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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201511702 審決 商標
審判199418881 審決 商標
審判199935082 審決 商標
異議2015900055 審決 商標
不服200511818 審決 商標

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審決分類 審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X29
審判 一部無効 観念類似 無効としない X29
審判 一部無効 称呼類似 無効としない X29
審判 一部無効 外観類似 無効としない X29
管理番号 1277917 
審判番号 無効2012-890097 
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-11-13 
確定日 2013-08-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第5472066号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5472066号商標(以下「本件商標」という。)は、「ソクール」の片仮名を標準文字で表してなり、平成23年6月6日に登録出願、第29類「食用油脂,乳製品」及び第30類「菓子・パンに充填又は塗布して用いるでん粉・小麦粉を主原料とするフラワーペースト,菓子・パンの生地に練り込んで用いるでん粉・小麦粉を主原料とするフラワーペースト」を指定商品として、同24年1月27日に登録査定、同年2月17日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第29類「乳製品」に係る登録について無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判請求書及び審判事件弁駁書において要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲1?93(枝番号を含む。)を提出した。
1 引用商標
本件商標が商標法4条1項11号及び同15号に該当するとして請求人が無効の理由に引用する登録商標は、以下の(1)?(6)のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
以下、これらをまとめていうときは、「引用商標」という。
(1)登録第4408580号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ソフール」の片仮名を標準文字で表してなり、平成11年9月28日に登録出願、第29類「乳製品」を指定商品として、同12年8月11日に設定登録されたものである。
(2)登録第4709744号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成15年2月19日に登録出願、第29類「乳製品」を指定商品として、同年9月12日に設定登録されたものである。
(3)登録第5071665号商標(以下「引用商標3」という。)は、「ソフール」の片仮名と「Sofuhl」の欧文字とを上下二段に横書きしてなり、平成19年1月5日に登録出願、第29類「乳製品」を始めとする同類及び第30類並びに第32類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同年8月17日に設定登録されたものである。
(4)登録第4981836号商標(以下「引用商標4」という。)は、「ソフール LCS100」の文字を標準文字で表してなり、平成17年12月27日に登録出願、第29類「乳製品」を指定商品として、同18年8月25日に設定登録されたものである。
(5)登録第5162523号商標(以下「引用商標5」という。)は、「Soful」の欧文字を横書き(「u」にアキュサンテギュが付されている。)してなり、平成20年3月17日に登録出願、第29類「乳製品」及び第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同年8月29日に設定登録されたものである。
(6)登録第5162524号商標(以下「引用商標6」という。)は、「Soful」の欧文字を標準文字で表してなり、平成20年3月17日に登録出願、第29類「乳製品」及び第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同年8月29日に設定登録されたものである。
2 請求の理由
(1)請求人及び本件審判請求の利益について
ア 請求人について
請求人は、1935年より乳酸菌飲料や乳酸菌等を含んだヨーグルト等の開発・製造・販売を現在に至るまで永年継続しているものである。
そして、それに伴う多彩な商品展開や世界的な事業規模の拡大も相まって、請求人である「株式会社ヤクルト本社」の名称と、そのハウスマークである「Yakult」の商標は、関連商品の取引者・需要者のみならず、業種を越えて一般の消費者をも含む広範囲の需要者の間でも広く知られるようになっているものである。
イ 本件審判請求の利益について
本件商標がその指定商品に使用された場合には、本件商標は、請求人の所有の「ソフール」商標に類似し、その商品の出所につき混同を生じるおそれがあるから、請求人の営業活動に取り返しのつかない損害を与えるおそれがある。よって、請求人は、本件審判を請求することにつき利害関係を有するものである。
(2)請求人に係る商標「ソフール」の使用の経緯及び著名性について
ア 「ソフール」の使用
(ア)「ソフール」のヨーグルトは、1975年(昭和50年)8月に「ストロベリー味」と「アップル味」の商品を皮切りに、1980年(昭和55年)9月には「プレーン味」、1988年(昭和63年)7月には「ゆず味」の各商品が発売された(甲10)。
(イ)2001年(平成13年)2月には、従来の「ソフール」のカロリーを45%カットした「ソフールLT」、2006年(平成18年)には、「ソフール」の10倍の「L.カゼイ・シロタ株」を含む「ソフール LCS100」の発売が開始された(甲9及び10)。
(ウ)2012年(平成24年)6月には、「乳酸菌 シロタ株」を9億個以上含む「ソフール元気ヨーグルト」の発売が開始された(甲10)。
(エ)「アップル味」、「ゆず味」、「ソフール LCS100」は、生産終了となっており、現在では、プレーン味とストロベリー味の「ソフール」、「ソフールLT」、「ソフール元気ヨーグルト」の4種のヨーグルトが製造・販売されている(甲13?16)ところ、これらは、発売当初より継続して製造・販売され、需要者に根強く支持されているロングセラー商品となっており、それぞれの名称が「ソフール」ブランドとして認知されているといっても過言ではない。
(オ)これらの「ソフール」商品は、腸内の環境を改善する効果が期待されることから、小・中学校の給食のデザートとしても長く親しまれてきたものである(甲17及び18)。
(カ)「ソフール」の現在の商品パッケージ(甲19及び20)のいずれの容器についても、その蓋部分と容器中央部に「ソフール」の片仮名が大きく表示されているが、発売当初は、これに加えて「Sofuhl」の欧文字(「o」の文字がイチゴ等の図形となっている)が採用されていた(甲21)。
(キ)請求人は、商品の発売当初より「ソフール」の徹底的なブランド管理を行なっており、1970年(昭和45年)には、「ソフール/Sophur」(甲22)、1974年(昭和49年)には、「SOFUHL」(甲23)、1975年(昭和50年)には、3件の「Sofuhl/ソフール」(「o」の文字がそれぞれイチゴ、リンゴ、パイナップルの図形となっている。)(甲24?26)、そして1976年(昭和51年)には、「Sofuhl/ソフール」(甲27)について、我が国でいずれも登録を受けていた(現在は、いずれも存続期間の満了によって消滅)経緯がある。
その後、「ソフール」の名称は、甲2?7の態様で依然として商標登録がなされており、このような事実からは、請求人の永年にわたる継続的な使用と、それに伴う適切な商標管理が見てとれるものである。
イ 商標「ソフール」の著名性
請求人は、商標「ソフール」をヨーグルトに使用してきており、現在は勿論、本件商標の出願日である平成23年6月6日には、請求人の出所を表示するものとして、我が国の需要者・取引者に極めて強く認識されるものとなっており、その周知著名性は、以下の事実により裏付けられるものである。
(ア)使用開始時期・使用期間
請求人の商標「ソフール」は、1975年(昭和50年)8月にヨーグルトについて使用が開始されて以降、現在まで継続した使用がなされている。すなわち、その使用期間は、実に35年以上にも及ぶものである。
(イ)使用地域
商標「ソフール」を使用した商品(ヨーグルト)は、日本全国の有名スーパーマーケットやコンビニエンスストア等で販売されているほか、ヤクルトレディによって全国の宅配センターから各家庭や企業へ届けられている。また、上記商品は、全国的な規模で、商品が生産、出荷されている(甲28の1?28の4)。
(ウ)広告宣伝
請求人は、商標「ソフール」を使用した商品について、発売開始以来、以下のような各種媒体により、盛大に広告宣伝を継続している。
a 請求人の商品カタログ・商品パンフレット(甲29?52)
これらの商品カタログは、毎年約100,000部が発行され、全国の販売拠点に納品後、商品の最終消費者や取引業者に配布されているものであり、現在では、原則的に年に2回発行されている。
甲29?39は、1984年3月度?2000年2月度の間における商品カタログの写しであり、「ソフール」(プレーン味、ストロベリー味、アップル味、ゆず味)が掲載・紹介されている。
甲40?44は、2001年?2006年の間における商品カタログの写しであり、上記味の「ソフール」のほか、「ソフールLT」が掲載されている。なお、途中、「ソフール」のアップル味とゆず味が生産終了となっている。
甲45?52は、2006年?2010年の間における商品カタログの写しであり、この間に、「ソフール」ブランドの新しいラインナップとして「ソフール LCS100」が加わり、上記の3種(プレーン味、ストロベリー味及びソフールLT)の「ソフール」とともに掲載・紹介されている。なお、2009年頃に、「ソフール LCS100」が生産終了となっている。
b 商品チラシ広告
甲53?57は、宅配用の「ソフール」の商品チラシ広告であり、ヤクルトレディによって商品の最終消費者に直接配布されている。
なお、各チラシの最後に記載されたコードは、○○○・・・の箇所が発行年月、□□□・・・の箇所が発行部数を表示するものである。
したがって、甲53?56の各チラシ広告は、順に2006年8月に1,000,000部、2007年11月に2,500,000部、2009年5月に863,500部、2011年3月に513,900部、さらに2012年3月に319,700部がそれぞれ発行されたことを表している。
c 書籍・雑誌等における掲載記事・広告
(a)甲58?64は、産経新聞メディックスにより年1回発行の「BEVERAGE GUIDE 飲料商品ガイド」なるガイドブックの写しであって、各アイテムを炭酸飲料、果実飲料、茶系飲料等のジャンルに分け、商品の特徴が紹介・説明されているものであり、これは書店販売のほか、流通・小売りなど飲料に関わる業界にも約150,000部が配布されている。
請求人は、商品「ソフール」を本ガイドブックに継続的に掲載し、1998、1999、2004、2005、2007、2010及び2011年度版(順に甲58?64)においては、「ソフール」のプレーン味、ストロベリー味、アップル味、「ソフール LCS100」のうちのいくつかがそれぞれ紹介・広告されている。
(b)甲65?67は、株式会社酪農乳業速報の発行する乳製品情報誌「酪農乳業速報」における広告であって、これらには、「ソフール」のプレーン味及び「ソフール LCS100」のいずれか若しくは両方がそれぞれ掲載されている。
(c)甲68は、株式会社エンターブレインが発行している総合エンターテイメント誌「オトナファミ(2012年6月号)」の写しであって、これには、「あ、意外と知らない ヤクルトの秘密60」という特集が組まれており、その42頁においては、「ヤクルト、ジョア、ミルミルに続く人気BEST3」の「第1位」の商品として、「ソフール」が掲載されており、「75年発売のロングセラー。乳酸菌シロタ株入りのハードタイプのヨーグルト。」と説明されている。
(d)甲69は、日本工業新聞社が発行する総合ビジネス金融紙「FujiSankei Business i.」(2010年10月18日号)の写しであって、その21頁には、「ソフール」のプレーン味が目立つように表わされている。
(e)甲70及び71は、1999年5月に茨城新聞及び2000年8月に毎日新聞(中部本社版)にそれぞれ掲載された広告であり、これにも商品「ソフール」が表されている。
d インターネットにおける広告
上記のア(エ)に記載の甲13?16のとおり、請求人は自社のウェブサイトにおいて、その開設以来、請求人の商品を広告宣伝し、「食べるヨーグルト」として「ソフール」の「プレーン味」、「ストロベリー味」、「ソフールLT」を紹介している。そして、サイトを通じて一般消費者の目に多く触れた結果、これらの商品は、広く認識されるに至ったものといえる。
(エ)広告宣伝費
以上のように、請求人は、商標「ソフール」を使用した商品について、以下の請求人作成によるデータのとおり、発売開始から現在に至るまで、莫大な広告宣伝費を投じてきた。
2005年(平成17年)=約7800万円
2006年(平成18年)=約4億5000万円
2007年(平成19年)=約7億5000万円
2008年(平成20年)=約580万円
2009年(平成21年)=約87万円
2010年(平成22年)=約110万円
2011年(平成23年)=約73万円
ここ数年は、景気の低迷もあって大幅な減少傾向にはあるものの、これまでに「ソフール」についていかに多くの広告宣伝がなされ、多くの消費者の目に触れてきたかがわかる。
このような請求人の営業努力により、商標「ソフール」を使用した商品は、発売以来35年以上にもわたって消費者の身近な商品として愛されてきたのであり、その結果、当該商標がすでに周知著名となっていることは明らかである。
(オ)商品販売実績
請求人は、商標「ソフール」を使用した商品(ヨーグルト)の発売を1975年(昭和50年)に開始して以来、現在まで継続的に製造・販売を行なっており、本商品は、請求人の商品を代表するロングセラー商品の一つとなっている。そして、需要者による根強い支持や人気も相まって、本商品は、発売以来好調に売り上げを伸ばしている。
甲72は、請求人のデータに基づいて作成された、商品「ソフール」の過去11年間における販売実績を示した「乳製品全国月別販売実績」一覧表である。
そして、この過去11年間(平成13?23年度)における「年販売本数」及び「年販売額」を見れば、商品「ソフール」の人気、売り上げがいかに莫大であるかが一目瞭然である。
年度 販売本数 販売額
平成13年度=2億4007万本以上 216億円以上
平成14年度=2億3576万本以上 212億円以上
平成15年度=2億4331万本以上 218億円以上
平成16年度=2億2690万本以上 204億円以上
平成17年度=2億1125万本以上 190億円以上
平成18年度=2億1692万本以上 195億円以上
平成19年度=2億0144万本以上 181億円以上
平成20年度=1億9503万本以上 175億円以上
平成21年度=1億8996万本以上 170億円以上
平成22年度=1億7904万本以上 161億円以上
平成23年度=1億6253万本以上 146億円以上
近年は深刻な景気の低迷や震災の影響等により若干落ち込んではいるものの、これら莫大な販売本数及び販売額を現在まで維持していることを考慮すれば、請求人に係る「ソフール」が、我が国において、いかに長期にわたって多くの需要者や取引者に親しまれてきたかは想像に難くない。
(カ)市場シェア
商標「ソフール」を使用した商品(ヨーグルト)は、同商品分野において堅実な市場シェアを誇っている。
甲第73の1?73の6は、株式会社富士経済発行の「食品マーケティング便覧」の2007年版?2012年版までの写しであり、独自調査によって「ハードヨーグルト」に分類される商品ブランドの市場シェアが紹介されている。
これによれば、請求人の商品「ソフール」は、例年約9パーセントのシェアを維持しており、ブランド別順位としては、明治乳業の「プロビオヨーグルト LG21」、日本ミルクコミュニティの「牧場の朝」等に続いて第3位ではあるものの、いずれもシェアとしてはトップと3?5パーセント程度の差しかなく、請求人の商品「ソフール」は、当該商品分野における3大シェアの一つと言っても過言ではない(甲73の1)。
なお、ここ数年は、明治乳業の「プロビオヨーグルト LG21」が特に好調であることから少々差をつけられてはいるが、市場全体のシェアとしては安定しており、当該商品の根強い人気や固定の消費者の多さをうかがうことができる。
2008年度版の「食品マーケティング便覧」にも、「ヤクルト本社の『ソフール』は固定ユーザーを獲得しており、堅調な推移となっている」とのコメントが特記されている(甲73の2)。
このように、請求人の商標「ソフール」を使用したヨーグルトが当該商品分野において一大シェアを築いていること、そして、永年にわたり固定の消費者を獲得していることは、請求人の商標「ソフール」が我が国において周知著名となっていることの証左となるものといえる。
なお、上記「食品マーケティング便覧」にも当該商品「ソフール」の販売額が掲載されているが、あくまで独自の調査によるものであるため、上記(オ)の請求人によるデータに基づく額とは異なっているが、いずれにしても、これらの販売額が莫大であることには間違いはない。
(キ)まとめ
これらの事実から明らかなように、請求人は、30年以上もの長期かつ全国規模における商品展開や、莫大な広告宣伝費用を投じての「ソフール」ブランドの浸透について並々ならぬ努力を図ってきたものであり、その結果、「ソフール」は、他者の追随を許さない程の商品売上げと市場シェアを継続して獲得するに至っているものである。
そして、請求人の商標「ソフール」は、少なくとも本件商標の出願日である平成23年6月6日までには、我が国の需要者・取引者に極めて広く認識される周知・著名な商標となっていたことに疑いの余地はないものである。
(3)商標法4条1項11号について
本件商標は、以下の理由により、商標法4条1項11号に該当する。
ア 本件商標の構成
本件商標は、第1に記載のとおり、「ソクール」の片仮名を標準文字で表わしてなるものであるから、「ソクール」の称呼のみが生じるものである。
イ 引用商標
引用商標は、いずれも第2(引用商標2は、別掲)に記載したとおりの構成よりなるものである。
(ア)引用商標1?3は、その構成態様よりいずれも「ソフール」の称呼が生じるものである。
(イ)引用商標4は、「ソフール LCS100」の片仮名及び欧文字を標準文字で表わしてなるものであるから、「ソフールエルシーエスヒャク」のほか、「ソフール」の称呼をも生じ得るものである。
(ウ)引用商標5及び6は、「Soful」の欧文字(但し、引用商標5は、「u」にアキュサンテギュが付されている。)を横書きで表わしてなるものであるから、これらより、「ソフール」及び「ソフル」の称呼が生じるものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標と引用商標1の類否
a 称呼上の類否
本件商標からは、「ソクール」の称呼のみが生じ、引用商標1からは「ソフール」の称呼が生じるものであって、両称呼は、ともに長音を含む4音構成であり、その差異は、第2音の「ク」と「フ」の差異にすぎないところ、これらは、母音を共通にするだけではなく、ともに弱い音にて発音され、中間において埋没してしまう中間音に位置するものである。
そして、この差異が両称呼の全体に及ぼす影響は小さいものであって、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語調・語感が近似したものとなり、聴き誤るおそれがあるといわざるを得ない。
ところで、被請求人は、答弁書において、両商標から生ずる称呼は、4音の短い構成であって、差異音は、音質を異にするうえ、差異音にアクセントが生じることから、該差異音が強調されてはっきりと発音され、両者は十分に聴別し得る旨、主張している。
しかしながら、語頭音である「ソ」についても同様に明瞭に発音されるものであり、これに続く「ク」及び「フ」の音が前音に吸収されるように発音されるものであるから、このような差異が両称呼の全体に及ぼす影響は小さいものであって、両商標をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語調・語感が近似したものとなり、聴き誤るおそれがあるといわざるを得ない。
また、被請求人は、中間において「ク」と「フ」の一音が相違する場合に、互いに類似しない商標として登録されている併存登録例を大量に挙げている(乙33?150)が、いずれも本件と同様のケースではなく、事案を異にするものである。
b 外観上の類否
本件商標と引用商標1は、その構成上の外観においても、片仮名の「ク」と「フ」の文字の違いがあるにすぎない。そして、これらの「ク」及び「フ」の片仮名についても、左上部の払いの有無の差異があるにすぎないことから、両商標全体の外観として比較した場合、その他の3文字が共通していることも相まって、同一の文字と見誤るおそれが高いほどに近似しているものといえる。
特に、これらの文字がデザイン化されて使用された場合には、「ク」の文字の左上部の払いが短く表わされたり、省略されたりすることも少なくないことから、その近似度は更に強まるものである。
甲90は、片仮名文字のタイポグラフィ例を多数収録した書籍の一部(「ク」及び「フ」)の写しであるが、書体によっては、両者の区別がつかないものも多く存在していることがわかる。現在では、商品パッケージやそれらの広告について商標が使用される場合、多少デザイン化された書体が用いられることが一般的であることを考えれば、一見して見間違うほどの文字の近似性がより強くなることは明白である。
さらに、本件商標「ソクール」と引用商標1「ソフール」の外観上の近似性は、「ク」及び「フ」の文字がそれぞれ「ソ」の文字に続いていることでより強まるものである。すなわち、「ソフール」の文字の「ソ」の文字の払い部分が、「フ」の文字と間隔が狭いような場合、これらが結合してあたかも「ク」の片仮名文字のように錯覚する可能性が高いことが挙げられる。
甲91は、現在の請求人に係る商品「ソフール」(プレーン味)の包装容器の写真であるが、これを正面からではなく少し斜めから見た場合、実際に「クール」の文字に見えることからも明らかである。
甲92も、現在の請求人に係る商品「ソフール」(ストロベリー味)及び「ソフールLT」の包装容器の写真であるが、正面からではなく少し斜めから見た場合、「ソ」の文字の払い部分が「フ」の文字と結合しているように錯覚し、明らかに「クール」の文字に見えるものである。
以上を考慮すれば、本件商標と引用商標1は、文字構成が極めて近似し、互いに見誤るおそれが強いものであり、外観においても類似するものである。
ところで、被請求人は、答弁書において、本件商標と引用商標1の差異となる片仮名「ク」と「フ」が極めて少ない画数からなる文字であることを、両者を区別できる根拠としているが、片仮名とは、そもそもそのほとんどが2画又は3画からなるものである。したがって、被請求人の論理によれば、片仮名同士の差異を有する商標の外観については、これを理由としてほぼ全てが「明らかに区別できる」ものとなることから、外観における商標の類否の議論など成立しないことになる。
また、被請求人は、本件商標と引用商標1が共に4文字という短い構成からなることをもって、両商標の差異である「ク」と「フ」の文字が外観に及ぼす影響は決して小さいものとはいえないとしているが、両商標を目にした者が見間違えるかどうかは、需要者・取引者が記憶している商標の外観のイメージと実際に目にした商標の外観を比較することによって引き起こされるものであるから、商標を構成する文字の数によってこれが影響される程のものではない。
したがって、被請求人は、「ク」と「フ」の相違、「ワ」と「フ」の相違、「ツ」と「ソ」の相違等を有する商標の併存登録例を大量に挙げているが(乙1?32)、いずれも事案を異にするといわざるを得ない。
c 商品の取引の実情
本件商標と引用商標1は、「乳製品」の指定商品について共通しているところ、これらの商品がスーパーマーケットやコンビニエンスストアで販売される際には、一般的に乳製品の種類ごとに冷蔵棚に陳列され、商品の需要者が判別・選択しやすいように置かれているのが普通である。
したがって、たとえば、本件商標が、請求人の商標と同様に「ヨーグルト」について使用された場合、両商標が使用された「ヨーグルト」が隣同士に配置される可能性が考えられる。その場合、上記のように本件商標と引用商標1が、外観上極めて近似していることから、いずれも造語であることも相まって、これに接する需要者・取引者が両商標の付された商品を取り間違えることは必至である。
特に、健康や成長を促進する「ヨーグルト」を、決して判断能力の高いとは言えない子供たち若年層が好んで買い求めることは、想像に易く、商品の混同を生じるおそれが高いことが考えられる。
さらに、甲58?64の「飲料商品ガイド」に示すように、各社の発売しているヨーグルトのパッケージは、その味ごとに色合いや形状が共通したものとなっていることから、需要者にとって識別の鍵は、商品に表示された文字部分だけとなり、本件商標と引用商標1とが片仮名自体の外観上の類似性が高いことを勘案すれば、本件商標が使用された商品を周知著名な請求人の商品「ソフール」と誤認して購入してしまう危険性も非常に高いものとなる。
もちろん、請求人の商品には、請求人の著名商標「ヤクルト」あるいは「Yakult」も表示されているが、「ソフール」商品においてこれらの文字部分は、極めて小さく表示されているため、ハウスマークの有無あるいは相違は、商品識別の決定的な要素とはなり得ないものである。
つまり、請求人の商品は、「ヤクルトのソフール」という意味合いで需要者らに認識されているのでなく、「ソフール」という商標が独立して需要者らに周知されているものであるため、健康に役立つ食品という商品の性質上、商品の主たる商標部分の類似性による商品の誤認・混同は、厳に避けられなければならないのである。
d まとめ
以上のように、本件商標と引用商標1は、称呼及び外観が極めて近似する類似の商標であり、指定商品「乳製品」の取引の実情をかんがみても、本件商標について商標登録を認めることは妥当ではない。
(イ)本件商標と引用商標2?6の類否
a 称呼上の類否
上記したとおり、本件商標からは、「ソクール」のみの称呼が生じる一方、引用商標2?6からは、「ソフール」の称呼が生じるほか、引用商標4からは、「ソフールエルシーエスヒャク」の称呼、引用商標5及び6からは、「ソフル」の称呼をも生ずるものである。
そして、本件商標から生ずる「ソクール」と引用商標2?6から生ずる「ソフール」の両称呼が、類似することは、上記(ア)に記載した理由のとおりである。
b 外観上の類否(引用商標5及び6との類否を除く)
引用商標2?4の片仮名部分に注目した場合、本件商標と引用商標2?4は、その構成上の外観においても、片仮名の「ク」と「フ」の文字の違いがあるにすぎないものであるから、両商標が外観においても類似することは、上記(ア)に記載した理由のとおりである。
c 商品の取引の実情(引用商標5及び6を除く)
商品「乳製品」の取引の実情については、上記(ア)に記載した理由のとおりである。
d まとめ
以上のように、本件商標と引用商標2?4は、称呼及び外観が極めて近似する類似の商標であり、指定商品「乳製品」の取引の実情をかんがみても、本件商標について商標登録を認めることは妥当ではない。
また、本件商標と引用商標5?6は、称呼が極めて近似する類似の商標であり、本件商標について商標登録を認めることは妥当ではない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、以下の理由により、商標法4条1項15号に該当する。
ア 本件商標と後述する「ソフール商標」の類似性について
本件商標「ソクール」と引用商標1?4における「ソフール」の文字部分(以下、まとめて「ソフール商標」という。)との類似性については、前記したとおり、両商標は、称呼及び外観が極めて近似する類似の商標であることに疑いの余地はない。
イ 「ソフール商標」の周知著名性及び独創性について
「ソフール商標」は、前記したとおり、請求人の永年の使用による企業努力の結果、現在は勿論、本件商標の出願日である平成23年6月6日には、請求人の出所を表示するものとして、我が国の需要者・取引者に周知著名になっていたものである。また、「ソフール」の語は、造語であって独創的なものである。
ところで、被請求人は、引用商標(引用商標1?6)を請求人が商品「ヨーグルト」に使用した結果、請求人に係る商品を表示するものとして、取引者、需要者の間において、広く知られているものであるという事実については不知であり、請求人の提出した証拠からも、引用商標が周知、著名であるとは到底認められない。そもそも非類似商標である本件商標と、周知、著名とは到底認められない引用商標との間で、混同が生じうるとは到底考えられない旨、主張している。
しかしながら、たとえ引用商標が著名であることを被請求人が不知であったとしても、それは何ら当該著名性を否定する根拠とはならないものであるし、請求人が示した商標「ソフール」に関する各種資料を見れば、これが周知・著名であることは明らかである。
また、被請求人は、需要者、取引者に「Yakult」の商品のひとつとして引用商標に係る商品がある程度知られているとしても、引用商標自体が広く認識されているとは到底言えない旨、主張している。
確かに、ハウスマークである「Yakult」「ヤクルト」がそれなりの顧客吸引力を発揮することについては否定しないが、提出した商品パッケージを見れば、「ソフール」の文字が「Yakult」「ヤクルト」の文字よりも数倍の大きさで、中央に目立つ態様で表示されていることは一目瞭然であり、需要者や取引者がこの「ソフール」の文字を識別標識として認識し、他の同類の商品と区別していることはいうまでもない。
ウ 本件商標の指定商品と請求人に係る商品との間の性質、用途又は目的における関連性の程度
請求人の「ソフール商標」を使用している商品は「ヨーグルト」であるところ、本件商標は第29類に係る指定商品の一つに「乳製品」を含んでいる。そして、「ヨーグルト」は、「乳製品」の一つであるから、両商標に係る商品との間の性質、用途又は目的は、全て同一といえる。
エ 商品の取引者及び需要者の共通性
請求人に係る「ソフール商標」の使用商品は、「ヨーグルト」である一方、本件商標の指定商品は第29類「乳製品」であるところ、「ヨーグルト」は、「乳製品」に含まれる商品であって、また、「ヨーグルト」と「ヨーグルト以外の乳製品」によって取引者や需要者が異なるといった特段の事情もないものである。したがって、請求人に係る商品と本件商標の指定商品「乳製品」の需要者・取引者は、同一といえる。
オ 取引の実情について
「ソフール商標」を使用している商品「ヨーグルト」を含む、本件商標の指定商品「乳製品」についての取引の実情については、上記(3)ウ(ア)cに記載したとおりであることに加え、1個90円という買い求めやすさもあり、健康や成長を促進する「ヨーグルト」を、決して判断能力の高いとは言えない子供たち若年層が好んで買い求めることは、想像に易く、商品の混同を生じるおそれが極めて高いことが考えられるといわざるを得ないものである。
ところで、被請求人は、「ヨーグルト」の購入者は、子供から大人まで幅広い層である旨、述べた上で、仮に子供が商品を手にした場合においても、通常の理解力があれば、片仮名文字「ソクール」と「ソフール」を区別することは可能である旨、主張しているが、商標法4条1項15号は、混同を生じる「おそれ」がある商標についても登録を排除するものであるから、商品の購入者に大人が含まれるからといって、本件商標「ソクール」が使用された場合に、需要者・取引者が請求人に係る商品「ソフール」と取り間違える可能性が否定されるものではない。
また、片仮名を理解できることと、商品を取り違えないよう注意を払うことは別の次元での話であって、片仮名を認識・理解できるだけで混同を生ずるおそれを否定できるのであれば、赤ん坊や外国人等を除いて誰も混同など生じないのであって、商標法4条1項15号の存在意義など無いに等しい。
なお、過去の裁判例(平成24年(行ケ)10403号)においても、「指定商品が日常的に消費される性質の商品であり、その需要者が特別な専門的知識経験を有しない一般大衆であるような場合、これを購入するに際して払われる注意力はさほど高いものではない」と判示されている(甲93)。
カ まとめ
以上、商標法4条1項15号の目的及び上記ア?オを踏まえて、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準にして総合的に判断すれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、少なくとも「乳製品」について、請求人又は請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれがあるものである。
したがって、本件商標が商標法4条1項11号に該当しないものであるとしても、同15号に該当するものである。
(5)結び
以上のとおり、本件商標登録は、商標法4条1項11号又は同15号に違反してされたものであるから、同法46条1項1号により無効とされるべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙1?165を提出した。
1 商標法4条1項11号について
本件商標は、以下の理由により、商標法4条1項11号に該当しない。
(1)本件商標と引用商標
本件商標と引用商標の構成は、第1及び第2(引用商標2は、別掲)に記載したとおりであって、それぞれの構成態様から、本件商標からは、「ソクール」、引用商標からは、いずれも「ソフール」の称呼が生ずるものである。
そのほか、引用商標4からは、「ソフールエルシーエスヒャク」、引用商標5及び6からは、「ソフル」の称呼をも生ずるものである。
さらに、観念については、本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じない造語よりなるものとみるのが妥当である。
(2)本件商標と引用商標の類否
ア 本件商標と引用商標1の類否
(ア)外観上の類否
本件商標は、第1に記載のとおり、片仮名の標準文字「ソクール」を横書きしてなるものであるのに対し、引用商標1は、第2に記載のとおり、片仮名の標準文字「ソフール」を横書きしてなるものである。
両商標は、共に4文字という短い構成からなり、2文字目において「ク」と「フ」の差異を有するところ、これらの両文字は、それぞれ3画と2画という極めて少ない画数からなるものであって、「ク」は、横線の長さが「フ」の約半分であり、その短い横線の左に短い払いを、右に長い払いを有するのに対し、「フ」は、長い横線とその横線の右に長い払いを有する。
したがって、両文字は、極めて少ない画数からなる文字であるので、それ自体明らかに区別できるものであることは明白である。
さらに、この明白に区別できる相違文字「ク」と「フ」が、共に4文字という短い構成からなる本件商標と引用商標1の比較においては、その相違が外観に及ぼす影響は決して小さいものとはいえず、それぞれを一連に看取した場合においても十分区別することは可能である。
上記主張の正当性は、乙1?32によって裏付けられる。
(イ)称呼上の類否
本件商標及び引用商標1からは、それぞれの構成文字に相応して本件商標からは、「ソクール」、引用商標1からは、「ソフール」の称呼が生じる。
両称呼は、共に長音を含めて4音よりなる短い音構成であって、第2音において「ク」と「フ」の差異を有するものであるところ、これら差異音が母音「u」を共通にするとしても、「ク」の音は、後舌面を軟口蓋に接し破裂させて発する無声の破裂音であるのに対し、「フ」の音は、両唇を接近させてその間から発する無声の摩擦音であって、両音は、音質を異にするものである。
さらに、両商標は、相違する「ク」と「フ」の音のいずれもが長音を伴うためにアクセントが生じ、両者の音質の差がより強調されるものである。この差異は4音という短い称呼全体に及ぼす影響は大きく、それぞれを一連に称呼した場合には語調・語感が異なり十分に聴別し得るものである。
上記主張の正当性は、乙33?156によって裏付けられる。
(ウ)観念上の類否
本件商標と引用商標1は、いずれも特定の観念を生じない造語よりなるものとみるのが妥当であるから、両商標は、観念上、非類似である。
(エ)まとめ
以上のように、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念のいずれについても類似するものではない。
イ 本件商標と引用商標2?6の類否
(ア)外観上の類否
本件商標は、第1に記載のとおり、片仮名の標準文字「ソクール」を横書きしてなるものであるのに対し、引用商標2は、別掲に記載したとおり、丸みを帯びた菱形図形の中に、やや図案化された白抜きの片仮名「ソフール」を横書きした構成からなるものである。
引用商標3は、第2に記載のとおり、上段に片仮名文字「ソフール」、下段に欧文字「Sofuhl」を二段に横書きした構成からなるものである。
引用商標4は、第2に記載のとおり、片仮名、欧文字及び数字「ソフール LCS100」を横書きした構成からなるものである。
引用商標5及び6は、第2に記載のとおり、「Soful」の欧文字(但し、引用商標5は、「u」にアキュサンテギュが付されており、引用商標6は、標準文字で表されている。)を横書きで表わしてなるものである。
a 本件商標と引用商標2の類否
両商標中の「ク」と「フ」の文字が十分区別可能であることは、上記ア(ア)において記載した理由のとおりである。
さらに、両商標は、標準文字と図案化された文字の相違がある上に、引用商標2は、丸みを帯びた菱形図形を配してなるという明らかな相違を有するので、両者を見誤ることはなく、本件商標と引用商標2とは、外観上類似するものではないことは明白である。
b 本件商標と引用商標3及び4の類否
両商標中の「ク」と「フ」の文字が十分区別可能であることは、上記ア(ア)において記載した理由のとおりであるうえ、両商標のそれぞれの外観構成から、両商標が外観上類似するものではないことは、明白である。
c 本件商標と引用商標5及び6の類否
上記(ア)に記載したとおりの本件商標と、引用商標5及び6のそれぞれの構成態様からすれば、両商標が外観上類似するものではないことは、明白である。
(イ) 称呼上の類否
本件商標から生ずる「ソクール」と引用商標2?6から生ずる「ソフール」の両称呼が十分聴別できることは、上記ア(イ)において記載した理由のとおりである。
また、本件商標から生ずる「ソクール」と引用商標4から生ずる「ソフールエルシーエスヒャク」、さらに引用商標5及び6から生ずる「ソフル」の称呼とは、それぞれ明確に区別でき、類似するものではない。
(ウ) 本件商標と引用商標2?6は、いずれも特定の観念を生じない造語よりなるものとみるのが妥当であるから、両商標は、観念上、いずれも非類似である。
(エ)まとめ
以上のように、本件商標と引用商標2?6とは、外観、称呼及び観念のいずれについても類似するものではない。
2 商標法4条1項15号について
引用商標について、請求人が商品「ヨーグルト」に使用した結果、請求人に係る商品を表示するものとして、取引者、需要者の間において、広く知られているものであるという事実については、被請求人は、不知であり、請求人の提出した証拠からも、各引用商標が周知、著名であるとは、到底認められない。そもそも、商標法4条1項15号は、同11号に該当しない場合に適用されうるものであり、そうとすると、そもそも非類似商標である本件商標と、周知、著名であるとは、到底認められない各引用商標との間で混同が生じ得るとは、到底考えられない。
次に、請求人の示した商品、商品情報及びカタログ等には、各引用商標と「Yakult」「ヤクルト」の文字とが併記して使用されているものがほとんどである。
請求人は、商品「ヨーグルト」について引用商標は、周知、著名であるととらえているようであるが、このような使用状況からかんがみると、請求人のハウスマーク「Yakult」が顧客吸引力を発揮し、商品を識別する重要な要素となっているといえる。したがって、需要者、取引者に「Yakult」の商品のひとつとして引用商標に係る商品がある程度知られているとしても、引用商標自体が広く認識されているとは、到底言えない。
また、請求人は、取引の実情から、両商標が使用された「ヨーグルト」が隣同士に配置される可能性が考えられ、その場合、「ソクール」と「ソフール」の文字は外観上極めて近似しているゆえ、これに接する需要者・取引者が両商標の表された商品を取り間違えることは必至である。特に、1個90円という買い求めやすさもあり、健康や成長を促進する「ヨーグルト」を決して判断能力の高いとは言えない子供たち若年層が好んで買い求めることは、想像に易く、商品の混同を生じるおそれが極めて高いことが考えられる旨、述べている。
しかし、子供たち若年層が健康や成長のことを考慮して「ヨーグルト」を好んで購入するというよりも、子供たちの健康のことを考える親が子供に「ヨーグルト」を買い与える、あるいは大人が健康のことを考慮して「ヨーグルト」を購入する場面の方が自然であると考える。そもそも、「ヨーグルト」の購入者は、子供から大人まで幅広い層である。
いずれにしても、仮に子供が商品を手にした場合においても、通常の理解力があれば、片仮名「ソクール」と「ソフール」を区別することは可能である。
以上のように、被請求人が本件商標を指定商品「乳製品」に使用した場合に、これに接する需要者、取引者が、請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の製造・販売に係る商品であるかのごとく認識して、商品の出所について混同を生じさせるおそれはないから、本件商標は、商標法4条1項15号に違反して登録されたものではなく、請求人の主張には理由がない。
百歩譲って、仮に、請求人が述べているように、引用商標について、請求人が商品「ヨーグルト」に使用した結果、請求人に係る商品を表示するものとして、取引者、需要者の間において、広く知られているものであるとするならば、逆に、引用商標に接する取引者、需要者は、引用商標をもって、請求人に係るものであると認識するから、本件商標「ソクール」と紛れるおそれはないことを念のため付言しておく。
3 結び
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中「乳製品」について、商標法4条1項11号、同15号のいずれにも違反して登録されたものではない。

第4 当審の判断
1 請求人及び被請求人の両当事者間に請求の利益についての争いがないから、以下、本案に入って判断する。
2 事実認定
請求人の主張及び請求人提出の甲各号証により、以下の事実が認められる。
(1)「ソフール」の文字を付した以下の各商品(以下「ソフール商品」という。)について
請求人は、1935年(昭和10年)より乳酸菌飲料「ヤクルト」の製造・販売を行っており、1975年(昭和50年)には、ハードタイプのヨーグルト「ソフール」のストロベリー味及びアップル味の発売を開始し、その後、1980年(昭和55年)には、プレーン味、1988年(昭和63年)からは、ゆず味を販売した(甲9、10及び12)。
また、2001年(平成13年)には、「ソフールLT」、2006年(平成18年)には、「ソフール LCS100」、2012年(平成24年)には、「ソフール元気ヨーグルト」を「ソフール」のシリーズ商品として売り出しているが、現在では、プレーン味とストロベリー味の「ソフール」、「ソフールLT」、「ソフール元気ヨーグルト」の4種のヨーグルトが製造・販売されている(甲10、13?16)。
(2)「ソフール商品」の販売額について
請求人のデータに基づいて作成された「乳製品全国月別販売実績」一覧表(甲72)によれば、平成13?23年度の11年間の「ソフール商品」の年間売上本数は、およそ2億4千万本?1億6千万本、年間販売額にして218億円?146億円の範囲で推移しているところ、この販売額は、株式会社富士経済発行」の「食品マーケティング便覧」の「ハードヨーグルト」の項目のデータ一覧(甲73の1?73の6)の数値とは、かなりの相違があり、かつ、近年若干下がってきてはいるものの、いずれをとっても、その販売額は相当のものといえる。
そして、このことは、当該「食品マーケティング便覧」の「ハードヨーグルト」の項目のデータ一覧の記事による2007年から2012年の6年間で「ソフール商品」のシェアが一貫して3位(9%台)であることから首骨できる。
(3)「ソフール商品」の広告宣伝について
請求人は、1984年3月より商品カタログを作成して配布(甲29?52)し、乳酸菌飲料である「ヤクルト」、飲むヨーグルトの「ジョア」などとともに「ソフール商品」の写真を掲載し、宣伝に努め、また、「ソフール商品」に特化したチラシが2007年11月に250万部(甲54)、2009年5月に86万3千5百部(甲55)、2011年3月に51万3千9百部(甲56)、2012年3月に31万9千7百部(甲57)が発行された。
甲29?36は、その作成日が正確には確認できない(特に甲29)が、請求人主張及び各最終頁と思われる記号からの表記からすれば、1989年?1998年に作成したものと認めるのが相当である。
また、「株式会社産経新聞メディクス」発行の業界紙「BEVERAGE GUIDE 飲料商品ガイド」の「1998年度版」、「1999年度版」、「2004年度版」、「2005年度版、「2007年度版」、「2010年度版」及び「2011年度版」(順に甲58?64)には、「ソフール商品」が紹介されており、「株式会社酪農乳業速報」発行の雑誌「酪農乳業速報」の2005年夏季特集(甲65)、2006年夏季特集(甲66)、2007年新春特集(甲67)にも「ソフール商品」に係る広告がされている。
さらに、「株式会社エンターブレイン」発行の雑誌「オトナファミ(2012年6月号)」(甲68)には、請求人及び請求人の製造・販売する商品の特集があり、「ヤクルト、ジョア、ミルミルに続く人気BEST3」の「第1位」の商品として、「ソフール商品」が紹介され、「75年発売のロングセラー。乳酸菌シロタ株入りのハードタイプのヨーグルト。」と説明されている。
そのほか、1999年5月に茨城新聞(甲70)、2000年8月に毎日新聞(中部本社版)(甲71)にも「ソフール商品」の広告が掲載された。
3 上記認定事実に基づき、以下判断する。
(1)「ソフール」の文字からなる商標の著名性について
請求人の製造販売する「ソフール商品」は、1975年に発売されてから、今日までの38年間という永きにわたり使用され、その販売量も、請求人提出の甲72によれば、平成13年度から平成23年度の11年間の当該商品に関する年間売上本数は、およそ2億4千万本から1億6千万本の範囲で推移していたことから、相当の販売本数であったということができる。
また、同じく、請求人提出の甲73の1?73の6によれば、「ソフール商品」は、2007年から2012年の6年間で、ハードタイプのヨーグルトの分野において、9%台のシェアを占めていることが認められる。
そして「ソフール商品」は、その間「ソフール」の文字にややデザインを施して使用するなど、その構成に若干の変更を加えているが、請求人は、一貫して「ソフール」の文字をハードタイプのヨーグルトに使用してきたことが認められるものである。
してみれば、「ソフール商標」は、ハードタイプのヨーグルトの分野においては、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、一定程度知られていたといえるものであるが、ハードタイプのヨーグルトは、ヨーグルトの一分野に過ぎず、その1割にも満たないシェアをもって、直ちに乳製品全体の取引者、需要者間にまで広く認識されているということはできない。
したがって、「ソフール商標」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時における乳製品全体の取引者、需要者間において、著名性を有していたものとは認めることができない。
(2)商標法4条1項11号について
ア 本件商標と引用商標について
本件商標と引用商標の構成は、第1及び第2(引用商標2は、別掲)に記載したとおりの構成よりなるものであるから、本件商標からは、「ソクール」、引用商標からは、いずれも「ソフール」の称呼が生ずるものである。
また、そのほか、引用商標4からは、「ソフールエルシーエスヒャク」、引用商標5及び6からは、「ソフル」の称呼をも生ずるものである。
さらに、観念については、本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じない造語よりなるものと認められる。
イ 本件商標と引用商標1の比較について
(ア)外観について
本件商標は、「ソクール」の片仮名を標準文字で表してなるのに対し、引用商標1は、「ソフール」の片仮名を標準文字で表してなるものであるところ、両商標は、4文字という比較的短い構成において、2文字目の「ク」と「フ」に差異があることが容易に看取でき、両商標を時と所を異にして観察した場合であっても、外観上、相紛れるおそれはない。
(イ)称呼について
本件商標と引用商標1から生ずる両称呼においては、第2音において、「ク」と「フ」の差異が認められ、該差異音は、「ク」が軟口蓋で発せられる破裂音であるのに対し、「フ」は、両唇を接近させて、その間から発する摩擦音であるから、調音位置、調音方法が大きく異なり、比較的短い4音よりなること、さらには、該差異音に続く音が長音であるゆえ、該差異音にアクセントが生じ、これが強く発せられることをも併せ勘案すれば、これらを一連に称呼した場合には十分に聴別し得るものである。
(ウ)観念について
両商標とも特定の観念が生じないから、観念上類似するところがない。
(エ)小括
してみれば、本件商標と引用商標1とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても、何ら相紛れるおそれのない非類似の商標である。
ウ 本件商標と引用商標2?6の比較について
(ア)外観について
本件商標は、「ソクール」の片仮名を標準文字で表してなるのに対し、引用商標2は、別掲のとおり、図形と文字との結合によりなるものである。
引用商標3は、「ソフール」の片仮名と「Sofuhl」の欧文字とを上下二段に横書きしてなるものである。
引用商標4は、「ソフール LCS100」の文字及び数字を標準文字で表してなるものである
引用商標5及び6は、「Soful」の欧文字(但し、引用商標5は、「u」にアキュサンテギュが付されており、引用商標6は、標準文字で表されている。)を横書きで表わしてなるものである。
a 本件商標と引用商標2の比較について
前記したとおり、本件商標は、「ソクール」の片仮名を標準文字で表してなるのに対し、引用商標2は、別掲に記載のとおり、図形と文字との結合によりなるものであることから、両商標は、外観上、明らかに相違する。
b 本件商標と引用商標3?6の比較について
同様、本件商標は、「ソクール」の片仮名を標準文字で表してなるのに対し、引用商標3?6は、第2に記載したとおりの構成よりなることから、本件商標と引用商標3?6は、外観上、明らかに相違する。
(イ)称呼について
本件商標から生ずる「ソクール」と引用商標2?6から生ずる「ソフール」の称呼とは、上記イ(イ)に記載した理由のとおり十分に聴別し得るものである。
また、本件商標から生ずる「ソクール」の称呼と引用商標4から生ずる「ソフールエルシーエスヒャク」の称呼とは、その構成音数の明らかな相違により、容易に聴別し得ること明らかである。
さらに本件商標から生ずる「ソクール」の称呼と引用商標5及び6から生ずる「ソフル」の称呼とは、上記イ(イ)に記載した、第2音における「ク」と「フ」の音の差異の理由に加え、長音の有無及びそれによるアクセントの違いから、十分に聴別し得るものである。
(ウ)観念について
本件商標と引用商標2?6は、いずれも特定の観念が生じないから、観念上類似するところがない。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても何ら相紛れるおそれのない非類似の商標であり、請求人が商品「ヨーグルト(ハードタイプ)」に使用する「ソフール商標」の一定程度の著名性、その他、取引の実情等を考慮してもなお、本件商標は、商標法4条1項11号に該当するものとはいえない。
(3)商標法4条1項15号について
請求人が商品「ヨーグルト(ハードタイプ)」に使用する「ソフール商標」の著名性は、前記3(1)における認定のとおりであり、さらに、本件商標と「ソフール商標」とは、前記3(2)における認定のとおり、商標の構成において、何ら相紛れるところのない非類似の商標であって、別異の商標というべきであるから、本件商標は、その出願時及び登録査定時において、これをその請求に係る指定商品の「乳製品」について使用しても、これに接する取引者・需要者が、請求人又は請求人と経済的・組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがないというべきである。
以上のとおり、本件商標は、商標法4条1項15号にも該当しない。
4 結び
したがって、本件商標は、商標法4条1項11号及び同15号に違反して登録されたものでないから、同法46条1項の規定により、請求に係る指定商品「第29類 乳製品」については、その登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 引用商標2




審理終結日 2013-05-27 
結審通知日 2013-05-29 
審決日 2013-06-24 
出願番号 商願2011-38802(T2011-38802) 
審決分類 T 1 12・ 263- Y (X29)
T 1 12・ 262- Y (X29)
T 1 12・ 271- Y (X29)
T 1 12・ 261- Y (X29)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 松本 はるみ 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 梶原 良子
堀内 仁子
登録日 2012-02-17 
登録番号 商標登録第5472066号(T5472066) 
商標の称呼 ソクール 
代理人 柳野 隆生 
代理人 小谷 武 
代理人 木村 吉宏 
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