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審判番号(事件番号) データベース 権利
取消2012300461 審決 商標
取消2011300680 審決 商標
取消2012300825 審決 商標

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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y25
審判 一部取消 商標の同一性 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y25
管理番号 1276459 
審判番号 取消2011-300367 
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-04-12 
確定日 2013-07-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4894428号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成24年6月29日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成24年(行ケ)第10382号平成25年3月21日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第4894428号商標の指定商品中、第25類「履物」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4894428号商標(以下「本件商標」という。)は、「rhythm」の文字を横書きしてなり、平成17年3月7日に登録出願され、第25類「履物,乗馬靴」を指定商品として、同年9月16日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録の日は、平成23年4月27日である。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第25類「履物」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第25類「履物」について、今日に至るまで3年以上、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないことは、請求人の調査により明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録の取消しを免れないものである。
2 弁駁の理由
(1)商標の使用について
ア 被請求人は、乙第3号証ないし乙第8号証(いずれも枝番を含む。)を提出し、使用に係る標章の態様を説明しており、これらの乙各号証においては、「NEORHYTHM」(ネオリズム)又は「NEO RHYTHM」(ネオ リズム)の文字からなる標章、及び「NEO」の文字にややデザインを施した「NEORHYTHM」の文字からなる標章(以下、これらをまとめて「使用商標」ということがある。)が確認できる。
イ 乙第3号証は、婦人靴、靴箱、靴箱の蓋、値札及び店舗の写真であり、このうち、日付が確認できるものは、靴箱の蓋の写真(乙3の1)のみであるが、該靴箱の蓋が、他の写真に表される婦人靴の靴箱に係る蓋であるかを把握することはできず、これをもって、本件商標の使用時期が証明されたということはできない。また、婦人靴・店舗写真の一部(乙3の3・4)においては、使用商標が不明瞭で読み取れないものが含まれ、これらの証拠によって本件商標の使用は、一切証明されていない。さらに、同号証に係る写真の撮影時期は全て不明であり、そのうち店舗写真については、被請求人は撮影時期を2010年3月及び9月と主張するが、その撮影時期を証明する資料は提出されていない。
よって、乙第3号証では、本件商標が、本件審判請求の登録前3年以内に使用された事実は、一切証明されていない。
ウ 乙第4号証は、納品伝票であるが、乙第4号証の3に係る伝票においては、被請求人の主張する品番と伝票記載の番号が一致しておらず、したがって、該証拠からは、本件商標が使用された事実は証明されていない。
エ 乙第8号証は、被請求人の開催する展示会の案内状の写真及び版下の写しであるが、実際に展示会が開催されたかが不明であるし、そもそも同号証に係る案内状が実際に印刷・頒布されたかどうかも不明である。
よって、乙第8号証では、本件商標が使用された事実は一切証明されていない。
(2)使用商標と本件商標との同一性について
ア 被請求人は、使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標であり、本件商標が本件審判請求の登録前3年以内に使用されていた旨を主張する。
しかしながら、「NEO RHYTHM」の商標を含む上記使用商標は、商標法第50条第1項に規定されている「登録商標と社会通念上同一と認められる商標」には該当しない。
イ 使用商標は、上述のとおり、多少書体にデザインが施されているものはあるものの、いずれも「NEORHYTHM」(ネオリズム)又は「NEO RHYTHM」(ネオリズム)の文字からなり、該構成からは、一連に「ネオリズム」の称呼、「新しいリズム」又は「新しい調子」といった観念が生じる。
他方、本件商標は、「rhythm」の文字からなり、該構成から「リズム」の称呼が生じ、「リズム」又は「調子」の観念が生じる。
ウ 使用商標と本件商標とを比較すると、使用商標に含まれる「NEO」の文字によって、a)書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、b)平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、c)外観において同視される図形からなる商標、のいずれにも該当しないことは明らかである。特に、観念については、被請求人が答弁書で述べているように、使用商標からは「新しいリズム」又は「新しい調子」といった観念が生じ、本件商標「rhythm」から生じる「リズム」又は「調子」の観念とは別異のものである。
さらに、審判便覧53-01には登録商標と社会通念上同一と認められる商標として、上記a)ないしc)に加え、d)その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標の例を挙げている。具体的には、「称呼及び観念を同一とする場合の平仮名及び片仮名と漢字の相互間の使用」、「登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用」、「縦書きによる表示態様とこれに対応すると認められる左横書き又は右横書き(ローマ字にあっては、右横書きを除く)による表示態様の相互間の使用」が挙げられているが、被請求人が主張する使用商標はこれらの例に該当しない。
エ 被請求人は、「使用商標『NEO RHYTHM』は『NEO』を除いた『RHYTHM』の文字部分が要部であって、本件商標の欧文字の小文字を大文字に変更したにすぎないから、使用商標と本件商標とは、社会通念上同一の商標と認められる」旨述べ、その根拠として商標の類否判断の手法に言及している。
しかしながら、そもそも、被請求人が述べる商標の類否判断の手法は、商標法第4条第1項第11号における商標の類否を考察する際に用いるものであり、本件において問題となっている同法第50条第1項に規定する「登録商標と社会通念上同一と認められる商標」に該当するか否かの判断基準とは別異のものであり、かかる被請求人の答弁は失当である。
また、上述のとおり、使用商標の態様において、「NEO(新しい)」の語は、「RHYTHM(リズム、調子)」を修飾するために用いられていることは明らかであり、被請求人も自認するところであるから、当該語が商品の内容を表示する記述的な用語であるということは決してできない。
オ 使用商標の各使用態様を検討するに、乙第5号証ないし乙第7号証に係る新聞・雑誌等の広告記事においては、使用商標が「リズム」と略称されることなく、常に「ネオリズム」と使用されている。仮に「ネオリズム」が、商品「リズム」の新商品として販売されるのであれば、記事中で「リズム」と記載されるか、「リズムシリーズの新商品」程度の紹介がされるのが自然である。
よって、「ネオリズム」は、「リズム」シリーズの新商品であることを表わすために用いられる標章ではなく、被請求人の固有のブランドであると理解するのが相当である。また、上記乙各号証に係る記事においては、「二〇〇四年秋から販売している機能性パンプス『ネオリズム』が息の長いヒットを続けている」(乙5の1)「『ネオリズム』というブランド」(乙5の3)、「ネオリズムは04年に販売開始」(乙6の2)、等の表現が用いられており、かかる記載からも、「ネオリズム」は「リズム」の新商品でなく、被請求人の固有のブランドであると理解するのが自然である。該書証に係る広告記事において、婦人靴「ネオリズム」の紹介記事とともに、婦人靴「ネオリズムスポーツ」が紹介されており、かかる使用態様からは、「ネオリズムスポーツ」は「ネオリズム」ブランドのシリーズであることが理解され、よって、かかる観点からも「ネオリズム」は「リズム」の新商品でなく、被請求人の固有のブランドと理解するのが相当である。
さらに、乙第5号証の2及び乙第7号証に係る雑誌の商品紹介ページでは、婦人靴「ネオリズム」が、「ジル・スチュアート」、「ツモリチサト・ウォーク」、「コールハーン」、「ワシントン」、「アンテプリマ」、「ナチュラルビューティー」、「自由区」等の多数の他ブランドと同列に紹介されているが、かかる使用態様において、「NEO」又は「ネオ」部分が新商品を表すために用いられていると認識されないことは明らかである。
カ 過去の審判例では、使用商標が、登録商標に識別力の弱い語を付した構成の場合であっても、登録商標に係る文字部分のみを分離抽出することなく、使用商標全体を一連一体と捉え、登録商標と社会通念上同一の商標の使用であるとは認められないとした事案がある(甲3,甲4)。
本件についても、使用商標「NEORHYTHM」、「NEO RHYTHM」及び「ネオリズム」は、まとまりよく一連一体に表示されており、本件商標「rhythm」と明らかに構成態様を異にする。また、上述のとおり、本件指定商品の分野において「ネオ、NEO」の語が新製品であることを表示するために普通に用いられている事実はなく、実際の使用態様からも、使用商標に接する需要者等はこれを一連一体と認識・把握することは明らかである。さらには、後述のとおり、使用商標の態様において、「NEO」にデザインが施されているからといって、「RHYTHM」部分のみを分離抽出する特段の事情もなく、よって、上記審決と同様に、使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標と理解すべき合理的理由は存在しない。
キ 被請求人は、「使用商標の構成中、『NEO』の部分が文字の輪郭を実線で表した一般に『白抜き』と呼ばれる方法により表示しているのに対し、『RHYTHM』の部分は、文字全体を塗りつぶした方法で表示し、両欧文字部分の視覚的コントラストを呈し、これにより、需要者等は、『NEO』の文字部分よりも目立って認識できる『RHYTHM』の文字部分に着目するため、『RHYTHM』部分が自他商品識別標識と捉えられ、使用商標中の『NEO』と『RHYTHM』とが結合一体として認識されるものではない。」旨主張する。
この点、「白抜きであるから目立たず、色が塗りつぶされているから目立つ」という被請求人の主張については、全く理解することができない。白抜きの文字は、背景色、また、文字を塗りつぶす色によって、いずれの文字部分が目立って看取されるかは変わり、被請求人の主張とは逆に、場合によっては白抜きの文字部分が、色が塗りつぶされた文字部分と同程度に注意を惹くこともある。例えば、乙第3号証の2で示された使用態様においては、靴の中敷の地色の茶色に溶け込むかのように「RHYTHM」の文字が描かれ、縁取りされた「NEO」の文字は、「RHYTHM」の文字と同程度に注意を惹くかの如く印象を受ける。また、乙第3号証の4で示された販売店舗の写真では、「NEO」と思しき文字が黒色でしっかりと縁取られ、やや青味がかった色の壁から白抜きのかかる「NEO」と思しき文字が浮かび上がるようにくっきりと看取され、「RHYTHM」の文字が「NEO」と比して格別目立っているとする理由はない。このように、種々の使用態様が存在する以上、被請求人の主張するように、「RHYTHM」の文字が、一概に格別目立って認識され、自他商品識別標識と捉えられるとは到底いえないことは明らかである。
そもそも、「NEO」には上記のようなデザインが施されているのであるから、これを商品の品質等を「普通に用いられる方法で表示する」語ということはできず、当該部分が自他商品識別力を発揮しないとすべき理由は存在しない。
なお、被請求人は、婦人靴「ネオリズム」に関する広告での使用態様を例に挙げ(乙第6号証の1)、「『RHYTHM』の文字部分に視覚的強いインパクトをもって広告していたことが明らかである」と述べている。しかしながら、当該使用商標は、構成文字を、地色を表すよう縁取りしたフォント及び白塗りのフォントからなるものの、各文字の書体は同一であり、各文字の間に一文字分のスペースを空け等間隔に表わし、しかも「NEORHYTHM」の中心が該広告の真ん中に位置するよう左右にバランス良く配置されているから、当該使用商標を見た需要者等が、「NEO」を捨象し「RHYTHM」の文字が格別目立って認識され自他商品識別標識と捉え、当該部分のみをもって取引に当たるとすべき理由はない。
ク 以上述べたとおり、使用商標は、その構成及び使用態様より一連一体として認識・把握されるものであり、「RHYTHM」部分が要部として分離抽出されるとはいい難く、かかる使用商標が本件商標と社会通念上同一の商標とは到底いえない。
したがって、被請求人が本件商標の使用の事実を立証するために提出した乙第3号証ないし乙第8号証によっては、本件商標の使用の事実は一切証明されていない。
(3)登録商標「neorhythm」及び「neo rhythm」について
ア 被請求人は、2004年3月1日付けで、指定商品「履物,被服,ベルト,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」(第25類)について、商標「neorhythm」を出願し、その後、指定商品を「履物」に補正し登録を受けている(甲5)。さらに、本件商標の出願日と同日の2005年3月7日付けで、本件商標に係る指定商品と同一の指定商品「履物、乗馬靴」(第25類)について、商標「neo rhythm」を出願し登録を受けている(甲6)。また、乙第5号証の1及び乙第6号証の2によると、被請求人の販売する婦人靴「ネオリズム」は、2004年より販売を開始されている事実が確認できる。
イ これら事実を総合的に鑑みるに、被請求人が、被請求人の販売する婦人靴について、「rhythm」の名称ではなく「neorhythm」又は「neo rhythm」という名称の使用を意図して、該婦人靴販売開始年の2004年に商標「neorhythm」を出願、さらに翌年2005年に商標「neo rhythm」を出願したことは想像に難くない。
そうすると、使用商標は、登録商標「neorhythm」又は「neo rhythm」についての使用であると被請求人も認識しているとして差し支えない。このことは、被請求人が、2004年に「neorhythm」を最初に出願した後に、さらに本件商標「rhythm」を出願していることからも明らかである。とすれば、使用商標の使用を本件商標の使用の根拠とする被請求人の主張は、使用の実態と矛盾しており、被請求人の答弁は失当である。
ウ 商標法上の保護は、商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるのが本来的な姿であるところ、商標法第50条所定の登録商標の不使用取消審判制度の趣旨は、一定期間登録商標の使用をしない場合には、そのような信用が発生しないか、又は消滅してその保護すべき対象がなくなること及び不使用に係る登録商標に対して排他的独占的な権利を与えておく理由はなく、かつ、その存在により商標使用を希望する第三者の商標選択の余地を狭めることから、そのような商標登録を取り消すことにあると解される。
上述のとおり、被請求人は、「neorhythm」及び「neo rhythm」の登録商標を有し、該登録商標と同一又は類似の標章を使用している。かかる状況下で、被請求人の当該標章の使用によって信用が蓄積されてきたのは、本件商標「rhythm」ではなく「neorhythm」及び「neo rhythm」の登録商標であることは想像に難くなく、よって、保護すべき信用が発生していない本件商標の登録の維持を認めることは、上記不使用取消審判制度の趣旨にも反する。
(4)結語
以上のとおり、被請求人が提出した証拠によっては、本件商標が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において使用されていた事実は一切証明されておらず、かつ、不使用についても正当理由が存在することは明らかにされていないのであるから、本件商標の登録は、その不使用を理由とする取消しを免れないものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証(枝番を含む。)を提出している。
1 はじめに
被請求人は、本件審判の請求に係る指定商品に含まれる商品「婦人靴」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内で使用していた。
よって、本件商標は、請求に係る指定商品についての登録を取り消されるべきでない。
2 使用の事実について
(1)被請求人(商標権者)について
被請求人(商標権者)は、昭和27年5月17日に創立された皮革婦人靴の販売を目的とする会社であり、全国の百貨店と専門店を主な販売先として営業している。被請求人の概要は、乙第2号証の1のとおりであり、また、被請求人の2008年ないし2009年度における売上高は、東京都千代田区岩本町在の「株式会社ポスティコーポレーション」が発行した2010年(平成22年)1月5日付けの履物業界紙「シューズポスト」(乙2の2)に掲載されているとおり、175.6億円であって、被請求人は当業界で我が国3指に入る会社である。
なお、本件商標は、被請求人が取り扱う国内外の有名ブランドとともに人気オリジナルブランドである。
(2)乙第3号証ないし乙第8号証について
被請求人は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「NEO RHYTHM」を付した中敷及び靴底を備えた「婦人靴」を2004年から現在に至るまで継続して販売している。
なお、商品「婦人靴」は、第25類「履物」に含まれる商品である。
ア 乙第3号証は、被請求人が販売している婦人靴、靴函、値札及び店舗の写真である。
まず、乙第3号証の1は、婦人靴の中敷・靴底、靴函の上面・側面には「NEO RHYTHM」の文字が表示され、靴函の側面には品番「8701」の記号が表示され、靴函の上蓋の裏面には商品の品質を検査したことを表示する検査日「22.9.08」入りの検印が押され、値札には品名を表す「NEORHYTHM」又は「NE」、品番「8701」、カラー、サイズ、税込価格、本体価格等を表示している。これにより品番「8701」を記載し販売していたことがわかる。
なお、2種類ある値札のうち、前者は神奈川県川崎市・藤沢市・横須賀市に店舗のある「さいか屋」用のものであり、後者は「MITSUKOSHI」の表示が認められることからわかるように全国に店舗のある「三越」用のものである。
次に、乙第3号証の2は、婦人靴の中敷・靴底、靴函の上面・側面には「NEO RHYTHM」の文字が表示され、婦人靴の靴ひもの裏面には品番「3020」及びサイズ「24 1/2」の記号が表示され、靴函の側面には品番「3020」の記号が表示され、靴函の上蓋の裏面には商品の品質を検査したことを表示する検査日「09.2.27」入りの検印が押され、値札には品名を表す「NEORHYTHM」又は「NE」、品番「3020」、カラー、サイズ、税込価格、本体価格等を表示している。これにより品番「3020」を記載し販売していたことが明らかである。
なお、2種類ある値札のうち、前者は上記「さいか屋」用のものであり、後者は「三越」用のものである。
さらに、乙第3号証の3は、被請求人が販売している婦人靴のうち、商品ブランドとして「ネオリズム」を称するその他の商品写真及び品番を例示列挙したものである。中敷に「NEO RHYTHM」の文字が表示されている(但し、品番「4601」を除く)。各商品の品番「4729」、「8114」、「3065」、「8113」、「8204」及び「4601」は、前記乙第3号証の1及び2の値札(複数の値札が写っている写真)に記載されている記号(4桁の数字)と、上段左から3番目の値札から右に、そして下段の左から右に順番に対応している。つまり、対応する記号が記載されている値札はこれらの商品用として作成されたものである。これにより、被請求人は、品番を記載した値札を付けて販売していたことが明らかである。
加えて、乙第3号証の4は、被請求人が婦人靴を販売している売り場の写真である。商品陳列棚の上方の壁面に「NEO RHYTHM」の文字が表示されていることが明らかである。
なお、2種類ある店舗写真のうち、前者は平成22年(2010年)3月に東京都大田区西蒲田所在の「グランデュオ蒲田」の売り場において、後者は平成22年(2010年)9月に神奈川県小田原市中里所在の「ロビンソン小田原店」の売り場において、それぞれ株式会社オギツ営業第3部次長の田畑広志によって撮影されたものである。
イ 乙第4号証は、被請求人が得意先の百貨店に対して当該商標を記した上記品番「8701」又は「3020」に係る婦人靴を出荷した際の納品伝票の写しである。
まず、乙第4号証の1は、平成21年(2009年)1月19日から同年5月11日までに被請求人が愛知県名古屋市中区栄所在の「松坂屋 名古屋店」に対して当該商標を記した上記品番に係る婦人靴を出荷し納品した際の納品伝票の写しである。当該納品伝票には納品元の名称及び住所をはじめ、納品先「ナゴヤ マツザカヤ様」、品番「8701」又は「3020」、売買単価、納品年月日等が記載されている。
次に、乙第4号証の2は、平成21年(2009年)2月27日から同年3月24日までに被請求人が岡山県岡山市北区本町所在の「高島屋岡山店」に対して当該商標を記した上記品番に係る婦人靴を出荷し納品した際の納品伝票の写しである。当該納品伝票には納品元の名称及び住所、納品先「オカヤマ タカシマヤ様」、品番「8701」又は「3020」、売買単価、納品年月日等が記載されている。
上記品番「8701」は売買単価「16800」であり、品番「3020」は売買単価「14800」と対応していて、前記乙第3号証の1及び2の値札(1枚の値札が写っている写真)に記載されている品番記号(4桁の数字)及び本体価格と一致している。
さらに、乙第4号証の3は、平成21年(2009年)7月16日から同年11月11日までに被請求人が東京都中央区銀座所在の「三越銀座店」に対して当該商標を記した上記品番に係る婦人靴を出荷し納品した際の納品伝票の写しである。当該納品伝票には納品先「三越銀座店」、納品元「株式会社オギツ」、品番「8701」又は「3020」に係る商品を表す品名「婦人靴NEパンプス」、前記乙第3号証の1及び2の「三越」用の値札に記載されている本体価格と一致する売単価「16,800」(品番「8701」)又は「14,800」(品番3020)及び、納品年月日等が記載されている。
これらにより、当該商標が使用されていたことが明らかである。
ウ 乙第5号証は、被請求人の婦人靴「ネオリズム」に関する記事等が掲載された新聞の写しである。
まず、乙第5号証の1は、2008年(平成20年)11月12日付けの新聞「日経MJ」の写しである。左下のコラム「ヒットのヒミツ」には、婦人靴の写真とともに、「婦人靴卸大手のオギツ(東京・台東)が二〇〇四年秋から販売している機能性パンプス『ネオリズム』が息の長いヒットを続けている。」という記載が認められる。
次に、乙第5号証の2は、2010年(平成22年)3月19日付け「繊研新聞」の写しである。「10年晩夏・初秋婦人靴」という網掛け白抜きの見出し、「エナメルと生地を組み合わせた涼しげなオープントウパンプスを出すのは、『ネオリズム』(オギツ)。メタリックレザーのドット柄リボンが可愛らしい。1万5800円」の記事及び商品写真の掲載が認められる。商品写真の中敷には当該商標の一部が写っている。
さらに、乙第5号証の3は、2010年(平成22年)5月30日付け「讀賣新聞」の写しである。「洗練 機能性パンプス」の記事の上から3段目には「三越でも、機能性パンプスの売り上げは好調だ。中敷きの下に低反発クッションを敷いたオギツ(東京)の『ネオリズム』というブランドのパンプスや、・・・(中略)・・・の売り上げが、前年比で1割増えた店舗もある。」の記載が認められる。
加えて、乙第5号証の4は、2010年(平成22年)11月29日付けの新聞「繊研新聞」の写しである。第11頁の「広告特集」面には、紙面の1/4を使って被請求人の商品「ネオリズム」の広告が掲載されており、6種の商品写真と共に「婦人靴卸オギツ(東京)の大人の女性に向けた、エレガントで履き心地の良い機能を搭載した『ネオリズム』と上品なカジュアル『ネオリズムスポーツ』。11年春夏は、トレンドを取り入れながら、美しいフォルムとより優れた快適性を両立させたシューズが充実する。」との紹介記事、「NEO RHYTHM/ネオリズム」及び「NEO RHYTHM SPORT/ネオリズムスポーツ」の商品名とその紹介記事、被請求人の名称の一部と連絡先の電話番号とURLの記載が認められる。
これらにより、当該商標が使用されていたことが明らかである。
エ 乙第6号証は、被請求人の婦人靴「ネオリズム」に関する記事・広告が掲載された情報紙又は業界誌である。
まず、乙第6号証の1は、2009年(平成21年)6月8日付けのファッション情報紙「senken h(センケンアッシュ)for BIZ FASHION GOODS vol.18」の写し(表紙・第3頁・最終頁)である。当紙は「繊研新聞社」が発行するタブロイド版の月刊紙であるが、最終頁の全紙面を使って商品「NEO RHYTHM」の広告がされている。
すなわち、薄い灰色を紙面全体の背景色として、それぞれ色彩の異なる3種の女性用ロングブーツの片方1足計3本が一部重なるように印刷され、さらにその上に「NEO RHYTHM」の文字が印字されている。
前記「NEO RHYTHM」の文字は、「NEO」の文字部分が、文字の輪郭を背景色よりも濃い灰色の実線で縁取られており、その輪郭の実線で囲まれた内側の色彩を背景色と同じ薄い灰色としている。
一方、「RHYTHM」の文字部分は文字全体を白色としている。広告の背景全体、3本のロングブーツ及び「NEO」の文字部分がすべて灰色から黒色を基調とした暗い色彩を採用しているため広告紙面の全体が薄暗い中で、「RHYTHM」の文字部分だけが白色を採用しているため、「NEORHYTHM」の「RHYTHM」の文字部分が際立って表示されている。 そして、紙面の下部右隅にやや青みがかった色彩で、被請求人株式会社オギツのコーポレートブランド「OGITSU」が表示され、その下に、被請求人の名称・住所・郵便番号・電話番号・ファクシミリ番号・ホームページURLの情報が英字で記載されている。
これにより、被請求人は当該商標を「RHYTHM」の文字部分に視覚的に強いインパクトをもって広告していたことが明らかである。
次に、乙第6号証の2は、2010年(平成22年)7月1日付けで「エフ ワークス株式会社」から発行されたファッション雑貨業界専門誌「フットウェア・プレス」の写し(表紙・第63頁・裏表紙)である。
同誌の第63頁の中段には、米国の足病医が開発した靴の中敷商品が、日本の「婦人靴卸オギツ」の商品「ネオリズム」の構成部材中に2010年の秋から素材として採用されることが決まった事実に関する記事が掲載され、その記事の右側には、「ネオリズム」の新製品の写真が販売価格「¥15,000」とともに掲載されている。そして、その新製品の靴の中敷には当該商標の一部が写っていることが視認できる。これにより当該商標が使用されていたことが明らかである。
オ 乙第7号証は、被請求人の婦人靴「ネオリズム」に関する記事が掲載された雑誌の抜粋写しである。
乙第7号証の1は、株式会社講談社2008年発行の雑誌「with(9月号)」であり、同誌の第64頁には商品の写真(商品番号「09」)、販売価格、「ネオリズム(オギツ)」の記載が認められる。
乙第7号証の2は、株式会社集英社2008年発行の雑誌「Seventeen(11月号)」であり、同誌の第25頁には商品の写真(コーディネート番号「25」)、販売価格、「(ネオリズム)/オギツ」の記載が認められる。
乙第7号証の3は、株式会社講談社2008年発行の雑誌「Style(11月号)」であり、同誌には商品の写真(商品番号「71」)、販売価格、「ネオリズム(オギツ)」の記載が認められる。
乙第7号証の4は、株式会社主婦の友社2009年2月1日発行の雑誌「COMO(2月号)」であり、同誌には商品の写真(左側のモデルが着用しているブーツ)、販売価格、「NEO RHYTHM(オギツ)」の記載が認められる。
乙第7号証の5は、株式会社講談社2009年3月1日発行の雑誌「with(3月号)」であり、同誌には商品の写真(商品番号「14」)、販売価格、「ネオリズム(オギツ)」の記載が認められる。
乙第7号証の6は、株式会社集英社2009年発行の雑誌「BAILA(3月号)」であり、同誌の第126・129・131頁の各頁には商品の写真、販売価格、「ネオリズム(オギツ)」の記載が認められる。第126頁の商品写真は、靴の中敷には当該商標の一部が写っていることが視認できる。第129頁の商品写真は、靴の中敷には当該商標の一部が写っていることに加えて靴の裏の部分に当該商標が写っていることが視認できる。第131頁の商品写真の右下には、販売価格、「オギツ(ネオリズム)」の記載が認められる。
これらにより、当該商標が使用されていたことが明らかである。
カ 乙第8号証は、被請求人が開催する新商品の展示会について、お得意先の百貨店・専門店・雑誌社等にシーズン毎に頒布する案内状の写真及び版下の写しである。
乙第8号証の1ないし3は、東京会場において、2008年10月21日から24日にかけて開催された「2009年春夏コレクション」用の、2009年4月14日から17日にかけて開催された「2009年秋冬コレクション」用の、又は2009年10月20日から23日にかけて開催された「2010年春夏コレクション」用の各案内状である。絵柄面の下部右側、又は絵柄面の右側やや下寄りの英語の筆記体で印刷された「Collection」の上には、被請求人のコーポレートブランド「OGITSU」がそれぞれ表示され、宛名面には当該商標及び被請求人の名称・郵便番号・住所・電話番号等の情報が記載されている。
乙第8号証の4ないし6は、東京都台東区東浅草所在の被請求人の「東京ショールーム」において、2010年4月20日から22日にかけて開催された「2010年秋冬コレクション」用の、同年9月28日から30日にかけて開催された「2011年春夏コレクション」用の、又は2011年3月15日から18日にかけて開催された「2011年秋冬コレクション」用の各案内状である。絵柄面の右下部分にデザインされたファスナーのスライダー摘まみ部分、絵柄面の右下部分にデザインされた円形内、又は絵柄面の下部中央には、それぞれ被請求人のコーポレートブランド「OGITSU」が表示され、宛名面には当該商標及び被請求人の名称・郵便番号・住所・電話番号等の情報が記載されている。
なお、いずれも宛名面には当該商標の他に、新商品の商標として「NEO RHYTHM/SPORT」の記載がされている。
これらにより、当該商標が使用されていたことが明らかである。
(3)商標の類否判断の手法について
商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきものである。それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とするものである。
また、商標はその構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されているものであるから、みだりに、商標構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判定することは許されない。しかしながら簡易、迅速をたっとぶ取引の実際においては、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必ずしもその構成部分全体の名称によって称呼、観念されず、しばしば、その一部だけによって簡略に称呼、観念され、1個の商標から2個以上の称呼、観念の生ずることがある。
今日、限定された時間内に自己の商品の特徴を取引者・需要者に訴え顧客の購買力を喚起しなければならない広告媒体・商品表示等においては、一見して認識可能な商標表示の持つ情報伝達力が重視されている実情に鑑み、インターネットを中心とする「視覚」に訴える情報媒体が主流を占めつつあり、今日では、インターネット上で使用される特定の文字の持つ情報伝達力が、実際に商品に関連表示される文字が有する情報伝達力と比肩するほどの大きさを有しているものである。
さらに、今日においては、インターネットを中心とする「視覚」に訴える情報媒体が普及することによって、広告・商品表示等において、特定の文字、例えば本件審判に係る「RHYTHM」の持つ情報伝達力が重要性を増しているということができ、文字の持つ情報伝達力が重要であることはいうまでもなく、簡易、迅速をたっとぶ取引の実際においては、商標が構成部分全体の名称によって称呼、観念されず、その一部だけによって簡略に称呼、観念されることがあり得るものである。
(4)本件商標と使用商標について
上述した証拠に表示された「NEO RHYTHM」の文字が本件商標の使用に当たるものであるか否かについて検討する。
本件商標は、「rhythm」の欧文字を同じ書体、同じ大きさ、等間隔で横書きに表してなるものであり、「リズム」の称呼及び一般需要者の語学に対する認識程度を鑑みれば、「リズム」又は「調子」といった意味合いを理解させるものといえる。
一方、使用商標は、「NEO」と「RHYTHM」との各欧文字を、間隔を置いて横書きに表してなるものであり、「ネオリズム」の称呼及び一般需要者の語学に対する認識程度を鑑みれば、全体として「新しいリズム」又は「新しい調子」といった意味合いを理解させるものといえる。
商取引市場においては、例えば、登録商標の書体を変更したり、欧文字の大文字・小文字を相互に変更したり、他の文字等を付記したりする等その表示態様について少なからぬ変更が加えられて使用されることが通常であるし、特に新商品を表示する場合、英語の「ニュー(new)」又はそれと同義のギリシヤ語「ネオ(neo)」を従来商標と結合し又は付加して表示することがごく一般に行われていることは良く知られているところである。
そうすると、上述した証拠に表示された「NEORHYTHM」の文字のうちの「NEO」の文字部分は、「新商品・新製品」など商品の性質を表す意味を有するにすぎず、取引市場においては、自他商品の識別機能が極めて弱い語であるといえる。
また、本件において、「NEO」と「RHYTHM」とは間隔を置いて左右に明確に分かれているうえに、「NEO」の部分は文字の輪郭を実線で表した一般に「白抜き」と呼ばれる方法により表示しているのに対し「RHYTHM」の部分は文字全体を塗りつぶした方法で表示し、両欧文字部分の視覚的なコントラストを呈している。
これらによって、これに接する需要者・取引者は、「NEO」の文字部分よりも目立って認識できる「RHYTHM」の文字部分に着目し、これを自他商品の識別標識ととらえて、商品の取引にあたるとみるのが相当であり、必ずしも「NEO」と「RHYTHM」とが結合一体として認識されるものではない。
したがって、商品「婦人靴」に表示された「NEO RHYTHM」の文字は、その要部である「RHYTHM」の文字部分から「リズム」の称呼及び「リズム・調子」の観念を生ずるものであり、これは本件商標の欧文字「rhythm」の小文字を大文字に変更した外観からなるにすぎず、かつ、本件商標と同一の称呼及び観念を生じるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められるものである。
3 結び
以上のとおり、被請求人は、請求に係る指定商品中の「婦人靴」について本件商標と社会通念上同一と認められる商標を審判請求の登録日前3年以内に使用している事実があることから、本件審判の請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)使用商標の態様
ア 被請求人は、平成21年1月19日から同年5月11日までの間に複数回にわたり、松坂屋名古屋店及び高島屋岡山店に対し、婦人靴に使用商標を付し又はその包装用箱に使用商標を付した婦人靴を販売した(乙4の1・2)。
イ 乙第3号証の1の写真によれば、靴の中敷き及び包装用箱に「NEO RHYTHM」の文字(以下「使用商標1」という。)が表示されているものであるところ、このうち、「NEO」の文字は白抜きで籠字風に表され、「RHYTHM」の文字は塗り潰しで表されており、両者の間には半文字分程の間隔がある(別掲参照)。
ウ 乙第3号証の1の写真によれば、靴底に刻印されている「NEORHYTHM」の文字(以下「使用商標2」という。)が表示されているものであるところ、このうち、「NEO」の文字部分のみ籠字風に表されている(別掲参照)。
エ 乙第3号証の2の写真によれば、靴の中敷き及び包装用箱に表示されている「NEORHYTHM」の文字(以下「使用商標3」という。)が表示されているものであるところ、このうち、「NEO」の文字は白抜きで籠字風に表され、「RHYTHM」の文字は塗り潰しで表されているが、使用商標1に比べ、各文字は間隔をやや広く均一に配置された態様である(別掲参照)。
(2)被請求人の婦人靴の取引の実情
ア 前記使用商標1ないし3が付された婦人靴の値札には、同一の書体で「NEORHYTHM」と表示されている(乙3の1・2)。
イ 平成20年9月から平成22年11月までの間に発行された新聞や雑誌に、被請求人の業務に係る商品「婦人靴」について、10回以上、紹介記事又は広告が掲載された。それらの記事又は広告においては、使用商標3とほぼ同一の態様からなる籠字風の「NEO」の文字と白塗りの「RHYTHM」の文字を横一列に表したものが1件ある(乙6の1)ほかは、いずれも、上記婦人靴について、同一の書体で「ネオリズム」「NEORHYTHM」「NEO RHYTHM」と表記されている(乙5の1?4,乙6の2,乙7の1?6)。
(3)別件登録商標
被請求人は、使用商標1ないし3を付した婦人靴の販売を開始した頃、指定商品を第25類「履物」とする「neorhythm」、指定商品を第25類「履物、乗馬靴」とする「neo rhythm」について、別件登録商標を登録出願し、商標登録を受けた(甲5,甲6)。
2 登録商標と社会通念上同一と認められる商標の使用について
(1)商標の同一性
商標法第50条第1項は、「継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。以下この条において同じ。)の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」旨規定するところ、同項において、a)書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、b)平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、c)外観において同視される図形からなる商標が例示されていることに鑑みれば、同項にいう「登録商標と社会通念上同一と認められる商標」は、上記a)ないしc)に準ずるような、これと同程度のものをいうものと解される。なお、文言上、登録商標と「同一」と認められるものでなければならず、「類似」の商標は含まれない。
(2)本件商標と使用商標の同一性
ア 本件商標は、「rhythm」の文字からなり、「リズム」という称呼を生じ、「リズム」、「調子」という観念を生じるのに対し、使用商標は、いずれも、「NEO」の文字を伴って、「NEORHYTHM」又は「NEO RHYTHM」の文字からなり、「ネオリズム」という称呼を生じ、「新しいリズム」、「新しい調子」という観念を生じる。
そして、使用商標は、「NEORHYTHM」又は「NEO RHYTHM」の文字からなり、「NEO」の文字は白抜きで籠字風に表され、「RHYTHM」の文字は塗り潰しのゴシック体風の文字で表されているところ、a)本件商標の書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標とはいえないし、b)本件商標のローマ字の文字の表示を平仮名や片仮名に変更して同一の称呼及び観念を生ずる商標でもなく、また、c)外観において本件商標と同視される図形からなる商標でもなく、これらと同程度のものということもできない。
よって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一のものと認められる商標ということはできない。
なお、前記1(3)認定のとおり、被請求人自ら、本件商標とは別個に、同様の指定商品(第25類「履物、乗馬靴」)について、「neorhythm」又は「neo rhythm」という別件登録商標の登録出願をした上でその商標登録を得ていることに照らしても、本件商標と使用商標とが社会通念上同一であると認めることはできない。
イ 被請求人の主張について
(ア) 被請求人は、使用商標において「RHYTHM」の部分が要部となっているから、本件商標と社会通念上同一であると主張する。
しかしながら、前記1(1)認定の使用商標の態様並びに同(2)認定の被請求人の婦人靴の取引の実情を総合すると、同一の大きさ、同一の書体で表された「NEORHYTHM」又は「NEO RHYTHM」の文字からなる使用商標において、「RHYTHM」の部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとまではいうことはできない。また、「NEO」の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないともいうことはできない。よって、使用商標から「RHYTHM」の部分のみを抽出し、この部分だけを本件商標と比較して商標そのものの同一性を判断することは、許されない。
(イ) 被請求人は、籠字風に表示された「NEO」の文字部分は、塗り潰された状態で表示された「RHYTHM」の文字部分とは、視覚上異なり、その背景に埋没するような表示態様であって、看者をして「RHYTHM」の部分が強く印象づけられると主張する。
しかし、使用商標の文字は、いずれも同一の大きさ、同一の書体で表され、外観上まとまりよく一体的に表示されているのであって、籠字風に表示されたからといって、「NEO」の部分が捨象されるとはいえない。
(ウ) 被請求人は、「NEO RHYTHM」又は「NEORHYTHM」全体が既成の観念を有する成語として親しまれていないと主張する。
しかし、「NEO」は「新、新しい」なる意味を有する英語に通じ、また「RHYTHM」は「リズム、調子」なる意味を有する英語に通じる既成語として一般に親しまれている。したがって、これらを結合した「NEO RHYTHM」又は「NEORHYTHM」については、それ自体が既成の成語として認識されていないとしても、「新しいリズム」、「新しい調子」なる意味合いのものとして理解することは容易であり、そこから「ネオリズム」という称呼が生じる。
(エ) 被請求人は、「NEO」が接頭辞であり、自他商品の識別力がないか極めて弱いと主張する。
しかし、接頭語として使用されるからといって、直ちに使用商標と本件商標とが社会通念上同一であるということはできない。
(オ) 以上のとおり、被請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(3)商標の使用の有無
以上によれば、商標権者である被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、指定商品について、使用商標を使用していたことをもって、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたとはいえないものである。
3 まとめ
以上のとおり、商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品「履物」について本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたとはいえないものであるから、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その指定商品「履物」についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲

使用商標1


使用商標2


使用商標3





審理終結日 2013-05-02 
結審通知日 2013-05-08 
審決日 2013-05-21 
出願番号 商願2005-19187(T2005-19187) 
審決分類 T 1 32・ 11- Z (Y25)
T 1 32・ 1- Z (Y25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小畑 恵一泉田 智宏 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 原田 信彦
手塚 義明
登録日 2005-09-16 
登録番号 商標登録第4894428号(T4894428) 
商標の称呼 リズム 
代理人 北口 貴大 
代理人 中村 政美 
代理人 城山 康文 
代理人 岩瀬 吉和 

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