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審決分類 審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X43
審判 一部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X43
管理番号 1280124 
審判番号 無効2012-890021 
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-02-23 
確定日 2013-09-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第5396640号商標の商標登録無効審判事件に ついてされた平成24年10月 3日付け審決に対し、知的財産高等裁判 所において審決の一部取消の判決(平成24年(行ケ)第10394号平 成25年3月21日判決言渡)があったので、審決が取り消された部分の 指定役務についてさらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第5396640号の指定役務中「飲食物の提供」についての登録 を無効とする。 平成24年10月3日付け審決のうち、「審判費用は、請求人の負担と する。」との部分を取り消す。 審判費用は、3分の1を請求人の負担とし、3分の2を被請求人の負担 とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5396640号商標(以下「本件商標」という。)は、「ローズオニールキューピー」の片仮名を標準文字で表してなり、平成22年8月9日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),展示施設の貸与」を指定役務として、同23年3月11日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求により、指定役務のうち、「飲食物の提供」以外の指定役務について、その請求は成り立たない旨の審決が同25年4月4日に一部確定し、その登録が同年7月4日にされたものである。

第2 手続の経緯
本件商標について、平成24年2月23日付けで、「本件商標の登録を無効とする。」旨の無効審判の請求があったところ、同24年10月3日付けで、「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決(以下「第一審決」という。)がされた。
この第一審決に対し、請求人は、取り消しを求めて知的財産高等裁判所に出訴し、これが平成24年(行ケ)第10394号事件として審理された結果、平成25年3月21日に「1 特許庁が無効2012-890021号事件について平成24年10月3日にした審決のうち、指定役務『飲食物の提供』に関する部分を取り消す。2 原告のその余の請求を棄却する。」との判決が言い渡された。
その結果、第一審決で商標登録を維持するとされた指定役務のうち、「飲食物の提供」に関する部分については審決が取り消され、それ以外の指定役務に関する部分については上記判決が確定した。

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標は、その指定役務中、『飲食物の提供』についての登録を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第260号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、「飲食物の提供」について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とされるべきである。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)請求人の引用する登録商標
ア 登録第4156315号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲のとおり(立体商標)
登録出願日:平成9年4月1日
設定登録日:平成10年6月12日
更新登録日:平成20年6月24日
指定役務 :第42類「宿泊施設の提供,飲食物の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与」を含む第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
イ 登録第4293493号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成9年11月27日
設定登録日:平成11年7月9日
更新登録日:平成21年2月17日
指定役務 :第42類「宿泊施設の提供,飲食物の提供,家畜の診療,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与」を含む第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
ウ 登録第4293494号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成9年11月27日
設定登録日:平成11年7月9日
更新登録日:平成21年2月17日
指定役務 :第42類「宿泊施設の提供,飲食物の提供,家畜の診療,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与」を含む第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
エ 登録第4367659号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成11年1月22日
設定登録日:平成12年3月10日
更新登録日:平成22年1月26日
指定役務 :第42類「宿泊施設の提供,飲食物の提供,家畜の診療,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与」を含む第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
オ 登録第4473190号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成12年3月9日
設定登録日:平成13年5月11日
更新登録日:平成23年5月17日
指定役務 :第42類「コンピュータ通信ネットワーク・ファクシミリ又は電話を利用した料理情報の提供,その他の料理情報の提供」
カ 登録第4772234号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成15年8月4日
設定登録日:平成16年5月21日
指定役務 :第44類「動物の飼育,動物の治療」を含む第35類、第37類、第40類、第44類及び第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
キ 登録第4950440号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成17年2月10日
設定登録日:平成18年5月12日
指定役務 :第43類「宿泊施設の提供,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,老人又は障害者の介護又は養護,老人・障害者の介護又は養護に関する相談又は指導,老人・障害者の介護に関する情報の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与」を含む第36類、第42類及び第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
ク 登録第5014002号商標「以下「引用商標8」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成18年5月25日
設定登録日:平成18年12月22日
指定役務 :第44類「動物の飼育,動物の治療」を含む第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
ケ 登録第5037203号商標(以下「引用商標9」という。)
商標の構成:キューピー(標準文字)
登録出願日:平成18年7月5日
設定登録日:平成19年3月30日
指定役務 :第44類「動物の飼育,動物の治療」を含む第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
コ 登録第5037204号商標(以下「引用商標10」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成18年7月5日
設定登録日:平成19年3月30日
指定役務 :第44類「動物の飼育,動物の治療」を含む第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
サ 登録第5073281号商標(以下「引用商標11」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成19年1月9日
設定登録日:平成19年8月24日
指定役務 :第45類「愛玩動物の世話,乳幼児の保育(施設において提供されるものを除く。)」を含む第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
シ 登録第5080868号商標(以下「引用商標12」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成19年1月9日
設定登録日:平成19年9月28日
指定役務 :第43類「宿泊施設の提供,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),会議室の貸与,展示施設の貸与」を含む第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
ス 登録第5297820号商標(以下「引用商標13」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成21年8月4日
設定登録日:平成22年1月29日
指定役務 :第45類「愛玩動物の世話」を含む第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
セ 登録第5334693号商標(以下「引用商標14」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成22年2月2日
設定登録日:平成22年7月2日
指定役務 :第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,料理情報の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),会議室の貸与,展示施設の貸与」を含む第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
(2)本件商標と引用商標1ないし14とが類似する理由
ア 本件商標の称呼及び観念について
(ア)本件商標は、「ローズオニールキューピー」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成文字に相応して、「ローズオニールキューピー」の称呼が生じるものである。
(イ)本件商標中の「ローズオニール」は、我が国でも周知になったキューピー人形のもととなったキューピーのイラストを20世紀初頭に発表した米国の作家の名前である。そして、我が国を含む世界中で、キューピーのイラストを立体化したキューピー人形が製作されて人気を博し、我が国では、1930年代ころにセルロイド製のキューピー人形が製造され広く流布した事実がある。当時、複数の企業が「キューピー」及び「キューピー人形」を商標登録した。請求人は、「キューピー」及び「キューピー人形」を商標としてマヨネーズ等の商品に使用し盛大に宣伝広告した結果、これらの商標は全国的に著名となった。その後、請求人は、商号をキューピー株式会社とした。すなわち、本件商標の登録査定時はもとより登録出願時においても、「キューピー」の語は、その人形のキャラクターを指すものとして、「キューピー人形」は、頭頂部が尖った目のパッチリと大きい裸体の幼児の人形として、我が国において広く認識されるに至っている(平成20年(行ケ)第10139号判決:甲16)。
一方、本件商標中の「ローズオニール」は、上記のとおり、キューピーのイラストを20世紀初頭に発表した米国の作家の名前であるが、この名前は、本件商標の指定役務(以下「本件指定役務」という。)との関連において広く知られたものではなく、また、本件指定役務の取引者・需要者の間で、キューピーのイラストの原作者であるということも広く知られていない。
そうすると、本件商標の前半部分「ローズオニール」と後半部分「キューピー」とでは軽重の差があるといわざるを得ないものであり、かつ、本件商標全体の称呼が11音と冗長なものであることを考え合わせると、本件商標に接する取引者・需要者は、本件商標中の「キューピー」の部分に注目して取引を行うのが自然である。
(ウ)さらに、本件指定役務中の「飲食物の提供」は、請求人が著名商標「キューピー」及び「キューピー人形」図形商標の下に販売等を行っている商品と密接な関連を有している。すなわち、「飲食物の提供」の場においては、顧客に加工食品を提供し、また、飲食物を調理する際には調味料を使用することがほとんどであり、さらに、後述のようにレストランのテーブルに調味料が置かれることも多い。
請求人は、マヨネーズやドレッシング等の調味料を含む加工食品を製造・販売している会社として広く知られており、その商品のほとんどに引用商標2及び3と同一態様の商標を使用している。なお、引用商標2及び3がマヨネーズ、ドレッシングその他の加工食品の分野、あるいはこれと密接に関連する分野で、請求人を示すものとして広く知られている点は、平成15年(行ケ)第103号判決(甲17)においても認定されている。
また、食品の製造販売を行っている会社がレストラン等を経営して飲食物の提供も同時に行っている例が実際の取引社会には多くみられることは、後述のとおりである。
これらの取引実情を考慮すると、特に、本件商標が「飲食物の提供」に使用された場合には、本件商標中の「キューピー」の部分が要部として機能し、本件商標から「キューピー」の略称及び観念が生じる可能性は一層高いといわざるを得ない。
イ 引用商標1ないし14の称呼及び観念について
(ア)引用商標1は、頭頂部が尖り、目がパッチリと大きいやや写実的な裸体の幼児の人形を模した図形からなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(イ)引用商標2は、「キューピー」の文字を横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(ウ)引用商標3は、頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形からなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(エ)引用商標4は、上段に「キューピー」の文字を横書きし、中段に頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形を有し、下段には「KEWPIE」の文字を横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(オ)引用商標5は、上部に頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい幼児の顔の図形を有し、その下の帯状図形内に、「キューピー」の文字と「とっておきレシピ」の文字を二段に横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(カ)引用商標6及び7は、頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形を左右2個配し、それぞれの人形がハート図形を片手で支えている赤色の図形からなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(キ)引用商標8は、上段に「QP」の文字を横書きし、下段に頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形を有してなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(ク)引用商標9は、「キューピー」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(ケ)引用商標10ないし12は、上段に「キューピー」の文字を横書きし、下段に頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形を有してなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(コ)引用商標13及び14は、上段に「KEWPIE」の文字を横書きし、中段に頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形を有し、下段には「キューピー」の文字を横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(サ)以上のように、引用商標1ないし14のいずれからも、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標からは、「ローズオニールキューピー」のほかに、「キューピー」の称呼が生じ、引用商標1ないし14のいずれからも、「キューピー」の称呼が生じる。また、本件商標からは、「ローズオニール(という作家)、キューピー」の観念のほかに、「キューピー」の観念が生じ、引用商標1ないし14のいずれからも「キューピー」の観念が生じる。
してみると、本件商標と引用商標1ないし14は、称呼及び観念を同一とする類似の商標である。
さらに、本件商標は、引用商標1ないし14の指定役務と同一又は類似の役務について使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人の引用する登録商標
ア 登録第595694号商標(以下「引用商標15」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:昭和35年5月31日
設定登録日:昭和37年8月24日
更新登録日:昭和48年1月12日、昭和57年10月26日、平成5年1月28日、平成14年5月21日、平成24年6月26日
指定商品 :第30類「調味料,香辛料」(平成15年7月23日書換登録)
イ 登録第832283号商標(以下「引用商標16」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:昭和41年8月11日
設定登録日:昭和44年9月24日
更新登録日:昭和55年6月27日、平成元年11月21日、平成11年10月19日、平成21年4月21日
指定商品 :第30類「調味料,香辛料」(平成21年6月17日書換登録)
(2)本件商標と引用商標15及び16との類似について
本件商標は、前記2(2)アのとおり、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。
他方、引用商標15は、頭頂部と思しき部分が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形(いわゆる「キューピー人形」)を模した図形からなるものであるから、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。また、引用商標16は、「キューピー」の文字を横書きしてなるものであるから、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。
したがって、本件商標と引用商標15及び16とは、「キューピー」の同一の称呼及び観念を有する類似の商標である。
(3)引用商標15及び16の著名性について
ア 請求人は、大正8年に設立された会社であり、大正14年に我が国初の国産マヨネーズの製造を開始し、これに「キューピー」の文字及び「キューピー人形」からなる商標を付して発売してから今日に至るまで、商標の書体、態様に多少の変更を加えつつも、一貫してこの商標を使用し続けてきた(甲20)。そして、戦後の国民の食生活の変化に伴い、洋食に合うマヨネーズが爆発的に売れるようになったことにより、「キューピー」及び「キューピー人形」の商標は、日本全国に知れ渡るに至ったものであり、請求人は、「キューピー」及び「キューピー人形」の商標を付したマヨネーズが全国的なシェアを持つに至ったことから、昭和32年に社名を「キューピー株式会社」に変更し、以来、今日までその社名を使用し続けてきた。
請求人の多種にわたる商品が全国的規模で売れたことから、本件商標の登録出願前には、「キューピー」といえば、直ちにマヨネーズを始めとする請求人の商品、あるいは請求人を指称するほどに広く知られるに至ったものである。請求人の取扱商品は多種にわたり、そのうちの、例えば、ソース類缶詰、マヨネーズ類、液状ドレッシング類、レトルトパスタソース類、レトルトスープ類、ベビーフードの日本国内における請求人の年度別シェア及び順位は、甲第21号証及び甲第22号証に示すとおり、いずれも高いものである。
また、「キューピー」は、食品関連商品についてのみならず、商品分野を限定しない企業全般を対象とした第三者によるアンケート調査において、第1位(4回)、第2位(1回)、第3位(2回)、第4位(1回)と非常に高い評価結果を得ており(甲23ないし甲30)、このことは、上記事実を裏付けるものでもある。
イ 食品分野において、引用商標15及び16等の請求人のキューピー関連商標が著名であることに加えて、請求人の一社提供番組である「キユーピー3分クッキング」は、昭和37年12月に放送が開始されてから約50年にわたり日曜日を除くほぼ毎日、日本全国で放送され続けており(日本一の長寿テレビ料理番組としてギネスブックに掲載)、その平均視聴率は、4ないし6%であって、そこでは、引用商標15及び16並びにキューピー人形等が使用されている。そして、同番組は、テレビ番組における料理レシピの提供にとどまらず、紙媒体によるテキストが日本テレビ系列から年12冊(1冊当たり18万部)、中部日本放送系列からは年4冊(1冊当たり3万1400部。いずれも平成21年度実績)販売されており、ウェブサイトでも多数回の閲覧を受けるなどしている。
以上によれば、「キユーピー3分クッキング」が請求人の一社提供番組である飲食物(料理)のレシピに関する情報を提供するテレビ番組として極めて著名であることは、明らかであり、引用商標15及び16等の請求人のキューピー関連商標が飲食物(料理)のレシピに関する情報の提供について著名であることは、明らかである。
したがって、引用商標15及び16等の請求人のキューピー関連商標の著名性が、少なくとも本件商標の指定役務である「飲食物の提供」と類似の役務分野に及んでいることは、明らかであって、飲食物(料理)に関連して「キューピー」といえば請求人又は請求人と何らかの関係のある者が想起されることは、極めて明らかである。
ウ 「KEWPIE」、「キューピー」の文字が飲食店の名前に使用された場合に想起するもの等に関するアンケート調査の結果によれば、「キューピーマヨネーズ、マヨネーズ」との回答が80%以上もの圧倒的多数を占めており、極めて多数の者がその役務の出所として請求人を想起することが明確に示されているから、請求人のキューピー関連商標の著名性は、本件商標の指定役務である「飲食物の提供」分野そのものについても強く及んでいることが明白である。
食品製造販売業者が飲食店を経営し、特にそのブランド名と同一又は実質的に同一の店舗名で飲食店を経営することや、食品製造販売業者が当該飲食店で提供されるものを食品として販売することは、多数の有名企業を含めて広く一般的に行われており、請求人も、「キユーピー3分クッキング南青山3丁目キッチン」という店舗名のレストランを開業予定である。このような取引の実情に照らすと、本件商標の指定役務である「飲食物の提供」等と、引用商標15及び16が特に著名性を有する加工食品等とが密接な関連を有することは、極めて明白である。
さらに、役務「飲食物の提供」に関する商標の使用態様には、飲食店で顧客に展示されるメニューに商標を表示することも含まれると解されるところ、請求人が取り扱っている主たる商品である加工食品には、調理を要せずにそのまま飲食できるものや、調理された飲食物に顧客の好みに応じて味を加えたりする調味料が存在するため、引用商標15及び16や商標「KEWPIE(Kewpie)」が使用された請求人の加工食品が、飲食店、学生食堂又は飲食物販売店の飲食コーナーにおいてそのまま提供され、需要者(顧客)の目に触れることも多い。そのため、本件商標の登録が維持されると、本件商標が料理の名前としてメニューに掲載されることも考えられるところ、この場合、需要者は、当該料理が請求人の製造販売に係る飲食物であるかのように誤認し、「飲食物の提供」の役務が請求人と関連のある者の提供に係るかのような出所の混同を生じるおそれが高い。
そして、本件商標の指定役務である「飲食物の提供」等の需要者と、引用商標15及び16が特に著名性を有する加工食品等の取引者・需要者とは、共通することが明らかである。
よって、本件商標の指定役務である「飲食物の提供」等と、引用商標15及び16が特に著名性を有する加工食品等とは、密接な関連を有することが明らかであり、本件商標をその指定役務、特に「飲食物の提供」について使用すれば、特に「加工食品等」といった食品・飲食物関連分野において著名性を有する引用商標15及び16等のキューピー関連商標を使用する請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれがあることは、明らかである。現に、本件商標について行われたアンケート調査の結果によれば、本件商標を特に「飲食物の提供」について使用すれば、本件商標に接する取引者・需要者は、引用商標15及び16からは請求人を想起又は連想し、当該役務の出所について誤認を生ずるおそれがあることが明らかである。
したがって、「キューピー」は、企業ブランドとしても需要者から極めて高い評価を得ているものであり、食品分野の枠を超えた著名性を獲得している。
エ 引用商標15及び16は、著名商標であるが故に、防護標章の登録が認められている(甲18、甲19、甲31、甲32)。
さらに、引用商標15及びこれと「KEWPIE」の文字からなる商標は、「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」に日本の著名商標として掲載されている(甲33、甲34)。
(4)本件商標が他人の著名な商標と他の文字を結合した商標であることについて
特許庁商標課編「商標審査基準」〔改訂第9版〕は、商標法第4条第1項第15号の適用について、「他人の著名な商標と他の文字又は図形等を結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、原則として、商品又は役務の出所の混同を生じるおそれがあるものと推認して、取り扱うものとする。ただし、その他人の著名な部分が既成の語の一部となっているもの、又は、指定商品若しくは指定役務との関係において出所の混同のおそれがないことが明白なものを除く。」としている。
本件商標は、「キューピー」と他の文字を結合した商標である。また、上述のとおり、文字商標「キューピー」は、少なくとも調味料等を含む加工食品の分野、あるいはこれに密接に関連する分野において著名な商標である(甲17)。請求人が著名な引用商標16並びに引用商標15及び「KEWPIE」の下で製造・販売を行っている加工食品等と本件指定役務中の「飲食物の提供」とは、同一事業者により製造・販売又は提供されることも多く、「飲食」というその用途も一致し、同一店舗で販売又は提供されることも多く、さらに需要者も一致する。したがって、著名な引用商標16並びに引用商標15及び「KEWPIE」が使用される商品と本件指定役務とは、非常に密接な関係を有している。
そして、著名商標の権利者と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品ではないかとの出所の混同(広義の出所の混同)を生じるおそれがある商標の登録を排除する商標法第4条第1項第15号の趣旨にかんがみれば、出願商標の指定商品・指定役務そのものについての著名性が求められると考えるよりも、これらと密接に関連する商品・役務について著名な他人の商標と他の文字等が結合した商標は、上記審査基準の規定に該当するとして拒絶されると解するべきである(平成9年(行ケ)第278号判決:甲35、無効2000-35120審決:甲36)。
ちなみに、本件商標の商標権者は、本件商標と同一文字及びその表音の片仮名からなる商標を、第32類の商品を指定して出願したところ、この商標は、請求人の著名商標「KEWPIE」及び「キューピー」の文字を含んでなるから、請求人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあるとして、商標法第4条第1項第15号に該当すると認定された事実がある(甲37)。
以上から、本件商標は、「他人の著名な商標と他の文字又は図形等を結合した商標」に該当し、商標法第4条第1項第15号に該当することは明らかである。
(5)取引の実情
ア 飲食物の製造・販売等を行う事業者は、同時に飲食物の提供を行うことが多い実情にかんがみると(甲38ないし甲43)、加工食品の製造販売で有名な請求人が、同社の食品を利用したレストランを経営していると需要者が考えても全く不思議はない。その一方で、本件商標権者がマヨネーズやドレッシングを特徴とした料理を提供する飲食店を経営し、その飲食物の提供に関して本件商標を使用することも可能である。
イ 役務「飲食物の提供」に関する商標の使用態様には、飲食店で顧客に展示されるメニューに商標を表示することも含まれると解される(甲50)ところ、引用商標15及び16等が使用された請求人の業務に係る商品であるベビーフードがレストランのメニューに掲載されている場合において(甲44ないし甲49)、仮に本件商標が料理の名前としてメニューに掲載された場合には、需要者が当該料理が請求人の業務に係る飲食物であるかのように誤認し、請求人と関連のある者(請求人から商品を仕入れた者)の提供に係る飲食物の提供であるかのような出所の混同を生じるおそれが高い。
ウ 学生食堂や社員食堂等の大人数の顧客に対して飲食物を提供する飲食店等においては、請求人の業務に係る業務用のマヨネーズやドレッシングが引用商標15及び16が表示されたパッケージのまま飲食店の顧客に提供されることが多い実情がある(甲51ないし甲54)。本件商標がその指定役務中の「飲食物の提供」に使用される場合には、飲食店の看板やメニューに本件商標が表示される可能性があり、その場合には、請求人と関連がある者の業務に係る飲食店であるかのような広義の出所の混同が生じるおそれがある。
エ 百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等では、飲食物の販売だけではなく、店内で購入した商品を飲食し、また、飲食物の提供を受けるための飲食コーナーが設けられていることも多く見受けられ(甲55ないし甲60)、請求人の著名な引用商標15及び16等が付された加工食品等を販売している上記店内の一角に本件商標の看板を掲げた飲食コーナーが設けられ、本件商標を表示したメニューが展示されることも十分に考えられ、そのような場合にも、請求人と関連がある者の業務に係る飲食店であるかのような広義の出所の混同が生じるおそれがある。
オ 請求人は、引用商標15及び16等が使用された多種多様な業務用の食品等を製造販売しており(甲61ないし甲63)、そのことは、飲食店の関係者に広く知られている。そのような状況において、本件商標を使用した「ローズオニールキューピーレストラン」等ができれば、それを目にした飲食店関係者は、それが請求人又はこれと経済的・組織的に関連する者の経営による飲食店であると誤認するおそれがあることは明らかである。
(6)まとめ
以上のことから、本件商標がその指定役務に使用された場合には、該役務が請求人又は請求人の関連会社の業務に係る役務であるかのように出所の混同を生じることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 被請求人は、本件商標が冗長ではなく、「ローズオニールキューピー」と一息に称呼し得るものであり、単に「キューピー」と略称し、「キューピー」の観念が生じるとはいえないし、「キューピー」の著作者が「ローズ・オニール」であることが広く一般に知られるに至ったと主張するが、無効審判2011-890109審決(甲64)において、「文字部分より生ずると認められる『ローズオニールキューピー』の称呼はやや冗長である」、「我が国の一般の需要者の間には、『キューピー』の語ないし『キューピー人形』が『ローズ・オニール/RoseO’Neill』の創作に係るもの、との認識の程度は決して高いものとみることはできず、上記の通り、『キューピッドの絵を模したセルロイド製のおもちゃ(人形)』の意味を有する一般的な語としての認識を超えて、『キューピー』の語ないし『キューピー人形』が『ローズ・オニール/RoseO’Neill』の創作に係るものとして広く認識されているものと認めることはできない。」と認定されている。
なお、「キューピー」の著作者が「ローズ・オニール」であることが広く一般に知られていないことは、上述のことから明らかであるが、被請求人の提出に係る証拠は、本件審判の証拠として適切でないものを多く含むものであり(乙3、乙5ないし乙7、乙9ないし乙11、乙16)、本件商標の登録出願時において、「ローズ・オニール」の語は、我が国において広く知られていたとはいえないものであり、被請求人の上記主張は、誤りである。
イ 被請求人は、「キューピーが日本人に広く親しまれたものであり、必ずしも、請求人の出所を表示するものとはいえないことは、平成15年(行ヶ)第192号審決取消請求事件(乙26)において認定されているとおりである。」とするが、該判決では、「貨物自動車による輸送」の役務の分野における請求人のキューピー関連商標の著名性が争点の一つとなったものであり、これに関して、「キューピー人形」及び「キューピー」の語が請求人とのみ関連づけられるものとして広く知られているとはいえないと認定されたにすぎない。一方で、該判決では、請求人のキューピー関連商標がマヨネーズ、ドレッシングその他の加工食品の分野又はこれと密接に関連する分野で周知著名であることが認定されている。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と引用商標15及び16とは、類似する。
引用商標15及び16の周知・著名性の範囲は、「マヨネーズ、ドレッシングその他加工食品の分野またはこれと密接に関連する分野」であって、本件商標の指定役務中、少なくとも「飲食物の提供」の取引者及び需要者は、引用商標15及び16の指定商品のそれと共通する。
イ 請求人の製造販売に係る調味料を含む各種の業務用商品は、全国の飲食店経営者や仕入れ担当者・従業員等の個人にも非常に好評を博していることは甲第63号証からも明らかであり、これらの者も他の飲食店を利用することがあるのは紛れもない事実であり、これらの者にとって「KEWPIE」の文字は、絶大な信頼をよせる対象であり、そのような状況において、本件商標の登録が維持され、本件商標を大々的に掲げたレストラン等ができれば、出所の混同のおそれが生じることは疑いのないところである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第53号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)請求人の主張に対する反論
ア 請求人は、本件商標中の「ローズオニール」は、キューピーのイラストを発表した米国の作家として、本件指定役務との関連において広く知られたものではなく、また、本件指定役務の取引者・需要者の間で、キューピーのイラストの原作者であることも広く知られていないから、本件商標を構成する「ローズオニール」と「キューピー」とでは軽重の差があり、かつ、本件商標全体の称呼が11音と冗長であることを考え合わせると、本件商標に接する取引者・需要者は、「キューピー」の部分に注目して取引を行うのが自然である旨主張する。
しかし、本件商標は、「ローズオニール」と「キューピー」とが一連に書されており、「キューピー」が際立つものではない。また、本件商標の称呼は、冗長ではなく、一息に称呼し得るものである。
したがって、本件商標に接する取引者・需要者が、後半部の「キューピー」からわざわざ称呼することはない。
また、本件商標中の「ローズオニール」と「キューピー」とは、以下のとおり、軽重の差はない。
すなわち、本件商標中の「ローズオニール」は、一般に用いられる言葉ではないゆえ、本件商標に接する取引者・需要者にとって、識別標識として格別な意味をなす。したがって、本件商標中の「ローズオニール」が「キューピー」よりも出所識別標識として軽いということはなく、類否判断において前半部分を殊更に無視をする請求人の主張は誤りである。まして、前半の「ローズオニール」と一連に記載されている場合、「キューピー」が単独で識別力を有するとは考えられない。
ローズ・オニールは、キューピーを創作する以前は、雑誌などの挿絵画家として活躍し、2008年、米国において、キューピー作品を始めとする絵画が再評価され、女性に送る視覚芸術賞を獲得した(乙1ないし乙3)。本件商標権者は、キューピーがローズ・オニールの著作であることを知って以来、その事実を世の中に訴え続けてきた(乙4、乙5)。また、本件商標権者の取引の過程において、その商品又は役務がローズ・オニールの創作したオリジナルのキューピーに基づくものであることが認知されるようになった。同時に、本件商標権者は、請求人の「キューピー」とは出所が異なることを明示し(乙4ないし乙10)、これがローズ・オニールの創作したオリジナルのキューピーと何ら関係がないことも認知されるようになった(乙5)。さらに、本件商標の商標権者は、ローズ・オニールの創作に係るキューピー等について、数多くの展示・展覧会を行っている(乙4ないし乙6、乙10、乙11)。このように、「キューピー」の著作者がローズ・オニールであることは、広く一般に知られるに至った。しかも、広辞苑第六版(乙12)には、「オニールのキューピッドの絵を模したセルロイド製のおもちや。頭の先がとがり、目の大きい裸体の人形。1910年代にアメリカで発売。商標名。」と記載され、キューピーがローズ・オニールの作品であることが明記されているのを始めとして、コンサイスカタカナ語辞典(乙13)、広辞林(乙14)、角川小辞典26外来語の語源(乙15)においても、ローズ・オニールの作品をオリジナルとすることが明記されている。さらに、英語の教科書に掲載され(乙16)、国民的に作者の名が知られるようになった。
イ 請求人は、本件指定役務中の「飲食物の提供」は、請求人が著名商標「キューピー」及び「キューピー人形」図形商標の下に販売等を行っている商品と密接な関連を有している旨主張し、さらに、「飲食物の提供」が行われるレストラン等での実情を挙げ、本件商標が「飲食物の提供」に使用された場合は、「キューピー」が要部として機能する旨主張する。
しかし、請求人の主張は、本件商標の要部の認定の問題と指定役務の類否判断の問題とを混同するものであり、失当である。そもそも請求人は、本件指定役務に引用商標2及び3を使用していない。請求人の主張に係る「引用商標2及び3と同一態様の商標」とは、引用商標15及び16のことである。本件指定役務と引用商標15及び16の指定商品は非類似であるから、本件商標と引用商標15及び16とは、商標法第4条第1項第11号の適用において無関係である。
(2)「キューピー」の識別力に関する被請求人の主張
ア キャラクターの普通名称としてのキューピー
「キューピー」は、ローズ・オニールが創作したキューピー人形の名称であったが、ブームとともに、同様のキャラクターを識別する名称となった。ローズ・オニールが初めてキューピーのイラストを雑誌に掲載して発表したのは、1909年である(乙17)。ローズ・オニールのキューピー作品は、物語性がある絵本であり、ローズ・オニールは、絵本の中で登場するキューピーにキャラクター設定を行った上で、キューピー作品を何作も残しており(乙18ないし乙20)、このキューピー作品によって一躍有名となった。その後、キューピー作品をもとにキューピー・キャラクターを立体化したキューピー人形を創作した(乙21ないし乙23)。ローズ・オニールの創作したキューピーは、大正時代に日本に伝わり大ブームとなり(乙1、乙2)、キューピーの人気にただ乗りして、これを商標登録したり、商品開発したりする者がでてきた。請求人が、ローズ・オニールの創作したキャラクターや名称に便乗して商標登録した経緯は、乙第2号証に示すとおりである。引用商標1ないし16が、キューピーの人気にただ乗りして、商標登録されたものであることについては、平成15年(行ケ)第103号判決(甲17)でも認定した。
さらに、キューピーが日本人に広く親しまれているものであり、必ずしも請求人の出所を表示するものといえないことは、平成15年(行ケ)第192号判決(乙26)において認定されているとおりであって、角川外来語辞典、平凡社大百科事典、広辞苑等のほか、新言海(乙27)においても、キューピーは、キューピー人形の特徴を持つキャラクター一般の名称として説明されている。
イ 請求人以外の「キューピー」の使用
現在では、我が国において、ローズ・オニールのキューピー作品に対する著作権の保護期間は消滅し、キューピー作品はパブリック・ドメインとなったため、多数の者がローズ・オニールの創作した「キューピー」のキャラクターと「キューピー」の名称を利用して、独自の商品を販売するようになり(乙28)、「キューピー」の商標を用いているのは、請求人1社ではない(乙29ないし乙45)。
したがって、今や「キューピー」は、ローズ・オニールの創作したキャラクターや人形だけでなく、これに類似する同様の形状を有するキャラクターや人形一般を指す称呼及び観念となった。前出の平成15年(行ケ)第192号判決(乙26)においては、上記の事実を考慮し、「キューピー」が請求人とのみ結びつくものではないと結論づけている。
(3)特許庁の判断
ア 本件商標権者の登録商標
本件商標権者は、既に「ローズオニールキューピー」の称呼及び観念を生じる商標について、先願の「キューピー」の称呼及び観念が生じ、指定商品ないし指定役務又は類似群コードを同じくする商標の存在にもかかわらず、登録を得ている(乙46)。
イ 第三者の登録商標
加えて、「キューピー」の称呼又は観念を生じる先願の登録商標が既に存在したにもかかわらず、第三者も、「キューピー」の称呼及び観念を含む登録商標であって、かつ、当該先願の登録商標と指定商品ないし指定役務又は類似群コードを同じくする商標登録を有している(乙47)。
ウ したがって、特許庁は、「ローズオニールキューピー」の称呼及び観念を生じる商標又は「○○キューピー」からなる商標と、「キューピー」の称呼及び観念を生じる商標が類似すると判断していない。
(4)取引の実情から生じる誤認混同のおそれ
ア 本件商標権者による本件商標の使用
本件商標権者、同人が代表取締役を務める株式会社ローズオニールキューピー・インターナショナル(以下「ローズオニールキューピー社」という。)及びその前身であるローズオニールキューピージャパンは、10年以上にわたり、「ローズオニールキューピー」の称呼及び観念を生ずる商標を人形等多数の商品に用い、直接又はライセンス商品として販売し(乙4ないし乙9)、また、自社インターネットサイト上に版権窓口を設けることにより(乙5)、本件指定役務について使用の準備を行っている。本件商標の使用においても、同様の取扱いが見込まれる。
イ 請求人の不使用
請求人の取扱商品は、マヨネーズ、ドレッシングその他の加工食品の分野あるいはこれに密接に関連する分野の商品であって、引用商標1ないし14をその指定役務に使用していない。また、請求人が、引用商標1ないし14の指定役務の分野に参入して、業として当該役務を提供する可能性を考慮するのは不自然である。実際、請求人の有価証券報告書(第99期)には、このような役務を業とする実績もなく計画すら明らかにされていない(乙48)。
したがって、請求人が今後、引用商標1ないし14を業としてその指定役務を提供する目的で使用するとも考えられない。
ウ 以上より、本件商標と引用商標1ないし14とは、取引の実情を考慮しても、取引者・需要者が出所の誤認混同をきたすおそれがない。
(5)請求人の主張の判例違背
請求人は、本件商標から「ローズオニールキューピー」のほかに「キューピー」の称呼及び観念を生じると主張する。
しかし、判例は、「複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較してその商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである。」と判示する(昭和38年12月5日第一小法廷判決「リラ寶塚事件」、平成5年9月10日第二小法廷判決「SEIKO EYE事件」、平成20年9月8日第二小法廷判決「つつみのおひなっこや事件」等)。
一連の標準文字からなる商標である本件商標は、その全体が同書、同大、等間隔にまとまりよく表されているものであるから、「キューピー」の称呼が生じる文字部分だけが独立して見る者の注意をひく構成とはいえないため、無理矢理「キューピー」部分を抽出することもできない。
したがって、本件商標を「ローズオニール」と「キューピー」に分離して、「キューピー」のみを引用商標1ないし14と対比する請求人の観察手法は、妥当でない。
(6)本件商標と引用商標1ないし14との対比
ア 本件商標の称呼及び観念
以上のように、本件商標は、該文字から自然に「ローズオニールキューピー」の称呼が生ずる。また、上記称呼のうち「ローズオニール」は人名であると容易に理解することができ、自然に「ローズ・オニール・キューピー」又は「ローズ・オニールのキューピー」の観念が生ずる。
イ 引用商標1ないし14の称呼及び観念
(ア)引用商標1は、一般にキューピー人形と呼ばれる立体の一種であるから、「キューピー」の称呼が生ずる。
(イ)引用商標3は、一般にキューピーと呼ばれる図形の一種であるから、「キューピー」の称呼及び観念が生ずる。
(ウ)引用商標2、4及び8ないし14は、「キューピー」又は「QP」の文字から、「キューピー」の称呼及び観念が生ずる。
(エ)引用商標5は、「キユーピーとっておきレシピ」の文字をその構成に含むから、「キューピーとっておきレシピ」の称呼及び観念が生ずる。
(オ)引用商標6及び7は、一般にキューピーと呼ばれる図形の一種が並び合ってハート型の物体を所持している図形のみからなるが、これは、単に一般にキューピーと呼ばれる図形とは大きく相違しているため、たとえキューピーと呼ばれる図形を含むとしても、いかなる称呼も生じないか、単に「キューピー」という称呼及び観念が生ずる。
(7)まとめ
本件商標と引用商標1ないし14とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても著しく相違し、非類似である。さらに、本件商標が使用される状況及び態様並びに引用商標が使用されていないことにかんがみても、取引者・需要者において、出所の混同は生じない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と引用商標15及び16との類似性
本件商標と引用商標15及び16とは、上記1で述べたところと同様に、類似しない。
(2)引用商標15及び16の周知・著名性の範囲
前出の平成15年(行ケ)第192号判決(乙26)及び平成15年(行ケ)第103号判決(甲17)に示されるとおり、引用商標15及び16が広く認識されている取引分野は、マヨネーズ、ドレッシングその他の加工食品の分野又はこれと密接に関連する分野にとどまり、それ以外の分野において、引用商標15及び16が周知・著名性を有していると認めることはできない。
(3)引用商標15及び16の独創性
引用商標15及び16は、前述のとおり、「キューピー」の流行に便乗して商標登録されたものであり、独創性がない。また、キューピーが日本人に広く親しまれているものであり、必ずしも請求人の出所を表示するものといえない(乙26)。
以上により、「キューピー」は、類似のキャラクター一般を指す包括的な観念として用いられているのであり、引用商標15及び16の指定商品の範囲を超えて、請求人とのみ結びつくものではない。
(4)本件指定役務と引用商標15及び16の指定商品との関連性
本件商標は、第43類に属する役務を指定役務とするものであるのに対し、引用商標15及び16は、「調味料、香辛料」を指定商品とするものであるから、これらは、社会通念上、同一営業主により製造若しくは販売又は提供されるとは考えられない著しく異なる商品・役務であり、何らかの関連性を見いだすことは困難である。
(5)商品等の取引者及び需要者の共通性
本件指定役務の取引者・需要者は、宿泊施設の提供にあっては旅行者を、飲食物の提供にあっては一般需要者を、動物の宿泊施設の提供にあっては特に旅行者を、保育所における乳幼児の保育にあっては保育を行うことを希望する保護者を、高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。)にあっては高齢者及びその後見人・代理人等を、展示施設の貸与にあっては美術家等を、それぞれ想定することができる。
他方、引用商標15及び16の指定商品は「調味料、香辛料」であるから、主要な取引者及び需要者は、食品商社、食品工業の事業者、食品流通業者及びレストラン等食品関連産業の事業者並びにスーパーマーケット等で日用品を購入する消費者であると考えられる。
したがって、本件商標の商標権者の提供する役務の取引者・需要者は、引用商標15及び16の指定商品のそれとは大きく異なり、共通性はない。
(6)本件商標の商標権者の便乗利用でないこと
本件商標権者は、我が国におけるローズ・オニールの創作したキューピーの著作権者であった(乙50)。そして、本件商標の商標権者は、ローズ・オニール遺産財団から、「ROSEO’NEILL」をあらゆる商品やサービスの商標として登録出願する権限を与えられている(乙51ないし乙53)。
また、上記1(4)アのとおり、本件商標権者、ローズオニールキューピー社及びその前身であるローズオニールキューピージャパンは、10年以上にわたり、「ローズオニールキューピー」の称呼及び観念を生ずる商標を付した多数の商品の販売(乙4ないし乙9)、出版物の制作(乙5、乙6)、人形等の展示(乙5、乙10、乙11)を業としてきた。
したがって、本件商標の商標権者は、請求人の商標に便乗して本件商標を登録し又は利用したものではない。
(7)希釈化が生じないこと
前述のとおり、我が国において、キューピー及びキューピー人形のモチーフは、社会全般に広く親しまれており、様々な場面で利用されている。さらに、キューピーをモチーフとする請求人以外の商標も多数存在し、現実に使用されている。
したがって、本件商標の商標権者による本件商標の使用をもって、引用商標15及び16が希釈化されることはない。
(8)請求人の主張に対する反論
ア 請求人は、「『キューピー』といえば、直ちにマヨネーズをはじめとする請求人の商品あるいは請求人を指称するほどに広く知られるに至ったものである。」と主張する。
しかし、前記2(2)のとおり、引用商標15及び16の著名性は、マヨネーズ、ドレッシングその他の加工食品の分野又はこれと密接に関連する分野にとどまる。
なお、請求人の挙げる企業ブランド知覚指数・消費者版(甲23ないし甲27)は、調査対象とされた企業の中から、調査会社の独自の調査によって得られた指数を企業ブランド知覚指数と称して順位付けしたものである。また、請求人の挙げる食の安心・安全ブランド調査(甲28ないし甲30)は、食品分野において安全性の観点からブランド力を評価するものとみられる。したがって、これらの結果をもって、引用商標15及び16が、マヨネーズ、ドレッシングその他の加工食品の分野又はこれと密接に関連する分野以外の商品・役務において周知・著名性を獲得したか否かの判断をすることはできない。
イ 請求人は、「商標審査基準」〔改訂第9版〕の商標法第4条第1項第15号適用に関する記述を挙げ、請求人の製造・販売に係る加工食品等と本件指定役務中の「飲食物の提供」とは、同一事業者によることも多く、飲食という用途も一致し、同一店舗で販売又は提供されることも多く、さらに需要者も一致するから、引用商標15及び16等が使用される商品と本件指定役務とは、非常に密接な関係を有している旨主張する。
(ア)しかし、上記基準にあるとおり、「指定商品若しくは指定役務との関係において出所の混同のおそれがないことが明白なもの」に対して当該基準は適用されないところ、本件商標も、「指定商品若しくは指定役務との関係において出所の混同のおそれがないことが明白なもの」と判断されたからこそ、登録を受けているものである。
(イ)本件指定役務と引用商標15及び16の指定商品は、前記2(4)のとおり関連性がない。また、商品「調味料、香辛料」と役務「飲食物の提供」は、類似商品・役務審査基準において類似の関係にない。さらに、商品・役務の類否判断につき、商標審査基準に照らしてみると、(a)食品を製造・販売する事業者と飲食物の提供を行う事業者が同一事業者によって行われる事実が存在するとしても、それが一般的であるという客観的状況はない、(b)引用商標15及び16の指定商品が飲食の主たる目的となることはなく、「飲食物の提供」とは用途が異なる、(c)引用商標15及び16の指定商品の主要な取引者・需要者は、社会通念上、食品商社、食品工業の事業者、食品流通業者及びレストラン等食品関連産業の事業者並びにスーパーマーケット等で日用品を購入する消費者であると解され、当該商品の販売場所については、特に企業間での流通過程では食品卸売業者の仲介により仕入れられることが多く、また、消費者は小売店で購入する一方、「飲食物の提供」は、役務の提供場所は飲食店の店舗であり、需要者の範囲は一般需要者であるから、引用商標15及び16の指定商品と「飲食物の提供」とは全く共通点のない非類似の商品と役務である以上、このような商品と役務との間に密接な関連性を見いだすことはできない。
(ウ)前記請求人主張の「商標審査基準」の記述は、周知・著名商標を含む場合は、取引上はその部分が周知・著名性の故に要部としてないしは要部的に機能するときがあることに着目して定められたものである。「キューピー」は、本来的には、上記1(2)アのとおり、ローズ・オニールの創作した著作物及びキャラクターを指し示すものとして広く一般に知られるところであるから、引用商標15及び16は、創造商標であるとはいえず、独創性がない。そのため、請求人の周知・著名商標として「キューピー」の語が機能する可能性があるのは、引用商標15及び16の指定商品に結びついたときに限られる。
したがって、引用商標15及び16の指定商品に全く関連性のない指定役務について、商標に「キューピー」の語が含まれたとしても、これはローズ・オニールの創作した著作物及びキャラクターを指し示す語が含まれていることを意味するものであって、請求人の周知・著名商標を含むものではない。
(エ)よって、本件商標は、引用商標15及び16を含むものでないため、「他人の著名な商標と他の文字を結合した商標」に該当しない。
ウ 請求人は、飲食物の製造・販売等を行う事業者は、同時に飲食物の提供を行うことが多い実情にある旨主張し、いわゆる広義の混同が生ずると主張する。
しかし、飲食物の製造・販売等とレストラン等の運営を行う事業者が存在する事実が、飲食物の製造・販売する事業者と飲食物の提供を行う事業者が同一事業者によって多角経営されることが多い、であるとか、一般的に多角経営として飲食物の提供を行う可能性がある、ということまで意味するものではない。また、請求人は、業として飲食物の提供を行っていない(乙48)。
したがって、本件商標と引用商標15及び16とは、いわゆる広義の混同が生ずるおそれはない。
エ 請求人は、請求人の製造に係る離乳食が飲食店のメニューに記載されることがある旨、請求人の製造に係るマヨネーズ、ドレッシング等の加工食品が引用商標15及び16が表示された状態で配置されることがある旨、一部の小売店には飲食コーナーがある旨を主張し、いわゆる広義の混同が生ずると主張する。
しかし、単に上記事実が存在することをもって、引用商標15及び16が需要者の目に触れる機会が多いとはいえない。むしろ、特定の飲食店に限り請求人の製造に係る離乳食がメニューに掲載されている場合や、一部の大学の学生食堂において調味料が配置される場合、という特殊な事例を除いては、飲食店内で引用商標15及び16が需要者の目に触れる機会がない事実を如実に物語っている。
したがって、飲食店内で引用商標15及び16が需要者の目に触れる機会が多いとはいえない。
また、飲食物の提供の需要者が飲食店内で引用商標15及び16を目にしたとしても、通常、飲食物の提供にあたっては、様々の出所の「調味料」及び「香辛料」等が使用されることを想定することができるから、その需要者は、「調味料」及び「香辛料」等の加工食品の出所と「飲食物の提供」の出所とが一般に一致するものとは認識しない。
したがって、飲食店内において引用商標15及び16が需要者の目に触れたとしても、いわゆる広義の混同が生ずることはない。
オ 請求人は、請求人が多種多様な業務用の商品を製造販売していることは飲食店の関係者に広く知られている旨主張する。
飲食物の提供の需要者は、一般需要者である。他方、「業務用の食品関連商品」の需要者は、食品関連産業を業とする事業者であると考えられる。
したがって、「飲食物の提供」と「業務用の食品関連商品」とでは、取引者・需要者が著しく相違する。まして、食品関連産業を業とする者は、業務上における取引を行う者であるから、一般に食品について鑑識眼が高いはずであり、このような飲食店関係者が役務の出所の誤認混同を生じるとはいえない。
(9)まとめ
以上に述べたとおり、本件商標がそのいずれの指定役務について使用されたとしても、その需要者は、請求人又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係がある者の業務に係るものであるとは誤認せず、出所の混同のおそれを生じない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 むすび
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当しないから、同法第46条第1項の無効理由は存在しない。

第4 当審の判断
1 事実認定
(1)請求人、被請求人の提出した証拠によれば、次の事実を認めることができる。
ア 米国人女流画家ローズ・オニール(Rose O‘Neill)は、明治42年(1909年)12月、米国の雑誌「レディース・ホーム・ジャーナル」誌のクリスマス特集号に、自作の詩とともに可愛く戯れる新しいキャラクターの一群を描いたイラストを発表し、そのキャラクターに、「キューピー(KEWPIE)」という名を付けた(甲110、甲113、甲114、甲126)。
このキャラクターの際立った特徴は、頭髪と思しきものが主として頭頂部のみにあり、しかもその部分が尖っており、目がパッチリと大きく、背中には天使の翼と思しき一対の小さな羽が生えたふくよかな裸体の姿をしていることであった。
キューピーのキャラクターは、その後、その人形の製造が開始されたこともあり、我が国を含む世界各国で高い人気を博するようになった(甲110、甲113、甲114、甲115)。
イ 請求人は、大正8年に設立され(当時の商号は、食品工業株式会社)、大正14年、マヨネーズの製造・販売を開始したが、それ以来現在に至るまで、一貫して前記キューピーの特徴を備えたキャラクターを、マヨネーズを含む請求人の商品の広告等に使用しており、昭和32年には商号を「キユーピー株式会社」(引用商標9)に改めたほか、同様の特徴を備えたキャラクター又は「キューピー」との称呼を生じる商標について複数登録を受けている。中でも、引用商標3(引用商標15)及びこれと「KEWPIE」との欧文字からなる商標は、「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」という書籍(平成10年版及び平成16年版)に日本の著名商標として掲載されている(甲1ないし甲15、甲18ないし甲20、甲30ないし甲34、甲71ないし甲103、甲111)。
請求人は、各種のマヨネーズ、香辛料、液状ドレッシング、食酢等を製造・販売しており、本件商標の出願時及び登録査定時以前である平成16年当時、我が国において、マヨネーズ類の生産について56.6%(業界1位)、マヨネーズ類の販売について71.1%(業界1位)、液状ドレッシングの生産について51.9%(業界1位)、液状ドレッシングの販売について42.7%(業界1位)、食酢の生産について12.8%(業界2位)、ソース類缶詰の販売について19.1%(業界1位)、パスタソース類の販売について25.0%(業界2位)、スープ類の販売について9.0%(業界3位)、ベビーフードの販売について23.7%(業界2位)のシェアを有していた(甲21、甲22)。
また、請求人は、日本経済新聞による各企業の独自性、プレミアム、推奨度等の調査結果である「企業ブランド知覚指数・消費者版ランキング」において、平成15年には第2位、平成16年には第4位であったが、平成17年から平成19年までは第1位となったほか、日経BP社による専業主婦ら女性を対象とした「食の安心・安全ブランド」のイメージ調査の結果でも、平成16年に第1位、平成17年及び平成18年に第3位となった(甲23ないし甲30)。
ウ 中部日本放送は、昭和37年12月3日、日本テレビは、昭和38年1月21日、それぞれ請求人による一社提供番組である「キユーピー3分クッキング」のテレビ放送を開始し、以来、日曜日を除く毎日、現在に至るまで50年以上にわたって日本一の長寿テレビ料理番組として飲食物の料理方法を紹介しているが、その平成22年における全国平均視聴率は、中部日本放送系列において3.6%であり、日本テレビ系列において4.2%である。そして、上記テレビ番組においては、放送開始当時から、番組名又は請求人の製造・販売に係る商品を画面で紹介する際に引用商標2(引用商標16)のロゴ及び前記キューピーの特徴を備えたキャラクターの人形(引用商標1)の映像等が放送されているほか、請求人は、自社の名称(引用商標9)が記載された自社のウェブページ及び月刊のテキスト「キユーピー3分クッキング」において、上記番組で紹介する料理の料理法を紹介しており、当該ウェブページには多数のアクセスがされている(甲195ないし甲220)。
なお、我が国においては、食品製造会社がそのブランド名と同一又は類似する店舗名の飲食店を経営している例が多数見られる(甲38、甲39、甲41ないし甲43、甲231)。
エ 我が国では、前記のとおりキューピーのキャラクターが高い人気を博していたことから、前記キューピーの特徴を備えたキャラクター又は「キューピー」との称呼を含む商標を登録した者としては、請求人以外に、証拠上明確に確認できる範囲内でも、請求人の創業者である中島董一郎(甲70、甲73、甲134)、日魯漁業株式会社(甲71)、小林又吉(甲72)、合名会社三浦商店(甲74)、株式会社中島董商店(甲75ないし77)及び輸出食品株式会社(甲133)が商標登録した(なお、以上の各登録商標の現在の商標権者は、いずれも請求人である。)ほか、荒牧運輸株式会社(甲17、甲135、甲137)、牛乳石鹸共進社株式会社(旧称共進社油脂工業株式会社。甲111、甲139、甲140、甲142、甲144、甲145、甲150)、合資会社森田商店(甲111)、松本幸一(甲114)、中西株式会社(甲114)、株式会社みずほコーポレート銀行(旧称株式会社日本興業銀行。甲138、甲141、甲146、甲148、甲149)、開東株式会社(甲143、甲192。商標権消滅済み)、みずほ情報総研株式会社(旧称株式会社興銀情報開発センター。甲147)、株式会社田村駒商店(甲151、甲192。商標権消滅済み)、日本臓器製薬株式会社(甲152ないし甲154、甲192。商標権消滅済み)、株式会社オビツ製作所(甲156)、株式会社エス・アンド・エス(甲156)、株式会社オンリーワン(甲156)、有限会社フリー企画(甲156)及び株式会社オオイケ(甲156)が商標登録するなどして、その事業の広告等に使用してきた。前記キューピーの特徴を備えたキャラクターは、平成期に入ってからも、人形その他の媒体で広く用いられている(甲137、甲191)。
また、被請求人は、訴外会社(ローズオニールキューピー・インターナショナル)の代表取締役であるところ、訴外会社は、本件商標の出願時及び登録査定時以前から、「ローズオニールキューピー」及び「Rose O’Neill Kewpie」に係る商標権等の権利に基づき我が国等においてライセンスビジネスを展開しており、各種のキューピー人形や前記の特徴を備えたキューピーのキャラクターが記載された各種の生活用品等を製造・販売している。また、被請求人が代表を務める「日本キューピークラブ」は、本件商標の出願時及び登録査定時以前から、会報を発行して、キューピーの創作者であるローズ・オニールの顕彰活動及び訴外会社による上記商品の宣伝広告を行うなどしている。また、被請求人は、ローズ・オニール原作のキューピーのキャラクターが登場する書籍の日本語訳に当たり、監修を務めているほか、「キューピー」又は「ローズオニールキューピー」との称呼が生じる複数の登録商標の商標権者である(甲112ないし甲118、甲127ないし甲129、甲155、甲177ないし甲190)。
(2)以上のとおり、キューピーのキャラクターは、その創作後から高い人気を博しており、請求人及び被請求人を含む複数の企業が広告等に使用し続けるなどしてきたため、本件商標の出願時及び登録査定時に、我が国において周知となっていたものと認められる。
他方、ローズ・オニールの名前は、辞書類には記載されていないもの(「新言海」(甲136)もあるばかりか、記載があっても、キューピーの創作以前に離婚した前夫のウィルソン姓(甲110、甲111、甲114)で記載しているもの(「広辞林」第6版(甲123))もあり、キューピー愛好家による著作(甲110、平成4年3月1日刊行)にも、「キューピーが初めて日本にお目見得し、あっというまに国民的に普及してからでも原作者ローズ・オニールの存在はもとより、名前すら全くといってよいほど伝えられなかった。“はじめにキューピーありき”とでもいうか、かなりのキューピー愛好家でさえローズ・オニールに関しては無知にひとしかったといえるだろう。」との記載があることからも明らかなように、本件商標の出願時及び登録査定時に、キューピーの創作者として周知であったと認めるに足りる証拠はない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
ア 本件商標は、前記第1に記載のとおり、「ローズオニールキューピー」の片仮名を標準文字で表してなるもので、これらの文字は、それぞれ同一の書体で同一の大きさで一体的に表されており、構成全体としてみた場合、文字の全体がまとまりよく一体的に表されているものである。
イ 本件商標は、「ローズオニールキューピー」と称呼されることが明らかである。
ウ 本件商標中、「キューピー」の文字部分は、我が国でも周知であるキューピーのキャラクターの観念を想起させるものである。また、本件商標のうち、「オニール」の文字部分は、英語圏にみられる名字であることが我が国でも周知である(甲163ないし甲168)から、これに伴って、「ローズ」の文字部分は、やはり英語圏にみられる女性の名前であることが我が国でも周知である(甲163ないし甲165)結果、本件商標のうち、「ローズオニール」の文字部分は、「ローズ・オニール」という英語圏の女性の名前であると観念される(なお、前記1(2)に認定のとおり、我が国においてローズ・オニールがキューピーのキャラクターの創作者であることが周知であるとは認められない。)。
そして、本件商標の「ローズオニール」の文字部分は、「キューピー」の文字部分の前に配されているから、本件商標からは、「ローズ・オニール(という女性)のキューピー」という観念が生じるものと認められる。
エ ところで、請求人は、前記1(1)イ及びウに認定のとおり、キューピーの特徴を備えたキャラクター又は「キューピー」との称呼を生じる商標(引用商標)について複数登録を受け、引用商標3が著名なものとして文献にも紹介されているほか、マヨネーズを中心とする調味料や加工食品の分野において我が国において高い市場占有率を誇っており、食品関係会社として我が国の一般消費者に広く認識されているばかりか、約50年間にわたって、引用商標2のロゴ及び前記キューピーの特徴を備えたキャラクターの人形(引用商標1)の映像等とともに日曜日を除いて毎日放映されてきた「キユーピー3分クッキング」というテレビ番組の提供を続けるなどしている。
オ 以上によれば、請求人(キユーピー株式会社)は、本件商標の出願時及び登録査定時に、我が国の食品関係の取引者及び一般消費者の間で、マヨネーズを中心とする調味料や加工食品を製造・販売するほか、飲食物の料理方法を教授する会社として著名であり、引用商標1ないし3及び9は、当該分野における役務の提供について、請求人を出所として識別させる商標として著名であったものと認められる。
さらに、我が国においては、前記1(1)ウに認定のとおり、食品製造会社がそのブランド名と同一又は類似する店舗名の飲食店を経営している例が多数見られることを併せ考えると、引用商標1ないし3及び9は、加工食品の製造・販売及び飲食物の料理方法の教授という役務と密接に関連する「飲食物の提供」という役務においても、取引者、需要者である食品関係の取引者及び一般消費者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
そして、本件商標の指定役務は、前記第1に記載のとおり、第43類「宿泊施設の提供、飲食物の提供、動物の宿泊施設の提供、保育所における乳幼児の保育、高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。)、展示施設の貸与」であるところ、本件商標がこれらのうち「飲食物の提供」に使用される場合、「キューピー」の部分は、前記のとおり、取引者、需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える引用商標1ないし3及び9と称呼及び観念が同一のものであるから、当該部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるものというべきである。
カ 他方、キューピーのキャラクターは、前記1(2)に認定のとおり、その創作後から高い人気を博しており、請求人及び被請求人を含む複数の企業が広告や商品販売等に使用し続けるなどしてきたものであるところ、「キューピー」との称呼及び観念を生じる引用商標1ないし14は、本件商標の指定役務のうち「飲食物の提供」を除く各役務については、取引者、需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるという事情を認めるに足りる証拠はない。
また、本件商標のうち「ローズオニール」の文字部分は、本件商標の構成の半分以上を占めるものであって、「キューピー」の文字部分に密接に関連する一般的ないし普遍的な文字であると直ちにいうこともできないから、出所識別標識としての称呼、観念が生じないとまでは認められない。
キ よって、本件商標は、それが指定役務のうち「飲食物の提供」に使用される場合には、本件商標のうち「キューピー」の文字部分だけを他の商標と比較することで類否を判断することができるものというべきであり、この場合、「キューピー」との称呼及びキューピーのキャラクターとの観念を生じるが、上記のような場合でない限り、原則として、その全体をもって他の商標との類否を判断する必要があり、この場合、「ローズオニールキューピー」との称呼及び「ローズ・オニール(という女性)のキューピー」との観念を生じるものというべきである。
(2)引用商標1ないし14について
ア 引用商標1は、頭髪と思しきものが主として頭頂部のみにあり、しかもその部分が尖っており、目がパッチリと大きく、背中には天使の翼と思しき一対の小さな羽が生えたふくよかな裸体の姿をしている幼児の人形(立体商標)である。
引用商標2は、「キユーピー」との片仮名を肉厚の書体で横書きしてなるものである。
引用商標3は、頭髪と思しきものが主として頭頂部のみにあり、しかもその部分が尖っており、目がパッチリと大きく、背中には天使の翼と思しき一対の小さな羽が生えたふくよかな裸体の姿をしている幼児の図形である。
引用商標4は、引用商標3の図形の上部に引用商標2の片仮名を配し、当該図形の下部に「KEWPIE」の欧文字を横書きしたものを配したものである。
引用商標5は、頭髪と思しきものが主として頭頂部のみにあり、しかもその部分が尖っており、目がパッチリと大きく、背中には天使の翼と思しき一対の小さな羽が生えたふくよかな幼児が「キユーピー」、「とっておきレシピ」と2段書きされた横長で帯状の掲示物を右手で上から握持し、顔及び斜め上方にのばした左腕が当該掲示物の上部に配されたものである。
引用商標6及び7は、頭髪と思しきものが主として頭頂部のみにあり、しかもその部分が尖っており、目がパッチリと大きく、背中には天使の翼と思しき一対の小さな羽が生えたふくよかな裸体の姿をしている幼児2名が並んで正面を向き、各外側の手で両者の間の胸付近に配されたハート模様を握持し、各幼児両眼の黒眼部分が当該ハート模様の向きに配されている全体として左右対称のものであって、幼児の姿を描く線及び当該ハート模様がいずれも赤色で彩色されたものである。
引用商標8は、引用商標3の図形の上部に「QP」との欧文字を横書きしたものを配したものである。
引用商標9は、標準文字で「キューピー」と横書きしてなるものである。
引用商標10ないし12は、引用商標3の図形の上部に引用商標2の片仮名文字を配したものである。
引用商標13及び14は、引用商標3の図形の上部に「KEWPIE」の欧文字を横書きしたものを配し、当該図形の下部に引用商標2の片仮名文字を配したものである。
イ 引用商標2、4及び8ないし14の片仮名及び欧文字からは、いずれも「キューピー」との称呼が生ずるほか、引用商標1、3ないし8及び10ないし14の人形又は幼児の図形の外観も、前記のとおり我が国において周知となっていたキューピーのキャラクターが備える特徴と一致している。
したがって、引用商標1ないし14に接した取引者、需要者において、これらの商標からは「キューピー」との称呼が生じるとともに、当該特徴を備えた我が国でも周知のキューピーのキャラクターとの観念が生じるほか、引用商標5からは、「キューピートッテオキレシピ」の称呼が生じるものと認められる。
(3)本件商標と引用商標1ないし14との類否について
ア 本件商標は、前記(1)キのとおり、その指定役務中「飲食物の提供」に使用される場合には、本件商標中「キューピー」の文字部分だけを他の商標と比較することで類否を判断することができるものというべきである。
そして、本件商標中「キューピー」の文字部分からは、「キューピー」との称呼が生じ、かつ、我が国でも周知のキューピーのキャラクターとの観念が生じるところ、これと称呼及び観念を共通にする引用商標1ないし4、7、12及び14は、いずれも指定役務に「飲食物の提供」が含まれている。
よって、本件商標は、その指定役務中の「飲食物の提供」に使用する場合、引用商標1ないし4、7、12及び14とは類似する商標である。
イ 他方、本件商標をその指定商品中の「飲食物の提供」以外の指定役務に使用する場合には、本件商標は、その全体を観察した場合、引用商標1ないし14とはいずれも外観が異なるほか、「ローズオニールキューピー」の称呼が生じ、かつ、「ローズ・オニール(という女性)のキューピー」という観念が生じるものである。
したがって、本件商標は、「キューピー」又は「キューピートッテオキレシピ」との称呼が生じ、かつ、我が国でも周知のキューピーのキャラクターとの観念が生じる引用商標1ないし14とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、互いに紛れるおそれのないものである。
また、本件全証拠によっても、本件商標の指定役務中、「飲食物の提供」以外の役務に係る取引に当たり、取引者、需要者が、「ローズオニール」との文字部分が付加された本件商標と、「キューピー」との称呼及び観念が生じる引用商標とで出所について混同を生じる実情があるとは認められない。
よって、本件商標は、その指定役務中、「飲食物の提供」以外の役務に使用する場合、引用商標1ないし14とは非類似の商標であるといえる。
(4)以上によれば、本件商標は、これをその指定役務中、「飲食物の提供」に使用するときは、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、これをその指定役務中の「飲食物の提供」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、その余について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、無効とする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)引用商標1(登録第4156315号商標)



(2)引用商標2及び16(登録第4293493及び同第832283号商標)



(3)引用商標3及び15(登録第4293494号及び同第595694号商標)



(4)引用商標4(登録第4367659号商標)



(5)引用商標5(登録第4473190号商標)



(6)引用商標6及び7(登録第4772234号及び同第4950440号商標)


(色彩については原本参照。)
(7)引用商標8(登録第5014002号商標)



(8)引用商標10ないし12(登録第5037204号、同第5073281号及び同第5080868号商標)



(9)引用商標13及び14(登録第5297820号及び同第5334693号商標)




(参考)
第一審決(平成24年10月3日付け審決)

審決

無効2012-890021

東京都渋谷区渋谷1丁目4番13号
請求人 キユーピー 株式会社

東京都千代田区丸の内3-2-3 富士ビル 協和特許法律事務所
代理人弁理士 勝沼 宏仁

東京都千代田区丸の内3-2-3 協和特許法律事務所
代理人弁理士 黒瀬 雅志

東京都中央区明石町8-1 聖路加タワー28F 凜国際特許業務法人
代理人弁理士 中川 拓

東京都中央区明石町8-1 聖路加タワー28F 凜国際特許業務法人
代理人弁理士 宮城 和浩

東京都千代田区丸の内3丁目2番3号 富士ビル 協和特許法律事務所
代理人弁理士 矢崎 和彦

東京都千代田区丸の内三丁目2番3号 協和特許法律事務所
代理人弁理士 宇梶 暁貴

東京都千代田区丸の内3-2-3 富士ビル3階 協和特許法律事務所
代理人弁理士 高田 泰彦

東京都千代田区丸の内3-2-3 富士ビル3階 協和特許法律事務所
代理人弁理士 柏 延之


大阪府大阪市北区西天満5丁目11番地22 メゾン梅ケ枝703号
被請求人 北川 和夫

東京都港区虎ノ門1丁目16番4号 アーバン虎ノ門ビル6階 インフォテ ック法律事務所
代理人弁護士 山本 隆司

東京都港区虎ノ門1丁目16番4号 アーバン虎ノ門ビル6階 インフォテ ック法律事務所
代理人弁護士 井奈波 朋子

上記当事者間の登録第5396640号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理 由
第1 本件商標
本件登録第5396640号商標(以下「本件商標」という。)は、「ローズオニールキューピー」の文字を標準文字で表してなり、平成22年8月9日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),展示施設の貸与」を指定役務として、同23年3月11日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効にする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第109号証(枝番を含む。)を提出した(なお、甲号証及び乙号証において、枝番を有するもので、枝番のすべてを引用する場合は、以下、枝番の記載を省略する。)。
1 請求の理由
本件商標の登録は、後記2及び3のとおり、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とされるべきである。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)請求人の引用する登録商標
ア 登録第4156315号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなる立体商標であり、平成9年4月1日に登録出願、「宿泊施設の提供,飲食物の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与」を含む第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同10年6月12日に設定登録され、その後、同20年6月24日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
イ 登録第4293493号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、平成9年11月27日に登録出願、「宿泊施設の提供,飲食物の提供,家畜の診療,保育所における乳幼児の保育,老人の養護.会議室の貸与,展示施設の貸与」を含む第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同11年7月9日に設定登録され、その後、商標登録の取消し審判により、指定役務中の「調剤」について取り消すべき旨の審決がされ、同19年1月9日にその確定審決の登録がされたものであり、その余の指定役務については、同21年2月17日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
ウ 登録第4293494号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(3)のとおりの構成からなり、平成9年11月27日に登録出願、「宿泊施設の提供,飲食物の提供,家畜の診療,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与」を含む第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同11年7月9日に設定登録され、その後、同21年2月17日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
エ 登録第4367659号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(4)のとおりの構成からなり、平成11年1月22日に登録出願、「宿泊施設の提供,飲食物の提供,家畜の診療,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与」を含む第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同12年3月10日に設定登録され、その後、同22年1月26日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
オ 登録第4473190号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(5)のとおりの構成からなり、平成12年3月9日に登録出願、第42類「コンピュータ通信ネットワーク・ファクシミリ又は電話を利用した料理情報の提供,その他の料理情報の提供」を指定役務として、同13年5月11日に設定登録され、その後、同23年5月17日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
カ 登録第4772234号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲(6)のとおりの構成からなり、平成15年8月4日に登録出願、「動物の飼育,動物の治療」を含む第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務並びに第35類、第37類、第40類及び第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同16年5月21日に設定登録されたものである。
キ 登録第4950440号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲(6)のとおりの構成からなり、平成17年2月10日に登録出願、「宿泊施設の提供,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,老人又は障害者の介護又は養護,老人・障害者の介護又は養護に関する相談又は指導,老人・障害者の介護に関する情報の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与」を含む第43類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務並びに第36類及び第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同18年5月12日に設定登録されたものである。
ク 登録第5014002号商標(以下「引用商標8」という。)は、別掲(7)のとおりの構成からなり、平成18年5月25日に登録出願、「動物の飼育,動物の治療」を含む第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同年12月22日に設定登録されたものである。
ケ 登録第5037203号商標(以下「引用商標9」という。)は、「キューピー」の文字を標準文字で表してなり、平成18年7月5日に登録出願、「動物の飼育,動物の治療」を含む第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同19年3月30日に設定登録されたものである。
コ 登録第5037204号商標(以下「引用商標10」という。)は、別掲(8)のとおりの構成からなり、平成18年7月5日に登録出願、「動物の飼育,動物の治療」を含む第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同19年3月30日に設定登録されたものである。
サ 登録第5073281号商標(以下「引用商標11」という。)は、別掲(8)のとおりの構成からなり、平成19年1月9日に登録出願、「愛玩動物の世話,乳幼児の保育(施設において提供されるものを除く。)」を含む第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同年8月24日に設定登録されたものである。
シ 登録第5080868号商標(以下「引用商標12」という。)は、別掲(8)のとおりの構成からなり、平成19年1月9日に登録出願、「宿泊施設の提供,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),会議室の貸与,展示施設の貸与」を含む第43類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同年9月28日に設定登録されたものである。
ス 登録第5297820号商標(以下「引用商標13」という。)は、別掲(9)のとおりの構成からなり、平成21年8月4日に登録出願、「愛玩動物の世話」を含む第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同22年1月29日に設定登録されたものである。
セ 登録第5334693号商標(以下「引用商標14」という。)は、別掲(9)のとおりの構成からなり、平成22年2月2日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,料理情報の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。),会議室の貸与,展示施設の貸与」を指定役務として、同年7月2日に設定登録されたものである。
(2)本件商標と引用商標1ないし14とが類似する理由
ア 引用商標1ないし14の称呼及び観念について
(ア)引用商標1は、頭頂部が尖り、目がパッチリと大きいやや写実的な裸体の幼児の人形を模した図形からなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(イ)引用商標2は、「キューピー」の文字を横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(ウ)引用商標3は、頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形からなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(エ)引用商標4は、上段に「キューピー」の文字を横書きし、中段に頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい幼児の人形を模した図形を有し、下段には「KEWPIE」の文字を横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(オ)引用商標5は、上部に頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい幼児の顔の図形を有し、その下の帯状図形内に、「キューピー」の文字と「とっておきレシピ」の文字を二段に横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(カ)引用商標6及び7は、頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形を左右2個配し、それぞれの人形がハート図形を片手で支えている赤色の図形からなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(キ)引用商標8は、上段に「QP」の文字を横書きし、下段に頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい幼児の人形を模した図形を有してなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(ク)引用商標9は、「キューピー」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(ケ)引用商標10ないし12は、上段に「キューピー」の文字を横書きし、下段に頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい幼児の人形を模した図形を有してなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(コ)引用商標13及び14は、上段に「KEWPIE」の文字を横書きし、中段に頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい幼児の人形を模した図形を有し、下段には「キューピー」の文字を横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
(サ)以上のように、引用商標1ないし14のいずれからも、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
イ 本件商標の称呼及び観念について
(ア)本件商標は、「ローズオニールキューピー」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成文字に相応して、「ローズオニールキューピー」の称呼が生じるものである。
(イ)本件商標中の「ローズオニール」は、我が国でも周知になったキューピー人形のもととなったキューピーのイラストを20世紀初頭に発表した米国の作家の名前である。我が国を含む世界中で、キューピーのイラストを立体化したキューピー人形が製作されて人気を博し、我が国では、1930年代頃にセルロイド製のキューピー人形が製造され広く流布した事実がある。当時、複数の企業が「キューピー」及び「キューピー人形」を商標登録した。請求人は、「キューピー」及び「キューピー人形」を商標としてマヨネーズ等の商品に使用し盛大に宣伝広告した結果、これらの商標は全国的に著名となった。その後、請求人は、商号をキューピー株式会社とした。すなわち、本件商標の査定時はもとより出願時においても、「キューピー」の語は、その人形のキャラクターを指すものとして、「キューピー人形」は、頭頂部が尖った目のパッチリと大きい裸体の幼児の人形として、我が国において広く認識されるに至っている(平成20年(行ケ)第10139号判決:甲16)。
一方、本件商標中の「ローズオニール」は、前記のとおり、キューピーのイラストを20世紀初頭に発表した米国の作家の名前であるが、この名前は、本件商標の指定役務(以下「本件指定役務」という。)との関連において広く知られたものではなく、また、本件指定役務の取引者・需要者の間で、キューピーのイラストの原作者であるということも広く知られていない。
そうすると、本件商標の前半部分「ローズオニール」と後半部分「キューピー」とでは軽重の差があるといわざるを得ないものであり、かつ、本件商標全体の称呼が11音と冗長なものであることを考え合わせると、本件商標に接する取引者・需要者は、本件商標中の「キューピー」の部分に注目して取引を行うのが自然である。
(ウ)さらに、本件指定役務中の「飲食物の提供」は、請求人が著名商標「キューピー」及び「キューピー人形」図形商標の下に販売等を行っている商品と密接な関連を有している。すなわち、「飲食物の提供」の場においては、顧客に加工食品を提供し、また、飲食物を調理する際には調味料を使用することがほとんどであり、さらに、後述のようにレストランのテーブルに調味料が置かれることも多い。
請求人は、マヨネーズやドレッシング等の調味料を含む加工食品を製造・販売している会社として広く知られており、その商品のほとんどに引用商標2及び3と同一態様の商標を使用している。なお、引用商標2及び3がマヨネーズ、ドレッシングその他の加工食品の分野、あるいはこれと密接に関連する分野で、請求人を示すものとして広く知られている点は、平成15年(行ケ)第103号判決(甲17)においても認定されている。
また、食品の製造販売を行っている会社がレストラン等を経営して飲食物の提供も同時に行っている例が実際の取引社会には多くみられることは、後述のとおりである。
これらの取引実情を考慮すると、特に、本件商標が「飲食物の提供」に使用された場合には、本件商標中の「キューピー」の部分が要部として機能し、本件商標から「キューピー」の略称及び観念が生じる可能性は一層高いといわざるを得ない。
(3)まとめ
上述のとおり、本件商標からは、「ローズオニールキューピー」のほかに、「キューピー」の称呼が生じ、引用商標1ないし14のいずれからも、「キューピー」の称呼が生じる。また、本件商標からは、「ローズオニール(という作家)、キューピー」の観念のほかに、「キューピー」の観念が生じ、引用商標1ないし14のいずれからも「キューピー」の観念が生じる。
してみると、本件商標と引用商標1ないし14は、称呼及び観念を同一とする類似の商標である。
さらに、本件商標は、引用商標1ないし14の指定役務と同一又は類似の役務について使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人の引用する登録商標
ア 登録第595694号商標(以下「引用商標15」という。)は、別掲(3)のとおりの構成からなり、昭和35年5月31日に登録出願、第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同37年8月24日に設定登録され、その後、同48年1月12日、同57年10月26日、平成5年1月28日、同14年5月21日及び同24年6月26日の5回にわたり、商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同15年7月23日に指定商品を第30類「調味料,香辛料」とする指定商品の書換登録がされたものである。
イ 登録第832283号商標(以下「引用商標16」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、昭和41年8月11日に登録出願、第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同44年9月24日に設定登録され、その後、同55年6月27日、平成元年11月21日、同11年10月19日及び同21年4月21日の4回にわたり、商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、同21年6月17日に指定商品を第30類「調味料,香辛料」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(2)本件商標引用商標15及び16との類似について
本件商標は、上記2(2)イのとおり、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。
他方、引用商標15は、頭頂部と思しき部分が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形(いわゆる「キューピー人形」)を模した図形からなるものであるから、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。また、引用商標16は、「キューピー」の文字を横書きしてなるものであるから、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。
したがって、本件商標と引用商標15及び16とは、「キューピー」の同一の称呼及び観念を有する類似の商標である。
(3)引用商標15及び16の著名性について
ア 請求人は、大正8年に設立された会社であり、大正14年に我が国初の国産マヨネーズの製造を開始し、これに「キューピー」の文字及び「キューピー人形」からなる商標を付して発売してから今日に至るまで、商標の書体、態様に多少の変更を加えつつも、一貫してこの商標を使用し続けてきた(甲20)。そして、戦後の国民の食生活の変化に伴い、洋食に合うマヨネーズが爆発的に売れるようになったことにより、「キューピー」及び「キューピー人形」の商標は、日本全国に知れ渡るに至ったものであり、請求人は、「キューピー」及び「キューピー人形」の商標を付したマヨネーズが全国的なシェアを持つに至ったことから、昭和32年に社名を「キューピー株式会社」に変更し、以来、今日までその社名を使用し続けてきた。
請求人の多種にわたる商品が全国的規模で売れたことから、本件商標の登録出願前には、「キューピー」といえば、直ちにマヨネーズを始めとする請求人の商品、あるいは請求人を指称するほどに広く知られるに至ったものである。
請求人の取扱商品は多種にわたり、そのうちの、例えば、ソース類缶詰、マヨネーズ類、液状ドレッシング類、レトルトパスタソース類、レトルトスープ類、ベビーフードの日本国内における請求人の年度別シェア及び順位は、甲第21号証及び甲第22号証に示すとおり、いずれも高いものである。
また、「キューピー」は、食品関連商品についてのみならず、商品分野を限定しない企業全般を対象とした第三者によるアンケート調査において、第1位(4回)、第2位(1回)、第3位(2回)、第4位(1回)と非常に高い評価結果を得ており(甲23?甲30)、このことは、上記事実を裏付けるものでもある。
したがって、「キューピー」は、企業ブランドとしても需要者から極めて高い評価を得ているものであり、食品分野の枠を超えた著名性を獲得している。
イ 引用商標15及び16は、著名商標であるが故に、防護標章の登録が認められている(甲18、甲19、甲31、甲32)。
さらに、引用商標15及びこれと「KEWPIE」の文字からなる商標は、「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」に日本の著名商標として掲載されている(甲33、甲34)。
(4)本件商標が他人の著名な商標と他の文字を結合した商標であることについて
特許庁商標課編「商標審査基準」〔改訂第9版〕は、商標法第4条第1項第15号の適用について、「他人の著名な商標と他の文字又は図形等を結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、原則として、商品又は役務の出所の混同を生じるおそれがあるものと推認して、取り扱うものとする。ただし、その他人の著名な部分が既成の語の一部となっているもの、又は、指定商品若しくは指定役務との関係において出所の混同のおそれがないことが明白なものを除く。」としている。
本件商標は、「キューピー」と他の文字を結合した商標である。また、上述のとおり、文字商標「キューピー」は、少なくとも調味料等を含む加工食品の分野、あるいはこれに密接に関連する分野において著名な商標である(甲17)。請求人が著名な引用商標16並びに引用商標15及び「KEWPIE」の下で製造・販売を行っている加工食品等と本件指定役務中の「飲食物の提供」とは、同一事業者により製造・販売又は提供されることも多く、「飲食」という用途も一致し、同一店舗で販売又は提供されることも多く、さらに需要者も一致する。したがって、著名な引用商標16並びに引用商標15及び「KEWPIE」が使用される商品と本件指定役務とは、非常に密接な関係を有している。
そして、著名商標の権利者と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品ではないかとの出所の混同(広義の出所の混同)を生じるおそれがある商標の登録を排除する商標法第4条第1項第15号の趣旨にかんがみれば、出願商標の指定商品・指定役務そのものについての著名性が求められると考えるよりも、これらと密接に関連する商品・役務について著名な他人の商標と他の文字等が結合した商標は、上記審査基準の規定に該当するとして拒絶されると解するべきである(平成9年(行ケ)第278号判決:甲35、無効2000-35120審決:甲36参照)。
ちなみに、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は、本件商標と同一文字及びその表音の片仮名からなる商標を、第32類の商品を指定して出願したところ、この商標は、請求人の著名商標「KEWPIE」及び「キューピー」の文字を含んでなるから、請求人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあるとして、商標法第4条第1項第15号に該当すると認定された事実がある(甲37)。
以上から、本件商標は、「他人の著名な商標と他の文字又は図形等を結合した商標」に該当し、商標法第4条第1項第15号に該当することは明らかである。
(5)取引の実情
ア 飲食物の製造・販売等を行う事業者は、同時に飲食物の提供を行うことが多い実情にかんがみると(甲38?甲43)、加工食品の製造販売で有名な請求人が、同社の食品を利用したレストランを経営していると需要者が考えても全く不思議はない。その一方で、本件商標権者がマヨネーズやドレッシングを特徴とした料理を提供する飲食店を経営し、その飲食物の提供に関して本件商標を使用することも可能である。
イ 役務「飲食物の提供」に関する商標の使用態様には、飲食店で顧客に展示されるメニューに商標を表示することも含まれると解される(甲50)ところ、引用商標15及び16等が使用された請求人の業務に係る商品であるベビーフードがレストランのメニューに掲載されている場合において(甲44?甲49)、仮に本件商標が料理の名前としてメニューに掲載された場合には、需要者が当該料理が請求人の業務に係る飲食物であるかのように誤認し、請求人と関連のある者(請求人から商品を仕入れた者)の提供に係る飲食物の提供であるかのような出所の混同を生じるおそれが高い。
ウ 学生食堂や社員食堂等の大人数の顧客に対して飲食物を提供する飲食店等においては、請求人の業務に係る業務用のマヨネーズやドレッシングが引用商標15及び16の表示されたパッケージのまま飲食店の顧客に提供されることが多い実情がある(甲51?甲54)。本件商標がその指定役務中の「飲食物の提供」に使用される場合には、飲食店の看板やメニューに本件商標が表示される可能性があり、その場合には、請求人と関連がある者の業務に係る飲食店であるかのような広義の出所の混同が生じるおそれがある。
エ 百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等では、飲食物の販売だけではなく、店内で購入した商品を飲食し、また、飲食物の提供を受けるための飲食コーナーが設けられていることも多く見受けられ(甲55?甲60)、請求人の著名な引用商標15及び16等が付された加工食品等を販売している上記店内の一角に本件商標の看板を掲げた飲食コーナーが設けられ、本件商標を表示したメニューが展示されることも十分に考えられ、そのような場合にも、請求人と関連がある者の業務に係る飲食店であるかのような広義の出所の混同が生じるおそれがある。
オ 請求人は、引用商標15及び16等が使用された多種多様な業務用の食品等を製造販売しており(甲61?甲63)、そのことは、飲食店の関係者に広く知られている。そのような状況において、本件商標を使用した「ローズオニールキューピーレストラン」等ができれば、それを目にした飲食店関係者は、それが請求人又はこれと経済的・組織的に関連する者の経営による飲食店であると誤認するおそれがあることは明らかである。
カ 以上のように、「キューピー」の文字を含む本件商標がその指定役務中の「飲食物の提供」に使用されれば、該役務が請求人又はこれと経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係るものであるとの誤認が生じ、出所の混同が生じるおそれが高いことは明らかである。
さらに、請求人と何ら関係のない第三者が本件商標のように「キューピー」の文字を含む商標を使用して「飲食物の提供」を行うことが法的に正当な行為と認められる状況が維持されてしまうと、著名な引用商標16の識別力の稀釈化・汚染が生じるおそれが極めて大きい。
(6)まとめ
以上のことから、本件商標がその指定役務に使用された場合には、該役務が請求人又は請求人の関連会社の業務に係る役務であるかのように出所の混同を生じることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 被請求人は、本件商標が冗長ではなく、「ローズオニールキューピー」と一息に称呼し得るものであり、単に「キューピー」と略称し、「キューピー」の観念が生じるとはいえないし、「キューピー」の著作者が「ローズ・オニール」であることが広く一般に知られるに至ったと主張するが、無効審判2011-890109審決(甲64)において、「文字部分より生ずると認められる『ローズオニールキューピー』の称呼はやや冗長である」、「我が国の一般の需要者の間には、『キューピー』の語ないし『キューピー人形』が『ローズ・オニール/RoseO’Neill』の創作に係るもの、との認識の程度は決して高いものとみることはできず、上記の通り、『キューピッドの絵を模したセルロイド製のおもちゃ(人形)』の意味を有する一般的な語としての認識を超えて、『キューピー』の語ないし『キューピー人形』が『ローズ・オニール/RoseO’Neill』の創作に係るものとして広く認識されているものと認めることはできない。」と認定されている。
なお、「キューピー」の著作者が「ローズ・オニール」であることが広く一般に知られていないことは、上述のことから明らかであるが、被請求人の提出に係る証拠は、本件審判の証拠として適切でないものを多く含むものであり(乙3、乙5?乙7、乙9?乙11、乙16)、本件商標の登録出願日において、「ローズ・オニール」の語は、我が国において広く知られていたとはいえないものであり、被請求人の上記主張は、誤りである。
イ 被請求人は、「キューピーが日本人に広く親しまれたものであり、必ずしも、請求人の出所を表示するものとはいえないことは、平成15年(行ヶ)第192号審決取消請求事件(乙26)において認定されているとおりである。」とするが、該判決では、「貨物自動車による輸送」の役務の分野における請求人のキューピー関連商標の著名性が争点の一つとなったものであり、これに関して、「キューピー人形」及び「キューピー」の語が請求人とのみ関連づけられるものとして広く知られているとはいえないと認定されたにすぎない。一方で、該判決では、請求人のキューピー関連商標がマヨネーズ、ドレッシングその他の加工食品の分野又はこれと密接に関連する分野で周知著名であることが認定されている。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と引用商標15及び16とは、類似する。
引用商標15及び16の周知・著名性の範囲は、「マヨネーズ、ドレッシングその他加工食品の分野またはこれと密接に関連する分野」であって、本件商標の指定役務中、少なくとも「飲食物の提供」の取引者及び需要者は、引用商標15及び16の指定商品のそれと共通する。
イ 請求人の製造販売に係る調味料を含む各種の業務用商品は、全国の飲食店経営者や仕入れ担当者・従業員等の個人にも非常に好評を博していることは甲第63号証からも明らかであり、これらの者も他の飲食店を利用することがあるのは紛れもない事実であり、これらの者にとって「KEWPIE」の文字は、絶大な信頼をよせる対象であり、そのような状況において、本件商標の登録が維持され、本件商標を大々的に掲げたレストラン等ができれば、出所の混同のおそれが生じることは疑いのないところである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第53号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)請求人の主張に対する反論
ア 請求人は、本件商標中の「ローズオニール」は、キューピーのイラストを発表した米国の作家として、本件指定役務との関連において広く知られたものではなく、また、本件指定役務の取引者・需要者の間で、キューピーのイラストの原作者であることも広く知られていないから、本件商標を構成する「ローズオニール」と「キューピー」とでは軽重の差があり、かつ、本件商標全体の称呼が11音と冗長であることを考え合わせると、本件商標に接する取引者・需要者は、「キューピー」の部分に注目して取引を行うのが自然である旨主張する。
しかし、本件商標は、「ローズオニール」と「キューピー」とが一連に書されており、「キューピー」が際立つものではない。また、本件商標の称呼は、冗長ではなく、一息に称呼し得るものである。
したがって、本件商標に接する取引者・需要者が、後半部の「キューピー」からわざわざ称呼することはない。
また、本件商標中の「ローズオニール」と「キューピー」とは、以下のとおり、軽重の差はない。
すなわち、本件商標中の「ローズオニール」は、一般に用いられる言葉ではないゆえ、本件商標に接する取引者・需要者にとって、識別標識として格別な意味をなす。したがって、本件商標中の「ローズオニール」が「キューピー」よりも出所識別標識として軽いということはなく、類否判断において前半部分を殊更に無視をする請求人の主張は誤りである。まして、前半の「ローズオニール」と一連に記載されている場合、「キューピー」が単独で識別力を有するとは考えられない。
ローズ・オニールは、キューピーを創作する以前は、雑誌などの挿絵画家として活躍し、2008年、米国において、キューピー作品を始めとする絵画が再評価され、女性に送る視覚芸術賞を獲得した(乙1?乙3)。本件商標権者は、キューピーがローズ・オニールの著作であることを知って以来、その事実を世の中に訴え続けてきた(乙4、乙5)。また、本件商標権者の取引の過程において、その商品又は役務がローズ・オニールの創作したオリジナルのキューピーに基づくものであることが認知されるようになった。同時に、本件商標権者は、請求人の「キューピー」とは出所が異なることを明示し(乙4?乙10)、これがローズ・オニールの創作したオリジナルのキューピーと何ら関係がないことも認知されるようになった(乙5)。さらに、本件商標権者は、ローズ・オニールの創作に係るキューピー等について、数多くの展示・展覧会を行っている(乙4?乙6、乙10、乙11)。このように、「キューピー」の著作者がローズ・オニールであることは、広く一般に知られるに至った。しかも、広辞苑第六版(乙12)には、「オニールのキューピッドの絵を模したセルロイド製のおもちや。頭の先がとがり、目の大きい裸体の人形。1910年代にアメリカで発売。商標名。」と記載され、キューピーがローズ・オニールの作品であることが明記されているのを始めとして、コンサイスカタカナ語辞典(乙13)、広辞林(乙14)、角川小辞典26外来語の語源(乙15)においても、ローズ・オニールの作品をオリジナルとすることが明記されている。さらに、英語の教科書に掲載され(乙16)、国民的に作者の名が知られるようになった。
イ 請求人は、本件指定役務中の「飲食物の提供」は、請求人が著名商標「キューピー」及び「キューピー人形」図形商標の下に販売等を行っている商品と密接な関連を有している旨主張し、さらに、「飲食物の提供」が行われるレストラン等での実情を挙げ、本件商標が「飲食物の提供」に使用された場合は、「キューピー」が要部として機能する旨主張する。
しかし、請求人の主張は、本件商標の要部の認定の問題と指定役務の類否判断の問題とを混同するものであり、失当である。そもそも請求人は、本件指定役務に引用商標2及び3を使用していない。請求人の主張に係る「引用商標2及び3と同一態様の商標」とは、引用商標15及び16のことである。本件指定役務と引用商標15及び16の指定商品は非類似であるから、本件商標と引用商標15及び16とは、商標法第4条第1項第11号の適用において無関係である。
(2)「キューピー」の識別力に関する被請求人の主張
ア キャラクターの普通名称としてのキューピー
「キューピー」は、ローズ・オニールが創作したキューピー人形の名称であったが、ブームとともに、同様のキャラクターを識別する名称となった。ローズ・オニールが初めてキューピーのイラストを雑誌に掲載して発表したのは、1909年である(乙17)。ローズ・オニールのキューピー作品は、物語性がある絵本であり、ローズ・オニールは、絵本の中で登場するキューピーにキャラクター設定を行った上で、キューピー作品を何作も残しており(乙18?乙20)、このキューピー作品によって一躍有名となった。その後、キューピー作品をもとにキューピー・キャラクターを立体化したキューピー人形を創作した(乙21?乙23)。ローズ・オニールの創作したキューピーは、大正時代に日本に伝わり大ブームとなり(乙1、乙2)、キューピーの人気にただ乗りして、これを商標登録したり、商品開発したりする者がでてきた。請求人が、ローズ・オニールの創作したキャラクターや名称に便乗して商標登録した経緯は、乙第2号証に示すとおりである。引用商標1?16が、キューピーの人気にただ乗りして、商標登録されたものであることについては、平成15年(行ケ)第103号判決(甲17)でも認定した。
さらに、キューピーが日本人に広く親しまれているものであり、必ずしも請求人の出所を表示するものといえないことは、平成15年(行ケ)第192号判決(乙26)において認定されているとおりであって、角川外来語辞典、平凡社大百科事典、広辞苑等のほか、新言海(乙27)においても、キューピーは、キューピー人形の特徴を持つキャラクター一般の名称として説明されている。
イ 請求人以外の「キューピー」の使用
現在では、我が国において、ローズ・オニールのキューピー作品に対する著作権の保護期間は消滅し、キューピー作品はパブリック・ドメインとなったため、多数の者がローズ・オニールの創作した「キューピー」のキャラクターと「キューピー」の名称を利用して、独自の商品を販売するようになり(乙28)、「キューピー」の商標を用いているのは、請求人1社ではない(乙29?乙45)。
したがって、今や「キューピー」は、ローズ・オニールの創作したキャラクターや人形だけでなく、これに類似する同様の形状を有するキャラクターや人形一般を指す称呼及び観念となった。前出の平成15年(行ケ)第192号判決(乙26)においては、上記の事実を考慮し、「キューピー」が請求人とのみ結びつくものではないと結論づけている。
(3)特許庁の判断
ア 本件商標権者の登録商標
本件商標権者は、既に「ローズオニールキューピー」の称呼及び観念を生じる商標について、先願の「キューピー」の称呼及び観念が生じ、指定商品ないし指定役務又は類似群コードを同じくする商標の存在にもかかわらず、登録を得ている(乙46)。
イ 第三者の登録商標
加えて、「キューピー」の称呼又は観念を生じる先願の登録商標が既に存在したにもかかわらず、第三者も、「キューピー」の称呼及び観念を含む登録商標であって、かつ、当該先願の登録商標と指定商品ないし指定役務又は類似群コードを同じくする商標登録を有している(乙47)。
ウ したがって、特許庁は、「ローズオニールキューピー」の称呼及び観念を生じる商標又は「○○キューピー」からなる商標と、「キューピー」の称呼及び観念を生じる商標が類似すると判断していない。
(4)取引の実情から生じる誤認混同のおそれ
ア 本件商標権者による本件商標の使用
本件商標権者、同人が代表取締役を務める株式会社ローズオニールキューピー・インターナショナル(以下「ローズオニールキューピー社」という。)及びその前身であるローズオニールキューピージャパンは、10年以上にわたり、「ローズオニールキューピー」の称呼及び観念を生ずる商標を人形等多数の商品に用い、直接又はライセンス商品として販売し(乙4?乙9)、また、自社インターネットサイト上に版権窓口を設けることにより(乙5)、本件指定役務について使用の準備を行っている。本件商標の使用においても、同様の取扱いが見込まれる。
イ 請求人の不使用
請求人の取扱商品は、マヨネーズ、ドレッシングその他の加工食品の分野あるいはこれに密接に関連する分野の商品であって、引用商標1ないし14をその指定役務に使用していない。また、請求人が、引用商標1ないし14の指定役務の分野に参入して、業として当該役務を提供する可能性を考慮するのは不自然である。実際、請求人の有価証券報告書(第99期)には、このような役務を業とする実績もなく計画すら明らかにされていない(乙48)。
したがって、請求人が今後、引用商標1ないし14を業としてその指定役務を提供する目的で使用するとも考えられない。
ウ 以上より、本件商標と引用商標1ないし14とは、取引の実情を考慮しても、取引者・需要者が出所の誤認混同をきたすおそれがない。
(5)請求人の主張の判例違背
請求人は、本件商標から「ローズオニールキューピー」のほかに「キューピー」の称呼及び観念を生じると主張する。
しかし、判例は、「複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較してその商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである。」と判示する(昭和38年12月5日第一小法廷判決「リラ寶塚事件」、平成5年9月10日第二小法廷判決「SEIKO EYE事件」、平成20年9月8日第二小法廷判決「つつみのおひなっこや事件」等)。
一連の標準文字からなる商標である本件商標は、その全体が同書、同大、等間隔にまとまりよく表されているものであるから、「キューピー」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひく構成とはいえないため、無理矢理「キューピー」部分を抽出することもできない。
したがって、本件商標を「ローズオニール」と「キューピー」に分離して、「キューピー」のみを引用商標1ないし14と対比する請求人の観察手法は、妥当でない。
(6)本件商標と引用商標1ないし14との対比
ア 本件商標の称呼及び観念
以上のように、本件商標は、欧文字から自然に「ローズオニールキューピー」の称呼が生ずる。また、上記称呼のうち「ローズオニール」は人名であると容易に理解することができ、自然に「ローズ・オニール・キューピー」、「ローズ・オニールのキューピー」の観念が生ずる。
イ 引用商標1ないし14の称呼及び観念
(ア)引用商標1は、一般にキューピー人形と呼ばれる立体の一種であるから、「キューピー」の称呼が生ずる。
(イ)引用商標3は、一般にキューピーと呼ばれる図形の一種であるから、「キューピー」の称呼及び観念が生ずる。
(ウ)引用商標2、4及び8ないし14は、「キユーピー」又は「QP」の文字から、「キューピー」の称呼及び観念が生ずる。
(エ)引用商標5は、「キユーピーとっておきレシピ」の文字をその構成に含むから、「キューピーとっておきレシピ」の称呼及び観念が生ずる。
(オ)引用商標6及び7は、一般にキューピーと呼ばれる図形の一種が並び合ってハート型の物体を所持している図形のみからなるが、これは、単に一般にキューピーと呼ばれる図形とは大きく相違しているため、たとえキューピーと呼ばれる図形を含むとしても、いかなる称呼も生じないか、単に「キューピー」という称呼及び観念が生ずる。
(7)まとめ
本件商標と引用商標1ないし14とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても著しく相違し、非類似である。さらに、本件商標が使用される状況及び態様並びに引用商標が使用されていないことにかんがみても、取引者・需要者において、出所の混同は生じない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と引用商標15及び16との類似性
本件商標と引用商標15及び16とは、上記1で述べたところと同様に、類似しない。
(2)引用商標15及び16の周知・著名性の範囲
前出の平成15年(行ケ)第192号判決(乙26)及び平成15年(行ケ)第103号判決(甲17)に示されるとおり、引用商標15及び16が広く認識されている取引分野は、マヨネーズ、ドレッシングその他の加工食品の分野又はこれと密接に関連する分野にとどまり、それ以外の分野において、引用商標15及び16が周知・著名性を有していると認めることはできない。
(3)引用商標15及び16の独創性
引用商標15及び16は、前述のとおり、「キューピー」の流行に便乗して商標登録されたものであり、独創性がない。また、キューピーが日本人に広く親しまれているものであり、必ずしも請求人の出所を表示するものといえない(乙26)。
以上により、「キューピー」は、類似のキャラクター一般を指す包括的な観念として用いられているのであり、引用商標15及び16の指定商品の範囲を超えて、請求人とのみ結びつくものではない。
(4)本件指定役務と引用商標15及び16の指定商品との関連性
本件商標は、第43類に属する役務を指定役務とするものであるのに対し、引用商標15及び16は、「調味料,香辛料」を指定商品とするものであるから、これらは、社会通念上、同一営業主により製造若しくは販売又は提供されるとは考えられない著しく異なる商品・役務であり、何らかの関連性を見いだすことは困難である。
(5)商品等の取引者及び需要者の共通性
本件指定役務の取引者・需要者は、宿泊施設の提供にあっては旅行者を、飲食物の提供にあっては一般需要者を、動物の宿泊施設の提供にあっては特に旅行者を、保育所における乳幼児の保育にあっては保育を行うことを希望する保護者を、高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。)にあっては高齢者及びその後見人・代理人等を、展示施設の貸与にあっては美術家等を、それぞれ想定することができる。
他方、引用商標15及び16の指定商品は「調味料,香辛料」であるから、主要な取引者及び需要者は、食品商社、食品工業の事業者、食品流通業者及びレストラン等食品関連産業の事業者並びにスーパーマーケット等で日用品を購入する消費者であると考えられる。
したがって、本件商標権者の提供する役務の取引者・需要者は、引用商標15及び16の指定商品のそれとは大きく異なり、共通性はない。
(6)本件商標権者の便乗利用でないこと
本件商標権者は、我が国におけるローズ・オニールの創作したキューピーの著作権者であった(乙50)。そして、本件商標権者は、ローズ・オニール遺産財団から、「ROSEO’NEILL」をあらゆる商品やサービスの商標として登録出願する権限を与えられている(乙51?乙53)。
また、上記1(4)アのとおり、本件商標権者、ローズオニールキューピー社及びその前身であるローズオニールキューピージャパンは、10年以上にわたり、「ローズオニールキューピー」の称呼及び観念を生ずる商標を付した多数の商品の販売(乙4?乙9)、出版物の制作(乙5、乙6)、人形等の展示(乙5、乙10、乙11)を業としてきた。
したがって、本件商標権者は、請求人の商標に便乗して本件商標を登録し又は利用したものではない。
(7)希釈化が生じないこと
前述のとおり、我が国において、キューピー及びキューピー人形のモチーフは、社会全般に広く親しまれており、様々な場面で利用されている。さらに、キューピーをモチーフとする請求人以外の商標も多数存在し、現実に使用されている。
したがって、本件商標権者による本件商標の使用をもって、引用商標15及び16が希釈化されることはない。
(8)請求人の主張に対する反論
ア 請求人は、「『キューピー』といえば、直ちにマヨネーズをはじめとする請求人の商品あるいは請求人を指称するほどに広く知られるに至ったものである。」と主張する。
しかし、上記2(2)のとおり、引用商標15及び16の著名性は、マヨネーズ、ドレッシングその他の加工食品の分野又はこれと密接に関連する分野にとどまる。
なお、請求人の挙げる企業ブランド知覚指数・消費者版(甲23?甲27)は、調査対象とされた企業の中から、調査会社の独自の調査によって得られた指数を企業ブランド知覚指数と称して順位付けしたものである。また、請求人の挙げる食の安心・安全ブランド調査(甲28?甲30)は、食品分野において安全性の観点からブランド力を評価するものとみられる。したがって、これらの結果をもって、引用商標15及び16が、マヨネーズ、ドレッシングその他の加工食品の分野又はこれと密接に関連する分野以外の商品・役務において周知・著名性を獲得したか否かの判断をすることはできない。
イ 請求人は、「商標審査基準」〔改訂第9版〕の商標法第4条第1項第15号適用に関する記述を挙げ、請求人の製造・販売に係る加工食品等と本件指定役務中の「飲食物の提供」とは、同一事業者によることも多く、飲食という用途も一致し、同一店舗で販売又は提供されることも多く、さらに需要者も一致するから、引用商標15及び16等が使用される商品と本件指定役務とは、非常に密接な関係を有している旨主張する。
(ア)しかし、上記基準にあるとおり、「指定商品若しくは指定役務との関係において出所の混同のおそれがないことが明白なもの」に対して当該基準は適用されないところ、本件商標も、「指定商品若しくは指定役務との関係において出所の混同のおそれがないことが明白なもの」と判断されたからこそ、登録を受けているものである。
(イ)本件指定役務と引用商標15及び16の指定商品は、上記2(4)のとおり関連性がない。また、商品「調味料,香辛料」と役務「飲食物の提供」は、類似商品・役務審査基準において類似の関係にない。さらに、商品・役務の類否判断につき、商標審査基準に照らしてみると、(a)食品を製造・販売する事業者と飲食物の提供を行う事業者が同一事業者によって行われる事実が存在するとしても、それが一般的であるという客観的状況はない、(b)引用商標15及び16の指定商品が飲食の主たる目的となることはなく、「飲食物の提供」とは用途が異なる、(c)引用商標15及び16の指定商品の主要な取引者・需要者は、社会通念上、食品商社、食品工業の事業者、食品流通業者及びレストラン等食品関連産業の事業者並びにスーパーマーケット等で日用品を購入する消費者であると解され、当該商品の販売場所については、特に企業間での流通過程では食品卸売業者の仲介により仕入れられることが多く、また、消費者は小売店で購入する一方、「飲食物の提供」は、役務の提供場所は飲食店の店舗であり、需要者の範囲は一般需要者であるから、引用商標15及び16の指定商品と「飲食物の提供」とは全く共通点のない非類似の商品と役務である以上、このような商品と役務との間に密接な関連性を見いだすことはできない。
(ウ)上記請求人主張の「商標審査基準」の記述は、周知・著名商標を含む場合は、取引上はその部分が周知・著名性の故に要部としてないしは要部的に機能するときがあることに着目して定められたものである。「キューピー」は、本来的には、上記1(2)アのとおり、ローズ・オニールの創作した著作物及びキャラクターを指し示すものとして広く一般に知られるところであるから、引用商標15及び16は、創造商標であるとはいえず、独創性がない。そのため、請求人の周知・著名商標として「キューピー」の語が機能する可能性があるのは、引用商標15及び16の指定商品に結びついたときに限られる。
したがって、引用商標15及び16の指定商品に全く関連性のない指定役務について、商標に「キューピー」の語が含まれたとしても、これはローズ・オニールの創作した著作物及びキャラクターを指し示す語が含まれていることを意味するものであって、請求人の周知・著名商標を含むものではない。
(エ)よって、本件商標は、引用商標15及び16を含むものでないため、「他人の著名な商標と他の文字を結合した商標」に該当しない。
ウ 請求人は、飲食物の製造・販売等を行う事業者は、同時に飲食物の提供を行うことが多い実情にある旨主張し、いわゆる広義の混同が生ずると主張する。
しかし、飲食物の製造・販売等とレストラン等の運営を行う事業者が存在する事実が、飲食物の製造・販売する事業者と飲食物の提供を行う事業者が同一事業者によって多角経営されることが多い、であるとか、一般的に多角経営として飲食物の提供を行う可能性がある、ということまで意味するものではない。また、請求人は、業として飲食物の提供を行っていない(乙48)。
したがって、本件商標と引用商標15及び16とは、いわゆる広義の混同が生ずるおそれはない。
エ 請求人は、請求人の製造に係る離乳食が飲食店のメニューに記載されることがある旨、請求人の製造に係るマヨネーズ、ドレッシング等の加工食品が引用商標15及び16が表示された状態で配置されることがある旨、一部の小売店には飲食コーナーがある旨を主張し、いわゆる広義の混同が生ずると主張する。
しかし、単に上記事実が存在することをもって、引用商標15及び16が需要者の目に触れる機会が多いとはいえない。むしろ、特定の飲食店に限り請求人の製造に係る離乳食がメニューに掲載されている場合や、一部の大学の学生食堂において調味料が配置される場合、という特殊な事例を除いては、飲食店内で引用商標15及び16が需要者の目に触れる機会がない事実を如実に物語っている。
したがって、飲食店内で引用商標15及び16が需要者の目に触れる機会が多いとはいえない。
また、飲食物の提供の需要者が飲食店内で引用商標15及び16を目にしたとしても、通常、飲食物の提供にあたっては、様々の出所の「調味料」及び「香辛料」等が使用されることを想定することができるから、その需要者は、「調味料」及び「香辛料」等の加工食品の出所と「飲食物の提供」の出所とが一般に一致するものとは認識しない。
したがって、飲食店内において引用商標15及び16が需要者の目に触れたとしても、いわゆる広義の混同が生ずることはない。
オ 請求人は、請求人が多種多様な業務用の商品を製造販売していることは飲食店の関係者に広く知られている旨主張する。
飲食物の提供の需要者は、一般需要者である。他方、「業務用の食品関連商品」の需要者は、食品関連産業を業とする事業者であると考えられる。
したがって、「飲食物の提供」と「業務用の食品関連商品」とでは、取引者・需要者が著しく相違する。まして、食品関連産業を業とする者は、業務上における取引を行う者であるから、一般に食品について鑑識眼が高いはずであり、このような飲食店関係者が役務の出所の誤認混同を生じるとはいえない。
(9)まとめ
以上に述べたとおり、本件商標がそのいずれの指定役務について使用されたとしても、その需要者は、請求人又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係がある者の業務に係るものであるとは誤認せず、出所の混同のおそれを生じない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 むすび
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当しないから、同法第46条第1項の無効理由は存在しない。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標
ア 本件商標は、前記第1のとおり、「ローズオニールキューピー」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、該文字は、同一の書体をもって、同一の大きさで等間隔に外観上まとまりよく一体的に表されているものである。また、本件商標から生ずると認められる「ローズオニールキューピー」の称呼は、やや冗長ではあるものの、これをいずれかの部分で区切って称呼しなければならないほど冗長といえるものではなく、よどみなく称呼し得る程度のものといえる。
そうすると、本件商標は、外観及び称呼の点からみれば、これを「ローズオニール」の文字部分と「キューピー」の文字部分とに分離して、「キューピー」の文字部分のみを抽出して、観察しなければならない格別の理由は見いだせない。
イ 次に、本件商標を観念の点からみると、甲第16号証(平成20年(行ケ)第10139号判決(平成20年12月17日判決言渡)26頁)によれば、「米国人ローズ・オニールは,1909年,『レディース・ホーム・ジャーナル』誌のクリスマス特集号に『クリスマスでのキューピーたちの戯れ』と題した詩及びキューピッドをモチーフにした裸体の幼児のイラストを発表した。このイラストに描かれたキャラクターは,『キューピー』と名付けられ,その際立った特徴としては,頭髪と思しきものが主として頭頂部のみにあり,しかもその部分が尖っており,目がパッチリと大きく,背中には天使の翼と思しき一対の小さな羽が生えたふくよかな裸体の姿をしたものであった。その後,ローズ・オニールは,雑誌において『キューピーシリーズ』の連載を始め,1913年には,『キューピー』のイラストを立体化した人形がドイツで製作され,アメリカにおいて発売され大人気を博した。『キューピー人形』の人気は世界的に波及し,我が国においても,昭和年代に入ってから,セルロイド製の『キューピー人形』が製造され広く流布するなどした。その後,上記の人気を受け,『キューピー』又は『キューピー人形』は,原告(審決注:請求人)をはじめとする多くの企業が,企業自体やその商品のイメージキャラクターとして宣伝広告に使用したことにより,我が国における『キューピー』又は『キューピー人形』の認知度は更に高まった。・・上記のとおり,『キューピー』のキャラクターは,我が国において,『キューピー人形』に人気があったことや商品等の宣伝広告に利用されたことなどから,頭頂部が尖った目のパッチリと大きい裸体の幼児のキャラクターとして広く認知されていたものであり,平成10年11月11日株式会社岩波書店発行の『広辞苑第5版』には『キューピー【Kewpie】オニール(Rose O’Neill 1874-1944)のキューピッドの絵を模したセルロイド製のおもちゃ。頭の先がとがり,目の大きい裸体の人形。1910年代にアメリカで発売。商標名。』(683頁)と記載されていた。以上によると,上記のような『キューピー』のキャラクターは,本件商標登録出願時(平成16年11月22日)において,我が国で周知のものとなっていたというべきである。」とし、「キューピー」及び「キューピー人形」は、「ROSE O’NEILL/ローズオニール」の創作活動により生まれ、その後、特に、キューピー人形の人気は、世界的に広がったこと、広辞苑にも、「ROSE O’NEILL/ローズオニール」と「キューピー」とを関連づけた記載があることを認定している。
さらに、本件商標権者は、ローズオニールキューピー社の代表取締役として、上記判決の言い渡し以降、例えば、「誕生100年 ローズオニール/キューピー展」を、松屋銀座店(東京:2009年(平成21年)12月10日から同年同月24日)、松坂屋本店(名古屋市:2010年(平成22年)3月)、宇都宮美術館(宇都宮市:2010年(平成22年)8月)、美術館「えき」KYOTO(京都市:2010年(平成22年)11月)、みやざきアートセンター(宮崎市:2011年(平成23年)4月)、大丸札幌店(札幌市:2011年(平成23年)5月)等で、それぞれ開催する(乙5、乙10)など、ローズ・オニールが「キューピー」の創作者であることについての顕彰活動を続けたことも認められる。
そうすると、我が国において、「キューピー」及び「キューピー人形」が「ROSE O’NEILL/ローズオニール」の創作に係るものであることについて、極めて広く認識されているものではないとしても、その事実を知り得た一般の需要者も少なくないものと推認することができるのみならず、前記認定のとおり、本件商標の構成は、外観上、「ローズオニール」の文字部分と「キューピー」の文字部分とが不可分一体的に結合されていること、本件商標から生ずる「ローズオニールキューピー」の称呼がよどみなく称呼し得る程度のものといえること、「我が国においては,多数の企業が『キューピー』のキャラクターを宣伝広告に使用してきた事実に照らすと,我が国において,『キューピー』が相当程度普遍的ないしは一般的なキャラクターとして認知されていた事実を否定することは困難である」(甲16の30頁)から、様々な態様のキューピーが存在する、あるいは、「キューピー」の語と他の語を結語した商標等が多数存在すると優に推認することができる(この点については、乙28、乙29?乙45、乙47からも首肯し得る。)ことを併せ考慮すれば、本件商標は、その構成全体をもって、「ローズオニールのキューピー」なる観念が想起される場合が多いというのが相当である。
そうとすれば、本件商標は、観念の点からみても、これを「ローズオニール」の文字部分と「キューピー」の文字部分とに分離して、「キューピー」の文字部分のみを抽出して、観念しなければならない理由は見いだせない。
ウ 以上によれば、本件商標は、その構成文字に相応して、「ローズオニールキューピー」の称呼及び「ローズオニールのキューピー」の観念を生ずるというべきであって、単に「キューピー」のみの称呼及び観念は生じないというべきである。
エ 上記に関し、請求人は、本件商標中の「ローズオニール」は、本件指定役務との関連において広く知られたものではなく、また、本件指定役務の取引者・需要者の間で、キューピーのイラストの原作者であるということも広く知られていないから、本件商標の前半部分「ローズオニール」と後半部分「キューピー」とでは軽重の差があるといわざるを得ないものであり、かつ、本件商標全体の称呼が11音と冗長であることを考え合わせると、本件商標に接する取引者・需要者は、本件商標中の「キューピー」の部分に注目して取引を行うのが自然である旨主張する。
しかしながら、前記認定のとおり、本件商標は、その外観、称呼の点からみて、その構成全体をもって一体不可分の商標を表したと認識される商標であること、我が国において、様々な態様の「キューピー」や「キューピー」の語と他の語を結語した商標等が多数存在すること等が優に推認され、本件商標は、観念上もその構成全体をもって、「ローズオニールのキューピー」との観念が無理なく生ずるものであることなどを総合勘案すれば、「ローズオニール」が、キューピーのイラストの原作者であることの周知の程度に関わりなく、本件商標は、その構成全体をもって、一体不可分の商標を表したと認識されるものといえるから、その構成中の「キューピー」の文字部分のみに強く印象づけられるものではない。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して、「ローズオニールキューピー」の一連の称呼が生ずるものであって、「ローズオニールのキューピー」の観念を生ずるというべきであるから、上記請求人の主張は理由がない。
(2)引用商標1ないし14
ア 引用商標1は、別掲(1)のとおり、「頭の先にとがった頭髪があり、背中には小さな翼のある目の大きい裸体の人形」といった特徴を備えた「キューピー人形」の立体的形状よりなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。
イ 引用商標2は、別掲(2)のとおり、「キューピー」の文字を横書きしてなるものであるから、これより、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。
ウ 引用商標3は、別掲(3)のとおり、「頭の先にとがった頭髪があり、背中には小さな翼のある目の大きい裸体の人形」といった特徴を備えた「キューピー人形」の図形よりなるものであるから、これより、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。
エ 引用商標4は、別掲(4)のとおり、「頭の先にとがった頭髪があり、背中には小さな翼のある目の大きい裸体の人形」といった特徴を備えた「キューピー人形」の図形を中央に大きく表し、その上部に「キューピー」の文字を、また、下部に「KEWPIE」の文字を、それぞれ横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。
オ 引用商標5は、別掲(5)のとおり、「頭の先にとがった頭髪があり、背中には小さな翼のある目の大きい裸体の人形」といった特徴を備えた「キューピー人形」の顔と手の部分を描き、かつ、該人形の右手に、「キューピー」の文字と「とっておきレシピ」の文字を二段に横書きした帯状の掲示物が握られている様を表した図形よりなるものであるから、これより、「キューピートッテオキレシピ」の称呼を生ずるほか、「キューピー人形」の図形部分又は「キューピー」の文字部分より、単に「キューピー」の称呼及び観念をも生ずるものである。
カ 引用商標6及び7は、別掲(6)のとおり、赤色の線で描かれた「頭の先にとがった頭髪があり、背中には小さな翼のある目の大きい裸体の人形」といった特徴を備えた2つの「キューピー人形」が、互いに赤色で塗られた1つのハート形を持っている左右対称の図形よりなるものであるから、これよりは、特定の称呼及び観念を生ずるものとはいえない。
キ 引用商標8は、別掲(7)のとおり、「頭の先にとがった頭髪があり、背中には小さな翼のある目の大きい裸体の人形」といった特徴を備えた「キューピー人形」の図形を中央に大きく表し、その上部に「QP」の文字を横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。
ク 引用商標9は、「キューピー」の文字を標準文字で書してなるものであるから、これより、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。
ケ 引用商標10ないし12は、別掲(8)のとおり、「頭の先にとがった頭髪があり、背中には小さな翼のある目の大きい裸体の人形」といった特徴を備えた「キューピー人形」の図形を中央に大きく表し、その上部に「キューピー」の文字を横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。
コ 引用商標13及び14は、別掲(9)のとおり、「頭の先にとがった頭髪があり、背中には小さな翼のある目の大きい裸体の人形」といった特徴を備えた「キューピー人形」の図形を中央に大きく表し、その上部に「KEWPIE」の文字を、また、下部に「キューピー」の文字を、それぞれ横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。
(3)本件商標と引用商標1ないし14との対比
ア 外観
本件商標と引用商標1ないし14は、それぞれ上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるものであるから、外観上明らかに区別し得る差異を有するものであり、これらを時と所を異にして離隔的に観察した場合においても、互いに紛れるおそれはない。
イ 称呼
本件商標から生ずる「ローズオニールキューピー」の称呼と引用商標1ないし5及び引用商標8ないし14から生ずる「キューピー」の称呼又は引用商標5から生ずる「キューピートッテオキレシピ」の称呼は、構成する音の数・配列等において大きく相違するものであるから、それぞれの称呼を全体として称呼した場合においても、その語調、語感が著しく相違したものとなり、相紛れるおそれはない。
ウ 観念
本件商標は、「ローズオニールのキューピー」の観念を生ずるものである一方、引用商標1ないし5及び引用商標8ないし14は、「キューピー」の観念を生じるものであるから、両商標は、観念上相紛れるおそれがあるとまではいえない。また、引用商標6及び7は、特定の観念を生じないから、本件商標と比較できない。
エ したがって、本件商標と引用商標1ないし14は、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
(4)以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものと認める。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標15及び16の著名性
ア 甲第20号証ないし甲第34号証及び請求の理由によれば、請求人は、1919年(大正8年)に、食品工業株式会社として設立され、各種食料品の製造販売を開始し、1925年(大正14年)に、マヨネーズの販売を開始した。請求人は、マヨネーズの発売開始以来現在に至るまで、一貫して「キューピー人形」の図形をマヨネーズをはじめとする請求人の業務に係る商品の広告等に使用しており、昭和32年には商号を「キューピー株式会社」に改めた(甲20)。
「酒類食品産業の生産・販売シェア」の平成17年度版(甲21)及び同平成19年度版(甲22)によれば、請求人の業務に係る商品であるマヨネーズ、液状ドレッシング及びソース類缶詰の平成11年度から平成16年度の販売シェアは業界1位であったこと、また、パスタソースの平成15年度及び平成16年度の販売シェアは業界2位であり、スープ類の同時期の販売シェアも業界2位であったこと、さらに、ベビーフードの平成11年度から平成18年度の販売シェアは業界2位であったこと、などを認めることができ、また、請求人は、商品分野を限定しない企業全般を対象とした「企業ブランド調査」(2003年?2007年にかけて発行された新聞に掲載されたもの:甲23?甲27)、「食の安全・安心ブランド調査」(2004年?2006年にかけて発行された新聞に掲載されたもの:甲28?甲30)において高い評価を得たこと、などを認めることができる。
イ 上記アで認定した事実によれば、引用商標15及び16は、請求人の業務に係る商品「マヨネーズ、液状ドレッシング、ソース類缶詰、パスタソース」等の調味料を中心とする加工食品を表示するものとして、当該商品分野あるいはこれと密接に関連する分野においては、本件商標の登録出願日(平成22年8月9日)前には既に、我が国の需要者の間に広く認識されていたものであって、その著名性は、本件商標の登録査定日(平成23年1月12日)にも継続していたものと認めることができる。
(2)本件商標と引用商標15及び16との類似性
引用商標15は、別掲(3)のとおり、「裸体で頭と目が大きく、頭の先にとがった頭髪があり、背中には小さな翼のある」といった特徴を備えた「キューピー人形」の図形よりなるものである。また、引用商標16は、別掲(2)のとおり、「キューピー」の文字を横書きしてなるものである。
したがって、引用商標15及び16は、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。
しかしながら、上記1(1)認定のとおり、本件商標は、その構成全体をもって、一体不可分の商標を表したと認識されるものであるから、その構成中の「キューピー」の文字部分のみが独立して自他役務の識別機能を発揮するものではない。
してみると、本件商標は、引用商標15及び16とは、本件商標と引用商標1ないし14との類否判断の理由と同様の理由により、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
(3)出所の混同
上記(1)のとおり、引用商標15及び16は、請求人の業務に係る商品「マヨネーズ、液状ドレッシング、ソース類缶詰、パスタソース」等の調味料を中心とする加工食品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、マヨネーズ等の調味料を中心とする加工食品の分野あるいはこれと密接に関連する分野の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。
しかしながら、上記(2)認定のとおり、本件商標は、引用商標15及び16とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
そうすると、本件商標に接する取引者及び需要者は、引用商標15及び16を想起又は連想することはないというべきであり、したがって、本件商標は、これをその指定役務について使用しても、請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
(4)商標法第4条第1項第15号に関する請求人の主張について
ア 請求人は、「キューピー」は、食品分野の枠を超えた著名性を獲得している旨主張する。
しかし、上記(1)認定のとおり、引用商標15及び16が著名性を獲得していると認めることができる範囲は、マヨネーズ等の調味料を中心とする加工食品の分野あるいはこれと密接に関連する分野に限られるとみるのが相当であって、「我が国においては,多数の企業が『キューピー』のキャラクターを宣伝広告に使用してきた事実に照らすと,我が国において,『キューピー』が相当程度普遍的ないしは一般的なキャラクターとして認知されていた事実を否定することは困難である」(甲16の30頁)ことからすると、引用商標15及び16の独創性は決して高いものではないこと、引用商標15及び16がマヨネーズ等の調味料を中心とする加工食品以外の分野の商品及び役務について使用され、本件商標の登録出願日前より、我が国の需要者の間に広く認識されていた事実を認めるに足りる証拠の提出はないことを併せ考慮すれば、上記以外の分野においては、著名性を獲得しているものと認めることはできない。
したがって、上記請求人の主張は理由がない。
イ 請求人は、引用商標15及び16の著名性の根拠として、防護標章の登録が認められていること、引用商標15及びこれと「KEWPIE」の文字からなる商標は、日本の著名商標として紹介されていることを挙げる。
しかし、請求人が、引用商標15及び16について、商品及び役務の区分第42類の防護標章登録を得ているとしても、前記認定のとおり、本件商標は、引用商標15及び16とは、非類似の商標であるから、請求人が上記防護標章登録を得ている事実をもって、本件商標についての混同の問題を論ずることは妥当ではない。また、引用商標15及びこれと「KEWPIE」の文字からなる商標が日本の著名商標として紹介されている事実があるとしても、上記と同様、これらの商標と本件商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても非類似の商標である。
したがって、上記請求人の主張はいずれも理由がない。
ウ 請求人は、本件商標が他人の著名な商標と他の文字を結合した商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当するとして、商標審査基準(改訂第9版)を挙げる。
しかしながら、「キューピー」の語が「キューピッドの絵を模したセルロイド製のおもちゃ」(広辞苑)を意味する一般的な語として広く認識されている実情からすれば、本件商標中の「キューピー」の文字部分は、特定の企業と結びつくものではなく、本件商標をその指定役務について使用しても、請求人の業務に係る商品との間に出所の混同を生ずるおそれはないとみるべきであるから、本件商標については、上記商標審査基準の原則論は妥当しないというべきである。
エ 請求人は、多くの食品製造販売業者が「飲食物の提供」の業務をも行っている実情にあること、「飲食物の提供」において、請求人の業務に係るベビーフードがそのまま提供されたり、マヨネーズ等の調味料が顧客の利用のために店舗内に置かれることが多いことからすると、本件商標をその指定役務中の「飲食物の提供」について使用した場合は、該役務が請求人又はこれと何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、出所の混同を生ずるおそれが高い旨主張する。
しかし、甲第38号証ないし甲第43号証によれば、食品製造販売業者が「飲食物の提供」の業務をも行っている事実がうかがえるものの、我が国において、極めて多数存在する食品製造販売業者のうち、5、6社程度の企業が「飲食物の提供」の業務をも行っていることをもって、食品製造販売業者が「飲食物の提供」の業務をも行っているのが商取引社会における一般的実情とまでいうことはできない。そして、請求人が「飲食物の提供」の業務をも行っている事実を裏付ける証拠の提出はない。また、「飲食物の提供」の場において、請求人の業務に係る商品が料理の原材料に使用されたり、あるいは、引用商標15又は16が表示された調味料等が直接顧客に使用されるなどの事情が存在するとしても、上記認定のとおり、本件商標は、その構成全体をもって、一体不可分の商標を表したと認識されるものであるから、その構成中の「キューピー」の文字部分のみが独立して自他役務の識別機能を発揮するものではないこと、及び、「我が国においては,多数の企業が『キューピー』のキャラクターを宣伝広告に使用してきた事実に照らすと,我が国において,『キューピー』が相当程度普遍的ないしは一般的なキャラクターとして認知されていた事実を否定することは困難である」(甲16の30頁)ことからすれば、「キューピー」の文字が含まれている本件商標を「飲食物の提供」について使用したとしても、そのことのみをもって、当該商標に接する需要者が直ちに、引用商標15及び16又は請求人を想起又は連想し、当該役務が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると誤信されるおそれがあるということはできない。その他、本件商標がその指定役務中の「飲食物の提供」に使用された場合について、該役務が請求人又請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、出所の混同を生ずるおそれがある旨の請求人の主張は、上記と同様の理由により、いずれも理由がない。
(5)以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しないものと認める。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。

平成24年10月 3日

審判長 特許庁審判官 寺光 幸子
特許庁審判官 酒井 福造
特許庁審判官 田中 敬規

別掲
(1)引用商標1(登録第4156315号)



(2)引用商標2及び16(登録第4293493号及び同第832283号)



(3)引用商標3及び15(登録第4293494号及び同第595694号)



(4)引用商標4(登録第4367659号)



(5)引用商標5(登録第4473190号)



(6)引用商標6及び7(登録第477234号及び同第4950440号)


(色彩については原本参照)

(7)引用商標8(登録第5014002号)



(8)引用商標10ないし12(登録第5037204号、同第5073281号及び同第5080868号)



(9)引用商標13及び14(登録第5297820号及び同第5334693号)


審理終結日 2013-07-04 
結審通知日 2013-07-09 
審決日 2013-08-22 
出願番号 商願2010-65960(T2010-65960) 
審決分類 T 1 12・ 263- Z (X43)
T 1 12・ 262- Z (X43)
最終処分 成立 
前審関与審査官 箕輪 秀人中村 拓哉 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 手塚 義明
原田 信彦
登録日 2011-03-11 
登録番号 商標登録第5396640号(T5396640) 
商標の称呼 ローズオニールキューピー、ローズオニール、キューピー 
代理人 勝沼 宏仁 
代理人 中川 拓 
代理人 柏 延之 
代理人 宇梶 暁貴 
代理人 井奈波 朋子 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 黒瀬 雅志 
代理人 高田 泰彦 
代理人 山本 隆司 
代理人 宮城 和浩 
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