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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2008890041 審決 商標
取消2008300287 審決 商標
無効2011890049 審決 商標
取消2008301542 審決 商標
無効200689180 審決 商標

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審決分類 審判 全部取消 商53条使用権者の不正使用による取消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y41
管理番号 1277886 
審判番号 取消2012-300237 
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-03-23 
確定日 2013-08-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第4711200号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4711200号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件商標登録の取消しの審判に係る、登録第4711200号商標(以下「本件商標」という。)は、商標の構成を、別掲1に示すものとし、平成15年3月5日に登録出願され、第41類「自動車・二輪自動車の運転の教授」を指定役務として、同15年8月28日に登録査定、同年9月19日に設定登録されたものである。

第2 使用標章等の表示について
1 通常使用権者の使用標章
本件商標権者の通常使用権者である正興産業株式会社(以下「正興産業」という。)が使用する自動車教習用車両及び送迎用バスの車体に表示する標章は、別掲2ないし別掲4(以下「本件使用標章1、2及び3」といい、これらを総称して「本件使用標章」というときがある。)のとおりである。
なお、本件商標を含む通常使用権者の使用に係るキャラクターを「正興キャラクター」という場合がある。

2 請求人等の使用標章
(1)米国法人マースインコーポレイテッド(以下「マース」という。)及び請求人(マースジャパンリミテッド)の商品である「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子に使用している代表的なキャラクター「イエロー」は、別掲5(以下「引用表示1」又は「請求人キャラクター」という。)のとおりである。
なお、引用表示1(請求人キャラクター)は、姿態(ポーズ)を問わずキャラクター「イエロー」であると客観的に認識しうるもの全てをいう。
(2)甲第59号証に示された請求人のチョコレート菓子のパッケージの表面に表示された標章は、別掲6のとおりである。

第3 請求人の主張
請求人は、商標法第53条第1項の規定に基づく、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第93号証(枝番号を含み、甲第24号証は欠番。)を提出した。
1 通常使用権者による本件使用行為
本件商標権者の通常使用権者である正興産業は、埼玉県富士見市上沢3-7-37において、「セイコーモータースクール」の屋号を使用して、自動車教習所の営業を行い、「自動車・二輪自動車の運転の教授」の役務を提供している(甲4ないし甲6)。
しかるに、通常使用権者は、「セイコーモータースクール」における上記役務の提供にあたり、本件商標を使用するとともに(甲4ないし甲7の6)、遅くとも平成23年6月23日の時点において、以下の甲各号証に示す態様の標章を使用している事実がある。
(1)ボンネットを除く車体を青色で、ボンネット部分を黄色で塗装した自動車教習用車両の車体右側面部に、(a)運転座席用ドア部分に、「No.1」の文字を付し、その左方に黄色に着色した本件商標を表示し、(b)後部座席用ドア部分に、胴体部分を黄色に着色した上で、頭頂部部分(両目の上端部から上の部分)と両手・両脚部分を欠いた正興キャラクターを表示し、これらを(c)欧文字の「I」「C」「E」「O」を付して、赤、青、緑、黄、茶に塗り分けた複数(約17個)の球体図形を不規則に配した模様と結合した本件使用標章1を使用している(甲4、甲7の1の写真1及び2、甲7の2)。
(2)車体を黄色で塗装した自動車教習用車両の車体右側面部に、(a)後部座席用乗降ドア部分に、「No.1」の文字を付し、その左方に黄色に着色した本件商標を表示し、(b)運転座席用乗降ドア乃至前車輪の後方に、胴体部分を黄色に着色した上で、左右方向を反転し、胴体下半分(下唇の下端部から下の部分)と両手・両脚部分を欠いた正興キャラクターを表示し、これらを(c)欧文字の「I」「C」を付して、赤、青、黄、茶に塗り分けた複数の球体図形を不規則に配した模様と結合した本件使用標章2を使用している(甲4、甲7の1の写真1、甲7号証の3及び4)。
(3)車体を黄色で塗装した自動車教習所利用者送迎用バスの車体左右側面部に、(a)胴体部分を黄色に着色し左脚部分を欠いた正興キャラクターと(b)欧文字の「E」「O」「I」「C」を付して、赤、青、黄、茶、緑に塗り分けた複数の球体図形を不規則に配した模様とを結合した本件使用標章3を使用している(甲4及び甲7の1の写真3、甲7の5)。

2 本件使用標章と本件商標の類似性
本件商標は、別掲1に表示のとおりの態様(正興キャラクター)よりなるものである(甲2)。本件使用標章1ないし3は、いずれも正興キャラクターの全体を包含し、又はその特徴的な部分を包含するものであり、外観上本件商標に類似するものである。
通常使用権者は本件使用標章を、「自動車の教習」の役務の提供に当たり、当該役務の提供を受ける者の利用に供する物たる教習用車両又は送迎用バスに付し、かかる教習用車両や送迎バスを用いて当該役務を提供し、これらを当該役務の提供のために展示する行為は、被請求人の通常使用権者による本件商標に類似する商標を当該指定役務について使用する行為にあたる。

3 他人の業務にかかる商品又は役務との混同
通常使用権者が本件使用標章を「自動車の教習」の役務の提供にあたり使用する行為によって、取引者、需要者は、米国法人マース及び請求人(マースジャパンリミテッド)が遅くとも平成11年以降、日本国内外において、その取扱商品である「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子に使用しているキャラクター及び同ブランドのチョコレート菓子を想起・連想し、通常使用権者が提供する役務が、マース又は請求人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者(たとえば、請求人の許諾を受けたライセンシー)の業務にかかる役務であると認識し、役務の出所について混同し、または混同するおそれがある。
(1)請求人の周知著名な商品等表示(引用表示1及び2)
ア マースグループ
米国に本社を置くマースは、1911年に創業者フランク・C・マースを中心としたマースファミリーが菓子会社を設立してから100年の歴史を有し、今日ではその子会社や関連会社を通じて世界71力国で事業を展開し、その従業員は全世界で65,000人を超え、マースの製品は世界各国で販売され、その取り扱い商品の総売上高は300億米ドルにのぼる。同社を筆頭とする企業グループは世界的に「Mars(マース)」として広く知られている(甲9ないし甲13)。
イ 「M&M’S」のキャラクターの採用
マースの取扱商品である「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子には「M&M’S」のキャラクターを使用している(甲16、甲19ないし甲23)。
ウ 「M&M’S」ブランドの世界的成功
マースの取り扱いに係る「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子は、半世紀以上に亘って全世界で販売されてきたものであり、ユニークな請求人キャラクターをマスコット・キャラクターとして、大々的に広告宣伝した結果、今日では世界でも最も著名な菓子ブランドのひとつとしての地位と売上高を確立するに至っている(甲22)。
エ 日本における「M&M’S」の販売及び宣伝広告活動
(ア)日本国内における売上高
我が国では、1981年(昭和56年)に中京地区で「M&M’S」のテスト販売が開始され、ポップで明るいアメリカ文化を髣髴させるパッケージとカラフルな粒状のチョコレートというユニークさが消費者の心をつかみ、1987年(昭和57年)に日本全国での販売を開始した。同時期には「お口でとろけて、手にとけない」のキャッチフレーズと請求人キャラクターを使用したTVコマーシャルが全国で放送された。
その後25年間に亘って、「M&M’S」チョコレートは我が国国内において継続的に販売され、ユニークで親しみやすい請求人キャラクターとともに、需要者、取引者の間で親しまれ、今日に至っている。日本国内における売上高は、年間10億円から21億円に上る(甲22)。
(イ)請求人キャラクターとカラフルなチョコレートボールの使用
請求人は、我が国における「M&M’S」の販売強化のため、2000年(平成12年)前後より雑誌等の印刷媒体における広告、テレビコマーシャル、街頭における広告キャンペーンを通じた宣伝広告活動を活発に行った結果、1999年(平成11年)から2003年(平成15年)に至る過程で「M&M’S」ブランドのチョコレート製品の売上高は2倍に急成長した。
これらの広告宣伝活動においては、(a)「M&M’S」のマスコット・キャラクターである請求人キャラクターの人気(顧客吸引力)を積極的に活用するとともに、(b)「M&M’S」のチョコレート菓子がカラフルに着色されたチョコレートボールであることを全面に打ち出して、(c)特に若年層の消費者に向けて、大々的に訴求を行った(甲25ないし甲54)。
(ウ)パッケージにおける請求人キャラクターの使用
上述のとおり、マース及び請求人においては、日本国内外における「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子の宣伝広告活動に当たって、請求人キャラクターを使用し、その世界的な人気(顧客吸引力)を活用することによって、「『M&M’S』といえば、請求人キャラクター、請求人キャラクターといえば『M&M’S』」という関係の確立、定着に努め、「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子にかかる業務上の信用を、「M&M’S」との文字商標のみならず、請求人キャラクターにも化体させてきた(甲55ないし甲68)。
以上述べたとおり、請求人においては、遅くとも2002年(平成14年)ごろから全国の市場で販売される「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子のパッケージ上において、請求人キャラクターを使用し、2004年(平成16年)以降は、引用表示2を使用してきたのであって、当該期間中、最大で年間21億円もの売上を計上し、商品単価が100円と想定すると、年間2,100万個もの商品が、日本全国のコンビニエンスストア、キオスク(審判注記:「キオスク」は株式会社JR東日本リテールネットの登録商標(登録第1543859号ほか)であり、JR東日本が運営にかかわる売店を指すものと判断する。)、その他の小売店を通じて販売されてきたのであるから、引用表示1及び2が請求人の取り扱いにかかる商品の出所表示として周知著名なものとなっていることは明らかである。
オ 請求人キャラクターに基づく商品化事業
上述のとおり、請求人キャラクターは「M&M’S」ブランドのチョコレートを代表するキャラクターとして世界各国で大々的に宣伝された結果、今日では、マースの取り扱いにかかるチョコレート菓子との関係においてのみならず、世界中の人々から愛され、親しまれるキャラクターとして定着している。
このことは、請求人キャラクターがマース社自身の製品(チョコレート菓子)について使用されるのみならず、他の様々な種類の商品や役務への使用が許諾され、多彩な商品化事業が展開されていることからみても、明らかである(甲69ないし甲77)。
日本においても、請求人は、請求人キャラクターを用いた商品化事業や他事業者とのタイアップ広告を活発に行ってきた(甲78ないし甲90)。
カ 小括
以上を要するに、マース及び請求人の取り扱いにかかる「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子は、1941年(昭和16年)に米国で発売されて以来、今日に至るまで販売され続けている世界的長寿ブランドであり、その売上高は2010年(平成22年)時点において、全世界規模では1,900億円に上り、日本国内においても2003年(平成15年)には22億円の売上をあげ、2010年(平成22年)においても13億円を超える売上を上げている人気商品である。そして、1950年代より、「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子の広告宣伝にあたっては、請求人キャラクターを活発に使用してきており、請求人キャラクターの外観は、時代の変遷とともにデザインに変更が加えられてきているものの、遅くとも1999年(平成11年)ごろに、現在使用されているデザインのものに統一され、全世界で、「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子のマスコット・キャラクターとして一貫して使用されてきた。とりわけ、日本においては、請求人において、1999年(平成11年)ごろから請求人キャラクターの人気(顧客吸引力)を活用した宣伝広告活動を大々的に行い、2002年(平成14年)ごろから市場・店頭で販売される商品のパッケージ上に、引用表示1及び2を使用してきた。この結果、遅くとも2011年(平成23年)6月の時点において、請求人キャラクター及び引用表示が、請求人の取り扱いにかかる商品であることを指標する商品等表示として周知著名な表示となっていたことは明らかである。
(2)本件使用行為による出所の混同
そこで、本件使用標章1ないし3と引用表示1及び2を対比すると、何れも、黄色に着色された卵型の胴体に、両手両脚の四肢を有する空想上の人物をモチーフとしたキャラクターの全体又はその一部を顕著に表示してなるものであり、これらキャラクターは、(a)厚ぼったい下唇を有する口の両端を大きく笑うように左右上方にひき上げて開いた口を有する点、(b)厚ぼったいまぶたを有する縦長楕円形の両目玉を有する点、(c)「流し目」でこちらを見ている大きな黒目を有する点、(d)両目玉の上に空中に浮かぶように描かれた太い眉を有する点、(e)一方の足を後ろに引いて、他方の足を前に踏み出して体を斜めに構え、顔をやや上に向けて胸を張るような姿勢をして、一方の手を上に高く突き出し、他方の手を下に下げた全体の姿勢、(f)両手に白い大きな手袋を装着し、両足にはつま先のぼってりとした大きな靴を履いている点において共通し、全体としてみたときに著しく類似した印象を与えるものである。
これに加えて、本件使用標章2及び3は、請求人の取り扱いにかかる「M&M’S」ブランドの菓子の「ピーナッツ」のパッケージと同じく黄色を背景色とし、本件使用標章1は、請求人の取り扱いにかかる「M&M’S」ブランドの菓子の「クリスピー」のパッケージ色と同じ青色を背景色としている。そして、マース及び請求人においては、「M&M’S」のチョコレート菓子がカラフルに着色されたチョコレートボールであることを全面に打ち出して、かかるチョコレートボールをモチーフとした、欧文字の「m」を白抜きで表示した赤、黄、緑、茶、オレンジ等の色のチョコレートボールを不規則に配置した図柄を「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子のパッケージや宣伝広告物において使用しており(甲25ないし甲48、甲51ないし甲67)、例えば、マースがスポンサーとなっている米国NASCARの「マース・レーシング・チーム」の競争用車両においても、欧文字の「m」を白抜きで表示し、不規則に配置された赤、緑、茶、オレンジ等の色のチョコレートボールをモチーフとした図柄が使用されている(甲74ないし甲76)のに対して、本件使用標章1ないし3は、欧文字の「E」「O」「I」「C」を付して、赤、青、黄、茶、緑に塗り分けた複数の球体図形を不規則に配した模様を結合したものであり、このことと、上述のとおりキャラクター部分が「瓜ふたつ」といえるほどに酷似したものであること、背景色が「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子のパッケージと同じ黄色ないし青色であることとを併せて考察すると、本件使用標章1ないし3は、全体として、マース及び請求人の取り扱いにかかる「M&M’S」ブランドの周知・著名な請求人キャラクター「イエロー」(引用表示1)や、当該キャラクターが使用される「M&M’S」ブランドを想起させるものである。
そして、「M&M’S」ブランドの周知・著名な請求人キャラクターは、マース及び請求人の取り扱いにかかるチョコレート菓子について使用されるのみならず、アパレル、台所用品、家電製品など様々な分野の商品に商品化され、高い人気を博しているものであり、日本においてもチョコレート菓子とは必ずしも関連しない映画の上映や、スポーツ施設の提供(ノルン水上スキー場)について使用されたり(甲81)、米国においても自動車競走競技について使用されるなどしている(甲74ないし甲76)。このような事情からすれば、請求人キャラクターに接した需要者、取引者は、それがチョコレート菓子とは直接関連しない分野において使用されている場合であっても、周知著名な請求人キャラクターが使用されているものと捉え、当然にマース又は請求人等、当該キャラクターについて正当な権利を有する者によって使用されているか、もしくは正当な権利者による許諾に基づいて使用されているものと認識し、把握する。
また、「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子は、アメリカ生まれのホップでおしゃれなイメージを有することから、学生たちを中心とする若年層の消費者の間で人気のある商品であるところ、自動車教習所においても、運転免許取得が可能になる高校生や大学生などの年代の若年者層が重要な顧客・訴求対象となることは明らかである。したがって、「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子の需要者と自動車教習所の需要者とは一致する。
これらの事情を総合勘案すると、本件使用標章1ないし3に接した需要者・取引者は、日本のみならず、世界的に周知著名な請求人キャラクターの「イエロー」(引用表示1)や、引用表示2を想起、連想し、本件使用標章を使用して通常使用権者が提供する役務が、マース若しくは請求人又はこれらと経済的組織的になんらかの関係を有する者(例えばマースジャパンリミテッドのライセンシー)の取り扱いに係るものではないかと、その出所について混同を生じる。
(3)正興キャラクターが請求人キャラクターと混同されている現実
現実に、インターネット上の電子掲示板等に投稿された記事でも、通常使用権者が使用する正興キャラクターから、「M&M’S」ブランドを想起、連想していることは明らかである。このように相紛らわしい正興キャラクターを、「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子のパッケージと同じ黄色や青色を背景色として表示した上で、様々な色彩に着色されたチョコレートボールをモチーフとした模様と結合した本件使用標章1ないし3を使用した場合に、当該標章が使用される役務の出所について混同が生じることは必定である。

4 通常使用権者の使用事実の知得
被請求人は、通常使用権者の代表取締役であるから、当然に通常使用権者による本件使用標章1ないし3の使用の事実を知っていた。

5 第1答弁に対する弁駁
(1)第1答弁(1)について
被請求人は、引用表示2は、本件使用標章の使用開始時期が平成15年3月17日であり、引用表示2の使用開始時期が平成16年であるから「そもそも商標法第53条の問題とはならない」、「使用開始時期にそもそも存在しなかった引用表示2は商標法第53条が問題とするところではない」と主張するが、被請求人の答弁は理由がない。
ア 本件で問題とされるべきは、平成23年6月23日における本件使用標章の使用によって請求人の業務と出所の混同を生じるか否かである。
商標法第53条第1項は、(a)使用権者による、(b)指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標またはこれに類似する商標の使用によって、(c)出所の混同が生じるとき、当該商標登録が取り消されるとの効果を生じることは法文上明らかであり、問題とされる使用商標の使用開始時期と、出所混同の対象となる引用表示の使用開始時期との先後関係を問題としてはいない。また、使用商標の使用開始時期が出所混同の対象となる引用表示に先立つときは当該法条の適用を除外するとの規定もない。したがって、被請求人の答弁は理由がない。
イ 本件使用標章の使用に「不当性」がないとはいえない。
被請求人は、「工業所有権法逐条解説(第18版)」の記載を引用し、「商標法第53条は、通常使用権者が登録商標又はこれに類似する商標を不当に使用して、その当時存在する他人の業務に係る『商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたとき』は、何人も、当該登録商標を取り消すことができるのである」と述べ、「使用開始時にそもそも存在しなかった引用表示2は商標法第53条が問題とするところではない」と主張するが、誤りである。
商標法第53条は、本来登録商標は商標権者自身が使用するべきところ、これを他人に使用させる使用許諾を自由に認める一方で、その場合であっても商標権者は使用権者による登録商標やこれに類似する商標の使用によって出所の混同が生じ、他人が使用する商標の出所表示機能を阻害したり、需要者の利益を害することのないように万全を期すべき高度の管理義務を負うことを明確にし、かかる義務の履行を懈怠したときには、当該登録商標自体の取り消しという重大な結果をもたらすことを定めたものである。そうすると、商標法第53条第1項は、使用権者による登録商標又はこれに類似する商標の使用によって、他人が使用する商標の出所表示機能を阻害したり、需要者の利益を害するような出所の混同が生じたときには、直ちに適用されると解する他なく、被請求人が主張するように「使用開始時にそもそも存在しなかった引用表示2は商標法第53条が問題とするところではない」などと、適用を除外するべき根拠を見出すことはできない。
被請求人が主張するところは、本件使用標章の使用開始時期は、引用表示2の使用開始時期に先行するから本件使用標章の使用には「不当性」がないというものであるのかもしれない。しかし、仮に本件使用標章の使用開始時期が請求人による引用表示2の使用開始時期に先行するものであったとしても、引用表示1の使用開始時期(平成11年)よりも後であることに変わりはない。審判請求書(以下「請求書」という。)の4頁で図によって特定した態様の引用表示1と被請求人の本件商標が「瓜二つ」といえるほど類似するものであること、とりわけ、本件商標におけるキャラクターの両脚のポーズに着目したとき、これが平成12年2月14日に発行された甲第26号証、遅くとも平成15年1月14日以前に販売された甲第57号証の撮影対象(写真8)、平成11年に制作され、頒布された甲第70号証のC-2頁及び平成12年に発行された甲第77号証の117頁(審判注記:甲第77号証十葉目にある119頁の誤記と思われる。)における請求人キャラクターの両脚部分と全く同じポーズをとっていること、特に、後ろに引いた脚のかかとを挙げて爪先立ちするようにした特徴的な体勢を取っている点において一致することに照らすと、本件商標は、引用表示1に接した被請求人が、これに依拠し、これを模倣して制作したものとみる他ない。したがって、本件使用標章の使用に「不当性」がないとはいえない。
ウ 引用表示1は平成11年に使用開始されており、平成15年の時点で出所の混同が生じるものであったことは明らかである。
本件使用標章の使用開始時期が平成15年3月17日であったか否かにかかわらず、本件使用標章の使用によって出所の混同が生じることに変わりはなく、被請求人の行為に「不当性」がないともいえないから、本件商標は商標法第53条第1項の規定によって取り消されなければならない。
(2)第1答弁(2)について
被請求人は、引用表示1が具体的に特定されていないと主張する。
しかし、引用表示1は請求書4頁において「請求人キャラクター『イエロー』」と特定されている。請求人キャラクター「イエロー」は、請求人が「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子のマスコットキャラクターとして平成11年以降使用してきたキャラクターたちのうち「イエロー」と呼ばれているキャラクターである。このことは、請求書15頁ないし16頁において明確に特定されている。
そして、その表情やポーズを変えてもなお請求人キャラクター「イエロー」であると認識できるものは引用表示1である。
以上のとおりであるから、請求書において、引用表示1は明確かつ具体的に特定されている。
(3)第1答弁(3)アについて
被請求人は、「本件商標をそのまま使用している(色の点は商標法第70条第1項参照)ので、商標法第53条の『混同を生ずるものをしたとき』の問題とはならない」と主張する。
しかし、本件使用標章は、請求書の7頁ないし9頁並びに甲第4号証、甲第7号証の1ないし5によって特定したとおりであって、本件商標に類似するキャラクターを黄色に着色した上、カラフルなチョコレートボールをちりばめた図柄と一体的に表示したものであって、「本件商標をそのまま使用している」などとは到底いえない。
また、被請求人は「本件商標の使用以外の塗装部分は、単なる背景のデザインにすぎない」と主張するが、本件使用標章は、正興キャラクターとカラフルなチョコレートボールをちりばめた図柄とが一体的に看取されるものであり、本件使用標章に接する需要者・取引者は、キャラクター部分とそれ以外の部分とを一体的に結合したものとしてみるものといわざるを得ない。需要者・取引者が正興キャラクター部分以外を捨象し、正興キャラクター部分のみを認識・把握するとみるのは不自然である。
さらに、商標法第70条第1項の規定は商標法第53条には適用されないから、被請求人の答弁は失当である。
被請求人は、「登録商標をそのまま使用している場合は、『商品の品質若しくは役務の質の誤認』の場合だけが問題となる」と主張するが、被請求人がそのように主張する法律上の根拠は不明である。いずれにしても、本件使用標章は、「登録商標をそのまま使用している場合」にはあたらないから、被請求人の答弁は理由がない。
(4)第1答弁(3)イについて
被請求人は、「本件使用標章のうち、本件商標の使用部分」と図で特定されたポーズの引用表示1を対比して、非類似であると主張し、「第41類 自動車・二輪自動車の運転の教授」とチョコレート菓子は非類似であると主張する。
しかし、本件において問題とされているのは、「出所混同のおそれ」の存否であるから、被請求人の議論はその前提において的をえない。
この点を横に措くとしても、「本件使用標章のうち、本件商標の使用部分」と請求書4頁の図によって特定した引用表示1とを全体としてみたときに類似することは明白である。
とりわけ、このようなキャラクターからなる表示は、様々に肢体・ポーズ・表情を変えたり、異なる衣装を着用たりして表示されるのが通常であることを考慮すると、需要者、取引者の心象に残るのは姿勢やポーズの細部における相違点ではなく、キャラクターとしての同一性であって、被請求人が指摘するようなキャラクターの手先の指や、靴の模様、小さな点で表された鼻の有無、腹部に表示された文字などのような要素は、取引者、需要者の記憶や印象においては容易に捨象され、キャラクターを表した二の表示を対比するに当たって考慮されることはないといえる。したがって、需要者・取引者が異なる機会に異なる場所でそれぞれの表示に接したときには、一方から他方を連想し、想起することは明白であり、甲第91号証ないし同第93号証はその証左である。通常使用権者が使用する表示は、人々によって「冗談」や「揶揄」の対象にされるほど相紛らわしく、類似しているのである。
よって、「本件使用標章のうち、本件商標の使用部分」と図で特定されたポーズの引用表示1は外観上相紛らわしく類似する。
被請求人は、『本件商標の使用開始時に、図で特定された引用表示1は、日本国内において周知著名表示ではない』と主張する。
しかし、本件において問題とされているのは、通常使用権者がその業務について本件使用標章を使用したことによって、請求人の業務にかかる商品又は役務と出所の混同を生じるか否かであって、その判断基準時は請求書において特定した本件使用標章の使用があったとき、即ち平成23年6月23日であって、『本件商標の使用開始時』(被請求人の答弁によれば平成15年3月17日)ではない。そして、当該時点において出所混同のおそれの有無を判断するに当たって引用されるべき引用表示は、引用表示1及び引用表示2であって、「図で特定された引用表示1」に限定されるべき理由はない。
そして、このように周知・著名な引用表示に著しく類似する正興キャラクターが、請求人の取り扱いにかかるチョコレート菓子の商品パッケージや宣伝広告媒体における場合と同様に、カラフルなチョコレートボールをモチーフとした模様とことさらに結合されて、請求人の取り扱いにかかるチョコレート菓子の商品パッケージに使用される黄色や青色(ターコイズブルー)の色彩を背景にして使用されたときには、それがチョコレート菓子とは相違する自動車・二輪自動車の提供という役務に使用される場合であっても、なお請求人の取り扱いに係る商品に使用される引用表示1及び引用表示2を想起・連想させ、それが請求人又は請求人となんらかの関係を有するもの(例えば請求人から請求人キャラクター「イエロー」の使用について許諾を受けたライセンシー)の取り扱いに係るものではないかとその出所について混同を生じることは、火をみるよりも明らかである。
なお、被請求人は、通常使用権者及び被請求人は引用表示1の存在を全く知らなかったなどと主張するが、正興キャラクターと請求人キャラクター「イエロー」が「瓜二つ」といえるほどに類似するものであることに照らすと、被請求人が請求人キャラクター「イエロー」と全く無関係に、独立して正興キャラクターを創作したと考えることは極めて不自然であるし、そもそも商標法第53条第1項は商標法第51条第1項と異なり、商標権者や商標使用者の故意を要件としてはいない。したがって、通常使用権者及び被請求人が本件使用標章の使用開始時に引用表示1の存在を知っていたか否かは、商標法第53条第1項該当性を判断するに当たって全く関係がないことである。被請求人の答弁には意味がない。

6 結語
以上の次第で、本件商標は、被請求人の通常使用権者が指定役務についての登録商標に類似する商標の使用であって、他人の業務にかかる商品又は役務と混同を生ずるものをしたものであるから、商標法第53条第1項の規定により取り消されるべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証(陳述書)を提出した。
1 第1答弁
(1)引用表示2は、本件商標を通常使用権者である正興産業が本件商標の使用を開始した平成15年3月17日(乙1陳述書。なお、本件商標の出願は平成15年3月5日である。)後の平成16年が使用開始時期(請求書5頁)であるから、そもそも商標法第53条の問題とはならない。
商標法第53条は、「商標権者から使用許諾を受けた専用使用権者又は通常使用権者が、指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標を不当に使用して需要者に商品の品質又は役務の質の誤認や商品又は役務の出所の混同を生じさせた場合における制裁規定であり、いわば、現行法において自由に使用許諾を認めたことに対する弊害防止の規定である」からである(特許庁編 工業所有権法逐条解説〔第18版〕1390頁、傍線 被請求人代理人)。即ち、本件に即して言えば、商標法第53条は、通常使用権者が登録商標又はこれに類似する商標を不当に使用して、その当時存在する他人の業務に係る「商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたとき」何人も、当該登録商標を取り消すことができるのである。つまり、使用開始時にそもそも存在しなかった引用表示2は商標法第53条が問題とするところではない。
なお、正興産業は本件商標の使用開始以来、使用態様を変更することなく現在まで使用している(乙第1号証)。
(2)引用表示1につき、請求人は「姿態(ポーズ)を問わず、・・・『イエロー』であると客観的に認識しうるもの全てをいう」と主張する(請求書4頁)が、この主張はそれ自体失当である。なぜなら、引用表示1を具体的に特定しなければ、本件商標と引用表示1の対比をして類似かどうかの判断をすること及び混同を生ずるかどうかの判断をすることが、そもそも出来ないからである。
(3)なお、念の為、引用表示1につき、請求人が請求書の図で特定した姿態(請求書4頁、以下、図で特定されたポーズの引用表示1をいう)につき、本件商標との関係を検討する。
ア 被請求人は、本件商標をそのまま使用している(色の点は商標法第70条第1項参照)ので、商標法第53条の「混同を生ずるものをしたとき」の問題とはならない。なぜなら、「登録商標・・・を不当に使用した」(前記「工業所有権法逐条解説」参照)場合に該当しないからである。即ち、登録商標をそのまま使用している場合は、「商品の品質若しくは役務の質の誤認」の場合だけが問題となる。
なお、車に使用した場合において、本件商標の使用以外の塗装部分は、単なる背景のデザインにすぎない。
イ さらに念のため、上記ア以外を検討すると以下のとおりである。
(ア)請求人が主張する「本件使用標章」(3頁、4頁)のうち、本件商標の使用部分と図で特定されたポーズの引用表示1とを対比するに、本件商標は、人差し指を立てた左手を上に挙げNo1を目指し、手のひらを広げた右手を右下方部に差し出している点、チェッカーフラッグに用いられているチェック模様を施された靴をはいている点、腹部に「CM」の文字が配されている点、明確に鼻が存在する点等において、図で特定されたポーズの引用表示1と外観上異なり、非類似である。
(イ)本件商標の指定役務「第41類 自動車・二輪自動車の運転の教授」と請求人が使用しているチョコレート菓子は、役務・商品につき非類似である。
(ウ)図で特定されたポーズの引用表示1は、僅かに甲第27号証及び甲第58号証の1に、他の赤、青、緑、オレンジの請求人キャラクターとともに存在するだけである。従って、本件商標の使用開始時に、図で特定されたポーズの引用表示1は、日本国内において周知・著名表示ではない。
(エ)当然のことではあるが、通常使用権者及び被請求人は、本件商標の使用開始時に、図で特定されたポーズの引用表示1の存在を全く知らなかった(乙1)。
(オ)以上によって明らかな通り、本件商標の使用は、図で特定されたポーズの引用表示1を付した商品と「混同を生ずるもの」に該当しない。

2 第2答弁
(1)商標法第53条第1項に該当する事実は存在しないことについて
ア 商標法53条の趣旨は、「専用使用権者又は通常使用権者がその正当使用義務に違反して商標を使用した結果、商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、そのような行為は他人の権利を侵害し、一般公衆の利益を害するばかりでなく、商標権者もその監督義務に違反するものであるから、何人もその商標登録を審判により取り消し得ることとし、商標権者ならびに使用権者の双方に対して制裁を科することにより、第三者の権利及び一般公衆の利益を保護しようとするものである」(注解 商標法 新版 下巻1170頁)。
イ 正興産業は、平成15年3月17日の使用開始から現在に至るまで、本件商標の指定役務において、本件商標と同一のものを使用しており、かつ、現在までその使用態様を一切変更していない(乙1)。
(ア)即ち、正興産業は、本件商標を、甲第4号証の「セイコーモータースクール」の入学案内、甲第6号証の冊子「クランクアップ」、乙第1号証の資料3の1及び2の看板、同資料4の1ないし3の立看板、同資料5の1ないし3の看板、同資料6の1及び2のチラシ、同資料7のチラシ、及び同資料8のティッシュ等に各使用している。
また、正興産業は宣伝広告の一貫として車輌においても本件商標を使用している。なお、車輌において本件商標以外の塗装部分は単なる背景のデザインである(前記入学案内、冊子、看板、チラシ、ティッシュ等において背景のデザインが一切使用されていないことは、このことを裏付ける)。
(イ)車輌における背景のデザインは、引用表示2が使用される以前に採用されたものである。請求人は、前記(ア)の全体を無視して、殊更背景のデザインが塗装されている車輌だけを問題にしているのである。
ウ したがって、正興産業は、正当使用義務に違反して商標を使用していないので、被請求人には、商標法第53条第1項に該当する事実は存在しない。
エ なお、請求人は、「被請求人は、使用開始時期を立証する資料として正興産業株式会社の従業員による陳述書を提出するが、被請求人の利害関係人による陳述は客観性を欠くといわざるを得ず、措信することはできない」と主張する(4頁)。
しかし、請求人の主張は失当である。本件使用標章の使用開始時期が平成15年3月17日であることの「客観性」は、本件商標の出願が平成15年3月5日であることによっても裏付けられる。一般に、登録商標の出願は登録商標の使用開始直前に行なわれるのが通常であるからである。
また、使用開始時の車輌については、平成15年3月14日付の自動車検査証が存在する(乙1、資料1の1ないし5)。
(2)請求人の商標法第53条の解釈が失当であることについて
ア 請求人は「本件で問題とされるべきは、平成23年6月23日における本件使用標章の使用によって請求人の業務と出所の混同を生じるか否かである」と主張する(4頁)。
イ しかし、正興産業が本件商標を使用開始する時に引用表示2はそもそも存在しなかったのであるから、商標法第53条は問題とならない。
(ア)なぜなら、本件商標を使用開始する時に存在すらしなかった引用表示2について、商標権者に対し監督責任を負わせるとすれば、商標法第51条と比較すると、商標法第53条は著しく重い責任を強いるものとなるからである。即ち、商標法第51条は、他人がその業務に係る商品・役務に商標を使用していることを同条に該当するか否か認定する前提要件とし、商標権者の故意だけを要件としている。この商標法第51条とのバランス上、商標法53条51条と同じ前提要件を採用し、その上で、故意の場合のみならず過失をも問題にするのである。
(イ)また、商標法第53条は「当該商標権者がその事実を知らなかった場合において、相当の注意をしていたときは、この限りでない」と免責事由を定める(同条1項但書)が、この免責事由の規定は、通常使用権者等が登録商標の使用を開始する時に他人の業務に係る商品・役務についての表示が存在していることを当然の前提としている。なぜなら、使用開始時に存在もしなかった表示に対し、商標権者は相当の注意を払うことは出来ないからである。
(ウ)商標法第53条を前述のように解釈しないと、本件の場合、免責事由が全く認められず、著しく重い責任を商標権者に負わせるという極めて不合理な結果となるのである。
ウ 請求人は、「登録商標第4711200号は、引用表示1に接した被請求人が、これに依拠し、これを模倣して制作したものとみる他ない。したがって、本件使用標章の使用に『不当性』がないとはいえない」と主張する(6頁)。
しかし、請求人の主張は誤りである。なぜなら、正興産業は指定役務において本件商標と同一のものを使用しているからである(上記(1)イ参照)。請求人が問題とする「模倣」云々は商標法第53条では問題とならない。
(3)引用表示1が具体的に特定されていないことについて
ア 請求人は「請求人キャラクター『イエロー』」で引用表示1は特定されていると主張する(7頁、8頁)。
イ しかし、「請求人キャラクター『イエロー』」だけでは、「肢体、ポーズを様々に変えて表示される」(7頁)ため、本件商標と引用表示1とを対比したときに、具体的にどの部分が類似しているかどうかを判断することは出来ないので、請求人の主張は失当である。
(4)請求人の商標法第70条1項の解釈が失当であることについて
ア 請求人は、本件商標が車輌において使用された場合につき、「需要者・取引者が正興キャラクター部分以外を捨象し、正興キャラクター部分のみを認識・把握するとみるのは不自然である」と主張する(8頁)。
しかし、請求人の主張は失当である。セイコーモータースクールに来る人々は、甲4の「セイコーモータースクール」の入学案内、大きな看板(乙1の資料3の1、2等)及びティッシュ(乙1の資料8)等で本件商標だけが使用されているものを見ているので、車輌の本件商標の使用以外の塗装部分が、単なる背景のデザインにすぎないことを容易に「認識・把握」するからである。
イ 請求人は、商標法第70条第1項の規定に商標法第53条の規定が準用されていないことを問題にする(8頁、9頁)。
しかし、請求人の主張は失当である。色の点は準用されている商標法25条の使用として判断されるので、正興産業は、本件商標を使用しているのである。
(5)請求人の商標法第53条の解釈が失当であることについて
ア 請求人は、「本件において問題とされているのは、『本件使用標章のうち、本件登録商標の使用部分』ではなく『本件使用標章』であり、かつ、これらの表示間の類否やこれらの表示が使用される商品・役務間の類否ではなく『出所混同のおそれ』の存否であるから、被請求人の議論はその前提において的をえない」と主張する(9頁)。
しかし、請求人の主張は失当である。商標法第53条は、通常使用権者が「指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であって・・・他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたとき」と規定しているからである。即ち、商標法第53条は、例えば、登録商標の類似商標を類似役務に使用し、その結果他人の役務と混同を生ずるものをしたことを問題とする。
イ なお、請求人が指摘する、本件商標の使用部分と請求書4頁の図によって特定した引用表示1との対比(9頁)及び図で特定されたポーズの引用表示1が日本国内において周知・著名でないことについては、被請求人は、第1答弁書(6頁、7頁)で既に述べた。

第5 当審の判断
1 本件審判について
本件審判は、商標法第53条第1項の規定に基づく商標登録の取消しを求める審判であるところ、同項には「専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。ただし、当該商標権者がその事実を知らなかつた場合において、相当の注意をしていたときは、この限りでない。」と規定されている。
しかして、その趣旨は、商標権者から使用許諾を受けた専用使用権者又は通常使用権者が、指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標を不当に使用して需要者に商品の品質又は役務の質の誤認や商品又は役務の出所の混同を生じさせた場合における制裁規定であり、現行商標法において自由に使用許諾を認めたことに対する弊害防止の規定というのが相当である。
したがって、同法51条では適用対象とはされない、指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標そのものの使用についても本項の適用がされることがある。そして、商標権者が相当の注意義務を果たしていれば本項の適用は免れる。また、使用権者による故意は適用の要件とはされていない。
そして、本項該当性を判断するに際しては、「商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるもの」については、誤認・混同のおそれがある場合をもその対象とされるというのが相当である(東京高裁 昭和57年(行ケ)第50号 昭和58年10月19日判決言渡し・同上告事件 最高裁第二小法廷 昭和59年(行ツ)第8号 昭和60年2月15日判決言渡し、東京高裁 平成9年(行ケ)第242号 平成10年7月21日判決言渡し)。
また、「他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるもの」として、請求人が引用する商標は、それが現実に使用され、一定程度の周知性を有していることが必要であるというべきである(知財高裁 平成18年(行ケ)第10375号 平成19年2月28日判決言渡し、知財高裁 平成22年(行ケ)第10099号 平成22年6月30日判決言渡し)。
そこで、請求人の主張する、通常使用権者による本件使用標章の使用行為が上記条項に該当するか否かについて、以下、検討する。

2 本件商標の通常使用権者について
本件商標は、別掲1に示す構成のものである。そして、答弁の全趣旨及び甲第8号証によれば、正興産業は、本件商標の通常使用権者ということができるものである。以下、正興産業を「通常使用権者」という。

3 登録商標又はこれに類似する商標の使用について
(1)本件使用標章
請求人は、通常使用権者が使用する商標は、本件使用標章1ないし本件使用標章3に示すものであると主張し、甲第4号証及び同第7号証(枝番を含む。)を提出している。
このうち甲第4号証に中央に表示された、卵型の胴体の擬人化された色彩図形商標は、前記「第3 1」において、本件使用標章1ないし本件使用標章3で共通に提示されており、これは、本件商標に色彩が付された態様のものであって、本件使用標章1ないし3とは別の商標というべきであり、以下、甲第4号証の中央に表示された色彩図形商標(正興キャラクター)を「本件着色商標」という。
そして、請求人によれば、本件使用標章1は、甲第7号証の1の写真1及び2、同第7号証の2に示すものとされるところ、甲第7号証の1の写真2に示された、別掲2に示した自動車の車体側面に表されている標章をいうものと判断される。
本件使用標章2は、甲第7号証の1の写真1、同第7号証の3及び同第7号証の4に示すものとされるところ、請求人は、「車体を黄色で塗装した自動車教習用車両の車体右側面部に」と述べていることから、これらの甲号証に示されている車体のうち、本件使用標章2は、別掲3に示した自動車の車体側面に表されている標章をいうものと判断される。
本件使用標章3は、甲第7号証の1の写真3、同第7号証の5に示すものとされるところ、甲第7号証の5の写真に示された、別掲4に示した自動車の車体側面に表されている標章をいうものと判断される。
(2)本件商標と本件着色商標の関係
本件商標は、別掲1に示すものであるところ、本件着色商標は、本件商標に色彩が付されたものである。しかして、商標法第27条1項には「登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならない。」と規定されていることから、この限りにおいて、本件着色商標は、願書に記載された商標とはいえないものである。
そして、商標法第53条第1項には、「登録商標又はこれに類似する商標の使用」とあり、前記1に記したように、登録商標そのものの使用についても本項が適用されることがあるから、同項における「登録商標」とは、願書に記載した商標をいうものと解され、これに色彩を付した商標は「これに類似する商標」というのが相当である。
また、同法第70条中には同法第53条は明示されてはおらず、同法第53条第1項の趣旨からして、登録商標に類似する商標等についての特則を定めた同法第70条は、同法第53条でいう「登録商標」には適用されないと解すべきであり、本件着色商標は本件商標と同一の商標ということはできず、本件着色商標は本件商標に類似する商標というべきである。
この点、被請求人は、「本件商標をそのまま使用している(色の点は商標法第70条第1項参照)ので、商標法第53条の『混同を生ずるものをしたとき』の問題とはならない。」と主張している。
しかして、商標法第25条においては、「商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。」とされているところ、商標法第70条第1項の規定は、上記専用権の規定や、不使用取消審判、商標権の侵害行為等との関係で、「色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含む」との特則が設けられているのであって、本件第53条第1項の取消審判においてはこの特則は適用されないというのが相当であって、本件各車両(以下「教習用車両」という。)に表示された本件着色商標(例えば、本件使用標章1における「No.1」の文字の左側に表示されている色彩が付された商標)は、本件商標に類似する商標というべきであって、本件商標をそのまま使用しているということはできず、この点についての被請求人の主張は失当である。
(3)本件商標と本件使用標章との類否
ア 本件使用標章1との類否
本件商標は別掲1に示すものであるところ、別掲2に示した本件使用標章1は、ボンネットを除く車体を青色で、ボンネット部分を黄色で塗装した教習用車両の車体側面部に表示されたものであり、ここには、(a)目、鼻、口及び胴体部分をもって表された本件商標と類似する標章、(b)本件着色商標、(c)「No.1」の文字、(d)色彩が付された円形図形内に白抜きで欧文字の「I」、「C」、「E」及び「O」とおぼしき文字を記した図形などが表示されているものである。
しかして、これらの標章、商標、文字及び図形は、青色に着色された教習用車両の側面全体に表示されており、このうちの上記した(a)や(b)といった特定の部分が商標として使用されているといえることがあっても、その部分のみが商標として認識され、他の部分は商標とは認識されないということはできず、車体側面にある個別の文字や図形及びこれらの結合である、車体側面全体に表されたものも標章というべきである。
そして、本件使用標章1には、上記(a)及び(b)が顕著に表示されていることから、本件使用標章1は本件商標に類似するというべきである。
イ 本件使用標章2との類否
本件使用標章2は、別掲3に示すものであるところ、車体を黄色で塗装した教習用車両の車体側面部に表示されたものであり、ここには、(e)顔の部分をもって表された本件商標と類似する商標、(f)本件着色商標、(g)「No.1」の文字、(h)色彩が付された円形図形内に白抜きで欧文字の「C」及び「I」を記した図形などが表示されているものである。
そして、上記同様に、本件使用標章2には、上記(e)及び(f)が含まれていることから、本件使用標章2は本件商標に類似するというべきである。
ウ 本件使用標章3との類否
本件使用標章3は、別掲4に示すものであるところ、車体を黄色で塗装した自動車教習所利用者送迎用バスの車体側面部に表示されたものであり、ここには、(i)左脚と、右足の踵部を欠いた、本件着色商標に類似する商標、(j)「セイコーモータースクール」の文字,(k)「No.1」、「の教習所には」、「理由があります」の文字、(l)色彩が付された円形図形内に白抜きで欧文字の「E」、「O」、「I」及び「C」を記した図形などが表示されているものである。
そして、上記同様に、本件使用標章3には、上記(i)が含まれていることから、本件使用標章3は本件商標に類似するというべきである。
この点(上記した本件商標と本件使用標章1ないし3が類似すること)に関して、被請求人は、車に使用した場合において、本件商標の使用以外の塗装部分は、単なる背景のデザインにすぎないと主張しているが、(a)ないし(d)の結合標章、(e)ないし(h)の結合標章及び(i)ないし(l)の結合標章である本件使用標章についても自他商品・役務の識別標識と認識されるというべきであるから、上記の被請求人の主張は採用することができない。
したがって、本件使用標章の使用は、いずれも商標法第53条にいう「登録商標に類似する商標の使用」というべきものである。

4 本件使用標章が使用されている役務について
請求人の主張、甲各号証及び被請求人の答弁の全趣旨によれば、通常使用権者は、本件使用標章を本件商標の指定役務中の「自動車の運転の教授」に使用しているということができるものである。

5 本件使用標章の使用時期について
商標法第53条第1項における「混同を生ずるものをしたとき」における「とき」とは、文字どおり、使用権者が当該登録商標又はこれに類似する商標の使用をしたときをいうものであって、この点、被請求人は、通常使用権者が本件商標の使用を開始したのは平成15年3月17日であると主張して乙第1号証を提出している。
しかして、ここに添付された資料1の写真1及び2によれば、通常使用権者は、ボンネットを除く車体を黄色で、ボンネット部分を青色で塗装した教習用車両の車体側面部のうち、(a)運転座席及び前座席用ドア部分に、「No.1」の文字を付し、その左又は右側に本件着色商標を表示し、(b)後部座席用ドア部分に、胴体部分を黄色に着色し、頭頂部部分(両目の上端部から上の部分)を欠いた本件商標と類似する標章を表示し、(c)前後のタイヤ上部の車体部分に、色彩が付された円形図形内に白抜きで欧文字の「I」、「C」及び「E」を記した図形標章を使用していることが認められる。そして、これらの結合標章は、「本件使用標章1」の車体の黄色と青色とを入れ替えた構成のものと思われる。
また、乙第1号証の陳述書には「順次車両の入替を行い現在まで使用続けて」との記載があることから、通常使用権者は、本件商標登録時には、本件着色商標を含めた本件商標に類似する商標の使用をしていたと推認することができるものである。
そうとすれば、本件の場合、本件商標が登録された平成15年9月19日以降、請求人が主張する同23年6月23日の期間が本件の使用時期というべきである。
したがって、本件使用標章がいつ頃から使用されていたかは証拠上判然としないものの、少なくとも、平成23年6月23日における本件使用標章の使用行為も、本件の使用時期に含まれるというべきである。
この点に関して、被請求人は、通常使用権者が本件商標の使用を開始してから約8年後の「混同」を問題にするのは失当である旨主張する。他方、請求人は、本件審判の判断基準時は平成23年6月23日であって本件商標の使用開始時ではないと主張している。しかしながら、この両者の主張は、上記に照らして適切とはいえないものである。
ただし、この期間内において、他人の業務に係る役務と混同を生ずる行為があったか否かは、別途、提出された証拠により判断されねばならないことはいうまでもない。

6 請求人等の使用標章について
(1)引用表示
請求人が周知著名な商品等表示であると主張する、引用表示1は別掲5に、引用表示2は別掲6に、それぞれ示すものである。ただし、引用表示2は、後記(2)で記すように、本件の引用商標とすることはできないものである。
この引用表示1に表された請求人のキャラクター(イエロー)は、(a)黄色に着色された卵型の胴体中央に欧文字のmを太めに白で表示し、(b)厚ぼったい下唇を有し、口の両端を笑うように開き、(c)瞳は黒く、目は縦長楕円形で大きく開かれ、(d)三日月状の眉を太く表し、(e)四肢を有し、(f)両手に白い手袋を装着し、右の手のひらを上向きにして右の腕を高く上げ、左の腕は下向きとし、(g)両足に大きな靴を履き、(h)右足を後ろに引き左足を前に向け体を斜めに構え、(i)これ全体をやや上方から俯瞰した状態で表した態様の商標である。
また、姿態や顔つきは、引用表示1と異なるものの、黄色に着色された卵型の胴体中央に欧文字のmを太めに白で表示し、厚ぼったい下唇を有し、口を開き、瞳は黒く、目は縦長楕円形で大きく開かれ、三日月状の眉を太く表し、四肢を有し、両手に白い手袋を装着し、両足に大きな靴を履いた、引用表示1の特徴点を顕著に表示してなる同じキャラクター(イエロー)群について、以下「引用表示1等」という。
(2)甲各号証の採否
請求人は、引用表示2の使用開始時期は平成16年からであるとし、また、請求人が提出した甲各号証の中には、本件商標の登録後である平成15年9月19日以降の日付に係るものがある。
しかして、使用権者による、登録商標及びこれに類似する商標の適法な使用開始後に、他人が、当該登録商標に類似する商標の使用をしたときは、使用する商品・役務によっては、かえって商標権の侵害行為となる可能性があり、そのような行為に基づく後発の類似商標を引用して、「使用権者が他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをした」として、同法第53条第1項の取消審判を請求することは、取消審判請求権の濫用として許されないというべきである。
そうであれば、同法第53条第1項の登録商標の取消しの審判成立を立証する証拠は、使用権者による、当該登録商標又はこれに類似する商標の使用開始前のものでなければならないと解すべきである。
そして、請求人は本件使用標章の使用日(期間)について、平成23年6月23日と限定しているが、この点は、前記したように適切ではなく、かつ、請求人は、本件使用標章が、この日以前に使用されていなかったことについては主張、立証していないから、本件商標に類似する商標の開始時期は、前記5で認定したように、通常使用権者が、本件着色商標を含めた本件商標に類似する商標使用していたといえる、本件商標の登録日である平成15年9月19日(以下「通常使用権者使用開始日」という。)というのが相当である。
したがって、平成16年から使用を開始したという引用表示2は、通常使用権者使用開始日後に使用が開始されたものであるから、本件における引用商標とすることはできず、また、通常使用権者使用開始日後にかかる甲各号証についてもこれらを、本件審判の書証とすることはできないというべきである。
(3)引用表示1の周知性について
ア 請求人が提出した甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)米国法人であるマースは、1911年にアメリカで菓子会社として創業、2011年(平成23年)現在、世界71力国において事業を展開し、その従業員は65,000人を超え、総売上高は300億米ドルであること(甲9、甲10及び甲13)。
(イ)マースの取扱商品であるチョコレート菓子には、引用表示1等が使用されてきたこと(甲16、甲19ないし甲23)。
(ウ)マースの取り扱いに係る「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子は、1998年から通常使用権者使用開始日以前の2002年の間において、全世界で毎年13億ドル以上の売上げがあり、広告・販売促進費として各年約1億ドルが費やされ、引用表示1が使用されてきたこと(甲22)。
(エ)我が国において、マースの取り扱いに係る「M&M’S」ブランドのチョコレート菓子は、平成10年には10億円の売上げがあり、同14年までの5年間でおよそ64億円の売上げがあったこと。
(オ)平成12年1月ないし同14年9月の間に発行された雑誌、週刊誌、情報誌などにおいて引用表示1等を使用した、マースの商品である粒状のチョコレート菓子の広告宣伝が行われたこと(甲25ないし甲54)。
(オ-1)平成12年1月1日 株式会社扶桑社発行「JUNIE」(甲25)
(オ-2)平成12年2月14日 株式会社宝島社発行「CUTIE」(甲26)
(オ-3)平成12年4月10日 株式会社宝島社発行「CUTIE」(甲27)
(オ-4)平成12年4月3日 株式会社宝島社発行「spring」(甲28)
(オ-5)平成12年4月 株式会社祥伝社発行「Zipper」(甲30)
(オ-6)平成12年5月1日 株式会社扶桑社発行「JUNIE」(甲31)
(オ-7)平成12年4月24日 株式会社宝島社発行「CUTIE」(甲32)
(オ-8)平成12年8月13日 株式会社ワークスコーポレーション発行「DTPWORLD」(甲38)
(オ-9)平成12年10月13日 株式会社ワークスコーポレーション発行「DTPWORLD」(甲39)
(オ-10)平成12年11月1日 株式会社交通新聞社発行「散歩の達人」(甲40)
(オ-11)平成12年11月28日 株式会社角川マーケティング発行「週刊Tokyo Walker」(甲41)
(オ-12)平成12年12月5日 株式会社角川マーケティング発行「週刊Tokyo Walker」(甲42)
(オ-13)平成12年12月4日 株式会社宝島社発行「CUTIE」(甲43)
(オ-14)平成12年12月18日 株式会社宝島社発行「CUTIE」(甲44)
(オ-15)平成12年12月25日 株式会社宝島社発行「spring」(甲46)
(オ-16)平成13年1月1日 株式会社扶桑社発行「JUNIE」(甲47)
(オ-17)平成13年1月 株式会社祥伝社発行「Zipper」(甲48)
(オ-18)平成12年秋号 株式会社小学館発行「キヤラクターデパート キヤラデパ」(甲49)
(オ-19)平成12年12月 株式会社日経BP発行「小田急時刻表2000ダイヤ改正号」(甲50)
(オ-20)平成12年12月 株式会社工ムステーションドツトコム発行「エムスタ・マガジン」(甲51)
(オ-21)平成14年5月 株式会社ベネッセコーポレーション発行「チャレンジ4年生わくわく発見BOOK」(甲52)
(オ-22)平成14年7月 株式会社イーストコミュニケーションズ発行「h・e & Easy」(甲53)
(オー23)平成14年9月1日 株式会社交通新聞社発行「散歩の達人」(甲54)
なお、平成12年4月17日 株式会社宝島社発行とされる「spring」(甲29)、平成12年5月1日 株式会社宝島社発行とされる「spring」(甲33)、平成12年5月15日 株式会社宝島社発行とされる「spring」(甲34)、平成12年5月29日 株式会社宝島社発行とされる「spring」(甲35)、平成12年6月12日 株式会社宝島社発行とされる「spring」(甲36)、平成12年6月26日 株式会社宝島社とされる「spring」(甲37)、平成12年12月11日 株式会社宝島社とされる「spring」(甲45)は、発行年が確認できないので参考情報とする。
(カ)2002年(平成14年)ないし2003年(平成15年)の間において、引用表示1等を使用した、マースの商品である粒状のチョコレート菓子を含む商品カタログが作成されたこと(甲55ないし甲58の2。このうち、甲58の1及び同2の商品カタログは、2003年用のものであるから、遅くとも通常使用権者使用開始には、その配布はなされていたものと推認する。そして、甲59ないし甲68のカタログは通常使用権者使用開始日後のものであるから本件審判の証拠としては採用することはできない。)。
(キ)平成11年ないし同12年にかけて、引用表示1等は、海外において、マースの商品である粒状のチョコレート菓子以外の、自動車おもちゃを含むおもちゃ、ノート、帽子、ティーシャツ、ラジオ、時計、ランチボックス(弁当箱)、水筒、などの商品にも使用されていること(甲69ないし甲72、甲74、甲76及び甲77。なお、甲73及び甲75は、通常使用権者使用開始日後のものであるから本件審判の証拠としては採用することはできない。)。
この点について被請求人は、甲号証のうち海外で行った商品化事業に関するものは本件と関係がない旨主張している。
しかしながら、ある商標が、商品化事業等の象徴(シンボル)として広告宣伝に使用されることがあることは、我が国内に限定されない世界的経済活動上の普遍的な事実といえ、上記の甲各号証は、引用表示1等においても、この事実が当てはまることを示したものである。
そして、例えば、甲第74号証及び同第76号証においては、請求人のチョコレート菓子をモチーフにしたキャラクター標章が、「自動車競技会の運営」役務の象徴(シンボル)として使用されていることが認められ、引用表示1等を使用した海外における商品化事業がなされていたことを示す甲各号証は、ある商品に使用されている商標が、それ以外の商品や役務にも使用されることがあることを示したものであって、これらが本件と全く無関係であるとはいえないものである。
(ク)日本においても、請求人は、被請求人の粒状のチョコの形状をテニスラケットの広告にキャラクターとして使用していること(甲78ないし甲80。なお、甲81ないし甲90は、通常使用権者使用開始日後のものであるから本件審判の証拠としては採用することはできない。)。
イ 引用表示1の周知性についての判断
前記(1)で認定した事実によれば、(a)米国法人であるマースは、1911年の創業以来、2011年(平成23年)現在、世界各国において菓子の製造販売事業を展開し、総売上高は300億米ドルであること。(b)その取扱商品であるチョコレート菓子には、引用表示1等が使用されてきたこと。(c)我が国において、マースのチョコレート菓子は、平成10年以降、通常使用権者使用開始日前である平成14年の5年間でおよそ64億円の売上げがあったこと。(d)平成12年1月ないし同14年9月の間に発行された雑誌、週刊誌、情報誌などにおいて引用表示1等を使用した、マースの商品である粒状のチョコレート菓子の広告宣伝が行われたこと。(e)2002年(平成14年)ないし2003年(平成15年)の間において、引用表示1等を使用した、マースの商品である粒状のチョコレート菓子を含む商品カタログが作成されたこと。
以上によれば、引用表示1は、請求人の取り扱いに係る商品チョコレート菓子に使用されて、遅くとも、通常使用権者使用開始日までには、我が国において商品チョコレート菓子の取引者・需用者間において請求人の取り扱いに係るものとして広く認識されて周知となっており、これが、少なくとも平成23年6月23日まで継続していたと判断できるものである。
そして、この点の判断に際して、引用表示1の特徴点を顕著に表した、黄色に着色された卵型の胴体中央に欧文字の「m」を太めに白で表示し、厚ぼったい下唇を有し、口を開き、瞳は黒く、目は縦長楕円形で大きく開かれ、三日月状の眉を太く表し、四肢を有し、両手に白い手袋を装着し、両足に大きな靴を履いた、引用表示1と同じキャラクター(イエロー)も、引用表示1の周知性獲得に大きく寄与したといえるものである。
この点について、被請求人は、「図で特定されたポーズの引用表示1は、僅かに甲第27号証及び甲第58号証の1に、他の赤、青、緑、オレンジの請求人キャラクターとともに存在するだけである。従って、本件商標の使用開始時に、図で特定されたポーズの引用表示1は、日本国内において周知・著名表示ではない。」と主張している。
確かに、請求人が提出した甲各号証において、別掲5の態様と同一の引用表示1が示されているのは、被請求人が主張するように、甲第27号証の二葉目及び甲第58号証の1の表紙だけである。しかしながら、引用表示1は、請求人の商品の広告宣伝に使用する象徴(シンボル)としてのキャラクター(イエロー)の一態様であって、同キャラクターは、甲第21号証に示されているように、使用される場面や局面において姿態やポーズが種々変わるのものであって、常に同一の態様で使用されるというのはむしろ不自然というべきである。現に、甲第26号証の三葉目、甲第57号証の写真8ないし13には、引用表示1と左右を反転させた態様のキャラクター(イエロー)が使用されているところであり、このほかにも、引用表示1の特徴点を顕著に表示してなるキャラクター(イエロー)は、甲各号証において多数示されているところである。
そして、本件において、引用表示1の周知性を判断したのは、上記したように、引用表示1の使用事実だけではなく、甲各号証で示された、キャラクター(イエロー)が使用されていることによる引用表示1の周知性獲得への寄与の程度をも考察した結果である。
したがって、引用表示1の周知性は、別掲5の態様と同一の引用表示1を含めたキャラクター(イエロー)全体が有する周知性を集積したものと解すのが相当であって、甲各号証における引用表示1のみの出現回数の少なさを理由に引用表示1の周知性を否定する被請求人の主張は採用の限りではない。

7 出所の混同について
(1)本件使用標章と引用表示1との類否
本件商標は、別掲1に示したとおりのものであり、(a)卵型の胴体中央に欧文字のcmを太めに白で表示し、(b)下唇は厚めで口は笑うように開かれ、(c)瞳は黒く、目は縦長楕円形で大きく開かれ、(d)眉は三日月状で太く表され、(e)四肢を有し、(f)両手に白い手袋を装着し、左の腕は人差し指を上に向けて突き上げるように高く上げ、右の腕は手のひらを広げて下向きとし、(g)チェッカーフラッグ模様が施された大きな靴を履き、(h)左足を後ろに引き右足のつま先を前に向け体を斜めに構え、(i)これ全体をやや上方から俯瞰した状態で表した態様の商標である。
他方、引用表示1は、前記したように、(a)黄色に着色された卵型の胴体中央に欧文字のmを太めに白で表示し、(b)厚ぼったい下唇を有し、口の両端を笑うように開き、(c)瞳は黒く、目は縦長楕円形で大きく開かれ、(d)三日月状の眉を太く表し、(e)四肢を有し、(f)両手に白い手袋を装着し、右の手のひらを上向きにして右の腕を高く上げ、左の腕は下向きとし、(g)両足に大きな靴を履き、(h)右足を後ろに引き左足を前に向け体を斜めに構え、(i)これ全体をやや上方から俯瞰した状態で表した態様の商標である。
そこで、本件商標と引用表示1を比較するに、両者は(a)卵型の胴体中央に欧文字を太めに白で表示し、(b)厚めの下唇を有し、口を笑うように開き、(c)瞳を黒く、目は縦長楕円形で大きく開き、(d)三日月状の眉を太く表し、(e)四肢を有し、(f)両手に白い手袋を装着し、片方の腕を高く上げ、他方の腕は下におろし、(g)大きな靴を履き、(h)片足を後ろに引き他方の足を前に向け体を斜めに構え、(i)これ全体をやや上方から俯瞰した状態で表した態様標である点において共通し、両者を全体的に観察する時には酷似したものといえ、両者を時と所を異にして観察する時には互いに類似する商標というべきである。
そして、本件使用標章中には、顔と手足の一部を欠いた本件商標に類似する商標及び本件着色商標が含まれているから、本件使用標章、すなわち、本件使用標章1ないし3と引用表示1とは互いに類似する商標というべきである。
(2)類似性の程度等
上記(1)で判断したように、本件商標及び本件着色商標と、引用表示1とは互いに類似する商標というべきである。そして、その類似性の程度についてみるに、両者は前記したように互いに酷似していることに加えて、いずれも本件商標登録前の事実を示したものと認められる、甲第26号証の三葉目及び甲第57号証の六葉目の写真10などに示された、引用表示キャラクター(イエロー)は本件商標に酷似するといえることから、本件使用標章中の、顔と手足の一部を欠いた本件商標に類似する商標及び本件着色商標と、引用表示1との類似性の程度は極めて高いものということができる。
そして、引用表示1は、我が国内外で請求人の取り扱う商品チョコレート菓子に使用されて、通常使用権者使用開始日までに、請求人の取り扱いにかかる商品チョコレート菓子に使用するものとして周知となっていたといえるものである。
また、請求人の取り扱う商品チョコレート菓子の形状は、中央部分がふくらんだ扁平ボール状であり(甲41二葉目ほか)、青、黄、赤、緑などで着色され、中央には欧文字の「m」が白く表示され(甲39二葉目、甲55ほか)ていることが認められる。
これに対して本件使用標章1には、色彩が付された円形図形内に白抜きで欧文字の「I」、「C」、「E」及び「O」とおぼしき文字を表示した図形が、本件使用標章2には、色彩が付された円形図形内に白抜きで欧文字の「I」及び「C」の文字を表示した図形が、本件使用標章3には、色彩が付された円形図形内に白抜きで欧文字の「E」、「O」、「I」及び「C」の文字を表示した図形がそれぞれ表示されている。これらの本件使用標章に表示された円形図形は、上記した請求人のチョコレート菓子の形状及びその広告宣伝との関係からすれば、本件使用標章を観た者は、請求人のチョコレート菓子を連想、想起することは決して少なくないというべきである。
加えて、引用表示1及び引用表示キャラクター(イエロー)は、請求人の商品チョコレート菓子以外の商品・役務の象徴(シンボル)として使用されてきており、ある商標が商品化事業等の象徴(シンボル)として使用されることがあることは、前記したとおりである。
(3)請求人の取り扱う商品と本件使用標章が使用されている役務の関係
甲第25号証ないし甲第54号に示された雑誌、週刊誌、情報誌などは、その内容に照らして比較的若い年齢層の読者を対象に発行されているといえるものであり、また、請求人の取り扱う商品チョコレート菓子は、若者も購入する商品である。
他方、本件使用標章が使用されている役務は「自動車の運転の教授」である。しかして、普通自動車の運転免許は満18歳以上であれば取得資格が与えられることから、役務である「自動車の運転の教授」の需要者は若者が多いといえるところである。
そうであれば、請求人の商品チョコレートの購入者(需要者)、若者向けの雑誌類の読者(需要者)及び本件使用標章が使用されている役務の需要者とは、年齢層を共通にする割合が比較的高いといえるものである。
加えて、本件使用標章1及び本件使用標章2を使用した教習用車両は、通常使用権者の教習所内だけではなく、仮免許取得後は、付近の路上において教習に使用されているものと推認され、また、本件使用標章3は、近辺の鉄道駅と通常使用権者の教習所の間で運行されるといえるから、路上で本件使用標章を使用した教習用車両に出会う運転者やその同乗者及び路上の通行者は決して少なくないものといえ、これらの中には、請求人のチョコレート菓子の需要者や運転免許の取得を希望している者もいると思われるところである。
(4)出所の混同についての判断
上記(1)ないし(3)及び、本件使用標章と、引用表示1及び引用表示キャラクター(イエロー)に接する者が普通に払う注意力を基準に総合して検討すれば、本件使用標章1ないし3が使用されるときには、その役務が、請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の取扱いに係るものであるかのごとく、当該役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるというのが相当である。

8 商標権の注意義務について
被請求人は、本件商標権者が相当の注意をしていたことについて、主張、立証していない。

9 その余の被請求人の反論、答弁について
(1)請求人の、被請求人は正興産業による本件使用標章の使用事実を知っていたとの主張に対して、被請求人はこれを否認し、被請求人が認識していたのは、本件商標の使用事実であると主張している。
しかしながら、被請求人は通常使用権者の代表者であり、通常使用権者が、本件使用標章を使用した教習用車両を役務「自動車の教習」に使用していたことを認識していないとはいえず、その主張は採用することはできない。
(2)被請求人は、通常使用権者は本件商標の使用開始以来、本件商標の使用態様を変更することなく現在まで使用していると主張している。
この点、通常使用権者は、本件着色商標のみの使用については、その使用開始以来、使用態様を変更することなく使用を継続してきているといえるものである(甲4ないし甲6及び乙1)。そして、この場合における本件着色商標の使用は、商標法第70条により、本件商標と同一の商標を使用していると認められるものである。
しかしながら、商標第53条第1項の該当性が争われている本件使用標章における本件着色商標については、商標法第70条は適用されないから、上記被請求人の主張は採用することはできない。
(3)被請求人は、通常使用権者及び被請求人は本件商標の使用開始時に引用表示1の存在を全く知らなかったと主張している。
しかしながら、商標法第53条第1項の審判においては、商標権者や使用権者の故意は要件とされてはいないから、引用表示1の存在を知らなかったことが本条項の抗弁事由にはならないものである。

10 まとめ
以上によれば、通常使用権者は、本件商標の指定役務中の「自動車の運転の教授」について、本件商標と類似する本件使用標章1、本件使用標章2及び本件使用標章3を、少なくとも平成23年6月23日に使用した結果、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたというべきであり、本件商標の登録は、商標法第53条第1項の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(本件使用標章1)(色彩は原本参照)


別掲3(本件使用標章2)(色彩は原本参照)


別掲4(本件使用標章3)(色彩は原本参照)


別掲5(引用表示1:請求人キャラクター)(色彩は原本参照)


別掲6(引用表示2)(色彩は原本参照)




審理終結日 2012-11-06 
結審通知日 2012-11-12 
審決日 2012-11-26 
出願番号 商願2003-17292(T2003-17292) 
審決分類 T 1 31・ 5- Z (Y41)
最終処分 成立 
前審関与審査官 大橋 良成 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 渡邉 健司
井出 英一郎
登録日 2003-09-19 
登録番号 商標登録第4711200号(T4711200) 
商標の称呼 シイエム 
代理人 松元 洋 
代理人 光石 春平 
代理人 太田 雅苗子 
復代理人 廣中 健 
代理人 山田 哲三 
代理人 光石 俊郎 
代理人 田中 康幸 
復代理人 廣中 健 
代理人 太田 雅苗子 
代理人 宮川 美津子 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 克郎 
代理人 光石 忠敬 
代理人 田中 克郎 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 宮川 美津子 
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