• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2008890111 審決 商標
不服20136362 審決 商標
異議2013900081 審決 商標
異議2013900197 審決 商標
平成24行ケ10360審決取消請求事件 判例 商標

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y29
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y29
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y29
審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y29
管理番号 1276446 
審判番号 無効2012-890071 
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-08-09 
確定日 2013-03-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第5069067号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5069067号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5069067号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成からなり、立体商標として、平成17年5月20日に登録出願され、第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」を指定商品として、同19年6月5日に登録審決、同年8月10日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
1 請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本件商標の登録の無効の理由として引用する登録商標は、以下の15件であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、商標登録の更新登録に係る記載を省略する。)。
(1)登録第4343852号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、平成10年10月2日に登録出願され、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」を含む第29類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同11年12月10日に設定登録されたものである。
(2)登録第4359374号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)のとおりの構成からなり、平成11年1月14日に登録出願され、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」を含む第29類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年2月4日に設定登録されたものである。
(3)登録第4384750号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(4)のとおりの構成からなり、平成11年3月11日に登録出願され、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」を含む第29類、第30類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年5月19日に設定登録されたものである。
(4)登録第4410202号商標(以下「引用商標4」という。)は、「KEWPIE」の欧文字(標準文字による)からなり、平成11年9月21日に登録出願され、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」を含む第29類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年8月18日に設定登録されたものである。
(5)登録第4564585号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(5)のとおりの構成からなり、平成13年7月18日に登録出願され、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」を含む第29類、第5類及び第30類ないし第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年4月26日に設定登録されたものである。
(6)登録第4564586号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲(6)のとおりの構成からなり、平成13年7月18日に登録出願され、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」を含む第29類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年4月26日に設定登録されたものである。
(7)登録第4575560号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲(7)のとおりの構成からなり、立体商標として、平成9年4月1日に登録出願され、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」を含む第29類及び第30類ないし第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同14年6月7日に設定登録されたものである。
(8)登録第4598752号商標(以下「引用商標8」という。)は、別掲(8)のとおりの構成からなり、平成14年1月4日に登録出願され、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」を含む第29類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年8月23日に設定登録されたものである。
(9)登録第4600642号商標(以下「引用商標9」という。)は、別掲(9)のとおりの構成からなり、平成14年1月7日に登録出願され、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」を含む第29類、第5類及び第30類ないし第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年8月30日に設定登録されたものである。
(10)登録第4633096号商標(以下「引用商標10」という。)は、別掲(10)のとおりの構成からなり、平成14年5月9日に登録出願され、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」を含む第29類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年12月27日に設定登録されたものである。
(11)登録第4633097号商標(以下「引用商標11」という。)は、別掲(11)のとおりの構成からなり、平成14年5月9日に登録出願され、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」を含む第29類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年12月27日に設定登録されたものである。
(12)登録第4633098号商標(以下「引用商標12」という。)は、別掲(12)のとおりの構成からなり、平成14年5月9日に登録出願され、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」を含む第29類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年12月27日に設定登録されたものである。
(13)登録第4633099号商標(以下「引用商標13」という。)は、別掲(13)のとおりの構成からなり、平成14年5月9日に登録出願され、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」を含む第29類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年12月27日に設定登録されたものである。
(14)登録第4916191号商標(以下「引用商標14」という。)は、別掲(14)のとおりの構成からなり、平成17年4月26日に登録出願され、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」を含む第29類及び第30類ないし第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年12月16日に設定登録されたものである。
(15)登録第4916192号商標(以下「引用商標15」という。)は、別掲(15)のとおりの構成からなり、平成17年4月26日に登録出願され、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」を含む第29類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年12月16日に設定登録されたものである。
2 請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして、本件商標の登録の無効の理由として引用する登録商標は、以下の3件であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、商標登録の更新登録に係る記載を省略する。)。
(1)登録第595694号商標(以下「引用商標16」という。)は、別掲(16)のとおりの構成からなり、昭和35年5月31日に登録出願され、第31類「調味料,香辛料、食用油脂、乳製品」を指定商品として、同37年8月24日に設定登録され、平成15年7月23日に指定商品を第30類「調味料,香辛料」とする指定商品の書換登録がなされているものである。
(2)登録第832283号商標(以下「引用商標17」という。)は、別掲(17)のとおりの構成からなり、昭和41年8月11日に登録出願され、第31類「調味料,香辛料、食用油脂、乳製品」を指定商品として、同44年9月24日に設定登録され、平成21年6月17日に指定商品を第30類「調味料,香辛料」とする指定商品の書換登録がなされているものである。
(3)登録第4575560号商標は、前記1(7)のとおりの引用商標7である。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第95号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当する理由の根拠として引用商標1ないし15の商標を引用する(甲第2号証ないし甲第16号証)。
(2)引用商標1ないし15のいずれからも、「キューピー」の称呼及び観念が生じるものである。
(3)本件商標の称呼及び観念について
本件商標は、甲第1号証のとおり、頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい、背中に双翼を有する裸体の幼児が、胸の前でハート型の物体を両手で抱えた態様の立体的形状からなるものである。
この立体的形状は、我が国でも周知になったキューピー人形とその基本的な特徴を共通にするものである。
したがって、本件商標からは、その図形に相応して、「キューピー」の称呼及び観念が生じるものである。
(4)本件商標及び各引用商標の外観について
本件商標は、キューピー人形とその基本的な特徴を共通にする立体的形状からなるものである。
一方、各引用商標のうち、文字商標である引用商標4及び引用商標5以外のものについては、キューピー人形とその基本的な特徴を共通にする図形又は立体的形状からなるものである。
したがって、本件商標の外観と引用商標4及び引用商標5以外の各引用商標の外観とはそれぞれ互いに類似しており、また少なくとも、本件商標と各引用商標の外観上の相違点は、本件商標と各引用商標とが類似商標であることを何ら否定するものではない。
上述の請求人の主張は、複数の裁判例及び審決例によっても支持されている(甲第17号証ないし甲第19号証)。
(5)本件商標と各引用商標が類似すること
上述のとおり、本件商標及び各引用商標のいずれからも、「キューピー」の称呼及び観念が生じる。
すなわち、本件商標と各引用商標は、互いにその称呼及び観念を同一とする類似商標である。
また、上述のとおり、本件商標と各引用商標の外観は類似しており、また少なくとも、本件商標と各引用商標の外観上の相違点は、本件商標と各引用商標とが類似商標であることを何ら否定するものではない。
したがって、本件商標と各引用商標は、それぞれ互いに類似する商標である。
(6)まとめ
上述のとおり、本件商標と各引用商標は、それぞれ互いに類似する商標である。
また、本件商標は、各引用商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用するものである。
したがって、本件商標がその指定商品に使用されると、取引者又は需要者において、各引用商標との間で商品について出所の混同を生じることは明らかである。
上記のことから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し登録を受けることができない商標であり、商標法第46条第1項により無効とされるべきである。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由の根拠として引用商標16、引用商標17及び引用商標7を引用する(甲第20号証、甲第21号証及び甲第8号証)。
(2)本件商標と引用商標との類似について
本件商標からは「キューピー」の称呼及び観念が生じることは、前記1(3)のとおりである。
他方、引用商標16は、甲第20号証のとおり、頭頂部と思しき部分が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形(いわゆる「キューピー人形」)を模した図形からなるものであり、ここから「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。
同じく引用商標17は、甲第21号証のとおり、「キユーピー」の片仮名を横書きしてなるものであり、「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。
同じく引用商標7は、甲第8号証のとおり、頭頂部が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形を模した立体的形状からなるものであり、ここから「キューピー」の称呼及び観念を生ずるものである。
なお、キューピー人形よりなる引用商標16から「キューピー」の称呼及び観念を生ずることは、引用商標16と引用商標17とが相互に連合商標として登録されていた事実からも明らかである(甲第20号証及び甲第21号証)。
したがって、本件商標と引用商標16、引用商標17及び引用商標7とは、互いにその称呼及び観念を同一とする類似商標である。
なお、前記「1(4)本件商標及び各引用商標の外観について」において述べた理由により、本件商標の外観と、引用商標16及び引用商標7の外観とはそれぞれ互いに類似しており、また少なくとも、本件商標と引用商標16、引用商標17及び引用商標7の外観上の相違点は、本件商標と当該各引用商標とが類似商標であることを何ら否定するものではない。
(3)引用商標16、引用商標17及び引用商標7の著名性について
請求人は、大正8年(1919年)に設立された会社であり、大正14年に我が国初の国産マヨネーズの製造を開始し、「キユーピー」の文字及び「キューピー人形」よりなる商標を付して、発売して以来今日に至るまで、商標の書体、態様に多少の変更を加えつつも、一貫してこの商標を使用し続けてきたものである(甲第22号証及び甲第23号証)。
また、請求人は、欧風食に合うマヨネーズ、各種ドレッシング、タルタルソース、マスタード等の調味料に加え、パスタソース、ベビーフード等の加工食品についても「キユーピー」、「キューピー人形」の商標を使用し発売し、これらの商品が全国的規模で売れたことから、本件商標の登録出願前には、「キユーピー」といえば、直ちにマヨネーズをはじめとする上記商品あるいは請求人を指称するほどに広く知られるに至ったものである(甲第24号証及び甲第25号証)。
そして、請求人の取扱商品は多種にわたるものであるのみならず、例えば、その日本国内における請求人の年度別シェア及び順位は、ともに高いものである(甲第26号証ないし甲第28号証)。
また、「キユーピー」は、食品会社を対象とした第三者によるアンケート調査においてはもちろん、商品分野を限定しない企業全般を対象とした第三者によるアンケート調査においても、第1位の評価を多数回取得するなど、非常に高い評価結果を得ており、このことは、「キユーピー」が食品会社の企業ブランドとして、また一般的な企業ブランドとして、需要者から極めて高い評価を得ている事実を裏付けるものでもある(甲第29号証ないし甲第37号証)。
しかして、引用商標16及び引用商標17は、需要者の間に広く認識されている著名な商標であって、他人が使用することにより混同を生ずるおそれがあるものとして、防護標章の登録が認められているものである(甲第20号証及び甲第21号証)。
すなわち、引用商標16は、その指定商品の属する区分を除き、全ての旧商品区分、また、現行区分(国際分類)では、全ての区分について出所の混同のおそれがあるものとして防護標章の登録がなされており、この登録の事実は、引用商標16の持つ非常に高い著名性を認めたものにほかならない。
これらの防護標章登録の事実からみても、引用商標16及び引用商標17は、本件商標の登録出願日(平成17年(2005年)5月20日)以前から現在に至るまで著名な商標であるといわなければならないものである。
また、引用商標16及び引用商標17は、特許電子図書館(IPDL)に日本国の周知・著名商標として収録されているものであり(甲第40号証)、「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」に日本の著名商標として掲載されており、この事実は、引用商標16及び引用商標17が非常に高い著名性を有することを裏付けるものである(甲第41号証)。
さらに、請求人は、商品の販売、宣伝広告及び事業内容の紹介等にあたり、引用商標7を積極的に使用しているところである(甲第43号証ないし甲第46号証)。
以上から明らかであるとおり、引用商標16、引用商標17及び引用商標7は、上述の商品別シェア(順位)、企業ブランド、宣伝・広告実績、新聞・雑誌の紹介記事、防護標章登録等の事実から、請求人の業務に係る商品を表示するものとして取引者・需要者間に広く認識されている周知・著名商標であることは明白である。
(4)請求人による様々な態様のキューピー人形に係る商標の使用について
前項で述べたとおり、「キユーピー」及びキューピー人形に係る商標(引用商標16、引用商標17及び引用商標7)は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして取引者・需要者間に広く認識されている周知・著名商標である。
しかし、請求人の使用する商標として認識されているキューピー人形に係る商標は、引用商標16及び引用商標7の態様に限定されるものではなく、本件商標の構成に含まれるようなハート型の図形をその構成に含むものも含め、様々な態様のキューピー人形に係る商標が、請求人の使用する商標として認識されている(甲第47号証ないし甲第79号証)。
(5)本件商標の指定商品は各著名商標(引用商標16、引用商標17及び引用商標7)が特に著名性を有する食品分野に係る商品であることについて
請求人は、日本を代表する大手食品会社の1つであり、消費者もそのように認識していることは、極めて明白である。また、請求人が使用する引用商標16、引用商標17及び引用商標7は、食品分野の商品について特に著名性を獲得していることも極めて明白である(甲第80号証ないし甲第95号証))。
(6)本件商標をその指定商品について使用した場合の出所の混同のおそれについて
被請求人が、引用商標16、引用商標17及び引用商標7と類似する本件商標を、その指定商品について使用する場合には、その商品が請求人又は請求人の関連会社の業務に係る商品であるかの如く混同を生じることは明らかである。
以上述べたとおり、本件商標は、請求人又は請求人の関連会社の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標であり、商標法第4条第1項第15号に該当し登録を受けることができない商標である。
したがって、本件商標は、商標法第46条第1項により無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第17号証を提出した。
1 本件商標及び本件商標の特徴
本件商標は、立ち姿の「キューピー人形」の一種に係る立体商標であり、特に、次の(1)ないし(18)のとおりその外観形状に特徴的な構成を有している。
(1)全体的にふくよかな幼児体型を有しているが、どちらかというと「ずんぐり」とした体形である。
(2)顔部と顔部以外の身体部との比率が、ほぼ1:1で構成されている、いわゆる二頭身形態を有している。
(3)眉と眉の間が極端に広い。
(4)眉が濃くハッキリと表されている。
(5)眉尻が下がっている。
(6)濃く表されている5本の上まつ毛を有している。
(7)いずれも向かって右方向を向いた左右の大きな瞳を有している。
(8)黒目が広い領域を占めている。
(9)頬全体が前方に向けて膨らんでおり、口部との境界にくっきりと明瞭に現れている左右の湾曲したラインを有している。
(10)鼻孔を正面に向けた低い鼻を有している。
(11)頭頂部の一部領域・左右側頭部の一部領域及び後頭部の下領域にわずかに生えている毛髪を備えている。
(12)左右側頭部の一部に生えている毛髪部分の位置が、顔部の上下方向で見て、半分よりも極端に下の位置にある。
(13)正面視ほぼ三角形状に近い顔部形態を有している。
(14)身体全体のバランスからみて細い左右の腕部を有している。
(15)腹部の前で、人形の身体色よりも極端に濃い色合いの大きな肉厚状のハートマークを両手で支えている。
(16)くびれを表す複数のラインが正面及び背面に明瞭に表れ、かつ離間している両脚部を備えている。
(17)背中には、正面側からも容易に視認できるほど極端に大きな白色の双翼を備えている。
(18)双翼は分離されているものではなく、生え際部分が滑らかなラインをもって連続している。
2 請求人が主張する無効理由について
以下、請求人が主張するそれぞれの理由及び証拠について被請求人は反論する。
(1)無効理由1(商標法第4条第1項第11号)について
ア 引用商標の認定
被請求人は、引用商標1ないし15を次のとおり認定する。
(ア)引用商標1(甲第2号証)
引用商標1を構成している「キューピー人形」の図形は、日本でもおなじみのキューピーポーズ、すなわち、つんととがった頭頂部に髪の毛をたらし、パッチリとした大きな目で、大きな頭部を持つ乳幼児体形(裸)で、両足を揃え、パッと手を広げて立っているキューピー人形(乙第1号証ないし乙第4号証に記載のローズオニール創作に係るキューピー人形)であるスタンディングキューピー(以下、このようなキューピー人形を単に「スタンディングキューピー」という。)と極めて類似する外観を有するものである。
なお、引用商標1と同じ形態のキューピー人形に係る商標について、「キューピー人形をモチーフにした商標であることから、その独創性が必ずしも高くはない」と認定している裁判例も存している(乙第5号証)。
(イ)引用商標2(甲第3号証)
引用商標2は、白く縁取りがなされた黒地の楕円形状の内部に、立ち姿の「キューピー人形」の一種に係る図形を配してなるものである。「キューピー人形」の図形は、引用商標1と同じである。
(ウ)引用商標3(甲第4号証)
引用商標3は、波打つ長方形の幕地様の図形の上部から、引用商標1及び2に開示の「キューピー人形」が顔を覗かせているものであり、向かって左側の右手は幕地様の上縁をつかんでいる様子が表現されている。キューピー人形の他の部位は表現されていない。
(エ)引用商標4(甲第5号証)
引用商標4は、「KEWPIE」の欧文字を横書きしてなる標準文字のみからなる。
(オ)引用商標5(甲第6号証)
引用商標5は、「キユーピー」の片仮名を横書きしてなるもののみである。
(カ)引用商標6(甲第7号証)
引用商標6は、水平に引かれた直線の上部から、引用商標1及び2に開示の「キューピー人形」が顔を覗かせているものであり、両手は直線をつかんでいる様子が表現されている。顔の下方領域裏側には多数の斜線が描かれている突部がそれぞれ左右に表現されている。
(キ)引用商標7(甲第8号証)
引用商標7は、引用商標1及び2に開示の「キューピー人形」と基本的な構成であまり変わるところは無いが、全体的にぽっちゃりしている。
(ク)引用商標8(甲第9号証)
引用商標8は、引用商標1及び2と同じ表情を有する頭部を備えたキューピー人形であって、何か不明な物を両手で持っている様子を表現している。向かって左側の右脚は、膝から曲げて上にあげている状態を表現している。
(ケ)引用商標9(甲第10号証)
引用商標9は、引用商標1に開示のキューピー人形の図形と同じ形状である。
(コ)引用商標10(甲第11号証)
引用商標10は、ふくよかな腹部を有する幼児が、向かって左方向に向けて歩いている様子を表現している。
顔はやや斜め正面を向き、表情は口を開き、笑顔である。
右手を振って(上げて)挨拶をしている様子である。
左肩にはいぼ状の突部が表現されている。
(サ)引用商標11(甲第12号証)
引用商標11は、ふくよかな腹部を有する幼児が、向かって左方向に向けて歩いている様子を表現している。
顔はやや斜め後方を向き、表情は口を開き、笑顔である。
左右の手を振って歩いている様子である。両足は交差している。
左肩にはいぼ状の突部が表現されている。
(シ)引用商標12(甲第13号証)
引用商標12は、ふくよかな腹部を有する幼児が、向かって左方向に向けて歩いている様子を表現している。
顔はやや斜め前方を向き、向かって左側の右手の指をしゃぶっている様子である。
左肩にはいぼ状の突部が表現されている。
(ス)引用商標13(甲第14号証)
引用商標13は、ふくよかな腹部を有する幼児が、向かって左方向に向けて歩いている様子を表現している。
顔はやや斜め正面を向き、表情は口を開き、笑顔である。
左手は背中方向に曲げていると思われるが、右手を有しているか否かは不明である。両足は交差している。
左肩にはいぼ状の黒い突部が表現されている。
(セ)引用商標14(甲第15号証)
引用商標14は、引用商標1ないし3に開示のキューピー人形の頭部(顔部)のみを大きく表現してなるものである。
(ソ)引用商標15(甲第16号証)
引用商標15は、つんととがった頭頂部に髪の毛をたらし、ぱっちりとした大きな目で、大きな頭部を持つ乳幼児体形(裸)を有するキューピー人形と思しき人形が、両手で卵の殻のほぼ上半分を持ち上げ、その下半身は残りのほぼ下半分の卵の殻の中に入っている形態を表現している。
すなわち、人形は周知であって一般的なキューピー人形であると思料する。
イ 本件商標と引用商標との類否考察
(ア)本件商標の指定商品と引用商標1ないし15のそれぞれの指定商品とが、一部同一の商品であるという点において異論はない。
(イ)本件商標と引用商標1ないし15との類否
A 本件商標と引用商標1との相違
(A)本件商標と引用商標1は、「つんととがった頭頂部に髪の毛をたらし」、「ぱっちりとした大きな目」で、「大きな頭部を持つ乳幼児体形(裸)」を有するキューピー人形の一種に係るものであるとの点(キューピー人形としての基本的な構成)にのみ着目すれば外観において共通する箇所もある。
しかし、本件商標と引用商標1とでは、次に述べるように外観において多数の顕著な相違点を有している。
(a)引用商標1は、本件商標のように、顔部と顔部以外の身体部との比率が、ほぼ1:1で構成されている、いわゆる二頭身形態ではなく、顔部と顔部以外の身体部との比率が、ほぼ1:2で構成されている、いわゆる三頭身形態である。すなわち、本件商標のキューピー人形は、「ずんぐり」体形であって、引用商標1とは外観で顕著に異なっている。
この点において比較すると、両商標は、人形全体において、高さ方向で顕著に差が表れ、顕著に異なる構成である。
(b)また、本件商標がぽっちゃりとした腹部を有しているのに対し、引用商標1は、たれ下がり気味のほぼしずく型(ティアードロップ型)の腹部を有している点で顕著に異なっている。また、本件商標は、腹部前にあるハート型の物体によって腹部が隠されているのに対して、引用商標1は、上記ティアードロップ型の腹部が正面視で顕著に表れている。
(c)本件商標では、顔部の形態が正面視ほぼ三角形状に近い形態であるのに対し、引用商標1では、正面視ほぼふくよかな縦長楕円状に近い形態である。この点において顕著に異なる構成である。
(d)本件商標では、頭頂部の一部領域・左右側頭部の一部領域及び後頭部の下領域にわずかに生えている毛髪を備えているが、引用商標1では、頭頂部の一部領域にのみ毛髪と思しきものが存在しているにすぎず、この点において顕著に異なる構成である。
(e)また、本件商標は、眉と眉の間が極端に広い、眉が濃くハッキリと表されている、眉尻が下がっている、濃く表されている5本の上まつ毛を有している、頬全体が前方に向けて膨らんでおり、口部との境界にくっきりと明瞭に現れている左右の湾曲したラインを有している、鼻孔を正面に向けた低い鼻を有しているとの顔表情からなる。すなわち、本件商標は、引用商標1のような周知であって一般的なキューピー人形の表情とは異なり、その表情全体がコミカルに表されているのが明瞭に認識でき、この点において顕著に異なる構成である。
(f)本件商標は、「左右の耳部」を備えていないが、引用商標1には左右の耳部と認められる形態を備えており、この点において顕著に異なる構成である。
(g)本件商標は、「身体全体のバランスからいって細い左右の腕部を有し、腹部の前で、人形の身体色よりも極端に濃い色合いの大きな肉厚状のハートマークを両手で支えている形態」との構成を商標全体から見て、需要者が着目し易い前面領域で顕著に表現されるように備えている。
これに対し、引用商標1は、周知であって一般的なスタンディングキューピーと同じく両手をほぼ左右水平方向にパッと広げている形態を備えているものである。
すなわち、引用商標1は、特に本件商標で最も特徴的な形態の一つである「人形の身体色よりも極端に濃い色合いの大きな肉厚状のハートマークを両手で支えている形態」、あるいはこれに類似する形態について、何ら備えておらず、この点において顕著に異なる構成である。
(h)本件商標は、「くびれを表す複数のラインが正面及び背面に明瞭に表れ、かつ、離間している両脚部を備えた形態」の構成を備えているが、引用商標1は、左右の両脚部がその対向領域(内股部分)をきれいに隙間なく密着されて揃っている一体の形態を備えており、この点において顕著に異なる構成である。
(i)本件商標は、「背中には極端に大きな白色の双翼を備え持ち、双翼は、分離されているものではなく、生え際部分が滑らかなラインをもって連続している形態」の構成を備えている。
これに対して、引用商標1は、左右両腕と頭との間に突出している部分が見受けられ、一般的なキューピー人形から判断すれば、この部分が翼であるとも解釈できる。
しかし、引用商標1は、特に本件商標で最も特徴的な形態の一つである「背中には極端に大きな白色の双翼を備え持ち、双翼は、分離されているものではなく、生え際部分が滑らかなラインをもって連続している形態」、あるいはこれに類似する形態について、何ら備えておらず、この点において顕著に異なる構成である。
上述したとおり、引用商標1のキューピー人形の図形が、一般的なキューピー人形としての基本的な構成からなることを特徴としているのに対し、本件商標は、上述したとおり、キューピー人形としての基本的な構成のみで構成されているのではなく、顕著な構成を備えているものであるため、外観において需要者が容易に識別し得るほどに非類似である。
(B)本件商標と引用商標1は、そのキューピー人形の図形外観の全体イメージから、「キューピー」、「キューピー人形」との称呼及び観念が自然に生じるものである。
しかし、このような称呼及び観念は、キューピー人形の外観を表示する図柄から当然に生じるものであって、請求人が商標として採択・使用開始する以前から広く知られ、称呼及び観念されていたもので、引用商標特有の称呼及び観念ではなく、「キューピー」、「キューピー人形」との称呼及び観念のみをもって一般取引者・需要者が識別し得るものではない。
また、引用商標1には、欧文字「KEWPIE」が並列されており、これらからも「キューピー」の称呼が生じ得るものである。
しかし、キューピーのネーミング・キューピー人形は、ローズオニールが創作したものであって、その後、日本国でも広く愛され、「キューピー」、「キューピー人形」として広く知られるに至っている(乙第6号証ないし乙第8号証)。そして、数社の企業がキューピー人形を製作したり、企業イメージとしてキューピー人形を使用したりしており、単に「キューピー」、「キューピー人形」との称呼や観念だけでは全くといっていいほど識別力がないものである(乙第9号証ないし乙第11号証)。
(C)さらに、引用商標1を構成している「キューピー人形」の図形は、上述したとおり、日本でもおなじみのキューピー人形(乙第1号証ないし乙第4号証)であるスタンディングキューピーと極めて近似する外観形態を有しており、これは、請求人の創業者である中島董一郎氏が、ローズオニールのキューピーを基にして創作したものであることから当然に近似しているものである(この事実にあっては自他共に認める周知の事実である。乙第12号証ないし乙第15号証)。
このように引用商標1は、キューピー人形としての基本的な構成のみからなるので、ローズオニール創作のキューピー人形とはいうまでも無く当然に近似しているが、本件商標のように、ローズオニール創作のキューピー人形とは全く別に創作され、掛け離れた顕著な相違点(顕著な構成)を有している本件商標(立体商標)とは当然に非類似である。
(D)よって、本件商標と引用商標1は、単に両者が「キューピー人形」に係る形態であるという点においてのみ共通するに留まるものであるため、指定商品が一部同一の関係にある、外観の一部、称呼及び観念に似ている部分が存するということを取り立てて類否判断するのではなく、特に外観上において、本件商標に特有の形態を多数有し、引用商標1とは明らかに識別し得る多数の顕著な相違点(顕著な構成)を有する点に鑑みれば、非類似の商標であるとみるのが相当である。
B 本件商標と引用商標2との相違
本件商標と引用商標2とでは、引用商標1との比較において述べたとおり顕著な構成(顕著な相違点)を有しているものであるから、非類似の商標であるとみるのが相当である。
C 本件商標と引用商標3との相違
特に外観上において、本件商標と引用商標3とは、明らかに識別し得る多数の顕著な相違点(顕著な構成)を有するため、非類似の商標であるとみるのか相当である。
D 本件商標と引用商標4との相違
本件商標と引用商標4とでは、外観及び観念において多数の顕著な相違点(顕著な構成)を有しているため、たとえ称呼の一部において類似する部分があったとしても非類似の商標であるとみるのが相当である。
E 本件商標と引用商標5との相違
本件商標と引用商標5とでは、外観及び観念において多数の顕著な相違点(顕著な構成)を有しているため、たとえ称呼の一部において類似する部分があったとしても非類似の商標であるとみるのが相当である。
F 本件商標と引用商標6との相違
特に外観上において、本件商標と引用商標6とは、明らかに識別し得る多数の顕著な相違点(顕著な構成)を有するため、非類似の商標であるとみるのが相当である。
G 本件商標と引用商標7との相違
(A)本件商標と引用商標7は、「つんととがった頭頂部に髪の毛をたらし」、「ぱっちりとした大きな目」で、「大きな頭部を持つ乳幼児体形(裸)」を有するキューピー人形のー種に係るものであるとの点にのみ着目すれば、外観において共通する箇所もある。
しかし、本件商標と引用商標7とでは、次に述べるように、外観において多数の顕著な相違点を有している。
なお、引用商標7は、引用商標1等と同様に、ローズオニール創作のスタンディングキューピーの全体的な構成はそのままで、前記スタンディングキューピーに対して多少ぽっちゃりとさせた程度の相違にしかすぎない。
(a)引用商標7は、本件商標のように、顔部と顔部以外の身体部との比率が、ほぼ1:1で構成されている、いわゆる二頭身形態ではなく、顔部と顔部以外の身体部との比率が、ほぼ1:2で構成されている、いわゆる三頭身形態である。すなわち、本件商標のキューピー人形は、「ずんぐり」体形であって、引用商標7とは、外観で顕著に異なっている。
この点において比較すると、両商標は、人形全体において、高さ方向で顕著に差が表れ、顕著に異なる構成である。
(b)本件商標は、顔部の形態が正面視ほぼ三角形状に近い形態であるのに対し、引用商標7は、正面視ほぼふくよかな縦長楕円状に近い形態である。この点において顕著に異なる構成である。
(c)本件商標と引用商標7は、頭頂部、左右側頭部の一部及び後頭部の下領域に毛髪部分を備えている点において共通している。
しかし、本件商標は、上述のとおり、左右側頭部の一部に生えている毛髪部分の位置が、顔部の上下方向で見て、半分よりも極端に下の位置にあるのに対し、引用商標7は、ほぼ半分の位置にある(正面形態、背面形態及び側面形態参照。)。この点において顕著に異なる構成である。
(d)また、本件商標は、眉と眉の間が極端に広い、眉が濃くハッキリと表されている、眉尻が下がっている、濃く表されている5本の上まつ毛を有している、頬全体が前方に向けて膨らんでおり、口部との境界にくっきりと明瞭に現れている左右の湾曲したラインを有している、鼻孔を正面に向けた低い鼻を有しているとの顔表情からなる。すなわち、本件商標は、引用商標7のような周知一般的なキューピー人形の表情とは異なり、その表情全体がコミカルに表されているのが明瞭に認識でき、この点において顕著に異なる構成である。
(e)本件商標には、「左右の耳部」を備えていないが、引用商標7には、左右の耳部と認められる形態を備えており、この点において顕著に異なる構成である。
(f)本件商標には、「身体全体のバランスからいって細い左右の腕部を有し、腹部の前で、人形の身体色よりも極端に濃い色合いの大きな肉厚状のハートマークを両手で支えている形態」との構成を商標全体から見て、需要者が着目し易い前面領域で顕著に表現されるように備えている。
これに対し、引用商標7は、周知であって一般的なスタンディングキューピーを同じく両手をほぼ左右水平方向にパッと広げている形態を備えているものである。
すなわち、特に本件商標で最も特徴的な形態の一つである「人形の身体色よりも極端に濃い色合いの大きな肉厚状のハートマークを両手で支えている形態」、あるいはこれに類似する形態については引用商標7には何ら備えていない。この点において顕著に異なる構成である。
(g)本件商標には、「くびれを表す複数のラインが正面及び背面に明瞭に表れ、かつ離間している両脚部を備えた形態」との構成を備えているが、引用商標7は、左右の両脚部がその対抗領域(内股部分)をきれいに隙間なく密着されて揃っている一体の形態を備えており、この点において顕著に異なる構成である。
(h)本件商標には、「背中には極端に大きな白色の双翼を備え持ち、双翼は分離されているものではなく、生え際部分が滑らかなラインをもって連続している形態」との構成を備えている。
これに対して引用商標7には、頭部よりの背中にへの字状に濃く表現された部分が左右に見受けられる。一般的なキューピー人形から判断すれば、この部分が翼であるとも解釈できる。
しかし、引用商標7は、特に本件商標で最も特徴的な形態の一つである「背中には極端に大きな白色の双翼を備え持ち、双翼は分離されているものではなく、生え際部分が滑らかなラインをもって連続している形態」、あるいはこれに類似する形態について、何ら備えておらず、この点において顕著に異なる構成である。
上述したとおりであるので、引用商標7のキューピー人形の図形が、一般的なキューピー人形としての基本的な構成からなることを特徴としているのに対し、本件商標は、上述したとおり、キューピー人形としての基本的な構成のみで構成されているのではなく、顕著な構成を備えているものであるため、外観において需要者が容易に識別し得るほどに非類似である。
(B)本件商標と引用商標7は、そのキューピー人形の図形外観の全体イメージから、「キューピー」、「キューピー人形」との称呼及び観念が自然に生じるものである。
しかし、このような称呼及び観念は、キューピー人形の外観を表示する図柄から当然に生じるものであって、請求人が商標として採択・使用開始する以前から広く知られ、称呼及び観念されていたもので、引用商標特有の称呼及び観念ではなく、「キューピー」、「キューピー人形」との称呼及び観念のみをもって、一般取引者・需要者が識別し得るものではない。
(C)よって、本件商標と引用商標7は、単に両者が「キューピー人形」に係る形態であるという点においてのみ共通するにとどまるものであるため、指定商品が一部同一の関係にある、外観の一部、称呼及び観念において似ている部分が存するということを取り立てて類否判断するのではなく、特に外観上において、本件商標に特有の形態を多数有し、引用商標7とは明らかに識別し得る多数の顕著な相違点(顕著な構成)を有する点に鑑みれば、非類似の商標であるとみるのが相当である。
H 本件商標と引用商標8との相違
本件商標と引用商標8は、単に両者が「キューピー人形」に係る形態であるという点においてのみ共通するにとどまるものであるため、指定商品が一部同一の関係にある、外観の一部、称呼及び観念において似ている部分が存するということを取り立てて類否判断するのではなく、特に外観上において、本件商標に特有の形態を多数有し、引用商標8とは明らかに識別し得る多数の顕著な相違点(顕著な構成)を有する点に鑑みれば、非類似の商標であるとみるのが相当である。
I 本件商標と引用商標9との相違
(A)本件商標と引用商標9は、「つんととがった頭頂部に髪の毛をたらし」、「ぱっちりとした大きな目」で、「大きな頭部を持つ乳幼児体形(裸)」を有するキューピー人形の一種に係るものであるとの点にのみ着目すれば、外観において共通する箇所もある。
(B)しかし、引用商標9は、引用商標1と同一図形であり、本件商標と引用商標9とでは、引用商標1との比較において述べたとおり多数の顕著な相違点(顕著な構成)を有しており、非類似の商標であるとみるのが相当である。
J 本件商標と引用商標10ないし引用商標13及び引用商標15との相違
本件商標と、引用商標10ないし引用商標13及び引用商標15とは、単に、両者が「キューピー人形」に係る形態であるという点においてのみ共通するにとどまるものであるため、指定商品が一部同一の関係にある、外観の一部、称呼及び観念において似ている部分が存するということを取り立てて類否判断するのではなく、特に外観上において、本件商標に特有の形態を多数有し、引用商標10ないし引用商標13及び引用商標15とは、明らかに識別し得る多数の顕著な相違点(顕著な構成)を有する点に鑑みれば、非類似の商標であるとみるのが相当である。
K 本件商標と引用商標14との相違
特に、外観上において、本件商標と引用商標14とは、明らかに識別し得る多数の顕著な相違点(顕著な構成)を有するため、非類似の商標であるとみるのが相当である。
(ウ)なお、請求人は、甲第17号証ないし甲第19号証として裁判例・審決例をあげているが、いずれも外観において一般的なキューピー人形とさほどの相違がなく、本件商標のように上述した特有の構成(顕著な構成)を有しているものとは全く異なるものである。
(エ)商標審査基準によれば「1.商標の類否の判断は、商標の有する外観、称呼及び観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察しなければならない。」と定めている。
すなわち、請求人が主張するように称呼のみに重点をおいた偏った判断をするのではなく、最も特徴的な外観形態やその特徴的な外観形態から生じ得る特有の観念にも注意して類否判断をしなければならないということである。本件商標が備え持つ特徴的な構成(他の商標には存しない顕著な構成)のうち、特に、前記1(14)ないし(18)に挙げた構成は、一般的なキューピー人形には到底備えていないものであるため、その顕著な外観形態と、その外観形態のみならず、この特有の外観形態から本件商標特有の称呼及び観念をも生じ得るものであるため、これら全ての判断要素を総合的に判断しなければならないものである。
請求人は、これを怠ったものであり、請求人の類否判断は、全く当を得ていないといわざるを得ない。
また、同じく審査基準では「2.商標の類否の判断は、商標が使用される商品又は役務の主たる需要者層(例えば、専門家、老人、子供、婦人等の違い)その他商品又は役務の取引の実情を考慮し、需要者の通常有する注意力を基準として判断しなければならない。」と定められており、請求人の類否判断は、この判断基準も全く無視した偏った判断といわざるを得ない。すなわち、この種の食品の場合、主たる需要者層は最も接する機会のある婦人であると考えるのが妥当である。そして、婦人等の需要者の通常有する注意力に基づけば、本件商標と引用商標との顕著な外観形態の相違に容易に気が付き、彼此見誤ることにより混同を生じるようなことも無い。上述したとおり、本件商標は、各引用商標と多数の顕著な相違点(顕著な構成)を有し、全く異なる特有の外観を有するものであるため、引用商標のような周知一般的なキューピー人形の外観形態とは異なる点に鑑みれば、高い注意力を有する需要者には容易に非類似であると想到し得るものである。
ウ 小括
このような次第であるため、本件商標は、引用商標(及び周知であって一般的なキューピー人形)には全く存しない顕著な構成(顕著な相違点)を有しているものであるから、時と処を異にする隔離観察をした場合であっても、需要者が彼此見誤るおそれなど全くないといっていいほど、外観において非類似の商標であるとみるのが相当である。
よって、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であり、商標法第4条第1項第11号に違背して登録されたものではなく、本件商標は、登録要件を十分に具備して登録されたものであり、商標法第46条第1項によって無効とされるべきものではないこと明らかである。
(2)無効理由2(商標法第4条第1項第15号)について
ア 甲第8号証、甲第20号証及び甲第21号証の認定
被請求人は、甲第8号証、甲第20号証及び甲第21号証を次のとおり認定する。
(ア)甲第8号証
甲第8号証は、上述の無効理由1についての反論で詳細に述べた引用商標7であり、上記無効理由1の反論で述べたとおり、本件商標は、甲第8号証(引用商標7)と顕著な相違点(顕著な構成)を多数有しており、両商標は、当然に非類似である。
したがって、時と処を異にする隔離観察をした場合であっても、需要者が彼此見誤るおそれなど全くないといっていいほど、外観において非類似の商標であるとみるのが相当である。
(イ)甲第20号証
甲第20号証は、上述の無効理由1についての反論で詳細に述べた甲第2号証(引用商標1)のキューピー人形の図形、甲第3号証(引用商標2)のキューピー人形の図形とほぼ同じ形態である。
上記無効理由1の反論で述べたとおり、本件商標は甲第2号証(引用商標1)のキューピー人形の図形、甲第3号証(引用商標2)のキューピー人形の図形と顕著な相違点(顕著な構成)を多数有しており、両商標は、当然に非類似であるため、当然に甲第20号証も本件商標とは非類似の商標である。
したがって、時と処を異にする隔離観察をした場合であっても、需要者が彼此見誤るおそれなど全くないといっていいほど、外観において非類似の商標であるとみるのが相当である。
(ウ)甲第21号証
A 甲第21号証は、上述の無効理由1についての反論で詳細に述べた甲第6号証(引用商標5)とほぼ同じ片仮名のみからなる商標である。
上記無効理由1の反論で述べたとおり、本件商標は、甲第6号証(引用商標5)と顕著な相違点(顕著な構成)を多数有しており、両商標は、当然に非類似であるため、当然に甲第21号証も本件商標とは非類似の商標である。
したがって、時と処を異にする隔離観察をした場合であっても、需要者が彼此見誤るおそれなど全くないといっていいほど外観において非類似の商標であるとみるのが相当である。
B よって、請求人の主張は、全く当を得ておらず採用することができない。
C 請求人は、審判請求書の第21頁ないし第23頁において、それぞれのシェアを提示している。
しかし、マヨネーズ・ドレッシング等の商品以外は、9.1%ないし24%程度の、いわゆる下限目標値と称する低いシェアであり、決して高い市場占有率を有しているものであるとはいえない。
D 請求人は、審判請求書の第25頁ないし第29頁の記述で多数の防護標章登録を上げているが、あくまでも引用商標と同一の商標が防護標章登録を受けているということであり、本件においては事案を異にするものである。
出所の混同を生ずるおそれがあるとして防護標章登録を認めたのは、あくまでも引用商標と同一の標章であり、この防護標章と同一の標章を他人が使用することにより出所の混同が生じるおそれがあるというものである。
E 審判請求書の第29頁ないし第32頁では、多数の証拠とともに引用商標(甲第8号証)の著名性を主張している。
しかし、これら種々の説明・証拠は、あくまでも請求人が著名商標と主張する引用商標(甲第8号証)についてのことであり、引用商標(甲第8号証)とは異なる多数の顕著な構成を備え持つ本件商標との間では、全く当を得ていない主張であるといわざるを得ない。
F 審判請求書第32頁ないし第39頁では、請求人の所有する他の登録商標など(甲第4号証、甲第9号証、甲第16号証、甲第47号証ないし甲第75号証)を多数持ち出して種々主張しているが、これら商標も本件商標とは、全く類似するものではなく当を得ていない主張である。
G 審判請求書第39頁及び第40頁では、請求人および関連会社がキューピー人形を販売していることを主張している。全く関係の無い主張であって、審判官を有利な判断へと導こうとするもので断じて許されるべきではない。また、このような事実が出所の混同とどうして結びつくのか不明であり、請求人は、その点を何ら証左していない。
H 審判請求書第40頁及び第41頁では、本件商標の指定商品が「食品」であること等を前提として、本件商標をその指定商品に使用すると、出所の混同を生じ得ることを主張している。
しかし、本件商標は、これら引用商標とは顕著に相違する識別力のある構成を備え持つもので全く類似するものではないことから、出所の混同は生じ得ないのである。
I キューピー人形は、我が国では大正時代、葛飾区の玩具メーカーがセルロイド製のキューピー人形を製作し、これが世界的にも著名となり、また、当時の我が国輸出総額の過半数を占めるほどにもなっていた(乙第17号証)。現在は、セルロイド製に代わってソフトビニール製が主流となってきたが、キューピー人形(キューピー人形をモチーフにした立体商標を含む。)にあっては、通常、玩具メーカーが製造販売している。
一般的なキューピー人形と比して独創性も高くない請求人の引用商標とは、顕著に異なる構成を多数有している本件商標をその指定商品に使用しても、本件商標に接した需要者が、彼此見誤り、出所を混同するおそれなど全く生じないものであるとの判断を求めるものである。
J 小括
本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違背して登録されたものではない。
したがって、本件商標は、登録要件を十分に具備して登録されたものであり、商標法第46条第1項によって無効とされるべきものではないこと明らかである。
3 被請求人のその他の主張
請求人は、請求人が争っていた平成11年(ネ)第6345号の裁判事件において、被請求人に助けを求めてきたという経緯があり、被請求人は、その際に、業務上の利益を度外視して請求人側について補助(陳述)をしている。そのとき、請求人は、請求人の知的財産部が作成し、被請求人に宛てて「第二次キューピー著作権侵害訴訟の状況」との書簡(乙第16号証)を送付してきた。
この書簡によれば、相手からの訴追を免れるためであると考えられるが、「キューピーは日本では公用物」であると明言および主張している(乙第16号証)。
このように、キューピーは、公用物であると主張しているということは、キューピー人形は、誰でもが自由に使用することができると請求人自らが主張していたことの証拠である。
このように、自由に使用することのできるキューピー人形であると主張し、被請求人に補助(陳述)を求めてきた請求人が、被請求人の力を借りて前記平成11年(ネ)第6345号の裁判で勝訴するや否や現在に至り、被請求人も含め各方面でのキューピー人形の使用差し止めや、商標登録の無効審判請求を起こし、キューピー人形全てにおいて請求人が独占しようとすること自体認められるべきものではないと被請求人は主張する。
すなわち、キューピーは、公用物であると伝えておいて自由に生産・使用させておきながら、裁判が勝訴した途端に使用制限してきたり、商標登録を無効にしようと権利をかざして来たりすることがどうして許されるのであろうか。
なお、この書簡(乙第16号証)では、「当社のキューピーは依拠性がない」旨主張しているが、乙第12号証ないし乙第15号証では、「当時セルロイド人形などのキャラクターとして大変な人気のあったキューピー人形にちなんでこのマークを作ったようです。」、「生みの親はローズオニールさんというイラストレーター。愛の神様のキューピッドをモチーフにして作ったキャラクター」との記述や、請求人のホームページにて「人気者のキューピーを1922年に商標にしました。」と記述していることからも理解できるように。請求人自身ただ乗りしているのである。
4 結び
以上、請求人の主張は、いずれもその理由がないものであり、答弁の主旨のとおりの審決を求めるものである。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
以下、本件商標と各引用商標との類否について検討するに、事案に鑑み、まず、本件商標と引用商標7及び引用商標9との類否について検討する。
(1)本件商標と引用商標7との類否について
ア 外観について
本件商標は、前記したとおり、別掲(1)に示すとおりの構成からなり、立体商標として登録出願され、商標登録されたものである。
本件商標の正面、背面及び側面の外観よりすれば、立体商標である本件商標は、(ア)つんととがった頭頂部に髪の毛をたらし、(イ)まつげを太く表した、ぱっちりとした大きな目で、(ウ)顔が大きく、大きな頭部を有する裸の乳幼児の体形で、(エ)腹部の前でハート型の物体を両手で抱えた直立した姿勢で、(オ)背中に双翼と思しき付加物があることを特徴とする人形の形態を表したものと認められる。
これに対して、引用商標7は、別掲(7)に示すとおりの構成からなり、立体商標として登録出願され、商標登録されたものである。
そして、引用商標7の正面、背面及び側面の外観よりすれば、立体商標である引用商標7は、(ア)つんととがった頭頂部に髪の毛をたらし、(イ)まつげを太く表した、ぱっちりとした大きな目で、(ウ)顔が大きく、大きな頭部を有する裸の乳幼児の体形で、(エ)両腕を左右に広げ、直立した姿勢よりなり、(オ)背中の左右の肩甲骨部分に瘤状の突起物があることを特徴とする人形の形態を表したものと認められる。
しかして、両者は、(ア)つんととがった頭頂部に髪の毛をたらし、(イ)まつげを太く表した、ぱっちりとした大きな目を有し、(ウ)顔が大きく、大きな頭部を有する裸の乳幼児の体形である点を共通にするものである。
他方、両者は、本件商標が両手でハート型の物体を抱えていることと、背中に双翼と思しき付加物があるのに対して、引用商標7は両腕を左右に広げていることと、背中の左右の肩甲骨部分に瘤状の突起物がある点において差異を有するものである。
そして、この両者の外観上の共通点と差異点とを比較するに、その共通点は、幼児人形の形態を表した、両商標の外観が呈する基本的な特徴部分のものであり、他方、その差異点は、当該幼児人形が有する付随的な部分というべきである。
そうとすれば、両者の外観上の差異点は、その共通点を凌駕して、これを打ち消すほどのものとはいえず、両者は、外観上互いに類似するものと判断される。
イ 称呼及び観念について
本件商標は、その外観において、(ア)つんととがった頭頂部に髪の毛をたらし、(イ)まつげを太く表した、ぱっちりとした大きな目で、(ウ)顔が大きく、大きな頭部を有する裸の乳幼児の体形という、キューピー人形の基本的な特徴を有していることが看取できるから、これより、「キューピー」の称呼及び「キューピー人形」の観念が生ずるものである。
これに対して、引用商標7は、その外観において、(ア)つんととがった頭頂部に髪の毛をたらし、(イ)まつげを太く表した、ぱっちりとした大きな目で、(ウ)顔が大きく、大きな頭部を有する裸の乳幼児の体形という、キューピー人形の基本的な特徴を有していることが看取できるから、これより、「キューピー」の称呼及び「キューピー人形」の観念が生ずるものである。
したがって、本件商標と引用商標7とは、「キューピー」の称呼及び「キューピー人形」の観念を共通にすることから、称呼及び観念において互いに類似する商標というべきである。
類否判断
本件商標と引用商標7とは、その外観において類似するものであり、称呼及び観念を共通にすることから、両者は互いに類似する商標というべきである。
この点に関しては、仮に、両者が外観においては類似しないとしても、前記した外観上の共通点よりすれば、その外観は近似する関係にあるといえ、両者は、その外観、称呼及び観念を総合的に考察して判断すれば、類似関係にあるといえるものである。
そして、本件商標の指定商品は、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」であり、引用商標7の指定商品中には、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」が含まれているから、両者は、その指定商品において同一又は類似するものである。
エ 被請求人の主張について
(ア)被請求人は、本件商標と引用商標7との類否に関し、前記「第4 2(1)イ(イ)G」の「本件商標と引用商標7との相違」の(A)において、「引用商標7のキューピー人形の図形が、一般的なキューピー人形としての基本的な構成からなることを特徴としているのに対し、本件商標は、キューピー人形としての基本的な構成のみで構成されているのではなく、顕著な構成を備えているものであるため、外観において需要者が容易に識別し得るほどに非類似である。」と述べている。
しかしながら、本件における類否は、外観上の対比のみにより判断されるものではなく、両者の外観、称呼及び観念を総合的に考察して判断すべきものであるから、被請求人が主張するような外観上の相違点があるとしても、そのことをもって両商標が非類似ということはできないものである。
なお、この点に関して被請求人も、前記「第4 2(1)イ(イ)G(A)」において、「本件商標と引用商標7は、『つんととがった頭頂部に髪の毛をたらし』、『ぱっちりとした大きな目』で、『大きな頭部を持つ乳幼児体形(裸)』を有するキューピー人形のー種に係るものであるとの点にのみ着目すれば外観において共通する箇所もある。」と述べ、また、前記「第4 2(1)イ(イ)G(B)」においては、「本件商標と引用商標7は、そのキューピー人形の図形外観全体イメージから、『キューピー』、『キューピー人形』との称呼・観念が自然に生じるものである。」と述べているところでもある。
(イ)被請求人は、食品に関する取引の実情に関連して、「この種の食品の場合、主たる需要者層は最も接する機会のある婦人であると考えるのが妥当である。そして、婦人等の需要者の通常有する注意力に基づけば、本件商標と引用商標との顕著な外観形態の相違に容易に気が付き、混同を生じるようなことも無い。」と主張している。
しかしながら、本件商標の指定商品である「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」は、比較的低廉な食品類であって、その需要者層は広範な一般消費者であり、その場合、商標の類否判断は、当該需要者の注意力を基準にしてされるというべきである。
しかして、ともに立体商標である、本件商標と引用商標7とを時と処を隔てて接する一般消費者は、対比される両商標の外観上の違いのみにより両者を識別するのではなく、両商標から生じる称呼、観念及びそれらから受ける印象、記憶、連想等をも念頭において、両者を総合的に観察するというのが相当である。この点は、被請求人が主張する婦人需要者層においても同様というべきである。そして、両者がその外観上の差異点により出所を識別して取引が行われている等の取引の実情や証拠は認めらない。
よって、上記の被請求人の主張は、採用することはできない。
(2)本件商標と引用商標9との類否について
ア 外観について
本件商標は、別掲(1)に示すとおりの構成のものであり、その正面外観は、(ア)つんととがった頭頂部に髪の毛をたらし、(イ)ぱっちりとした大きな目で、(ウ)顔が大きく、大きな頭部を有する裸の乳幼児の体形であり、(エ)腹部の前でハート型の物体を両手で抱えた直立した姿勢であり、(オ)背中に双翼と思しき付加物があることを特徴とする人形の立体的な形態を表したものと認められる。
これに対して、引用商標9は、別掲(9)に示すとおりの構成からなるものであり、その外観は、(ア)つんととがった頭頂部に髪の毛をたらし、(イ)ぱっちりとした大きな目で、(ウ)顔が大きく、大きな頭部を有する裸の乳幼児の体形であり、(エ)両腕を左右に広げ、直立した姿勢で、(オ)背中に丸みを帯びた付加物があることを特徴とする人形の形態を表したものと認められる。
しかして、立体商標と平面商標との外観上の類否を判断するに際しては、「当該(商標を)所定方向から見たときに視覚に映る姿が特定の平面商標と同一又は近似する場合には、原則として、当該立体商標と当該平面商標との間に外観類似の関係があるというべき」(東京高裁平成12年(行ケ)第234号 平成13年1月31日判決参照。)というのが相当であり、以下、この観点を踏まえて、本件商標と引用商標9との類否について、本件商標の正面外観と引用商標9とを比較して検討する。
そこで、両者を観察するに、両者は、(ア)つんととがった頭頂部に髪の毛をたらし、(イ)ぱっちりとした大きな目を有し、(ウ)顔が大きく、大きな頭部を有する裸の乳幼児の体形である点を共通にするものである。
他方、両者は、本件商標が、両手でハート型の物体を抱えていることと、背中に双翼と思しき付加物があるのに対して、引用商標9は、両腕を左右に広げていることと、背中に丸みを帯びた付加物がある点において差異を有するものである。
この両者の外観上の共通点と差異点とを比較するに、その共通点は、幼児人形の形態を表した、両商標の外観が呈する基本的な特徴部分のものであり、他方、その差異点は、当該幼児人形が有する付随的な部分というべきである。そうとすれば、両者の外観上の差異点は、その共通点を凌駕して、これを打ち消すほどのものとはいえず、両者の外観上の基本的な共通点よりすれば、両者は、外観上互いに類似するものと判断される。
イ 称呼及び観念について
本件商標は、その正面外観において、(ア)つんととがった頭頂部に髪の毛をたらし、(イ)ぱっちりとした大きな目で、(ウ)顔が大きく、大きな頭部を有する裸の乳幼児の体形という、キューピー人形の基本的な特徴を有していることが看取できるから、これより、「キューピー」の称呼及び「キューピー人形」の観念が生ずるものである。
これに対して、引用商標9は、(ア)つんととがった頭頂部に髪の毛をたらし、(イ)ぱっちりとした大きな目で、(ウ)顔が大きく、大きな頭部を有する裸の乳幼児の体形という、キューピー人形の基本的な特徴を有していることが看取できるから、これより、「キューピー」の称呼及び「キューピー人形」の観念が生ずるものである。
したがって、本件商標と引用商標9とは、「キューピー」の称呼及び「キューピー人形」の観念を共通にすることから、称呼及び観念において互いに類似する商標というべきである。
類否判断
本件商標と引用商標9とは、その外観において類似するものであり、称呼及び観念を共通にすることから、両者は互いに類似する商標というべきである。
この点に関しては、仮に、両者が外観においては類似しないとしても、前記した外観上の共通点よりすれば、その外観は近似する関係にあるといえ、両者は、その外観、称呼及び観念を総合的に考察して判断すれば、類似関係にあるといえるものである。
そして、本件商標の指定商品は、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」であり、引用商標9の指定商品中には、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。)」が含まれているから、両者は、その指定商品において同一又は類似するものである。
エ 被請求人の主張について
被請求人は、本件商標と引用商標9とでは、多数の顕著な相違点(顕著な構成)を有しており、非類似の商標である旨主張している。
しかしながら、本件における類否は、外観上の対比のみにより判断されるものではなく、両者の外観、称呼及び観念を総合的に考察して判断すべきものであるから、被請求人が主張するような外観上の相違点があるとしても、そのことをもって両商標が非類似ということはできないものである。
なお、この点に関して、被請求人も、「本件商標と引用商標9は、『つんととがった頭頂部に髪の毛をたらし』、『ぱっちりとした大きな目』で、『大きな頭部を持つ乳幼児体形(裸)』を有するキューピー人形の一種に係るものであるとの点にのみ着目すれば外観において共通する箇所もある。」と述べているところである。
(5)小括
以上、本件商標は、引用商標7及び9と類似する商標であるから、その他の引用商標との類否について検討をするまでもなく、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたというべきである。
2 商標法第4条第1項第15号について
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたというべきものであるが、仮に同号に該当しない場合、本件商標が、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるか否かについて、以下検討する。
(1)引用商標16の著名性について
請求人が提出した各甲号証によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人は、大正14年に我が国初の国産マヨネーズを発売し、「KEWPIE」、「キユーピー」の文字及び「キューピー人形」よりなる商標を付して発売し、今日に至るまで、商標の書体、態様に多少の変更を加えつつも、これらの商標を継続して使用してきたことが認められる(甲第22号証及び甲第23号証)。
そして、甲第22号証の1葉目表面左側、1葉目裏面右側、2葉目裏面のマヨネーズ包装袋の正面、3葉目表面及び裏面並びに甲第23号証の裏面には、引用商標16に酷似ないし近似するキューピー人形の商標ないし標章が表示されていることが認められる。
イ 請求人は、マヨネーズ、ドレッシング、タルタルソース、マスタード等の調味料、パスタソース、ベビーフード等の加工食品について、引用商標16をはじめとして、「キユーピー」、「キューピー人形」の商標を使用してきていることが認められる(甲第24号証及び甲第25号証並びに甲第56号証ないし甲第59号証)。
ウ 請求人の取扱い商品は、「ソース類缶詰」、「マヨネーズ類」、「液状ドレッシング」、「パスタソース類」、「スープ類」、「ベビーフード」、「介護・治療食品」など多種にわたり、かつ、その日本国内における、請求人の年度別シェアが高い(ソース類缶詰、マヨネーズ類、液状ドレッシングについては平成11年ないし同16年の間のシェアは1位)ことが認められる(甲第26号証ないし甲第28号証)。
エ 請求人は、食品会社を対象としたアンケート調査及び商品分野を限定しない企業全般を対象としたアンケート調査においても、2003年9月22日付けの日経産業新聞によれば、「企業ブランド知覚指数・消費者版ランキング」2位、同2004年6月21日付けでは4位、同2005年7月26日付け、2006年6月29日付け、2007年6月25日付けでは各1位、平成16年に「日経BP社バイオセンター」が専業主婦ら女性を対象に「食の安心・安全ブランド」のイメージ調査において1位、また、同年に「アイエックス・ナレッジ」が「子供を持つ主婦を対象とした食品会社のイメージ調査」の20項目の調査において12項目で1位等、高位の評価を得ていることが認められる(甲第29号証ないし甲第37号証)。
オ 引用商標16は、その指定商品である「調味料、香辛料」を除く、多くの商品及び役務について防護標章登録がされていることが認められる(甲第20号証)。
なお、請求人は、引用商標16が防護標章登録を受けていることに関連して、「引用商標16は、その指定商品の属する区分を除き、全ての旧商品区分、また、現行区分(国際分類)では全ての区分について出所の混同のおそれがあるものとして防護標章の登録がなされて」いると述べているが、防護標章登録は、「区分」についてではなく、「その登録商標に係る指定商品及びこれに類似する商品以外の商品又は指定商品に類似する役務以外の役務について」受けることができるものであるから、上記の請求人の主張は、このことをいうものと解した。
カ 引用商標16は、「AIPPI」の2004年版「日本有名商標集」に掲載されていることが認められる(甲第41号証)。
キ 引用商標16の著名性の判断
以上の、アないしカによれば、引用商標16は、請求人の業務に係る商品「マヨネーズ、ドレッシング、タルタルソース、マスタード、パスタソース、ベビーフード等の調味料や加工食品」に使用する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、取引者、需要者の間に広く認識され著名となっており、その著名性は本件指定商品の取引者、需要者間にも及んでいたものと判断される。
なお、間接的な取引の実情として、請求人は、ハートマークを構成中に有する登録商標を有し(甲第52号証、甲第66号証及び甲第68号証)、ハートマークの商標を商品マヨネーズに使用し(甲第53号証)、さらに、ハートマークを使用したキューピー人形のキャラクター商品を2005年8月ないし2007年10月の間において販売していることが認められる(甲第76号証ないし甲第79号証)。
(2)本件商標と引用商標16との類似性の程度
引用商標16は、前記「1(2)」で検討した、引用商標9のキューピー人形の図形とほぼ同一の態様からなるものであるから、引用商標16は、本件商標と外観において類似ないし近似し、称呼及び観念を共通にすることから、その類似性の程度は相当高いものということができるものである。
(3)指定商品との関連性
本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品「マヨネーズ、ドレッシング、タルタルソース、マスタード、パスタソース、ベビーフード等の調味料や加工食品」とは、食品関連の商品であり、密接な関連性を有するものであって、販売場所や需要者を共通にすることが多いものである。
(4)出所の混同のおそれ
以上を総合して検討すれば、本件商標をその指定商品について使用した場合には、取引者、需要者は、引用商標16又は、請求人及びその使用する商標を連想、想起し、本件商標の指定商品が請求人又は請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断される。
(5)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたというべきである。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであり、仮にそうでない場合には、同法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標(登録第5069067号商標)



(2)引用商標1(登録第4343852号商標)



(3)引用商標2(登録第4359374号商標)



(4)引用商標3(登録第4384750号商標)



(5)引用商標5(登録第4564585号商標)



(6)引用商標6(登録第4564586号商標)



(7)引用商標7(登録第4575560号商標)



(8)引用商標8(登録第4598752号商標)



(9)引用商標9(登録第4600642号商標)



(10)引用商標10(登録第4633096号商標)



(11)引用商標11(登録第4633097号商標)



(12)引用商標12(登録第4633098号商標)



(13)引用商標13(登録第4633099号商標)



(14)引用商標14(登録第4916191号商標)



(15)引用商標15(登録第4916192号商標)




(色彩については、原本参照。)

(16)引用商標16(登録第595694号商標)



(17)引用商標17(登録第832283号商標)



審理終結日 2013-01-22 
結審通知日 2013-01-25 
審決日 2013-02-12 
出願番号 商願2005-48807(T2005-48807) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y29)
T 1 11・ 261- Z (Y29)
T 1 11・ 262- Z (Y29)
T 1 11・ 263- Z (Y29)
最終処分 成立  
前審関与審査官 真鍋 恵美 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 酒井 福造
山田 和彦
登録日 2007-08-10 
登録番号 商標登録第5069067号(T5069067) 
代理人 柏 延之 
代理人 岩木 謙二 
代理人 宮嶋 学 
代理人 宇梶 暁貴 
代理人 勝沼 宏仁 
代理人 高田 泰彦 
代理人 塩谷 信 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 黒瀬 雅志 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ