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審決分類 審判 全部無効 商3条柱書 業務尾記載 無効としない W12
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない W12
管理番号 1278990 
審判番号 無効2012-890105 
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-12-07 
確定日 2013-09-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第5501594号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5501594号商標(以下「本件商標」という。)は、「ゲオバイク」の片仮名を標準文字で表してなり、平成24年1月5日に登録出願、第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」を指定商品として、同年5月7日に登録査定、同年6月15日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び上申を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第22号証を提出した。
1 請求の理由
(1)商標法第3条第1項柱書の該当性について
ア 登録査定時における具体的な事情について
(ア)本件商標の使用状況及びその使用予定の有無等
被請求人は、小売サービス事業及びアミューズメント事業を営むことなどを目的として平成元年1月10日に設立された会社であり、現在は、小売サービス事業及びアミューズメント事業等を営むグループ会社の経営企画や管理を事業内容としている(甲2ないし7)。
a 小売サービス事業について
小売サービス事業の中心は、「ゲオショップ」の運営と商品流通の全国展開であり、該「ゲオショップ」では、DVD・CD・コミック・ゲームソフト・書籍などのパッケージソフトが、レンタル・中古売買・新品売買という3通りの方式で提供されている(甲2及び3)。
小売サービス事業について、被請求人及び被請求人のグループ会社(請求人を除く。)(以下「被請求人グループ」という。)が「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」に係る事業を行っている事実は存在しない。
b アミューズメント事業について
アミューズメント事業として、「GEO DINOS」、「GEO CAFE」、「GEO FITNESS」及び「あなたのウェアハウス」が運営されており、「GEO DINOS」では、ボウリング場、アーケードゲーム、カラオケなどのサービスが提供されており、「GEO CAFE」ではインターネットカフェなどのサービスが提供されており、「GEO FITNESS」ではスポーツジム・スパなどのサービスが提供されており、「あなたのウェアハウス」では、アーケードゲーム、ビリヤードなどのサービスが提供されている(甲2及び3)。
アミューズメント事業について、被請求人グループが「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」に関する事業を行っている事実は存在しない。
c その他の事業
卸売やシステムサービスなどの事業は、株式会社アムス、株式会社ゲオウェブサービス、株式会社アシスト、株式会社ゲオビジネスサポートによりなされており、フランチャイズ店舗の運営は、株式会社ティー・アンド・ジーによりなされている(甲2及び3)。
卸売やシステムサービスなどの事業について、被請求人グループが「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」に関する事業を行っている事実は存在しない。
以上によれば、本件商標の登録査定時において、被請求人グループは、本件商標を一度も使用した事実が存在しない。
また、被請求人グループは、「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」に関する事業それ自体を行ったことはなく、被請求人の会社案内(甲2)、ホームページ(甲3)、履歴事項全部証明書(甲4)及び有価証券報告書(甲5ないし7)からも、「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」に関する事業を近い将来において行うとする具体的な予定も一切存在しない。
(イ)請求人の事業の内容及び「ゲオバイク」の使用状況
請求人は、平成14年5月1日に設立された会社であり、平成22年3月20日から今日に至るまで、「ゲオバイク」の文字からなる商標及び「ゲオバイク」の文字を含む商標(以下「ゲオバイク商標」という。)を使用してバイク買取、中古バイク査定及び中古バイク販売の事業を行っている(甲8ないし11)。
請求人は、平成20年3月6日に、バイク買取サービスの商標を「モトソニック」から「ゲオモトソニック」に変更し、平成22年3月20日にバイク買取サービスの商標を「ゲオモトソニック」から「ゲオバイク」に、バイク販売の商標を「モトソニックダイレクト」から「ゲオバイクダイレクト」に変更している(甲11)。
ゲオバイク商標は、同年3月20日から今日に至るまで、全国規模で、請求人により継続して使用されている。
そして、請求人がこれらの商標をバイク買取、中古バイク査定及び中古バイク販売の事業に使用を開始した平成22年3月から同24年10月までの請求人の純売上高は、7,028,470,000円であり、また、広告宣伝費は、292,959,000円にのぼっている(甲12)。その結果、請求人は、中古バイク市場において業界2位の地位を保っている。
(ウ)被請求人が本件商標の登録出願に至った経緯
a 業務提携関係及び商標使用許諾関係
請求人は、平成19年10月11日付けで、被請求人及び株式会社ゲオ(同23年11月1日付け被請求人の新設分割の方法による会社分割により新設された会社。)との間で「両社の企業価値向上に向け業務提携を行う」ことを内容とする資本業務提携に関する基本合意(以下「本件基本合意」という。)をした(甲13)。
そして、請求人は、本件基本合意に基づく業務提携の一環として、被請求人の承諾の下で、同20年3月6日から、被請求人が使用していた「ゲオ」の各商標を含む「ゲオモトソニック」の使用を開始した(甲11)。
ところが、株式会社ダイエー(以下「ダイエー」という。)が商標「GEO\ジ オ」(指定商品第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」)について商標権を有していたことから(甲14)、被請求人は、ダイエーから同商標について、指定商品第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」について通常使用許諾を受けた上で(甲15)、さらに、被請求人と請求人との間で商標再使用許諾契約を締結した(甲16)。
なお、請求人は、被請求人に対して、今日に至るまで、平成21年5月1日付け商標再使用許諾契約書(甲15)第2条に規定する商標再使用料(毎月28,413円)を支払い続けている(甲17)。
b 本件商標の登録出願について
被請求人は、平成22年8月11日に、請求人の普通株式6,500株を他社に譲渡し、同年1月31日には、請求人に対し、請求人が被請求人の関連会社又はグループ会社ではなくなったとの理由で同グループ会社である旨の表示の中止及び同21年5月1日付け締結の商標再許諾契約の解除を求める書面を送付している(甲18)。
被請求人は、平成24年1月5日に本件商標の登録出願をしている。
そして、本件商標が同年5月7日に登録査定となった直後の同月29日には、請求人に対して、「ゲオバイク」商標等の中止を求める差止請求訴訟を提起している(甲19)。
また、同年10月4日には、「訴えの変更申請書」を提出して、本件商標に基づく差止請求権の行使を追加している(甲20)。
イ 小括
以上のとおり、本件商標の登録査定時において、被請求人グループが、本件商標を指定商品に係る自己の業務に現に使用していたとの事実が認められないことは明らかである。
加えて、本件商標の登録査定時において、被請求人グループが、指定商品に係る自己の業務において本件商標の使用を開始する具体的な予定を有していたとの事実も存在しないこと、平成22年3月20日から今日に至るまで、請求人のみが、「ゲオバイク商標」を中古バイクの販売等に使用していること、本件商標が請求人に対し、商標の使用差止をすることのみの理由で登録出願をすすめられたものであると容易に推認できること、これらの事情を総合的に考慮すると、本件商標の登録査定時において、被請求人には、客観的にみて、本件商標を自己の業務に使用する意思があったとは到底いえないものである。
したがって、本件商標は、登録査定時において、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に該当しないというべきであり、その登録は、商標法第3条第1項柱書に違反するものである。
(2)商標法第4条第1項第7号の該当性について
ア 登録査定時における具体的な事情について
(ア)請求人の事情
請求人は、平成22年3月20日から今日に至るまで、「ゲオバイク商標」を中古バイクの販売等に使用しており、これら商標を「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」について出願し得る立場であること、被請求人と請求人の間には、密接な業務提携関係及び商標使用許諾関係を有するため、請求人は、「ゲオバイク商標」の出願をしなかったこと、請求人は、被請求人訴訟を提起するまでは、「ゲオバイク商標」の使用について、被請求人から何らのクレームもなかったこと、請求人は、今日に至るまで被請求人に商標再使用料を支払い続けている(甲17)ことなどの事情が存在する。
以上のことから、請求人は、「ゲオバイク商標」を、何ら問題なく、継続して使用することができるものと認識していた。
(イ)被請求人が本件商標の登録出願に至った経緯
本件商標の登録査定時に、被請求人グループが本件商標をその指定商品に係る自己の業務に現に使用していた事実は認められないこと、また、被請求人グループがその指定商品に係る自己の業務に本件商標の使用を開始する具体的な予定を有していた事実も存在しないこと、さらに、被請求人は、請求人が平成22年3月20日から今日に至るまで中古バイクの販売等に「ゲオバイク商標」の使用をしていることを十分承知していること、にも拘らず、被請求人は、同24年1月5日に本件商標を出願したことなどの事情が存在する。
被請求人は、平成24年(ワ)第15211号営業表示使用差止等請求事件において、請求人が使用している「ゲオバイク商標」に対して、要部が「ゲオ」の部分にあると主張していることから(甲19)、被請求人自身は、ダイエーの商標「GEO\ジ オ」と「ゲオバイク」とが類似する商標であると認識しつつも、一方的に請求人の商標の使用を差し止めるための目的で本件商標の登録出願をしたものと推測される。
すなわち、本件商標は、前記ダイエーの商標権が存在するにも拘らず、その登録がなされたものであるが、このような本件商標の登録出願を客観的にみた場合、被請求人は、本件商標について粛々と登録出願を行い、仮にその登録がなされた後に、請求人に「ゲオバイク商標」の使用の中止を求める意図のみ、すなわち、請求人に対して本件商標に係る商標権に基づく差止請求権を行使するためのみの理由で、登録出願をしたものというべきである。
イ 小括
したがって、本件商標は、本件商標の登録査定時において、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものというべきであり、その登録は、商標法第4条第1項第7号に違反するものである。
(3)結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書及び同法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号に該当し、その登録は無効とすべきものである。
2 平成25年3月22日付け上申書
(1)商標法第3条第1項柱書の該当性について
ア 被請求人グループは本件商標の登録査定時において指定商品、第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」に係る業務を行っておらず、また、行う予定も存在しなかったこと
(ア)被請求人は、「現実に指定役務に係る事業を開始しており」、「実際に、数年前より株式会社セカンドストリートの店舗では中古自転車等の販売が行われていた上、被請求人としても、ゲオショップにおける自転車及びその部品・附属品の小売を検討していた」と主張し、「現在、実際に自転車の小売事業を行うに至っている(乙5)。具体的には、被請求人の子会社である株式会社ゲオ(以下「子会社ゲオ」という。)の運営するゲオ鈴鹿西条店において、新古自転車の販売、買取、整備及び修理サービスを行っている(乙6)」、「被請求人が、本件商標を自己の業務に係る商品又は役務について使用をしないことが明らかであったという事情は存しないばかりか、むしろ積極的に本件商標を使用する事業の展開を予定し、実際に、本件商標の指定商品に係る事業を開始している」と主張する。
(イ)しかしながら、子会社ゲオの運営するゲオ鈴鹿西条店において、第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」に係る業務は行われていない以上、本件商標は、「自己の業務に係る商品、第12類『二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品』について使用をする商標」ということはできない。
(ウ)ゲオ鈴鹿西条店においては、CD及びDVDのレンタル・販売・買取、ゲームの販売・買取、本のレンタル・販売・買取、中古携帯電話の買取の各サービスが提供されているとともに(乙6)、自転車並びにその部品及び附属品の販売・買取・修理の各サービスが提供されているが、取り扱われる商品は、被請求人が製造する商品ではなく、被請求人以外の第三者が製造する商品である。
その販売形態を見ても、第三者が製造する商品を多数仕入れ、多種多様な品揃えをした上で、消費者に販売するものである。
そうすると、被請求人は、自ら製造する第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」の販売業務を行っているとは到底いえず、純然たる小売業である第35類「自転車並びにそれらの部品及び附属品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に係る業務を行っているにすぎないといわざるを得ない(甲22)。
被請求人は、第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」に係る業務を被請求人が行っていることを示す事実について何ら示しておらず、被請求人において第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」に係る業務は行われてはいないのである。
そうである以上、本件商標は「自己の業務に係る商品、第12類『二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品』について使用をする商標」とはいえず、被請求人による前記各主張は、第35類「自転車並びにそれらの部品及び附属品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に係る業務と第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」に係る業務とを混同したものといわざるを得ず、当を失するものである。
(エ)また、被請求人は、本件商標の登録査定時において第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」に係る業務を行う予定があることを示す商標の使用の意思を明記した文書や、その準備状況を示す事業計画書など、具体的な予定に関する客観的な証拠を何ら示していないものである。
それ故、客観的にみて、近い将来において、被請求人の業務に係る第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」に商標が使用される蓋然性を認め得る事情も存在しない。
(オ)ところで、我が国の商標法が、登録主義を前提として、現実的に存在する業務上の信用のみならず、未必的に可能性として存在する業務上の信用をも保護の対象としていることを、請求人は必ずしも否定するものではない。
しかしながら、ここで保護の対象としている現実的に存在する業務上の信用及び未必的に可能性として存在する業務上の信用は、「自己の業務に係る商品について使用をする商標」又は「自己の業務に係る役務について使用をする商標」と同一の範囲、すなわち、商標権者が法律上、独占的に使用をすることができる専用権の範囲において、現実に指定商品又は指定役務に係る自己の業務が存在し、又は、少なくとも将来において指定商品又は指定役務に係る自己の業務を開始する具体的な予定があることを前提としているものである。
なぜなら、商標権者が法律上、独占的に使用をすることができる範囲は、あくまで指定商品又は指定役務について登録商標を使用する範囲、すなわち専用権の範囲のみであり(商標法25条)、類似範囲の商標の使用の範囲、すなわち禁止権の範囲は、他人の使用を禁止しまたは排除し得るだけで、積極的にその部分を使用する法律上の保護は何ら与えられておらず、他人の権利によって制限されない限り、商標権者がその部分を事実上使用できる範囲にすぎないからである。
そこで、商標権の効力範囲の観点から被請求人の業務の状況を見ても、被請求人は、禁止権の範囲にすぎない第35類「自転車並びにそれらの部品及び附属品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に係る業務を行っているにすぎないものであり、本件商標の専用権の範囲である第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」に係る業務においては、現実的に業務上の信用が生じていないことは勿論、未必的に可能性として存在する業務上の信用をも生じていない。
イ 小括
本件商標は、本件商標の登録査定時において、被請求人が自己の業務に係る第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」に現に使用する商標ではなく、また、近い将来において自己の業務に係る第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」でもないことから、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に該当しないというべきであり、その登録は、商標法第3条第1項柱書に違反するものである。
(2)商標法第4条第1項第7号の該当性について
ア 被請求人は専ら請求人に対して本件商標に係る商標権に基づく差止請求権を行使する目的で本件商標の登録出願をしたこと
(ア)被請求人は、「被請求人は、本件商標の指定商品である自転車を含めた新規商材の販売を検討していたところ、その中で、本件商標を取得したものである。そして、被請求人は、実際に、子会社ゲオでの自転車販売事業を検討の上、実行に移している。」、「新規事業への使用可能性を確保すべく行われた被請求人の商標出願が排除されるいわれはない。」と主張する。
(イ)しかしながら、本件商標の登録査定時において、被請求人グループが、第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」に係る業務を現に行っていたという事実が認められず、また、「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」に係る業務を行うことについて具体的な予定を有していたとの事実も存在しないため、本件商標の出願の意図が「新規事業への使用可能性を確保すべく行われた」ものであるとは到底認めることはできないものである。
また、被請求人は自ら製造する第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」の販売業務ではなく、純然たる小売業である第35類「自転車並びにそれらの部品及び附属品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に係る業務を行っているにすぎない。こうした被請求人の業務が小売業であるという現実の形態に則すると、被請求人は、第35類「自転車並びにそれらの部品及び附属品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について本件商標の登録出願を行うべきであるところ、小売役務商標制度が平成18年に導入される以前の登録出願であれば兎も角、同制度が導入された後に、何ら事業が行われず、また、その予定もない第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」について登録出願したことには、請求人に対する悪意を感じ取らざるを得ない。
イ 小括
以上のとおり、本件商標は、請求人の事情、被請求人が本件商標の登録出願に至った経緯等から、専ら請求人に対して本件商標に係る商標権に基づく差止請求権を行使するためのみの理由で、登録出願がなされたものである。
他方で、その登録出願時、登録査定時、さらに商標登録後においても、被請求人グループが本件商標を第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」に係る業務において現に使用した事実は認められず、また、将来において本件商標を使用する具体的な計画があることも認められないものであるから、本件商標には、被請求人の信用が全く化体されているとはいえない。
これらの事情にかんがみれば、被請求人の本件商標に係る商標権に基づく差止請求権等の行使のみを目的として登録をすることは、商標法の趣旨・目的、とりわけ、いわゆる登録主義の法制下においての濫用的な商標登録を排除し、登録商標制度の健全な運営を確保する趣旨・目的に反する結果を招来することは必至である。
よって、被請求人の本件商標に係る商標権に基づく差止請求権等の行使は、客観的に公正な競業秩序を乱すものであり、権利の濫用に当たるものとして到底許されないものであって、このような差止請求権の根拠となる本件商標の登録を認めることは、商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものである。
したがって、本件商標は、その登録査定時において、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものというべきであり、その登録は、商標法第4条第1項第7号に違反するものである。
(3)結語
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書及び同法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号に該当し、その登録は無効とすべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。
1 商標法第3条第1項柱書の該当性について
(1)被請求人には本件商標使用の意思及び予定があることについて
ア 被請求人は、ゲオショップにおける販売や子会社である株式会社セカンドストリートが経営するリユースショップ等における販売なども含め、様々なジャンルの新中古商品の販売の開拓を目指してきた企業である。実際に、数年前より株式会社セカンドストリートの店舗では中古自転車等の販売が行われてきていた上、被請求人としても、ゲオショップにおける自転車及びその部品・附属品の小売を検討していた。
イ 被請求人は、ゲオショップにおける自転車及びその部品・附属品の小売を検討していた上、現在、実際に自転車の小売事業を行うに至っている(乙5)。具体的には、子会社ゲオの運営するゲオ鈴鹿西条店において、新古自転車の販売、買取、整備及び修理サービスを行っている(乙6)。
これは、自転車販売が有力な商材になり得るという被請求人の事業推進部の判断により、自転車販売事業の全国展開の可能性を探るため、平成24年10月20日から、ゲオ鈴鹿西条店において全国に先駆けて販売を開始したものであり、現在、他のゲオショップでの事業展開も検討されている。
なお、ゲオ鈴鹿西条店では、「ゲオバイク」の商標そのものは用いておらず、現時点では「GEO BICYCLE」と表記されたロゴを用いているが(乙7)、これは請求人が「ゲオバイク」の使用を継続しており、被請求人と請求人の誤認混同が生じる懸念があるためであって(乙5)、ロゴの検討過程においては、「GEO BIKE」という本件商標を欧文字表記とした商標を使用したロゴも候補にあがっていたものであるし(乙7)、被請求人としても、請求人による本件商標の不正使用が止めば、本件商標の使用を視野に入れているものである。
(2)小括
以上より、被請求人が、本件商標を自己の業務に係る商品又は役務について使用をしないことが明らかであったという事情は存しないばかりか、むしろ積極的に本件商標を使用する事業の展開を予定し、実際に、本件商標の指定商品に係る事業を開始しているのであるから、本件商標が「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」でないということはできず、請求人の商標法第3条第1項柱書違反に係る主張には理由がない。
2 商標法第4条第1項第7号の該当性について
(1)被請求人による本件商標の出願経緯に本号を適用すべき特段の事情は存しないこと
被請求人は、本件商標の指定商品である自転車を含めた新規商材の販売を検討していたところ、その中で、本件商標を取得したものである。
そして、被請求人は、実際に、子会社ゲオでの自転車販売事業を検討の上、実行に移している。
これに対して、請求人は、平成22年3月20日から本件商標を使用してきたと主張しているものの、被請求人(契約当時は株式会社ゲオ)が請求人と商標再使用許諾契約(甲15)を締結し、「ゲオバイク」の使用を認めていたのは、請求人が被請求人の関連会社であることを前提としたものであり、請求人もそのことは十分認識していた。
また、請求人自身も認めているとおり(乙8ないし10)、請求人は被請求人のゲオブランドを利用するために「ゲオ」の名を冠した営業表示を使用するに至ったのであり、自身の信用を化体するものとして「ゲオバイク」を使用していたものではなく、ましてや、「ゲオバイク」を登録出願し得る立場にあったとはいえない。
かかる経緯に照らせば、請求人が被請求人の関係会社でなくなった以上、請求人が「ゲオバイク」の営業表示(本件商標)を使用し得る立場にはなく、新規事業への使用可能性を確保すべく行われた被請求人の商標出願が排除されるいわれはない。
また、仮に、被請求人の出願動機が、専ら請求人に対する差止請求にあったとしても、あくまでも先行する不正競争防止法に基づく営業表示不正使用差止めを商標法の観点からサポートするものである。「ゲオバイク」の標章は、元来、被請求人の営業表示であって、被請求人の信用の源泉というべきものなのである。このように、「ゲオバイク」の価値が専ら被請求人に対する信用に起因していることからすれば、被請求人の商標出願は自らの権利保護のために合理性のあるものといえ、商標法の予定する秩序からして容認し得ないとか、商標法第4条第1項第7号を拡大解釈して出願を排除すべき特段の事情があるとは到底いえない。
(2)小括
以上より、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してなされたものではない。
3 結び
よって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書及び同法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではない。

第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項柱書の該当性について
(1)商標法第3条第1項は、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。」と規定し、登録出願に係る商標がその出願人において、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」であることを商標の登録要件として定めている。
そして、商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」として登録を受けられる商標は、現に使用している商標だけでなく、使用する意思があり、かつ、近い将来において使用する予定のある商標も含まれるものと解すべきである。
(2)提出された証拠及び被請求人の主張によれば、次のとおりである。
ア 被請求人の「履歴事項全部証明書」(甲4)の目的欄の4/27頁から5/27頁には、「(1)次の事業を営む会社及びこれに相当する事業を営む外国会社の株式を保有することにより当該会社の事業活動の支配・管理することを目的とする。」、「2.・・・自動車、スポーツ用品・・・の販売並びにレンタル」、「4.古物の売買並びにその受託販売」及び「(2)前項各号に定める事業及びこれに附帯または関連する事業を営むことができる。」との記載がある。
イ 被請求人の「GEO online」のウェブサイト(乙6)には、「ゲオ鈴鹿西条店」、「・自転車始めました!/販売/買取/整備/修理はモチロン/新品中古常時200台以上!・・・」及び「セール期間:12月8日(土)?12月21日(金)」との記載がある。
これに対し、被請求人は平成24年10月20日から自転車を販売していたと主張しているところ、「12月8日(土)?12月21日(金)」の日付は、平成24年12月のカレンダーと符合する。
(3)以上によれば、以下のとおり判断するのが相当である。
前記(2)の他、提出された証拠からは、本件商標の登録査定時において、被請求人が本件商標を使用した事実は認められない。
しかしながら、被請求人の「履歴事項全部証明書」(甲4)の目的欄には、「4.古物の売買並びにその受託販売」及び「(2)前項各号に定める事業及びこれに附帯または関連する事業を営むことができる。」との記載があり、被請求人の業務の目的には、中古自転車の販売を含む古物の売買が含まれること、また、被請求人は、遅くとも平成24年12月頃には、中古自転車を含む「自転車」の販売を開始したことが認められる。
これらの事情を考慮すれば、被請求人に本件商標の登録査定時において本件商標を自己の業務に係る商品に使用する意思があり、かつ、近い将来において使用する予定のあったことを否定することはできない。
(4)小括
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書に違反して登録されたものとはいえない。
2 商標法第4条第1項第7号の該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」のある商標は商標登録をすることができないと規定しているところ、同規定は、商標自体の性質に着目した規定となっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については、同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること、商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである。そして、同規定の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである(平成14年(行ケ)第616号、平成19年(行ケ)第10391号ほか)と解される。
(2)本件において、請求人は、「本件商標は、請求人の事情、被請求人が本件商標の登録出願に至った経緯等から、専ら請求人に対して本件商標に係る商標権に基づく差止請求権を行使するためのみの理由で、登録出願がなされたものである。」旨主張するので、以下、検討する。
請求人及び被請求人から提出された証拠によれば、次のとおりである。
ア 甲第10号証は、請求人のホームページの抜粋であるところ、その1葉目には「TODAY’S/NEWS/2012.11.28」との記載があり、また、その2葉目には「GEOバイクを運営する株式会社アークコアは株式会社ゲオのグループ会社です。」との記載がある。
イ 甲第13号証は、被請求人の旧会社名である株式会社ゲオ(以下「旧ゲオ」という。)(甲)と請求人(乙)が、2007年10月11日付けで締結した「資本業務提携に関する基本合意書」であるところ、第1条(基本合意)には、「・・・甲及び乙は両社の企業価値向上に向け業務提携を行う。・・・乙は甲の持分法適用関連会社となる。」との記載があり、また、第2条(資本業務提携)には、「5.甲は、自らのブランド『ゲオ』を乙が使用することを承認し、相互にブランドネームの強化を目指す。・・・」との記載がある。
ウ 甲第15号証は、ダイエー(甲)と旧ゲオ(乙)が平成21年4月16日付けで締結した商標の使用許諾に関する書類であるところ、「第1条(商標通常使用許諾)」には、「甲は乙に対し、第2条に記載の甲の登録商標(以下「本商標」という)を通常使用許諾するものとします。」との記載があり、また、「第2条(本商標の範囲)本商標とは、次の商標権をいいます。/〈本商標〉/商標 GEO\ジオ/登録番号 登録第4262994-1-1号/登録日 平成11年4月16日/指定商品 二輪自動車並びにそれらの部品及び付属品[第12類]」との記載がある。
エ 甲第16号証は、旧ゲオ(甲)と請求人(乙)が平成21年5月1日付けで締結した「商標再使用承諾契約書」であるところ、「旧ゲオ(以下「甲」という)と請求人(以下「乙」という)とは、甲がダイエー(以下「丙」という)から使用許諾を受けた商標の再使用許諾に関し、次の通り契約(以下「本契約」という)を締結します。」及び「第1条(再使用許諾)」には、「甲は甲丙間の平成21年4月16日付で締結した商標使用承諾契約書(以下「原契約書」という)において丙から甲が使用許諾を受けた原契約書第2条に記載の丙の登録商標を原契約に定めた甲の権利義務の範囲内で乙に再使用承諾するものとし、乙はこの範囲内で使用するものとします。・・・」旨の記載があり、また、「第6条(解除)・・・2.甲は、前項の規定にかかわらず、乙が、次の各号のいずれかに該当するときは、何らの通知・催告を要せず、本契約を解除することができるものとします。(1)支払いの停止をしたとき・・・(2)差押・・・(6)乙が甲の関連会社でなくなったとき。(7)その他・・・」との記載がある。
オ 甲第18号証は、被請求人が平成24年1月31日付けの書留内容証明郵便物として請求人へ宛てて差し出した「通知書」であるところ、その1葉目ないし2葉目には「当社は、平成22年8月11日に貴社普通株式65百株をNEWTONE INVESTMENT LIMITEDに譲渡し、貴社は、当社の関連会社ないしグループ会社ではなくなりました。ところが、貴社は、現在も、貴社の運営するウェブサイト(・・・)において、『GEOバイクを運営する株式会社アークコアは株式会社ゲオのグループ会社です。』と表示しております。また、貴社は、貴社ラジオCMにおいて、貴社が『株式会社ゲオのグループ会社』である旨のフレーズを使用しております。」との記載があり、また、その3葉目には「貴社は、当社の関連会社でなくなりましたので、貴社・当社間で締結した平成21年5月1日付『商標再使用承諾契約書』を、同契約第6条第2項第6号の規定に基づき、本通知をもって解除いたします。つきましては、当社の商標、サービスマーク、ロゴ及び商号等である『GEO』及び『ゲオ』について、本通知の受領後直ちに・・・使用を中止するよう要求いたします。」との記載がある。
カ 甲第19号証は、被請求人等が、請求人に対し営業表示の使用差止を求める訴訟を提起した平成24年5月29日付けの「訴状」であるところ、その6葉目には「被告のウェブサイト(・・・)においては、冒頭に『GEO』のロゴマークを『ゲオバイク』と並べて表示しており、また、ページ下部には『GEO』と『ゲオバイク』を上下段に記載し、市松模様を下にあしらったデザインの表示を『バイク買取・中古バイク査定はゲオバイク』との文言とともに各ページ末尾に共通して表示している」との記載があり、また、その8葉目には「・・・平成23年12月21日までは、原告ゲオホールディングスと被告の役員兼任があったことから、関連会社という位置付けで『ゲオ』又は『GEO』の営業表示を引き続き使用することを許可していた。しかしながら、同日以降、原告ゲオホールディングス及び被告との間では、役員の兼任関係すらなくなったため、原告は被告に対し、関連会社ではなくなった以上、『ゲオ』又は『GEO』を営業表示に用いないよう求めたが、被告は、直ちにブランド名を変更することはできないとの理由で、『ゲオ』及び『GEO』の使用を止めることを拒絶した。原告ゲオホールディングスとしても、協議の上で一定の移行期間を認める用意はあったが、被告側からは、いつから『ゲオ』又は『GEO』の営業表示を取りやめるかについて、具体的な提案が全く得られなかったことから、当該交渉を打ち切らざるを得ないと判断し、平成24年1月31日に、本件商標再使用承諾契約を解除し、直ちに、上記営業表示の使用を中止するよう要求した。・・・」との記載がある。
キ 甲第20号証は、甲第19号証の訴訟に関する平成24年10月4日付けの「訴えの変更申立書」であるところ、2葉目の「第1 請求の趣旨の追加的変更」には「・・・不正競争防止法に基づく営業表示の使用差止め等請求に加え,選択的に,原告が保有する商標権に基づく標章使用の差止め等の請求も求める・・・」との記載がある。
ク 乙第8号証は、請求人が平成20年3月6日にプレリリースした「ブランド名の変更および各種プロモーション施策の実施に関するお知らせ」であるところ、「当社は、株式会社ゲオのグループ会社としてメリットを最大限活かすため、平成20年3月6日付けで、バイク買取サービスのブランド名を『モトソニック(Motosonic)』から『ゲオ』の名を冠したブランド名『ゲオモトソニック(GEO Motosonic)』に変更し、・・・下記のとおりお知らせいたします。」との記載、「・ブランド名変更の目的:/知名度が高く、ゲーム、DVD、CD、書籍等の買取サービスの利用者が多い、『ゲオ』の名を冠することで、お客様に覚えていただきやすいこと、身近で親しみやすいバイク買取サービスと感じていただくことを目的としています。」との記載がある。
ケ 乙第9号証は、請求人のブランド名変更に関する平成22年3月19日付けプレスリリースであるところ、「当社は、株式会社ゲオのグループ会社としてメリットを最大限活かすため、平成22年3月20日付けで、バイク買取サービスのブランド名を『ゲオモトソニック』から『ゲオバイク』に、・・・変更することといたしましたので、下記のとおりお知らせします。」」との記載、「・ブランド名変更の目的等:/・・・高い知名度を誇る『ゲオ(GEO)』ブランドと『バイク』というシンプルな言葉を組み合わせることで、お客様に対してゲオグループのバイク買取・販売サービスであるという・・・」との記載がある。
コ 乙第10号証は、2007年9月5日付けで請求人から株式会社ゲオへ宛てた「弊社ビジネスのご説明と業務提携に関するご提案」と題する書類であるところ、その13葉目には、「GEOブランドの使用」の見出しのもと「■GEOバイク(仮称)」の項に「バイク買取サービスのブランド名を『モトソニック』から認識度が高く、親近感のある『GEOバイク(仮称)』に変更することで、お客様に覚えていただきやすく、安心して利用していただけることを目指す。これにより、同じ広告媒体、同じ費用であっても効果が向上することを期待できる。」との記載、また、その20葉目には、「GEOブランドによる効果」の見出しのもと「■メジャーブランド『GEO』使用による期待感」の項に「・・・GEOがやっているんだから安心だろうとか、損することはないだろうといった想起を期待できることである。」との記載がある。
(3)以上によれば、以下のとおり判断するのが相当である。
ア 事実認定
(ア)請求人による「ゲオバイク」商標の採択の経緯
請求人は、自動車、オートバイ及びその部品、用品の販売等を行う事業者であり、平成19年(2007年)10月11日に、被請求人との間で「資本業務提携に関する基本合意書」を締結し、被請求人の承諾の下(請求人の主張:審判請求書第14頁)、平成20年3月6日から、その事業において、「ゲオモトソニック」商標の使用を開始、平成22年3月20日からは、これを「ゲオバイク」に変更し今日まで使用していること、そして、請求人が「ゲオモトソニック」、「ゲオバイク」の商標を採択した意図は、「ゲオ」の知名度を利用し、より高い顧客吸引力を得ることにあることがうかがい知れる。
(イ)「GEO\ジオ」商標について
被請求人は、訴外ダイエーの所有する「GEO\ジオ」商標(登録第4262994号商標)について、平成21年4月16日付けでダイエーとの間で通常使用権許諾契約を締結し、さらに、同商標に関し、平成21年5月1日付けで請求人との間で、商標再使用許諾契約を締結した。
そして、その商標再使用許諾契約書には、第6条(解除)に請求人が被請求人の関連会社でなくなったときには、被請求人は、何らの通知・催告を要せず、本契約を解除することができる」旨の記載がある。
(ウ)請求人と被請求人の資本業務提携関係の解消
平成22年8月11日に被請求人が請求人の株を第三者に譲渡したことにより、請求人は被請求人の関連会社ないしグループ会社ではなくなった。
(エ)本件商標の出願及び登録
本件商標は、平成24年1月5日に出願、同年6月15日に設定登録されたものである。
(オ)被請求人による通知書及び差止請求等事件の提起等
被請求人は、請求人との資本業務提携関係の解消後、平成24年1月31日付け通知書により、当該通知の受領後、直ちに、「株式会社ゲオのグループ会社である旨の表示その他一切の行為」の中止を求めると共に、平成21年5月1日付けの商標再使用許諾契約を解除し、直ちに「GEO」及び「ゲオ」の使用を中止するよう要求した。
その後、被請求人は、平成24年5月29日に、「GEO」及び「GEO ゲオバイク」等の営業表示の使用差止等を求める訴訟を提起した。
さらに、被請求人は、平成24年10月4日付の「訴えの変更申立書」により、前記訴状に、原告が保有する商標権(本件商標権)に基づく標章使用の差止め等の請求の追加した。
イ 判断
以上によれば、請求人による「ゲオバイク」の営業表示としての使用は、請求人と被請求人との間で「資本業務提携に関する基本合意書」を締結後、被請求人の承諾の下で開始されたものである。
一方、被請求人による、請求人の「ゲオバイク」の営業表示と類似する本件商標の出願及び登録は、請求人と被請求人による資本業務提携に関する基本合意の締結及びその解消、訴外ダイエーの所有する「GEO\ジオ」商標の商標再使用許諾契約を締結及び解除において生じた「GEO」及び「GEO ゲオバイク」等の営業表示の使用差止等を求める両者間の私的紛争の中で行われた行為であるといえる。
そうすると、被請求人による本件商標の出願及び登録が、被請求人との争いの中で法的に優位な立場にたつことを目的としてなされたことは否めないとしても、本来、当事者間における契約や交渉等によって解決、調整が図られるべき事項であって、一般国民に影響を与える公益とは、関係のない事項とみるのが相当である。
そして、本件商標権者が、請求人の営業表示と類似する本件商標の登録出願をし、登録を受ける行為が当然に「公の秩序や善良な風俗を害する」という公益に反する事情に該当するものとは解すことはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものとはいえない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項柱書き及び同法第4条第1項第7号に違反してされたものということはできないから、同法第46条第1項第1号により、無効とすべきものではない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2013-06-10 
結審通知日 2013-06-12 
審決日 2013-07-23 
出願番号 商願2012-154(T2012-154) 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (W12)
T 1 11・ 18- Y (W12)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 裕紀子 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 渡邉 健司
前山 るり子
登録日 2012-06-15 
登録番号 商標登録第5501594号(T5501594) 
商標の称呼 ゲオバイク、ゲオ 
代理人 藤森 裕司 
代理人 小野 吉則 
代理人 真保 玉緒 
代理人 宍戸 充 
代理人 藤田 美樹 
代理人 矢嶋 雅子 
代理人 木村 純平 
代理人 飯島 紳行 
代理人 福島 栄一 
代理人 大向 尚子 
代理人 天白 達也 

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