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審判番号(事件番号) データベース 権利
取消2012300461 審決 商標
取消2011300367 審決 商標
取消2012300825 審決 商標

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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y41
管理番号 1277803 
審判番号 取消2011-300680 
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-07-19 
確定日 2013-07-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第4802600号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4802600号商標の指定役務中,第41類「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供,通信を用いて行う麻雀ゲームの提供,麻雀の教授,麻雀競技会の企画・運営又は開催,麻雀荘の提供,麻雀大会の企画・運営又は開催,娯楽の提供,娯楽情報の提供,ゲームセンターの提供,会員制による教育・娯楽の提供」については,その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4802600号商標(以下「本件商標」という。)は,「JanNavi」の欧文字と「ジャンナビ」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり,平成15年10月31日に登録出願,第9類「業務用テレビゲーム機,家庭用テレビゲーム機,硬貨作動式機械用の始動装置,ゲーム機(テレビジョン受像機専用のもの),コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」,第28類「マージャン用具,硬貨投入式麻雀卓」及び第41類「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供,通信を用いて行う麻雀ゲームの提供,麻雀の教授,麻雀競技会の企画・運営又は開催,麻雀荘の提供,麻雀大会の企画・運営又は開催,麻雀用具の貸与,娯楽の提供,娯楽情報の提供,ゲームセンターの提供,会員制による教育・娯楽の提供」を指定商品及び指定役務として,同16年9月17日に設定登録されたものであり,現に有効に存続しているものである。

第2 本件審判請求後の手続の経緯
平成23年 7月19日 審判請求(甲1,2)
平成23年 8月 2日 予告登録
平成23年10月24日 答弁書(乙1?8)
平成23年12月14日 弁ばく書(甲3?17)
平成24年 1月23日 請求人上申書(甲18,19)
平成24年 7月 9日 被請求人口頭審理陳述要領書(乙9?46)
平成24年 7月13日 被請求人上申書(乙47)
平成24年 7月25日 請求人口頭審理陳述要領書(甲20?32)
平成24年 8月 1日 口頭審理
平成24年 8月27日 被請求人上申書(乙48?67)
平成24年 9月10日 請求人上申書

第3 請求人の主張(要旨)
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁,口頭審理陳述要領書,口頭審理及び上申書において,要旨次のように述べ,証拠方法として甲1?32を提出した。
1 請求の理由
本件商標の商標権者である被請求人は,継続して3年以上日本国内において,本件商標をその指定商品及び指定役務中の第41類「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供,通信を用いて行う麻雀ゲームの提供,麻雀の教授,麻雀競技会の企画・運営又は開催,麻雀荘の提供,麻雀大会の企画・運営又は開催,娯楽の提供,娯楽情報の提供,ゲームセンターの提供,会員制による教育・娯楽の提供」の何れに関しても正当な理由なく使用していない。また,本件商標について専用使用権は設定されておらず,通常使用権の登録もない。
よって,本件商標は,商標法第50条第1項の規定により,その指定商品及び指定役務中の上記役務については,登録を取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)はじめに
本件取消審判は,請求人による商標「雀ナビ」の使用に対して,被請求人が本件商標権に基づいてその使用中止を要請してきたことに対抗して,請求したものである。本件商標権の行使は,大野光明(以下「大野」という。)と請求人間の特殊な背景事情の下,請求人が商標「雀ナビ」を登録していないことを奇貨として,請求人の業務を妨害することを目的として行われているものである
(2)請求人と大野との関係について
被請求人の答弁書によれば,平成23年4月8日に「jannavi.co.jp」,「ジャンナビ.JP」というドメインを取得し,株式会社ナビ(以下「ナビ」という。)のホームページを立ち上げ,同サイト内で,本件商標を使用したサービスや商品の紹介・販売等をすることを開始したとしているが,上記ドメイン取得の翌日である同年4月9日から5月31日の間における被請求人の代表取締役は,請求人の前代表取締役でもあった人物で,最終的には請求人と紛争となり,請求人会社の取締役を解任された大野である。
そして,大野の請求人会社の代表取締役及び取締役退任に件う紛争を解決し,両者が相互にその業務を妨害する事態の発生を防止することを目的として,同年6月8日付けで請求人・大野個人の間で「合意書」を作成している(甲7)。
このように,大野は,そもそも請求人である株式会社ウインライト(以下「ウインライト」という。)に深く関係し,最終的には請求人との間で紛争関係が生じていた人物である。
(3)被請求人と大野との関係について
被請求人であるナビは,現在は,東京都台東区入谷一丁目に所在し,代表者は樋口雅光となっているが(甲8),それ以前は,東京都荒川区西日暮里二丁目に所在しており,平成23年4月9日(被請求人がドメインを取得した翌日)から5月31日の間は,大野が代表取締役であったという事実がある(甲9)。
しかも,かって同社の取締役であった大野一典は大野の実兄であり,ナビの筆頭株主でもあった(甲10)。加えて,大野から請求人に対する平成19年4月10日付け通知書(甲6)では,通知人である大野自身が同社の業務を深く了知していることを前提とした書面を送付している。更に,大野は,被請求人会社の組織変更前の有限会社ナビ時代にも,同社のプロデューサーなる肩書の名刺を使用しており(甲11),被請求人の役員としてではなく実質的に強い影響を与える立場として活動していたということを誇示していた。
このように,大野は,かっては請求人の代表取締役であって,請求人が「オンライン麻雀ゲーム」の商標として「雀ナビ」を使用することを主導した人物であって,その後に請求人との間で紛争が生じ,請求人会社の取締役を解任されたのである。そして,今回の本件商標権に基づく被請求人の権利行使は,大野が被請求人会社を買収して代表取締役となったのと同時期から準備されたものであって,請求人の業務を妨害することを目的として行われたものである。本件審判請求に対し提出された乙4?乙6も,請求人からの取消審判請求を見越して,不使用取消を免れるために作出されたものであって,その内容自体にも不自然な点が多々見受けられ,到底信用できるものではない。
(4)乙各号証について
(ア)乙3について
乙3は,「jannavi.co.jp」,「ジャンナビ.JP」に関する請求明細であり,その請求日は2011年4月8日であって,被請求人の代表取締役が樋口四郎だった時点のものである。甲16の通り,同人が取締役・代表取締役であった平成23年(2011年)4月9日以前には,被請求人は本件商標を「麻雀ゲーム・アプリケーション・プログラム製品」の商標として使用していなかったのであるから,これらのドメインは,被請求人が所有者として登録されてはいるものの(甲17),当時の代表取締役である樋口四郎の関与しないところで,何者かによって取得された可能性が大きいものである。
(イ)乙4?乙6について
これらは何れも被請求人が「jannavi.co.jp」のドメインの下で開設しているホームページの写真であるが,当該ドメインは前述のように平成23年4月8日に登録されたものである点からすれば,このホームページは大野が被請求人の代表取締役に就任したことを契機としてはじめて開設されたものである。しかも,当該ホームページがいつ開設されたのかは不明であり,これら乙は,本件審判請求の登録前に使用があったことの証拠にならない。
また,内容をみても,乙4の同社の「沿革」中において,平成16年9月に「ネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームジャンナビの提供」との記載がある。
しかし,甲16(樋口四郎の確認書)に示されたとおり,平成23年4月9日以前には,被請求人は「麻雀ゲーム・アプリケーション・プログラム製品」の商標として「ジャンナビ」を使用していないのである。更に加えて,請求人と大野の間で紛争があった当時に,大野から請求人へ送付された平成19年4月10日付け通知書(甲6)では,大野が被請求人であるナビの業務について,同社が「マージャン台(実機)の開発を業とする会社」であって,請求人の業務との競合関係はー切ないこと,言い換えれば「ネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供」などを行ってはいないことを大野自身が認めている。
このように,事実と明らかに相違する内容のホームページが真正に作成されたなどということは凡そ考え難く,乙4?乙6に示されている被請求人のホームページは,本件審判請求がなされた後に,使用の体裁を取り繕うために慌てて作成された可能性が高い。
(ウ)その他の乙各号証について
乙1及び乙2は,被請求人が開発したと称する「麻雀ナビゲーションシステム」に関する説明であるが,本件審判の取消対象たる役務とは直接関係がない。また,乙7及び乙8は,本件商標の使用の事実とは無関係である。
このように,被請求人は本件商標を使用していることを証明していないのであるから,本件商標登録は取り消されるべきである。
(5)取消請求に係る指定役務との関係について
上述の点を別にしても,被請求人が本件商標を使用していると主張しているのは,取消請求に係る役務とは関係のないものである。
(ア)被請求人は,自社のホームページを介して「ジャンナビ」と名づけた「オンライン麻雀ゲーム」をユーザーに提供等しているとし,それが「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供」ないし「通信を用いて行う麻雀ゲームの提供」に該当すると主張している。
しかし,乙4及び乙5における説明によれば,被請求人のゲームは,「web上の販促,お客様の導入効果ツールとして」利用されるものである。即ち,被請求人が提供しているのは,その実態は国際分類の第35類に属する「販売促進策の企画・実施」なのであって,その販売促進策が「オンライン上の麻雀ゲーム」に他ならない。乙4及び乙5には「販売価格:¥500,000」「レンタル(1ヶ月):¥5,000」と記載されているが,例えば,麻雀荘などが自らの顧客に利用させるなど,集客目的での購入・レンタルが予定されているのである。
商標法上の「役務」とは,独立した収支計算の下に提供されるものである。上記乙号証のホームページは,画面をクリックすれば当該ゲームプログラムにより麻雀ゲームを楽しむことができるが,すべて無料である。勿論,世間には無料でプレイすることのできるゲームプログラムが多数存在しているけれども,それら無料ゲームを提供するウェブサイトは,広告やゲーム中のアイテム購入などによって収益を確保している。
しかるに,被請求人のウェブサイトやゲームにはそのような仕組みは皆無であるから,「ゲームの提供」という役務としては収支計算が成り立たないことは明らかである。
PCや携帯電話でプレイすることのできるゲームプログラムで対価の必要なものも多数存在するが,1ヶ月当たりの利用料は300円前後が一般的であり,請求人の提供する麻雀ゲームも同様である。したがって,個人でプレイするために1ヶ月当たり5,000円を支払うなど考えられず,ましてや50万円で購入するなどということはあり得ない。このことからしても,被請求人の麻雀ゲームプログラムが業者向けの販売促進ツールとして取引されるものであることは明らかである。
そして,当該ゲームプログラムを購入したり,賃借した業者は,自らの顧客や見込み顧客向けに無償で提供するのであろうが,それはまさに,麻雀荘など当該顧客の本業に付随して提供されるものに過ぎず,商標法上の「役務」には該当しない。このことが乙に記載された「web上の販促,お客様の導入効果ツールとして御利用下さい。」の意味するところである。
したがって,被請求人が「ジャンナビ」商標の下で行っているのは,国際分類第35類に属する「販売促進策の企画・実施」なのであって,取消対象たる役務についての使用ではない。
(イ)仮に万一,上記の使用が第41類に属する役務についての使用とみる余地があるとしても,その役務は「麻雀ゲームのプログラムの貸与」(類似群:4lM08)のみである。このことは,「レンタル(1ヶ月):¥5,000」と明示されていることから明らかである。
したがって,被請求人による本件商標の使用は,「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供」及び「通信を用いて行う麻雀ゲームの提供」の何れにも該当しないものである。
(ウ)被請求人は,ホームページにおいて「麻雀大会の企画・運営又は開催,娯楽の提供,娯楽情報の提供」を行っていると主張するが(乙6),単に「イベントのお知らせ」という見出しの下で「麻雀大会」や「麻雀教室の開催」に関する情報を掲載しているに過ぎず,本件商標を用いて「麻雀大会の企画・運営又は開催,娯楽の提供,娯楽情報の提供」を行っている訳ではない。
「麻雀大会」を「ジャンナビ杯」などと称してはいるが,「ジャンナビ杯」は本件商標とは外観・観念・称呼の何れにおいても異なり,社会通念上同一の商標とは言えないものである。
したがって,「麻雀大会の企画・運営又は開催,娯楽の提供,娯楽情報の提供,麻雀の教授」の何れの役務にも本件商標は使用されていない。
(6)むすび
以上のとおり,被請求人の提出に係る乙各号証は,いずれも取消請求に係る指定役務についての本件商標の使用を何ら証明するものではないから,本件商標は取消を免れない。
3 平成24年1月23日付け上申書
「請求人と大野の関係」,「被請求人と大野の関係」その他本件審判に至るまでの経緯に関する,請求人代表取締役藤本勝博による陳述書及び,大野一典と大野の関係を示す戸籍謄本を提出する。
4 口頭審理陳述要領書
(1)大野と被請求人の関係について
被請求人は,大野が被請求人の代表取締役に就任した平成23年4月9日までは両者の関係が薄かったかのように言うが,大野の陳述書(乙43)によれば,被請求人は,樋口四郎と大野が共同して麻雀台を開発することを目的に設立された(同,第3頁)というのであるから,形式的には部外者であったとしても,大野が当初から被請求人の業務に関して枢要な役割を担っていたことは明らかである。
また,大野は被請求人を再建しようと決意し,平成23年4月に樋口四郎から被請求人を引き継いだが,他の会社の事業が忙しくなったので同年5月末に他人に売却した,などと主張している。しかしながら,真に被請求人の再建を決意して引き継いだのであれば,僅か2ヶ月足らずで手放すことはなかったであろう。しかも,大野が代表取締役であった期間に,本件審判事件の要証事実に関係する資料が作成され,代表取締役を辞任した直後の平成23年6月に,商標権侵害の警告書が被請求人から請求人に送付されている。警告書を受領した請求人が不使用取消審判を提起するであろうことは容易に予想できるところであって,上述した代表取締役辞任と警告書送付のタイミングが偶然の一致であるなどとは到底考えられない。自らが代表取締役のままでは,請求人との間で締結した「合意書」(甲7)に違反すると考え,他人に交代させた上で警告書を発した,というのが真相である。
(2)請求人,被請求人,訴外ジョイスによる共同事業について
ア 被請求人は,麻雀機メーカーであるジョイスに対し,平成15年6月10日に「JovNavi」という「麻雀」をテーマにした共同開発を実施することを提案し(乙9),さらに同年7月1日には,「ジャンナビ」のゲーム開発の計画が提案された(乙10)などと主張している。
しかしながら,まず,乙10と乙11を見るに,両者の相違は,表題が乙10は「『JOYとNAVI今後の展開』御提案書」に対し,乙11が「『JanNaviの展開』ご提案書」となっていることと,乙11の2頁,「はじめに」の部分に,第2段落として「ナビゲーションシステムを多く広げるために麻雀→雀(ジャン) ナビゲーション→NAVI(ナビ) 『ジャンナビ』のゲーム開発を計画する。」が加わっていることだけであり,それ以外は完全に同一である。しかし,前者が麻雀台の開発計画で,後者が麻雀ゲームのそれであるなら,その内容は自ずと異なってこなければならない。乙11が,乙10をコピーして表題と上記段落を追加しただけのものである以上,これが2003年当時,真に作成され交付されたなどということは考えられない。余りにお粗末な「証拠」である。
イ 大野の陳述書(乙43)によれば,被請求人とジョイスは平成13年から麻雀台の共同開発を行っていたというのであるから,2003年(平成15年)になって被請求人がジョイスに共同開発を提案したというのは辻棲が合わない。更に,被請求人は,「平成15年5月ころ,牌は実物を用い,サイコロ・点棒の点数表示は麻雀台中央にある画面に表示させ,ゲーム的なリーチアクション要素を取り入れた麻雀台を完成し」たとのことであるが,そうであるとすれば,完成後である平成15年6月に共同開発を持ちかけたのは何故なのか,理解に苦しむ。
ウ 被請求人は,大野と樋口四郎の間で,ジョイスが販売する麻雀台,請求人が販売する麻雀ゲームコンテンツなどの商品の統一名を「ジャンナビ」「JanNavi」とすることに決定したと主張し,乙43にも同趣旨の記載がある。しかし,一方で,被請求人及び大野は,ジョイスが販売していた麻雀台が「パイリーダー」と称されていたことを認めており(口頭審理陳述要領書),明らかに矛盾している。
また,被請求人は,乙1に示された利用説明書が当該口頭審理において「パイリーダー」のものであることも認めた。これは,侵害訴訟において,請求人が「パイリーダー」のパンフレットを提出し,乙1がこれと同じパンフレッドであることを明らかにしたためと思われる。被請求人らによれば,麻雀台「パイリーダー」と「ジャンナビ」の違いは,点棒を使用するかしないかであるとのことであるが,甲20(乙l)には「点数の移動」なる項目があり,麻雀台上で点数が移動することが示されているから,「パイリーダー」は点棒を使用しないものと考えられる。
このように,平成15年から麻雀台に「ジャンナビ」を使用しているという被請求人の主張は矛盾に満ちており,到底信用することができない。
(3)樋口四郎作成の確認書(甲16)について
被請求人は,請求人及び訴外ジョイス(口頭審理陳述要領書では「訴外被請求人」とされているが,誤記と思われる)との共同開発における役割分担の中で,請求人を通じて麻雀ゲームとして「ジャンナビ JanNavi」商標を使用していたとし,そのため,樋口四郎作成の確認書は,不正確な事実を述べていると主張する(口頭審理陳述要領書)。
上記で述べたとおり,被請求人による「被請求人・請求人・訴外ジョイスによる共同開発」の主張こそが矛盾に満ちており,そもそも信用できるものではない。
(4)被請求人のホームページについて
本件に係る審理事項通知書においては,「合議体の暫定的な見解」の中で,被請求人会社のホームページ(乙4?乙6)が,本件審判の請求の登録前までに開設され,かつ,閲覧が可能な状態にあったものであることを確認することができない,と指摘されている。
これに対し,被請求人は,そのホームページが平成23年4月8日にドメインを取得し,予め制作していたWebデータを用いて,3日後の平成23年4月11日に開設されたと主張し(口頭審理陳述要領書7頁),大野も同趣旨の陳述をしてはいるが(乙39),そのことを客観的に示す証拠はなんら提出されていない。加えて「閲覧が可能な状態にあった」かについては何ら主張・立証されていない。
したがって,口頭審理陳述要領書の内容及び新たな証拠からも,被請求人会社のホームページ(乙4?乙6)が,本件審判の請求の登録前までに開設され,かつ,閲覧が可能な状態にあったものであることは依然として立証されていない。
(5)物品受領書が不自然であるとの請求人の主張に対する被請求人の反論に対して
被請求人は本件審判事件の答弁書で「物品受領書」を証拠として提出しておらず,これまで争点になっていなかった。被請求人は,別件の取消2011-300681号事件と混同しているものと思われるが,以下にはその点を措いて反論することとする。
被請求人は,物品受領書に関し,「納品書(控),請求書,納品書,物品受領書の4枚綴りの複写式のものを使用し(乙24),これを利用する際には,納品書と物品受領書の間に厚紙を入れ,物品受領書に宛名が複写されることをふせいだ上,物品受領書についてはあらためて『様』がついている欄に,顧客の名称を書き込んでいる」と主張する。
しかるに,そのような主張は虚偽である疑いが濃厚である。そのような使用方法は,納品書(控)に記載された全ての事項を残り3枚のフォームに複写することによって各フォームにいちいち同じことを記載する手間を省くという乙25の書式の本来想定されている使用方法に反しており,わざわざ「厚紙を入れ,物品受領書に宛名が複写されることをふせ」ぐ意味が全くない上に,乙27及び35の物品受領書の顧客の名称の記載はいずれもゴム印の押捺によるものであって,被請求人が主張するように被請求人自身が当該名称を「書き込ん」だはずがないからである。
(6)麻雀店すずめ(以下「すずめ」という。)に対する物品受領書(乙21)の宛名について
被請求人の主張する使用方法によれば,被請求人の名前が記載されるべきところに「すずめ」と記載されているのは,厚紙を入れて物品受領書に宛名が複写されることをふせがなかった「事務ミス」によるものであり,「様」のついている欄に株式会社正成の名前があるのは,すずめと株式会社正成をともに経営していた紺野仁吉(以下「紺野」という。)の要望による,としている。
しかしながら,そのような顧客の要望がある得ることは理解できるとしても,なぜ,物品受領書の「フリー麻雀店すずめ」の記載がそのまま放置されているのか,全く理解できない。そのような事務ミスがあったのであれば,物品受領書を作成し直せばよいのであって,なぜそうしなかったのか理解できない。
このように,物品受領書に関する被請求人の主張は支離滅裂であり,苦し紛れの言い訳としか考えられない。
(7)被請求人が口頭審理陳述要領書とともに提出している種々の契約書等について
ア 被請求人は,答弁書提出(平成23年10月)から9ヶ月,請求人の弁駁書提出(平成23年12月)からも7か月も経った今頃になって,本件商標の使用実績に関する自らの主張を立証しようとする種々の契約書を一挙にまとめて提出してきている(乙20,26,29,31,32及び34)。
ところが,これらの契約書は,いずれも本件取消審判請求事件の登録(予告登録)日である平成23年7月29日以前の日付で締結されたことになっており,その主張に係る締結日からすれば,いずれも平成23年10月24日の答弁書提出の際に提出することが当然に可能であったはずの書証ばかりである。
それを今頃になって提出しているということは,これらの書証が本件商標の使用実績を取り繕う目的で答弁書提出後に後付けで作成されたものであるということを非常に強く疑わせるため,いずれもその記載内容には信用性が認められない。
イ 被請求人は,取引先のホームページにおいて,麻雀ゲームソフト「ジャンナビ」を提供しているとして,取引先間(「すずめ」,「有限会社LSコミュニケーションズ」(以下「LSコミュニケーションズ」という。),「株式会社AIRCAST」(以下「AIRCAST」という。)との「コンテンツ利用契約書」(乙20,26,34)の写し,これらに対応する物品受領書(乙21,27,35),更に,麻雀ゲームソフト「ジャンナビ」が掲載されているこれら取引先のホームページの写し(乙22,28,36)を提出し,そのソフトの引渡し方法は「ジャンナビ」「JanNavi」と記載されたCD-Rに麻雀ゲームが記録されており,このCD-Rを顧客に対し交付することによる,と主張している(乙44,46及び47)。
しかし,これらの証拠は,仮に証拠価値が認められるとしても,単に「Web上の販促ないしは導入効果ツールとしてのゲームソフト」を,顧客である事業者に対して提供したことを示しているに過ぎない。審理事項通知書(イ)における,「独立した役務として収支計算が成り立つ状態で『ゲームの提供』という役務が行われていたとは認められない」,との指摘に対する反論にはなってはいないものである。
加えて,上記「コンテンツ利用契約書」の具体的な内容は,「麻雀ソフトの貸与」に関する契約書である。
この点につき被請求人は,「利用許諾期間が限定されていることから,このような表現が用いられたものである」などと主張している。しかしながら,「貸与」は期間の限定を伴うことが通常であって,本件では1か月当たり5000円の対価で6ヶ月間貸し出しており,借主はその期間内であれば契約条件に従って自由に利用できるのであるから,まさに文字通りの意味の「貸与」に他ならない。そのような「貸与」行為は,本件取消対象の指定役務のいずれにも該当しない。
ウ その他に提出された契約書は,いずれも被請求人と「LSコミュニケーションズ」間のものであるところ(乙29,31,32),これらもまた,本件取消審判の取消対象となっている指定役務についての本件商標の使用について立証するものではない。
まず,乙29は「ソフトウェア製品の販売に関する契約書」であり,被請求人はこの契約に基づいてLSコミュニケーションズが,旧車二輪専門店BANBAN(以下「BANBAN」という。)に対し,麻雀ゲームソフト「ジャンナビ」を販売したと主張している。しかし,「貸与」について取引書類(物品受領書)の写しが提出されているにも拘わらず,「LSコミュニケーションズ」とBANBAN間に麻雀ゲームソフト「ジャンナビ」の売買契約が実際に行われたことを示す証拠の提出はなく,その提供方法についても何ら述べるところがない。また,乙46(岩沢による陳述書)にも,先月(平成24年6月)になってBANBANのホームページに,麻雀ゲームが掲載されたことは述べられているが,いつ販売がされたかについては言及されていない。
乙31の契約は,LSコミュニケーションズが「本件販売物を販売」することを内容とするものであるところ(同契約第2条),この契約に基づいて販売したと主張しているのは「全自動式の麻雀台」であり(乙47の写真2の1及び2の2),本件審判の取消対象たる指定役務とは無関係である。
なお,乙31の「本件販売物」の内容を列挙した別紙「取り扱い販売物目録」中の3?12は本件商標の第41類の指定役務を引き写したものに過ぎず,意味不明の記載である。現実に契約締結及び取引実行が行われたのであれば,このような不可解な内容の契約書が締結されることはまずあり得ない。
乙32の契約に基づいては,NTTドコモの提供するdマーケットにおいて「ジャンナビ麻雀入門」なる携帯アプリが利用可能である旨の証拠が提出されているものの(乙33),被請求人が本件商標に係る侵害訴訟事件において提出した証拠説明書によれば,当該アプリが利用可能となった時期は,乙32の契約の締結日である平成23年7月23日から約10か月も経過した平成24年5月30日であると主張されている(甲21)。しかし,契約締結から10か月も経過してからようやく利用許諾の目的物であるソフトウェアの利用を開始したという事実主張はあまりにも不自然であるから,乙32の契約の現実の締結日が平成23年7月23日であることは極めて疑わしいと言わざるを得ない。
加えて,被請求人は侵害訴訟において,自らも「ジャンナビ幼稚園」なる携帯アプリをdマーケットにおいて平成24年3月から配信している旨主張しているところ(甲22),これと「ジャンナビ麻雀入門」の画面(乙34)を比較すると,両者はタイトル画面を除いて全く同一である。このように,被請求人は,自ら単独で配信できるアプリをわざわざLSコミュニケーションズにもライセンスして同社に販売させたということになるところ,そのような販売方法を選択すべき経済的合理性は全くない。
被請求人は,LSコミュニケーションズと被請求人とのライセンス契約に基づいて同社を通じて「ジャンナビ麻雀入門」なるアプリを配信していたこととし,当該ライセンス契約を請求登録日より前の日付で締結されたごとくにバックデートで作成することによって,あたかも請求登録日より前に被請求人がライセンス関係を通じて本件商標を使用していたかような事実関係を言い繕い始めたとしか考えられない。
(8)自社ホームページ及び取引先ホームページにおける麻雀ゲームの提供が「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供」にあたるとの主張について
被請求人は自社のホームページ及び取引先ホームページを介し,「Web上の販促ないしは導入効果ツールとしてのゲームソフト」を顧客である事業者に対して提供しているに過ぎず,これを導入した事業者も販促ツールとして利用しているに止まるのであるから,独立した役務として収支計算が成り立つ状態で「ゲームの提供」という役務が行われているわけではない。このことは,インターネットのネットワークを利用しているか否かに拘わらない。
また,「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供」には,インターネットを介して通信しながらコンピュータと対戦する麻雀ゲームも含むとの主張は,被請求人による独自の解釈に過ぎない。
(9)麻雀大会の開催について
ア 乙38?42の書面は,開催されたと主張する日程に鑑みれば答弁書において当然に提出できたはずのものである。それにも関わらず答弁書提出から9か月も経過した時点でようやく提出されたということからすれば,これらの書面も審理事項通知書において被請求人のホームページ(乙4,乙6)には麻雀大会の参加費用に関する記載がないとの指摘を受けて,本件商標の使用実績を取り繕う目的で,後付けで作成されたものに過ぎないことが強く推認される。
また,乙38では,石指なる人物が平成23年4月中旬にナビのホームページで,麻雀大会の告知があったために被請求人に問い合わせをして応募したとしている。しかし,請求人は平成23年6月に被請求人から商標権侵害の通知書を受けた後,直ちに,被請求人による本件商標の使用について調査したものの,被請求人のホームページを発見することはできなかった。そのような状況の中で,石指なる人物がどのようにして被請求人のホームページに辿りついたのか,大いに疑問であり,乙38を信用することは到底できない。
そして,乙38が信用できないことからして,乙40及び41もまた信用できない証拠である。LSコミュニケーションズは絵画教室や自動車販売などを手掛ける企業であって,凡そ麻雀を生業とする会社ではない。そのような企業がホームページに麻雀大会の告知を掲載したとしても,愛好家の目に留まるなどということは考えられないのであって,これら乙各号証には作為が強く疑われる。
イ 被請求人は「ジャンナビ杯」の表示が,本件商標と社会通念上同一の商標だと主張しているが,これまでの登録例(甲23?甲32)からすれば,「●●杯」という商標についても,単なる「●●」とは類似しないと見るべきであって,「ジャンナビ」と「ジャンナビ杯」についても非類似と見るべきであり,「ジャンナビ杯」の表示が本件商標と社会通念上同一の商標であるはずはないものである。
よって,この点に関する被請求人の主張は失当と言うほかない。
(10)「娯楽の提供」「麻雀情報の提供」について
被請求人が本件商標を麻雀ゲームの提供や麻雀大会の開催に関して使用していないことは前述の通りであるから,「娯楽の提供」について使用していると見る余地もない。また,麻雀に関する事業を行っているから「麻雀情報の提供」を行っているなどというのは,論外である。
5 平成24年9月10日付け上申書
(1)取引先ホームページにおける麻雀ゲームについて
被請求人は,取引先のホームページ上にある「ジャンナビ」の表示をクリックすると,外部に設置されたサーバと通信しながら麻雀ゲームを楽しめるから,「通信を用いて行う麻雀ゲーム」に該当し,被請求人は取引先に対し「通信を用いて行う麻雀ゲーム」を役務として提供した,と主張する。しかしながら,仮に被請求人の証拠が偽造でなかったとしても,被請求人や取引先が行っている行為は「独立した役務として収支計算が成り立つ状態での『ゲームの提供』という役務」ではなく,第35類に属する「販売促進策の企画・実施」であったり,麻雀荘の提供や自動二輪車の小売などの主たる役務に付随するものに過ぎない。
(2)物品受領書の番号について
被請求人によれば,物品受領書の番号は,「N」は「ナビ」を表し,数字の1番目と2番目は西暦の下2桁,3番目と4番目は月,最後の数字は当該月に物品受領書が発行された取引番号,とのことである。
しかしながら,請求人が口頭審理期日に指摘したとおり,乙21は平成23年(2011年)4月30日付で番号が「N11043」であり,乙27は同年5月1日付で「N11051」,乙35は同年4月20日付で番号が「N11042」となっており,日付と番号が奇妙に符合している。偶然の一致というには余りに不自然であって,本件審判で証拠提出するために捏造した際,番号のことまで深く考えず,日付に対応した数字を記入した可能性が極めて高い。
(3)LSコミュニケーションズとの取引について
ア 乙29は被請求人が同社に対し,「麻雀ゲームソフト ジャンナビ」を複製し,当該複製品をインターネット上のサイト,ホームページに組み込み販売する権利を許諾する(第1条)というものであって,被請求人が同社にゲームソフトを販売(卸売)し,同社が転売するというものではない。しかるに,第7条第2項では「本契約有効期間中に購入した本ソフトウェア製品について,乙は,本契約の有効期間満了後といえども,頒布することを妨げられない」と規定されており,齟齬がある。
また,両者の間のメール交信とされる乙63は,乙29の契約締結に至る経緯を示すものとされているが,LSコミュニケーションズからの申し入れは「麻雀ソフトの販売代理」であった(乙63の4頁末尾)とされているところ,そのような取引であれば,むしろ乙31のような販売代理の契約を締結すべきであったものと考えられる。
そして,「本件販売物」には,目録に示されたように「インターネットのネットワークを利用する麻雀ゲーム」「通信を用いて行う麻雀ゲーム」が含まれているからである。
しかも,乙31の第2条第3項は「乙は,本件販売物については,複製,改変及びリバース・エンジニアリングをしないものとする」としており,乙によるゲームソフトの複製を禁止している。更に,乙31はその前の契約である乙29との関係について何ら定めるところがないのであるから,これら二つの契約は矛盾する内容となっている。
このような相互に矛盾する規定が至るところに存するこれらの契約が真に取引のために締結されたなどということは,凡そ考えられないから,被請求人の主張を信用することは到底できない。
イ LSコミュニケーションズからの「販売報告書」(乙48?乙50)なる書面は,内訳欄の項目名が「品名」,「件数」,「件数」,「支払額」となっており,「件数」の項目が二つ存在している。しかし,各項目に記載された数字から見て,二つめの「件数」は「単価」の誤りであると考えられるところ,契約当事者間において枢要な位置を占める販売報告書において,このような明白かつ重要な誤記が看過されたまま数ヶ月に亘り使用され続けることは,常識では考えられないところである。
加えて,乙48の販売報告書の「備考」欄には,「平成23年6月3日付け契約『ソフトウェア製品の販売に関する契約』に従い麻雀ゲームソフト『ジャンナビ』Web上の提供」と記載されている。上述のとおり,同契約(乙29)はLSコミュニケーションズが「[麻雀ゲームソフト ジャンナビ]を複製し,[当該複製品]をインターネット上のサイト,ホームページに組み込み販売する」ことができるというものであるが(同契約第1条),LSコミュニケーションズが自社のサイトにゲームソフトを組み込むことは,乙26の契約で定められていることであって,かつ「販売」にも該当しないから,乙29の契約でいう「インターネット上のサイト,ホームページ」とは第三者のサイトやホームページと解される。即ち,乙29の契約は,LSコミュニケーションズが麻雀ゲームソフトを複製し,当該複製品を第三者のサイトやホームページに組み込んだ態様で販売することを定めたものである。しかるに,乙48の販売報告書では「Web上の提供」と記載されており,LSコミュニケーションズが自社のサイトで提供したこととされているから(仮に,自社サイトで提供したのではなく,乙29に基づき第三者に販売したというのであれば,乙48における販売報告の対象を「Web上の提供」とは記載しない),乙29の契約内容と合致していない。
以上のことと,「販売報告書」に報告者の捺印も押されていないことからすれば,これらの報告書は最近になって被請求人によって捏造されたものと見るのが自然である。
ウ 被請求人は平成23年4月と5月は手書きの伝票が使用されていたが,6月以降はパソコンで作成された領収書が使用されていると主張し,乙51?53を提出している。口頭審理期日において,手書きの物品受領書の書式が現在は販売中止になっているものであることを指摘されたことから,領収証についてもそのような指摘を受ける可能性があることを恐れて,上述のような主張に至ったものと推測される。しかるに,別件(取消2011-300681)で提出された乙7の物品受領書は,平成23年6月20日の日付であるにも拘わらず,手書き伝票である。領収証をパソコンで作成することにしたのであれば,領収証だけでなく請求書や納品書,物品受領書もパソコンで作成することが通常であるのに,これらについては,上述のように6月以降も以前に廃版となった手書きのものを使用していたというのであるから,取り扱いが凡そ首尾一貫しない。
したがって,ここにも被請求人の主張の矛盾がある。
(4)追加の証拠について
ア 乙54は,かつて請求人と紛争関係にあり,かつ,本件紛争が顕在化する直前まで被請求人の代表取締役であった大野の陳述書であり,その陳述内容を裏付ける客観的な証拠は何ら提出されていないのであるから,証拠としての価値はないに等しい。
イ 乙55?乙61は,被請求人が作成した書面の写真であって,このような書面は如何様にでも作成できるものである。加えて,乙55?乙57の領収証に対応するとされる取引の物品受領書(乙21,乙27,乙35)は,「品名」として「(麻雀)ジャンナビソフト貸与]と記載されているところ,今回提出された領収証(控)の但し書き欄には「麻雀ジャンナビソフトの提供及び記憶媒体の貸与として」と記載されており,一致していないが,このような不一致は通常の取引ではあり得ない。更に,後者の記載は前者よりも本件取消請求に係る指定役務に近くなっているばかりか,「記憶媒体の貸与」などという記載は,商標の指定役務としてはともかく,凡そ通常の取引において用いられる言葉ではない。
これらのことからすれば,乙55?乙61は口頭審理期日の後になって,使用があったかのように見せかけるために被請求人が作成したものと考えるほかなく,全く信用できない。
ウ 乙62?乙67は被請求人と取引先との電子メール写しとされているが,このような書面もまた,被請求人において如何様にでも作成できるものに過ぎず,証拠としての価値を見出すことはできない。
実際,これらのメールが捏造によるものであることを明らかに示す記載が見られる。すなわち,乙67の中段あたりのメールヘッダに「Sent:Fliday,July22,20112:37PM」と記載されており,金曜日(Friday)が「Fliday」と間違って綴られている。本来,メールヘッダはコンピュータによって自動的に付される記載であるから,スペルミスなど起こり得ないはずである。
同様のスベルミスは,別件(取消2011-300681)において提出された乙60の下方における「Manday」という部分にも見られる。
他にも,電子メールの写しが担造であることを示す部分は数多くある。まず,乙64の下方の「Sent:Friday……」という記載の「:」の後にはスペースがないところ,他の箇所における「:」の後にはスペースがあり,表記方法が一貫していない。また,同じく乙64の中段以降の時刻表示は,「14:12PM」,「13:43PM」及び「13:23PM」と記載されており,24時間表示と午前・午後表示を混在させて用いるという,本来あり得ない表記方法になっている。さらに,乙66の中段以降においては6月が「June」と先頭文字が小文字で表記されている(英語で月を表す単語の先頭文字は大文字を用いるものであり,実際に乙として提出された他のメールにおいて,月を示す先頭文字は大文字で表されている)。
これらはいずれも,コンピュータによって自動的に生成されるメールヘッダの記載としては,決してあり得ないものばかりである。
このように,電子メールの写しは被請求人において如何様にでも作成できるものであるところ,実際に捏造がなされたことを露呈する記載がこのように存在するのであるから,被請求人が提出した電子メールの写しと称する書面の全てがおよそ信用することができないものである。
(5)結び
以上のとおり,被請求人が提出した新たな証拠と主張によっても,本件商標が取消請求に係る指定役務に使用されていたことは何ら立証されていないから,取消は免れない。

第4 被請求人の主張(要旨)
被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めるとし,答弁書,口頭審理陳述要領書,口頭審理及び上申書において,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙1?乙67(枝番を含む。)を提出した。
1 理由
(1)被請求人は,「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供」ないし「通信を用いて行う麻雀ゲームの提供」として「ジャンナビ」という名称を付した麻雀ゲームをインターネット上で提供,販売又はレンタルしている。
(2)被請求人の会社設立
被請求人は,平成13年,麻雀台においてコンピュータを利用して役牌,点数計算をオートメーションで行うプログラムの開発等を目的として会社を設立した。
被請求人は,平成15年,麻雀ナビゲーションシステム(乙1,乙2)や麻雀ゲームのプログラム等を開発し,平成15年10月31日,「ジャンナビ」を商標出願した。この「ジャンナビ」という名称は,麻雀の「雀」とナビゲーションの「ナビ」を組み合わせたものという意味で,麻雀ゲーム中にプレーヤーがどの牌を切ったら良いか迷った時など,車のカーナビのように案内する機能をもつシステムとして考案し名付けたものである。また,被請求人は,麻雀用具はもとより,ゲーム機器,携帯ゲーム,インターネットなどでもこのシステムを利用することを企画した。このようにして,平成16年9月17日,被請求人は本件商標を登録するに至った。
(3)オンライン麻雀ゲームの提供,販売等
被請求人は,平成23年初旬から,本件商標を利用した事業を開始する準備を始め,平成23年4月8日,ネット上に「jannavi.co.jp」「ジャンナビ.JP」というドメインを取得し(乙3),ナビのホームページを立ち上げ,同サイト内で「ジャンナビ(JanNavi)麻雀ゲームソフト」の配信サービスや商品を紹介して販売及びレンタルすることを開始した(乙4)。
そして,現在,被請求人は,上記のサイトを介して,オンライン麻雀ゲーム「ジャンナビ」をユーザーに提供,販売及びレンタルしている(乙4,乙5)。この麻雀ゲームは,平成15年に開発された上記の麻雀ゲーム自動点計算システムのコラボレーション商品として,誰でも手軽にインターネット上で対戦型の麻雀ゲームをすることを可能としたものであり,パソコン上でも携帯端末上でもゲームを利用することが可能である。
これが「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供」ないし「通信を用いて行う麻雀ゲームの提供」に該当することは明らかである。
また,被請求人は,同サイト上で,麻雀大会,麻雀教室の案内も提供しており,これは「麻雀大会の企画・運営又は開催,娯楽の提供,娯楽情報の提供」に該当するものである(乙6)。
(4)背景事情
上記のとおり,被請求人は,平成23年3月頃から本件商標を使用した事業を開始しようとしたものの,請求人が既に「雀ナビ」の名称でオンライン麻雀ゲームを提供,販売していたため,同年6月23日及び7月14日に内容証明郵便により「ジャンナビ」の使用を中止するよう通知した(乙7の1,2,乙8の1,2)。しかしながら,請求人からは何ら返事がなかった。その後,同年9月13日に本件審判請求書が発送され,請求人から取消審判が請求されていることを知った次第である。
(5)結語
以上のとおり,被請求人は本件商標を使った「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供」ないし「通信を用いて行う麻雀ゲームの提供」を使用しており,請求人の請求には理由がなく,取消審判は認められない。
2 口頭審理陳述要領書
(1)本件商標権の行使は,業務妨害目的ではない
請求人は,今回の本件商標権に基づく被請求人の権利行使が大野によるもので,被請求人の業務を妨害することを目的とするものだと主張するが,こうした主張は,以下の事実から誤りである。
(2)樋口四郎作成の確認書(甲16)について
樋口四郎作成の確認書(甲16)は,樋口四郎が被請求人の取締役であった期間「JanNavi ジャンナビ」を,麻雀ゲーム・アプリケーション・プログラム製品の商標として使用していないことを確認するものである。
もっとも被請求人は,請求人及び訴外被請求人との共同開発における役割分担の中で,「ジャンナビ JanNavi」の商標権を有しており,三社による共同事業が終了するまで,請求人を通じて,麻雀ゲームとして当該商標を使用していたものである(乙43)。
したがって,樋口四郎の陳述書は,不正確な事実を述べている。
(3)被請求人のホームページについて
大野の陳述書(乙43)に記載されたとおり,被請求人のホームページは,平成23年4月8日にドメインを取得し,あらかじめ制作していたWebデータを用いて,3日後の同年同月11日に開設されたものである。
(4)取引先を通じた提供
被請求人は,すでに提出した自らのホームページだけではなく,以下の取引先のホームページにおいて,麻雀ゲームソフト「ジャンナビ」を提供している。
ア すずめを通じた提供
被請求人とすずめは,平成23年4月30日,すずめのホームページにおいて,麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」を利用したサービスの提供を行うことに合意し(乙20),同合意に基づき,すずめに対し,同日,麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」を納品し(乙21),すずめの上記ホームページにおいて,平成23年4月から同年10月までの約6ヶ月間,「ジャンナビ」が提供された(乙22,乙46)。納品は,「ジャンナビ」「JanNavi」と記載されたCD-Rの交付によってなされた(乙46)。またすずめから,被請求人に対し,納品と同時に,3万円が支払われた(乙21)。
このすずめのホームページは,平成23年3月28日,大野が代表を務める株式会社ビートワン(以下「ビートワン」という。)が開発を委託され(乙23),作成されたものであり,ドメインネームが「gold1.biz」となっているのは,ビートワンがすずめのホームページを作成する際に,すずめの要請によりビートワンが権利を持つドメインネームを用いたからである。
なお,ここで,被請求人における物品受領書の使用方法について解説する。
(ア)一般的な使用方法
被請求人は,納品書(控),請求書,納品書,物品受領書の4枚綴りで,複写式となっているコクヨ製の物品受領書を使用している(乙24)。被請求人は,この物品受領書を利用する際,納品書と物品受領書の間に厚紙を入れ,物品受領書に宛名が複写されるのをふせいだ上,物品受領書についてはあらためて「様」がついている欄に,顧客の名称を書き込んでいる。
(イ)すずめに対する物品受領書の宛名について
上記の利用方法に従えば,すずめに対する物品受領書(乙21)は,本来被請求人の名前が記載される場所に「すずめ」の名前が記載される一方,本来「すずめ」が記載される位置に,株式会社正成の名前が記載されている。
はじめに本来被請求人の名前が記載されるべきところに「すずめ」と記載されているのは,納品書(控),請求書,納品書を作成する際に厚紙を入れ忘れた上,これを訂正せずに,物品受領書を保管したことにあると思われる(乙43)。また,すずめと株式会社正成(乙25)はともに紺野仁吉が経営していたことから,紺野からの要望により,株式会社正成に納品した形の物品受領書を作成したものである(乙46)。
したがって,一見すると,物品受領書(乙21)は,請求人と無関係に見えるが,実際は,すずめと被請求人との間の取引を裏付けるものである。
(ウ)物品受領書の「貸与」との表現について
物品受領書には「ジャンナビソフト貸与」と記載されているが,コンテンツの利用契約書(乙20)においてソフトの利用許諾期間が限定されていることから,このような表現が用いられたものである。以下に述べるLSコミュニケーションズ及びAIRCASTに対する物品受領書も同様である。
イ LSコミュニケーションズを通じた提供
被請求人は,LSコミュニケーションズに対し,平成23年5月1日,同社のホームページにおいて,麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」を利用したサービスの提供を行うことに合意した(乙26)。この合意に基づき,被請求人は,LSコミュニケーションズに対し,同日,麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」を納品し(乙27),同ホームページにおいて平成23年5月から同年10月の約6ヶ月間ジャンナビが提供された(乙28,乙47)。納品は,「ジャンナビ」「JanNavi」と記載されたCD-Rの交付によってなされた(乙47)。またLSコミュニケーションズから,被請求人に対し,納品と同時に,3万円が支払われた(乙27)。
こうしたコンテンツの利用に加え,被請求人とLSコミュニケーションズは,平成23年6月3日,麻雀ゲームソフト「ジャンナビ」を,LSコミュニケーションズが販売することに合意した(乙29)。この合意に基づき,LSコミュニケーションズは,BANBANに対し,麻雀ゲームソフト「ジャンナビ」を販売し,BANBANのホームページにおいて提供されている(乙30)。
また両社は,平成23年6月6日,「ジャンナビ/JANNAVI」と記載された麻雀卓等に関する販売代理店契約に合意した(乙31)。
さらに両社は,平成23年7月23日,被請求人が,LSコミュニケーションズに対し,麻雀ソフト「ジャンナビ」を使用,複製,頒布する独占的権利を許諾することに合意した(乙32)。この合意に基づき,LSコミュニケーションズは,NTTドコモの提供するdマーケットにおいて「ジャンナビ麻雀入門」というゲームを提供している(乙33)。
ウ AIRCASTを通じた提供
被請求人とAIRCASTは,平成23年4月20日,AIRCASTのホームページにおいて,麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」を提供することに合意した(乙34)。この合意に基づき,AIRCASTに対し,同日,麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」を納品し(乙35),AIRCASTが運営するAccTVのホームページにおいてジャンナビが提供された(乙36)。納品は,「ジャンナビ」「JanNavi」と記載されたCD-Rの交付によってなされた。またAIRCASTから,被請求人に対し,納品と同時に,3万円が支払われた(乙35)。
エ 小括
以上より,たとえ樋口四郎の確認書(甲16)に信用性が認められるとしても,その後,麻雀ゲームソフト等の商標として「ジャンナビ」が使用されていたのは明らかである。
また,以上の取引から明らかなように,麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」は,独立した収支が成り立っている。
(5)自社ホームページ及び取引先ホームページにおける麻雀ゲーム「シャンナビ」の提供は,「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供」にあたる
ア 商品の特徴
取引先を通じて麻雀ゲーム「ジャンナビ」を提供する場合には,同ゲームのアイコンが各取引先のホームページに表示される。そして,同ゲームで遊びたい者は,あらかじめパソコンをインターネットに接続させた上,取引先のホームページ上に表示された麻雀ゲーム「ジャンナビ」をクリックし,外部に設置されたサーバに保存された麻雀ゲーム「ジャンナビ」と通信しながら,コンピュータを相手に麻雀ゲームをすることができる。
イ 小括
「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供」とは,インターネット上でプレーヤー同士が対戦する麻雀ゲームのみならず,インターネットを介して通信しながら,コンピュータと対戦する麻雀ゲームを含む概念である。なぜなら(1)インターネットのネットワークの利用にはインターネットを介した通信が含まれ,(2)また「対戦」とは「敵と味方とが相対して戦うこと」を意味する用語であるところ,プレーヤーの一方がコンピュータであっても「対戦」といえるからである。
したがって,被請求人が,自身のホームページで麻雀ゲーム「シャンナビ」を提供すること,及び取引先を通じて麻雀ゲーム「ジャンナビ」を提供することは,「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供」にあたる。
(6)麻雀大会の開催
ア 被請求人による麻雀大会の開催
被請求人は,麻雀大会「ジャンナビ杯」の開催をホームページで告知した(乙37)上,平成23年4月29日「ジャンナビ杯」を開催した。
開催場所は千代田区神田佐久間町で,参加者は4名で,会費は1人1000円であった(乙43)。この大会の優勝者は,石指武であった(乙38)。
イ LSコミュニケーションズによる麻雀大会の開催
LSコミュニケーションズは,平成23年6月6日に被請求人との間で合意された販売代理店契約(乙31)に基づき,同年7月2日,麻雀大会「ジャンナビ杯」を開催した(乙39)。この大会は,事前に麻雀荘やホームページにおいて告知がなされ(乙40),大会の参加者は12名で,参加費用は1人当たり2000円であった。この大会の優勝者の石坂陽は参加費用を支払った上,トロフィーをもらっている(乙41)。
また,LSコミュニケーションズは,大会会場の麻雀ファースト・Iに対し,会場利用料として,7500円を支払った(乙42)。
ウ 「ジャンナビ杯」との表示は,本件商標と社会通念上同一の商標である ある商標を有する企業がスポンサーとなって,スポーツなどの大会を開く場合「●●杯」と表示することは,よくみられることである。この「●●杯」という表示を見た者は,「●●」という商標を付された商品やそれを販売している企業をイメージするので,こうした「●●杯」という表示は利用される。
また,「杯」の付される前の商標と「杯」の付された後の商標が社会通念上異なると理解するなら,誰でも,他人の商標に「杯」をつけて,さまざまな大会を開催することができるようになってしまい,「商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図」(商標法1条)ることができなくなる。
したがって,ある商標に「杯」を付した場合には,社会通念上,「杯」が付される前の商標と同一の商標を利用していると考えられるから,「ジャンナビ杯」は本件商標と社会通念上同一の商標といえる。
(7)被請求人の本件商標を利用した事業は「娯楽の提供」「娯楽情報の提供」にあたる
ア 娯楽の提供
これまで主張してきた被請求人による本件商標を用いた一連の事業は,いずれも「娯楽の提供」にあたる。
したがって,「娯楽の提供」により,本件商標は利用されている。
イ 娯楽情報の提供
さらに,被請求人による一連の事業は,いずれも麻雀にかかわるものである。したがって,少なくとも,被請求人による一連の事業は,「娯楽情報の提供」あたる。
3 平成24年8月27日付け上申書
(1)取引先ホームページにおける麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」の提供は「通信を用いて行う麻雀ゲームの提供」にあたる
被請求人は,すずめ,LSコミュニケーションズ及びAIRCASTに対して,それぞれCD-Rを手交した。各ホームページ作成者は,手交されたCD-Rに記載されたコード情報をそれぞれのホームページに入力し,麻雀ゲームジャンナビと自身のホームページをリンクさせた(乙44)。そして,それぞれのホームページの利用者がホームページ上にあるジャンナビという表示をクリックすると,外部に設置されたサーバと通信しながら麻雀ゲームジャンナビを楽しむことができた(乙44)。
以上の事実からすると,ホームページ上にリンクされた麻雀ゲームジャンナビは,外部のサーバと通信をしながら遊ぶものなので,「通信を用いて行う麻雀ゲーム」にあたる。そして,各ホームページ作成者は自身のホームページと麻雀ゲームジャンナビをリンクさせることで麻雀ゲームジャンナビを利用することができるようになることから,サーバとゲームをリンクさせることは,被請求人が各ホームページ作成者に対し,「通信を用いて行う麻雀ゲーム」を役務として提供したと評価できる。
したがって,取引先ホームページにおける麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」の提供は「通信を用いて行う麻雀ゲームの提供」にあたると解される。
(2)物品受領書の番号の付け方について
Nは被請求人を意味する「ナビ」,数字の左から数えて1番目・2番目の数字は西暦の下2桁,数字の左から数えて3番目・4番目の数字は「月」,最後の数字は当該月に物品受領書が発行された取引番号である。
乙27を用いて説明すると,この取引は,Nと記載されていることから被請求人による取引だということがわかり,次に1105と記載されていることから,2011年5月の取引だとわかり,最後に「1」と記載されていることから,2011年5月の1番目の取引だということがわかる。
(3)LSコミュニケーションズとの間の取引に係る主張の追加
被請求人は,LSコミュニケーションズとの問で,平成23年6月3日,麻雀ゲームソフト「ジャンナビ」を,LSコミュニケーションズが販売することに合意し(乙29),同年同月6日には麻雀卓等の販売代理店契約に合意した(乙31)。上記契約に基づき,LSコミュニケーションズは,被請求人に対し,6月度ないし8月度の販売報告書(乙48乃至50)を提出した上,LSコミュニケーションズは,被請求人に対し,同年7月29日,6月度につき3万円(乙51),7月度につき2400円(乙52),同年9月30日,8月度につき2400円(乙53)を支払った。
(4)追加の証拠
ア AIRCASTによる麻雀ゲームジャンナビの利用状況を立証する証拠として,大野の陳述書(乙54)を提出する。
イ 被請求人とすずめ,LSコミュニケーションズ及びAIRCASTとの間でそれぞれ行われた麻雀ソフト「ジャンナビ」の提供に関する領収書(控)を提出する(乙55?57)。なお,領収書の番号の振り方について,乙55を用いて説明すると,「JN」が「ジャンナビ」,「4」が「月」,「07」が当該月の取引番号を示している。
したがって,フリーすずめとの取引に関する領収書は,4月中7番目に発行された領収書であることがわかる。
ウ 被請求人が,平成23年4月29日に開催した麻雀大会ジャンナビ杯の領収書(控)を提出する(乙58?61)。領収書の番号の振り方は,上述のとおりである。
エ これまで主張してきた取引に関するメール(乙62?67)を提出する。

第4 当審の判断
1 本件の争点
商標法第50条第1項による商標登録の取消審判の請求があったときは,同条第2項本文は,「その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り,商標権者は,その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」と規定しているところ,被請求人は,商標権者が本件審判の登録(平成23年8月2日)前3年以内(以下「要証期間」という。)に,被請求人及び取引先のホームページにおいて「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供」ないしは「通信を用いて行う麻雀ゲームの提供」(以下,これらを単に「麻雀ゲームの提供」という場合がある。)を行った旨,被請求人及び取引先のホームページ上において麻雀大会の告知をした上で「麻雀大会の企画・運営又は開催」を行った旨及び被請求人が「娯楽の提供」及び「娯楽情報の提供」を行った旨主張し,答弁書において乙1?乙8を,口頭審理陳述要領書において乙9?乙46を,上申書において乙47?乙67を提出した。
これに対し,請求人は,被請求人の提出に係る乙各号証及びその主張は,いずれも信憑性を欠くものであるから,本件商標が取消請求に係る役務に使用されていたことは何ら立証されていない旨主張し,審判請求書において甲1,甲2を,弁ばく書において甲3?甲17を,上申書において甲18,甲19を,口頭審理陳述要領書において甲20?甲32を提出した。
したがって,本件の争点は,要証期間に被請求人が「本件商標」を使用し,「麻雀ゲームの提供」,「麻雀大会の企画・運営又は開催」,「娯楽の提供」及び「娯楽情報の提供」の役務を,他人に対し提供したことを証明し得たか否か,すなわち,被請求人の提出した乙各号証及びその主張が信憑性のあるものであるか否かにある。
2 当事者双方の提出に係る証拠及び主張について
(1)請求人,被請求人等と大野との関係について
被請求人は,本件商標の使用を立証するものとして大野による陳述書(乙43,乙44,乙54)を提出しているところ,請求人は,大野と被請求人及び請求人との関係等を理由にその陳述書は信用できない旨主張しているので,以下,大野と請求人及び被請求人等との関係についてみる。
被請求人「ナビ」は,平成16年3月30日に有限会社ナビを組織変更して設立した会社であって,大野は,平成23年4月9日から同年5月31日まで代表取締役であったこと,また,大野は,被請求人の設立時にその事業を手伝う目的で作成したとする有限会社ナビの「プロデューサー」の肩書の名刺を所有していたこと,大野の実兄が被請求人の筆頭株主になっていることが認められる(甲8?甲11,甲19)。
また,請求人「ウインライト」は,平成15年7月23日に設立した会社であって,大野は,平成16年5月22日から19年1月25日までは代表取締役,同年3月22日まで取締役であったこと,そして,大野と請求人との間で「大野の請求人会社の代表取締役及び取締役退任に伴う紛争を解決し,両者が相互にその業務を妨害する事態の発生を防止することを目的」とした「合意書」が作成されていたことが認められる(甲5,甲7,甲14)。
以上の認定事実及び当事者双方の主張から,大野は被請求人と密接な関係を有する者であって,かつ,請求人との間において紛争関係にあった者であることが認められる。
さらに,平成23年3月28日当時及び現在において,大野が「ビートワン」の代表取締役であったこと(乙23,乙43),平成23年4月20日当時及び現在において,大野が「AIRCAST」の代表取締役であったこと(乙34,乙43)からすれば,大野は「ビートワン」及び「AIRCAST」とも密接な関係を有する者であるということが言い得る。
(2)被請求人及び取引先のホームページにおいて,「麻雀ゲームの提供」を行ったか否か
ア 被請求人のホームページにおける「麻雀ゲームの提供」について
被請求人は,自社のホームページを介してオンライン麻雀ゲーム「ジャンナビ」をユーザーに提供していると主張して,答弁書,口頭陳述要領書及び上申書において乙各号証を提出しているので,以下,これら証拠の真偽について検討する。
乙4は,被請求人であるナビのホームページである。
会社概要の欄の「事業内容」中の「ゲーム事業」には,「インターネットを利用したゲームの開発」,「麻雀ゲーム『ジャンナビ』のシステム販売及びレンタル」等の記載があり,「麻雀事業」には,「麻雀ナビゲーションシステムの開発」,「麻雀教室の企画,運営」,「麻雀大会の企画,運営」等の記載がある。
「沿革」の欄には,平成13年6月(有限会社ナビが設立)から平成23年6月(代表取締役として樋口雅光が就任)までの記載があり,その間の平成16年9月に「ネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームジャンナビの提供」の記載がある。
「ジャンナビ広場」の欄には,「麻雀ゲーム『ジャンナビ』がプレイできます。」とあり,パソコン版と携帯版の画像とともに操作方法が記載されており,また,「麻雀大会及び麻雀教室の案内」の欄には,「イベントのお知らせ」として,「2011年秋の麻雀大会/ジャンナビ杯」として「11月3日文化の日に開催いたします。・・・」とあり,「主催:ナビ 11月3日13時より」と記載されている。さらに,「麻雀教室の開催」として「麻雀は文化/文化の日に麻雀教室を行います。」とあり,「主催:ナビ 11月3日11時より」と記載されている。更に,「麻雀大会」として,「2011年春ジャンナビ杯(2011年4月29日)優勝 石指」と記載されている。
「ECショップ/販売・レンタル」の欄には,「麻雀ゲーム/ジャンナビ(PC版)」,「麻雀ゲーム/ジャンナビ(携帯版)」などの記載あり,これらには,「Web上の販促,お客様の導入効果ツールとして御利用下さい。」と記載されている。
乙5は,被請求人であるナビのホームページ中の「ECショップ」の欄のみを印刷したものであり,乙4の「ECショップ/販売・レンタル」の欄の掲載事項と同じものと認められる。
乙6は,被請求人であるナビのホームページ中の「麻雀大会及び麻雀教室の案内」欄のみを印刷したものであり,乙4の「麻雀大会及び麻雀教室の案内」の欄の掲載事項と同じものと認められる。
しかし,これら被請求人会社のホームページの記載情報が,いつの時点のものであるのか,その年月日を示す表示がないから,本件審判の請求の登録前までに開設され,かつ,閲覧が可能な状態にあったものであることを確認することができない。
これに対し,被請求人は,「被請求人のホームページは,平成23年4月8日にドメインを取得し,あらかじめ制作していたWebデータを用いて3日後の4月11日に開設されていたものである。」と主張するところ,これを裏付けるものとして提出された証拠は,「お名前.com」なるドメイン名取得に関する料金の請求を表示したウェブページ(乙3)と被請求人の主張と同趣旨の内容を記載した大野による陳述書(乙43)のみである。
そして,「お名前.com」のウェブページから分かることは,何者かが「jannavi.co.jp」及び「ジャンナビjp」なるドメイン名の申請をし,2011年4月8日にその料金の請求がなされていることを推認し得るにとどまるものであり,これによって,当該ホームページが平成23年4月11日に開設されたとの事実を立証し得るものではない。
また,大野による陳述もこれを裏付ける具体的な証拠の提出はなく,加えて,前記(1)の認定のとおり,同人が被請求人と密接な関係にある人物であることからすれば,その陳述のみをもって当該ホームページが平成23年4月11日に開設されたことを認めることはできない。
加えて,乙4中の「沿革」には,平成16年9月に「ネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームジャンナビの提供」等と記載されているが,請求人の提出に係る甲16(樋口四郎の確認書)によれば,樋口四郎が有限会社ナビ及び組織変更後のナビの取締役及び代表取締役であった平成13年6月5日から平成23年4月9日までの間に「同社は,『JanNavi ジャンナビ』を『麻雀ゲーム・アプリケーション・プログラム製品』の商標として使用していなかった」旨記載されていること,また,平成19年4月10日付けの大野が請求人に宛てた通知書(甲6)では,大野が被請求人であるナビの業務について,同社が「マージャン台(実機)の開発を業とする会社」であって,請求人の業務との競合関係は全くないこと,すなわち,沿革中に記載の「ネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供」などを行ってはいないことを大野自身が認めている。
してみると,被請求人会社のホームページ(乙4?乙6)は,その記載事項が事実に基づいて真正に作成されたものであるか疑義がある。
これに対し,被請求人は,樋口四郎の陳述書は,不正確な事実を述べている旨の主張をするところ,これを裏づけるものとして提出した証拠は,「請求人及び訴外ジョイスとの共同開発における役割分担の中で,「ジャンナビ JanNavi」の商標権を有しており,三社による共同事業が終了するまで,請求人を通じて,麻雀ゲームとして当該商標を使用していたものである」旨の大野の陳述(乙43)のみである。
そうとすると,その陳述のみによっては,被請求人会社のホームページが,真正に作成されたものとは認めることはできない。
以上のとおり,被請求人の提出した被請求人のホームページは,その記載からして疑義があり,また,その要証期間に,開設され,かつ,閲覧可能な状態にあったことを認めることはできず,その期間内に,本件商標を「麻雀ゲームの提供」について使用したことを立証するに足るものではない。
イ 取引先のホームページにおける「麻雀ゲームの提供」について
(ア)すずめを通じた麻雀ゲームの提供
被請求人は,「被請求人とすずめとの合意(乙20)に基づき,被請求人はすずめに対し,麻雀ゲームコンテンツ『ジャンナビ』(以下『ジャンナビソフト』という。)を平成23年4月30日納品し,すずめのホームページにおいて,平成23年4月から同年10月までの約6ヶ月間,『ジャンナビ』が提供された。納品は,『ジャンナビ』『JanNavi』と記載されたCD-Rの交付によってなされた。また,納品と同時に,すずめから,被請求人に対し,3万円が支払われた。」旨主張している。
そして,このすずめとの取引に関し,被請求人は,口頭審理陳述要領書において,乙20(コンテンツの利用契約書),乙21(物品受領書),乙22(すずめのホームページ),乙43及び乙46(陳述書)を,上申書において乙55(領収証(控))を提出しているので,以下,これら証拠の真偽について検討する。
乙20は,平成23年4月30日付けの大野を代表取締役とするナビとすずめとの間で締結された「コンテンツの利用契約書」であり,これには,両者が,平成23年4月30日から同年10月30日までの半年間,すずめのホームページにおいて,「ジャンナビソフト」を利用したサービスの提供を行うことに合意した旨記載されている。
乙21は,平成23年4月30日付けの物品受領書(No.N11043)であり,その左上に「フリー麻雀店 すずめ」,右上には,「株式会社正成 様」の記載があり,品名欄に「麻雀ジャンナビソフト貸与/平成23年5月?10月分」,数量欄に「6ヶ月」,単価欄に「5,000」,金額(税抜・税込)欄に「¥30000」,摘要欄に「Webゲーム」と記載されている。これは,その宛名,作成者欄の記載からすると,「すずめ」と「株式会社正成」との取引を示すものであって,ナビとすずめとの間の取引書類とは認められない。
この宛名の点に対し,被請求人は,「本来被請求人の名前が記載されるべきところに「すずめ」と記載されているのは,納品書(控),請求書,納品書を作成する際に厚紙を入れ忘れた上,これを訂正せずに,物品受領書を保管したため,また,すずめと株式会社正成はともに紺野が経営していたことから,紺野からの要望により,株式会社正成に納品した形の物品受領書を作成したものである」旨主張し,これを裏づけるものとして,被請求人の主張と同趣旨の平成24年7月8日付けの大野の署名・押印のある陳述書(乙43)と平成24年7月7日付けの紺野の署名・押印のある陳述書(乙46)を提出した。
しかしながら,物品受領書の宛名が,仮に,紺野からの要望により,すずめに代えて株式会社正成宛に作成されたものであるとしても,そもそも,ナビの名称が記載される場所に「すずめ」と記載した理由は一切述べられていない。
そして,請求人が指摘するとおり,厚紙を入れて使用する方法は,納品書(控)に記載された事項を残り3枚のフォームに複写するという本来想定されている使用方法に反し,不自然であって,また,本来「すずめ」と記載するところ,株式会社正成に納品した形の物品受領書を作成したとする弁解は,ナビと記載すべきところに「すずめ」の記載があることの弁解にはならない。
したがって,乙21をナビとすずめとの間の取引書類とは認められない。
乙55は,乙21の物品受領書に対応するものとして提出したものであって,ナビが「フリー麻雀店 すずめ」に宛てた平成23年4月30日付けの領収証(控)の写真であり,これには,「No.JN-407」「¥30,000」「麻雀ジャンナビソフトの提供及び記憶媒体の貸与として」との記載があることがみてとれる。
しかしながら,その写真は撮影日も撮影者も不明であって,これに写された領収証(控)が,真に平成23年4月30日に作成されたものか疑問を抱かざるを得ない。加えて,被請求人が同じ件に関する取引書類であると主張する乙21と乙55を対比すると,両者の間には「No.N11043」と「No.JN-407」の伝票番号の相違,「麻雀ジャンナビソフト貸与」と「麻雀ジャンナビソフトの提供及び記憶媒体の貸与として」の品名の相違など通常の取引書類ではあり得ないような記載の不一致があり,請求人の主張のとおり,乙55の記載内容に信憑性があるものとは認められない。
また,乙21が取引書類として認められないことからしても,乙55についても同様にその作成経緯ついて疑問を抱かざるを得ない。
乙22は,平成23年3月28日の大野が代表を務めるビートワンが開発を委託されて(乙23)作成したと主張する「すずめのホームページ」とするものであるところ,これは,いつの時点のものであるのか,その年月日を示す表示がないから,本件審判の請求の登録前までに開設され,かつ,閲覧が可能な状態にあったものであることを確認することができない。
そうとすると,被請求人がすずめに対し,「ジャンナビソフト」を平成23年4月30日に納品したことが認められず,かつ,すずめのホームページにおいて,本件商標を使用した麻雀ゲームが提供されたことが確認できない以上,すずめを通じた麻雀ゲームの提供が行われたものとは認められない。
(イ)AIRCASTを通じた麻雀ゲームの提供
被請求人は,「被請求人とAIRCASTとの合意(乙34)に基づき,被請求人は,AIRCASTに対し,『ジャンナビソフト』を納品し,AIRCASTのホームページにおいて,平成23年5月から同年10月の約6ヶ月間,『ジャンナビ』が提供された。」旨主張している。
そして,AIRCASTとの取引に関し,被請求人は,口頭審理陳述要領書において,乙34(コンテンツの利用契約書),乙35(物品受領書),乙36(AIRCASTのホームページ),乙43(陳述書)を,上申書において乙54(陳述書),乙57(領収証(控))を提出しているので,以下,これらの証拠の真偽について検討する。
乙34は,平成23年4月20日付けのナビとAIRCASTとの間で締結された「コンテンツの利用契約書」であり,これには,ナビとAIRCASTは,AIRCASTのホームページにおいて,「ジャンナビソフト」を提供することに合意する旨記載されている。
乙35は,平成23年4月20日付けの被請求人からAIRCAST宛の物品受領書(No.N11042)であり,品名欄に「麻雀ジャンナビソフト貸与/平成23年4月20日から6ヶ月」,数量欄に「6ヶ月」,金額(税抜・税込)欄に「¥30000」,摘要欄に「麻雀ゲームソフト」と記載さている。
乙57は,ナビが,AIRCASTに宛てた平成23年4月20日付けの領収証(控)の写真であって,乙35の物品受領書に対応するものであり,これには,「No.JN-401」「¥30,000」「麻雀ジャンナビソフトの提供及び記憶媒体の貸与として」との記載があることがみてとれる。
しかしながら,その写真は撮影日も撮影者も不明であって,これに写された領収証(控)が,真に平成23年4月20日に作成されたものか疑問を抱かざるを得ない。加えて,被請求人が同じ件に関する取引書類であると主張する乙35と乙57を対比すると,両者の間には「No.N11042」と「No.JN-401」の伝票番号の相違,「麻雀ジャンナビソフト貸与」と「麻雀ジャンナビソフトの提供及び記憶媒体の貸与として」の品名の相違など通常の取引書類ではあり得ないような記載の不一致があり,請求人の主張のとおり,乙57の記載内容に信憑性があるものとは認められない。
乙36は,AIRCASTのホームページであるところ,これは,いつの時点のものであるのか,その年月日を示す表示がないから,本件審判の請求の登録前までに開設され,かつ,閲覧が可能な状態にあったものであることを確認することができない。
乙43は,平成24年7月8日付けの,乙54は,平成24年8月24日付けのいずれも大野の署名・押印のある陳述書であり,これらには,AIRCASTのホームページを通じて麻雀ゲームの提供を行ったなどとの陳述があるが,これを裏付ける具体的な証拠の提出はなく,加えて,前記(1)の認定のとおり,大野が被請求人及びAIRCASTと密接な関係にある人物であることからすれば,その陳述のみをもって,AIRCASTのホームページを通じて麻雀ゲームの提供が行なわれたと認めることはできない。
そうとすると,被請求人がAIRCASTに対し,「ジャンナビソフト」を平成23年4月20日に納品したことが認められず,かつ,AIRCASTのホームページにおいて,本件商標を使用した麻雀ゲームが提供されたことが確認できない以上,AIRCASTを通じた麻雀ゲームの提供が行われたものとは認められない。
(ウ)LSコミュニケーションズを通じた麻雀ゲームの提供
a 乙26の合意に基づいた(LSコミュニケーションズのホームページにおける)麻雀ゲームの提供
被請求人は,被請求人とLSコミュニケーションズとの合意(乙26)に基づき,被請求人は,LSコミュニケーションズに対し,「ジャンナビソフト」を納品し,LSコミュニケーションズのホームページにおいて,平成23年5月から同年10月の約6ヶ月間,「ジャンナビ」が提供された旨主張し,乙26(コンテンツの利用契約書),乙27(物品受領書),乙28(LSコミュニケーションズのホームページ),乙56(領収証(控))の写真を提出しているので,以下,これらの証拠について検討する。
乙26は,平成23年5月1日付けの大野を代表取締役とするナビとLSコミュニケーションズとの間で締結された「コンテンツの利用契約書」であり,これには,平成23年5月1日から同年10月1日までの半年間,LSコミュニケーションズが運営するWEBサイトに対してリンクを設定する形態により,「ジャンナビソフト」を提供することなどが記載されている。
乙27は,平成23年5月1日付けのナビからLSコミュニケーションズ宛の物品受領書(No.N11051)であり,品名欄に「麻雀ジャンナビソフト貸与/平成23年5月?10月末」,数量欄に「6ヶ月」,金額(税抜・税込)欄に「¥30000」,摘要欄に「麻雀ゲームソフト」と記載さている。
乙56は,ナビが,LSコミュニケーションズに宛てた平成23年5月1日付けの領収証(控)の写真であって,乙27の物品受領書に対応するものであり,これには,「No.JN-501」「¥30,000」「麻雀ジャンナビソフトの提供及び記憶媒体の貸与として」との記載があることがみてとれる。
しかしながら,その写真は撮影日も撮影者も不明であって,これに写された領収証(控)が,真に平成23年5月1日に作成されたものか疑問を抱かざるを得ない。加えて,被請求人が同じ件に関する取引書類であると主張する乙27と乙56を対比すると,両者の間には「No.N11051」と「No.JN-501」の伝票番号の相違,「麻雀ジャンナビソフト貸与」と「麻雀ジャンナビソフトの提供及び記憶媒体の貸与として」の品名の相違など通常の取引書類ではあり得ないような記載の不一致があり,請求人の主張のとおり,乙56の記載内容に信憑性があるものとは認められない。
乙28は,LSコミュニケーションズのホームページであるところ,これは,いつの時点のものであるのか,その年月日を示す表示がないから,本件審判の請求の登録前までに開設され,かつ,閲覧が可能な状態にあったものであることを確認することができない。
そうとすると,被請求人がLSコミュニケーションズに対し,「ジャンナビソフト」を平成23年5月1日に納品したことが認められず,かつ,LSコミュニケーションズのホームページにおいて,本件商標を使用した麻雀ゲームが提供されたことが確認できない以上,LSコミュニケーションズ通じた麻雀ゲームの提供が行われたものとは認められない。
b 乙29に基づいた(BANBANのホームページにおける)麻雀ゲームの提供
被請求人は,「乙29の合意に基づき,LSコミュニケーションズがBANBANに『ジャンナビ』を販売し,BANBANのホームページにおいて提供している」旨主張し,乙29(ソフトウェア製品の販売に関する契約書)及び乙30(BANBANのホームページ),乙44(陳述書),乙48(販売報告書),乙51(領収書(控)」を提出した。
そして,乙29は,平成23年6月3日付けのナビとLSコミュニケーションズとの間で締結された「ソフトウェア製品の販売に関する契約書」であり,また,乙48は,平成23年7月11日付けのLSコミュニケーションズからナビに宛てた「販売報告書」であり,これには,その備考欄に「平成23年6月3日付契約『ソフトウェア製品の販売に関する契約書』に従い麻雀ゲームソフト『ジャンナビ』Web上の提供」の記載がある。しかしながら,乙48の記載事項を見ると,請求人の指摘のとおり,内訳欄の項目名が「品名」,「件数」,「件数」,「支払額」となっており,「件数」の項目が二つ存在しているものであって,各項目に記載された数字から見て,二つめの「件数」は「単価」の誤りであると考えられるところであって,また,報告者の押印もないことから,この販売報告書が真正に作成されたものとにわかに認められない。また,これに対応するとして提出された乙51の領収書(控)も押印もなく,これが真に平成23年7月29日に作成されたものであるか疑問を抱かざるを得ない。
加えて,LSコミュニケーションズがBANBANに「ジャンナビソフト」を販売した事実を示す書面の提出はない。
また,乙30のBANBANのホームページには,いつの時点のものであるのか,その年月日を示す表示がないから,これが本件審判の請求の登録前までに開設され,かつ,閲覧が可能な状態にあったものであることを確認することができない。
そうとすると,被請求人がLSコミュニケーションズを通じBANBANに対し「ジャンナビソフト」を販売したことが認められず,かつ,BANBANのホームページにおいて,本件商標を使用した麻雀ゲームが提供されたことが確認できない以上,BANBANのホームページにおいて麻雀ゲームの提供が行われたものとは認められない。
c 乙31に基づいた(NTTドコモの提供するdマーケットにおける)麻雀ゲームの提供
被請求人は,乙31の販売代理店契約書に基づき,LSコミュニケーションズがNTTドコモの提供するdマーケットにおいて「ジャンナビ麻雀入門」というゲームの提供をしている旨主張し,乙31(販売代理店契約書),乙33(NTTドコモのホームページ)及び乙45(陳述書)を提出した。
しかしながら,乙31の販売代理店契約書に基づき,「ジャンナビソフト」が,ナビからLSコミュニケーションズに,LSコミュニケーションズからNTTに販売された事実を証明する書面の提出はない。
加えて,乙33のNTTドコモのホームページには,いつの時点のものであるのか,その年月日を示す表示がないから,これが本件審判の請求の登録前までに開設され,かつ,閲覧が可能な状態にあったものであることを確認することができない。
そうとすると,被請求人がLSコミュニケーションズを通じNTTドコモに対し「ジャンナビソフト」を納品したことが認められず,かつ,NTTドコモのホームページにおいて,本件商標を使用した麻雀ゲームが提供されたことが確認できない以上,NTTドコモのホームページにおいて麻雀ゲームの提供が行われたものとは認められない。
(エ)小括
前記のとおり,被請求人の主張する被請求人及び取引先を通じたホームページにおける「麻雀ゲームの提供」は,いずれもその役務の提供が行われたものと認めることはできない。
(3)被請求人及びLSコミュニケーションズにより「麻雀大会の企画・運営又は開催」を行ったか否か
ア 被請求人による「麻雀大会の企画・運営又は開催」
被請求人は,麻雀大会「ジャンナビ杯」の開催をホームページで告知した上,平成23年4月29日「ジャンナビ杯」を開催したとして,答弁書において乙4及び乙6(ナビのホームページ),口頭審理陳述要領書において,乙37(ナビのホームページ),乙38及び乙43(陳述書),上申書において,乙58?乙61(領収証(控))を提出しているので,以下,これらの証拠の真偽について検討する。
乙4及び乙6は,ナビのホームページであるところ,当該ホームページは,前記認定のとおり,これらの記事情報がいつの時点のものであるのか,その年月日を示す表示がなく,ナビのホームページが,真正に作成されたものであるか疑義があるから,その要証期間に開設され,かつ,閲覧可能な状態であったものであることを認めることはできない。
乙37も,ナビのホームページであり,これには,イベントのお知らせとして,2011(平成23)年4月29日に開催予定の「麻雀大会ジャンナビ杯」を告知する内容のものであって,参加費として1人1000円である等記載されているが,これらの記事情報がいつの時点のものであるのか,その年月日を示す表示がなく,上記同様に,ナビのホームページが,真正に作成されたものであるか疑義があるから,その要証期間に開設され,かつ,閲覧可能な状態であったものであることを認めることはできない。
これらのナビのホームページで麻雀大会「ジャンナビ杯」の開催の告知等を裏づける証拠としては,平成24年7月6日付けの石指武の署名・押印のある陳述書(乙38)と,平成24年7月8日付けの大野の署名・押印のある陳述書(乙43)であるが,この大会の告知したナビのホームページ自体が信憑性に欠けるものであること上記したとおりであるから,ナビのホームページの存在を前提とするこれらの陳述内容もまた,疑義がある。
また,平成23年4月29日付けのナビから石指を含む4名への麻雀大会参加費に関する領収証(控)(乙58?乙61)に関しても,上記同様の理由により,疑義がある。
加えて,麻雀大会で使用したとする「ジャンナビ杯」の文字は,同書,同大,等間隔で外観上,まとまりよく一連一体に表され,また,これより生ずる称呼も一気一連に称呼し得るものであるから,構成全体として一体不可分のものとして認識されるものである。
そうしてみると,「ジャンナビ杯」から「ジャンナビ」の文字部分を分離抽出し,称呼,観念されるものでない以上,「ジャンナビ杯」は,「JanNavi」の欧文字と「ジャンナビ」の片仮名文字とを二段に横書きしてなる本件商標と,その外観,称呼,観念を異にするものであって,社会通念上同一の商標であるとはいえない。
そうとすると,前記いずれの乙各号証をもってしても,被請求人が平成23年4月29日に「麻雀大会の企画・運営又は開催」をしたものとは認められない。
イ LSコミュニケーションズによる「麻雀大会の企画・運営又は開催」
LSコミュニケーションズは,販売代理店契約(乙31)に基づき,平成23年7月2日,麻雀大会「ジャンナビ杯」を開催した(乙39)として,口頭審理陳述要領書において,乙31(販売代理店契約),乙39及び乙41(陳述書),乙40(ポスター),乙42(領収書),上申書において,乙49(販売報告書)を提出しているので,以下,これらの証拠の真偽について検討する。
乙49は,平成23年7月29日付けのLSコミュニケーションズからナビに宛てた「販売報告書」であり,これには,その備考欄に「平成23年6月6日付契約「販売代理店契約書」に従い7月2日麻雀大会ジャンナビ杯開催・・・」の記載がある。
しかしながら,乙49の記載事項を見ると,請求人の指摘のとおり,内訳欄の項目名が「品名」,「件数」,「件数」,「支払額」となっており,「件数」の項目が二つ存在しているものであって,各項目に記載された数字から見て,二つめの「件数」は「単価」の誤りであると考えられるところであって,また,報告者の押印もないことから,この販売報告書が真正に作成されたものとにわかに認められない。
してみれば,麻雀大会「ジャンナビ杯」を開催したとして提出するいずれの証拠についても,にわかに信用することができない。
加えて,上記アと同様に,麻雀大会で使用したとする「ジャンナビ杯」の文字は,本件商標と,その外観,称呼,観念を異にするものであって,社会通念上同一の商標であるとはいえない。
そうとすると,前記いずれの乙各号証をもってしても,LSコミュニケーションズが平成23年7月2日に「麻雀大会の企画・運営又は開催」をしたものとは認められない。
(4)被請求人が「娯楽の提供」及び「娯楽情報の提供」を行ったか否か
被請求人は,被請求人による一連の事業をしていることを前提に,「娯楽の提供」及び「娯楽情報の提供」あたると主張しているところ,前記認定したとおり,被請求人による一連の事業が行われたか否か疑義があるところから,被請求人の主張はその前提を欠くものである。
加えて,これらに関する証拠の提出はない。
そうとすると,被請求人は,「娯楽の提供」及び「娯楽情報の提供」を行ったものとは認められない。
(5)まとめ
前記第2の「本件審判請求後の手続の経緯」で記載したように,被請求人は,答弁書においては,乙1?乙8の証拠を提出したにとどまり,その後の,口頭陳述要領書及び上申書において,答弁書において提出可能であったはずの新たな取引書類等をまとめて乙9?乙67を提出した手続の経緯があること,大野が被請求人と密接な関係を有する者であって,かつ,請求人との間において紛争関係にあった者であること,さらに,大野が「ビートワン」及び「AIRCAST」とも密接な関係を有する者であるということも併せ考慮すれば,被請求人の提出した上記乙各号証には,請求人の主張のとおり,本件商標の使用実績を取り繕う目的で,後付けで作成されたものが含まれているものと疑わざるを得ない。
そして,被請求人の提出に係る全ての証拠を精査するも,取消請求に係る役務を提供したことを認めるに足りる証拠を示すものはない。
3 むすび
以上のとおり,当事者双方の主張及びその提出に係る各号証を総合的に判断しても,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが取消請求に係る指定役務のいずれかについて,本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,請求に係る第41類「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供,通信を用いて行う麻雀ゲームの提供,麻雀の教授,麻雀競技会の企画・運営又は開催,麻雀荘の提供,麻雀大会の企画・運営又は開催,娯楽の提供,娯楽情報の提供,ゲームセンターの提供,会員制による教育・娯楽の提供」について取り消すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-10-25 
結審通知日 2012-10-29 
審決日 2012-12-18 
出願番号 商願2003-96408(T2003-96408) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y41)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石田 清 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 鈴木 修
小川 きみえ
登録日 2004-09-17 
登録番号 商標登録第4802600号(T4802600) 
商標の称呼 ジャンナビ、ジャン、ジェイエイエヌ、ナビ 
復代理人 山崎 岳人 
代理人 中川 直政 
代理人 粟谷 しのぶ 
代理人 原 秋彦 
代理人 中村 眞一 
代理人 一色国際特許業務法人 

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