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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X03
審判 全部無効 称呼類似 無効としない X03
管理番号 1276493 
審判番号 無効2012-680001 
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-01-31 
確定日 2013-05-08 
事件の表示 上記当事者間の国際商標登録第1044057号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1044057号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「NINA L’ELIXIR」の欧文字を書してなり、2009年11月20日に欧州連合においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、2010(平成22年)5月18日に国際商標登録出願、第3類「Bleaching preparations and other substances for laundry use;cleaning,polishing,scouring and abrasive preparations;soap;perfumery,essential oils,cosmetics,hair lotions;dentifrices.」を指定商品として、同年10月28日に登録査定され、同年12月17日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が引用する登録商標は以下のとおりであり、いずれも有効に存続しているものである。
(1)商標登録第4671440号(以下「引用商標1」という。)
商標 ELIXIR
指定商品 第3類「化粧品,せっけん類,香料類,歯磨き」
登録出願日 平成14年7月15日
設定登録日 平成15年5月16日
(2)商標登録第1822150号(以下「引用商標2」という。)
商標 「エリクシール」と「ELIXIR」を上下に二段書きしたもの
指定商品(書換登録後) 第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」
登録出願日 昭和57年3月26日
設定登録日 昭和60年11月29日
(3)商標登録第1881500号(以下「引用商標3」という。)
商標 別掲2のとおり
指定商品(書換登録後) 第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料」
登録出願日 昭和58年3月2日
設定登録日 昭和61年8月28日
これらをまとめていうときは「引用商標」という。
第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第81号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号に該当する理由
本件商標と引用商標とを対比すると、前者は「NINA L’ELIXIR」であるのに対し、引用商標の欧文字部分は「ELIXIR」であり、両者は「ELIXIR」の部分において一致しており、「NINA」及び「ELIXIR」の前に「L’」が付加されている点において相違している。
本件商標の前半部の「NINA」は、特定の意味、観念を有しない造語と理解される語であり、その欧文字綴りの発音「ニナ」は、元の出願人の名称「パルファム ニナ リッチ」の「ニナ」と称呼を同一にしている。一方、後半部の「L’ELIXIR」は、商標権者がフランス国の法人であることからすれば「ルエリクシール」と発音することを想定している表記と思われる。この「L’」の部分は、英語の「THE」に該当する定冠詞「LE(ル)」を、母音「E」の前に置くことでエリジオンが起こり母音が省略された「L’」の表記になっているものと理解できる。そして、かかるフランス語的な表記方法及びその発音は、我が国においても広く知られているところである。してみれば「L’ELIXIR」に接した需要者・取引者は、これを英語の「THE ELIXIR」と同義の語として認識するであろうと思料する。「THE」は冠詞であることより、「ELIXIR」がより強調されて認識、把握されるものである。よって「L’ELIXIR」をその欧文字綴りより「ルエリクシール」と「エリクシール」の発音を含んだ称呼を有し、同時に英語的な「THE ELIXIR」との認識を想起させているものであって、「L’ELIXIR」=「ELIXIR」と把握し、実質的に「ELIXIR」との認識が生じ、これより「エリクシール」との称呼を想起させるものと思料する。
また、フランス語を知らない者が「L’ELIXIR」に接した場合、アポストロフィ「’」の存在により、アポストロフィ「’」の前後の語が視覚的に分断されて認識、把握されるものと思料する。つまり、「L」「’」「ELIXIR」の3要素からなる語として認識され、全体として「エル エリクシール」との称呼が想起され、観念的には、符合「L’」が付された「ELIXIR」と認識、把握されるものと思料する。
このようにフランス語、英語のいずれの観点からみても、「L’ELIXIR」は「ELIXIR」若しくは符合「L’」が付された「ELIXIR」との認識が発生するものである。
しかも前述のように「NINA」と「L’ELIXIR」とは、一連の態様において二つの語が結合された特定の意味を有するものとして一連に把握される必然性を有しているものではなく、「NINA L’ELIXIR」からは、「NINA」と「L’ELIXIR」の部分とが、それぞれ分離・独立して認識され得るものである。
さらに、本件商標から「L’ELIXIR」の部分が分離され、独立して認識される蓋然性が高いものであることは、本件商標の実際の使用態様からも言い得るところである。出願時からの商標権者である「パルファム ニナ リッチ」から、商標登録後に権利を譲り受けた現在の権利者「PUIG FRANCE」は、甲第4?7号証にみられるように、本件商標を使用した商品「香水」を日本国内に販売代理店、株式会社フィッツコーポレーションを通じて販売している。当該商品には、「Nina」と「L’Elixir」とが、上下二段に分離された態様で表記されており、しかも「Nina」は、「L’Elixir」の約2倍以上の大きさで表されており、「Nina」と「L’Elixir」とは、一連とは到底言えない態様で表されている。すなわち、商標権者自身も、本件商標を「NINA L’ELIXIR」一連とは認識しておらず、「NINA」と「L’Elixir」の部分を互いに分断して認識し、分離した態様で使用しているものであることは明らかである。さらに、ニナリッチ社は、「NINA ELIXIR EAU DE PARFUM」の商標を付した商品「香水」を販売している。当該商品は、「ELIXIR」の部分において本件審判請求人の著名商標である「ELIXIR」「エリクシール」と一致しているため、日本国内では販売されていないが、インターネットを介して日本国内に紹介されており、日本国内の取引者、需要者に知られている事実がある(甲8)。このため、本件商標「NINA L’ELIXIR」を付した商品に接した日本国内の取引者、需要者は前記「NINA ELIXIR EAU DE PARFUM」のシリーズ商品と認識するであろうとは容易に推測できるところであり、「L’ELIXIR」の部分から「ELIXIR」「エリクシール」を直感するであろうことも明白である。
以上のとおり、本件商標からは、「L’ELIXIR」の部分が分離・独立して把握、認識され、「L’ELIXIR」からは、「ルエリクシール」との称呼、或いは単に「エリクシール」との称呼も生ずるものである。
引用商標は、「ELIXIR」の部分において、本件商標の「ELIXIR」と一致しており、その指定商品も本件商標と同一である。したがって、両商標に接した取引者、需要者は、「NINA」「L’」の部分に相違があったとしても、独立して把握、認識される「L’ELIXIR」の部分において称呼及び観念を同一若しくは類似とする商標であり、両者は称呼及び観念において一致し、出所の混同を生ずることは容易に想起できるところである。
よって、本件商標と引用商標とは、互いに類似するものであり、商標法第4条第1項第11号に該当し、商標登録を受けることができないものである。
2 商標法第4条第1項第15号に該当する理由
(1)商標「ELIXIR」の周知、著名性
商標「ELIXIR」は、請求人である資生堂が、1983年4月から現在まで約27年間に亘って、商品「化粧品、せっけん類、香料類」等に継続して使用してきている商標であって、重要な商品シリーズの一つであり、「化粧水、乳液、クリーム、ジェル、洗顔料、化粧用マスク、おしろい、ファンデーション、アイシャドー、アイブローペンシル、ほほ紅、口紅、アイライナー、マスカラ」等の多数の商品群で構成されている(甲9?甲19)。
1983年?2000年までの17年間における、商品の売上実績は、甲第20号証に示すとおりであり、売上金額の総計は6100億6300万円、希望小売換算額は1兆186億9000万円、売上総数量は4億450万個に達している。また、宣伝広告費用は、甲第21号証に示すとおり、発売開始前の1982年12月?1997年11月までの期間で、総額230億600万円を費やし、1993年?1997年3月までの販売促進費用は甲第22号証に示すとおり、総額37億5100万円に達している。
さらに、甲第23号証に示すとおり、2000年?2004年までのその後の5年間における総売上金額は1389億円、総希望小売換算額は1859億円、総売上数量は7325万個、総宣伝広告費用は65億4000万円、総販売促進費用は31億円であった。また、2006年?2010年度の5年間の販売総額は2472億7700万円(甲24、甲26)、販売数量は8259万7000個(甲25、甲26)に達し、甲第27号証に示すように、広告宣伝費用は、テレビによる広告費用だけでも、2006年度15億2800万円、2007年度10億3500万円、2008年度9億2800万円、2009年度8億6800万円、2010年度10億4400万であり、2006年から2010年の5年間の総額は、54億円を超えている。かくして、1983年から2010年までの27年間の総販売額は9900億円を、総販売数量は6億個を、それぞれ超えている。
資生堂は、商標「ELIXIR」「エリクシール」を付した化粧品の宣伝、広告をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌等のマスメディアはもちろんのことカタログ、パンフレット、店頭広告、ポスター、試供品の提供等種々の手段によって行ってきた。その一部を甲第9?19号証(商品力タログ)、甲第28?31号証(新聞広告)、甲第32?43号証(雑誌広告)、甲第44?50号証(広告用写真)、甲第51?56号証(ポスター用写真)、甲第57号証(商品のチラシ)、甲第58?71号証(ポスター)により立証する。さらに、2010年2月21日には、エリクシールシリーズの新ライン「エリクシール ホワイト」(甲72)が新発売され、2010年9月21日には「エリクシール シュペリェル」(甲73)がリニューアル発売されている。
以上のような長年に亘る商標の使用、多くの種類の商品の販売、多量の宣伝広告の効果等によって、少なくとも本件商標が基礎登録出願された平成21年11月には、商標「ELIXIR」「エリクシール」は資生堂が製造販売している化粧品を指称するものとして、需要者、消費者の間に広く知られ、著名となっていた商標である。そして、このように商標「ELIXIR」「エリクシール」が資生堂の商品「化粧品」を指称するものとして消費者、需要者の間において周知であったことは、AIPPI・JAPANが編纂した「日本有名商標集」(1998年発行(甲74)及び2004年発行(甲75))に掲載されていることからも明らかである。
本件商標「NINA L’ELIXIR」と資生堂の周知、著名商標「ELIXIR」とは、「ELIXIR」の部分おいて一致しており、「NINA」「L’」の有無において相違するが、「NINA」は元の商標権者の名称の一部を示していることが明確であり、また、「L’」は英語の「THE」に該当する定冠詞「LE」を、母音「E」の前に置くことでエリジオンが起こり母音が省略された「L’」の表記になっているものと容易に推測されること、若しくはアポストロフィ「’」により前後の語が視覚的に分断されて認識、把握されるものであることよりすれば、「NINA L’ELIXIR」に接した消費者、需要者は「NINA」の他に、「L’ELIXIR」から容易に認識されるであろう「ELIXIR」の部分に注目し、注意が喚起されるものであり、「NINA」と「ELIXIR」とを互いに独立して認識するであろうことは容易に推測されるものである。
したがって、本件商標は、他人の周知、著名な商標「ELIXIR」を含む商標であることは明らかであり、本件商標を資生堂と何等関係のない他人が、請求人である資生堂が取り扱っている「せっけん、香料類及び香水類、精油、化粧品、ヘアローション、歯磨き」等の商品に使用した場合、あたかも資生堂のグループ企業或いは業務上何らかの関係を有しているかの如く、出所について誤認・混同を生じさせるおそれがあるものであるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 類似性、出所の混同性の認定について
本件商標が引用商標と類似性を有していること、若しくは資生堂の周知商標と出所の混同を惹起するおそれのある商標であることは、「ELIXIR」の語を含む商標についての審査、審判の判断からも明らかであると思料する(甲76?甲81)。
4 結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号並びに同第15号に該当し、商標登録を受けることができないものである。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号に該当しない理由
(1)本件商標は、「NINA L’ELIXIR」の欧文字を同一の書体かつ同一の大きさで、構成全体としてまとまりよく横書きにしてなるものである。
なお、「NINA」と「L’ELIXIR」の欧文字の間のスペースは半角程度にすぎず、全体として一体に見えることから、我が国の需要者にとっては、「NINA L’ELIXIR」の欧文字は、構成全体として、実質的に一体のものと認識されるものである。
また、本件商標は、構成全体として、特に観念を生じるものではないものである。
つまり、以上のことからすると、本件商標は、構成全体として、特に観念を持たない一つの造語として、構成全体を一体不可分のものとして、我が国の需要者に認識されるものである。
(2)そこで、本件商標と引用商標を比較してみると、まず、称呼については、本件商標からは、その欧文字に相応して、「ニナレリクシール」の称呼が生じるものである。
ここで、本件商標中「L’ ELIXIR」の欧文字の部分については、フランス語的な表記方法を含んでいるとしても、簡易迅速を尊ぶ取引の場において、一見してその部分についてのフランス語的な表記方法及び発音が正確に認識されるほど、我が国の需要者が慣れ親しんでいる欧文字であるとも言い難いことから、我が国の需要者にとっては、より慣れ親しんでいるローマ字読みあるいは英語的な読み方で称呼するものである。
したがって、本件商標の欧文字は、既に述べたとおり、我が国の需要者にとっては、全体で一つの造語として認識されるものであるところ、我が国の需要者にとっては、より慣れ親しんでいるローマ字読みあるいは英語的な読み方で、全体を一体に「ニナレリクシール」と称呼するものである。
また、そのように一連に称呼しても、さほど冗長ではないことから、十分に一連に称呼できるものであり、これを途中で分離して読まなければならない格別の理由もないものである。
また、本件商標は、本件商標を使用した商品「香水」の我が国における販売においても、現に「ニナレリクシール」の称呼により、宣伝広告、販売されているものである(甲6、乙1?3)。
したがって、本件商標からは、「ニナレリクシール」の称呼が生じるものである。
これに対して、引用商標からは、その欧文字及び片仮名に相応して、「エリクシール」の称呼が生じるものである。
したがって、称呼において、本件商標の「ニナレ」音に対して、引用商標1ないし3の「エ」音の差異が認められるものである。
この音の差異は、称呼数自体が異なる顕著な差異であり、しかも、この差異は、称呼の識別に最も重大な要素を占める語頭音における差異である。
また、称呼がそれほど長くない両称呼においては、なおさら両称呼の全体に及ぼす影響は大きいものである。
よって、この差異により、称呼において、本件商標は引用商標とは、明らかに語調、語感を異にするものであるから、明らかに聴別できるものであり、類似しないものである。
(3)なお、請求人は、審判請求書において、本件商標からは、「L’ELIXIR」の部分が分離・独立して把握、認識され、さらに「L’ELIXIR」からは、単に「エリクシール」との称呼も生じると主張している。
しかし、既に述べたとおり、本件商標は、構成全体として、特に観念を持たない一つの造語として、構成全体を一体不可分のものとして認識されるものである。
したがって、本件商標から、「L’ELIXIR」の部分のみが分離・独立して把握、認識されることはないものである。
また、本件商標の「L’ELIXIR」の部分にしても、既に述べたとおり、「レリクシール」と称呼されるものであるから、請求人が主張する、単に「エリクシール」との称呼は生じないものである。
全体として一つの造語から成る本件商標において、「L’ELIXIR」の部分のみが分離・独立して把握、認識されるとした上で、さらにその「L’ELIXIR」の部分から「ELIXIR」の部分のみが分離・独立して把握、認識されるとするような解釈は無理があるものであり、そのように認識されるようなことはないものである。
以上、称呼において、本件商標は、引用商標とは類似しないものである。
(4)次に、本件商標と引用商標を観念において比較してみると、既に述べたとおり、本件商標は、特に観念を持たない一つの造語として認識されるものであるから、観念においては比較すべくもなく、引用商標とは類似しないものである。
また、本件商標と引用商標を外観において比較してみると、その文字の構成において顕著な差異があることから、外観においても明らかに類似しないものである。
(5)以上述べてきたように、本件商標は、引用商標とは、称呼、観念、外観のいずれにおいても類似しないものであるから、商標法第4条第1項第11号には該当しないものである。
2 商標法第4条第1項第15号に該当しない理由
(1)請求人は、本件商標は、資生堂が製造、販売する商品「化粧品」を指称する商標として需要者、消費者の間において周知、著名である「ELIXIR」と同一の部分を含むから、本件商標権者が「化粧品」等に使用した場合、出所について誤認混同を生じさせるおそれがある旨を主張している。
しかし、本件商標は、既に述べたとおり、全体として一つの造語であり、引用商標とは類似しないものである。言い換えれば、本件商標は、商標「ELIXIR」とは十分に識別できる別異の商標である。
したがって、たとえ商標「ELIXIR」が、資生堂が製造、販売する商品「化粧品」を指称する商標として需要者の間において周知、著名であったとしても、本件商標を「化粧品」等の商品に使用した場合、資生堂のグループ企業或いは業務上何等かの関係を有しているかのごとくに、出所について誤認・混同を生じさせるおそれはないものである。
(2)なお、請求人が言及している特許庁商標審査部、審判部の判断については、「ELIXIR(Elixir)又は「エリクシル」と同一の単語を、単独の単語として含む商標についての判断であるから、本件とは事案を異にするものである。
(3)以上述べたように、本件商標は、出所について誤認・混同を生じさせるおそれはないものであるから、商標法第4条第1項第15号には該当しないものである。
3 結び
以上述べてきたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号には該当しないものである。
第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、「NINA」の文字と「L’ELIXIR」の文字よりなるものであるが、上記各文字は同じ大きさ、同じ書体で等間隔で表されているものであって、両者の間も半角程度の空白にすぎず、構成全体がまとまりよく一体的に表されてなるものである。
そして、「NINA」及び「L’ELIXIR」は、いずれも特段の意味を有する成語とは認められないから、本件商標は、構成全体として一種の造語と理解されるものであり、「ニナレリクシール」の称呼を生じ、特段の観念を生じないものといえる。
請求人は、「L’ELIXIR」の部分は、「L’」の部分がフランス語の冠詞「Le」の省略表記として理解され、「ELIXIR」がより強調されて認識、把握され、実質的に「ELIXIR」との認識を生じ、これより「エリクシール」の称呼を想起し、また、フランス語を知らない者は、アポストロフィ「’」の存在により、その前後の語が視覚的に分断され、全体的には「エル エリクシール」との称呼が想起され、観念的には符号「L’」が付された「ELIXIR」と認識、把握される旨主張し、また、ニナリッチ社の「NINA ELIXIR EAU DE PARFUM」の商標を付した商品「香水」は日本国内では販売されていないが、インターネットを介して日本国内に紹介されており、日本国内の取引者、需要者に知られているため、本件商標を付した商品に接した日本国内の取引者、需要者は前記商品のシリーズ商品と認識するであろうことは容易に推測できるところであり、「L’ELIXIR」の部分から「ELIXIR」「エリクシール」を直感する旨主張している。
しかしながら、「NINA」の部分が「パルファム ニナ リッチ」の一部であるとしても、本件商標は、その構成がまとまりよく一体に表されているものであり、また、請求人の挙げる商品が存在するとしても、その商品の商標は、本件商標とは異なるものであるから、その商品の存在をもって、本件商標から「ELIXIR」の部分のみを抽出して認識するとはいえないし、むしろ、商標権者は、「NINA」の文字と「L’ELIXIR」の文字を二段に標記した商標を使用する商品について、その片仮名表記を「ニナ レリクシール」とし、「ニナレリクシール」の称呼をもって取引していることが認められる(甲6、乙1?乙3)ことからすれば、本件商標の「L’ELIXIR」の部分は、「レリクシール」と発音する一体の語として認識されるというべきである。
(2)引用商標
引用商標1及び3は、いずれも「ELIXIR」の欧文字よりなるものであり、引用商標2は、「ELIXIR」とその片仮名表記と認められる「エリクシール」を上段にして二段に書してなるものである。
そして、「ELIXIR」は、「錬金薬、万能薬」(株式会社研究社 新英和中辞典)を意味する英語であるが、同様の意味を有し、「エリクシール」と発音されるフランス語(なお、正確には第1文字目の「E」にはアクサンテギュがあるが、アクサンテギュは、フランス語において誤解を招くおそれがない場合は省略されることが多い。)の成語であると認められるから、引用商標は、「エリクシール」の称呼を生じ、上記意味合いの観念を生ずるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標は、その構成中に「ELIXIR」の文字を有するものの、「NINA」等の文字を有するものであるから、引用商標とは、外観上、明らかに区別できるものである。
また、本件商標から生ずる「ニナレリクシール」の称呼と引用商標から生ずる「エリクシール」の称呼とは、構成音数、音構成において明らかな差異を有するものであり、明確に聴別され、相紛れるおそれがないものである。
さらに、本件商標は、格別の観念を生じないから、引用商標とは観念において比較することはできない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。そして他に、前記の判断を左右するような取引の実情も見当たらない。
(4)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標と類似する商標ではないから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性
(1)請求人商標の著名性及び独創性
請求人の提出した証拠によれば、商標「ELIXIR」(以下「請求人商標」という。)は、資生堂(請求人)が1983年から化粧品に使用する商標であり、当該商品の店頭売上小売金額は、は、年500億円(2006?2010年度)を上回るものであり、また、テレビによる広告も2006?2010年度の5年間で総額54億円の広告費であるなど、宣伝広告がおう盛に行われたことが認められ(甲9?甲73)、請求人商標は、本件商標に係る優先権主張の原商標登録出願の出願時及び本件商標の登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。
一方、「ELIXIR」の文字は、「錬金薬、霊薬、万能薬」の意味を有する英語であるが、同様の意味を有し、「エリクシール」と発音されるフランス語(なお、正確には第1文字目の「E」にはアクサンテギュあるがフランス語において誤解を招くおそれがない場合は省略されることが多い。)の成語であると認められる。
(2)本件商標と引用商標の類似性
本件商標は、その構成中に「ELIXIR」の文字列を有するものであるが、該文字部分は、「L’ELIXIR」の部分の一部であり、引用商標とは、その構成上、前記のとおり非類似の商標といえるものである。
(3)出所の混同のおそれ
以上のとおり、請求人商標は、請求人が化粧品に使用する商標として需要者間に広く認識さてていると認め得るとしても、「ELIXIR」の語は、「霊薬、万能薬」等を意味する成語であって、独創性が強いとまでは言い難いものであり、本件商標は、その構成中に「ELIXIR」の文字を含むものであるとしても、前記のとおり、構成全体がまとまりよく一体的に表されているものであって、構成上、当該文字部分のみが印象付けられるものともいえず、引用商標とは、外観、称呼、観念が相違する非類似の商標であることからすると、本件指定商品と請求人商標を使用する商品が共通し取引者及び需要者が共通することを考慮しても、本件商標をその指定商品に使用した場合に、これに接する取引者、需要者は、請求人又は請求人商標を連想、想起するようなことはなく,該商品が請求人又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
(4)小括
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別記】


審理終結日 2012-08-03 
結審通知日 2012-08-09 
審決日 2012-08-22 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (X03)
T 1 11・ 271- Y (X03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 津金 純子 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 豊瀬 京太郎
堀内 仁子
登録日 2010-05-18 
商標の称呼 ニナレリクシール、ニナレリクサー、ニナ、ニーナ、レリクサー、エリクサー、エリクシール、エリキシール 
代理人 橋本 良樹 
代理人 岡部 讓 
代理人 幡 茂良 
代理人 潮崎 宗 
代理人 吉田 親司 
代理人 田中 尚文 
代理人 蔵田 昌俊 
代理人 小出 俊實 
代理人 石川 義雄 

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