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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X354143
管理番号 1277933 
審判番号 無効2012-890014 
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-02-14 
確定日 2013-08-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第5404022号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5404022号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5404022号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成21年3月4日に登録出願,第35類「ゴルフに関するフランチャイズ事業の運営及び管理」,第41類「インドアゴルフ練習場の提供,パターゴルフ場の提供,ゴルフ練習施設の提供,ゴルフに関する知識の教授及びこれに関する情報の提供,ゴルフのマナーの関する知識の教授及びこれに関する情報の提供,ゴルフの教授の為のセミナーの企画・運営又は開催,ゴルフを内容とするゲーム機械器具を備えた遊技場の提供に関する情報の提供及び助言,ゴルフ用具の貸与」及び第43類「飲食物の提供」を指定役務として,平成22年5月25日に登録査定,同23年4月8日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第23号証を提出している。
(1)無効理由
本件商標は,商標法第4条第1項第15号,同第19号及び同第7号に該当し,同法第46条第1項第1号により,無効にすべきものである。
(2)無効原因
ア 請求人及び「Augusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)」について
請求人は,アメリカ合衆国 ジョージア州 オーガスタ ワシントン ロード 2604に所在する「Augusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)」を経営する米国法人である。請求人の経営するAugusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)は,いわゆる世界の4大ゴルフトーナメントの一つである「Masters Tournament(マスターズ・トーナメント)」が開催されるゴルフクラブとして世界中に知れ渡っている。
イ 「Masters Tournament」「マスターズトーナメント」「Masters」「マスターズ」の著名性について
請求人の「Augusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)は,1933年に開場され,1934年にここで,「オーガスタ・ナショナル・インビテーショナル」としてトーナメントが発足された。そして,第6回目の大会である1939年から現在の正式名称である「The Masters Tournament」と呼ばれるようになり,今日に至っている。
「マスターズトーナメント」は,男子プロゴルフ競技で格の高い世界4大メジャー大会の一つであるが,「Augusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)」で開催されるのは「マスターズトーナメント」のみである。
この大会は,招待資格を有する限られた選手しか出場できない大会として「ゴルフの祭典」と呼ばれ,このトーナメントに出場を許されることは世界中の男子プロゴルフ・プレイヤーにとって夢であり,憧れとなっている。その結果,「マスターズ」は,4大メジャー大会の中でも特に注目度が高く,日本でも最も評判の高いゴルフイベントである。
したがって,請求人が開催,運営する「マスターズトーナメント」が世界屈指の著名なゴルフトーナメントであることは周知の事実であり,これは単に「The Masters」「マスターズ」の略称で古くから親しまれている(甲第5号証)。さらに,この事実を示す証拠として,商標登録の無効審判2001-35236号の平成14年7月10日付の審決を挙げることができ,請求人の運営する「Augusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)」で開催される「マスターズ」は,わが国においては,遅くとも平成11年6月30日以前において,著名なものとなっていた(甲第6号証及び甲第7号証)。
よって「MASTERS」「マスターズ」は,本件商標の出願日である平成21年3月4日以前において著名なものとなっていたことは,明らかな事実である。
前述したとおり,「マスターズ」は,1934年に開催されて以来,ゴルフ界のいわゆる4大メジャートーナメントの一つとして,古くからゴルフの愛好者の間では著名なものとなっていたことは疑いない。
上記甲第6号証にかかる審判の審決の前後から,「マスターズ」は従来にもまして,日本を含む世界中のゴルフ愛好家を含む公衆の間においてその知名度は広く,かつ,深く浸透したものであり,さらに,タイガー・ウッズの人気や,石川遼の活躍等もあって,その結果,「マスターズ」はメディアで頻繁に取り上げられ,「マスターズ」という名称は,ゴルフ愛好者にはよりいっそう,さらに,老若男女を問わず幅広い一般の人たちの間に,請求人が開催するゴルフトーナメントの名称として,広く知れ渡っているということができる。
また,「マスターズ」のテレビジョンによる放送は,1972年の開催からTBSテレビジョンによってVTRの持ち帰りによって放送が開始され,1976年からは衛星生中継により,今日に至るまで毎年放送されている(甲第10号証)。2001年から2010年までのマスターズトーナメントのラウンドごとの視聴率は甲第11号証のとおりである。
しかして,トーナメントの開催地が米国ジョージア州であることから時差があり,日本での放映時間は,通常午前5時から午前8時頃までである。マスターズの放送時間がこのように早朝であるにもかかわらず,甲第11号証のとおり高い平均視聴率を上げ,2001年から毎年ほとんどのラウンドにおいて最高視聴率は5%を超えている。特に,2009年は,4日間全てのラウンドにおいて最高視聴率が10%を超え,2010年においても4日間中2日間も10%を超え,最終日は9.9%である。このような高い平均視聴率及び最高視聴率を挙げているのは,いかにマスターズトーナメントの人気が高く,多くのゴルフ愛好者によって観戦が待ち望まれているトーナメントであることを示すものに他ならない。
ウ 「Augusta National Golf Club」及び「Augusta」の著名性について
マスターズを開催する「Augusta National Golf Club」「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ」及びこの略称である「Augusta」「オーガスタ」も本件商標の出願日である,平成21年3月4日より相当以前から,特にゴルフ愛好者やゴルフにかかる業務を行う者の間で,著名なものとなっていたことは明らかである。
ゴルフトーナメントについては,参加するプレイヤーにとっても観戦する者にとっても,当該トーナメントがどこのゴルフ場で行われるかが関心事の一つであるといっても過言でない。それ故,特に,ゴルフトーナメントに関する記事が新聞,雑誌等に掲載される場合は,必ずそのトーナメントが開催されるゴルフ場名が記載され,そのゴルフ場の特徴などが紹介される。また,トーナメントがテレビ中継される場合は,当然ゴルフ場名及びそのゴルフ場の特徴が頻繁に紹介される。すなわち,ゴルフトーナメントが開催されるゴルフ場は,トーナメントと極めて密接な関係にあり,その結果,ゴルフトーナメントの開催記事が雑誌,新聞に掲載され,テレビ中継される場合に,ゴルフ場が紹介されないことはありえない。
とりわけ,請求人の「Augusta National Golf Club」は,そのクラブの設立と同時にマスターズが開催され,常に該クラブで毎年開催されているのである。そしてマスターズが開催される時期になるとゴルフ雑誌,新聞等においてマスターズの特集記事が組まれ,単にトーナメントの情報ばかりでなく,コースの内容や戦略方法など,様々な事柄が掲載され,またテレビジョンでも放映されている。すなわち,マスターズと「Augusta National Golf Club」は,他の3大トーナメントとは異なり,常に一心同体である。
しかして,マスターズが世界4大ゴルフトーナメントのうちでも格別に世界的に著名なゴルフトーナメントとなったのは,当然ながら,該トーナメントが常に「Augusta National Golf Club」で開催され,該ゴルフクラブが,前述したようにボビージョーンズの設計の理念に基いた,そのコースの美しさ,コースの攻略の難しさが様々なドラマを生み,トーナメントに参加するプレイヤーやこれを観戦する者全てを魅了するからであり,これは,さらに,コースコンディション作り,その他環境の整備等などトーナメントを開催するにあたり,全てにおいて,最高のトーナメントを提供するという請求人による長年にわたる不断の努力の賜物である。 よって,マスターズと相まって「Augusta National Golf Club」は,世界中の他のゴルフクラブと比べて格別に著名なゴルフクラブであるといっても過言ではない。
このように,請求人の経営する「Augusta National Golf Club」「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ」は,世界で最も有名なゴルフクラブの一つであり,これが単に「オーガスタ」と省略されて一般に呼ばれており,とりわけゴルフ関係者やゴルフ愛好者にとって「Augusta」「オーガスタ」といえば,マスターズが開催される「Augusta National Golf Club」「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ」を示すものとして認識されていることは疑いのない事実である。
甲第12号証は,2002年から2011年までの間に発行されたゴルフダイジェスト社発行のゴルフ雑誌「週刊ゴルフダイジェスト」,月刊誌の「GOLF DIGEST」,「Choice」の一部である。特に「週刊ゴルフダイジェスト」は,毎週22万冊,「月刊ゴルフダイジェスト」は,毎月13万部,「Choice」は9万5千部の発行部数を誇るゴルフ愛好者にとても人気のあるゴルフ雑誌である(甲第13号証及び甲第14号証)。 これらの雑誌の表紙や記事において「Augusta National Golf Club」「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ」を,単に「オーガスタ」と呼んでいる。
例えば,2002年4月16日号の表紙で「伊沢,丸山,片山,谷口オーガスタを攻める」と,同年4月23日号の表紙では「NEWオーガスタ出場全選手」と,同年4月30日号の記事では「順応力を試されたコース改造と雨のオーガスタ」と,2003年4月15日号の記事では「オーガスタに棲む魔物を・・・」と,同年4月29日号の記事では「オーガスタ対策の基本は・・・」と,同年5月6・13日号の記事では「オーガスタに新たな歴史が生まれた。」「オーガスタはレフティには不利。」と,2004年4月13日号の記事では「今年も挑戦権を獲得してオーガスタに挑む。」と,同年4月20日号の表紙では「オーガスタTV観戦ガイド」と「Augusta National Golf Club」「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ」を,単に「オーガスタ」と呼んでいる。
甲第15号証は,2000年から2011年までの間に発行されたゴルフ雑誌「アルバトロス・ビュー(通称:ALBA)」の一部である。この雑誌は,隔週13万冊の発行部数のわが国でも人気のあるゴルフ雑誌の一つである(甲第16号証)。例えば,2000年5月11日付け雑誌記事では,「3度目も挑戦で受けたオーガスタの洗礼」,2003年9月25日の記事では,「オーガスタもラウンドしたことがあるんです。」,2005年4月14日の記事では,「僕みたいな・・・オーガスタの魔女はきっと微笑んでくれるのです。」等,「Augusta National Golf Club」「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ」を,単に「オーガスタ」と呼んでいる。
甲第17号証は,1989年から2011年までの間に発行された,スポーツ雑誌「Number」の一部である。この雑誌は,毎月20万部冊の発行部数を誇る人気ある月刊紙の一つである(甲第18号証)。1989年3月20日の記事では「親子鷹オーガスタヘ再び」,1991年5月20日の記事では,「・・・ついに克服したオーガスタの壁」,1995年5月11日の記事では「オーガスタの風景」,2002年3月28日の記事では,「オーガスタがコース改造」等,これらの雑誌においても「Augusta NationalGolf Club」「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ」を,単に「オーガスタ」と呼んでいる。
甲第19号証は,2007年から2009年までに発行されたゴルフ雑誌「Golf Classic」の一部である。しかして,2007年4月号及び同5月号は,「オーガスタのルーツは南アフリカにあり」というタイトルの書籍についての広告である。すなわちこれから,マスターズトーナメントの開催とは関係がなく,「Augusta National Golf Club」「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ」が,単に「オーガスタ」と呼ばれていることを示すものである。
甲第20号証は,2008年4月12日付け発行の「週刊ダイヤモンド」,2002年4月18日付け発行の「週刊新潮」,2002年5月19日付け発行の「Yomiuri Weekly」,2005年4月に発行された「月刊バーサス」及び2002年から2010年までに発行された「週刊東洋経済」の一部である。これらの雑誌は,ゴルフ関係雑誌ではないが,これらの雑誌においても,「Augusta National Golf Club」「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ」を,単に「オーガスタ」と呼んでいる。すなわち,これは「オーガスタ」が「Augusta National Golf Club」「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ」を示すことが,ゴルフ関係者やゴルフ愛好者をこえて一般の人々にまで浸透していることを示すものに他ならない。
甲第21号証は,株式会社TBSテレビ作成の「MASTERS」のパンフレットである。この表紙や中の頁において,トーナメントの開催地を単に「オーガスタ」「AUGUSTA」と記載している。
また,前述のようにマスターズトーナメントのテレビ中継は早朝であるにもかかわらず高い視聴率を挙げているが,テレビ中継においてトーナメントの解説者は,「Augusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)」を「オーガスタ」と呼称している。
このように,請求人の「Augusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)」は,一般に「Augusta」「オーガスタ」と省略されて称呼されている。すなわち,これは,「Augusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)」が冗長であるからであり,また,「National Golf Club」が,ゴルフクラブとの関係では識別力が弱い言葉であるから,単に「オーガスタ(Augusta)」と言えば,容易に「Augusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)」を特定できるからである。
しかして,「Augusta(オーガスタ)」は,アメリカ合衆国ジョージア州にある一都市の地名であるが,わが国においては,これは地名としては馴染みの無い名称である。むしろ,単に「Augusta(オーガスタ)」といった場合,上記雑誌等の記事における記載の仕方からもわかるように,特に,ゴルフに関する商品の取引者,需要者,ゴルフに関係した役務の提供者や受益者,ゴルフ愛好者は,誰もがそれを,「マスターズトーナメント」が開催されるコルフクラブである「Augusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)」を示すものと認識することは明らかである。言い換えれば,ゴルフ関係者にとって,「Augusta(オーガスタ)」といえば,唯一「Augusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)」を指称するのみで,これ以外のものを示すものとして認識されることはない。
このように,「Augusta(オーガスタ)」はゴルフに関する商品の取引者,需要者,ゴルフに関係した役務の提供者や受益者,ゴルフ愛好者及びゴルフ関係者の間において,請求人の経営する「Augusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)」の極めて著名な略称である。
エ 本件商標と「Augusta」との類似性について
本件商標は,その構成中に「Augusta Club」「オーガスタクラブ」の文字及び男性がゴルフのクラブを振っている状態をシルエットで描いた図柄及び「GOLF BAR」の文字を表している。したがって,本件商標の構成自体からも,これがゴルフに関係したものに使用されることは明らかである。しかも,本件商標の指定役務は,ゴルフに関係した役務である。
すなわち,本件商標の指定役務中,第35類と第41類の役務は明らかにゴルフに関する役務であり,第35類の役務の受益者は,ゴルフに関係した事業者であり,第41類の役務の受益者は,実際にゴルフを行うゴルフ愛好者等である。さらに,第43類の役務については,「ゴルフ」の文言は指定役務の表示中には含まれていないが,ゴルフ練習場には,レストランや喫茶店などが設置され,ゴルフ練習場においてしばしば飲食物の提供が行われている。しかも,本件商標の商標権者のホームページによれば,被請求人は,シミュレーションでのゴルフを行うインドアのゴルフ練習場を提供しており,そこでお酒等を顧客に提供している(甲第22号証)。したがって,第43類に関する役務の受益者もゴルフ愛好者である。
しかして,本件商標の構成中の「Augusta Club」「オーガスタクラブ」中の「Club」「クラブ」は,ゴルフ練習場やゴルフ場という役務を提供する場所を示す言葉であるから,ゴルフに関係した役務との関係では全く自他役務識別力を有しない言葉である。
よって,本件商標中「Augusta Club」「オーガスタクラブ」の主要部は「Augusta」「オーガスタ」の部分にある。前述したとおり,「Augusta」「オーガスタ」は請求人の経営する「Augusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)」の極めて著名な略称である。
しかも,本件商標の指定役務はゴルフに関係したものであるから,本件商標の受益者はゴルフに関係したものである。
さらに,「Augusta Club」「オーガスタクラブ」は,請求人の,「Augusta National Golf Club」「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ」から中間の「National Golf」「ナショナル ゴルフ」を取り除き,「Augusta」「オーガスタ」と「Club」「クラブ」を結合させたに過ぎないものである。
したがって,本件商標に接する者は,誰もが本件商標中「Augusta」「オーガスタ」を請求人の著名なゴルフクラブの略称と認識することは明らかである。
よって,本件商標中「Augusta」「オーガスタ」は,請求人の「Augusta National Golf Club」「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ」及びこの略称である「Augusta」「オーガスタ」と称呼上及び観念上類似する商標である。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標の指定役務は,全てゴルフに関係したもの,あるいは,ゴルフ練習場で提供されるものであるから,本件商標の受益者はゴルフに関係したものである。
したがって,請求人のゴルフクラブの名称と類似する本件商標が,その指定役務について使用された場合,本件商標の受益者は,当該役務が請求人と経済的あるいは資本的に何らかの関係がある者によって提供されているかの如く,役務の出所について誤認,混同することは明らかである。
前述したように,マスターズが世界4大ゴルフトーナメントのうちでも格別に世界的に著名なゴルフトーナメントであること等と相まって「Augusta National Golf Club」は,世界中の他のゴルフクラブと比べて格別に著名なゴルフクラブであり,その名称に化体した信用や顧客吸引力は計り知れないものがある。したがって,本件商標の登録が維持され,請求人と何ら関係の無い者により,「Augusta」をその構成中に含む本件商標が自由に使用されると,請求人が長年の努力により培ってきた「Augusta National Golf Club」の名称に化体された業務上の信用が毀損されることは明らかであり,請求人が受ける損害は計り知れない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するというべきである。
(3)商標法第4条第1項第19号について
請求人が経営する「Augusta National Golf Club」は,世界屈指の著名なゴルフクラブであり,ゴルフ関係者やゴルフ愛好者であれば知らない者はいない。しかして,本件商標の指定役務はゴルフに関係したものであるから,商標権者が「Augusta National Golf Club」及びこのクラブが「Augusta」「オーガスタ」と略称されていることを知らないはずはない。商標権者は,ゴルフに関係した役務について使用する商標として,無数にある言葉の中から,「Augusta」「オーガスタ」を採択したのである。これは明らかに,「Augusta National Golf Club」のもつ顧客吸引力を利用し,不当に利益を上げることを目的として採用したに他ならない。
したがって,本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するというべきである。
(4)商標法第4条第1項第7号について
本件商標の指定役務はゴルフに関係したものであるから,商標権者は,本件商標の採択にあたり,「Augusta」「オーガスタ」の名声や顧客吸引力に便乗するものであることは明らかであり,更に商標登録することは,その名声や顧客吸引力の希釈化を進めるおそれがある。
よって,本件商標の登録は,公正な取引秩序を乱し,公の秩序を害するおそれがあるものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当するというべきである。

3 被請求人の主張
被請求人は,請求人の主張に対し,何ら答弁していない。

4 当審の判断
(1)「Augusta」及び「オーガスタ」の著名性について
請求人の主張及び提出に係る証拠によれば,以下の事実が認められる。
「Augusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)」は,アメリカ合衆国ジョージア州オーガスタ在の請求人が経営するゴルフ場の名称であり,また,当該ゴルフ場において,世界の4大ゴルフトーナメントの一つである「Masters Tournament(マスターズ・トーナメント)」が開催されるものである。
マスターズ・トーナメントは,1934年に開催されて以来,長年にわたり,毎年,上記ゴルフ場のコースでのみ行われており,世界的に有名な選手の活躍などもあって,数々の歴史的に語られる競技内容や競技者を誇る伝統あるゴルフトーナメントとして,我が国においても一般に広く知られている(甲第2号証ないし甲第7号証)。
また,マスターズ・トーナメントが開催される唯一のゴルフ場であるオーガスタ ナショナル ゴルフ クラブは,トーナメントが開催される際の特集号のみならず,例えば,2002年4月発行の「週刊ゴルフダイジェスト」をはじめ,本件商標の出願日前までに継続して発行された「週刊ゴルフダイジェスト」「月刊ゴルフダイジェスト」「Choice」のゴルフ専門誌,「Number」などのスポーツ雑誌において,「Augusta」又は「オーガスタ」の表示をもって,継続して数多く紹介されており(甲第12号証ないし甲第17号証),また,「週刊ダイヤモンド」「週刊新潮」「Yomiuri Weekly」「週刊東洋経済」などの一般の雑誌においても,同様の紹介がされていることが認められる(甲第20号証)。
さらに,マスターズ・トーナメントの模様は,1972年から録画で,1976年以降は衛星生中継で,我が国においても毎年テレビで放映されており,2001年から2010年についてみても当該番組の視聴率は高く(甲第10号証及び甲第11号証),そのテレビ放送のパンフレットを通じても,トーナメントが開催されるオーガスタ ナショナル ゴルフ クラブを「Augusta」又は「オーガスタ」の表示をもって継続的に紹介されていることが認められる(甲第21号証)。
以上の認定事実によれば,「Augusta」又は「オーガスタ」の語は,本件商標の登録出願時及び査定時において,マスターズ・トーナメントが開催される米国ジョージア州オーガスタにある請求人が経営するゴルフ場である「Augusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)」の略称として,また,当該ゴルフ場において提供される請求人の業務に係る役務を表すものとして,我が国のゴルフに関連する商品又は役務の取引者・需要者の間で広く認識されるに至っていたものと認められる。
(2)本件商標について
本件商標は,別掲のとおり,上部に,月桂樹様の装飾図形の内側にゴルフスイングをする人物の上半身をシルエット状に描いた図形を表し,その下部に,「Augusta Club」の欧文字を太く大きく表し,さらに,その下に「GOLF BAR・オーガスタクラブ」の文字を「Augusta Club」の欧文字に比べ小さく表した構成からなるものである。
しかして,本件商標は,その構成中に,ゴルフスイングをする人物を描いた図形が表示されていること,「Augusta Club」の欧文字部分が顕著に表されていること,「Club」の欧文字が「(ゴルフ・ホッケーなどの)クラブ;(会員制の)バー・娯楽場。」等の意味を有するよく知られた英語であること,ゴルフのシミュレーション機器を備えた室内のゴルフ練習場に飲食や酒類のサービスを加えた店舗や娯楽施設を指称する「GOLF BAR」の文字を有することから,全体として,「Augusta Club(オーガスタクラブ)」という名称の「ゴルフバー」を表したものと理解,認識させるものである。
そして,該「Augusta Club」の欧文字部分は,「Club」の欧文字が,ゴルフに関連する役務について,ゴルフ練習場やゴルフ場など,役務の提供の場所を表す語であって,自他役務の識別機能を有しないか,極めて弱いものといえるものであるから,本件商標は,「Augusta」の文字部分が独立して着目され得るものである。
(3)本件商標の指定役務と請求人の役務との関連性及び需要者等について
本件商標の指定役務と,請求人の業務に係る役務とは,いずれもゴルフに関連する役務であることから,これらは,役務の質(内容),用途,提供の用に供する物等を共通にする,極めて関連性が高いものというべきであって,かつ,その取引者,需要者を共通にするものである。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
「Augusta」又は「オーガスタ」の語は,前記(1)のとおり,本件商標の登録出願時及び査定時において,請求人が経営するゴルフ場である「Augusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)」の略称として,また,請求人の業務に係るゴルフ場に関連する役務を表すものとして,我が国の取引者・需要者の間で広く認識されるに至っていたものと認められる。
そして,本件商標は,その構成中,「Augusta」の欧文字部分が独立して着目され得るものであって,本件商標の指定役務と請求人の業務に係る役務との関連性及び取引者,需要者の共通性等を勘案すれば,商標権者が本件商標をその指定役務に使用した場合,これに接する者に,該文字部分から,請求人の業務に係る「Augusta National Golf Club(オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ)」を連想させ,当該役務を請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものということができる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(5)まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから,他の無効理由について論及するまでもなく,同法第46条第1項第1号により,その登録を無効とすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 <本件商標>(色彩の詳細は,原本を参照されたい。)




審理終結日 2012-08-16 
結審通知日 2012-08-21 
審決日 2012-09-14 
出願番号 商願2009-19379(T2009-19379) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (X354143)
最終処分 成立 
前審関与審査官 長澤 祥子 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 田中 亨子
梶原 良子
登録日 2011-04-08 
登録番号 商標登録第5404022号(T5404022) 
商標の称呼 オーガスタクラブ、ゴルフバーオーガスタクラブ、オーガスタ、ゴルフバー 
代理人 中村 稔 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 辻居 幸一 
代理人 松尾 和子 
代理人 田中 伸一郎 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 藤倉 大作 
代理人 加藤 ちあき 
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