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審決分類 審判 全部無効 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 無効としない X25
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない X25
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない X25
管理番号 1281376 
審判番号 無効2012-890063 
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-07-31 
確定日 2013-10-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第5170958号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5170958号商標(以下「本件商標」という。)は、「RAGGAZZA」の欧文字を標準文字で表してなり、平成20年3月3日に登録出願、第25類「被服,履物」を指定商品として、同年8月19日に登録査定、同年10月3日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録は無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第23号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 請求の理由
(1)商標法3条1項6号について
本件商標は、一見してイタリア語の「RAGAZZA」を直感させる。
「RAGAZZA」は、「伊和中辞典」や「イタリア語常用6000語」に見られるように、「少女、(未婚の)若い女性、女の子、・・・」を意味するイタリア語である(甲1、甲2)。この語は、甲1では、語の頭部に「*」が付いており、基本重要語約2400語に含まれるごく基本的な単語である。また、甲2においても、男性名詞の「RAGAZZO」(少年)とともに基本語に属する単語である。
ちなみに、文部科学省の「学年別漢字配当表」(甲3)では、日本語の「少女」を構成する「少」や「女」の漢字は、小学校1年あるいは2年で習得する漢字であり、「少女」の語も小学校低学年以下で使用される極めて日常的な語である。意味内容を同じくする「RAGAZZA」の語も、イタリアにおいては、同様に低年齢で習得され日常生活で普通に使用される語である。
一方、本件商標の指定商品の業界では、イタリアは、フランス以上に流行の由緒ある発信地としてつとに有名である。イタリア語のブランド名の指定商品も数多く存在する(例えば、ダッチ、フェンデイ、ヴェルサーチなど)。本指定商品の業界では、イタリア語は商品の特性や属性あるいは特徴を示すものとして頻繁に使用される。
「新ファッション用語集」(甲4)には、ファッション業界で用いられる基本的な用語が、日本語と中国語と英語とフランス語とイタリア語の5ヶ国語に分けて示されており、「RAGAZZA」の語は、この基本的な用語集に掲載されている。
しかも、これには、「abbigliamento per ragazza」(女の子の服)という語もあり、「RAGAZZA」の語がファッション用品の特性や属性あるいは特徴を示すものとして、一般的に使用されていることがわかる。
このように日常的に使用される基本語であり、容易に語義どおりの「少女、若い女性・・・」を意味するものとして認識され、しかもファッション業界でも上記語義の商品特性あるいは属性などを示す語として使用されるイタリア語「RAGAZZA」と本件商標「RAGGAZZA」とは、「G」がダブって記載されている点において異なっているだけで、見た目には、本件商標「RAGGAZZA」は、イタリア語「RAGAZZA」と極めて近似している。
また、称呼上の点からすれば、正式には、両者は、全く同一に「ラガッツァ」と発音される。参考までに言えば、「ラガッザ」は、イタリア語の「RAGAZZA」においても同様な称呼を生じるし、「ツァ」と「ザ」の音の違いは、聞く者にとって明瞭には判別できない。また、「グ」と「ガ」の音が続いた場合、リエゾンのように「グ」の音が「ガ」の音に吸収される。このため、商取引形態の大半を占める口頭での取引において、本件商標は、称呼上、イタリア語「RAGAZZA」と同じかそれに極めて近い音で発音され、「RAGAZZA」を意味するものとして認識されることになる。
なお、被請求人は、本件商標の使用に際し、本件商標「RAGGAZZA」ではなく、イタリア語の「RAGAZZA」を使用している(甲8:被請求人の販売に係るサンダルの写真。)。
してみれば、本件商標は、イタリア語の「RAGAZZA」を直感させ、「RAGAZZA」として認識される商標である。
書籍の「商標(第4版)」(株式会社有斐閣発行、以下同じ。)によれば、「商標法第3条第1項第6号により拒絶される商標は、・・・、公益上特定人に独占させることが不適当と認められるような商標で3号から5号には該当しないが各号の趣旨からして拒絶するのが適当と解されるもの等が含まれる」(甲5の4)としている。
本件商標は、イタリア語の「RAGAZZA」として認識される商標であって、「RAGAZZA」の語が上記した語義を有し、その語義に基づいて若い女性や少女向けの商品を表すものとしてファッション業界で現実に使用されている以上、こうした商標は、まさに公益上特定人に独占使用を許すべき商標ではなく、商標法3条1項6号の法意に照らして自他商品識別力を持たない商標として、その登録を無効にすべきである。
(2)商標法4条1項16号について
本件商標の指定商品は、性、年齢、用途などに制限されることなく全ての商品を含んでいる。「RAGAZZA」が「少女」や「若い女性」向けの商品を表示するものであることから、「RAGAZZA」として認識される本件商標を「少年」や「青年男子」、「老人」あるいは「婦人であっても年配者」向けの被服や履物に使用するときは、特性としての商品の品質誤認を生じさせるおそれがある。
前掲書籍「商標(第4版)」には、「外国語として商品の特性を表示するような意味を有する語」の商標登録のあり方について国際的商取引保護の見地から極めて示唆に富む見解が示されている(甲5の2)。
すなわち、「外国語が、商品について、その特性をあらわし、・・・といえるかどうかも、結局、その語が我が国における当該商品の取引者・一般需要者によりそのようなものとして認識されるかどうかを基準にして判断されるべきものであって、外国語の意味自体のみによって決定すべきものではない」としつつ、「多くの外国商品が、国内の市場に流通している現在の我が国の取引の実情をも勘案すれば、外国語で特定の商品の特性を記述するような語は、わが国の取引界では一般にそのように理解されないものでも、・・・今後は漸次その登録を認めないような方向で運用するのが望ましい」と結論づけている(甲5の3)。
「RAGAZZA」の語が「少女」や「若い女性」を意味する極く基本的なイタリア語であるばかりでなく、そうした特定の年齢層の女性向けの商品特性を示すファッション用語でもあることは、上記で述べたとおりである。仮に、「RAGAZZA」の語が我が国の取引界でそうした特性を記述するものとして理解されていない場合であったとしても、外国語で特定の商品の特性を記述するような語は、甲5の3に示された考え方に基づいて商品の特性を表示するものと判断するのが、国際的な商品取引秩序の維持を図ることができるものである。
いずれにしろ、本件商標が特定の商品特性を認識させるものである以上、その範囲を外れた商品についての本件商標の使用は、品質誤認を生じさせるおそれがある商標であって、その登録を無効とすべきである。
(3)商標法4条1項7号について
前掲書籍「商標(第4版)」によれば、「一般に国際信義に反する商標は、本号の規定に該当するものとする」(甲6の2)とある。
本件商標は、「G」を重ねて記した「RAGGAZZA」であるが、イタリア語の「RAGAZZA」と外観が極めて近似するだけでなく、「RAGAZZA」と同じ「ラガッツァ」あるいはほとんどそれと同一といい得る称呼を生じ、またごく基本的なイタリア語であるとともに商品特性を示すものとして実際に使用されている「RAGAZZA」と直結し、それ以外に認識されようのない商標である。
現在のような国際間の商品・情報の流通の頻繁な時代において、その分野で歴史と蓄積のある他国の言葉について、その言葉と牽連性の強い商品分野の商標として、一個人あるいは一法人に独占的な使用を認めることは、国際的な信義に反し、極めて好ましくないことである。
請求人は、若い女性用のサンダルに商品の特性を示す名称として「RAGAZZA」の表示を付して販売している。これに対し、被請求人は、平成24年6月4日に請求人関連会社に本件商標権に基づく使用差止を求めてきた(甲9)。請求人による名称「RAGAZZA」の使用は、商標法26条1項2号に規定する「効力の及ばない範囲」に該当するものであるが、こうした被請求人の行為は、いたずらに商品流通秩序を乱す行為以外の何ものでもない。先に述べたように、被請求人が本件商標「RAGGAZZA」でなく、「RAGAZZA」のみを使用している現状においてはなおさらである。本件商標権の存在を放置することは、イタリアから「若い女性用の各種ファッション用品」が輸入されてきた場合に、いたずらに争いを生じさせる種を残すことになり、国際信義に反するものである。
したがって、本件商標は、商標法4条1項7号の規定に違反するものとして無効にすべきものである。
2 弁駁の理由
(1)平成24年10月1日付け答弁書に対する反論に先立ち、請求人は、本件商標がそもそも商標法第3条第1項柱書きに規定する「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に該当するものでないことを明らかにする。
ところで、被請求人は、本件商標の指定商品である靴やサンダルについて、当初から本件商標「RAGGAZZA」ではなく「RAGAZZA」という商標を使用し続けている(甲8、甲10の1ないし3、甲11及び甲12)。
さらに、実際の取引の現場(市場)において、被請求人は請求人が商品サンダルに使用する商標「RAGAZZA」に対し、請求人関連会社宛に本件商標権に基づく使用差止請求の通知を行ってきている(甲9)。
被請求人は、そのものでは登録を受け得ない「RAGAZZA」を使用することを前提に、これと極めて近似したもともと使用する意思のない商標「RAGGAZZA」について登録を受け、現実に商標「RAGAZZA」のみを使用し、他人のその使用を排除することにより、市場での独占的使用を図ろうとしたものと考えられる。いわば、商標権の詐取ともいえる登録行為であるといえる。
被請求人は、そのHP上で、「RAGAZZA」を使用していた(甲11)が、遅くとも本年9月末ころまでにHPの内容を変更し、HP上での「RAGAZZA」の使用を一切止めている。自己のブランドを紹介する重要な場であるHP上で「RAGAZZA」の使用を止めたということは、被請求人自身が本件商標「RAGGAZZA」の取得に問題がある(「RAGAZZA」を不正に排他的に使用する意図のみをもって本件商標を取得したこと)と考えていたからである、と推察できる。
したがって、本件商標は、商標法3条1項柱書きの規定の見地からもこれに基づいて登録を無効とすべきものである。
(2)答弁に対する反論
ア 商標法3条1項6号違反について
ファッションの発信地がパリ、ミラノ、ニューヨーク、東京であると言われていることからもわかるように、ファッション業界ではイタリア語は基本的な言語である。イタリア語が商品の特性や属性あるいは特徴を示すものとして頻繁に使用されていることは、インターネットでイタリアファッションの販売店を検索すれば、明らかなことである。ファッション業界の取引者において、イタリア語は、例えばロシア語やスペイン語やスウェーデン語などとは異なり、一般的な言語なのである。
甲1及び甲2は、単にイタリア語の辞書を提示したのではない。「RAGAZZA」の語がごく基本的な日常用語であることを示したものである。この点は、甲4も同様であり、「RAGAZZA」がファッション業界において商品の特性や用途を示す言葉として現実に使用されるものであることを示している。
この10年のインターネットの飛躍的な普及に伴い、商品や役務の流通網はまさに網の目のごとく世界各国に広げられ、個人レベルでの国際的な取引も急増している。市場のグローバル化が現実となった現代において、甲5の3で指摘する「現在のわが国の取引の実情」もこうした見地に基づくものでなければならない。法目的を達成するための商品流通秩序の維持も国際的なレベルでの秩序維持を目指すものでなければならない。
商品の特性を記述するような外国語は、商品の取引業界と当該外国語との関係が国内において一般的に認識され、かつ、当該外国語が商品の特性を示すものとして取引で実際に使用されているような場合、輸出入業者を含む取引者層の自由な使用を保障する必要があると考える。イタリア語とファッション業界との関連性は、甲21の雑誌を挙げるまでもなくわが国において一般的に認識されている。また、「RAGAZZA」の語は、日常生活で使用されるごく基本的なイタリア語であり、ファッション業界で現実に使用されている単語である。
本件商標は、「RAGAZZA」そのものではないが、「RAGAZZA」と外観上近似し、同一称呼の商標であり、本件指定商品の取引者に「RAGAZZA」を直感させる商標である。したがって、本件商標を存続させることは、商品の取引者が商品の特性等を示す表示を自由に使用できなくなるおそれがあり、取引秩序をいたずらに混乱させる要因となるものである。
被請求人は、日本国内で一般的でないとの主張を繰り返すが、これは指定商品の取引の実情をなんら考慮しないものである。このことは、乙2及び乙3に示す商標が約20年から25年前に登録された商標であり、商品の取引の実情がまったく異なる時代の商標であり、現在の国際的な商品流通秩序を反映したものではない。外国語の浸透度、認識度は、時代によって大きく異なる。
自他商品識別力を有するかどうかは、そのときどきの取引の実態に即して判断されるべきものであり、これに照らし、本件商標は登録査定時において同法3条1項6号に該当する商標である。
イ 商標法4条1項16号違反について
被請求人が反論の根拠とする乙2と乙3は、先にも述べたように20年あるいはそれ以上前の登録例であり、各語の意味は当該時代におけるそれこそ一般的な概念として認識されていない時代のものであり、論拠になり得ない。
乙4と乙5は、いずれも「girl」の文字単独の商標ではない。乙4は「Happie」の語との結合商標であり、乙5はリボンの図柄と「tommy」の語の結合商標である。こうした語は必ずしも「girl」のみから成る概念によって制約を受けるとは限らない。
対するに本件商標は、「少女」や「娘」を意味するイタリア語そのものを認識させる単?語であり、その概念からの制約を受けざるを得ないものである。したがって、被請求人の主張は論拠に乏しいものである。
ウ 商標法4条1項7号違反について
被請求人は、商標の事実上の使用と、独占的使用のための登録とを混同している。
事実上の使用では、自他商品識別力を有するかどうかを法的要件(3条)に基づいて判断した上で使用しているわけではないし、またその必要もない。登録による独占使用の場合には、法的な見地から独占権付与に値するかどうかが客観的に判断される。本来、取引者層の自由な使用が保障されるべき商標が、商標権によって一私人に独占されることで取引が混乱し、国際信義違反の問題を生じるからである。
請求人が事実上の使用をしていても、他の取引者が同じ商標を同様に事実上使用することに支障を生じるわけではないし、争いを生じさせる要因となるものでもない。被請求人の主張は、的外れな主張である。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 商標法3条1項6号及び同4条1項16号について
(1)本件商標「RAGGAZZA」は、イタリア語の「RAGAZZA」を直感させるものではない。
イタリア語の「RAGAZZA」自体が、日本においてイタリア語として十分に認識されているとはいえない。「RAGAZZA」を見た時に、日本人であれば欧文字で表記されていることから外国語であると認識することは可能であるかもしれない。しかしながら、何語であるかを認識できるほど「RAGAZZA」が日本において用いられていないことから、「RAGAZZA」がイタリア語として認識することが一般的であるとは言えない。そもそも、日本においてイタリア語が一般的に用いられている外国語であるとはいえない。
このように、日本において「RAGAZZA」がイタリア語であると認識されるものではないとすると、本件商標「RAGGAZZA」が、イタリア語の「RAGAZZA」の「G」を重ねて表記したものであると理解することが不可能である。
よって、「本件商標『RAGGAZZA』は、一見してイタリア語の『RAGAZZA』を直感させる。」との請求人の主張は、成立しない。
(2)請求人は、「イタリア語の『RAGAZZA』は、『伊和中辞典』や『イタリア語常用6000語』に見られるように、『少女、(未婚の)若い女性、女の子、・・・』を意味する語」であり、「本指定商品の業界では、イタリア語は、商品の特性や属性あるいは特徴を示すものとして頻繁に使用される。」ことから、「こうした商標は、まさに公益上特定人に独占使用を許すべき商標ではなく、商標法3条1項6号の法意に照らして自他商品識別力を持たない商標として、その登録を無効にすべきである。」と主張している。
「RAGAZZA」がイタリア語であるとすれば、イタリア語の辞書にその意味が記載されているのは当然であり、「RAGAZZA」が「少女、(未婚の)若い女性、女の子、・・・」を意味するイタリア語であったとしても、「RAGAZZA」が日本においてイタリア語として認識されなければ、その意味を理解することはない。
また、請求人は、「『5ヶ国語 新ファッション用語集』には、ファッション業界で用いられる基本的な用語が、日本語と中国語と英語とフランス語とイタリア語の5ヶ国語に分けて示されている(甲4の2)。『RAGAZZA』の語は基本的なファッション用語集に掲載されている(甲4の3)。しかも、甲4の4には、『abbigliamento per ragazza』(女の子の服)という語もあり、『RAGAZZA』の語がファッション用品の特性や属性あるいは特徴を示すものとして一般的に使用されていることが分かる。」と主張している。
しかしながら、当該用語集に記載されている全ての語が、ファッション用品の特性や属性あるいは特徴を示すものとして、一般的に使用されているわけではない。
つまり、当該用語集に記載されている外国語が、各国において一般的に使用されていたとしても、日本において一般的に使用されていることを証明するものではない。
そして、「本指定商品の業界では、イタリア語は商品の特性や属性あるいは特徴を示すものとして頻繁に使用される。」との請求人の主張についても、当該用語集は、根拠とはなり得ないものであり、また、実際に使用されている実例も示されていないことから成立しない。
よって、「本指定商品の業界では、イタリア語は商品の特性や属性あるいは特徴を示すものとして頻繁に使用される。」ことから、「こうした商標は、まさに公益上特定人に独占使用を許すべき商標ではなく、商標法第3条第1項第6号の法意に照らして自他商品識別力を持たない商標として、その登録を無効にすべきである。」との請求人の主張も成立しない。
(3)請求人は、「本件商標は、性、年齢、用途などに制限されることなく全ての商品を含んでいる。『RAGAZZA』が『少女』や『若い女性』向けの商品を表示するものであることから、『RAGAZZA』として認識される本件商標を、『少年』や『成年男子』、『老人』あるいは『婦人であっても年配者』向けの被服や履物に使用する時は、特性としての商品の品質誤認を生じさせるおそれがある。」と主張している。
しかしながら、日本においてイタリア語の「RAGAZZA」よりも「少女」を意味する外国語として認識されている英語の「girl」を含む登録商標は、多数存在し、その中には、指定商品として、被服等が含まれている商標が登録されている。
例えば、乙4の公報に記載されている商標「HAPPY GIRL」は、指定商品又は役務には「洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着」が含まれており、請求人の主張に沿って判断すると、商標「HAPPY GIRL」を「少年」や「成年男子」、「老人」あるいは「婦人であっても年配者」向けの洋服、下着等に使用する時は、特性としての商品の品質誤認を生じさせるおそれがあることになる。
また、乙5の公報に記載されている商標「tommy girl」は、指定商品に「男性用被服」が含まれており、請求人の主張に沿って判断すると、このような指定商品は、特性としての商品の品質誤認を生じさせるおそれがあることになり、登録されるべきではない商標となる。これらの商標以外にも、多数の「girl」を含む商標の指定商品として被服等を含みながらも、「少女」や「若い女性」の被服に限定していないものが存在している。
さらに、乙2の公報に記載されている登録商標「Fille」は、「女の子」を意味するフランス語であるが、その指定商品又は役務には、「被服、バンド、ベルト、履物」が含まれており、特に性別を限定していない。
そして、乙3の公報に記載されている商標の「UOMO」は、その指定商品又は役務にファッション雑貨である「バンド」、「ベルト」が含まれているが、特に性別を限定していない。
このように、商標として「性」、「年齢」を意味する外国語が用いられていたとしても、その指定商品又は役務において「性」、「年齢」を限定していない登録商標は、多数存在することから、商標出願の審査過程において、「性」、「年齢」を意味する外国語を含む商標が、指定商品又は役務において必ずしも「性」、「年齢」を明確にする必要はないと判断されていることを示しており、請求人の「本件商標は、性、年齢、用途などに制限されることなく全ての商品を含んでいる。『RAGAZZA』が『少女』や『若い女性』向けの商品を表示するものであることから、『RAGAZZA』として認識される本件商標を、『少年』や『成年男子』、『老人』あるいは『婦人であっても年配者』向けの被服や履物に使用する時は、特性としての商品の品質誤認を生じさせるおそれがある。」との主張は、成立しない。
(4)請求人は、「本件商標『RAGGAZZA』は、一見してイタリア語の『RAGAZZA』を直感させる。」、そして、「イタリア語の『RAGAZZA』は、『伊和中辞典』や『イタリア語常用6000語』に見られるように、『少女、(未婚の)若い女性、女の子、・・・』を意味する語である。」、また、「本指定商品の業界では、イタリア語は、商品の特性や属性あるいは特徴を示すものとして頻繁に使用される。」ことから、「こうした商標は、まさに公益上特定人に独占使用を許すべき商標ではなく、商標法3条1項6号の法意に照らして自他商品識別力を持たない商標として、その登録を無効にすべきである。」と主張しているが、請求人は、本件商標から直感させる主張されるイタリア語の「RAGAZZA」を、既に商品名として使用している。
乙6には、請求人が「Ragazza」の表示を靴底表面に付して販売された女性向けラバーシューズを株式会社ビーンズが「アミアミ」という名称のインターネット上の通販サイトにおいて販売していたことが記載されている。
もし、イタリア語の「RAGAZZA」が、自他商品識別力を有しないのであれば、請求人は、商品名に採用することはないことから、このような事実は、請求人自身が、イタリア語の「RAGAZZA」が、自他商品識別力を持つとものであると判断していることを示している。
2 商標法4条1項7号について
請求人が、「本件商標権の存在を放置することは、イタリアから『若い女性用の各種ファッション用品』が輸入されてきた場合に、いたずらに争いを生じさせる種を残すことになり、国際信義に反するものである。」と判断しているのであれば、このような争いを生じさせるおそれのあるイタリア語の「RAGAZZA」を商品名に使用することはない。
このように、請求人自身が、イタリア語の「RAGAZZA」を商品名に使用していた事実から判断すると、請求人は、イタリア語の「RAGAZZA」が、自他商品識別力を持つものであり、イタリアから「若い女性用の各種ファッション用品」が輸入されてきた場合に、いたずらに争いを生じさせるものではないと判断されていることを証明しているものである。
3 結び
以上のとおり、本件商標は、商標法3条1項6号、同4条1項16号及び同7号に該当するものではない。

第4 当審の判断
1 商標法3条1項6号及び同4条1項16号該当性について
本件商標は、上記第1のとおり、「RAGGAZZA」の欧文字よりなるものであるところ、該文字は、英語その他の外国語にもなく、何ら特定の意味合いを有しない造語というべきものである。
そして、該文字が本願の指定商品である「被服,履物」について、その商品の品質等を表す表示として使用されている事実、あるいは、該文字が自他商品の識別標識として機能しないとするような事実は、請求人の提出した全証拠からは見いだすことができないものである。
そうすると、本件商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識し得ないとすべき何らかの理由を見いだすこともできないから、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものというべきである。
したがって、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標ということはできず、商標法3条1項6号に該当しない。
なお、請求人は、「本件商標がイタリア語の『少女、(未婚の)若い女性、女の子』等を意味する『RAGAZZA』の第3文字『G』がダブって記載されている点において異なっているだけで、見た目には極めて近似して、称呼上では、全く同一に『ラガッツァ』と発音されることから、本件商標は、イタリア語の『RAGAZZA』として認識される商標であって、その語義に基づいて若い女性や少女向けの商品を表すものとしてファッション業界で現実に使用されている以上、こうした商標は、まさに公益上特定人に独占使用を許すべき商標ではなく、商標法3条1項6号の法意に照らして自他商品識別力を持たない商標として、その登録を無効にすべきである。」旨述べている。
しかしながら、本件商標は、その綴りからすれば、イタリア語の「RAGAZZA」の文字とは相違するものであって、特定の意味を有しない造語であって、品質等を表示する語でない以上、公益上特定人に独占使用を許すべき商標ではないということにはならないものである。外国語でのつづりであっても、つづりが異なる文字は、異なるワードとして一般に把握・認識されるものであり、発音が同一になることが、これを否定する理由にはなり得ない。
また、本件商標は、上記認定のとおり、商品の品質等を表すものでないから、その指定商品中のいかなる商品に使用しても、商品の品質について誤認を生ずるおそれはないものである。
してみれば、本件商標は、商標法4条1項16号に該当しない。
2 商標法4条1項7号該当性について
商標法4条1項7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(a)商標の構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(b)商標の構成自体が前記のものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する場合、(c)他の法律によって、その使用等が禁止されている場合、(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(e)当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり、その登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するとして到底容認し得ないような場合、などが含まれると解される。
本件商標は、上記したとおり、その綴りからすれば、イタリア語の「RAGAZZA」の文字とは相違するものであって、特定の意味を有しない文字であって、品質等を表示する語ではない被請求人の創作した造語であることは明らかである。
してみれば、本件商標は、出願の経緯において著しく社会的相当性を欠くものがあったとはいえず、また、指定商品について使用の独占を図る結果を招来し公正な取引秩序を乱すものとなるなど、その登録を是認することが商標法の予定する秩序に反し到底容認し得ないものであるとみることはできない。
また、本件商標を指定商品について使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するとの理由はみいだせず、他の法令等に反するとの事由や、国際信義にもとる行為であるとみるべき事情も認められない。
そしてもとより、本件商標が、その構成自体において、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような商標に該当しないことは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法4条1項7号に違反して登録されたものということはできない。
なお、請求人は、「若い女性用のサンダルに商品の特性を示す名称として『RAGAZZA』の表示を付して販売している。これに対し、被請求人は、平成24年6月4日に請求人関連会社に本件商標権に基づく使用差止を求めてきた。請求人による名称『Ragazza』の使用は、商標法26条1項2号に規定する『効力の及ばない範囲』に該当するものであるが、こうした被請求人の行為は、いたずらに商品流通秩序を乱す行為以外の何ものでもない。被請求人が本件商標の『RAGGAZZA』でなく、『RAGAZZA』のみを使用している現状においてはなおさらである。本件商標権の存在を放置することは、イタリアから『若い女性用の各種ファッション用品』が輸入されてきた場合に、いたずらに争いを生じさせる種を残すことになり、国際信義に反するものである。」旨の主張をしている。
しかしながら、本件商標がその構成する文字から造語であることは、上記したとおりであって、本件商標と相違する「RAGAZZA」若しくは「Ragazza」の文字の使用に関して、被請求人が請求人に対して、本件商標の商標権に基づく使用差止を求めてきたとしても、それが侵害行為であるどうかは、別途訴訟等の方法によって解決すべき事案であって、たとえ、被請求人のその行為が商品流通秩序を乱す行為であるとしても、現時点において、本件商標は使用されておらず、これより後、本件商標が指定商品又は指定役務について使用することが、直ちに社会公共の利益に反し、また、国際信義に反する商標ということにはならないものである。
けだし、「法4条1項7号の『公の秩序善良の風俗を害するおそれ』を私的領域にまで拡大することによって商標登録を排除することは、商標登録の的確性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである(知財高裁平成19年〔行ケ〕第10391号 平成20年6月26日判決)。」からである。
なお、イタリア語の「RAGAZZA」の文字が品質等を表すものとして、一般的に使用されている表示であれば、本件商標の商標権としての効力は及ばないものであって、該文字の使用は、商標法26条1項2号に規定する「効力の及ばない範囲」に該当するものである。
してみれば、本件商標は、商標法4条1項7号に該当しない。
3 商標法3条1項柱書きについて
請求人は、平成24年12月27日付審判事件弁駁書において、本件商標は、商標法3条1項柱書きにも該当する旨、無効の理由を追加している。
しかしながら、商標法56条1項において準用する特許法131条の2・1項は、迅速な審理に資するため、無効審判について、「請求の理由」の要旨を変更する審判請求書の補正を認めないこととしており、無効理由の根拠条文を追加することも要旨変更にあたるものと解されている。
そうとすれば、本件審判事件において、請求の理由として商標法3条1項柱書きを追加することは、請求の理由の要旨を変更するものであるから、商標法56条1項において準用する特許法131条の2・1項の規定により認められない。
なお、上記のような場合にあっても、職権審理の対象として取り上げることは可能ではあるが、登録査定時に当該商標を使用する意思を欠いていたと判断できる事情について、その証拠を発見することはできないものであり、請求人からも、これを認めるに足る証拠は何ら提出されていないので、職権をもって審理の対象とすることはしない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法3条1項6号及び同4条1項16号並びに同4条1項7号に違反して登録されたものでないから、同46条1項の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2013-01-10 
結審通知日 2013-01-16 
審決日 2013-01-29 
出願番号 商願2008-15517(T2008-15517) 
審決分類 T 1 11・ 16- Y (X25)
T 1 11・ 272- Y (X25)
T 1 11・ 22- Y (X25)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 山田 正樹 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 渡邉 健司
井出 英一郎
登録日 2008-10-03 
登録番号 商標登録第5170958号(T5170958) 
商標の称呼 ラガッツァ、ラガッザ、ラグガッツァ、ラグガッザ 
代理人 吉川 俊雄 
代理人 影山 光太郎 
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