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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201224620 審決 商標
不服201218680 審決 商標
不服201224976 審決 商標
不服201223227 審決 商標
不服201220247 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない X09
管理番号 1275256 
審判番号 不服2012-17392 
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-22 
確定日 2013-05-27 
事件の表示 商願2011- 64177拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「Darwin」の欧文字と「ダーウイン」の片仮名を二段に書してなり、第9類「眼鏡,眼鏡の部品及び附属品」を指定商品として、平成23年8月25日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『Darwin』の文字と『ダーウイン』の文字とを併記したところ、該文字はイギリスの生物学者で進化論などで世界的に有名な故人の『Charles Robert Darwin』の略称を表す『Darwin』及び『ダーウイン』の文字を書したものと認められる。そして、出願人は、同故人の遺族並びにその遺産の管理財団などと関係を有する者とは認められないものであるから、本願商標は、世界的に有名な同故人の名声、名誉を傷つけるおそれがあり、国際信義に反するおそれもあるから、公の秩序を害するおそれのある商標と認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)「Darwin(ダーウィン)」について
ダーウィン(Charles Robert Darwin:1809?1882)は、イギリスの生物学者であり、進化論を首唱し、生物学・社会科学および一般思想界にも影響を与え、「種の起原(源)」、「ビーグル号航海記」を著した者として、世界的に著名な故人である(以下、同人を「故ダーウィン」という。)。
(2)「Darwin(ダーウィン)」から故ダーウィンを想起することについて
ア 学習用の英和辞典
本願商標の「Darwin(ダーウィン)」の文字を学習用の英和辞典で参照すると、故ダーウィンを表す語の見出しとして、また、その内容が掲載されている(「グランドセンチュリー英和辞典第2版」株式会社三省堂、「ベーシックジーニアス英和辞典初版」株式会社大修館書店)。
なお、前記の辞典において、「Darwin(ダーウィン)」に関して故ダーウィン以外の者は、掲載されていない。
イ 国語辞典類
本願商標の「Darwin(ダーウィン)」に通じる「ダーウィン」が、故ダーウィンを表す語の見出しとして、また、その内容が掲載されている(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店、「大辞泉増補・新装版」株式会社小学館発行、「コンサイスカタカナ語辞典第4版」株式会社三省堂)。
また、オーストラリア北部の港湾都市についても「ダーウィン」が掲載されている(前掲広辞苑、大辞泉)が、この都市名は、故ダーウィンにちなむものであるとの記載がある(前掲大辞泉)。
ウ 新聞記事
以下の新聞記事は、いずれも故ダーウィンについて記載されているものである。
(ア)「(拝啓ダーウィン様:1)見えてきた生物の共通性 ゲノム解読、『進化』に迫る」の見出しのもと、「あなたが生まれて200年が過ぎました。世界を旅して『種の起源』にまとめた進化論は、今なお『進化』しています。進化にまつわる話を、4週にわたり報告します。・・・●運命変えた船旅 生物は進化する--。それを思いついたのが、ダーウィンだ。ダーウィンは、すべての生物は元をたどれば共通の祖先に行き当たると考えた。進化は、生物の中の小さな変化が積み重なって環境に適応したものが選ばれ、世代を超えて増えていく『自然選択』によって起こると説明した。そうした考えに行き着くには、わけがあった。ダーウィンは1809年、英国の医師の家に生まれた。昆虫採りや鳥の観察が大好きだった。父に勧められてエディンバラ大で医師をめざすが、手術を見て逃げ出すことに。牧師になろうとケンブリッジ大に入り、自然史学にのめり込んだ。運命を変えたのは22歳。軍艦ビーグル号に乗り、5年に及ぶ世界一周の旅で、多くの動植物を観察した。別種と思っていたガラパゴス諸島の鳥が、すべて同じフィンチ類だとわかった。異なる環境に適応し、別の種に分かれていくのを確信した。進化の考えを『種の起源』にまとめたのは50歳のとき。当時は神がすべての生物を別々に創造し、種は不変だという考えが支配的だった。ヒトとサルは共通の祖先を持つとする『人間の由来』の出版で、キリスト教会からの反発が強まった。ダーウィンは自然をよく観察することで生命の進化を見抜いた。だが、どのように種が別の種に変わるのかは明らかにできなかった。・・・
■ダーウィンと進化論 ●Charles Darwin 1809?1882
1809年 ダーウィン誕生 英国の医師の家に生まれる。母は陶磁器会社ウェッジウッド創設者の娘
1831年 ビーグル号に乗船 5年にわたる世界一周の旅へ
1835年 ガラパゴス諸島に到着
1859年 『種の起源』を出版 すべての生物は共通の祖先をもち、環境に適応したものが増えていく進化論を提唱した
1865年 修道士メンデルが遺伝の法則を発表。しかしその重要性は1900年頃まで認められなかった
1871年 『人間の由来』出版 人間のルーツが霊長類にあると示す
1882年 ダーウィン死去
1901年 突然変異の発見
1925年 米で進化論を教えることを禁ずる法律がテネシー州で制定。教師が裁かれ、注目を浴びる
1930?40年代 ダーウィンの進化論とメンデルの遺伝の法則が統合される
1953年 DNAの二重らせん構造発見 ワトソンとクリックが発表。進化の物的証拠となる
1968年 故木村資生・国立遺伝学研究所教授が『分子進化の中立説』を発表。分子レベルの進化の多くは不利でも有利でもない変異で、偶然起こると考えた
2003年 ヒトゲノムの塩基配列の解読完了 ヒトとチンパンジーのゲノムがよく似ており、共通の祖先から進化したことを裏付ける
現在から未来 ゲノム情報を比較し、ヒトはなぜヒトになったのかを探る・・・」の記載がある。
(2009年4月7日付け朝日新聞 東京朝刊22頁)
(イ)「サンシャイン国際水族館:ダーウィンゆかり、珍しい生物を紹介/東京」の見出しのもと、「豊島区東池袋のサンシャイン国際水族館で、ダーウィンの生誕200周年にちなみ、珍しい生き物たちの生態を紹介する夏期特別展『ダーウィン!生きもの大図鑑?ヒゲじいのなぜ?どうして?』が開かれている。」の記載がある。
(2009年8月22日付け毎日新聞 地方版/東京27頁)。
(ウ)「ダーウィン生誕200年、あす長崎大で講演会 /長崎県」の見出しのもと、「ダーウィン生誕200年と『種の起源』出版150年を記念した講演会『生命と進化2009?長崎からダーウィンを考える会』(長崎大など主催)が、24日午後5時半から長崎大医学部良順会館2階ボードインホール(長崎市坂本1丁目)で開かれる。」の記載がある。
(2009年11月23日付け朝日新聞 西部地方版/長崎23頁)。
(エ)「ダーウィン巡り、教授ら熱い講演 『種の起源』発表150年で長崎大/長崎県」の見出しのもと、「ダーウィンが『種の起源』を発表してちょうど150年にあたる24日、長崎大医学部で講演会『生命と進化2009?長崎からダーウィンを考える』が開かれた。長崎大などが主催し、聴衆約100人が集まった。『日本ガラパゴスの会』会長の伊藤秀三・長崎大名誉教授ら5人が講演し、それぞれ『ダーウィンフリーク』ぶりを披露した。主催者側から『日本人で最も頻繁にガラパゴス諸島を訪れている』と紹介された伊藤名誉教授は、ダーウィンが26歳の時にビーグル号でガラパゴスに上陸し、『進化論』の手がかりを得たと説明。『ガラパゴスでは、ダーウィンの航海日記を手に足跡をたどるのが楽しみ』と明かした。講演会の発案者、増崎英明・長崎大医学部産婦人科教授は、日本が幕末に開国していく時期と、ダーウィンが『種の起源』を1859年に発表して欧米が精神的変革を経験した時期が同じだったことから、『長崎が様々に世界と対峙(たいじ)した時代とダーウィンにはつながりがある』と話した。」の記載がある。
(2009年11月26日付け朝日新聞 西部地方版/長崎 26頁)
(オ)「種の起源:発刊150年 進化を守るための『今』 京都賞受賞のグラント夫妻に聞く」の見出しのもと、「今年は『ダーウィン・イヤー』と呼ばれた。英国の自然科学者、チャールズ・ダーウィンの生誕200年、著作『種の起源』の発刊から150年の節目だったからだ。2010年は、国連の『国際生物多様性年』。進化とは何か。なぜ生物多様性を守るのか。ダーウィンの後継者と呼ばれる進化生物学者で、今年の京都賞(基礎科学部門)を夫妻で受賞したピーター・グラント(73)、ローズマリー・グラント(73)の両博士に聞いた。・・・チャールズ・ダーウィン(1809?82年)は、1835年9?10月の約5週間、諸島に滞在。生息場所ごとに姿が少しずつ違うガラパゴスゾウガメやダーウィンフィンチを見て、『生物の種は不変』という常識を覆す、進化論の着想を得た。その自然は人間の移住とともに激変した。最近30年で年間の観光客数は10倍以上に増え、外来生物が固有種を駆逐しつつある。今年12月の報告では、最近25年で生物9種がほぼ絶滅したという。」の記載がある。
(2009年12月21日付け毎日新聞 東京朝刊 8頁)
(カ)「(あすは何の日)9月15日 ガラパゴス諸島に到達」の見出しのもと、「英国の博物学者チャールズ・ダーウィン(1809?82)が1835年のこの日、南米のガラパゴス諸島に到達した。ビーグル号での5年間に及ぶ航海の後半に約1カ月間滞在し、様々な動植物を観察。ここで着想を得て進化論を確立させ、1859年に『種の起源』を出版した。ダーウィンが英国に持ち帰ったとされるガラパゴス・ゾウガメのメス『ハリエット』はその後も生き続け、飼育されていたオーストラリアの動物園で2006年、175歳で死んだ。当時の世界最高齢動物としてギネスブックに認定された。」の記載がある。
(2010年9月14日付け朝日新聞 東京夕刊10頁)
(キ)「『種の起源』初版本、東北大に寄贈 震災復興のシンボルに、一般公開も」の見出しのもと、「進化論で著名なチャールズ・ダーウィンの『種の起源』の初版本が15日、東北大付属図書館(仙台市)に寄贈された。東日本大震災で被災した同館では復興のシンボルになると、科学史に残るこの本の一般公開を含めて活用する。・・・『種の起源』初版は1859年、ロンドンで出版された。1250部印刷。2年前、英国のオークションで約1500万円の高値をつけて話題になった。東京大などに収蔵されている。寄贈は15日、付属図書館百周年記念式典の場で行われた。野家啓一図書館長は『科学の一段階を画す貴重な本。学生の励みになる。一般市民向けにも展示したい』と話している。」の記載がある。
(2011年10月15日付け朝日新聞 東京夕刊10頁)
エ 故ダーウィンをテーマとする展覧会の開催
故ダーウィンをテーマにした展覧会が、アメリカ自然史博物館(ニューヨーク)で2005年から2006年に開催され、その後ブラジル、ニュージーランドを経て、2008年に国立科学博物館で開催された。
その「ダーウィン展」の内容については、ダーウィンの人生をたどりながら、彼が生み出した偉大な業績に迫る展覧会であり、会場では、ダーウィンの進化論の着想のもとになったガラパゴス諸島の生物のはく製から、航海に使った「ビーグル号」の模型、航海日誌、身の回りの品々など、様々な資料が展示された。
(http://www.kahaku.go.jp/exhibitions/ueno/special/2008/darwin/index.html)
(http://www.guidenet.jp/sp/archives/1811)
また、該「ダーウィン展」については、大阪市立自然史博物館で開催される等の内容で新聞に記事が掲載された(2008年5月26日付け読売新聞 大阪朝刊20頁、同紙同年6月23日付け東京朝刊34頁、同紙同年7月16日付け大阪朝刊32頁、同紙同月19日付け大阪夕刊12頁)。
オ 故ダーウィンに係る児童向け書籍
故ダーウィンの伝記を内容とする児童向けの書籍に、故ダーウィンが取り上げられているところ、その表紙には、故ダーウィンの似姿を背景に顕著に「ダーウィン」の文字が表示されているものである。
「小学館版 学習まんが人物館 ダーウィン」に係るインターネットウェブサイト。
(http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784092700246)
前記からは、児童向けの知名人の伝記の題材として故ダーウィンが取り上げられ、「ダーウィン」が、故ダーウィンを指すものとして、児童向けの書籍にも用いられていることがうかがえる。
カ 前記アないしオからすれば、本願商標の「Darwin」及び「ダーウィン」の文字は、故ダーウィンの略称として著名なものというのが相当である。また、我が国において、世代を超えて広く親しまれ敬愛されている人物であるといえる。
(3)故ダーウィンの母国における名声
ア 英国紙幣の肖像
原審の説示したとおり、故ダーウィンは、英国の10ポンド紙幣のモデルとなっている。
そして、「新デザインの10ポンド札発行--イングランド銀行」との見出しのもと、「イングランド銀行(英中央銀行)は7日、新デザインの10ポンド(約1600円)札を発行した。大きさや色調は従来の札と同じ。表側には引き続きエリザベス英女王の肖像をあしらうが、裏側に描く人物を作家チャールズ・ディケンズから、生物学者のチャールズ・ダーウィンに変更した。」との新聞記事がある(2000年11月8日付け毎日新聞 東京朝刊9頁)。
イ 英国放送協会の視聴者調査
故ダーウィンは、2002年に英国放送協会(BBC)が行った最も偉大な英国人の投票で第4位に選ばれている。
そして、「【チャイム】最も偉大な英国人は…?」との見出しのもと、「◇…最も偉大な英国人はチャーチル元首相-。英BBC放送の視聴者投票で、こんな結果が出た。二位は鉄道建設に貢献した土木・造船技術者ブルネル、三位はダイアナ元皇太子妃。◇…投票には視聴者、百万人以上が参加し、元首相は二位に約五万六千票以上もの差を付ける約四十五万票を獲得。・・・四位以下はダーウィン、シェークスピア、ニュートン、ジョン・レノンが続いた。」との新聞記事がある(2002年11月27日付け産経新聞 東京朝刊31頁)。
ウ 生誕200年の記念行事・切手
故ダーウィンの生誕を記念した行事が開催され、切手が発行されている。
そして、「ダーウィンも生誕200年-英でイベント」との見出しのもと、「【シュルーズベリー(英中部)12日共同】進化論の祖、チャールズ・ダーウィンが生まれてから二百年となる十二日、生誕地の英中部シュルーズベリーなどダーウィンゆかりの地では記念行事が行われた。今年は進化論を説いた『種の起源』発表から十一月で百五十年となることもあり、英郵便会社ロイヤル・メールは十二日に記念切手を発行。英各地で十一月までダーウィンをテーマにしたさまざまな催しが開かれる。シュルーズベリーでは同日、街の中心部でイベントを開催した。」との新聞記事がある(2009年2月13日付け静岡新聞 朝刊4頁)。
エ 故ダーウィンの業績をたたえて制定された賞
故ダーウィンを記念した賞が、英国王立協会によって授与されている。
そして、「素顔/遺伝学の最高権威ダーウイン・メダル受賞した木村資生(きむら・もとお)氏」との見出しのもと、「遺伝学の最高権威ダーウィン・メダルを東洋人として初めて受賞した 木村資生氏(きむら・もとお)昭和22年京大理卒、24年国立遺伝学研究所研究員、59年同教授、63年同名誉教授。51年文化勲章受章、62年カーティー賞など受賞。愛知県出身、・・・ダーウィン・メダルは、英国王立協会がダーウィンの偉業を記念し制定した進化生物学、遺伝学の世界最高の賞。百年を超える歴史の中で、外国人の受賞はノーベル賞受賞者など数人だけ。・・・」との新聞記事がある(1992年12月23日付け日刊工業新聞3頁)。
オ 故ダーウィンの住居
故ダーウィンが40年以上生活し、「種の起原(源)」を著した住居(「ダウンハウス」)が、現在でも保存され、名所となっている。
「AB-ROAD/エイビーロード」の「ダーウィン生誕200年!チャールズ・ダーウィンの家を訪ねてみよう」に係るウェブサイト。
(http://www.ab-road.net/europe/uk/london/guide/03176.html)
「英国政府観光庁」の「イングリッシュ・ヘリテージ・オーバーシーズ・ビジター・パス」の「詳細」に係るインターネットウェブサイト。
(http://www.visitbritainshop.com/japan/attractions/history-and-heritage/product/english-heritage-overseas-visitor-pass.html#tab2)
カ 上記アないしオによれば、故ダーウィンは、その母国である英国において、広く親しまれ敬愛されている人物であることが優に推認できる。
(4)本願商標の構成・態様
本願商標は、前記1のとおり、「Darwin」の欧文字と「ダーウイン」の片仮名から構成されている。しかして、その両文字は、先に説示したとおり、故ダーウィンを直ちに認識させるものであるから、本願商標は、故ダーウィンを想起させるものというのが相当である。
(5)本願の経緯
本願商標の出願の経緯における請求人の主張を踏まえても、故ダーウィンを想起させる本願商標を採択するのに合理的な事情は見当たらない。
また、請求人の提出に係る商品カタログによれば、「Darwin」と名付けられた商品説明のページには、「終わりなき進化/進化とは、成長ではなく変化/環境への適応による変化によって、新たな自分へと生まれ変わること」の記載があり、「Darwin」のロゴと商品の「進化」を結びつけるキャッチコピーが表示されており、故ダーウィンの名称の著名性に便乗していることが窺えるものである。
そうとすれば、本願は、故ダーウィンを直ちに認識させる略称をもって、同人の名声に便乗する意図に登録出願されたものと推認しうるものである。
(6)著名な略称の登録の是非について
「ところで、我が国において、その名称、氏名又はそれらの略称をもって著名な者と無関係な者が、その承諾なしに前記の名称等からなる商標について登録を受けることは、それが商標法第4条第1項第8号及び同条第15号等によって商標登録が受けられない場合に当たらないとしても、当該名称等に係るものの名声を冒用して不正な利益を得るために使用する目的、その他不正目的をもって登録出願されたものと認められる限り、商取引秩序を乱すものであり、ひいては国際信義に反するものというべく、公序良俗を害する行為というべきであるから、同条第7号に該当すると解すべきである。」(平成10年(行ケ)第11号、平成11年3月24日東京高等裁判所判決)旨判示されているところ、これを本願商標についてみれば、本願商標は、前記(1)のとおり、故ダーウィンの著名な略称であると認められ、同人の死後、本願商標の登録出願時はもとより現在においても、その者の著名性は、継続しているものと認め得るものであるから、同人の遺族等の承諾を得ることなく本願商標を指定役務について登録し、独占して使用することは、世界的に著名な死者の著名な略称の名声に便乗し、公正な取引秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公の秩序又は善良の風俗を害するものといわなければならない。
(7)小括
前記(1)ないし(6)によれば、故ダーウィンは、英国の生物学者として、現在においても、少なくとも我が国及び英国において、著名な存在であると同時に広く親しまれ敬愛されている人物ということができる。
そして、「Darwin(ダーウィン)」は、故ダーウィンを表す略称として、著名であると認められ、正式な同人の氏名の表記(Charles Robert Darwin)ではなくとも、現在において、同人を直ちに認識させるものである。
してみれば、本願商標をその指定商品について登録することは、著名な故ダーウィンの著名な略称をもって、その名声に便乗し、指定商品についての使用の独占をもたらすことになり、公正な取引秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公の秩序又は善良の風俗を害するものといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(8)請求人の主張について
ア 請求人は、「『ダーウイン』に対する一般人の認識の程度について、『Darwin』又は『ダーウイン』の商標に接したとき、それが商標登録を受けていること、あるいは商標登録を受けることや、一般的な商品/役務に使用されていることに関して、特別な感情・反発を抱くことはないと考える。現に、会社名や各種の商品/役務において何らの問題の発生もなく使用されてきている。」旨主張する。
しかしながら、我が国において、現に、会社名や各種の商品及び役務において何らの問題の発生もなく使用され、登録商標が存在するとしても、前記のとおり、英国を代表する著名人の略称が、他国の一法人によって商標登録されるのは、例えば、我が国の著名な人名などが他国で商標登録されることについて、不快感などの国民感情が生じることと同様であるから、該国の国民感情を害するおそれがあるというべきである。そして、本願商標について、同人の遺族等の承諾を得ているものでもなく、かつ、該国において、国民感情を害するおそれがないとする証拠は提出されていない。
イ 請求人は、「『現代社会でも、その略称「ダーウイン」あるいは「チャールズ ダーウイン」は、祭典・行事・イベントの開催の名に付されるなど、国や地域の公共的な取り組みに関わっている』旨の指摘がある。しかしながら、例示された事例は極めて一時的、期間的(100年、200年記念)なものであり、また『ダーウイン』に特定されず、一般的な歴史的人物であれば掲載される辞典、教科書などの説明/解説で使用された例である。これらにより『・・・国や地域の公共的な取り組みに関わっている』とされ、このことにより、公益性、社会公共の利益を損なう、あるいは国際信義に反すると判断されてしまうことには承服できない。」旨主張する。
しかしながら、故ダーウィンの氏名及びその略称などが、たとえ一時的、期間的であっても、祭典・行事・イベントの開催の名に付されるなど、国や地域の公共的な取り組みに関わっているなら、それを商標登録することは、公益性、社会公共の利益を損なうことにつながるものである。
そして、故ダーウィンは、英国の生物学者として、現在においても、少なくとも我が国及び英国において、著名な存在であると同時に広く親しまれ敬愛されている人物ということができるものであって、本願商標をその指定商品について登録することは、著名な故ダーウィンの著名な略称をもって、その名声に便乗し、指定商品についての使用の独占をもたらすことになり、公正な取引秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公の秩序又は善良の風俗を害するものといわざるを得ない。
ウ 請求人は、「拒絶査定の理由において指摘された事例は、特定の指定商品や役務との関連は全く感じられない祭典・行事・イベントである。これらから、『Darwin』又は『ダーウイン』の商標は、公益性、公共性を云々する、国民や特定地域の住民などにおける、所謂、『共有財産』的なものでないと考える。『Darwin』又は『ダーウイン』の文字に接したとき、進化論で有名な生物学者を想起するかもしれないが、そのことが、本願指定商品である『眼鏡』の類における本願商標の使用において、公益的な施策等に便乗しているとの認識や、公共的利益を損なう、国際信義に反するなどの考えに至るようなことは、一般的認識として生じないと断言できる。また、そのような恐れもないと考える。本願商標は、本願指定商品の使用においては、公の秩序を害するようなおそれはない商標である。なぜ、本願指定商品である『眼鏡』の類のみが商標『Darwin』『ダーウイン』の登録を受けることができないか理解できない。」旨主張する。
しかしながら、前記のとおり、本願商標からは故ダーウィンを想起するものであり、同人の著名性、また、その母国である英国を代表する知名人とされていることからすれば、同人及びその業績と本願の指定商品との関連性の強弱が、本件の判断を左右するものということはできない。
また、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するか否かは、本件の審決時において、個別かつ具体的に判断がなされるべきものであり、他人の商標登録の存在により、本件の判断が左右されるものではない。
エ 請求人は、「本願指定商品である『眼鏡』の類は、現在では視力矯正器具というより、ファッション的な要素を多く含む商品となっており、また一般日用雑貨と異なる商品であって、当該商取引者及び一般購入者においては、本願商標に対して『歴史上の人物の名称を使用した公益的な施策等に便乗しているとの認識』や、『その遂行を阻害し、公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら、利益の独占を図る意図』をもつような商標であると認識するようなことはなく、本願商標は、その使用において、何ら公正な競業秩序を害するものでなく、社会公共の利益に反するものでもない。事実、本件出願人は、提出物件のカタログのように本願商標を、平成23年10月頃から何の問題を生じることなく使用してきている。本件出願人の認識では、眼鏡に商標『Darwin』『ダーウイン』を使用したため特別に販売チャンスが多くなったとは考えていない。『Darwin』『ダーウイン』は他の一般的な商標と同様な位置づけで使用してきた。」旨主張する。
しかしながら、本願商標は、我が国において著名な故ダーウィンの略称であることは、疑いようのない事実であって、このような略称を採択、使用するのは、その名声に便乗し、指定商品についての使用の独占を狙ったものであり、公正な取引秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公の秩序又は善良の風俗を害するものといわざるを得ない。
なお、世界的に著名な故人を想起させる商標(ダリ/DARI)についての商標法第4条第1項第7号に係る裁判例(平成13年(行ケ)第443号、平成14年7月31日東京高等裁判所判決)が存在し、同事件では、前記商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するとの判示がなされていることを付言する。
してみれば、請求人の主張は、いずれも理由がなく採用することができない。
(9)結語
以上のとおり、本願商標が、商標法第4条第1項第7号に該当するものとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消すことはできない。
よって、結論のとおり、審決する。
別掲
審理終結日 2013-03-08 
結審通知日 2013-03-15 
審決日 2013-04-15 
出願番号 商願2011-64177(T2011-64177) 
審決分類 T 1 8・ 22- Z (X09)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 平松 和雄 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 井出 英一郎
山田 和彦
商標の称呼 ダーウイン 
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