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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y09
管理番号 1277795 
審判番号 取消2011-300679 
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-07-19 
確定日 2013-07-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第4802600号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4802600号商標の指定商品中、第9類「業務用テレビゲーム機,家庭用テレビゲーム機,ゲーム機(テレビジョン受像機専用のもの),コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4802600号商標(以下「本件商標」という。)は,「JanNavi」の欧文字と「ジャンナビ」の片仮名とを二段に横書きしてなり,平成15年10月31日に登録出願,第9類「業務用テレビゲーム機,家庭用テレビゲーム機,硬貨作動式機械用の始動装置,ゲーム機(テレビジョン受像機専用のもの),コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」,第28類「マージャン用具,硬貨投入式麻雀卓」及び第41類「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供,通信を用いて行う麻雀ゲームの提供,麻雀の教授,麻雀競技会の企画・運営又は開催,麻雀荘の提供,麻雀大会の企画・運営又は開催,麻雀用具の貸与,娯楽の提供,娯楽情報の提供,ゲームセンターの提供,会員制による教育・娯楽の提供」を指定商品及び指定役務として,同16年9月17日に設定登録されたものであり,現に有効に存続しているものである。

第2 手続きの経緯
本件の審判請求からの主な手続の経緯は次のとおりである。
平成23年 7月19日 審判請求(甲1及び甲2)
平成23年 8月 2日 予告登録
平成23年10月24日 答弁書(乙1?乙9)
平成23年12月14日 弁駁書(甲3?甲26)
平成24年 1月23日 請求人上申書(甲27?甲28)
平成24年 7月 9日 被請求人口頭審理陳述要領書(乙10?乙42)
平成24年 7月13日 被請求人上申書(乙43)
平成24年 7月25日 請求人口頭審理陳述要領書(甲29?甲31)
平成24年 8月 1日 口頭審理
平成24年 8月27日 被請求人上申書(乙44?乙58)
平成24年 9月10日 請求人上申書

第3 請求人の主張(要旨)
請求人は,結論同旨の審決を求め,答弁に対する弁駁,口頭審理陳述要領書,口頭審理及び上申書において,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲1?甲31を提出した。
1 請求の理由
本件商標の商標権者である被請求人は,継続して3年以上日本国内において,本件商標を第9類の指定商品中の「業務用テレビゲーム機,家庭用テレビゲーム機,ゲーム機(テレビジョン受像機専用のもの),コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」の何れに関しても正当な理由なく使用していない。また,本件商標について専用使用権は設定されておらず,通常使用権の登録もない。
よって,本件商標は,商標法第50条第1項の規定により,その指定商品中の上記商品については,登録を取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)はじめに
本件取消審判は,請求人による商標「雀ナビ」の使用に対して,被請求人が本件商標権に基づいてその使用中止を要請してきたことに対抗して,請求したものである。本件商標権の行使は,大野光明(以下「大野」という。)と請求人間の特殊な背景事情の下,請求人が商標「雀ナビ」を登録していないことを奇貨として,請求人の業務を妨害することを目的として行われているものである
(2)請求人と大野との関係について
答弁書によれば,平成23年4月8日に「jannavi.co.jp」,「ジャンナビ.JP」というドメインを取得し,株式会社ナビ(以下「ナビ」という。)のホームページを立ち上げ,同サイト内で,本件商標を使用したサービスや商品の紹介・販売等をすることを開始したとしているが,上記ドメイン取得の翌日である同年4月9日から5月31日の間における被請求人の代表取締役は,請求人の前代表取締役でもあった人物で,最終的には請求人と紛争となり,請求人会社の取締役を解任された大野である。
そして,大野の請求人会社の代表取締役及び取締役退任に伴う紛争を解決し,両者が相互にその業務を妨害する事態の発生を防止することを目的として,同年6月8日付けで請求人・大野個人の間で「合意書」を作成している(甲7)。
このように,大野は,そもそも請求人であるウインライトに深く関係し,最終的には請求人との間で紛争関係が生じていた人物である。
(3)被請求人と大野との関係について
被請求人であるナビは,現在は,東京都台東区入谷一丁目に所在し,代表者は樋口雅光となっているが(甲8),それ以前は,東京都荒川区西日暮里二丁目に所在しており,平成23年4月9日(被請求人がドメインを取得した翌日)から5月31日の間は,大野が代表取締役であったという事実がある(甲9)。
しかも,かつて同社の取締役であった大野一典は大野の実兄であり,ナビの筆頭株主でもあった(甲10)。加えて,大野から請求人に対する平成19年4月10日付け通知書(甲6)では,通知人である大野自身が同社の業務を深く了知していることを前提とした書面を送付している。さらに,大野は,被請求人会社の組織変更前の有限会社ナビ時代にも,同社のプロデューサーなる肩書の名刺を使用しており(甲11),被請求人の役員としてではなく実質的に強い影響を与える立場として活動していたということを誇示していた。
このように,大野は,かつては請求人の代表取締役であって,請求人が「オンライン麻雀ゲーム」の商標として「雀ナビ」を使用することを主導した人物であって,その後に請求人との間で紛争が生じ,請求人会社の取締役を解任されたのである。そして,今回の本件商標権に基づく被請求人の権利行使は,大野が被請求人会社を買収して代表取締役となったのと同時期から準備されたものであって,請求人の業務を妨害することを目的として行われたものである。本件審判請求に対し提出された乙4?乙7も,請求人からの取消審判請求を見越して,不使用取消を免れるために作出されたものであって,その内容自体にも不自然な点が多々見受けられ,到底信用できるものではない。
(4)乙各号証について
ア 乙3について
乙3は,「jannavi.co.jp」,「ジャンナビ.JP」に関する請求明細であり,その請求日は2011年4月8日であって,被請求人の代表取締役が樋口四郎だった時点のものである。甲16のとおり,同が取締役・代表取締役であった平成23年(2011年)4月9日以前には,被請求人は本件商標を「麻雀ゲーム・アプリケーション・プログラム製品」の商標として使用していなかったのであるから,これらのドメインは,被請求人が所有者として登録されてはいるものの(甲17),当時の代表取締役である樋口四郎の関与しないところで,何者かによって取得された可能性が大きいものである。
イ 乙4及び乙5について
これらは何れも被請求人が「jannavi.co.jp」のドメインの下で開設しているホームページの写真であるが,当該ドメインは前述のように平成23年4月8日に登録されたものである点からすれば,このホームページは大野が被請求人の代表取締役に就任したことを契機としてはじめて開設されたものである。しかも,当該ホームページがいつ開設されたのかは不明であり,これら乙は,本件審判請求の登録前に使用があったことの証拠にならない。
また,内容をみても,乙4の同社の「沿革」中において,平成16年9月に「ネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームジャンナビの提供」との記載がある。
しかし,甲16(樋口四郎の確認書)に示されたとおり,平成23年4月9日以前には,被請求人は「麻雀ゲーム・アプリケーション・プログラム製品」の商標として「ジャンナビ」を使用していないのである。更に加えて,請求人と大野の間で紛争があった当時に,大野から請求人へ送付された平成19年4月10日付け通知書(甲6)では,大野が被請求人であるナビの業務について,同社が「マージャン台(実機)の開発を業とする会社」であって,請求人の業務との競合関係はー切ないこと,言い換えれば「ネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供」などを行ってはいないことを大野自身が認めている。
このように,事実と明らかに相違する内容のホームページが真正に作成されたなどということは凡そ考え難く,乙4及び乙5に示されている被請求人のホームページは,本件審判請求がなされた後に,使用の体裁を取り繕うために慌てて作成された可能性が高い。
ウ 乙6について
乙6は,国分寺にあるマージャン店「すずめ」(以下「すずめ」という場合がある。)のホームページであるとのことであるが,請求人が確認したところ,該当ページのドメインネームは「gold1.biz」であった(甲18)。そこで,このドメインネームの登録情報を確認したところ,その登録者名は「Mitsuaki Ohno」,登録組織は東京都千代田区の「Kanda Sakumagashi 78-3」に所在する「Beatone Inc.」(ビートワン インク)となっていた(甲19)。そして,「Beatone Inc.」の所在地には株式会社ビートワン(以下「ビートワン」という。)なる企業があり,同社の代表取締役は大野である(甲20)。ここに記載された大野の住所は,被請求人の代表取締役であった大野の住所と同一であるから,両者が同一人であることは明らかである。
したがって,乙6に示されている「すずめ」のホームページは,大野が主導して作成されたものである可能性が非常に高く,不使用による取消を免れる目的のためだけに作成されたと見るのが至当である。しかも,ドメインネームの登録は2009年であっても(甲19),当該ホームページがいつ開設され,「麻雀ゲーム ジャンナビ」に関する記載がいつから存在していたのかは不明であり,乙6は,本件審判請求の登録前に使用があったことの証拠にならない。
エ 乙7について
乙7は,「AccTVのご案内」との見出しのついたホームページの写真であり,請求人がこのページにアクセスして確認したところ,サービスの運営者として「株式会社ビート・ワン」なる記載があった(甲21)。この会社名が記載された部分にはリンクが張られており,クリックをすると,この会社のホームページに転送された(甲22)。そして,この会社の情報を確認したところ,代表者は大野であり,その所在地も,甲20で示した「Beatone Inc.」と同一の「東京都千代田区神田佐久間河岸78番3号」であることが判明した(甲23)。
したがって,乙7もまた,大野が主導して作成されたものであって,取消を免れるために名目的に使用の外観を作出したものに過ぎない。加えて,乙7のウェブサイトにおいて「麻雀ゲームジャンナビ」に関する記載がいつから存在していたのかも不明であり,本件審判請求の登録前における使用を証明するものではない。
仮に万一,乙4?乙7のホームページが本件審判請求の前に作成されていたとしても,不使用取消を免れるための名目的なものに過ぎないことは明らかである。東京高裁平成4年(行ケ)第144号及び平成5年(行ケ)第168号で判示されているように,「単に不使用取消審判を免れる目的で名目的に商標を使用するかのような外観を呈するような行為があっただけ」では,商標法第2条第3項にいう商標の使用には該当しない。乙各号証のように,不当に取消を免れるためだけに準備をした「使用」も「名目的」なものに過ぎないのであって,取消を免れることはできない。
オ その他の乙号証について
乙1及び乙2は,現実の麻雀で用いられる麻雀台に関する資料であって,本件取消請求に係る指定商品と直接の関係はない。また,乙8及び乙9は,本件商標の使用の事実とは無関係である。
このように,被請求人は,本件商標を使用していることを証明していないのであるから,本件商標登録は取り消されるべきである。
(5)取消請求に係る指定商品との関係について
上述の点を別にしても,被請求人が本件商標を使用していると主張しているのは,取消請求に係る指定商品とは関係のないものである。
ア 乙4及び乙5における説明によれば,パソコン上で提供され,又携帯電話機にダウンロードされて提供される麻雀ゲーム「ジャンナビ」は,「web上の販促・お客様の導入効果ツールとして」利用されるものである。即ち,被請求人が提供しているのは,その実態は国際分類の第35類に属する「販売促進策の企画・実施」なのであって,その販売促進策が「オンライン上の麻雀ゲーム」に他ならない。乙4及び乙5には「販売価格:¥500,000」「レンタル(1ヶ月):¥5,000」と記載されているが,例えば,麻雀荘などが自らの顧客に利用させるなど,集客目的での購入・レンタルが予定されているのである。
商標法上の「商品」とは,独立して商取引の目的となるものである。上記乙号証のホームページは画面をクリックすれば,当該ゲームプログラムにより麻雀ゲームを楽しむことができるが,すべて無料である。勿論,世間には無料でプレイすることのできるゲームプログラムが多数存在しているけれども,それら無料ゲームを提供するウェブサイトは,広告やゲーム中のアイテム購入などによって収益を確保している。
しかるに,被請求人のウェブサイトやゲームにはそのような仕組みは皆無であるから,「ゲームプログラム」という商品として独立して商取引の目的となっていないことは明らかである。
PCや携帯電話でプレイすることのできるゲームプログラムで対価の必要なものも多数存在するが,1ヶ月当たりの利用科は300円前後が一般的であり,請求人の提供する麻雀ゲームも同様である。したがって,個人でプレイするために1ヶ月当たり5,000円を支払うなど考えられず,ましてや50万円で購入するなどということはあり得ない。このことからしても,被請求人の麻雀ゲームプログラムが業者向けの販売促進ツールとして取引されるものであることは明らかである。
そして,当該ゲームプログラムを購入したり,賃借した業者は,自らの顧客や見込み顧客向けに無償で提供するのであろうが,それはまさに,麻雀荘など当該顧客の本業に付随して提供されるものに過ぎず,商標法上の「商品」には該当しない。このことが乙各号証に記載された「web上の販促,お客様の導入効果ツールとして御利用下さい。」の意味するところである。
したがって,被請求人が「ジャンナビ」商標の下で行っているのは,国際分類第35類に属する「販売促進策の企画・実施」なのであって,取消対象たる商品についての使用ではない。
イ 仮に万一,上記の使用が第9類に属する商品についての使用と見る余地があるとしても,以下に詳述するとおり,その商品は取消請求に係る指定商品ではない。
被請求人は,自らが開発した「麻雀ナビゲーションシステム」(乙1,乙2)を搭載した「ジャンナビ」と名づけた麻雀台が「業務用テレビゲーム機」ないし「家庭用テレビゲーム機」に該当するとしている。しかし,「麻雀台(麻雀卓)」は第28類の「娯楽用具」に属するものであり(甲24),「業務用テレビゲーム機」には該当しない。被請求人は,麻雀卓の中央に配置する「麻雀ナビゲーションシステム」がゲームの進行を「画面」によってナビゲーションする点から,この商品を「(業務用)テレビゲーム機」と考えているのかもしれないが,この「ナビゲーションシステム」自体は,あくまでもゲームの進行や点数計算を助けるだけのものにすぎず,これ自体では「テレビゲーム機」ではないし,ましてやこれを組み込んだ「麻雀台(麻雀卓)」が「テレビゲーム機」に該当しないことは明白である。
また,被請求人の商品は「麻雀店など他のホームページでも紹介されている」とした上で,これについても「業務用テレビゲーム機」に該当するとしているが,これら「他のホームページ」(乙6,乙7)で紹介されているのは,被請求人が自らのホームページにおいて紹介している麻雀ゲームと同一であり,パソコン上で起動し,又は携帯電話にダウンロードして使用されるものである。
被請求人の主張は必ずしも明らかではないが,もし,麻雀店などで紹介されているから「業務用テレビゲーム機」であるというのであれば,明らかに誤りである。「業務用テレビゲーム機」とは,ゲームセンターやアミューズメント施設などに設置される,いわゆる「アーケードゲーム」を意味するのであって(甲25),「パソコン上」で起動し,または「携帯電話にダウンロード」して使用されるゲームがこれに該当しないのは明白である。
したがって,被請求人が主張する上記使用が本件商標の「業務用テレビゲーム機」についての使用に該当しないことは議論の余地がない。
ウ 被請求人は「上記ホームページ」を介して「ジャンナビ」と称する「オンライン麻雀ゲーム」(「パソコン上で提供されるもの」と「携帯電話にダウンロードされるもの」の2種類)をユーザーに提供等しているとし,これが「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」に該当するとしている。
しかし,本件商標の出願時点で採用されていた「国際分類第8版」では,「電子計算機用プログラム」の中に,「ダウンロードによる電子計算機用プログラム」と「記録媒体に記憶した電子計算機用のプログラムのソフトウェア」が含まれる(甲26)。すなわち,被請求人は,指定商品として「ダウンロードによる電子計算機用プログラム」と「記録媒体に記憶した電子計算機用のプログラムのソフトウェア」の双方を包含する概念である「電子計算機用プログラム」を指定せず,敢えて「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」に限定して出願し,権利を取得しているのである。したがって,「携帯電話等にダウンロードされるゲーム」が本件商標権の「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」に含まれないことは明白である。
また,「パソコン上で提供されるゲーム」も,オンラインで提供されるものであり,独立して商取引の目的となるような「記憶媒体」に記録されて取引がなされるものではなく,「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」には該当しない。乙4等に「販売価格:¥500,000」との記載はあるが,一つのゲームプログラムをプレイするために50万円で買う需要者は考えられないから,上述した販売促進ツールという以外に商品としての意味はない。
このように,被請求人が主張しているパソコンを通じた麻雀ゲームや携帯電話にダウンロードされる麻雀ゲームプログラムが取消請求に係る「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」に属さないことに疑問の余地がない。
(6)むすび
以上のとおり,被請求人の提出に係る乙各号証は,いずれも取消請求に係る指定商品についての使用を何ら証明するものではないから,本件商標は取消を免れない。
3 平成24年1月23日付け上申書
被請求人は,「請求人と大野光明の関係」,「被請求人と大野光明と関係」その他本件審判に至るまでの経緯に関する,請求人代表取締役藤本勝博による陳述及び,大野一典と大野光明の関係を示す戸籍謄本を提出する。
4 口頭審理陳述要領書
(1)大野と被請求人の関係について
被請求人は,大野が被請求人の代表取締役に就任した平成23年4月9日までは両者の関係が薄かったかのように言うが,大野の「陳述書」(乙39)によれば,被請求人は,樋口四郎と大野が共同して麻雀台を開発することを目的に設立された(同,第3頁)というのであるから,形式的には部外者であったとしても,大野が当初から被請求人の業務に関して枢要な役割を担っていたことは明らかである。
また,大野は被請求人を再建しようと決意し,平成23年4月に樋口四郎から被請求人を引き継いだが,他の会社の事業が忙しくなったので同年5月末に他人に売却した,などと主張している(乙39)。しかしながら,真に被請求人の再建を決意して引き継いだのであれば,僅か2ヶ月足らずで手放すことはなかったであろう。しかも,大野が代表取締役であった期間に,本件審判事件の要証事実に関係する資料が作成され,代表取締役を辞任した直後の平成23年6月に,商標権侵害の警告書が被請求人から請求人に送付されている。警告書を受領した請求人が不使用取消審判を提起するであろうことは容易に予想できるところであって,上述した代表取締役辞任と警告書送付のタイミングが偶然の一致であるなどとは到底考えられない。自らが代表取締役のままでは,請求人との間で締結した「合意書」(甲7)に違反すると考え,他人に交代させた上で警告書を発した,というのが真相である。
(2)請求人,被請求人,訴外株式会社ジョイス(以下「ジョイス」という。)による共同事業について
ア 被請求人は,麻雀機メーカーであるジョイスに対し,平成15年6月10日に「JoyNavi」という「麻雀」をテーマにした共同開発を実施することを提案し(乙11),さらに同年7月1日には,「ジャンナビ」のゲーム開発の計画が提案された(乙12)などと主張している。しかしながら,まず,乙11と乙12を見るに,両者の相違は,表題が乙11は「『JOYとNAVI今後の展開』御提案書」に対し,乙12が「『JanNaviの展開』ご提案書」となっていることと,乙12の2頁,「はじめに」の部分に,第2段落として「ナビゲーションシステムを多く広げるために麻雀→雀(ジャン) ナビゲーション→NAVI(ナビ) 『ジャンナビ』のゲーム開発を計画する。」が加わっていることだけであり,それ以外は完全に同一である。しかし,前者が麻雀台の開発計画で,後者が麻雀ゲームの開発計画であるなら,その内容は自ずと異なっていなければならない。乙12が,乙11をコピーして表題と上記段落を追加しただけのものである以上,これが2003年当時,真に作成され交付されたなどということは考えられない。
イ 加えて,大野の「陳述書」(乙39)によれば,被請求人とジョイスは平成13年から麻雀台の共同開発を行っていたというのであるから,2003年(平成15年)になって被請求人がジョイスに共同開発を提案したというのは辻棲が合わない。更に,被請求人は,「平成15年5月ころ,牌は実物を用い,サイコロ・点棒の点数表示は麻雀台中央にある画面に表示させ,ゲーム的なリーチアクション要素を取り入れた麻雀台を完成し」たとのことであるが,そうであるとすれば,完成後である平成15年6月に共同開発を持ちかけたのは何故なのか,理解に苦しむ。
ウ 被請求人は,大野と樋口四郎の間で,ジョイスが販売する麻雀台,請求人が販売する麻雀ゲームコンテンツなどの商品の統一名を「ジャンナビ」「JanNavi」とすることに決定したと主張し,乙39にも同趣旨の記載がある(5頁)。しかし,一方で,被請求人及び大野は,ジョイスが販売していた麻雀台が「パイリーダー」と称されていたことを認めており,明らかに矛盾している。
また,被請求人は,乙1に示された利用説明書が当該「パイリーダー」のものであることも認めた。これは,侵害訴訟において,請求人が「パイリーダー」のパンフレット(甲29)を提出し,乙1がこれと同じパンフレットであることを明らかにしたためと思われる(甲29)。被請求人らによれば,麻雀台「パイリーダー」と「ジャンナビ」の違いは,点棒を使用するかしないかであるとのことであるが,甲29(乙1も同じ)の4頁には「点数の移動」なる項目があり,麻雀台上で点数が移動することが示されているから,「パイリーダー」は点棒を使用しないものと考えられる。
このように,平成15年から麻雀台に「ジャンナビ」を使用しているという被請求人の主張は矛盾に満ちており,到底信用することができない。
(3)樋口四郎作成の確認書(甲16)について
被請求人は,請求人及び訴外ジョイスの共同開発における役割分担の中で,請求人を通じて麻雀ゲームとして「ジャンナビ JanNavi」商標を使用していたとし,そのため,樋口四郎作成の確認書は,不正確な事実を述べていると主張する。
大野の「陳述書」(乙39)によれば,請求人が平成15年8月から携帯コンテンツの開発を始めたものの思うような売り上げに至らなかったため,当時の被請求人の代表者であった樋口四郎に同年10月頃から携帯電話向けの麻雀ゲームコンテンツを開発するための資金の提供を相談し,その後携帯麻雀ゲームコンテンツの事業の売上げの5%をインセンティブとして支払う代わりに,現に被請求人から1000万円の開発資金の提供を受けたとして,乙14及び乙16を提出している。
請求人としては,請求人から被請求人宛に作成された旨の文面の請求書(乙15)が存在すること,被請求人から請求人の銀行口座に対して平成15年12月19日に1000万円が振り込まれたことは,それぞれ認めるものの,当該請求書(乙15)なるものが実際に発行されたものか否か,また,具体的に誰によって作成されたものかについては不知であり,振込の原因たる取引が「ソフト開発費用」の請求人から被請求人への負担請求である旨の主張は否認する。仮に被請求人が開発費用の一部を負担したような事実があったとしても,このゲームアプリは,現実に請求人が単独で開発をし,請求人を主体として提供されたものである(甲12)。本件ゲームソフトの提供運営主体という意味での「商標の使用主体」は,請求人たるウインライトなのであって,被請求人が請求人を通じて麻雀ゲームとして「ジャンナビ JanNavi」商標を使用したとの主張は,誤りである。
したがって,樋口四郎作成の確認書が不正確な事実を述べているとする,被請求人の主張こそが誤りである。
(4)被請求人のホームページについて
被請求人は,そのホームページが平成23年4月8日にドメインを取得し,予め制作していたWebデータを用いて,3日後の平成23年4月11日に開設されたと主張し,大野も同趣旨の陳述をしてはいるが(乙39),そのことを客観的に示す証拠はなんら提出されていない。加えて「閲覧が可能な状態にあった」かについては何ら主張・立証されていない。
したがって,陳述要領書の内容及び新たな証拠からも,被請求人会社のホームページ(乙4,乙5)が,本件審判の請求の登録前までに開設され,かつ,閲覧が可能な状態にあったものであることは依然として立証されていない。
(5)麻雀台「ジャンナビ」は「業務用テレビゲーム機」にあたるとの主張について
被請求人は,ジョイスとの共同開発の結果として製品化された麻雀台を,被請求人のホームページ(乙4及び乙5)を介して販売・レンタルしているとし,その麻雀台は,次のことが認められる。
ア ゲームセンターやアミューズメントセンター向けに製品化されたものであること
イ 麻雀台中央に配置された自動点数計算システムの画面上に「ゲーム的なアクション」がおきるようになっていたこと
ウ 被請求人が,請求人を通じて麻雀台を販売したと主張する「株式会社ランシステム」が,アミューズメントセンターを運営する会社であること
から,当該麻雀台が,ゲームセンター等に設置された麻雀ゲーム機に代わる商品だとして「業務用テレビゲーム機」にあたるとしている。
しかし,乙4及び乙5に掲載されている商品(「ジャンナビJN01 全自動ナビゲーションシステム台」及び「ジャンナビJN02 手打ち台」)は,4人で卓を囲むタイプのものであり,客観的に見て「麻雀台」以外の何ものでもない。一部がコンピュータ化されているからといって,「電子ゲーム」になるわけでないことは当然である。「自動点数計算システム」は,あくまでもゲームの進行や点数計算を補助する役目を果たしているに過ぎないのであって,それ自体は「テレビゲーム機」ではない。ましてや,これを組み込んだ「麻雀台(麻雀卓)」がテレビゲーム機に該当しないことも明白である。
上述のとおり,乙4及び乙5に掲載されている商品は客観的に見て「麻雀台」に他ならず,被請求人の主張は明らかに失当である。
(6)麻雀ゲーム「ジャンナビ」を記憶させたCD-Rが「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」にあたる,との主張について
被請求人は,麻雀ゲーム「ジャンナビ」の顧客への引渡方法は,「ジャンナビ」「JanNavi」と記載されたCD-Rに麻雀ゲームが記録されており,このCD-Rを顧客に対し交付することで,商品の受渡しがなされているとし(乙40,乙42及び乙43),本件商標が「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」の商標として使用されていると主張する。
しかし,「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」を商標法上の商品というためには,その記憶媒体自体が独立した商品として商取引の対象となっていることが必要である。この点,弁駁書でも述べたとおり,被請求人の麻雀ゲームは,「web上の販促・お客様の導入効果ツールとして」利用されるものであり(乙4及び乙5),その実態は国際分類の第35類に属する「販売促進策の企画・実施」である。その販売促進策が「オンライン上の麻雀ゲーム」に他ならないのであって,被請求人の麻雀ゲームが「ゲームプログラム」という商品として独立して商取引の目的となっていないことは明らかである。
したがって,被請求人が麻雀ゲームのプログラムをCD-Rに記録して顧客に交付したとしても,それは商品としての「ゲームプログラム」を記憶媒体に記憶させて販売したものではなく,あくまでも「麻雀ゲームという販売促進策」の提供手段としてCD-Rを用いたに過ぎないものであるから,国際分類第9類に属する商品たる「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」に該当しないのは明白である。
(7)物品受領書について
被請求人は,物品受領書に関し,「納品書(控),請求書,納品書,物品受領書の4枚綴りの複写式のものを使用し(乙25),これを利用する際には,納品書と物品受領書の間に厚紙を入れ,物品受領書に宛名が複写されることをふせいだ上,物品受領書についてはあらためて『様』がついている欄に,顧客の名称を書き込んでいる』と主張する。
しかるに,そのような主張は虚偽である疑いが濃厚である。なぜなら,そのような使用方法は,「納品書(控)」に記載された全ての事項を残り3枚のフォームに複写することによって各フォームにいちいち同じことを記載する手間を省くという乙25の書式の本来想定されている使用方法に反しており,わざわざ「厚紙を入れ,物品受領書に宛名が複写されることをふせ」ぐ意味が全くない上に,乙28及び乙36の「物品受領書」の顧客の名称の記載はいずれもゴム印の押捺によるものであって,被請求人が主張するように被請求人自身が当該名称を「書き込ん」だはずがないからである。
(8)すずめに対する「物品受領書」(乙22)の宛名について
物品受領書の使用方法に関する被請求人の主張は,上述のとおり虚偽である疑いが濃厚であるが,その主張する使用法でも辻棲の合わない「すずめ」に対する物品受領書に関しては以下のとおりである。
ア 被請求人の主張する使用方法によれば,被請求人の名前が記載されるべきところに「すずめ」と記載されているのは,厚紙を入れて物品受領書に宛名が複写されることをふせがなかった「事務ミス」によるものであり,
イ 「様」のついている欄に株式会社正成(以下「正成」という。)の名前があるのは,「すずめ」と正成をともに経営していた紺野仁吉の要望による,としている。
しかしながら,そのような顧客の要望がある得ることは理解できるとしても,なぜ,物品受領書の「フリー麻雀店すずめ」の記載がそのまま放置されているのか,全く理解できない。そのような事務ミスがあったのであれば,物品受領書を作成し直せばよいのであって,なぜそうしなかったのか理解できない。
(9)被請求人が陳述要領書とともに提出している種々の契約書について
ア 被請求人は,答弁書提出(平成23年10月)から9ヶ月,請求人の弁駁書提出(平成23年12月)からも7か月も経った今頃になって,本件商標の使用実績に関する自らの主張を立証しようとする種々の契約書を一挙にまとめて提出している(乙21,乙27,乙30,乙32,乙33及び乙35)。
ところが,これらの契約書は,答弁書提出後に後付けで作成されたものであるということを非常に強く疑わせるため,いずれもその記載内容には信用性が認められない。
イ 乙21,乙27,乙35は,順に,被請求人とすずめ,有限会社LSコミュニケーションズ(以下「LSコミュケーションズ」という。),株式会社AIRCAST(以下「AIRCAST」という。)間の「コンテンツの利用契約書」であるところ,その具体的な内容は,これらに対応する「物品受領書」(乙22,乙28,乙36)の「品名」からも明らかなように,「麻雀ソフトの貸与」に関する契約である。このような「貸与」行為は,本件取消審判の取消対象となっている指定商品の何れにも該当しない。
この点につき被請求人は,「利用許諾期間が限定されていることから,このような表現が用いられたものである」などと主張している。しかしながら,「貸与」は期間の限定を伴うことが通常であって,本件では1か月当たり5000円の対価で6ヶ月間貸し出しており,借主はその期間内であれば契約条件に従って自由に利用できるのであるから,まさに文字どおりの意味の「貸与」に他ならない。そのような「貸与」行為は,本件取消対象の指定商品のいずれにも該当しない。
ウ その他に提出された契約書は,いずれも被請求人とLSコミュニケーションズ間のものであるところ(乙30,乙32,乙33),これらもまた,本件取消審判の取消対象となっている指定商品の使用について立証するものではない。
まず,乙30は「ソフトウェア製品の販売に関する契約書」であり,被請求人はこの契約に基づいてLSコミュニケーションズが,旧車二輪専門店BANBAN(以下「BANBAN」という。)に対し,麻雀ゲームソフト「ジャンナビ」を販売したと主張している。しかし,「貸与」について曲がりなりにも取引書類(物品受領書)の写しが提出されているにも拘わらず,LSコミュニケーションズとBANBAN間に麻雀ゲームソフト「ジャンナビ」の売買契約が実際に行われたことを示す証拠の提出はなく,その提供方法についても何ら述べるところがない。乙43にも,先月(平成24年6月)になってBANBANのホームページに,麻雀ゲームが掲載されたことは述べられているが,いつ販売がされたかについては言及されていない。
乙32の契約は,LSコミュニケーションズが「本件販売物を販売」することを内容とするものであるところ(同契約第2条),この契約に基づいて販売したと主張しているのは国際分類第28類に属する「全自動式の麻雀台」である。
なお,乙32の「本件販売物」の内容を列挙した別紙「取り扱い販売物目録」中の項番3ないし12は本件商標の第41類の指定役務を引き写したものに過ぎず,意味不明の記載である。例えば「麻雀の教授」を販売するとはいかなる行為であるのか,観念することすらできないのみならず,麻雀とは無縁の事業を営むLSコミュニケーションズが麻雀の教授を行ったり麻雀大会を企画したりすることなど,およそ考えられないことである。現実に契約締結及び取引実行が行われたのであれば,このような不可解な内容の契約書が締結されることはまずあり得ないのであって,このことをもってしても,乙32の契約が不使用取消を免れる目的で,本件取消審判請求がなされたことを知った後(或いは,被告から反論を受けた後)に,現実の商取引がなかったにも拘わらずそれが実在していたかのような体裁を後になって取り繕うために慌てて作成されたものであることを如実に物語っている。
(10)以上のとおり,被請求人による陳述要領書による主張及び提出された証拠をもってしても,被請求人が本件審判請求の登録前3年以内に取消対象たる指定商品について,本件商標を使用していたものとは言えない。
5 平成24年9月10日付け上申書
(1)物品受領書の番号について
被請求人によれば,物品受領書の番号は,「N」は「ナビ」を表し,数字の1番目と2番目は西暦の下2桁,3番目と4番目は月,最後の数字は当該月に物品受領書が発行された取引番号,とのことである。
しかしながら,請求人が口頭審理期日に指摘したとおり,乙28は平成23年(2011年)5月1日付で番号が「N11051」であり,乙36は同年4月20日付で「N11042」となっており,日付と番号が奇妙に符合している。更に,別件(取消2011-300680)で提出された乙21は同年4月30日付で「N11043」と,これまた符合している。偶然の一致というには余りに不自然であって,本件審判で証拠提出するために捏造した際,番号のことまで深く考えず,日付に対応した数字を記入した可能性が極めて高い。
(2)LSコミュニケーションズとの取引について
ア 乙54?乙56に鑑み,被請求人がLSコミュニケーションズと締結したと称する2種類の契約書(乙30,乙32)を精査してみると,単一の契約書自体においても,また,二つの契約書相互間においても,不合理で辻棲の合わない点が多々存在している。即ち,まず,乙30は被請求人が同社に対し,「麻雀ゲームソフトジャンナビ」を複製し,当該複製品をインターネット上のサイト,ホームページに組み込み販売する権利を許諾する(第1条)というものであって,被請求人が同社にゲームソフトを販売(卸売)し,同社が転売するというものではない。しかるに,第7条第2項では「本契約有効期間中に購入した本ソフトウェア製品について,乙は,本契約の有効期間満了後といえども,頒布することを妨げられない」と規定されており,齟齬がある。
また,両者の間のメール交信とされる乙55は,乙30の契約締結に至る経緯を示すものとされているが,LSコミュニケーションズからの申し入れは「麻雀ソフトの販売代理」であった(乙55)とされているところ,そのような取引であれば,むしろ乙32のような契約を締結すべきであったものと考えられる。蓋し乙32の第1条は「甲は乙に対し,本件販売物に関する代理店における販売,サービスを委託し,乙は甲の販売代理店として,販売の履行をする」と,第2条第1項では「乙は,本契約に伴う本件販売物を販売するものとする」とされ,第4条で「甲は乙に対し,乙からの注文に応じ,本件販売物を許諾,販売する」とされており,まさに「販売代理」の契約である。そして,「本件販売物」には,目録に示されたように「インターネットのネットワークを利用する麻雀ゲーム」「通信を用いて行う麻雀ゲーム」が含まれているからである。
しかも,乙32の第2条第3項は「乙は,本件販売物については,複製,改変及びリバース・エンジニアリングをしないものとする」としており,乙によるゲームソフトの複製を禁止している。更に,乙32はその前の契約である乙30との関係について何ら定めるところがないのであるから,これら二つの契約は矛盾する内容となっている。
このような相互に矛盾する規定が至るところに存するこれらの契約が真に取引のために締結されたなどということは,凡そ考えられないから,被請求人の主張を信用することは到底できない。
イ LSコミュニケーションズからの「販売報告書」(乙44?乙46)なる書面は,内訳欄の項目名が「品名」,「件数」,「件数」,「支払額」となっており,「件数」の項目が二つ存在している。
しかし,各項目に記載された数字から見て,二つめの「件数」は「単価」の誤りであると考えられるところ,契約当事者間において枢要な位置を占める販売報告書において,このような明白かつ重要な誤記が看過されたまま数ヶ月に亘り使用され続けることは,常識では考えられないところである。
加えて,乙44の販売報告書の「備考」欄には,「平成23年6月3日付け契約『ソフトウェア製品の販売に関する契約』に従い麻雀ゲームソフト『ジャンナビ』Web上の提供」と記載されている。上述のとおり,同契約書(乙30)はLSコミュニケーションズが「[麻雀ゲームソフトジャンナビ]を複製し,[当該複製品]をインターネット上のサイト,ホームページに組み込み販売する」ことができるというものであるが(同契約第1条),LSコミュニケーションズが自社のサイトにゲームソフトを組み込むことは,乙27の契約で定められていることであって,かつ「販売」にも該当しないから,乙30の契約でいう「インターネット上のサイト,ホームページ」とは第三者のサイトやホームページと解される。即ち,乙30の契約は,LSコミュニケーションズが麻雀ゲームソフトを複製し,当該複製品を第三者のサイトやホームページに組み込んだ態様で販売することを定めたものである。しかるに,乙44の販売報告書では「Web上の提供」と記載されており,LSコミュニケーションズが自社のサイトで提供したこととされているから(仮に,自社サイトで提供したのではなく,乙30に基づき第三者に販売したというのであれば,乙44における販売報告の対象を「Web上の提供」とは記載しない),乙30の契約内容と合致していない。
以上のことと,「販売報告書」に報告者の捺印も押されていないことからすれば,これらの報告書は最近になって被請求人によって捏造されたものと見るのが自然である。
ウ 被請求人は「[平成23年]4月と5月は手書きの伝票が使用されていたが,6月以降はパソコンで作成された領収書が使用されている」と主張し,乙47?乙49(注:被請求人平成24年8月27日付け上申書本文中の「乙46及び47」は誤記である)を提出している。口頭審理期日において,手書きの物品受領書の書式が現在は販売中止になっているものであることを指摘されたことから,領収証についてもそのような指摘を受ける可能性があることを恐れて,上述のような主張に至ったものと推測される。しかるに,別件(取消2011-300681)で提出された乙7の物品受領書は,平成23年6月20日の日付であるにも拘わらず,手書き伝票である。領収証をパソコンで作成することにしたのであれば,領収証だけでなく請求書や納品書,物品受領書もパソコンで作成することが通常であるのに,これらについては,上述のように6月以降も以前に廃版となった手書きのものを継続して使用していたというのであるから,取り扱いが凡そ首尾一貫しない。したがって,ここにも被請求人の主張の矛盾がある。
(3)追加の証拠について
ア 乙50は,かつて請求人と紛争関係にあり,かつ,本件紛争が顕在化する直前まで被請求人の代表取締役であった大野の陳述書であり,その陳述内容を裏付ける客観的な証拠は何ら提出されていないのであるから,証拠としての価値はないに等しい。
イ 乙51?乙53は,被請求人が作成した書面の写真であって,このような書面は如何様にでも作成できるものである。加えて,これらの領収証に対応するとされる取引の物品受領書(乙22,乙28,乙36)は,「品名」として「(麻雀)ジャンナビソフト貸与」と記載されているところ,今回提出された領収証(控)の但し書き欄には「麻雀ジャンナビソフトの提供及び記憶媒体の貸与として」と記載されており,一致していないが,このような不一致は通常の取引ではあり得ない。
更に,後者の記載は前者よりも本件取消請求に係る指定商品に近くなっているばかりか,「記憶媒体の貸与」などという記載は,商標の指定役務としてはともかく,凡そ通常の取引において用いられる言葉ではない。これらのことからすれば,乙51?乙53は口頭審理期日の後になって,使用があったかのように見せかけるために被請求人が作成したものと考えるほかなく,全く信用できない。
ウ 乙54?乙58は,被請求人と取引先との電子メール写しとされているが,このような書面もまた,被請求人において如何様にでも作成できるものに過ぎず,証拠としての価値を見出すことはできない。
実際,これらのメールが捏造によるものであることを明らかに示す記載が見られる。
他にも,電子メールの写しが捏造であることを示す部分は数多くある。まず,乙56の下方の「Sent:Friday……」という記載の「:」の後にはスペースがないところ,他の箇所における「:」の後にはスベースがあり,表記方法が一貫していない。また,同じく乙56の中段以降の時刻表示は,「14:12PM」,「13:43PM」及び「13:23PM」と記載されており,24時間表示と午前・午後表示を混在させて用いるという,本来あり得ない表記方法になっている。さらに,乙57の中段以降においては6月が「june」と先頭文字が小文字で表記されている。
これらはいずれも,コンピュータによって自動的に生成されるメールヘッダの記載としては,決してあり得ないものばかりである。
このように,元々電子メールの写しは被請求人において如何様にでも作成できるものであるところ,実際に捏造がなされたことを露呈する記載がこのように存在するのであるから,被請求人が提出した電子メールの写しと称する書面の全てがおよそ信用することができないものである。
以上のとおり,被請求人が提出した新たな証拠と主張によっても,本件商標が取消請求に係る指定商品に使用されていたことは何ら立証されていないから,取消は免れない。

第4 被請求人の主張(要旨)
被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し,口頭審理陳述要領書,口頭審理及び上申書において,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙1?乙58(枝番を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)被請求人は,「業務用テレビゲーム機」ないし「家庭用テレビゲーム機」として「ジャンナビ」という名称を付した麻雀台や麻雀用具を販売しており,また,インターネットを利用したサイトを通じて,麻雀ゲーム「ジャンナビ」を提供,販売,レンタルしており,これは「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」の利用に該当するものである。
(2)被請求人の会社設立
被請求人は,平成13年,麻雀台においてコンピュータを利用して役牌,点数計算をオートメーションで行うプログラムの開発等を目的として会社を設立した。
被請求人は,平成15年,麻雀ナビゲーションシステム(乙1,乙2)や麻雀ゲームのプログラム等を開発し,平成15年10月31日,「ジャンナビ」を商標出願した。また,被請求人は,麻雀用具はもとより,ゲーム機器,携帯ゲーム,インターネットなどでもこのシステムを利用することを企画した。このようにして,平成16年9月17日,被請求人は本件商標を登録するに至った。
(3)麻雀台等の販売
その後,平成23年初旬から,被請求人は,本件商標を利用した事業を始めることを企画し,平成23年4月8日,ネット上に「jannavi.co.jp」「ジャンナビ.JP」というドメインを取得し(乙3),「ジャンナビ」の商品を紹介,販売するホームページを立ち上げた(乙4)。そして,現在,同サイトにおいて,被請求人が開発した麻雀ナビゲーションシステムを搭載した「ジャンナビ」と名付けた麻雀台を提供,販売,レンタルしている(乙4)。ユーザーは,これらの麻雀台について,同サイト上に表記するECショップから,購入又はレンタルを選び注文することができる(乙5)。また,被請求人の商品は,麻雀店など他のホームページでも紹介されている(乙6,乙7)。これは,「業務用テレビゲーム機」に該当するものである。
(4)オンライン麻雀ゲームの提供,販売
被請求人は,上記のホームページを介して,オンライン麻雀ゲーム「ジャンナビ」をユーザーに提供,販売,レンタルしている(乙4,乙5)。その購入方法等は既述のとおりである。この麻雀ゲームは,平成15年に開発した上記の麻雀ゲームのプログラムを利用して,インターネット上で対戦型の麻雀ゲームをすることを可能としたものであり,これは「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」に該当するものである。
(5)背景事情
上記のとおり,被請求人は,平成23年3月頃から本件商標を使用した事業を開始しようとしたものの,請求人が既に「雀ナビ」の名称でオンライン麻雀ゲームを提供,販売していたため,同年6月23日及び7月14日に内容証明郵便により「ジャンナビ」の使用を中止するよう通知した(乙8の1,2,乙9の1,2)。しかしながら,請求人からは何ら返事がなかった。その後,同年9月13日に本件審判請求書が発送され,請求人から取消審判が請求されていることを知った次第である。
(6)結語
以上のとおり,請求人の請求には理由がなく,取消審判は認められない。
2 口頭審理陳述要領書
(1)本件商標権の行使は業務妨害目的ではない
請求人は,今回の本件商標権に基づく被請求人の権利行使が,大野によるもので,被請求人の業務を妨害することを目的とするものだと主張するが,こうした主張は,以下の事実から誤りである。
(2)樋口四郎作成の確認書(甲16)について
樋口四郎作成の確認書(甲16)は,樋口四郎が被請求人の取締役であった期間「JanNaviジャンナビ」を,麻雀ゲーム・アプリケーション・プログラム製品の商標として使用していないことを確認するものである。
もっとも被請求人は,請求人及び訴外被請求人との共同開発における役割分担の中で,「ジャンナビ JanNavi」の商標権を有しており,3社による共同事業が終了するまで,請求人を通じて,麻雀ゲームとして当該商標を使用していたものである(乙39)。
したがって,樋口四郎の陳述書は,不正確な事実を述べている。
(3)被請求人のホームページについて
大野の「陳述書」(乙39)に記載されたとおり,被請求人のホームページは,平成23年4月8日にドメインを取得し,あらかじめ制作していたWebデータを用いて,3日後の同年同月11日に開設されたものである。
(4)麻雀台「ジャンナビ」は「業務用テレビゲーム機」にあたる
被請求人は,これまで述べてきた3社の共同開発の結果製品化された麻雀台「ジャンナビ」もしくは「JanNavi」(以下,表現が重複するので「ジャンナビ」という。)を販売・レンタルしている(乙4,乙5)。以下,平成23年4月以降の商品の仕入れ,販売活動について説明する。
ア 麻雀台の仕入れ
被請求人と訴外ジョイスは,自動点数計算システム「ジャンナビ」を備えた2種類の麻雀台を開発した。ともに自動点数計算システム「ジャンナビ」を備えたものだが,1つが,点棒を使用しない麻雀台「シャンナビ」であり,被請求人が販売活動をした商品である。もう1つが点棒を使用する麻雀台「パイリーダー」であり,訴外ジョイスが販売活動をした商品である。2つの商品の違いは,「パイリーダー」が麻雀店向けに開発されたのに対し,「ジャンナビ」はゲームセンターやアミューズメントセンター向けに開発された点にある。
大野は,樋口四郎から,平成23年4月に,200万円で被請求人を譲り受けた際,当時,訴外ジョイスの在庫として残されていた麻雀台「パイリーダー」を引き継いだ(乙38)。もっともこの麻雀台「パイリーダー」は,点棒を使用しない型のものに様式変更されており,ナビがかつて販売活動を行っていた麻雀台「ジャンナビ」と同じものになっていた。そこで引き継いだ麻雀台は,平成23年4月8日以降,麻雀台「ジャンナビ」として販売されている(乙38)。そのため「パイリーダー」の取扱説明書が利用されている(乙1)。写真(乙2)は,かつて「パイリーダー」と呼ばれていたが,現在は,「ジャンナビ」として販売・レンタルされている麻雀台である。
イ 商品の特徴・販売活動
麻雀台「ジャンナビ」は,上述のように,ゲームセンターやアミューズメントセンター向けに製品化された点棒を使用しない麻雀台であり,業務用麻雀ゲーム機に代わる商品である。
また,中央に配置された自動点数計算システム「ジャンナビ」は,ただ点数の計算をするだけではなく,たとえばリーチをすると,中央の画面上にゲーム的なアクションがおこるようになっていた。
さらに,上述したように,被請求人は,請求人を通じて,株式会社ランシステムに対し,平成16年2月に,麻雀台「ジャンナビ」の販売活動を実施した(乙17)。同社は,ジャスダックに上場するアミューズメントセンターを運営する会社である。
ウ 小括
こうした商品の特徴や販売活動を踏まえると,麻雀台「ジャンナビ」は,従来の麻雀台ではなく,ゲームセンター等に設置された麻雀ゲーム機に代わる商品だといえる。したがって,麻雀台「ジャンナビ」は「業務用テレビゲーム機」にあたる。
(5)麻雀ゲーム「ジャンナビ」を記憶させたCD-Rは「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」にあたる
ア 麻雀ゲーム「ジャンナビ」の顧客への引渡方法
麻雀ゲーム「ジャンナビ」は,「ジャンナビ」「JanNavi」と記載されたCD-Rに記録されており,このCD-Rを顧客に対し交付することで,商品の受渡しがなされている(乙40)。
イ すずめを通じた提供
被請求人とすずめは,平成23年4月30日,すずめのホームページにおいて,麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」を利用したサービスの提供を行うことに合意し(乙21),同合意に基づき,すずめに対し,同日,麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」を納品し(乙22),すずめの上記ホームページにおいて平成23年4月から同年10月までの約6ヶ月間「ジャンナビ」が提供された(乙23,乙42)。納品は,「ジャンナビ」「JanNavi」と記載されたCD-Rの交付によってなされた(乙42)。また,すずめから,被請求人に対し,納品と同時に,3万円が支払われた(乙22)
このすずめのホームページは,平成23年3月28日,大野が代表を務めるビートワンが開発を委託され(乙24),作成されたものであり,ドメインネームが「gold1.biz」となっているのは,ビートワンがすずめのホームページを作成する際に,すずめの要請によりビートワンが権利を持つドメインネームを用いたからである。
なお,ここで,被請求人における物品受領書の使用方法について解説する。
(ア)一般的な使用方法
被請求人は,納品書(控),請求書,納品書,物品受領書の4枚綴りで,複写式となっているコクヨ製の物品受領書を使用している(乙25)。被請求人は,この物品受領書を利用する際,納品書と物品受領書の間に厚紙を入れ,物品受領書に宛名が複写されるのをふせいだ上,物品受領書についてはあらためて「様」がついている欄に,顧客の名称を書き込んでいる。
(イ)すずめに対する物品受領書の宛名について
上記の利用方法に従えば,すずめに対する物品受領書(乙22)は,本来被請求人の名前が記載される場所に「すずめ」の名前が記載される一方,本来「すずめ」が記載される位置に,正成の名前が記載されている。
はじめに本来被請求人の名前が記載されるべきところに「すずめ」と記載されているのは,納品書(控),請求書,納品書を作成する際に厚紙を入れ忘れた上,これを訂正せずに,物品受領書を保管したことにあると思われる(乙38)。また,すずめと正成(乙26)はともに紺野仁吉が経営していたことから,紺野仁吉からの要望により,正成に納品した形の物品受領書を作成したものである(乙42)。
したがって,一見すると,物品受領書(乙22)は,請求人と無関係に見えるが,実際は,すずめと被請求人との間の取引を裏付けるものである。
(ウ)物品受領書の「貸与」との表現について
物品受領書には「ジャンナビソフト貸与」と記載されているが,コンテンツの利用契約書(乙21)においてソフトの利用許諾期間が限定されていることから,このような表現が用いられたものである。以下に述べるLSコミュニケーションズ及びAIRCASTに対す物品受領書も同様である。
ウ LSコミュニケーションズを通じた提供
被請求人は,LSコミュニケーションズに対し,平成23年5月1日,同社のホームページにおいて,麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」を利用したサービスの提供を行うことに合意した(乙27)。この合意に基づき,被請求人は,LSコミュニケーションズに対し,同日,麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」を納品し(乙28),同ホームページにおいて平成23年5月から同年10月の約6ヶ月間ジャンナビが提供された(乙29,乙43)。納品は,「ジャンナビ」「JanNavi」と記載されたCD-Rの交付によってなされた(乙43)。またLSコミュニケーションズから,被請求人に対し,納品と同時に,3万円が支払われた(乙28)
こうしたコンテンツの利用に加え,被請求人とLSコミュニケーションズは,平成23年6月3日,麻雀ゲームソフト「ジャンナビ」を,LSコミュニケーションズが販売することに合意した(乙30)。この合意に基づき,LSコミュニケーションズは,BANBANに対し,麻雀ゲームソフト「ジャンナビ」を販売し,BANBANのホームページにおいて提供されている(乙31)。
また,両社は,平成23年6月6日,「ジャンナビ/JANNAVI」と商標の付された麻雀卓等に関する販売代理店契約に合意した(乙32)。
さらに,両社は,平成23年7月23日,被請求人が,LSコミュニケーションズに対し,麻雀ソフト「ジャンナビ」を使用,複製,頒布する独占的権利を許諾することに合意した(乙33)。この合意に基づき,LSコミュニケーションズは,NTTドコモの提供するdマーケットにおいて「ジャンナビ麻雀入門」というゲームを提供している(乙34)。
エ AIRCASTを通じた提供
被請求人とAIRCASTは,平成23年4月20日,AIRCASTのホームページにおいて,麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」を提供することに合意した(乙35)。この合意に基づき,AIRCASTに対し,同日,麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」を納品し(乙36),AIRCASTが運営するAccTVのホームページにおいてジャンナビが提供された(乙37)。納品は,「ジャンナビ」「JanNavi」と記載されたCD-Rの交付によってなされた。またAIRCASTから,被請求人に対し,納品と同時に,3万円が支払われた(乙36)
オ 以上より,麻雀ゲーム「ジャンナビ」は,これを記憶させたCD-Rを用いて交付されており,本件商標は「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」の商標として利用されているといえる。
3 平成24年8月27日付け上申書
(1)物品受領書の番号の付け方は,以下のとおりである。
「N」は,被請求人を意味する「ナビ」,数字の左から数えて1番目・2番目の数字は西暦の下2桁,数字の左から数えて3番目・4番目の数字は「月」,最後の数字は当該月に物品受領書が発行された取引番号である。
乙28を用いて説明すると,この取引は,「N」と記載されていることから被請求人による取引だということがわかり,次に「1105」と記載されていることから,2011年5月の取引だとわかり,最後に「1」と記載されていることから,2011年5月の1番目の取引だということがわかる。
(2)LSコミュニケーションズとの間の取引に係る主張を追加する。
被請求人は,LSコミュニケーションズとの間で,平成23年6月3日,麻雀ゲームソフト「ジャンナビ」を,LSコミュニケーションズが販売することに合意し(乙30),同年同月6日には麻雀卓等の販売代理店契約に合意した(乙32)。上記契約に基づき,LSコミュニケーションズは,被請求人に対し,6月度ないし8月度の販売報告書(乙44?乙46)を提出した上,LSコミュニケーションズは,被請求人に対し,同年7月29日,6月度につき3万円(乙47),7月度につき2400円(乙48),同年9月30日2400円を支払った(乙49)。
(3)追加の証拠(乙50?乙58)
ア AIRCASTによる麻雀ゲームジャンナビの利用状況を立証する証拠として,大野の「陳述書」(乙50)を提出する。
イ 被請求人とすずめ,LSコミュニケーションズ及びAIRCASTとの間でそれぞれ行われた麻雀ソフト「ジャンナビ」の提供に関する領収書(控)を提出する(乙51?乙53)。なお,領収書の番号の振り方について,乙51を用いて説明すると,「JN」が「ジャンナビ」,「4」が「月」,「07」が当該月の取引番号を示している。したがって,すずめとの取引に関する領収書は,4月中7番目に発行された領収書であることがわかる。
ウ これまで主張してきた取引に関するメール(乙54?乙58)を提出する。
(ア)被請求人とLSコミュニケーションズとの間で平成23年5月1日になされた麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」のサービス提供に係るメール(乙54)
(イ)被請求人とLSコミュニケーションズとの間で平成23年6月3日になされた販売代理店契約に係るメール(乙55)
(ウ)被請求人とLSコミュニケーションズとの間で平成23年6月6日になされた麻雀卓等に関する販売代理店契約に係るメール(乙56)
(エ)上記取引以外で,被請求人とLSコミュニケーションズとの間でなされたメール(乙57,乙58)

第5 当審の判断
1 本件の争点
商標法第50条第1項による商標登録の取消審判の請求があったときは,同条第2項本文は,「その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り,商標権者は,その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」と規定している。
そして,本件の取消請求に係る商品は,「業務用テレビゲーム機,家庭用テレビゲーム機,ゲーム機(テレビジョン受像機専用のもの),コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」であるところ,被請求人は,答弁書において,本件審判の登録(平成23年8月2日)前3年以内(以下「要証期間」という。)に,「ジャンナビ」という名称を付した「ナビゲーションシステムを搭載した麻雀台」を販売しているから,これは「業務用テレビゲーム機」ないし「家庭用テレビゲーム機」の使用に該当する。
また,被請求人のホームページを介して,麻雀ゲーム「ジャンナビ」(以下「麻雀ゲーム」という。)をユーザーに提供,販売,レンタルしており,これは「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」に該当するものであるとの主張をし,乙1?乙9を提出した。
その後,「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」に関しては,口頭審理陳述要領書,上申書において,麻雀ゲームは,「ジャンナビ」「JanNavi」と記載されたCD-Rに記録されており,このCD-Rを顧客に対し交付することで,商品の受渡しがなされているとの主張をし,乙10?乙58を提出した。
これに対して,請求人は,「ナビゲーションシステムを搭載した麻雀台」は,「業務用テレビゲーム機」ないし「家庭用テレビゲーム機」に該当しない。
また,パソコン上で起動し,又は携帯電話にダウンロードされて提供される麻雀ゲームは,販売促進ツールであって商標法上の商品にあたらないし,顧客との「コンテンツの利用契約」は麻雀ゲームの貸与に関するものであるから,商品「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」の販売に使用するものとはいえない。
さらに,請求人は,「被請求人の主張及び提出に係る乙各号証は,いずれも信ぴょう性を欠くものであるから,被請求人は,本件商標を取消請求に係る指定商品に使用したことを何ら立証していない」旨主張し,甲1?甲31を提出した。
したがって,本件審判事件の争点は,被請求人が使用したと主張する「ナビゲーションシステムを搭載した麻雀台」が「業務用テレビゲーム機」ないし「家庭用テレビゲーム機」に該当するか否か,該当するのであれば,該商品が要証期間に販売されたか否か。加えて,商品「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」が要証期間に販売されたか否か。そして,被請求人の主張及び提出に係る証拠が信ぴょう性があるか否かにある。
2 当事者双方の提出に係る乙各号証及び主張について
(1)請求人,被請求人等と大野との関係について
被請求人は,本件商標の使用を立証するものとして大野による陳述書(乙39,乙40,乙50)を提出しているところ,請求人は,大野と被請求人及び請求人との関係等を理由にその陳述は信用できない旨主張しているので以下,大野と請求人及び被請求人との関係についてみる。
被請求人「ナビ」は,平成16年3月30日に有限会社ナビを組織変更して設立した会社であって,大野は,平成23年4月9日から同年5月31日まで代表取締役であったこと,大野は,被請求人の設立時にその事業を手伝う目的で作成したとする有限会社ナビの「プロデューサー」の肩書きの名刺を所有していたこと,大野の実兄が被請求人の筆頭株主になっていることが認められる(甲8?甲11,甲21)。
また,請求人「ウインライト」は,平成15年7月23日に設立した会社であって,大野は,平成16年5月25日から平成19年1月25日まで代表取締役,同年3月22日まで取締役であったこと,そして,大野と請求人との間で「大野の請求人会社の代表取締役及び取締役退任に伴う紛争を解決し,両者が相互にその業務を妨害する事態の発生を防止することを目的」とした「合意書」が作成されていたことが認められる(甲5,甲7,甲14)。
以上の認定事実及び当事者双方の主張から,大野は被請求人と密接な関係を有するものであって,かつ,請求人との間において紛争関係にあった人物であることが認められる。
さらに,平成23年3月28日当時及び現在において,大野が「ビートワン」の代表取締役であったこと(乙24,乙39),平成23年4月20日当時及び現在において,大野が「AIRCAST」の代表取締役であったこと(乙35,乙39)からすれば,大野は「ビートワン」及び「AIRCAST」とも密接な関係を有する者であるということが言い得る。
(2)「業務用テレビゲーム機」ないし「家庭用テレビゲーム機」の使用について
ア 「ナビゲーションシステムを搭載した麻雀台」が「業務用テレビゲーム機」ないし「家庭用テレビゲーム機」に該当するか否かについて
(ア)被請求人が「業務用テレビゲーム機」に該当すると主張する「ナビゲーションシステムを搭載したとする麻雀台」(乙1,乙2)は,4人打ちタイプの麻雀台に台中央に小さなモニターが備え付けられ,ゲームの進行や自動的に点数の計算がコンピュータ化され,点数棒を移動せずに,その結果をその小さなモニターに表示する機能を有するものである。
これに対して,「業務用テレビゲーム機」ないし「家庭用テレビゲーム機」は,テレビモニターとコンピュータゲーム機本体から構成され,コンピュータゲーム機本体でゲームソフトを実行して,テレビモニターを見ながらゲームを楽しむための用途に使用されるものであり,また,「業務用テレビゲーム機」が,ゲームセンターやアミューズメントセンターで使用されるためには,課金用のコイン投入口,カード挿入口等の機能を有するものと認められる。
(イ)「ナビゲーションシステムを搭載したとする麻雀台」と「業務用テレビゲーム機」ないし「家庭用テレビゲーム機」を対比してみると,「ナビゲーションシステムを搭載したとする麻雀台」には,テレビモニターやコンピュータゲーム機本体はなく,ゲームセンターやアミューズメントセンター向けの機能である課金用のコイン投入口やカード挿入口(乙12)等の特徴も見られない。
(ウ)そうとすれば,使用に係る商品「ナビゲーションシステムを搭載した麻雀台」は,その機能,用途から,第28類「娯楽用具」に属する「麻雀台」の範ちゅうに属する商品であって,取消請求に係る第9類「業務用テレビゲーム機」ないし「家庭用テレビゲーム機」に該当するものということはできない。
しかしながら,麻雀を内容とする業務用テレビゲーム機と麻雀台がその用途において共通するものであることから,麻雀台についての使用を業務用テレビゲーム機の使用とみられる余地があるものと想定し,念のために被請求人の提出した麻雀台の使用に係る証拠についてみる。
イ 麻雀台の使用について
(ア)本件商標を付した「麻雀台」が存在していたか否か
乙1は,麻雀ナビゲーションシステムの写真として提出されているものであるが,6頁にわたり麻雀台にあるスイッチを入れることにより表示される画面によって行う麻雀ゲームの操作手順が説明されている。
また,乙2は,該麻雀ナビゲーションシステムのパンフレットとして提出されているものであるが,中央に表示画面を有する麻雀台と牌が並んだ写真が上下に2枚配されている1枚紙からなるものであるところ,これは乙1で説明されている麻雀卓の一部を写したものと認められる。
なお,乙1及び乙2のいずれにも,作成日,本件商標の表示は見当たらない。また,被請求人は,乙1及び乙2を平成23年4月に撮影したと主張しているが,撮影日,撮影者などこれに係る証拠を提出していない。
そして,請求人は,「乙1は,株式会社ジョイスの取扱に係る手打ち台『パイリーダー』の取扱説明書である」旨主張し,甲29を提出しているところ,請求人の主張のとおり,乙1と甲29は,その記載内容が一致しており,また,被請求人も陳述要領書において「平成17年ころ,訴外株式会社ジョイスは,自動点数計算システム『ジャンナビ』を備えた麻雀台『パイリーダー』を完成させ,乙1の写真に写された利用説明書を作成した。」として,これが『パイリーダー』の説明書であることを認めている。
したがって,乙1及び乙2は,要証期間に「ナビゲーションシステムを搭載した麻雀台」が存在したことを証明し得るものではない。
(イ)乙4は,「ナビのホームページ」とするものであり,会社概要の欄の「事業内容」中の「麻雀事業」に「麻雀台の開発,販売,レンタル」,「沿革」の欄には,平成15年4月に「世界初,抵抗麻雀牌役牌読み取り装置Ω開発」,同年11月に「世界初,麻雀ジャンナビ開発(麻雀のナビゲーションシステムで,麻雀牌に埋め込まれたICを読み取り,役牌の読み取りや点数計算を自動的に行う世界初の麻雀装置)」と記載されている。「ECショップ/販売・レンタル」の欄には,「ジャンナビJN01/全自動/ナビゲーションシステム台/販売価格:¥2,000,000/レンタル(1ヶ月):¥20,000/ICチップを内蔵した自動点計算ナビゲーションシステム/役牌の判定や点数計算を自動で行うシステムです。専用牌2セットが付属します。」,「ジャンナビJN02/手打ち台/販売価格:¥500,000/レンタル(1ヶ月):¥10,000/いつでもどこでも気軽に麻雀が楽しめる組立式麻雀台」の記載が認められる。
しかし,これら「ジャンナビJN01」「ジャンナビJN02」と説明された麻雀台本体に本件商標の表示は見当たらず,当該ホームページがいつ時点のものであるのか,その年月日を示す表示もない。
これに対して,被請求人は,「被請求人のホームページは,平成23年4月8日にドメインを取得し,あらかじめ制作していたWebデータを用いて3日後の同年同月11日に開設されていたものである。」と主張するところ,これを裏付けるものとして提出された証拠は,「お名前.com」のウェブサイトとメイン名取得に関する料金の請求を表示したウェブサイト(乙3)と被請求人の主張と同趣旨の内容を記載した大野による陳述(乙39)のみである。
そして,「お名前.com」のウェブサイトから分かることは,何者かが「jannavi.co.jp」及び「ジャンナビjp」なるドメイン名を申請をし,2011年4月8日にその料金の請求がなされていることを推認しうるにとどまるものであり,これによって,当該ホームページが平成23年4月11日に開設されたとの事実を立証するものではない。
また,大野による陳述もこれを裏付ける具体的な証拠の提出はなく,加えて,前記(1)認定のとおり,同人が被請求人と密接な関係にある人物であることからすれば,その陳述をもって当該ホームページが平成23年4月11日に開設されたことを認めることはできない。
(ウ)乙43は,平成24年7月13日付けの岩沢善明の記名押印のある陳述書であるが,これには平成24年6月6日にLSコミュニケーションズが麻雀店ファーストに麻雀台「ジャンナビ」を販売した旨記載され,これに添付された写真2の2には,麻雀台の横の位置に「JANNAVI」と思しき文字が表示されたプレートのようなものが貼付されていることが見て取れる。
しかし,その販売日は要証期間外であって,これをもって,要証期間に「麻雀台」が存在したことを証明し得るものではない。
(エ)以上のとおり,本件商標を付した「麻雀台」が要証期間に存在した事実は認められない。また,被請求人は,「麻雀台」が販売されたことを証明する証拠を提出していない。
したがって,被請求人の提出した上記乙各号証によっては,要証期間に本件商標を付した麻雀台が存在したこと,かつ,要証期間に本件商標を付した麻雀台が販売されたことを認めることはできない。
ウ 小括
以上のとおりであるから,被請求人が,要証期間に本件商標を付した「業務用テレビゲーム機」ないし「家庭用テレビゲーム機」の販売をしたものと認めることはできない。
(3)「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」の使用について
ア 答弁書における主張,立証について
被請求人は,答弁書において,被請求人のホームページを介して,麻雀ゲーム「ジャンナビ」をユーザーに提供,販売,レンタルしており,これは「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」に該当するものであるとの主張をし,これを立証するものとして,乙4及び乙5を提出した。
そこで,乙4及び乙5をみると,これは,被請求人のホームページであるところ,前記(2)認定のとおり,当該ホームページが平成23年4月11日に開設されたことを認めることができず,かつ,要証期間に閲覧可能な状態であったことを示す証拠もない。
加えて,被請求人は,被請求人のホームページを介して麻雀ゲームを販売したことの具体的な事実を証する書面を何ら提出していない。
したがって,被請求人が,被請求人のホームページを介し,本件商標を付した「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」を販売したことを認めることはできない。
イ 口頭審理陳述要領書及び上申書における主張,立証について
被請求人は,口頭審理陳述要領書及び上申書において,要証期間に,すずめ,LSコミュニケーションズ,AIRCAST(以下「3社」という。)との間で「麻雀ゲームジャンナビ」に関する利用契約を締結し,これに基づき本件商標が印刷されたCD-Rによって麻雀ゲームをこれら3社へ販売した。これは,商品「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」の使用にあたる旨主張し,これを証するものとして,「コンテンツの利用契約書」,「物品受領書」,「領収書(控)」,各顧客のホームページ等を提出しているので以下検討する。
(ア)すずめへの麻雀ゲームの販売について
被請求人は,「被請求人とすずめとの合意(乙21)に基づき,被請求人はすずめに対し,麻雀ゲームコンテンツ『ジャンナビ』を平成23年4月30日販売した。納品は,『ジャンナビ』『JanNavi』と記載されたCD-Rの交付によってなされた。また,販売と同時に,すずめから,被請求人に対し,3万円が支払われた。」旨主張し,乙21(コンテンツの利用契約書),乙22(物品受領書),乙23(すずめのホームページ),乙39及び乙42(陳述書),乙51(領収書(写し))を提出しているので,これらの証拠の真偽について,以下検討する。
a すずめとの麻雀ゲームの利用契約
乙21は,平成23年4月30日付けの大野を代表取締役とするナビとすずめとの間で締結された「コンテンツの利用契約書」であり,これには,被請求人とすずめが,平成23年4月30日から同年10月30日までの半年間,麻雀ゲームを貸与すること,すずめのホームページにおいて,麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」を利用したサービスの提供を行うことに合意した旨記載されている。
これらの記載から,この契約は,商品の販売に関するものではなく,商品の貸与又は役務の提供に関する契約であることが見て取れる。
b すずめとの麻雀ゲームの取引
乙22は,平成23年4月30日付けの物品受領書(No.N11043)であり,その左上に「フリー麻雀店 すずめ」,右上には,「株式会社正成 様」の記載があり,品名欄に「麻雀ジャンナビソフト貸与/平成23年5月?10月分」と記載されていることから,これは商品の貸与に係るものであって,商品の販売に係る物品受領書とはいえない。
加えて,その信ぴょう性についてみると,これは,その宛名,作成者欄の記載からすると,「すずめ」と「株式会社正成」との取引を示すものであって,ナビとすずめとの間の取引書類とは認められない。
この宛名の点に対し,被請求人は,「本来被請求人の名前が記載されるべきところに『すずめ』と記載されているのは,納品書(控),請求書,納品書を作成する際に厚紙を入れ忘れた上,これを訂正せずに,物品受領書を保管したため,また,すずめと正成はともに紺野が経営していたことから,紺野からの要望により,正成に納品した形の物品受領書を作成したものである」旨主張し,これを裏づけるものとして,被請求人の主張と同趣旨の平成24年7月8日付けの大野の署名・押印のある陳述書(乙39)と平成24年7月7日付けの紺野の署名・押印のある陳述書(乙42)を提出した。
しかしながら,物品受領書の宛名が,仮に,紺野からの要望により,すずめに代えて正成宛に作成されたものであるとしても,そもそも,ナビの名称が記載される場所に「すずめ」と記載した理由は一切述べられていない。
そして,請求人が指摘するとおり,厚紙を入れて使用する方法は,納品書(控)に記載された事項を残り3枚のフォームに複写するという本来想定されている使用方法に反し,不自然であって,また,本来「すずめ」と記載するところ,正成に納品した形の物品受領書を作成したとする弁解は,ナビと記載すべきところに「すずめ」の記載があることの弁解にはならない。
したがって,乙22をナビとすずめとの間の取引書類とは認められない。
乙51は,乙22の物品受領書に対応するものとして提出したものであって,ナビが「フリー麻雀店 すずめ」に宛てた平成23年4月30日付けの領収証(控)の写真であり,これには,「No.JN-407」「¥30,000」「麻雀ジャンナビソフトの提供及び記憶媒体の貸与として」との記載があることが見て取れるから,商品の貸与に係るものであって,商品の販売に係る物品受領書とはいえない。
そして,その写真は撮影日も撮影者も不明であって,これに写された領収証(控)が,真に平成23年4月30日に作成されたものか疑問を抱かざるを得ない。加えて,被請求人が同じ件に関する取引書類であると主張する乙22と乙51を対比すると,両者の間には「No.N11043」と「No.JN-407」の伝票番号の相違,「麻雀ジャンナビソフト貸与」と「麻雀ジャンナビソフトの提供及び記憶媒体の貸与として」の品名の相違など通常の取引書類ではあり得ないような記載の不一致があり,請求人の主張のとおり,乙51の記載内容に信ぴょう性があるものとは認められない。
また,乙22が取引書類として認められないことからしても,乙51についても同様にその作成経緯について疑問を抱かざるを得ない。
以上のとおり,被請求人とすずめとの取引を示すものは,貸与に関するものであって,商品の販売に関するものではない。加えて,前記の取引書類は,信ぴょう性のあるものとはいえない。
以上の認定事実を総合すると,被請求人がすずめに対し,麻雀ゲームを平成平成23年4月30日に販売したことを認めることはできない。
(イ)AIRCASTとの麻雀ゲームの販売について
被請求人は,「被請求人とAIRCASTとの合意(乙35)に基づき,被請求人は,AIRCASTに対し,麻雀ゲームコンテンツ『ジャンナビ』を納品した。」旨主張し,乙35(コンテンツの利用契約書),乙36(物品受領書),乙37(AIRCASTのホームページ),乙39(陳述書),乙50(陳述書),乙53(領収証(控))を提出しているので,これらの証拠の真偽について,以下検討する。
a AIRCASTとの利用契約
乙35は,平成23年4月20日付けのナビとAIRCASTとの間で締結された「コンテンツの利用契約書」であり,これには,ナビとAIRCASTは,AIRCASTのホームページにおいて,平成23年4月20日から平成23年10月20日間までの半年間,麻雀ゲームを貸与すること,麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」を提供することに合意する旨記載されている。
これらの記載から,この契約は,商品の販売に関するものではなく,商品の貸与又は役務の提供に関する契約であることが見て取れる。
b AIRCASTとの麻雀ゲームの取引
乙36は,平成23年4月20日付けの被請求人がAIRCASTに宛た物品受領書(No.N11042)であり,品名欄に「麻雀ジャンナビソフト貸与/平成23年4月20日から6ヶ月」と記載されているから,これは商品の貸与に係るものであって,商品の販売に係る物品受領書とはいえない。
乙53は,ナビがAIRCASTに宛てた平成23年4月20日付けの領収証(控)の写真であって,乙36の物品受領書に対応するものであり,これには,「No.JN-401」「¥30,000」「麻雀ジャンナビソフトの提供及び記憶媒体の貸与として」との記載があることが見て取れるから,これは,商品の貸与又は役務の提供に係るものであって,商品の販売に係る物品受領書とはいえない。
そして,その写真は撮影日も撮影者も不明であって,これに写された領収証(控)が,真に平成23年4月20日に作成されたものか疑問を抱かざるを得ない。加えて,被請求人が同じ件に関する取引書類であると主張する乙36と乙53を対比すると,両者の間には「No.N11042」と「No.JN-401」の伝票番号の相違,「麻雀ジャンナビソフト貸与」と「麻雀ジャンナビソフトの提供及び記憶媒体の貸与として」の品名の相違など通常の取引書類ではあり得ないような記載の不一致があり,請求人の主張のとおり,乙53の記載内容に信ぴょう性があるものとは認められない。
乙39は,平成24年7月8日付けの,乙50は,平成24年8月24日付けのいずれも大野の署名・押印のある陳述書であり,これらには,AIRCASTのホームページに麻雀ゲームが掲載され,麻雀ゲームが販売されたなどと陳述しているが,これを裏付ける具体的な証拠の提出はなく,加えて,前記(1)の認定のとおり,大野が被請求人及びAIRCASTと密接な関係にある人物であることからすれば,その陳述のみをもって,AIRCASTに麻雀ゲームが販売されたと認めることはできない。
以上のとおり,被請求人とAIRCASTとの取引を示すものは,貸与に関するものであって,商品の販売に関するものではない。加えて,前記の取引書類は,信ぴょう性のあるものとはいえない。
以上の認定事実を総合すると,被請求人がAIRCASTに対し,麻雀ゲームを平成23年4月20日に販売したことを認めることはできない。
(ウ)LSコミュニケーションズへの麻雀ゲームの販売について
被請求人は,「被請求人とLSコミュニケーションズとの合意(乙27)に基づき,被請求人は,LSコミュニケーションズに対し,麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」を納品した旨主張し,乙27(コンテンツの利用契約書),乙28(物品受領書),乙29(LSコミュニケーションズのホームページ),乙52(領収書(写し))の写真を提出しているので,これらの証拠について,以下検討する。
a LSコミュニケーションズとの利用契約
乙27は,平成23年5月1日付けの大野を代表取締役とするナビとLSコミュニケーションズとの間で締結された「コンテンツの利用契約書」であり,これには,平成23年5月1日から同年10月1日までの半年間,麻雀ゲームを貸与すること,LSコミュニケーションズが運営するWEBサイトに対してリンクを設定する形態により,麻雀ゲームコンテンツ「ジャンナビ」を提供することなどが記載されている。
これらの記載から,この契約は,商品の販売に関するものではなく,商品の貸与又は役務の提供に関する契約であることが見て取れる。
b LSコミュニケーションズとの麻雀ゲームの取引
乙28は,平成23年5月1日付けのナビがLSコミュニケーションズに宛てた物品受領書(No.N11051)であり,品名欄に「麻雀ジャンナビソフト貸与/平成23年5月?10月末」と記載されているから,これは,商品の貸与に係るものであって,商品の販売に係る物品受領書とはいえない。
乙52は,ナビが,LSコミュニケーションズに宛てた平成23年5月1日付けの領収証(控)の写真であって,乙28の物品受領書に対応するものであり,これには,「No.JN-501」「¥30,000」「麻雀ジャンナビソフトの提供及び記憶媒体の貸与として」との記載があることが見て取れるから,これは,商品の貸与又は役務の提供に係るものであって,商品の販売に係る物品受領書とはいえない。
そして,その写真は撮影日も撮影者も不明であって,これに写された領収証(控)が,真に平成23年5月1日に作成されたものか疑問を抱かざるを得ない。加えて,被請求人が同じ件に関する取引書類であると主張する乙28と乙52を対比すると,両者の間には「No.N11051」と「No.JN-501」の伝票番号の相違,「麻雀ジャンナビソフト貸与」と「麻雀ジャンナビソフトの提供及び記憶媒体の貸与として」の品名の相違など通常の取引書類ではあり得ないような記載の不一致があり,請求人の主張のとおり,乙52の記載内容に信ぴょう性があるものとは認められない。
以上のとおり,被請求人とLSコミュニケーションズとの取引を示すものは,貸与に関するものであって,商品の販売に関するものではない。加えて,前記の取引書類は,必ずしも信ぴょう性のあるものとはいえない。
以上の認定事実を総合すると,被請求人がLSコミュニケーションズに対し,麻雀ゲームを平成23年5月1日に販売したことを認めることはできない。
(エ)小括
以上のとおり,要証期間に被請求人が3社に麻雀ゲームを販売したと認めることはできない。
(オ)LSコミュニケーションズによるBANBAN及びNTTドコモへの麻雀ゲームの販売について
a 乙30に基づいたLSコミュニケーションズによる麻雀ゲームの販売について
被請求人は,「乙30の合意に基づき,LSコミュニケーションズがBANBANに麻雀ゲームを納品し,BANBANのホームページにおいて提供している旨主張し,乙30(ソフトウェア製品の販売に関する契約書)及び乙31(BANBANのホームページ),乙40(陳述書),乙44(販売報告書),乙47(領収書(控))を提出しているので,これらの証拠の真偽について,以下検討する。
乙30は,平成23年6月3日付けのナビとLSコミュニケーションズとの間で締結された「ソフトウェア製品の販売に関する契約書」であり,そこには,ナビが,LSコミュニケーションズに麻雀ゲームを販売する権利,本件商標を使用する権利を許諾した旨記載されていることから,被請求人がLSコミュニケーションズに対して,本件商標の使用を許諾しているものと読み取れる。
しかしながら,LSコミュニケーションズがBANBANに麻雀ゲームを販売した事実を示す書面の提出はない。
また,乙44は,平成23年7月11日付けのLSコミュニケーションズからナビに宛てた「販売報告書」であり,これには,その備考欄に「平成23年6月3日付契約『ソフトウェア製品の販売に関する契約書』に従い麻雀ゲームソフト『ジャンナビ』Web上の提供」との記載があるから,乙44の販売報告書は,乙30の契約書に基づくものと推認される。
しかしながら,これには,LSコミュニケーションズが麻雀ゲームを販売したとする相手先を示す記載はなく,これのみをもって具体的な取引が行われたと認めることはできない。
加えて,乙44の記載事項を見ると,請求人の指摘のとおり,内訳欄の項目名が「品名」,「件数」,「件数」,「支払額」となっており,「件数」の項目が二つ存在しているものであって,各項目に記載された数字から見て,二つめの「件数」は「単価」の誤りであると考えられるところであって,また,報告者の押印もないことから,この販売報告書が真正に作成されたものとにわかに認められない。また,これに対応するとして提出された乙47の領収書(控)も押印もなく,これが真に平成23年7月29日に作成されたものであるか疑問を抱かざるを得ない。
以上のとおり,前記乙号証からは要証期間に,LSコミュニケーションズがBANBANに麻雀ゲームを販売したとは認められない。
b 乙32に基づいた(NTTドコモの提供するdマーケットにおけるLSコミュニケーションズによる)麻雀ゲームの販売について
被請求人は,「被請求人とLSコミュニケーションズとの合意(乙32,乙33)に基づき,LSコミュニケーションズは,NTTドコモの提供するdマーケットにおいて,『ジャンナビ麻雀入門』を提供している。」旨主張し,乙32(販売代理店契約書),乙33(ソフトウェアライセンスに関する契約書),乙34(NTTドコモのホームページ),乙41(陳述書)を提出しているので,これらの証拠の真偽について,以下検討する。
乙32は,平成23年6月6日付けのナビとLSコミュニケーションズとの間で締結された「販売代理店契約書」であり,そこには,ナビが,LSコミュニケーションズに本件商標を表示した麻雀ゲームを販売する権利を許諾した旨記載されている。また,乙33は,平成23年7月23日付けのナビとLSコミュニケーションズとの間で締結された「ソフトウェアライセンスに関する契約書」であり,そこには,ナビが,LSコミュニケーションズに麻雀ゲーム及び商標「ジャンナビ」を独占的に使用することを許可することが記載されていることが見て取れる。
しかしながら,被請求人は,乙32及び乙33の契約に基づき,LSコミュニケーションズがNTTドコモのdマーケットにおいて麻雀ゲーム「ジャンナビ入門」が,販売された事実を証明する書面を提出していない。
そうとすると,要証期間に,LSコミュニケーションズがNTTドコモのdマーケットにおいて麻雀ゲームを販売したとは認められない。
(4)まとめ
前記第2の「本件審判請求後の手続の経緯」で記載したように,被請求人は,答弁書においては,乙1?乙9の証拠を提出したにとどまり,その後の,口頭陳述要領書及び上申書において,答弁書において提出可能であったはずの新たな取引書類等をまとめて乙10?乙58を提出した手続の経緯があること,大野が被請求人と密接な関係を有する者であって,かつ,請求人との間において紛争関係にあった者であること,さらに,大野が「ビートワン」及び「AIRCAST」とも密接な関係を有する者であるということも併せ考慮すれば,被請求人の提出した上記乙各号証には,請求人の主張のとおり,本件商標の使用実績を取り繕う目的で,後付けで作成されたものが含まれているものと疑わざるを得ない。
そして,被請求人の提出に係る全ての証拠を精査するも,取消請求に係る指定商品に本件商標の使用をしたことを認めるに足りる証拠を示すものはない。
3 むすび
以上のとおり,当事者双方の主張及びその提出に係る各号証を総合的に判断しても,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが取消請求に係る指定商品のいずれかについて,本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,請求に係る第9類「業務用テレビゲーム機,家庭用テレビゲーム機,ゲーム機(テレビジョン受像機専用のもの),コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」について取り消すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-10-25 
結審通知日 2012-10-29 
審決日 2012-12-18 
出願番号 商願2003-96408(T2003-96408) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y09)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石田 清 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 小川 きみえ
鈴木 修
登録日 2004-09-17 
登録番号 商標登録第4802600号(T4802600) 
商標の称呼 ジャンナビ、ジャン、ジェイエイエヌ、ナビ 
代理人 原 秋彦 
復代理人 山崎 岳人 
代理人 中川 直政 
代理人 粟谷 しのぶ 
代理人 中村 眞一 
代理人 一色国際特許業務法人 

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