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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X09
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X09
管理番号 1277810 
審判番号 不服2012-5098 
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-19 
確定日 2013-07-16 
事件の表示 商願2010-100464拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第9類及び第35類に属する願書に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成22年12月27日に立体商標として登録出願されたものである。そして、指定商品及び指定役務については、原審における同23年8月19日付け手続補正書によって補正された結果、第9類「ジョイントボックス」となったものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標の立体的形状は、配線等の結合部分のカバー、すなわち、ジョイントボックスについて、機能又は美観に資する事を目的として採用されたものと認められる。そして、ジョイントボックスの形状として、機能又は美観に資する事を目的とする形状と予測し得る範囲のものであるから、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用するものと認識するにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、同法第3条第2項の規定の適用を主張しているが、本願商標がその形状のみの使用により識別力を有するに至ったものとは認められない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号について
本願商標は、別掲のとおりの立体的形状よりなるところ、その円筒形状のボックス部分は、電気配線の結束部分を納めるカバー部分であって、かつ、該ボックス部分入り口に接合された13個の三角形状の弁は、その先端が内側に向いており、中心に円形状の穴を有している構造よりなるものである。
そして、電気配線の結束部分を納めるカバー部分が円筒形であることは、その商品の形状としては、ごくありふれたものであるといえる(甲4及び甲5)。また、該ボックス部分入り口に接合された13個の三角形状の弁は、電気配線の結束部分をワンタッチでかぶせるために考案された機能的な構造であるといえるものである。
そうとすれば、該立体形状は、本願指定商品に係る「ジョイントボックス」(屋内配線の接続部用ボックス)の機能的な構造としての形状の一形態を表したものとみるのが相当である。
そして、本願指定商品に係る「ジョイントボックス」(屋内配線の接続部用ボックス)の形状については、請求人が提出した意匠公報検索資料(甲3)に掲載された種々の形状から見ても、また、インターネット情報(甲5ないし甲7)によっても様々な形のものが考案されているところである。
してみれば、本願商標をその指定商品「ジョイントボックス」に使用しても、取引者、需要者は、単に上記商品の形状を表示するにすぎないものとして理解するに止まり、自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
なお、請求人は、「本願商標のジョイントボックスの形状は、従来のジョイントボックスから到底予測できない弁という極めて特異な形状を採用したものである。その形状はジョイントボックスの機能性を有する形状であると同時に、他社のジョイントボックスにはないデザイン性を有し、本願商標のジョイントボックスに接する需要者又は取引者に強烈な印象を与える。ジョイントボックスとしての機能を確保する形状は無数にあるにもかかわらず、本願商標の形状が機能や美感に資するといった理由で拒絶されるものではない。本願商標は、その形状のみをもって自他商品識別力を有するのは明らかであり、商標法第3条第1項第3号には該当せず、登録されるべきものである。」旨の主張をしている。
しかしながら、立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物の形状も含むものであるところ、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されたりするものであり、本来的(第一義的)には商品、役務の出所を表示し、自他商品・役務(以下「自他商品等」という。)を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品等を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まるものである。
そうとすれば、本願商標について、請求人のいうような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当であって、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される本願商標については、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものというのが相当である。
また、請求人は、「ジョイントボックスの形状は多種多様な形状があり、本願商標の特異で特徴的な形状は弁の部分にあることから、出願人が本願商標の形状を独占しても、ジョイントボックスとしての配線の結線部分を保護する円形や四角形といった形状やジョイントボックスを固定し、外れにくくするといった機能に基づく形状を独占することにはならない。したがって、出願人に本願商標のジョイントボックスについて独占を認めても何ら問題はない。商標法では商標を使用する者の業務上の信用を保護し、需要者の利益を保護することが目的であり、特許法及び意匠法とは法目的が異なる。・・・出願人が本願商標のジョイントボックスを長期間販売してきたことで本願商標に化体した業務上の信用は商標法で保護されるべきものである。」旨の主張をしている。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号に該当するとして、商標登録を受けることができない立体商標は、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標である。
すなわち、商品等が同種の商品等に見られない独特の形状を有する場合に、商品等の機能の観点からは発明ないし考案として、商品等の美感の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると、商品等の形状について、特許法、意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反するからである。
さらに、請求人は、「以下の登録例のように、立体商標の外観から想起しうる商品とは異なる商品を指定した登録例、立体商標の外観から想起しうる商品であってもデザインが施されている登録例、あるいは指定商品と密接な関係を有している登録例等、自他商品識別力が認められた商標は多数存在する。・・・したがって、本願商標は上記登録例と同様に登録されてしかるべきものである。」旨の主張をしている。
しかしながら、請求人が主張する登録例に係る商標は、本願商標とは、その構成等が相違するものであって、本願とは事案を異にするものであり、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項の規定に該当するか否かは、当該商標の査定時又は審決時において、個別具体的に判断されるべきものであるから、それらの登録例に前記認定が左右されるものではない。
よって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。

2 本願商標の商標法第3条第2項の該当性について
請求人は、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証、甲第8号証ないし甲第22号証を提出して、長年の間、本願商標のジョイントボックスを継続して販売してきた実績があるから、本願商標は、ジョイントボックスを取扱う取引者にとって周知著名であり、商標法第3条第2項により登録されるべきものである旨主張している。
そこで、本願商標が当該条項の要件を具備するに至っているか否かについて、以下、検討する。
(1)商標法第3条第2項について
出願に係る商標が、指定商品の品質等を表示するものとして商標法第3条第1項第3号から第5号までに該当する場合に、それが同条第2項に該当し、登録が認められるかどうかは、使用に係る商標及び商品(役務)、商標の使用開始時期及び使用期間、使用地域、当該商品(役務)の販売数量等並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品(役務)であることを認識することができるものと認められるかどうかによって決すべきものであり、その場合に、使用に係る商標及び商品(役務)は、原則として出願に係る商標及びその指定商品(指定役務)と同一であることを要するものというべきである。
(2)本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否かについて
請求人により提出された証拠を総合判断するに、商品の「ジョイントボックス」について、本願商標の立体的形状を使用していることは理解できるものの、その特徴的なボックス部分入り口に接合された13個の三角形状の弁が明確に表されている証拠は、甲第8号証の新聞及び甲第16号証の雑誌における写真のみである。
そして、本願商標の立体的形状を用いている商品(以下「使用商品」という。)には、「ナイスハット」の文字商標が使用されているものである(甲1及び甲2、甲8、甲16、甲18)。
さらに、甲第9号証の「ナイスハットHタイプ年度別生産・販売・市場占有率」と題する表によれば、販売数量及び販売価格は、平成8年度の455万個の約7,700万円に始まり、最も多いときは、同16年度ないし同18年度の920万個の約1億5,700万円、同22年度は、710万個で約1億2,800万円となっている。
加えて、市場占有率は、平成8年度は30.5%、最も多いときは、同19年度の87.0%、同22年度は76.5%となっている。
しかしながら、本願商標の使用期間は15年程であって、また、提出された証拠によれば、新聞、雑誌に使用商品が取り上げられた記事等があるものの、その使用商品についての宣伝、広告の証拠は、まったく提出されていないものである。さらに、本願商標に係る使用商品の販売数量を客観的に裏付ける証拠もなく、取引先や販売店舗数、販売地域等も明らかでない。
そして、市場占有率においては、着工新設住宅における木造住宅のみの戸数を対象としており、また、「平均的に一戸に使用されるジョイントボックスの数量は約20個と言われ、・・・市場占有率を算出しました。」の記載があるものの、「約20個」の具体的根拠が不明確であるから、上記の市場占有率は信用性に欠けるものといわざるを得ず、採用することはできない。
また、請求人は、アンケート結果として、「電気配線器具周知性に関する調査-ご報告書」(甲19)を提出しているが、その対象者は、電気設備工事業者及び電設資材卸業者のみであるところ、1,893社のうち回答したのは556社であり、その回収率も29.4%と少なく、そもそも信憑性に乏しいうえ、アンケート対象者においては、電気設備工事業者の場合は、電気設備工事に携わっている者であり、また、電材店の場合は、電気配線器具の内容を知っている者と限定しているものであることからすると、これらの対象者は、いずれもジョイントボックスを日常的に取り扱っている専門家であって、数ある種類のジョイントボックスを熟知していると考えられるにもかかわらず、本願商標のジョイントボックスの形状から、「カワグチ」もしくは「ナイスハット」いずれかの想起率は、「第3節 集計表」の[13]の69.1%という率は、決して高いものとは認めることができない。
加えて、アンケート対象者は、その道の専門家であるゆえ、該アンケートを回答するに際し、心理的に知らないと回答しづらい傾向になることも考えられ、社内で調査のうえ、回答したものも少なくないものと推認し得る。
そうとすれば、一定程度の認知度は認められるものの、本願商標のジョイントボックスが周知性を有するとまではいえないものである。
したがって、請求人が提出した証拠によっては、本願商標が、その指定商品に使用された結果、請求人の業務に係るものとして、需要者間に広く認識されるに至っていると認めることができない。
(3)まとめ
したがって、請求人が提出した証拠によっては、本願商標が、その指定商品に使用された結果、取引者、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとは認められないものである。

第4 結語
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、かつ、同条第2項の要件を具備しないものであるから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本願商標)
第1図


第2図


第3図


第4図


第5図





審理終結日 2012-08-08 
結審通知日 2012-08-14 
審決日 2012-08-27 
出願番号 商願2010-100464(T2010-100464) 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (X09)
T 1 8・ 13- Z (X09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白倉 理 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 井出 英一郎
松田 訓子
代理人 特許業務法人岡田国際特許事務所 

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