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審決分類 |
審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y43 審判 一部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y43 |
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管理番号 | 1280122 |
審判番号 | 無効2012-890008 |
総通号数 | 167 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2013-11-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2012-01-31 |
確定日 | 2013-09-30 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5022219号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成24年10月4日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決の一部取消の判決(平成24年(行ケ)第10392号平成25年3月21日判決言渡)があったので、審決が取り消された部分の指定役務についてさらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5022219号の指定役務中、第43類「飲食物の提供」についての登録を無効とする。 平成24年10月4日付け審決のうち、「審判費用は、請求人の負担とする。」との部分を取り消す。 審判費用は、3分の1を請求人の負担とし、3分の2を被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5022219号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、「ROSEO’NEILLKEWPIE」の欧文字と「ローズオニールキューピー」の片仮名を上下二段に配した構成からなり、平成17年10月25日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,タオルの貸与」を指定役務として、同18年12月14日に登録査定、同19年2月2日に設定登録されたものである。 そして、本件審判の請求により、指定役務のうち、「飲食物の提供」以外の指定役務について、その請求は成り立たない旨の審決が同25年4月4日に一部確定し、その登録が同年7月4日にされたものである。 第2 手続の経緯 本件商標について、平成24年1月31日付けで、「本件商標の登録を無効とする。」旨の無効審判の請求があったところ、同24年10月4日付けで、「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決(以下「第一審決」という。)がされた。 この第一審決に対し、請求人は、取り消しを求めて知的財産高等裁判所に出訴し、これが平成24年(行ケ)第10392号事件として審理された結果、平成25年3月21日に「1 特許庁が無効2012-890008号事件について平成24年10月4日にした審決のうち、指定役務『飲食物の提供』に関する部分を取り消す。2 原告のその余の請求を棄却する。」との判決が言い渡された。 その結果、第一審決で商標登録を維持するとされた指定役務のうち、「飲食物の提供」に関する部分については審決が取り消され、それ以外の指定役務に関する部分については上記判決が確定した。 第3 請求人の主張 請求人は、「本件商標は、その指定役務中、『飲食物の提供』についての登録を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第134号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定役務中、「飲食物の提供」について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とされるべきである。 2 商標法第4条第1項第11号について (1)請求人の引用する登録商標 ア 登録第4156315号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:別掲のとおり(立体商標) 登録出願日:平成9年4月1日 設定登録日:平成10年6月12日 更新登録日:平成20年6月24日 指定役務 :第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,会議室の貸与,展示施設の貸与,タオルの貸与」を含む第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 イ 登録第4293493号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:別掲のとおり 登録出願日:平成9年11月27日 設定登録日:平成11年7月9日 更新登録日:平成21年2月17日 指定役務 :第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,料理情報の提供,家畜の診療,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,会議室の貸与,展示施設の貸与,タオルの貸与」を含む第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 ウ 登録第4293494号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成:別掲のとおり 登録出願日:平成9年11月27日 設定登録日:平成11年7月9日 更新登録日:平成21年2月17日 指定役務 :第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,料理情報の提供,家畜の診療,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,会議室の貸与,展示施設の貸与,タオルの貸与」を含む第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 エ 登録第4367659号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の構成:別掲のとおり 登録出願日:平成11年1月22日 設定登録日:平成12年3月10日 更新登録日:平成22年1月26日 指定役務 :第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,料理情報の提供,家畜の診療,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,会議室の貸与,展示施設の貸与,タオルの貸与」を含む第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 オ 登録第4473190号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の構成:別掲のとおり 登録出願日:成12年3月9日 設定登録日:平成13年5月11日 更新登録日:平成23年5月17日 指定役務 :第42類「コンピュータ通信ネットワーク・ファクシミリ又は電話を利用した料理情報の提供,その他の料理情報の提供」 カ 登録第4772234号商標(以下「引用商標6」という。) 商標の構成:別掲のとおり 登録出願日:平成15年8月4日 設定登録日:平成16年5月21日 指定役務 :第44類「動物の飼育,動物の治療」を含む、第35類、第37類、第40類、第44類及び第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 キ 登録第4950440号商標(以下「引用商標7」という。) 商標の構成:別掲のとおり 登録出願日:平成17年2月10日 設定登録日:平成18年5月12日 指定役務 :第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,料理情報の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,老人又は障害者の介護又は養護,老人・障害者の介護又は養護に関する相談又は指導,老人・障害者の介護に関する情報の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,タオルの貸与」を含む、第36類、第42類及び第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 (2)本件商標と引用商標1ないし7とが類似する理由 ア 本件商標の称呼及び観念について (ア)本件商標は、「ROSEO’NEILLKEWPIE」の文字と「ローズオニールキューピー」の文字を二段に横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して、「ローズオニールキューピー」の称呼が生じるものである。 (イ)本件商標中の「ROSEO’NEILL」及び「ローズオニール」は、我が国でも周知になったキューピー人形のもととなったキューピーのイラストを20世紀初頭に発表した米国の作家の名称である。そして、世界中で、キューピーのイラストを立体化したキューピー人形が製作されて人気を博し、我が国では、1930年代ころにセルロイド製のキューピー人形が製造され広く流布した事実がある。当時、複数の企業が「キューピー」及び「キューピー人形」を商標登録した。請求人は、「キューピー」及び「キューピー人形」を商標としてマヨネーズ等の商品に使用し盛大に宣伝広告した結果、これらの商標は全国的に著名となった。その後、請求人は、商号をキューピー株式会社とした。すなわち、本件商標の登録査定時はもとより登録出願時においても、「キューピー」の語は、その人形のキャラクターを指すものとして、「キューピー人形」は、頭頂部が尖った目のパッチリと大きい裸体の幼児の人形として、我が国において広く認識されるに至っている(平成20年(行ケ)第10139号判決:甲9)。 一方、本件商標中の「ROSEO’NEILL」及び「ローズオニール」は、上記のとおり、キューピーのイラストを20世紀初頭に発表した米国の作家の名称であるが、この名前は、本件商標の指定役務(以下「本件指定役務」という。)との関連において広く知られたものではなく、また、本件指定役務の取引者・需要者の間で、キューピーのイラストの原作者であるということも広く知られていない。 そうすると、本件商標の前半部分「ROSEO’NEILL」及び「ローズオニール」と後半部分「KEWPIE」及び「キューピー」とでは軽重の差があるといわざるを得ないものであり、かつ、本件商標全体の称呼が11音と冗長なものであることを考え合わせると、本件商標に接する取引者・需要者は、本件商標中の「KEWPIE」及び「キューピー」の部分に注目して取引を行うのが自然である。 (ウ)さらに、本件指定役務中の「飲食物の提供」は、請求人が著名商標「キューピー」及び「キューピー」人形図形商標の下に販売等を行っている商品と密接な関連を有している。すなわち、「飲食物の提供」の場においては、顧客に加工食品を提供し、また、飲食物を調理する際には調味料を使用することがほとんどであり、さらに、後述のようにレストランのテーブルに調味料が置かれることも多い。 請求人は、マヨネーズやドレッシング等の調味料を含む加工食品を製造・販売している会社として広く知られており、その商品のほとんどに引用商標2及び3と同一態様の商標を使用している。なお、引用商標2及び3がマヨネーズ、ドレッシングその他の加工食品の分野、あるいはこれと密接に関連する分野で、請求人を示すものとして広く知られている点は、平成15年(行ケ)第103号の判決(甲10)においても認定されている。 また、食品の製造販売を行っている会社が、レストラン等を経営して飲食物の提供なども同時に行っている例が実際の取引社会には多く見られることは、後述のとおりである。 これらの取引の実情を考慮すると、本件商標が「飲食物の提供」に使用された場合には、本件商標中の「KEWPIE」及び「キューピー」の部分が要部として機能し、本件商標から「キューピー」の略称及び観念が生じる可能性は一層高いといわざるを得ない。 イ 引用商標1ないし7の称呼及び観念について (ア)引用商標1は、頭頂部が尖り、目がパッチリと大きいやや写実的な裸体の幼児の人形を模した図形からなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。 (イ)引用商標2は、「キューピー」の文字を横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。 (ウ)引用商標3は、頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形からなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。 (エ)引用商標4は、上段に「キューピー」の文字を横書きし、中段に頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形を有し、下段には「KEWPIE」の文字を横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。 (オ)引用商標5は、上部に頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい幼児の顔の図形を有し、その下の帯状図形内に、「キューピー」の文字と「とっておきレシピ」の文字を二段に横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。 (カ)引用商標6及び7は、頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形を左右2個配し、それぞれの人形がハート図形を片手で支えている赤色の図形からなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。 (キ)以上のように、引用商標1ないし7のいずれからも、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。 (3)まとめ 以上のとおり、本件商標からは、「ローズオニールキューピー」のほかに、「キューピー」の称呼が生じ、引用商標1ないし7のいずれからも、「キューピー」の称呼が生じる。また、本件商標からは、「ローズオニール(という作家)、キューピー」の観念のほかに、「キューピー」の観念が生じ、引用商標1ないし7のいずれからも「キューピー」の観念が生じる。 してみると、本件商標と引用商標1ないし7は、称呼及び観念を同一とする類似の商標である。 さらに、本件商標は、引用商標1ないし7の指定役務と同一又は類似の役務について使用するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 3 商標法第4条第1項第15号について (1)請求人の引用する登録商標 ア 登録第595694号商標(以下「引用商標8」という。) 商標の構成:別掲のとおり 登録出願日:昭和35年5月31日 設定登録日:昭和37年8月24日 更新登録日:昭和48年1月12日、昭和57年10月26日、平成5年1月28日、平成14年5月21日、平成24年6月26日 指定商品 :第30類「調味料,香辛料」(平成15年7月23日書換登録) イ 登録第832283号商標(以下「引用商標9」という。) 商標の構成:別掲のとおり 登録出願日:昭和41年8月11日 設定登録日:昭和44年9月24日 更新登録日:昭和55年6月27日、平成元年11月21日、平成11年10月19日、平成21年4月21日 指定商品 :第30類「調味料,香辛料」(平成21年6月17日書換登録) (2)本件商標と引用商標8及び9との類似について 本件商標は、前記2(2)アのとおり、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。 他方、引用商標8は、頭頂部と思しき部分が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形(いわゆる「キューピー人形」)を模した図形からなるものであるから、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。また、引用商標9は、「キューピー」の文字を横書きしてなるものであるから、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。 したがって、本件商標と引用商標8及び9とは、「キューピー」の同一の称呼及び観念を有する類似の商標である。 (3)引用商標8及び9の著名性について ア 請求人は、大正8年に設立された会社であり、大正14年に我が国初の国産マヨネーズの製造を開始し、これに「キューピー」の文字及び「キューピー人形」からなる商標を付して発売してから今日に至るまで、商標の書体、態様に多少の変更を加えつつも、一貫してこの商標を使用し続けてきた(甲13)。そして、戦後の国民の食生活の変化に伴い、洋食に合うマヨネーズが爆発的に売れるようになったことにより、「キューピー」及び「キューピー人形」の商標は、日本全国に知れ渡るに至ったものであり、請求人は、「キューピー」及び「キューピー人形」の商標を付したマヨネーズが全国的なシェアを持つに至ったことから、昭和32年に社名を「キューピー株式会社」に変更し、以来、今日までその社名を使用し続けてきた。請求人の多種にわたる商品が全国的規模で売れたことから、本件商標の登録出願前には、「キューピー」といえば、直ちにマヨネーズを始めとする請求人の商品あるいは請求人を指称するほどに広く知られるに至ったものである。請求人の取扱商品は多種にわたり、そのうちの、例えば、ソース類缶詰、マヨネーズ類、液状ドレッシング類、レトルトパスタソース類、レトルトスープ類、ベビーフードの日本国内における請求人の年度別シェア及び順位は、甲第14号証及び甲第15号証に示すとおり、いずれも高いものである。また、「キューピー」は、食品関連商品についてのみならず、商品分野を限定しない企業全般を対象とした第三者によるアンケート調査において、第1位(4回)、第2位(1回)、第3位(2回)、第4位(1回)と非常に高い評価結果を得ており(甲16ないし23)、このことは、上記事実を裏付けるものでもある。 イ 食品分野において、引用商標8及び9等の請求人のキューピー関連商標が著名であることに加えて、請求人の一社提供番組である「キユーピー3分クッキング」は、昭和37年12月に放送が開始されてから約50年にわたり日曜日を除くほぼ毎日、日本全国で放送され続けており(日本一の長寿テレビ料理番組としてギネスブックに掲載)、その平均視聴率は、4ないし6%であって、そこでは、引用商標8及び9並びにキューピー人形等が使用されている(甲86ないし111)。そして、同番組は、テレビ番組における料理レシピの提供にとどまらず、紙媒体によるテキストが日本テレビ系列から年12冊(1冊当たり18万部)、中部日本放送系列からは年4冊(1冊当たり3万1400部。いずれも平成21年度実績)販売されており、ウェブサイトでも多数回の閲覧を受けるなどしている。以上によれば、「キユーピー3分クッキング」が請求人の一社提供番組である飲食物(料理)のレシピに関する情報を提供するテレビ番組として極めて著名であることは、明らかであり、引用商標8及び9等の請求人のキューピー関連商標が飲食物(料理)のレシピに関する情報の提供について著名であることは、明らかである。したがって、引用商標8及び9等の請求人のキューピー関連商標の著名性が、少なくとも本件商標の指定役務である「飲食物の提供」と類似の役務分野に及んでいることは、明らかであって、飲食物(料理)に関連して「キューピー」といえば請求人又は請求人と何らかの関係のある者が想起されることは、極めて明らかである。 ウ 「KEWPIE」「キューピー」の文字が飲食店の名前に使用された場合に想起するもの等に関するアンケート調査の結果によれば、「キューピーマヨネーズ、マヨネーズ」との回答が80%以上もの圧倒的多数を占めており、極めて多数の者がその役務の出所として請求人を想起することが明確に示されている(甲127ないし130)から、請求人のキューピー関連商標の著名性は、本件商標の指定役務である「飲食物の提供」分野そのものについても強く及んでいることが明白である。食品製造販売業者が飲食店を経営し、特にそのブランド名と同一又は実質的に同一の店舗名で飲食店を経営することや、食品製造販売業者が当該飲食店で提供されるものを食品として販売することは、多数の有名企業を含めて広く一般的に行われており、請求人も、「キユーピー3分クッキング南青山3丁目キッチン」という店舗名のレストランを開業予定である。このような取引の実情に照らすと、本件商標の指定役務である「飲食物の提供」等と、引用商標8及び9が特に著名性を有する加工食品等とが密接な関連を有することは、極めて明白である。さらに、役務「飲食物の提供」に関する商標の使用態様には、飲食店で顧客に展示されるメニューに商標を表示することも含まれると解されるところ、請求人が取り扱っている主たる商品である加工食品には、調理を要せずにそのまま飲食できるものや、調理された飲食物に顧客の好みに応じて味を加えたりする調味料が存在するため、引用商標8及び9や商標「KEWPIE(Kewpie)」が使用された原告の加工食品が、飲食店、学生食堂又は飲食物販売店の飲食コーナーにおいてそのまま提供され、需要者(顧客)の目に触れることも多い。そのため、本件商標の登録が維持されると、本件商標が料理の名前としてメニューに掲載されることも考えられるところ、この場合、需要者は、当該料理が原告の製造販売に係る飲食物であるかのように誤認し、「飲食物の提供」の役務が原告と関連のある者の提供に係るかのような出所の混同を生じるおそれが高い。そして、本件商標の指定役務である「飲食物の提供」等の需要者と、引用商標8及び9が特に著名性を有する加工食品等の取引者・需要者とは、共通することが明らかである。よって、本件商標の指定役務である「飲食物の提供」等と、引用商標8及び9が特に著名性を有する加工食品等とは、密接な関連を有することが明らかであり、本件商標をその指定役務、特に「飲食物の提供」について使用すれば、特に「加工食品等」といった食品・飲食物関連分野において著名性を有する引用商標8及び9等のキューピー関連商標を使用する請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれがあることは、明らかである。現に、本件商標について行われたアンケート調査の結果によれば、本件商標を特に「飲食物の提供」について使用すれば、本件商標に接する取引者・需要者は、引用商標8及び9からは請求人を想起又は連想し、当該役務の出所について誤認を生ずるおそれがあることが明らかである。 したがって、「キューピー」は、企業ブランドとしても需要者から極めて高い評価を得ているものであり、食品分野の枠を超えた著名性を獲得している。 エ 引用商標8及び9は、著名商標であるが故に、防護標章の登録が認められている(甲11、12、24、25)。さらに、引用商標8及びこれと「KEWPIE」の文字からなる商標は、「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」に日本の著名商標として掲載されている(甲26、27)。 (4)本件商標が他人の著名な商標と他の文字を結合した商標であることについて 特許庁商標課編「商標審査基準」〔改訂第9版〕は、商標法第4条第1項第15号の適用について、「他人の著名な商標と他の文字又は図形等を結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、原則として、商品又は役務の出所の混同を生じるおそれがあるものと推認して、取り扱うものとする。ただし、その他人の著名な部分が既成の語の一部となっているもの、又は、指定商品若しくは指定役務との関係において出所の混同のおそれがないことが明白なものを除く。」としている。 本件商標は、「キューピー」と他の文字を結合した商標である。また、上述のとおり、引用商標9は、少なくとも調味料等を含む加工食品の分野あるいはこれに密接に関連する分野において著名な商標である(甲10)。請求人が著名な引用商標9(及び引用商標8)の下で製造・販売を行っている加工食品等と本件指定役務中の「飲食物の提供」とは、その商品の製造・販売者と役務の提供者が同一事業者であることも多く、「飲食」というその用途も一致し、商品の販売場所と役務の提供場所が同一(店舗)であることも多く、さらに需要者も一致する。したがって、著名な引用商標9(及び引用商標8)が使用される商品と本件指定役務とは、非常に密接な関係を有している。そして、著名商標の権利者と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品ではないかとの出所の混同(広義の出所の混同)を生じるおそれがある商標の登録を排除する商標法第4条第1項第15号の趣旨に鑑みれば、出願商標の指定商品・指定役務そのものについての著名性が求められると考えるよりも、これらと密接に関連する商品・役務について著名な他人の商標と他の文字等が結合した商標は、上記審査基準の規定に該当するとして拒絶されると解するべきである。同旨の判例・審決例として、東京高裁平成9年(行ケ)第278号及び無効2000-35120がある(甲28、29)。 ちなみに、本件商標の商標権者は、本件商標と同一文字からなる商標を、第32類の商品を指定して出願したところ、この商標は、請求人の著名商標「KEWPIE」及び「キューピー」の文字を含んでなるから、請求人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあるとして、商標法第4条第1項第15号に該当すると認定された事実がある(甲30)。 以上から、本件商標は、「他人の著名な商標と他の文字又は図形等を結合した商標」に該当し、商標法第4条第1項第15号に該当することは明らかである。 (5)取引の実情 ア 飲食物の製造・販売等を行う事業者は、同時に飲食物の提供を行うことが多い実情に鑑みると、加工食品の製造販売で有名な請求人が、同社の食品を利用したレストランを経営していると需要者が考えても全く不思議はない。その一方で、本件商標権者がマヨネーズやドレッシングを特徴とした料理を提供する飲食店を経営し、その飲食物の提供に関して本件商標を使用することも可能である。 イ 役務「飲食物の提供」に関する商標の使用態様には、飲食店で顧客に展示されるメニューに商標を表示することも含まれると解される(甲43)ところ、引用商標8及び9等が使用された請求人の業務に係る商品であるベビーフードがレストランのメニューに掲載されている場合において(甲37ないし42)、仮に本件商標が料理の名前としてメニューに掲載された場合には、需要者が当該料理が請求人の業務に係る飲食物であるかのように誤認し、請求人と関連のある者(請求人から商品を仕入れた者)の提供に係る飲食物の提供であるかのような出所の混同を生じるおそれが高い。 ウ 学生食堂や社員食堂等の大人数の顧客に対して飲食物を提供する飲食店等においては、請求人の業務に係る業務用のマヨネーズやドレッシングが引用商標8及び9が表示されたパッケージのまま飲食店の顧客に提供されることが多いという実情がある(甲44ないし47)。本件商標がその指定役務中の「飲食物の提供」に使用される場合には、飲食店の看板やメニューに本件商標が表示される可能性があり、その場合には、請求人と関連がある者の業務に係る飲食店であるかのような広義の出所の混同が生じるおそれがある。 エ 百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等では、飲食物の販売だけではなく、店内で購入した商品を飲食し、また、飲食物の提供を受けるための飲食コーナーが設けられていることも多く見受けられ(甲48ないし53)、請求人の著名な引用商標8及び9等が付された加工食品等を販売している上記店内の一角に本件商標の看板を掲げた飲食コーナーが設けられ、本件商標を表示したメニューが展示されることも十分に考えられ、そのような場合にも、請求人と関連がある者の業務に係る飲食コーナーであるかのような広義の出所の混同が生じるおそれがある。 オ 請求人は、引用商標8及び9が使用された多種多様な業務用の食品等を製造販売しており(甲54ないし56)、そのことは、飲食店の関係者に広く知られている。そのような状況において、本件商標を使用した「ローズオニールキューピーレストラン」等ができれば、それを目にした飲食店関係者は、それが請求人又はこれと経済的・組織的に関連する者の経営による飲食店であると誤認するおそれがあることは明らかである。 (6)まとめ 以上によれば、本件商標は、引用商標8及び9等のキューピー関連商標を使用する請求人との関係で、混同を生じるおそれがある商標であることは、極めて明白であり、本件商標の指定役務中「飲食物の提供」について混同を生じるおそれがあることは、明白である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、何ら答弁するところがない。 第4 当審の判断 1 事実認定 (1)請求人の提出した証拠によれば、次の事実を認めることができる。 ア 米国人女流画家ローズ・オニール(Rose O’Neill)は、明治42年(1909年)、米国の雑誌「レディース・ホーム・ジャーナル」誌のクリスマス特集号に、自作の詩とともに新しいキャラクターのイラストを発表し、そのキャラクターに「キューピー(KEWPIE)」という名を付けた。 このキャラクターの際立った特徴は、頭髪と思しきものが主として頭頂部のみにあり、しかもその部分が尖っており、目がパッチリと大きく、背中には天使の翼と思しき一対の小さな羽が生えたふくよかな裸体の姿をしていることであった。 キューピーのキャラクターは、その後、その人形の製造が開始されたこともあり、我が国を含む世界各国で高い人気を博するようになった(甲78、80)。 イ 請求人は、大正8年に設立され(当時の商号は、食品工業株式会社)、大正14年、マヨネーズの製造・販売を開始したが、それ以来現在に至るまで、一貫して前記キューピーの特徴を備えたキャラクターを、マヨネーズを含む請求人の商品の広告等に使用しており、昭和32年には商号を「キユーピー株式会社」に改めたほか、同様の特徴を備えたキャラクター又は「キューピー」との称呼を生じる商標について複数登録を受けている。中でも、引用商標3(引用商標8)及びこれと「KEWPIE」との欧文字からなる商標は、「FAMOUS TRADEMARK IN JAPAN」という書籍(平成10年版及び平成16年版)に日本の著名商標として掲載されている(甲1ないし13、24ないし27)。 請求人は、各種のマヨネーズ、香辛料、液状ドレッシング、食酢等を製造・販売しており、本件商標の出願時及び登録査定時以前である平成16年当時、我が国において、マヨネーズ類の生産について56.6%(業界1位)、マヨネーズ類の販売について71.1%(業界1位)、液状ドレッシングの生産について51.9%(業界1位)、液状ドレッシングの販売について42.7%(業界1位)、食酢の生産について12.8%(業界2位)、ソース類缶詰の販売について19.1%(業界1位)、パスタソース類の販売について25.0%(業界2位)、スープ類の販売について9.0%(業界3位)、ベビーフードの販売について23.7%(業界2位)のシェアを有していた(甲14、15)。 また、請求人は、日本経済新聞による各企業の独自性、プレミアム、推奨度等の調査結果である「企業ブランド知覚指数・消費者版ランキング」において、平成15年には第2位、平成16年には第4位であったが、平成17年から平成19年までは第1位となったほか、日経BP社による専業主婦ら女性を対象とした「食の安心・安全ブランド」のイメージ調査の結果でも、平成16年に第1位、平成17年及び平成18年に第3位となった(甲16ないし23)。 ウ 中部日本放送は、昭和37年12月3日、日本テレビは、昭和38年1月21日、それぞれ請求人による一社提供番組である「キユーピー3分クッキング」のテレビ放送を開始し、以来、日曜日を除く毎日、現在に至るまで50年以上にわたって日本一の長寿テレビ料理番組として飲食物の料理方法を紹介しているが、その平成18年における全国平均視聴率は、中部日本放送系列において4.1%であり、日本テレビ系列において4.8%である。そして、上記テレビ番組においては、放送開始当時から、番組名又は請求人の製造・販売に係る商品を画面で紹介する際に引用商標2(引用商標9)のロゴ及び前記キューピーの特徴を備えたキャラクターの人形(引用商標1)の映像等が放送されているほか、請求人は、自社のウェブページ及び月刊のテキスト「キユーピー3分クッキング」において、上記番組で紹介する料理の料理法を紹介しており、当該ウェブページには多数のアクセスがされている(甲86ないし111)。 なお、我が国においては、食品製造会社がそのブランド名と同一又は類似する店舗名の飲食店を経営している例が多数見られる(甲31、甲32、甲34ないし36、122)。 エ 我が国には、本件商標の出願時及び登録査定時以前において、請求人以外にも、引越運送業務等を主たる目的とする会社が、指定役務を「貨物自動車による輸送」として、前記の特徴を備えたキューピーのキャラクターを商標として登録して使用していた例が存在する(甲10)。 また、被請求人は、訴外会社(ローズオニールキューピー・インターナショナル)の代表取締役であるところ、訴外会社は、本件商標の出願時及び登録査定時以前から、「ローズオニールキューピー」及び「Rose O’Neill Kewpie」に係る商標権等の権利に基づき我が国等においてライセンスビジネスを展開しており、各種のキューピー人形や前記の特徴を備えたキューピーのキャラクターが記載された各種の生活用品等を製造・販売している。また、被請求人が代表を務める「日本キューピークラブ」は、本件商標の出願時及び登録査定時以前から、会報を発行して、キューピーの創作者であるローズ・オニールの顕彰活動及び訴外会社による上記商品の宣伝広告を行うなどしている(甲71ないし84)。 オ 請求人の委託を受けた調査会社が、平成24年12月、本件商標について、「この文字が飲食店の名前として使われていた場合、あなたは何を思い浮かべますかどのようなことでもけっこうですので、ご自由にお知らせください。」との質問をしたインターネット(全国の15歳から59歳までの男女1000名が対象)又は訪問面接(首都圏の15歳から59歳までの男女630名)によるアンケート調査を行ったところ、その回答結果は、「マヨネーズ、キユーピーマヨネーズ」が30.6%(インターネット)又は24.0%(訪問面接)であり、「それでは、以下の文字(本件商標)が飲食店の名前として使われていた場合、あなたは経営している会社としてどこを思い浮かべますか。ご自由にお知らせください。」との質問に対する回答結果は、「キューピー」が45.7%(インターネット)又は53.7%(訪問面接)、「キユーピーマヨネーズ・マヨネーズ」が14.7%(インターネット)又は9.0%(訪問面接)、「キユーピー株式会社」が3.5%(インターネット)又は2.5%(訪問面接)であり、「『前の質問で、あなたがお答えになった会社』が、扱っている主な商品、または、行っている飲食店以外の業務・サービスとして何を思い浮かべますか。ご自由にお知らせください。」との質問に対する回答結果は、「マヨネーズ」が37.0%(インターネット)又は45.7%(訪問面接)、「ドレッシング」が14.4%(インターネット)又は20.6%(訪問面接)、「調味料、香辛料」が5.6%(インターネット)又は5.9%(訪問面接)であったが、前の問において「キューピー」と回答した者による回答結果は、「マヨネーズ」が56.6%(インターネット)又は66.9%(訪問面接)、「ドレッシング」が20.4%(インターネット)又は29.3%(訪問面接)、「調味料、香辛料」が7.1%(インターネット及び訪問面接)であった(甲127ないし130)。 (2)以上のとおり、キューピーのキャラクターは、その創作後から高い人気を博しており、請求人及び被請求人を含む複数の企業が広告や商品販売等に使用し続けるなどしてきたため、本件商標の出願時及び登録査定時、我が国において周知となっていたものと認められる。 他方、ローズ・オニールは、キューピーのキャラクターの創作者であるが、本件商標の出願時及び登録査定時、我が国においてこのことが周知であったと認めるに足りる証拠はない。 2 商標法第4条第1項第11号該当性 (1)本件商標について ア 本件商標は、前記第1に記載のとおり、「ROSEO’NEILLKEWPIE」の欧文字と「ローズオニールキューピー」の片仮名を上下二段に表してなるところ、これら欧文字及び片仮名は、それぞれ同じ書体、同じ大きさ、等間隔で表され、その片仮名部分の左右端は、いずれも欧文字部分の左右端よりもわずかに外側に広がっているが、その広がり具合は、左右均等であって、構成全体としてみた場合、欧文字及び片仮名の全体がまとまりよく一体的に表されているといえるものである。 イ そして、下段の片仮名が上段の欧文字の読みを表記したものとして看取されるから、本件商標からは、「ローズオニールキューピー」の称呼が生じるものと認められる。 ウ 本件商標の構成中の「KEWPIE」「キューピー」の文字部分は、我が国でも周知であるキューピーのキャラクターの観念を想起させるものである。同じく、「O’NEILL」「オニール」の文字部分は、英語圏にみられる名字であることが我が国でも周知であり(甲57ないし62)、これに伴う「ROSE」「ローズ」の文字部分も、やはり英語圏にみられる女性の名前であることが我が国でも周知である(甲57ないし59)。そうとすると、「ROSEO’NEILL」「ローズオニール」の文字部分は、「ローズ・オニール」という英語圏の女性の名前であると観念される(なお、前記1(2)で認定のとおり、我が国においてローズ・オニールがキューピーのキャラクターの創作者であることが周知であると認めるに足りる証拠はない。)。 そして、本件商標の構成中の「ROSEO’NEILL」「ローズオニール」の文字部分は、「KEWPIE」「キューピー」の文字部分の前に配されているから、本件商標からは、「ローズ・オニール(という女性)のキューピー」という観念が生じるものと認められる。 エ ところで、請求人は、前記1(1)イ及びウで認定のとおり、キューピーの特徴を備えたキャラクター又は「キューピー」との称呼を生じる商標(引用商標)について複数登録を受け、引用商標3が著名なものとして文献にも紹介されているほか、マヨネーズを中心とする調味料や加工食品の分野において我が国において高い市場占有率を誇っており、食品関係会社として我が国の一般消費者に広く認識されているばかりか、約50年間にわたって、引用商標2のロゴ及び前記キューピーの特徴を備えたキャラクターの人形(引用商標1)の映像等とともに日曜日を除く毎日放映されてきた「キユーピー3分クッキング」というテレビ番組の提供を続けるなどしている。 オ 以上によれば、請求人(キユーピー株式会社)は、本件商標の出願時及び登録査定時において、我が国の食品関係の取引者及び一般消費者の間で、マヨネーズを中心とする調味料や加工食品を製造・販売するほか、飲食物の料理方法を教授する会社として著名であり、引用商標1ないし3は、当該分野における役務の提供について、請求人を出所として識別させる商標として著名であったものと認められる。 さらに、我が国においては、前記1(1)ウで認定のとおり、食品製造会社がそのブランド名と同一又は類似する店舗名の飲食店を経営している例が多数見られることを併せ考えると、引用商標1ないし3は、加工食品の製造・販売及び飲食物の料理方法の教授という役務と密接に関連する「飲食物の提供」という役務においても、取引者、需要者である食品関係の取引者及び一般消費者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。このことは、前記1(1)オで認定のとおり、本件商標が飲食店の名前として使われた場合に多くの者が請求人又は請求人の主要商品を製造する会社を想起したとのアンケート調査の結果によっても裏付けられる。 そして、本件商標の指定役務は、前記第1に記載のとおり、第43類「宿泊施設の提供、宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ、飲食物の提供、動物の宿泊施設の提供、保育所における乳幼児の保育、老人の養護、会議室の貸与、展示施設の貸与、家具の貸与、壁掛けの貸与、敷物の貸与、タオルの貸与」であるところ、本件商標がこれらのうち「飲食物の提供」に使用される場合、「KEWPIE」「キューピー」の文字部分は、上記のとおり、取引者、需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える引用商標1ないし3と称呼及び観念が同一のものであるから、当該部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるものというべきである。 カ 他方、キューピーのキャラクターは、前記1(2)で認定のとおり、その創作後から高い人気を博しており、請求人及び被請求人を含む複数の企業が広告や商品販売等に使用し続けるなどしてきたものであるところ、引用商標1ないし7は、本件商標の指定役務中、「飲食物の提供」を除く各役務については、取引者、需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるという事情を認めるに足りる証拠はない。 また、本件商標の構成中の「ROSEO’NEILL」「ローズオニール」の文字部分は、その構成の半分以上を占めるものであって、「KEWPIE」「キューピー」の文字部分に密接に関連する一般的ないし普遍的な文字であると直ちにいうこともできないから、出所識別標識としての称呼、観念が生じないとまでは認められない。 キ よって、本件商標は、その構成全体から「ローズオニールキューピー」の称呼及び「ローズ・オニール(という女性)のキューピー」の観念を生じるほか、これをその指定役務中の「飲食物の提供」に使用される場合には、本件商標の構成中の「KEWPIE」「キューピー」の文字部分から、「キューピー」の称呼及び「キューピーのキャラクター」の観念をも生じるものというべきである。 (2)引用商標1ないし7について ア 引用商標1は、頭髪と思しきものが主として頭頂部のみにあり、しかもその部分が尖っており、目がパッチリと大きく、背中には天使の翼と思しき一対の小さな羽が生えたふくよかな裸体の姿をしている幼児の人形(立体商標)である。 引用商標2は、「キユーピー」との片仮名を肉厚の書体で横書きに表してなるものである。 引用商標3は、頭髪と思しきものが主として頭頂部のみにあり、しかもその部分が尖っており、目がパッチリと大きく、背中には天使の翼と思しき一対の小さな羽が生えたふくよかな裸体の姿をしている幼児の図形である。 引用商標4は、引用商標3の図形の上部に引用商標2の片仮名を、当該図形の下部に「KEWPIE」の欧文字を配した構成からなるものである。 引用商標5は、頭髪と思しきものが主として頭頂部のみにあり、しかもその部分が尖っており、目がパッチリと大きく、背中には天使の翼と思しき一対の小さな羽が生えたふくよかな幼児が「キユーピー」「とっておきレシピ」と二段書きされた横長で帯状の掲示物を右手で上から握持し、顔及び斜め上方にのばした左腕が当該掲示物の上部に配された構成からなるものである。 引用商標6及び7は、頭髪と思しきものが主として頭頂部のみにあり、しかもその部分が尖っており、目がパッチリと大きく、背中には天使の翼と思しき一対の小さな羽が生えたふくよかな裸体の姿をしている幼児2名が並んで正面を向き、各外側の手で両者の間の胸付近に配されたハート模様の図形を握持し、各幼児両眼の黒眼部分が当該ハート様図形の向きに配されている全体として左右対称のものであって、幼児の姿を描く線及び当該ハート様図形がいずれも赤色で彩色されたものである。 イ 引用商標2及び4の片仮名及び欧文字からは、いずれも「キューピー」の称呼が生ずるほか、引用商標1及び3ないし7の人形又は幼児の図形の外観も、前記のとおり我が国において周知となっていたキューピーのキャラクターが備える特徴と一致している。 したがって、引用商標1ないし7に接した取引者、需要者において、これらの商標からは「キューピー」との称呼が生じるとともに、当該特徴を備えた我が国でも周知のキューピーのキャラクターとの観念が生じるほか、引用商標5からは、「キューピートッテオキレシピ」の称呼が生じるものと認められる。 (3)本件商標と引用商標1ないし7との類否について ア 本件商標は、前記(1)キのとおり、その指定役務中の「飲食物の提供」に使用するときは、本件商標の構成中の「KEWPIE」「キューピー」の文字部分だけを他の商標と比較することで類否を判断することができるものというべきである。 そして、該「KEWPIE」「キューピー」の文字部分からは、「キューピー」の称呼が生じ、かつ、我が国でも周知のキューピーのキャラクターとの観念が生じるところ、これと称呼及び観念を共通にする引用商標1ないし4及び7には、いずれも指定役務に「飲食物の提供」が含まれている。 よって、本件商標は、その指定役務中、「飲食物の提供」に使用するときは、引用商標1ないし4及び7と類似する商標である。 イ 他方、本件商標をその指定役務中の「飲食物の提供」以外の指定役務に使用するときは、本件商標は、その全体を観察した場合、引用商標1ないし7といずれも外観が異なるほか、「ローズオニールキューピー」の称呼が生じ、かつ、「ローズ・オニール(という女性)のキューピー」という観念が生じるものである。 したがって、本件商標は、「キューピー」又は「キューピートッテオキレシピ」との称呼が生じ、かつ、我が国でも周知のキューピーのキャラクターとの観念が生じる引用商標1ないし7とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、互いに紛れるおそれのないものである。 また、本件全証拠によっても、本件商標の指定役務中、「飲食物の提供」以外の役務に係る取引に当たり、取引者、需要者が、「ROSEO’NEILL」「ローズオニール」との部分が付加された本件商標と、「キューピー」との称呼及び観念が生じる引用商標とで出所について混同を生じる実情があるとは認められない。 よって、本件商標は、その指定役務中、「飲食物の提供」以外の役務に使用する場合、引用商標1ないし7とは非類似の商標であるといえる。 (4)以上によれば、本件商標は、これをその指定役務中、「飲食物の提供」に使用するときは、商標法第4条第1項第11号に該当する。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、その指定役務中の「飲食物の提供」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、その余について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、無効とする。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(別 掲) 本件商標 引用商標1(立体商標) 引用商標2及び9 引用商標3及び8 引用商標4 引用商標5 引用商標6及び7 (色彩については原本参照) **********************************(参 考)第一審決(平成24年10月4日付け審決) 審決 無効2012-890008 東京都渋谷区渋谷1丁目4番13号 請求人 キユーピー 株式会社 東京都千代田区丸の内3-2-3 富士ビル 協和特許法律事務所 代理人弁理士 勝沼 宏仁 東京都千代田区丸の内3-2-3 協和特許法律事務所 代理人弁理士 黒瀬 雅志 東京都中央区明石町8-1 聖路加タワー28F 凜国際特許業務法人 代理人弁理士 中川 拓 東京都中央区明石町8-1 聖路加タワー28F 凜国際特許業務法人 代理人弁理士 宮城 和浩 東京都千代田区丸の内3丁目2番3号 富士ビル 協和特許法律事務所 代理人弁理士 矢崎 和彦 東京都千代田区丸の内三丁目2番3号 協和特許法律事務所 代理人弁理士 宇梶 暁貴 東京都千代田区丸の内3-2-3 富士ビル3階 協和特許法律事務所 代理人弁理士 高田 泰彦 東京都千代田区丸の内3-2-3 富士ビル3階 協和特許法律事務所 代理人弁理士 柏 延之 大阪府大阪市北区西天満5丁目11番地22 メゾン梅ヶ枝703号 被請求人 北川 和夫 東京都港区虎ノ門一丁目16番4号 インフォテック法律事務所 代理人弁護士 山本 隆司 東京都港区虎ノ門1丁目16番4号 アーバン虎ノ門ビル6階 インフォテック法律特許事務所 代理人弁護士 井奈波 朋子 上記当事者間の登録第5022219号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 理 由 第1 本件商標 本件登録第5022219号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲Aのとおりの構成からなり、平成17年10月25日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,タオルの貸与」を指定役務として、同18年12月14日に登録査定、同19年2月2日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第56号証(枝番号を含む。なお、括弧内における記載は、以下「甲1?甲56」のように表す。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とされるべきである。 2 商標法第4条第1項第11号について (1)請求人の引用する登録商標 ア 登録第4156315号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:別掲B(A)のとおり(立体商標) 登録出願日:平成9年4月1日 設定登録日:平成10年6月12日 更新登録日:平成20年6月24日 指定役務 :第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,会議室の貸与,展示施設の貸与,タオルの貸与」を含む第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 イ 登録第4293493号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:別掲B(B)のとおり 登録出願日:平成9年11月27日 設定登録日:平成11年7月9日 更新登録日:平成21年2月17日 指定役務 :第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,料理情報の提供,家畜の診療,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,会議室の貸与,展示施設の貸与,タオルの貸与」を含む第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 ウ 登録第4293494号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成:別掲B(C)のとおり 登録出願日:平成9年11月27日 設定登録日:平成11年7月9日 更新登録日:平成21年2月17日 指定役務 :第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,料理情報の提供,家畜の診療,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,会議室の貸与,展示施設の貸与,タオルの貸与」を含む第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 エ 登録第4367659号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の構成:別掲B(D)のとおり 登録出願日:平成11年1月22日 設定登録日:平成12年3月10日 更新登録日:平成22年1月26日 指定役務 :第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,料理情報の提供,家畜の診療,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,会議室の貸与,展示施設の貸与,タオルの貸与」を含む第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 オ 登録第4473190号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の構成:別掲B(E)のとおり 登録出願日:成12年3月9日 設定登録日:平成13年5月11日 更新登録日:平成23年5月17日 指定役務 :第42類「コンピュータ通信ネットワーク・ファクシミリ又は電話を利用した料理情報の提供,その他の料理情報の提供」 カ 登録第4772234号商標(以下「引用商標6」という。) 商標の構成:別掲B(F)のとおり 登録出願日:平成15年8月4日 設定登録日:平成16年5月21日 指定役務 :第44類「動物の飼育,動物の治療」を含む、第35類、第37類、第40類及び第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 キ 登録第4950440号商標(以下「引用商標7」という。) 商標の構成:別掲B(F)のとおり 登録出願日:平成17年2月10日 設定登録日:平成18年5月12日 指定役務 :第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,料理情報の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,老人又は障害者の介護又は養護,老人・障害者の介護又は養護に関する相談又は指導,老人・障害者の介護に関する情報の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,タオルの貸与」を含む、第36類、第42類及び第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 (2)本件商標と引用商標1ないし7とが類似する理由 ア 引用商標1ないし7の称呼及び観念について (ア)引用商標1は、頭頂部が尖り、目がパッチリと大きいやや写実的な裸体の幼児の人形を模した図形からなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。 (イ)引用商標2は、「キューピー」の文字を横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。 (ウ)引用商標3は、頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形からなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。 (エ)引用商標4は、上段に「キューピー」の文字を横書きし、中段に頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形を有し、下段には「KEWPIE」の文字を横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。 (オ)引用商標5は、上部に頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい幼児の顔の図形を有し、その下の帯状図形内に、「キューピー」の文字と「とっておきレシピ」の文字を二段に横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。 (カ)引用商標6及び7は、頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した図形を左右2個配し、それぞれの人形がハート図形を片手で支えている赤色の図形からなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。 (キ)以上のように、引用商標1ないし7のいずれからも、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。 イ 本件商標の称呼及び観念について (ア)本件商標は、「ROSEO’NEILLKEWPIE」の文字と「ローズオニールキューピー」の文字を二段に横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して、「ローズオニールキューピー」の称呼が生じるものである。 (イ)本件商標中の「ROSEO’NEILL」及び「ローズオニール」は、我が国でも周知になったキューピー人形のもととなったキューピーのイラストを20世紀初頭に発表した米国の作家の名称である。そして、世界中で、キューピーのイラストを立体化したキューピー人形が製作されて人気を博し、我が国では、1930年代ころにセルロイド製のキューピー人形が製造され広く流布した事実がある。当時、複数の企業が「キューピー」及び「キューピー人形」を商標登録した。請求人は、「キューピー」及び「キューピー人形」を商標としてマヨネーズ等の商品に使用し盛大に宣伝広告した結果、これらの商標は全国的に著名となった。その後、請求人は、商号をキューピー株式会社とした。すなわち、本件商標の登録査定時はもとより登録出願時においても、「キューピー」の語は、その人形のキャラクターを指すものとして、「キューピー人形」は、頭頂部が尖った目のパッチリと大きい裸体の幼児の人形として、我が国において広く認識されるに至っている(平成20年(行ケ)第10139号判決:甲9)。 一方、本件商標中の「ROSEO’NEILL」及び「ローズオニール」は、上記のとおり、キューピーのイラストを20世紀初頭に発表した米国の作家の名称であるが、この名前は、本件商標の指定役務(以下「本件指定役務」という。)との関連において広く知られたものではなく、また、本件指定役務の取引者・需要者の間で、キューピーのイラストの原作者であるということも広く知られていない。 そうすると、本件商標の前半部分「ROSEO’NEILL」及び「ローズオニール」と後半部分「KEWPIE」及び「キューピー」とでは軽重の差があるといわざるを得ないものであり、かつ、本件商標全体の称呼が11音と冗長なものであることを考え合わせると、本件商標に接する取引者・需要者は、本件商標中の「KEWPIE」及び「キューピー」の部分に注目して取引を行うのが自然である。 (ウ)さらに、本件指定役務中の「飲食物の提供」は、請求人が著名商標「キューピー」及び「キューピー」人形図形商標の下に販売等を行っている商品と密接な関連を有している。すなわち、「飲食物の提供」の場においては、顧客に加工食品を提供し、また、飲食物を調理する際には調味料を使用することがほとんどであり、さらに、後述のようにレストランのテーブルに調味料が置かれることも多い。 請求人は、マヨネーズやドレッシング等の調味料を含む加工食品を製造・販売している会社として広く知られており、その商品のほとんどに引用商標2及び3と同一態様の商標を使用している。なお、引用商標2及び3がマヨネーズ、ドレッシングその他の加工食品の分野あるいはこれと密接に関連する分野で、請求人を示すものとして広く知られている点は、平成15年(行ケ)第103号の判決(甲10)においても認定されている。 また、食品の製造販売を行っている会社がレストラン等を経営して飲食物の提供も同時に行っている例が実際の取引社会には多く見られることは、後述のとおりである。 これらの取引実情を考慮すると、特に、本件商標が「飲食物の提供」に使用された場合には、本件商標中の「KEWPIE」及び「キューピー」の部分が要部として機能し、本件商標から「キューピー」の略称及び観念が生じる可能性は一層高いといわざるを得ない。 (3)まとめ 上述のとおり、本件商標からは、「ローズオニールキューピー」のほかに、「キューピー」の称呼が生じ、引用商標1ないし7のいずれからも、「キューピー」の称呼が生じる。また、本件商標からは、「ローズオニール(という作家)、キューピー」の観念のほかに、「キューピー」の観念が生じ、引用商標1ないし7のいずれからも「キューピー」の観念が生じる。 してみると、本件商標と引用商標1ないし7は、称呼及び観念を同一とする類似の商標である。 さらに、本件商標は、引用商標1ないし7の指定役務と同一又は類似の役務について使用するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 3 商標法第4条第1項第15号について (1)請求人の引用する登録商標 ア 登録第595694号商標(以下「引用商標8」という。) 商標の構成:別掲B(C)のとおり 登録出願日:昭和35年5月31日 設定登録日:昭和37年8月24日 更新登録日:昭和48年1月12日,昭和57年10月26日,平成5年1月28日,平成14年5月21日,平成24年6月26日 指定商品 :第30類「調味料,香辛料」 (平成15年7月23日書換登録) イ 登録第832283号商標(以下「引用商標9」という。) 商標の構成:別掲B(B)のとおり 登録出願日:昭和41年8月11日 設定登録日:昭和44年9月24日 更新登録日:昭和55年6月27日,平成元年11月21日,平成11年10月19日,平成21年4月21日 指定商品 :第30類「調味料,香辛料」 (平成21年6月17日書換登録) (2)本件商標と引用商標8及び9との類似について 本件商標は、上記2(2)イのとおり、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。 他方、引用商標8は、頭頂部と思しき部分が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形(いわゆる「キューピー人形」)を模した図形からなるものであるから、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。また、引用商標9は、「キューピー」の文字を横書きしてなるものであるから、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。 したがって、本件商標と引用商標8及び9とは、「キューピー」の同一の称呼及び観念を有する類似の商標である。 (3)引用商標8及び9の著名性について ア 請求人は、大正8年に設立された会社であり、大正14年に我が国初の国産マヨネーズの製造を開始し、これに「キューピー」の文字及び「キューピー人形」からなる商標を付して発売してから今日に至るまで、商標の書体、態様に多少の変更を加えつつも、一貫してこの商標を使用し続けてきた(甲13)。そして、戦後の国民の食生活の変化に伴い、洋食に合うマヨネーズが爆発的に売れるようになったことにより、「キューピー」及び「キューピー人形」の商標は、日本全国に知れ渡るに至ったものであり、請求人は、「キューピー」及び「キューピー人形」の商標を付したマヨネーズが全国的なシェアを持つに至ったことから、昭和32年に社名を「キューピー株式会社」に変更し、以来、今日までその社名を使用し続けてきた。 請求人の多種にわたる商品が全国的規模で売れたことから、本件商標の登録出願前には、「キューピー」といえば、直ちにマヨネーズを始めとする請求人の商品あるいは請求人を指称するほどに広く知られるに至ったものである。 請求人の取扱商品は多種にわたり、そのうちの、例えば、ソース類缶詰、マヨネーズ類、液状ドレッシング類、レトルトパスタソース類、レトルトスープ類、ベビーフードの日本国内における請求人の年度別シェア及び順位は、甲第14号証及び甲第15号証に示すとおり、いずれも高いものである。 また、「キューピー」は、食品関連商品についてのみならず、商品分野を限定しない企業全般を対象とした第三者によるアンケートにおいて、第1位(3回)、第2位(1回)、第3位(2回)、第4位(1回)と非常に高い評価結果を得ており(甲16?甲23)、このことは、上記事実を裏付けるものでもある。 したがって、「キューピー」は、企業ブランドとしても需要者から極めて高い評価を得ているものであり、食品分野の枠を超えた著名性を獲得している。 イ 引用商標8及び9は、著名商標であるが故に、防護標章の登録が認められている(甲11,甲12,甲24,甲25)。 さらに、引用商標8及びこれと「KEWPIE」の文字からなる商標は、「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」に日本の著名商標として掲載されている(甲26,甲27)。 (4)本件商標が他人の著名な商標と他の文字を結合した商標であることについて 特許庁商標課編「商標審査基準」〔改訂第9版〕は、商標法第4条第1項第15号の適用について、「他人の著名な商標と他の文字又は図形等を結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、原則として、商品又は役務の出所の混同を生じるおそれがあるものと推認して、取り扱うものとする。ただし、その他人の著名な部分が既成の語の一部となっているもの、又は、指定商品若しくは指定役務との関係において出所の混同のおそれがないことが明白なものを除く。」としている。 本件商標は、「キューピー」と他の文字を結合した商標である。また、上述のとおり、引用商標9は、少なくとも調味料等を含む加工食品の分野あるいはこれに密接に関連する分野において著名な商標である(甲10)。請求人が著名な引用商標9(及び引用商標8)の下で製造・販売を行っている加工食品等と本件指定役務中の「飲食物の提供」とは、その商品の製造・販売者と役務の提供者が同一事業者であることも多く、「飲食」というその用途も一致し、商品の販売場所と役務の提供場所が同一(店舗)であることも多く、さらに需要者も一致する。したがって、著名な引用商標9(及び引用商標8)が使用される商品と本件指定役務とは、非常に密接な関係を有している。そして、著名商標の権利者と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品ではないかとの出所の混同(広義の出所の混同)を生じるおそれがある商標の登録を排除する商標法第4条第1項第15号の趣旨に鑑みれば、出願商標の指定商品・指定役務そのものについての著名性が求められると考えるよりも、これらと密接に関連する商品・役務について著名な他人の商標と他の文字等が結合した商標は、上記審査基準の規定に該当するとして拒絶されると解するべきである。同旨の判例・審決例として、東京高裁平成9年(行ケ)第278号及び無効2000-35120がある(甲28,甲29)。 ちなみに、本件商標の商標権者は、本件商標と同一文字からなる商標を、第32類の商品を指定して出願したところ、この商標は、請求人の著名商標「KEWPIE」及び「キューピー」の文字を含んでなるから、請求人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあるとして、商標法第4条第1項第15号に該当すると認定された事実がある(甲30)。 以上から、本件商標は、「他人の著名な商標と他の文字又は図形等を結合した商標」に該当し、商標法第4条第1項第15号に該当することは明らかである。 (5)取引の実情 ア 飲食物の製造・販売等を行う事業者は、同時に飲食物の提供を行うことが多い実情に鑑みると、加工食品の製造販売で有名な請求人が、同社の食品を利用したレストランを経営していると需要者が考えても全く不思議はない。その一方で、本件商標権者がマヨネーズやドレッシングを特徴とした料理を提供する飲食店を経営し、その飲食物の提供に関して本件商標を使用することも可能である。 イ 役務「飲食物の提供」に関する商標の使用態様には、飲食店で顧客に展示されるメニューに商標を表示することも含まれると解される(甲43)ところ、引用商標8及び9等が使用された請求人の業務に係る商品であるベビーフードがレストランのメニューに掲載されている場合において(甲37?甲42)、仮に本件商標が料理の名前としてメニューに掲載された場合には、需要者が当該料理が請求人の業務に係る飲食物であるかのように誤認し、請求人と関連のある者(請求人から商品を仕入れた者)の提供に係る飲食物の提供であるかのような出所の混同を生じるおそれが高い。 ウ 学生食堂や社員食堂等の大人数の顧客に対して飲食物を提供する飲食店等においては、請求人の業務に係る業務用のマヨネーズやドレッシングが引用商標8及び9が表示されたパッケージのまま飲食店の顧客に提供されることが多いという実情がある(甲44?甲47)。本件商標がその指定役務中の「飲食物の提供」に使用される場合には、飲食店の看板やメニューに本件商標が表示される可能性があり、その場合には、請求人と関連がある者の業務に係る飲食店であるかのような広義の出所の混同が生じるおそれがある。 エ 百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等では、飲食物の販売だけではなく、店内で購入した商品を飲食し、また、飲食物の提供を受けるための飲食コーナーが設けられていることも多く見受けられ(甲48?甲53)、請求人の著名な引用商標8及び9等が付された加工食品等を販売している上記店内の一角に本件商標の看板を掲げた飲食コーナーが設けられ、本件商標を表示したメニューが展示されることも十分に考えられ、そのような場合にも、請求人と関連がある者の業務に係る飲食コーナーであるかのような広義の出所の混同が生じるおそれがある。 オ 請求人は、引用商標8及び9が使用された多種多様な業務用の食品等を製造販売しており(甲54?甲56)、そのことは、飲食店の関係者に広く知られている。そのような状況において、本件商標を使用した「ローズオニールキューピーレストラン」等ができれば、それを目にした飲食店関係者は、それが請求人又はこれと経済的・組織的に関連する者の経営による飲食店であると誤認するおそれがあることは明らかである。 カ 以上のように、「KEWPIE」及び「キューピー」の文字を含む本件商標がその指定役務中の「飲食物の提供」に使用されれば、該役務が請求人又はこれと経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係るものであるとの誤認が生じ、出所の混同が生じるおそれが高いことは明らかである。 さらに、本件商標のような「KEWPIE」及び「キューピー」の文字を含む商標を請求人と何ら関係のない第三者が使用して「飲食物の提供」を行うことが法的に正当な行為と認められる状況が維持されてしまうと、著名な引用商標9の識別力の稀釈化・汚染が生じるおそれが極めて大きい。 (6)まとめ 以上のことから、本件商標がその指定役務に使用された場合には、該役務が請求人又は請求人の関連会社の業務に係る役務であるかのように、出所の混同を生じることは明らかである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、前記第2の請求人の主張に対し、何ら答弁するところがない。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標 ア 本件商標は、別掲Aのとおり、「ROSEO’NEILLKEWPIE」の文字と「ローズオニールキューピー」の文字を二段に横書きしてなるものであるところ、上段の「ROSEO’NEILLKEWPIE」の欧文字部分は、「O」と「N」との間に「’」(アポストロフィ)が存在するものの、いずれの文字も同一の書体をもって、同一の大きさ、同一の間隔で一体的に表されているものであり、また、該欧文字部分の片仮名表記を表す「ローズオニールキューピー」の片仮名部分も同様に、同一の書体をもって、同一の大きさ、同一の間隔で表されているものであって、構成全体として観察した場合においても、文字全体がまとまりよく一体的に表されているものである。また、本件商標から生ずると認められる「ローズオニールキューピー」の称呼は、やや冗長ではあるものの、これをいずれかの部分で区切って称呼しなければならないほど冗長といえるものではなく、よどみなく称呼し得る程度のものといえる。 そうすると、本件商標は、外観及び称呼の点からみれば、これを「ROSEO’NEILL」、「ローズオニール」の文字部分と「KEWPIE」、「キューピー」の文字部分とに分離して、「KEWPIE」、「キューピー」の文字部分のみを抽出して、観察しなければならない格別の理由は見いだせない。 イ 次に、本件商標を観念の点からみると、甲第9号証(平成20年(行ケ)第10139号判決、26頁・27頁)によれば、「米国人ローズ・オニールは,1909年,『レディース・ホーム・ジャーナル』誌のクリスマス特集号に『クリスマスでのキューピーたちの戯れ』と題した詩及びキューピッドをモチーフにした裸体の幼児のイラストを発表した。このイラストに描かれたキャラクターは,『キューピー』と名付けられ,その際立った特徴としては,頭髪と思しきものが主として頭頂部のみにあり,しかもその部分が尖っており,目がパッチリと大きく,背中には天使の翼と思しき一対の小さな羽が生えたふくよかな裸体の姿をしたものであった。その後,ローズ・オニールは,雑誌において『キューピーシリーズ』の連載を始め,1913年には,『キューピー』のイラストを立体化した人形がドイツで製作され,アメリカにおいて発売され大人気を博した。『キューピー人形』の人気は世界的に波及し,我が国においても,昭和年代に入ってから,セルロイド製の『キューピー人形』が製造され広く流布するなどした。その後,上記の人気を受け,『キューピー』又は『キューピー人形』は,原告(審決注:請求人)をはじめとする多くの企業が,企業自体やその商品のイメージキャラクターとして宣伝広告に使用したことにより,我が国における『キューピー』又は『キューピー人形』の認知度は更に高まった。・・・『キューピー』のキャラクターは,我が国において,『キューピー人形』に人気があったことや商品等の宣伝広告に利用されたことなどから,頭頂部が尖った目のパッチリと大きい裸体の幼児のキャラクターとして広く認知されていたものであり,平成10年11月11日株式会社岩波書店発行の『広辞苑第5版』には『キューピー【Kewpie】オニール(Rose O’Neill 1874-1944)のキューピッドの絵を模したセルロイド製のおもちゃ。頭の先がとがり,目の大きい裸体の人形。1910年代にアメリカで発売。商標名。』(683頁)と記載されていた。以上によると,上記のような『キューピー』のキャラクターは,本件商標登録出願時(平成16年11月22日)において,我が国で周知のものとなっていたというべきである。」とし、「キューピー」及び「キューピー人形」は、「ROSE O’NEILL/ローズオニール」の創作活動により生まれ、その後、特に、キューピー人形の人気は、世界的に広がったこと、広辞苑にも「ROSEO’NEILL/ローズオニール」と「キューピー」とを関連づけた記載があることを認定している。 そうすると、我が国において、「キューピー」及び「キューピー人形」が「ROSE O’NEILL/ローズオニール」の創作に係るものであることについて、極めて広く認識されているものではないとしても、上記認定のとおり、本件商標の構成は、外観上、「ROSEO’NEILL」、「ローズオニール」の文字部分と「KEWPIE」、「キューピー」の文字部分とが不可分一体的に結合されていること、本件商標から生ずる「ローズオニールキューピー」の称呼がよどみなく称呼し得る程度のものといえること、「我が国においては,多数の企業が『キューピー』のキャラクターを宣伝広告に使用してきた事実に照らすと,我が国において,『キューピー』が相当程度普遍的ないしは一般的なキャラクターとして認知されていた事実を否定することは困難である」(甲9(前出の判決)の30頁)から、様々な態様のキューピーが存在する、あるいは、「キューピー」の語と他の語を結語した商標等が多数存在すると優に推認できることを併せ考慮すれば、本件商標は、その構成全体をもって、「ローズオニールのキューピー」なる観念が想起される場合が多いというのが相当である。 そうとすれば、本件商標は、観念の点からみても、これを「ROSEO’NEILL」、「ローズオニール」の文字部分と「KEWPIE」、「キューピー」の文字部分とに分離して、「KEWPIE」、「キューピー」の文字部分のみを抽出して、観念しなければならない理由は見いだせない。 ウ 以上によれば、本件商標は、その構成文字に相応して、「ローズオニールキューピー」の称呼及び「ローズオニールのキューピー」の観念を生ずるというべきであって、単に「キューピー」のみの称呼及び観念は生じないというべきである。 エ この点に関し、請求人は、本件商標中の「ROSEO’NEILL」、「ローズオニール」は、本件指定役務との関連において広く知られたものではく、また、本件指定役務の取引者・需要者の間で、キューピーのイラストの原作者であるということも広く知られていないから、本件商標の前半部分「ROSEO’NEILL」、「ローズオニール」と後半部分「KEWPIE」、「キューピー」とでは軽重の差があるといわざるを得ないものであり、かつ、本件商標全体の称呼が11音と冗長であることを考え合わせると、本件商標に接する取引者・需要者は、本件商標中の「KEWPIE」、「キューピー」の部分に注目して取引を行うのが自然である旨主張する。 しかしながら、上記認定のとおり、本件商標は、その外観、称呼の点からみて、その構成全体をもって一体不可分の商標を表したと認識される商標であること、我が国において、様々な態様の「キューピー」や「キューピー」の語と他の語を結語した商標等が多数存在すること等が優に推認され、本件商標は、観念上もその構成全体をもって、「ローズオニールのキューピー」との観念が無理なく生ずるものであることを総合勘案すれば、「ROSEO’NEILL」、「ローズオニール」が、キューピーのイラストの原作者であることの周知の程度に関わりなく、本件商標からは、「ローズオニールキューピー」の一連の称呼が生ずるものであって、「ローズオニールのキューピー」の観念を生ずるというべきである。 したがって、上記請求人の主張は理由がない。 (2)引用商標1ないし7 ア 引用商標1は、別掲B(A)のとおり、「頭の先にとがった頭髪があり、背中には小さな翼のある目の大きい裸体の人形」といった特徴を備えた「キューピー人形」の立体的形状よりなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。 イ 引用商標2は、別掲B(B)のとおり、「キューピー」の文字を横書きしてなるものであるから、これより、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。 ウ 引用商標3は、別掲B(C)のとおり、「頭の先にとがった頭髪があり、背中には小さな翼のある目の大きい裸体の人形」といった特徴を備えた「キューピー人形」の図形よりなるものであるから、これより、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。 エ 引用商標4は、別掲B(D)のとおり、「頭の先にとがった頭髪があり、背中には小さな翼のある目の大きい裸体の人形」といった特徴を備えた「キューピー人形」の図形を中央に大きく表し、その上部に「キューピー」の文字を、また、下部に「KEWPIE」の文字を、それぞれ横書きしてなるものであるから、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。 オ 引用商標5は、別掲B(E)のとおり、「頭の先にとがった頭髪があり、背中には小さな翼のある目の大きい裸体の人形」といった特徴を備えた「キューピー人形」の顔と手の部分を描き、かつ、該人形の右手に「キューピー」の文字と「とっておきレシピ」の文字を二段に横書きした帯状の掲示物が握られている様を表した図形よりなるものであるから、これより、「キューピートッテオキレシピ」の称呼を生ずるほか、「キューピー人形」の図形部分又は「キューピー」の文字部分より、単に「キューピー」の称呼及び観念をも生ずるものである。 カ 引用商標6及び7は、別掲B(F)のとおり、赤色の線で描かれた「頭の先にとがった頭髪があり、背中には小さな翼のある目の大きい裸体の人形」といった特徴を備えた2つの「キューピー人形」が、互いに赤色で塗られた1つのハート形を持っている左右対称の図形よりなるものであるから、これよりは、特定の称呼及び観念を生ずるものとはいえない。 (3)本件商標と引用商標1ないし7との対比 ア 外観 本件商標と引用商標1ないし7は、それぞれ上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるものであるから、外観上明らかに区別し得る差異を有するものであり、これらを時と所を異にして離隔的に観察した場合においても、互いに紛れるおそれはない。 イ 称呼 本件商標から生ずる「ローズオニールキューピー」の称呼と引用商標1ないし7から生ずる「キューピー」の称呼又は引用商標5から生ずる「キューピートッテオキレシピ」の称呼は、構成する音及びその数において大きく相違するものであるから、それぞれの称呼を全体として称呼した場合においても、その語調、語感が著しく相違したものとなり、相紛れるおそれはない。 ウ 観念 本件商標が「ローズオニールのキューピー」の観念を生ずるものである一方、引用商標1ないし5が「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものであるから、両商標は、観念上相紛れるおそれがあるとまではいえない。また、引用商標6及び7は、特定の観念が生ずるものではないから、本件商標と引用商標6及び7とは、観念上比較することはできない。 エ 以上のとおり、本件商標と引用商標1ないし7とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。 (4)以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものと認める。 2 商標法第4条第1項第15号について (1)引用商標8及び9の著名性 ア 甲第13号証ないし甲第23号証及び請求の理由によれば、請求人は、1919年(大正8年)に、食品工業株式会社として設立され、各種食料品の製造販売を開始し、1925年(大正14年)に、マヨネーズの販売を開始した。請求人は、マヨネーズの発売開始以来現在に至るまで、一貫して「キューピー人形」の図形をマヨネーズをはじめとする請求人の業務に係る商品の広告等に使用しており、昭和32年には商号を「キューピー株式会社」に改めた(甲13)。 「酒類食品産業の生産・販売シェア」の平成17年度版(甲14)及び同平成19年度版(甲15)によれば、請求人の業務に係る商品であるマヨネーズ、液状ドレッシング及びソース類缶詰の平成11年度から平成16年度までの販売シェアは業界1位であったこと、また、パスタソースの平成15年度及び平成16年度までの販売シェアは業界2位であり、スープ類の同時期の販売シェアも業界2位であったこと、さらに、ベビーフードの平成11年度から平成18年度までの販売シェアは業界2位であったこと、などを認めることができ、また、請求人は、商品分野を限定しない企業全般を対象とした「企業ブランド調査」(2003年ないし2007年にかけて発行された新聞に掲載されたもの:甲16?甲20)、「食の安全・安心ブランド調査」(2004年ないし2006年にかけて発行された新聞に掲載されたもの:甲21?甲23)において高い評価を得たこと、などを認めることができる。 イ 上記アで認定した事実によれば、引用商標8及び9は、請求人の業務に係る商品「マヨネーズ、液状ドレッシング、ソース類缶詰、パスタソース」等の調味料を中心とした加工食品を表示するものとして、当該商品分野あるいはこれと密接に関連する分野においては、本件商標の登録出願日(平成17年10月25日)前には既に、我が国の需要者の間に広く認識されていたものであって、その著名性は、本件商標の登録査定日(平成18年12月14日)にも継続していたものと認めることができる。 (2)本件商標と引用商標8及び9との類似性 引用商標8は、「裸体で頭と目が大きく、頭の先にとがった頭髪があり、背中には小さな翼のある」といった特徴を備えた「キューピー人形」の図形よりなるものである。また、引用商標9は、「キューピー」の文字を横書きしてなるものである。 したがって、引用商標8及び9は、その構成に相応して、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。 しかしながら、上記1(1)認定のとおり、本件商標は、その構成全体をもって、一体不可分の商標を表したと認識されるものであるから、その構成中の「KEWPIE」、「キューピー」の文字部分のみが独立して自他役務の識別機能を発揮するものではない。 してみると、本件商標は、引用商標8及び9とは、本件商標と引用商標1ないし7との類否判断の理由と同様の理由により、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。 (3)出所の混同 上記(1)のとおり、引用商標8及び9は、請求人の業務に係る商品「マヨネーズ、液状ドレッシング、ソース類缶詰、パスタソース」等の調味料を中心とした加工食品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、マヨネーズ等の調味料を中心とした加工食品の分野あるいはこれと密接に関連する分野の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。 しかしながら、上記(2)認定のとおり、本件商標は、引用商標8及び9とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。 そうすると、本件商標に接する取引者及び需要者は、引用商標8及び9を想起又は連想することはないというべきであり、したがって、本件商標は、これをその指定役務について使用しても、請求人又はこれと何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。 (4)商標法第4条第1項第15号に関する請求人の主張について ア 請求人は、「キューピー」は、食品分野の枠を超えた著名性を獲得している旨主張する。 しかし、上記(1)認定のとおり、引用商標8及び9が著名性を獲得していると認めることができる範囲は、マヨネーズ等の調味料を中心とした加工食品の分野あるいはこれと密接に関連する分野に限られるとみるのが相当であって、「我が国においては,多数の企業が『キューピー』のキャラクターを宣伝広告に使用してきた事実に照らすと,我が国において,『キューピー』が相当程度普遍的ないしは一般的なキャラクターとして認知されていた事実を否定することは困難である」(甲9(前出の判決)の30頁)ことからすると、引用商標8及び9の独創性は決して高いものではないこと、引用商標8及び9がマヨネーズ等の調味料を中心とした加工食品以外の分野の商品及び役務について使用され、本件商標の登録出願日前より、我が国の需要者の間に広く認識されていた事実を認めるに足りる証拠の提出はないことを併せ考慮すれば、上記以外の分野においては、著名性を獲得しているものと認めることはできない。 したがって、上記請求人の主張は理由がない。 イ 請求人は、引用商標8及び9の著名性の根拠として、防護標章の登録が認められていること、引用商標8及びこれと「KEWPIE」の文字からなる商標は、日本の著名商標として紹介されていることを挙げる。 しかし、請求人が、引用商標8及び9について、商品及び役務の区分第42類の防護標章登録を得ているとしても、上記認定のとおり、本件商標は、引用商標8及び9とは、非類似の商標であるから、請求人が上記防護標章登録を得ている事実をもって、本件商標についての混同の問題を論ずることは妥当ではない。また、引用商標8及びこれと「KEWPIE」の文字からなる商標が日本の著名商標として紹介されている事実があるとしても、上記と同様、これらの商標と本件商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても非類似の商標である。 したがって、上記請求人の主張はいずれも理由がない。 ウ 請求人は、本件商標が他人の著名な商標と他の文字を結合した商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当するとして、商標審査基準(改訂第9版)を挙げる。 しかしながら、「キューピー」の語が「キューピッドの絵を模したセルロイド製のおもちゃ」(広辞苑)を意味する一般的な語として広く認識されている実情からすれば、本件商標中の「KEWPIE」、「キューピー」の文字部分は、特定の企業と結びつくものではなく、本件商標をその指定役務について使用しても、請求人の業務に係る商品との間に出所の混同を生ずるおそれはないとみるべきであるから、本件商標については、上記商標審査基準の原則論は妥当しないというべきである。 エ 請求人は、多くの食品製造販売業者が「飲食物の提供」の業務をも行っている実情にあること、「飲食物の提供」において、請求人の業務に係るベビーフードがそのまま提供されたり、マヨネーズ等の調味料が顧客の利用のために店舗内に置かれることが多いことからすると、本件商標をその指定役務中の「飲食物の提供」について使用した場合は、該役務が請求人又はこれと何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、出所の混同を生ずるおそれが高い旨主張する。 しかし、甲第31号証ないし甲第36号証によれば、食品製造販売業者が「飲食物の提供」の業務をも行っている事実がうかがえるものの、我が国において、極めて多数存在する食品製造販売業者のうち、5、6社程度の企業が「飲食物の提供」の業務をも行っていることをもって、食品製造販売業者が「飲食物の提供」の業務をも行っているのが商取引社会における一般的実情とまでいうことはできない。そして、請求人が「飲食物の提供」の業務をも行っている事実を裏付ける証拠の提出はない。また、「飲食物の提供」の場において、請求人の業務に係る商品が料理の原材料に使用されたり、あるいは、引用商標8又は9が表示された調味料等が直接顧客に使用されるなどの事情が存在するとしても、上記認定のとおり、本件商標は、その構成全体をもって、一体不可分の商標を表したと認識されるものであるから、その構成中の「KEWPIE」、「キューピー」の文字部分のみが独立して自他役務の識別機能を発揮するものではないこと、及び、「我が国においては,多数の企業が『キューピー』のキャラクターを宣伝広告に使用してきた事実に照らすと,我が国において,『キューピー』が相当程度普遍的ないしは一般的なキャラクターとして認知されていた事実を否定することは困難である」(甲9(前出の判決)の30頁)ことからすれば、「KEWPIE」及び「キューピー」の文字が含まれている本件商標を「飲食物の提供」について使用したとしても、そのことのみをもって、当該商標に接する需要者が直ちに、引用商標8及び9又は請求人を想起又は連想し、当該役務が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると誤信されるおそれがあるということはできない。その他、本件商標がその指定役務中の「飲食物の提供」に使用された場合について、該役務が請求人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、出所の混同を生ずるおそれがある旨の請求人の主張は、上記と同様の理由により、いずれも理由がない。 (5)以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しないものと認める。 3 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 平成24年10月 4日 審判長 特許庁審判官 寺光 幸子 特許庁審判官 酒井 福造 特許庁審判官 田中 敬規 別掲 A 本件商標 B 引用商標 (A)引用商標1 (B)引用商標2及び9 (C)引用商標3及び8 (D)引用商標4 (E)引用商標5 (F)引用商標6及び7 (色彩については原本参照) |
審理終結日 | 2013-07-04 |
結審通知日 | 2013-07-09 |
審決日 | 2013-08-22 |
出願番号 | 商願2005-104912(T2005-104912) |
審決分類 |
T
1
12・
262-
Z
(Y43)
T 1 12・ 263- Z (Y43) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 清川 恵子 |
特許庁審判長 |
関根 文昭 |
特許庁審判官 |
手塚 義明 原田 信彦 |
登録日 | 2007-02-02 |
登録番号 | 商標登録第5022219号(T5022219) |
商標の称呼 | ローズオニールキューピー、ローズオニール、キューピー、ロセオネイルキューピー、ロセオネイル |
代理人 | 柏 延之 |
代理人 | 宇梶 暁貴 |
代理人 | 黒瀬 雅志 |
代理人 | 山本 隆司 |
代理人 | 宮城 和浩 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 矢崎 和彦 |
代理人 | 高田 泰彦 |
代理人 | 中川 拓 |
代理人 | 井奈波 朋子 |