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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30
審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30
管理番号 1275233 
審判番号 無効2012-890043 
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-05-29 
確定日 2013-05-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第5051657号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5051657号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5051657号商標(以下「本件商標」という。)は、「トゥルシー」の文字を横書きにしてなり、平成18年8月28日に登録出願、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,酒かす,ホイップクリーム用安定剤」を指定商品として、同19年5月15日に登録査定、同年6月1日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
(1)無効事由
本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第7号及び同第16号に該当し、同法第46条第1項第1号又は同第5号により、無効にすべきものである。
(2)無効原因
ア 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
(ア)トゥルシーについて
a 甲第1号証(「KENKYUSHA’S NEW ENGLISH-JAPANESE DICTIONARY 新英和大辞典 第六版」2002年3月、株式会社研究社発行)には、tulsi(称呼「トゥルシー」)がカミメボウキ(シソ科メボウキ属の植物)を表すものとして記載されている。
b 甲第2号証(西岡直樹著「インド花綴り」1988年7月1日、木犀社発行)には、トゥルスィー(カミメボウキ)は、ヒンドゥー教のもっとも神聖な植物の名前と記載されるとともに、日本語名カミメボウキ 神目箒〔シソ科〕(ヒ、べ)Tulsi(サ)Tulasiと記載されており、香料として紅茶に入れられたり、薬として用いられる旨が記載されている。
c 甲第3号証(「Medicinal plants in Viet Nam」1990年、World Health Organization Institute of Materia Medica)には、tulsiはOcimum Sanctum L.(カミメボウキ)の英語名と記載されるとともに、煎じて飲む、沸騰したお湯で煮だしたものを飲む旨が記載されている。
d 甲第4号証(「Indian Medicinal Plants」1995年、Orient Longman Limited)には、tulsiはOcimum tenuiflorum Linn.(カミメボウキ)のヒンドゥー語名と記載されるとともに、薬として用いられる旨が記載されている。
e 甲第5号証(トリローク・チャンドラ・マジュプリア著 西岡直樹訳「ネパール・インドの聖なる植物<新装版>」1996年9月30日、(株)八坂書房発行)には、トゥラシーtulasiはカミメボウキのサンスクリット語名である旨が記載されるとともに、煎じて飲用する等の用法で薬として飲食される旨が記載されている。
(イ)上記のように、本件商標は、「tulsi」の称呼を片仮名で表したものであって、カミメボウキ(和名)という植物の名称である。そして、この植物は香料や薬として用いられ、あるいは、茶のように煎じて飲まれている(甲第2号証ないし甲第5号証)。また、「トゥルシー」は、これを原材料とする茶として日本国内で流通している(甲第6号証)。なお、茶の賞味期限は、2年間に設定されたものが多く、甲第6号証の賞味期限が2009年(平成21年)1月10日と記載されていることから、「トゥルシー茶」は、平成19年1月10日前後にすでに日本国内で流通していたことが推測される。さらに、トゥルシーを含有することをうたった健康食品が少なくとも平成16年9月21日において日本国内で流通していた(甲第7号証)。(ウ)このため、「トゥルシー」は、本件商標の指定商品のうち、「トゥルシーを原材料とするコーヒー及びココア,茶,食品香料(精油のものを除く。)」の原材料を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるので、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、本件商標は、その指定商品のうち、「トゥルシーを原材料としないコーヒー及びココア,茶,食品香料(精油のものを除く。)」に本件商標を使用すると、これらの商品にもトゥルシーが原材料として使用されているかのように、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるため、同法第4条第1項第16号に該当する。
また、香草や薬草は飲食物等に添加されることが需要者において通常に行われている(例えば、香草あるいは薬草として知られるバジルはイタリア料理などに用いられている。)ことからすれば、その他の指定商品「調味料,香辛料,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,酒かす,ホイップクリーム用安定剤」に対して、「トゥルシー」又はこれを加工したものを添加したり、あるいは、そのものとして用いたりすることが当然に考えられる。このため、本件商標は、これらの指定商品のうちトゥルシーを原材料とする指定商品に対しては、商標法第3条第1項第3号に該当し、「トゥルシー」を原材料としない指定商品に対しては、同法第4条第1項第16号に該当する。
さらに、本件商標は、指定商品「コーヒー豆」に使用すると、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるため、商標法第4条第1項第16号に該当し、万が一、コーヒー豆に「トゥルシー」を添加する場合があったとしても、同法第3条第1項第3号に該当する。
イ 商標法第4条第1項第7号該当性について
甲第1号証ないし甲第5号証で紹介されるように、「トゥルシー」は少なくとも出願時のインドにおいて香草や薬草の名前として広く知られており、インドにおいて原材料名として「トゥルシー」が付された食品等を日本国内に輸入し、販売することは、現代社会において国際経済取引が極めて広範囲、かつ、高度に進展した状況に照らせば、当然に予測されることである。そして、被請求人のホームページの「代表者からのごあいさつ」の欄の記載によれば、被請求人は、「トゥルシー」がインドにおいて広く知られていることを知って、本件商標を登録出願し、登録を得たことがうかがえる(甲第8号証)。このような被請求人の行為に基づいて登録された本件商標が、国際商道徳に反するものであって、公正な取引秩序を乱すおそれがあるばかりではなく、国際信義に反し公の秩序を害するものであることは明らかである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
ウ なお、「ocymum tulsi」の文字からなる商標であって、第29類「野菜及び植物等を主原料とする粉末状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・ブロック状・ゼリー状・液体の加工食品等」を指定商品とした過去の商標登録出願も、商標法第3条第1項及び同法第4条第1項を理由に拒絶されている(甲第7号証)。
また、被請求人は、そのホームページにおいて「トゥルシー」がシソ科メボウキ属の植物の名称であり、販売する商品はこれを原料にした茶である旨を掲載しており(甲第8号証)、「トゥルシー」が茶の原料であることを自ら認めている。
以上のとおり、本件商標は、査定時において特別顕著性が不備であるにもかかわらず登録されたものであり、独占適応性に欠けるばかりでなく、公益的見地からも具体的的確性に欠ける。
エ また、現在において「トゥルシー」は、香草、ハーブの一種として広く知られていることにかんがみれば、このような商標を特定人に独占使用させることは公益上適当でないといえる。例えば、インターネットの検索(ヤフー株式会社提供)によると、キーワード「トゥルシー ハーブ」で約20万件、キーワード「tulsi herb」で約100万件ヒットする(平成24年4月24日検索)。
このような状況の下でトゥルシーを原材料としない指定商品に対して「トゥルシー」が使用されれば、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあることから、少なくとも現時点において商標法第4条第1項第16号に該当する。
オ むすび
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第7号及び同第16号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号又は同第5号により、無効とすべきである。

3 被請求人の主張
被請求人は、前記2の請求人の主張に対し、何ら答弁するところがない。
4 当審の判断
(1)請求人提出の証拠によれば、次のとおりである。
ア 甲第1号証は、「KENKYUSHA’S NEW ENGLISH-JAPANESE DICTIONARY 新英和大辞典 第六版」(2002年(平成14年)3月、株式会社研究社発行)の写しであり、「tul-si」の項に、「(インド)〔植物〕カミメボウキ(Ocimum sanctum)(シソ科メボウキ属の芳香のある多年草;インドではVishnu神に献じるものとして神聖視されている)」と記載されている。
イ 甲第2号証は、1988年(昭和63年)7月1日、木犀社発行の書籍「インド花綴り」の写しであり、「もっとも神聖な植物/カミメボウキ」の項に、「トゥルスィー(カミメボウキ)はヒンドゥー教のもっとも神聖な植物の一つになっている。」「葉はハッカのような香気を含み、香料として紅茶に入れられるが、薬用にも用途が広く、マラリヤを寄せつけないともいわれ、また生葉をもんで蜂蜜と飲めばかぜやせきに効くともいわれている。」と記載されている。
ウ 甲第3号証は、1990年(平成2年)、「World Health Organization Institute of Materia Medica」発行の書籍「Medicinal Plants in Viet Nam」の写し及びその訳文であり、「Ocimum sanctum L.」(カミメボウキ)の項に、英語名として「tulsi」の記載があるほか、薬の効用として抗菌、解熱、鎮痛の性質を有し、煎じ出したものを飲むか吸入する旨の記載がある。
エ 甲第4号証は、1995年(平成7年)「Orient Longman Limited」発行の書籍「Indian Medicinal Plants Volume4」の写し及びその訳文であり、「Ocimum tenuiflorum Linn.」の項に、効用として、苦み、辛み、芳香を加え、・・・、解熱効果等があり、心臓病等に役に立つ旨の記載がある。
オ 甲第5号証は、1996年(平成8年)9月30日、(株)八坂書房発行の書籍「ネパール・インドの聖なる植物」の写しであり、「カミメボウキ ラクシュミーの化身」の項に、「カミメボウキはサンスクリット語でトゥラシーtulasiと呼ばれている。」「トゥラシー(カミメボウキ)Ocimum sanctumはシソ科に属す。」の記載があるほか、発汗、気つけ、去たん等の効能がある旨の記載がある。
カ 甲第6号証は、株式会社アーナンドが販売する「アーユルヴェーダ トゥルシー茶」の包装紙であり、そこには「名称:トゥルシー茶」「原材料名:トゥルシー」「賞味期限:’09.1.10」の記載がある。
(2)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
上記(1)によれば、「トゥルシー/tulsi」は、インド原産のシソ科メボウキ属の植物であり、解熱、鎮痛など様々な効用があり、煎じ出して茶として飲まれるほか、香料としても使用されるものであることが認められる。そして、トゥルシーについて我が国を含む書籍において紹介されており、本件商標の指定商品である食品の分野においては、健康増進等に機能する商品の開発、販売が盛んに進められ、健康等に効果がある成分、植物等への関心が高いことからすると、「トゥルシー」は、上記植物を意味するものとして、取引者・需要者の間に相当程度認識されていたものということができる。
そうとすれば、本件商標をその指定商品中「コーヒー及びココア,茶,調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト」に使用したときは、当該商品がトゥルシーを原材料に使用した商品であると認識され、トゥルシーを原材料として使用していない上記商品については、当該商品がトゥルシーを原材料としてなるものとその品質について誤認を生ずるおそれがあり、また上記商品以外の本件指定商品に使用するときは、当該商品がトゥルシーであると商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるというのが相当である。
なお、前記3のとおり、被請求人はこの点について何ら意見を述べていない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性について、
請求人が提出した証拠を見ても、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとすべき事情は見当たらない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第46条第1項第1号に基づき、無効とすべきである。
審理終結日 2013-02-26 
結審通知日 2013-02-28 
審決日 2013-03-15 
出願番号 商願2006-79817(T2006-79817) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (Y30)
T 1 11・ 13- Z (Y30)
T 1 11・ 272- Z (Y30)
最終処分 成立  
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 小俣 克巳
堀内 仁子
登録日 2007-06-01 
登録番号 商標登録第5051657号(T5051657) 
商標の称呼 トゥルシー 
代理人 細田 良一 
代理人 津久井 照保 

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