず,飲食料品を取り扱う分野において,「0℃以下」,「氷点下」のことを「EXTRA COLD」と称して一般的に使用されている事実はない。
そうとすれば,本件商標は,創作された一種の造語よりなる商標であるとみるのが相当であり,「何人も使用する必要がある」標章ではないことは明らかである。むしろ,本件商標は,役務が持つ特性を漠然としたイメージで伝えることにより,需要者,取引者にとって魅力的な要素を印象づけており,このように役務の質の良さや魅力を間接的に暗示又は連想できる商標は,特定の使用者による識別標識として,却って取引者・需要者に強い印象を与えるものといえる。
実際,我が国では,「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び「ビールの提供」の役務において,ビールは冷たい状態で提供されるのが常であるところ,「氷点下」,「0℃以下」で提供されるビールは,我が国の需要者,取引者にとって全く新しい商品・サービスに当たり,そのような事情があるからこそ新聞やテレビ等で盛んに紹介がされ,被請求人が提供する商品・サービスが爆発的な人気を得たものであることは想像に難くない。請求人自身の使用においても,「0℃以下,飲みやすいプレミアムテイスト Heineken Extra Cold」(甲16),「ブランドのプレミアム価格を訴求する為,通常価格帯生ビールメニュー価格より5-10%程度高いメニュー価格設定を行う」(甲22)とあり,プレミアムな価値を有するブランド名称として使用していることは明白であり,本件商標の自他役務識別力を否定する根拠とはなり得ない。
また,請求人は,海外での使用状況について述べているが,商取引の実情は各国ごとに異なり,商標登録の可否についても各国の法律や商標に係る文字等の状況等によって異なるといえるので,日本人が海外で上記の事実に接する機会があったとしても,そのことのみをもって,「将来必ず一般的に使用がされる」根拠とするのは妥当ではない。
実際,ヨーロッパ等では「エールビール」をあまり冷やさずに飲む習慣があり,例えば通常のギネスは,5?8℃で飲まれるのが一般的であるところ,それを少しだけ冷やした2,3℃で飲む商品を提供したことによって人気を得たものと考えられる。
一方,我が国では,通常冷やして飲む「ラガービール」が主流であるところ,ビールをマイナス2℃から0℃の氷点下で安定的に提供することが可能になったからこそ,「EXTRA COLD」が爆発的な人気を得たのであり,マイナス3,4℃で凍るビールを氷点下で安定的に提供することが技術的にどれほど難しいものであるかは,容易に理解できるところである(乙115)。事実,甲第97号証にも「摂氏2度に冷やされたバージョンです」との記載があるように,請求人の証拠をみる限り,海外において氷点下のビールが幅広く提供されている事実は全くみられない。
以上のとおり,我が国における本件商標の具体的な使用の事実によれば,これに接する需要者,取引者は,被請求人の役務の出所表示標識として認識すると認められて然るべきであり,本件商標の登録査定時において,本件商標が需要者,取引者に役務の質等を表示するものとして認識され得ると判断するのは著しく不合理であるといえる。
(3)請求人の専用冷蔵庫を用いたビールの販売について
請求人は,「台湾,南アフリカ,アメリカ合衆国,ブルガリア,スイスなどの海外においては,請求人の取引先の量販店やコンビニなどの,約25,000もの小売業者(甲31参照)によって,同様の専用冷蔵庫が設置された上で,瓶ビールの小売販売が行われている(甲113,甲125)と述べている。
しかしながら,甲第31号証及びその他の証拠資料をみても,「約25,000もの小売業者が瓶ビールの小売販売」を行っているという事実に対して疑問を呈せざるを得ない。つまり,甲第32号証及びその他の証拠資料をみる限り,肯定的に捉えたとしても飲食店内において瓶ビールを提供しているとみるのが相当であり,甲第113号証及び甲第125号証をみても,「EXTRA COLD」の文字を見て取れる場合があるとしても,いわゆる広告宣伝としての商標の使用であると捉えるのが相当であるように思料する。そうとすれば,請求人の上記主張が見受けられる限り,甲第31号証の数値が証拠として採用されるのは,疑問に思わざるを得ない。
ここで,被請求人白身も世界的なビール会社の一つに該当し,世界各国において事業を展開しているが,例えば,ロンドン,ニューヨークといった二大都市における状況を現地の駐在員に確認したところ,量販店やコンビニなどの小売業者が請求人の専用冷蔵庫を設置し,瓶ビールの小売販売を行っているという実情は確認することができなかった。また,アメリカの多くの州で一般店における機材等の買い取りが義務化されている関係のせいかもしれないが,ニューヨークの市場においては,ビールの提供に際し,「EXTRA COLD」の語が広く使用されているといった実情も見受けられないように思われる。
そもそも,請求人が用いる資料に該当する甲第12号証において,「エクストラコールド専用ボトルクーラーはハイネケンボトル専用です。他の商品の保管は,凍結,混濁,破びんの恐れがありますので,絶対におやめください。」と記載されており,甲第18号証では,「Heineken Extra Cold Bottleは専用のボトルクーラーを使い,商品温度が氷点下にならないように冷却されています。一般的な冷凍庫でのビールの冷却は,凍結・容器破損のおそれがありますので避けてください。」との記載がされている。甲第25号証によれば,2011年4月より日本の飲食店において展開が開始されたとあるので,これらの事実に鑑みれば,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」において,本件商標が「すでに一般的に使用がされ,あるいは,将来必ず一般的に使用がされる」ものであるとは到底考えられない。
さらに,請求人は「店舗内で冷蔵庫を用いて商品を販売する行為は,自動販売機による商品販売と近似する販売態様であり,自動販売機による商品販売は,消費税又は日本標準産業分類上,小売業に属するものである。」と述べ,証拠資料を提出している(甲126,甲128ないし甲130)。
商標法上の役務の判断について,消費税における業種区分及び日本標準産業分類に捉われる必要の無いことは改めて述べるまでもないが,そもそも甲第126号証における各商標の使用態様をみる限り,需要者,取引者は,一般的な商取引の実情に照らし合わせて,取扱商品に対する商標の使用であると認識,把握するとみるのが相当である。
すなわち,我が国において,飲料等を取り扱う小売業者は,通常,飲料を冷やした状態若しくは温かくした状態で提供するのが一般的であるところ,店舗内で冷蔵庫を用いて商品を販売する行為はどの小売業者でも行っていることであり,甲第126号証における商標の使用は,我が国の商取引の常識に照らし合わせれば,商品の販促として用いられていると認定されるのが相当である。
以上を総合して考えた場合,請求人が「将来的には,自動販売機による商品販売と同様に,小売業者が独自に専用冷蔵庫を設置し,その専用冷蔵庫に各社のビールの品揃え,陳列を行い,そこに通常の瓶ビールと異なる特別に冷たい温度の各社のビールの品揃え,陳列を行う可能性も十分予想されるところである。」と述べているが,これは全く具体的な根拠に欠ける単なる見解にすぎない。
(4)海外における商標の使用状況と我が国における判断について
請求人は,海外における商標の使用を強調し,「第35類『ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』の取引者,需要者が『EXTRA COLD』の語をどのように認識し理解するか判断するにあたって,日本の事情のみならず,海外の事情を考慮してはならないとする客観的な根拠もなければ,そのような合理的理由もない。」旨を述べているが,「海外における」商標の使用状況と「我が国における」当該商標の自他商品役務識別力又は周知著名性の判断が異なることは当然に起こりうることであって,以下の審決例及び判決例を取り上げることで,それを証する(乙116及び乙117)。
無効2008-890019号審決は,商標法第3条第1項第1号の該当性について争われたものであるが,商標法第3条第1項第3号の該当性においても,海外における商標の使用状況によって判断されるべきものではなく,あくまで我が国における商標の使用状況及び我が国における商取引の実情に照らして判断されるものであることに何ら変わりはない。
すなわち,諸外国で商標登録が認められている商標が我が国において自他商品役務識別力が無いと判断されることはあり,逆に,諸外国において自他商品役務識別力が無いと判断された商標であっても,我が国において商標登録が認められることは,当然にあり得ることである。
また,平成19年(行ケ)第10383号判決のとおり,海外及び海外に行く旅行者の間において,一定の知名度や相当程度の認識があると判断されたものであったとしても,それが我が国の需要者,取引者にそのまま当てはまらないことも当然のことといえる。
そうとすれば,むしろ,海外の事情を考慮しなければならないとする客観的な根拠や合理的理由の方がないといっても過言ではないと考える。
(5)結語
以上のとおり,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」との関係において,本件商標が「役務を取引過程に置く場合に必要な表示であるから何人も使用をする必要があり,将来必ず一般的に使用がされるものである」に該当しないことは明らかであり,請求人の主張は著しく妥当性を欠くものであると考える。

第4 当審の判断
請求人は,本件審判を請求することの利害関係について述べているが,この点については,当事者間に争いはなく,かつ,請求人適格を有するものと認められるので,本案に入って審理する。
1 「EXTRA COLD」について
本件商標は,「EXTRA COLD」の欧文字を表してなるものであるところ,その構成中,前半の「EXTRA」の欧文字は,株式会社研究社発行「リーダーズ英和辞典 第2版」(甲3)によれば,「特別の,極上の」等の意味を,また,株式会社大修館書店発行「ジーニアス英和辞典 第4版」によれば,「必要以上の,特別の」等の意味を有する,よく知られた語であり,後半の「COLD」の欧文字は,「リーダーズ英和辞典 第2版」によれば,「冷たい,冷やした,冷えた」等の意味を,また,「ジーニアス英和辞典 第4版」によれば,「冷たい,<物が>冷えた」等の意味を有する極めて親しまれた語といえるものである。
そうすると,本件商標は,「EXTRA」と「COLD」の2つの語の,それぞれの意味から,「特別に冷たい,必要以上に冷えた」程の意味合いを容易に理解,把握させるものである。
2 請求人の提出に係る甲各号証によれば,「EXTRA COLD」の文字又はその読みである「エクストラコールド」の文字について,以下の事実が認められる。
請求人は,現在,世界第3位のシェアを誇るオランダのビール醸造会社であって,日本における請求人の関連企業である「ハイネケンジャパン株式会社」(2010年に「ハイネケン・キリン株式会社」に商号変更。以下「ハイネケン・キリン」という場合がある。)は,2006年6月に,仙台市青葉区の店舗に「Heineken Extra Cold」を導入してビールの提供を開始したものであり,その後,全国200を超える店舗にて,同様の提供がなされている(甲33ないし甲35)。
ア インターネット公開資料
甲第11号証によれば,「Heineken served extra cold」,「0℃以下で味わうハイネケン」と記載され,サーバーとビールが注がれたジョッキが掲載されている。
イ 広告物
(ア)甲第12号証によれば,「Heineken SERVED EXTRA COLD」,「ハイネケンエクストラコールドとは」,「ハイネケン特有の華やかな香味とコクはそのままに,マイナス温度まで冷却することによって実現した,苦味が少なく飲みやすい,スムーズなプレミアムテイスト。ドラフトとボトルを合わせると世界112カ国,72,000店舗以上で導入されています。日本においては2008年5月にドラフトの展開を開始。2011年よりボトルでのご提供も開始しました。」と記載され,よく冷やされた状態を思わせる瓶ビールの写真が掲載されている。
(イ)甲第13号証によれば,「Heineken SERVED EXTRA COLD」,「0℃以下で味わうハイネケン」,「0℃以下で楽しむ,ハイネケンエクストラコールド。」と記載され,よく冷やされた状態を思わせる瓶ビール及びサーバーとビールが注がれたジョッキの写真が掲載されている。
(ウ)甲第14号証及び甲第17号証によれば,「0℃以下で味わう,ハイネケン。」,「Heineken Extra Coldが飲めるお店はこちら」と記載され,インターネットアドレス「www.extracold.jp」が記載されている。また,サーバーとビールが注がれたジョッキの写真が掲載されている。
(エ)甲第15号証及び甲第16号証によれば,「0℃以下,飲みやすいプレミアムテイスト」,Heineken SERVED EXTRA COLD」,Heineken Extra Cold」と記載され,サーバーとビールが注がれたジョッキの写真が掲載されている。
(オ)甲第18号証及び甲第19号証によれば,「Heineken SERVED EXTRA COLD」,「0℃で冷やした,ハイネケン。」,「Heineken Extra Cold Bottle」と記載され,よく冷やされた状態を思わせる瓶ビールの写真が掲載されている。
(カ)甲第20号証によれば,「ボトルで楽しむ,氷点下プレミアム。」,「0℃以下。麦芽100%のコクを,よりスムースに。」,「Heineken Extra Cold ハイネケンエクストラコールド」と記載され,よく冷やされた状態を思わせる瓶ビールの写真が掲載されている。
ウ 説明用資料
(ア)甲第22号証によれば,「Heineken SERVED EXTRA COLD」,「ハイネケン エクストラコールドとは 一般的な樽詰生ビールの温度(5℃?7℃)よりも低い温度でご提供するハイネケン樽詰生のことです。氷のついた専用ドラフトタワーからの抽出直後の温度は-2℃?0℃まで冷えています。ハイネケンでは通常のビールより最低5℃以上温度が低い状態でのご提供をしています。」と記載され,サーバーとビールが注がれたジョッキの写真が掲載されている。
(イ)甲第23号証によれば,「Heineken served extra cold」,「2008 Heineken Extra Cold Beer」,「Heineken Extra Cold Beerとは? 通常のビールの抽出温度(5℃?7℃)よりも低い温度で抽出,サーブするハイネケンビールのことで,専用ドラフトタワーからの抽出直後の温度は,0℃?-2℃」と記載され,サーバーとビールが注がれたジョッキの写真が掲載されている。そして,Page8には,「2008年展開」,「ロールアウトフェーズ【名古屋・関西・九州:2008年7月?】,【首都圏】:2008年10月?」と記載されている。
(ウ)甲第24号証によれば,「Heineken served extra cold」,「Heineken Extra Cold【ハイネケン エクストラコールド】」と記載され,サーバーとビールが注がれたジョッキの写真が掲載されている。そして,2葉目には,「ハイネケンエクストラコールドは,世界100カ国以上で楽しまれている,いつもとちょっと違う,カジュアルでスタイリッシュなビールの経験です。2008年5月に日本でも取扱い開始後,様々なメディアに取り上げられるなど,大きな注目を集めております。」と記載され,また,3葉目には,「Heineken Extra Cold とは? 一般的な樽詰生ビールの注がれる温度(5?7℃)よりも低い温度でサーブするハイネケン樽詰生ビールのことで,氷のついた専用ドラフトタワーからの注出直後の温度は0℃?-2℃!!」と記載されている。
(エ)甲第25号証によれば,「Heineken SERVED EXTRA COLD」,「エクストラコールドボトル ブランディングツール 2011年4月より展開開始」,「ボトルで楽しむ。氷点下プレミアム。」と記載され,よく冷やされた状態を思わせる瓶ビール,及び,導入店舗事例として,丸の内,渋谷,新宿,新橋等の店舗写真が掲載されている。そして,甲第33号証は,導入店舗一覧で,甲第34号証は,「Extra Coldスペシャルサイト」であり,各店舗の情報が記載されている。
(オ)甲第35号証は,「ハイネケンエクストラコールド展開飲料店」が記載された書面であり,例えば,「-2008年度-その1」の「キリンウォーターグリル(お台場)」には,「Heineken served extra cold」,「0℃以下で味わうハイネケン」との記載とサーバーとビールが注がれたジョッキの写真が掲載された看板が写されている。
エ 新聞記事
甲第37号証ないし甲第51号証によれば,2008年5月10日から2008年6月14日にかけて,中日新聞,産業経済新聞などに掲載されたものであり,例えば,「0度以下のビールどうぞ ハイネケン12日販売へ」(甲37),「ハイネケンジャパンは,0度以下に冷やした生ビールを東京・六本木ヒルズ内の飲食店『・・・』で売り出した。『ハイネケン エクストラ コールド』と呼ばれるビールで,氷で覆われたサーバーから注がれる。世界100カ国余りで飲まれているが,日本での発売は初めて。」(甲45)と記載されている。
オ 雑誌記事
甲第52号証ないし甲第55号証によれば,2008年5月16日から2008年6月17日にかけて,「日経MJ(東京)」などの雑誌に掲載されたものであり,例えば,「日経MJ(東京)」(日本経済新聞社 2008年5月16日発行)に「ハイネケン 氷点下でビール提供 店舗用サーバー発売」の見出しの下,「…飲食店には『ハイネケン エクストラ コールド』としてメニューに掲載してもらう。…」(甲52)と記載されている。
カ テレビ放映
甲第56号証ないし甲第58号証によれば,テレビ東京などの放映で,「-2℃?0℃でビールを提供」(甲56),「ハイネケン・エクストラ コールド」(甲57)等と表現されている。
キ インターネット情報等
(ア)甲第59号証は,2012年11月16日付けの「日経ビジネス ONLINE」の写しであり,「日経ビジネス 時事深層」の2010年3月15日付けのバックナンバーとして,「氷点下で飲むビール エクストラコールドビール(ハイネケン・キリン,アサヒビール」の見出しの下,「同じビールでも,そんなひと味違う体験をハイネケン・キリンとアサヒビールが,飲食店などを通じて提供し始めている。それが『エクストラコールドビール』。・・・エクストラコールドビールは格別に冷たいという名の通り,氷点下の温度帯で飲めるものだ。・・・先行したのはハイネケン・キリンで,国内開始は2008年5月。既に130店舗で提供する。一方,アサヒビールは2008年秋頃からエクストラコールドビールの開発を開始。2009年9月から試験的に一部店舗で提供し始め,2010年3月1日から本格的に取扱店舗の拡大に乗り出した。」と記載されている。
(イ)甲第61号証は,「カミクダキスト」のウェブサイト(写し)であり,2010年5月10日付けで,「エクストラコールドビール」の見出しの下,「氷点下で提供される『格別に冷たい』ビールのこと。ハイネケンのエクストラコールドビールは現在,112カ国で提供されている。日本ではハイネケン・キリンが2008年5月に先行して既に130店舗で提供中。その後,アサヒビールが2010年3月から取扱店舗拡大。」と記載されている。
(ウ)ギネス社の使用について,甲第66号証及び甲第69号証によれば,該社は,1756年創業のイギリスのビール醸造会社であり,世界1位の黒スタウトビールを生産,販売するところ,小樽入りで売られ,スーパークーラーを通じてサーブされる商品を「エクストラ・コールド・ドラフト」と称して展開し,1990年代前半,ギネス・エクストラ・コールド(Guinness Extra Cold)という,2,3度(通常のギネスより2,3度低い温度)で飲む商品を開発したものである。
(エ)カールスバーグ社の使用について,甲第89号証ないし甲第91号証によれば,該社は,現在世界第4位のデンマークのビール醸造会社であり,標準的なラガービールよりも数度冷やした状態で飲めるビールとして「Carlsberg Export Extra Cold」を販売しており,すごく冷えた状態,又は,特別に冷えたビールの提供に「Extra Cold」の文字を使用しているものである。
(オ)クアーズ社の使用について,甲第96号証ないし甲第98号証によれば,該社は,1873年にアメリカ・コロラド州で創立されたビール醸造会社であり,主力ブランドである「カーリング(Carling)」について,2002年から発売されている,摂氏2度に冷やされたバージョンに「Carling Extra Cold」の文字を表示しているものである。
3 被請求人の提出に係る乙各号証によれば,「EXTRA COLD」の文字又はその読みである「エクストラコールド」の文字について,以下の事実が認められる。
ア インターネット情報等
(ア)乙第6号証は,2011年3月7日付けの「ニュースリリース2011年」(写し)であり,「アサヒビール株式会社は,新しいビールの楽しみ方として,“氷点下のスーパードライ”をお飲みいただく『エクストラコールド』という飲み方をご提案しています。通常飲食店でお飲みいただいているビールの温度は4℃から8℃程度といわれていますが,-2℃?0℃の氷点下でお飲みいただく『スーパードライ』では・・・」と記載されている。
(イ)乙第7号証の2は,平成24年1月6日付けの日本経済新聞(写し)であり,「『氷点下ビール』アサヒ,年内に5000店で」の見出しの下,「アサヒビールは主力ビール『スーパードライ』をセ氏マイナス2度程度で提供する『エクストラコールド』を扱う飲食店を増やす。」の記載がある。
(ウ)乙第10号証の1によれば,「日経優秀製品・サービス賞2011」において,「生ビールを氷点下の温度帯で提供する外食店『エクストラコールドBAR』=アサヒグループホールディングス」,「通常は4?6度で提供する『スーパードライ』を氷点下の温度帯(0?マイナス2度)まで冷やすことで,泡がきめ細かになり,味のキレを増した。2010年5月に東京・銀座に1号店を期間限定で開業し,11年は名古屋,大阪,福岡でも展開。一般の外食店にも専用サーバーの導入を進めている。」と記載されている。
イ テレビ放映
乙第8号証によれば,2010年5月?同年9月に,例えば,TBSで,「アサヒスーパードライエクストラコールドBAR」,「マイナス2度まで冷やした氷点下ビール」,6/5(土)BS日本テレビで,「飲み方の新提案」,「マイナス2℃で勝負!」,「アサヒスーパードライエクストラコールドBAR」等と表現されている。
4 上記2及び3によれば,1990年代前半,イギリスのギネス社が「ギネス・エクストラ コールド」,「Guinness Extra Cold」という2,3度(通常のギネスより2,3度低い温度)で飲む商品を開発し,販売しているものであり,デンマークのカールスバーグ社は,標準的なラガービールよりも数度冷やした状態で飲めるビールの提供について,及び,アメリカのクアーズ社は,摂氏2度に冷やされた状態のビールの提供について,いずれも「Extra Cold」の文字を使用しているものである。
そして,我が国においては,現在,ハイネケン・キリンと被請求人が,飲食店などを通じて「エクストラコールドビール」という,格別に冷たい,氷点下の温度帯で飲めるビールの提供をおこなっているものであり,ハイネケン・キリンの国内開始は,2008年5月であって,その後,アサヒビールが開発を開始し,2010年5月に提供を始めたものと認められる(甲59及び61,乙10の1)。
また,ハイネケン・キリンは,「0℃以下」(甲11ないし20),「注出直後の温度は,0℃?-2℃」(甲22ないし24),「氷点下」(甲25及び新聞情報等)のように,また,被請求人も「2℃?0℃の氷点下」(乙6),「氷点下」(乙7の2),「氷点下の温度帯(0?マイナス2度)まで冷やす」(乙10の1)のように,いずれも,飲食店において通常提供されるビールよりも,格別に冷やして提供するビールを表すものとして,「EXTRA COLD(エクストラコールド)」の文字を使用している事実がある。
そうとすれば,我が国の飲食店における「ビールの提供」の場において「EXTRA COLD(エクストラコールド)」の文字に接する需要者は,提供されるビール(ジョッキ又は瓶)が格別に(特別に)冷やしたものであることを表したものと,容易に認識するものということができる。
5 商標法第3条第1項第3号該当性について
商標法第3条第1項第3号にいう品質表示等について,「商標法3条1項3号は,取引者,需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき,それ故に登録を受けることができないとしたものであって,該表示態様が,商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか,現実に使用されている等の事実は,同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである。」(平成12年(行ケ)第76号)と判示されている。
本件商標は,上記第1のとおり,「EXTRA COLD」の欧文字を表してなるところ,その構成文字である「EXTRA」と「COLD」の2つの語の,それぞれの意味から,「特別に冷たい,必要以上に冷えた」程の意味合いを容易に理解,把握させるものである。
そして,前記4に記載のとおり,我が国の飲食店の店舗において,通常提供されるビールとは別に,「0℃以下」や「2℃?0℃の氷点下」まで格別(特別)に冷やしたビールを提供することを表すものとして,「EXTRA COLD」,「extra cold」及び「エクストラコールド」の文字が,使用されている事実があることからすれば,「EXTRA COLD」の欧文字からなる本件商標を,その指定役務中,第43類「ビールの提供」に使用したときは,該「ビール」が「(2℃?0℃の氷点下まで冷やした)特別に冷たい,格別に冷やした」状態であることを認識させるにすぎず,その役務の提供の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められる。
次に,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について検討するに,該役務は,小売店舗等において商品「ビール」を販売する際に顧客に対して行われる便益の提供であり,我が国のビールの小売等においては,瓶ビール又は缶ビールを,適度な温度に冷やして販売される実情がある。
そして,その役務の需要者は,ビールを飲む一般の者であること,提供の手段は,冷やして販売される実情があること,役務の提供の用に供する物品は,「ビール」であることからすれば,その需要者,提供の手段及び提供の用に供する物は,「ビールの提供」の役務と共通にするものである。
そうとすれば,「EXTRA COLD」の欧文字からなる本件商標を,「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について使用するときは,その需要者に,「特別に冷たい,格別に冷やした」商品に関する役務であることを認識され得るものということができる。
したがって,「EXTRA COLD」の文字が,「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について,役務の質を表すものとして現実には使用されていないとしても,同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである旨の上記判決の趣旨からすれば,「EXTRA COLD」の欧文字からなる本件商標は,「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」との関係において,その役務の提供の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められる。
以上のとおり,本件商標は,その指定商品及び指定役務中,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」について,商標法第3条第1項第3号に該当する。
6 被請求人の主張について
(1)被請求人は,「本件商標『EXTRA COLD』に接する需要者,取引者は『特別に冷たい』という極めて漠然とした広範な意味合いを看取し得るに過ぎず,本件の指定役務との関係において,役務が有する一定の質を直接的かつ具体的に認識・把握することは困難である。そうとすれば,本件商標は,・・・その構成全体として,特定の役務の質等を表示するものではなく,暗示的に表現したものと理解されることがあるというに止まる一種の造語である」旨主張する。
しかしながら,本件商標の構成文字である「EXTRA」及び「COLD」の各文字は,それぞれ我が国において親しまれた英語であって,これらよりは,「特別に冷たい,格別に冷やした」程の意味合いを容易に理解,認識させるものであり,我が国においては,現在,ハイネケン・キリンと被請求人の双方が,「0℃以下」,「氷点下」,「2℃?0℃の氷点下」に冷やしたビールについて,「EXTRA COLD(エクストラコールド)」と表示して,ビールの提供を行っている事実がある。
かかる事実からすれば,たとえ,「0℃以下」,「2℃?0℃の氷点下」等のように具体的ではないとしても,「EXTRA COLD(エクストラコールド)」の文字に接する需要者は,提供に係るビールが,通常提供されるものより「特別に冷たい,格別に冷やした」状態であること,すなわち,役務の一定の質を表すものと理解,認識するということができる。
(2)「EXTRA COLD」の使用例について,「証拠資料(乙第6号証ないし乙第99号証)に鑑みれば,『EXTRA COLD』の文字が,被請求人の業務に係る商品又は役務の出所を表示する標識として,需要者・取引者の間で広く認識されており,著名な商標であることが容易に理解し得る。日本において『EXTRA COLD』が広まったのは,被請求人の貢献によるところが極めて大きい。」旨主張する。
甲第59号証によれば,「・・・先行したのはハイネケン・キリンで,国内開始は2008年5月。既に130店舗で提供する。一方,アサヒビールは・・・2009年9月から試験的に一部店舗で提供し始め,・・・」の記載よりすると,我が国おいては,「ハイネケン・キリン」が被請求人より先行して「エクストラコールドビール」の語を使用していたと認められるものである。
また,被請求人による「EXTRA COLD(エクストラコールド)」の文字を使用してビールの提供を行う飲食店が相当程度展開されているとしても,他方で,ハイネケン・キリンによる同様のビールの提供が行われているものであり,かかる事実からすれば,被請求人のみの使用をもって,我が国において,該文字が,広く知られるに至ったものということができない。
(3)「請求人が提出している証拠資料は,そのほとんどが海外で体験したことを日本人がブログで紹介しているものであり,そもそも日本において『EXTRA COLD』の語が各ビールメーカーによって広く使用されていることを示すものではない。」旨主張する。
確かに,証拠資料の多くが海外で体験した日本人によるものであるとしても,前記2キ(ウ)ないし(オ)のように,イギリス等のヨーロッパ及びアメリカ合衆国においては,本件商標の登録出願前には既に,「Extra Cold」の文字が,「格別に冷たい,特別に冷えた」程の意味合いをもって,いずれもよく知られたビール醸造会社による「ビールの提供」に使用されていたものである。
そして,前述のとおり,日本国内においても,飲食店等において通常提供されるビールより,さらに冷やした状態で提供されるビールについて「Extra Cold(EXTRA COLD)」の文字が使用されているものであるから,海外で体験した者又は該情報に接する者が,我が国において「Extra Cold(EXTRA COLD)」の文字に接した場合,提供に係るビールが「格別に冷たい,特別に冷えた」状態であることを表すものと理解,認識するということができる。
したがって,被請求人の上記主張は,いずれも採用することができない。
7 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,その指定商品及び指定役務中,第35類「ビールの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「ビールの提供」について商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるから,同法第46号第1項の規定により,無効とすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2013-08-20 
結審通知日 2013-08-22 
審決日 2013-09-05 
出願番号 商願2010-71251(T2010-71251) 
審決分類 T 1 12・ 13- Z (X3543)
最終処分 成立 
前審関与審査官 泉田 智宏 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 田中 亨子
原田 信彦
登録日 2011-06-10 
登録番号 商標登録第5416687号(T5416687) 
商標の称呼 エクストラコールド、エキストラコールド 
代理人 飯島 紳行 
代理人 笠松 直紀 
代理人 藤森 裕司 
代理人 山田 清治 
代理人 萼 経夫 
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