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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y35
管理番号 1275227 
審判番号 無効2011-890078 
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-09-15 
確定日 2013-05-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第4988489号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4988489号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4988489号商標(以下「本件商標」という。)は、「渋谷ウォーカー」の文字を標準文字で表してなり、平成17年11月17日に登録出願、第35類「インターネットによる広告,電子メールによる広告,その他の広告,ウェブサイト上の広告スペースの貸与,郵便による広告物の配布,その他の広告物の配布,広告に関する情報の提供,トレーディングスタンプの発行,インターネットによりデータベースを利用させる事業の管理又は運営及びそのための一般事務の代理又は代行,コンピュータによる顧客管理,コンピュータによる経営の診断及び指導,情報処理及び情報通信ネットワークの運営に関する事業の経営の診断又は経営に関する助言・その他の経営の診断又は経営に関する助言,企業の人事管理のための適性検査,商品の通信販売に関する情報の提供,電子計算機端末による商品の販売に関する情報の提供,書籍の販売に関する情報の提供,情報通信関連機器の販売に関する情報の提供,新商品の販売に関する情報の提供・その他の商品の販売に関する情報の提供,事業情報の提供,建物又は土地に関する市場調査,コンピュータによる市場調査,その他の市場調査,市場調査に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,経営管理者・科学技術者・通訳のあっせん,その他の職業のあっせん,職業のあっせんに関する情報の提供,競売の運営(インターネットオークションの運営を含む。),競売の運営(インターネットオークションの運営を含む。)に関する情報の提供,新聞の予約購読の取次ぎ,書類の複製,速記,筆耕,通信販売に関する事務の代理又は代行,輸出入に関する事務の代理又は代行,一般事務の代理又は代行,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,文書又は磁気テープのファイリング及び電子計算機によるファイル管理,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,求人情報の提供,自動販売機の貸与,コンピュータデータベースへの情報構築及び情報編集,建物又は土地に関する事業の企画,魚・花市場における相場に関する情報の提供,電子計算機端末による企業情報の提供,その他の企業情報の提供,事業の経営及び管理のための製品計画・商品の販売促進の企画に関する情報の提供,インターネットを利用した企業経営に関する情報の提供,経営の診断及び指導に関する情報の提供,事業の管理又は運営に関する情報の提供,輸出入に関する事務の代理又は代行に関する情報の提供,企業の経営管理に関するコンサルティング,企業経営に関する情報の提供,企業経営ノウハウに関する情報の提供,市場及び販売戦略に関する指導及び助言,事業の管理・運営及び組織に関する助言又は援助,新事業の経営・管理に関する製品計画・商品の販売促進の企画についての助言・指導,電子計算機の操作に関する助言,インターネットドメイン名取得申請手続きの事務の代行,受託による広告用看板の制作,アンケート調査に関する情報の提供,インターネットにおける商品の展示即売会の企画・運営又は開催,商品の展示即売会の企画・運営又は開催,商品の売買契約の媒介又は取次ぎ,電子計算機を用いて行う情報検索事務の代行」を指定役務として、同18年8月9日に登録査定、同年9月15日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由(上申書を含む。)を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第74号証(枝番を含む。)を提出した(なお、枝番号のすべてを引用するときは、枝番号を省略することがある。)。
1 無効理由について
本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。

2 請求の利益
請求人及び請求人の関連会社は、後述のとおり、「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとして「都市名又は地域名」を示す語と「ウォーカー/Walker」の語を結合した商標を使用した雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等の出版物を多数発行している。また、この出版事業と関連して、「ウォーカー/Walker」の語を使用したインターネット事業や広告事業も行っている。
そうすると、本件商標「渋谷ウォーカー」がその指定役務について使用された場合、例えば、「渋谷ウォーカー」の商標のもとで広告事業が行われたり、電子計算機端末による新商品の販売に関する情報の提供などの役務が提供されたりした場合には、その業務は請求人によって行われているものと需要者・取引者に誤認混同を与えることがあり、請求人の利益が著しく阻害されるおそれがある。したがって、請求人は、本件無効審判請求をすることについて利害関係を有する者である。
なお、現在、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」等の出版事業や「ウォーカープラス/Walkerplus」等のウェブサービス事業は、請求人である株式会社角川マガジンズが行っているが、それ以前における当該事業は、株式会社角川書店、株式会社ウォーカープラス、株式会社角川書店北海道、株式会社角川メディアマネジメント及び株式会社角川マーケティングなどにより行われてきており、会社の分割、吸収合併等の変遷のため、時期によって事業主体の名称が異なる場合があるが、以下の主張において、請求人と記載した場合、関連会社(過去に存在した関連会社を含む。)を含めるものとする。

3 本件商標と請求人の商標及び請求人主張の要旨
(1)本件商標の構成等について
本件商標は、「渋谷」と「ウォーカー」の語を一連に書してなる商標であり、商標中の「渋谷」の語は、東京都内有数の繁華街として広く知られた都市名又は地域名である。また「ウォーカー」の語は、「歩く人」を意味する英語の「WALKER」の称呼を表す語である。
したがって、本件商標からは「渋谷という都市又は地域を散歩する人」という観念が生じ、また「シブヤウォーカー」の称呼が生ずる。
(2)請求人商標の使用実績及び周知著名性について
ア 「ウォーカー/Walker」の語を含む情報誌の発行
(ア)請求人は、平成2年3月、「東京」を中心とした首都圏の都市情報誌「東京ウォーカー/Tokyo Walker」を創刊した。この雑誌は、「東京のテレビ番組、新作商品、映画、グルメ、ファッション、旅行、ドライブ等、さまざまな分野の情報を網羅して、雑誌を通して読者に提供する」というコンセプトで創刊されたものである。
(イ)請求人は、雑誌「東京ウォーカー/Tokyo Walker」を皮切りに、同様のコンセプトで「関西」を中心とした都市情報を提供する雑誌「関西ウォーカー/Kansai Walker」を平成6年6月に発刊し現在に至っている。また、同年12月「ゲーム情報」に特化した情報誌「月刊ゲームウォーカー/Game Walker」を発行した。
これらの雑誌も好評を得たことから、「ウォーカー/Walker」の語を含む、「マンスリーウォーカー/MONTHLY WALKER」(平成7年6月?同8年10月)、「東海ウォーカー/Tokai Walker」(平成8年7月?)、「メンズウォーカー/MEN’S WALKER」、(平成8年11月?同12年9月)、「ワールドウォーカー/World Walker」(平成9年1月?同10年12月)、「九州ウォーカー/Kyushu Walker」(平成9年6月?同21年6月:後継誌として同月「福岡Walker」創刊)、「横浜ウォーカー/YOKOHAMA Walker」(平成10年3月?)、「千葉ウォーカー/Chiba Walker」(平成11年6月?同21年3月)、「神戸ウォーカー/Kobe Walker」(平成12年6月?同20年3月)、「北海道ウォーカー/Hokkaido Walker」(平成12年6月?)、「大人のウォーカー」(平成16年9月?同21年4月)、「ファミリーウォーカー/Family Walker」(平成16年3月?)、「シネコンウォーカー」(平成17年10月?)、「ハイウェイウォーカー/Highway Walker」(平成17年4月?)のような各種の情報誌(定期刊行物)を現在までに発行した。
(ウ)上記したとおり、請求人は、雑誌等の媒体を通じて提供される情報の内容・テーマ・対象を明確に示す「『都市又は地域』又は『ゲーム』、『ファミリー』等の情報を示す語(以下、総称して『情報を示す語』という。)」と「ウォーカー/Walker」の語とを結合した「○○ウォーカー/Walker」という構成から成る商標を使用している。以下の説明では、「東京ウォーカー/TokyoWalker」のように「都市名又は地域名」と「ウォーカー/Walker」の語を結合させた商標を「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」と記載し、「ゲームウォーカー/Game Walker」のように「ゲーム」、「ファミリー」等の「都市又は地域」以外の情報を示す語と「ウォーカー/Walker」の語を結合させた商標を「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」と記載する。また、両方を含めて総体的に表現する場合には「○○ウォーカー/Walker」と記載する。
イ 雑誌の販売部数に関するレポート及び印刷部数
(ア)社団法人日本ABC協会から発行された雑誌の販売部数に関するレポート「雑誌公査レポート」(平成4(1992)年?同18(2006)年:甲13)によれば、例えば、請求人の「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌が8誌出揃った時期である平成12(2000)年において、8誌の総販売部数は150万部前後となり、全国誌である著名な週刊誌「週刊朝日」(約62万部)よりもはるかに多い。また、本件商標の出願の年である平成17年においても、総販売部数は70万部前後であり、上記週刊誌「週刊朝日」(約44.6万部)よりもはるかに多い。
以上の比較からしても、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌が大量に発行され、その結果、著名性を獲得していることは疑う余地はない。
(イ)また、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌の印刷部数は、印刷会社の発行した印刷部数等の証明書(甲14)から明らかであり、大量の印刷部数は、それだけ多くの、前記商標を使用した雑誌が市場に流通し、かつ、需要者・取引者の目に触れる機会があることを示している。
また、本件商標の出願日前より定期的に発行される雑誌である「月刊ゲームウォーカー/Game Walker」、「マンスリーウォーカー/MONTHLY WALKER」、「メンズウォーカー/MEN’S WALKER」(「マンスリーウォーカー/MONTHLY WALKER」の後継誌にあたる)、及び「World Walker」は、上記証明書(甲14)に示した各号あたりの平均印刷部数から、数年にわたり刊行され、市場に流通していたことが明らかである。
(ウ)さらに、これらの定期的に発行される「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌は、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌と相互に関連性をもって発行されたもので、「東京ウォーカー/Tokyo Walker」と「月刊ゲームウォーカー/Game Walker」等の関係からいっても相互に関連して事業展開されていたことは明白である(甲17、甲18)。そして、それぞれが他誌の広告を積極的に掲載してきた(甲22の4の1)。
また、合同の企画や合同の懸賞を企画し、合同イベントを開催した際には、例えば、雑誌「メンズウォーカー/MEN’S WALKER」内に、関連して「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌が存在していることが認識できる記事も複数掲載されている(甲22の6の2)。
ウ 増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン
(ア)請求人は、定期的に発行している「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌以外にも、商標の使用により形成されたブランド力を更に高めるために、これらの雑誌の増刊号・ムック・書籍・フリーマガジンを種々発行している。そして、これらの出版物の多くは全国的に流通している。
増刊号・臨時号等の特別版として発行されたものには、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した出版物が複数種類存在しており、その一例を紹介すると、書籍「ニューヨーク・ウォーカー」(平成4年2月)、書籍「オーストラリア・ウォーカー」(平成6年4月)、増刊号「広島ウォーカー/Hiroshima Walker」(平成11年11月)、増刊号「ソウルウォーカー/Seoul Walker」(平成13年6月他)、増刊号「静岡ウォーカー/Shizuoka Walker」(平成13年8月)、増刊号「京都ウォーカー/Kyoto Walker」(平成16年12月)、フリーマガジン「香港ウォーカー/Hongkong Walker」(平成17年9月)がある(甲26)。
(イ)次に、「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の商標を使用した増刊号・ムック・書籍・フリーマガジン等の出版物の一例を紹介すると、TokyoWalker増刊号「DIGITAL WALKER」(平成10年12月)、KansaiWalker増刊号「e WALKER」(平成12年1月)、YOKOHAMA Walker増刊号「横浜中華街」(平成12年12月)、TokaiWalker増刊号「東海のめちゃめちゃうまい店2001」(平成13年1月ほか)、KyushuWalker増刊号「九州キャンパスガイド/CampusGuide」(平成13年8月)、HokkaidoWalker特別編集観光ガイドブック「BIGRUN北海道Caio」(平成15年5月)がある(甲27)。
(ウ)このほか、「都市名又は地域名」以外の複数種類の「○○ウォーカー/Walker」も「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の関連で発行されている事実がある(甲28)。
以上より、請求人が複数種類の「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用した増刊号・ムック・書籍・フリーマガジン等の出版物を、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌と関連性を持って発行してきたことは明らかであり、その結果として、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標のブランド力を向上することに寄与していることも明白である。
エ 宣伝・広告等の販売促進活動
(ア)請求人は、「東京ウォーカー/Tokyo Walker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌について需要者・取引者に広く認識してもらうために、雑誌の創刊時や、多くの需要者が見込める時期(例えば、入学時期や入社時期の4月やゴールデンウィーク等)、雑誌創刊○○周年記念の時期に、戦略的、かつ、大々的に書店、大学生協の店頭や街頭などでキャンペーンを行ってきた。また、請求人は上記のようなキャンペーンのほかに、朝日新聞や読売新聞等の全国紙での新聞広告、電車の中吊り広告及びラジオやテレビなどの広告、屋外広告等によっても販売促進活動を行ってきた(甲30の1ないし4)。
(イ)請求人は、販売促進活動の一環として定期的に「東京ウォーカー/Tokyo Walker」や「九州ウォーカー/Kyushu Walker」の商標を使用したイベントを各都市・各地域において開催している。また、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌を各都市、各地域で出版していった結果、それらはシリーズの雑誌として全国的に拡大することになり、これに伴い、「全国ウォーカーまつり」、「Walkerミーティング」といった全国一斉のイベントを開催してきた(甲30の5)。
そして、「Walkers’Festival’98秋」では、各地のFM局と連動してラジオの特別番組が行われ(甲30の6)、各特別番組のサブタイトルに「Tokyo Walker」等がそれぞれ付けられ、それらのサブタイトルも放送されていることから、「都市名及び地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌が、シリーズとして存在していることを容易に認識するはずであり、さらに、「全国Walkerミーティング」において、そのイベントタイトルに8つの「都市名及び地域名+ウォーカー/Walker」の商標が列記されており、これに参加した全国の需要者・取引者は、請求人が「都市名及び地域名+ウォーカー/Walker」の商標という統一された名称の下で同種の雑誌をシリーズ化して複数発行している事実を容易に認識することができたのである。
以上のように、請求人は、多大な広告費を投じて大々的なキャンペーンや種々のイベントを開催し、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌を需要者・取引者に広く認識させる活動を行ってきた。そしてこれらの活動が、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を、需要者・取引者にとって著名なものとする要因の一つであったことに疑いはない。
オ 雑誌の誌面
「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌・増刊号・ムック・フリーマガジン等の出版物は、統一された名称の下、ひとつのまとまったシリーズとして全て同様のコンセプトで発行されているだけではなく、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標が使用された出版物は、請求人と関係する商品であると需要者・取引者に確実に認識される記事が多数掲載されている。
請求人は、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌において、種々のコーナーを設けて情報を提供しており、これら各記事のタイトルに頻繁に種々の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の表記を使用している。これらの記事タイトルの存在は「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」のブランドイメージを雑誌等の内容と関連付けて需要者の記憶の中に形成していくために、請求人が積極的に採用してきた商標戦略の一つの表れであって、例えば、「東京ウォーカー/TokyoWalker」で渋谷の特集を掲載した際の、本件商標と同一の「渋谷ウォーカー」(甲4の8の1)、「東海ウォーカー/TokaiWalker」で東海4県の特集を掲載した際の「岐阜Walker」、「三重Walker」、「浜松・豊橋Walker」(甲8の7の1)等がある。もちろん、これらの記事タイトルやミニ情報掲載欄のコーナー名が商品「雑誌」についての商標として使用されていると考えているわけではないが、「東京ウォーカー/Tokyo Walker」のように「ウォーカー/Walker」の語を含む雑誌タイトルが付いた雑誌内に、雑誌のタイトルと同様の構成から成る「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」という記事タイトルを複数種類存在させるという構成を採ることにより、請求人は、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の構成からなる商標についての統一されたブランドイメージを需要者・取引者に形成してきたのである。そして、事実、このようなコーナー名と同一の雑誌である「新宿Walker」が発行されている(甲26の66等)。
カ インターネット上への展開
請求人は、インターネット上のウェブサイトを出版物と連動させて、相乗効果を生み出すことを平成7年ごろから開始しており(甲37の53、甲4の8の5、甲8の3の2、甲31の1、甲39の4、甲42の21)、現在、請求人は「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌の公式サイト「ウォーカープラス/WalkerPlus」(旧名称「WalkerPlus.com」)を各地域の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌と連動し、また時には独立したサービスとして展開するに至っている(甲31の2)。
そして、このサイト内で多数の「○○ウォーカー/Walker」の構成からなる商標を使用して、種々の情報を提供する役務等を提供している。例えば、グルメ情報については、「グルメウォーカー/グルメWalker」、映画情報については「ムービーウォーカー/MovieWalker」、旅行情報については「トラベルウォーカー/TravelWalker」、不動産情報については「ルームウォーカー/RoomWalker」等がある。
また、本件商標出願の直前の請求人ウェブサイト「ウォーカープラス/WalkerPlus」(http://www.walkerplus.com/)の情報を「INTERNET ARCHIVE Wayback Machine」(http://www.archive.org/)を利用して入手した写しからは、十分その内容を閲覧できるものではないが、少なくとも本件商標の出願前には、現在と同様に、エリア情報、グルメ情報、映画情報、結婚式情報を提供している。さらに、実際の記事にアクセスすると新商品情報を提供しており(甲31の3の2)、当該サイトに雑誌で提供されるような内容の情報が多数掲載されていることは明らかである。
この公式サイトは、情報誌として「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標が圧倒的な知名度を誇っていたこともあって、新聞や雑誌において広く紹介された(甲40)。また、公式サイトの情報は、定期的に発行される「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標が使用された各雑誌の表紙及び記事に掲載されている(甲4の17の5、甲6の7の5、甲10の9等)。
以上より、定期的に発行される「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標と相互に連動して、公式サイト「ウォーカープラス/WalkerPlus」も、広く需要者・取引者に知られるものとなっていることは明らかである。
キ 他社とのタイアップによる「ウォーカー/Walker」商標の活用
(ア)請求人は、「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標のブランド力を活用したいと考える他の企業や団体等から依頼を受けて又は共同で「他の企業や団体等の商標」と「ウォーカー/Walker」とを組み合わせて、他企業や団体等の商品やサービスに関する情報を掲載した増刊号やフリーマガジンを多数発行している。
(イ)前記出版物の一例として、増刊号「マックウォーカー/Mac Walker」(甲28の1)、増刊号「アイモードウォーカー/imode Walker」(甲27の17等)、フリーマガジン「ウォーカーズリビング/Walker’s Living/レオパレスマガジン」(甲28の15)、フリーマガジン「ローソンWalker」(甲28の45)、フリーマガジン「NEC soft Walker」(甲28の49)、フリーマガジン「オーロラモールジュンヌウォーカー/Aurora Mall JUNNU Walker」(甲28の53)がある。
また、他の企業や団体等から依頼を受けて(又は共同で)制作されたものとして、増刊号「Tokyo Walker/WindowsXP」(甲26の28)、フリーマガジン「Tokyo Walker/おサイフケータイスペシャル」(甲26の34)、フリーマガジン「Tokyo Walker/EZナビウォークスペシャル」他(甲26の36)、フリーマガジン「Tokyo Walker/TYO SPECIAL」(甲26の38)、フリーマガジン「香港ウォーカー/Hongkong Walker」(甲26の42:共同発行者(依頼人)香港政府観光局)、フリーマガジン「アキバウォーカー/Akiba Walker」(甲26の46:共同発行者(依頼人)秋葉原電気街振興会)、雑誌「Uniform Walker」(甲28の6)、増刊号「ドライブウォーカー/drive/Walker」(甲27の6)、雑誌「キャンパスウォーカー/Campus Walker」(甲27の30、甲28の31:共同発行者(依頼人)各大学)、雑誌「就職ウォーカー/SHUSHOKU Walker」(甲28の18)、増刊号「Walker Style」(甲27の37)、フリーマガジン「トラベルウォーカー/Travel Walker」(甲28の33)、フリーマガジン「ウォーカーダイジェスト/Walker digest」(甲28の60)などがある。
(ウ)また、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌には、別冊付録や綴じ込み冊子が含まれているものも多数存在し、その多くは、広告主からの要望で、雑誌とは別に、フリーマガジンとして、単独で需要者に配布される場合も多々ある。
したがってこのような冊子は、実際に独立した紙媒体として広告主の商品等を宣伝・広告することに寄与しており、例えば、フリーマガジン「Docomo Walker」(甲28の8)は、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモの依頼を受けて作成され、「東京ウォーカー/Tokyo Walker」に綴じ込み冊子として頒布され、後に販売促進キャンペーンの際において、単独で配布されたものである。
そのほか「Kyushu Walker/TOYOTA SPECIAL」(甲27の8:トヨタ自動車株式会社からの依頼)、「Konaka Walker」(甲28の73::株式会社コナカからの依頼)、「Zaurus Walker」(甲28の14:シャープ株式会社からの依頼)、「ZIPANG Walker」(甲28の50:宝酒造株式会社からの依頼)等も同様である。
このような綴じ込み冊子や別冊付録が広告主からの依頼により多数制作されている事実は、「一般需要者に何らかの情報を提供するための媒体として、著名な『都市名又は地域名+ウォーカー/Walker』の商標をはじめとする『○○ウォーカー/Walker』の揺るぎないブランド力を利用して、自社の商品等に関する情報を提供しようと試みる企業や団体が多数存在している」との主張を裏付けるものである。
(エ)さらに、請求人は、出版物と他の媒体(ラジオ・テレビ等)と連動させて相乗効果を出すというマルチメディア戦略をとっており、また、出版・放送等の分野の業種以外の他の業種の企業との提携も積極的に行っており、その事業展開にも多数、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標を用いている。
ニッポン放送とタイアップをし、平成11年10月から平成14年9月末まで放送されたラジオ番組「サウンドウォーカー/Sound Walker」は、「東京ウォーカー/TokyoWalker」、「横浜ウォーカー/YOKOHAMA Walker」及び「千葉ウォーカー/ChibaWalker」の3誌と連動して、各エリアのグルメ、ファッション、イベント情報を放送し、さらに、ウェブサイト(http://www.soundwalker.com.:現存はない。)とも連動していた。この放送については大々的な記者会見も開かれ(甲32の1)、多数の新聞・雑誌媒体に紹介された(甲37、甲42の17等)。
また、テレビ番組についても同様に、平成10年3月から数年にわたり、テレビ神奈川と共同で「横浜ウォーカーTV」を放送し(甲33)、平成12年4月には、テレビ東京で雑誌「東京ウォーカー/Tokyo Walker」に掲載の情報等を紹介する情報番組「TV Walker」を放送した(甲4の12の3)。さらに、これら以外でもラジオやテレビなどの番組やインターネット上において「○○ウォーカー/Walker」の語が活用されていることが新聞記事などに紹介されている(甲37、甲38、甲42等)。
このような他の企業と連携し、かつ、他のメディアを通じた事業展開が行えるのは、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標のブランド力が高いからこそである。
(オ)その他、請求人は、出版・放送・インターネット等の分野はもちろんのこと、それ以外の業種の企業とも積極的に提携を進め、その事業展開でも「ウォーカー/Walker」の語を含む商標を使用してきており、そのことは新聞記事などに紹介された(甲37、甲38、甲42等)。
その活用事例を列挙すると、平成7年6月に「Tokyo Walker NAVI」というカーナビゲーションソフトを販売(甲37の52、56:提携先企業 ゼンリン)、平成8年10月に「Tokyo Walkerカード」を発行(甲37の68:提携先企業 住友クレジットサービス)、平成12年4月に電子商取引の販売に当たって「Tokyo Walker」と連動して商品のプロモーションを展開(甲37の222、甲42の24:提携先企業 セブン-イレブン・ジャパン他)、平成12年7月に「Tokyo Walker」や「Hokkaido Walker」等の商標を用いて各地域・都市に合わせたインスタントラーメンを販売(甲37の236及び237、甲42の33、甲11の5の5、甲10の2の2、甲35:提携先企業 東洋水産)、平成13年7月に「Tokyo Walker」とタイアップしてアトラクションやイベントを後楽園ゆうえんちで実施(甲37の290:提携先企業 東京ドーム)、平成14年2月に電子商取引事業で「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌等を連動させ(甲37の304:提携先企業 サイバード )、平成14年4月に「アプラスWalkerカード」を発行(甲37の310:提携先企業 アプラス)、平成14年4月に「東京ウォーカーbb」「関西ウォーカーbb」の情報誌で紹介した商品をウェブサイトで販売(甲37の311:提携先企業 ネットプライス)、平成14年10月に「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌等で掲載した商品を携帯電話サイトで販売(甲37の323:提携先企業 ネットプライス)、平成16年10月に「東海大人のウォーカー」の中でオール電化の物件事例の公募・紹介(甲38の65:協賛先企業 中部電力)がある。
このような印刷物以外の商品・役務に「ウォーカー/Walker」の語を含んだ商標を使用することにより、請求人の主たる商品である雑誌・ムック等の「印刷物」についての「○○ウォーカー/Walker」の商標、その中でもとりわけ「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を需要者・取引者にさらに周知・著名に認識させることができるという相乗効果を生み出している。
(3)第三者による著名性の評価(調査結果、新聞記事、アンケート等)について
ア 株式会社ビデオリサーチによる「雑誌閲読率ランキング」(甲36)によれば、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌全体である「東京30km圏・関西・名古屋・北部九州・札幌・仙台・広島」の7地区合計の閲読率は、平成11(1999)年以来、8年間という長期にわたって、第3位又は第4位という圧倒的に高い順位を一貫して維持しており、当該商標を使用した各雑誌がそれぞれの主要な配布地域で多数の需要者・取引者に読まれていることは明白である。
イ 「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用した事業は、全国紙・地方紙を問わず多数の新聞媒体にも取り上げられている。
これらの記事は前記(2)の各項目で述べできた「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の構成から成る商標を使用してきた事実及びその評価をさらに裏付けるものである。
(ア)「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標の使用実績について述べられた新聞記事として、甲第37号証の1の1ないし甲第37号証の376、甲第41号証の1ないし57を提出する。その一例として、「雑誌では全国調査にもかかわらず首都圏の娯楽情報を満載した『Tokyo Walker』(角川書店)が同種の『ピア』を抜き一位。…」(甲37の2:平成4年5月21日付け朝日新聞)、「…首都圏と関西で同様の雑誌を出し、後発にもかかわらず各地域のタウン誌・情報誌の中で最も多くの読者を獲得した実績を持つ。…」(甲37の67:平成8年6月22日付け日本経済新聞)、「…『Tokyo Walker』で成功した角川書店が、全国で五誌目となる『YOKOHAMA Walker』(隔週刊)を出した。創刊日の3月24日即日売りきれとなり、5万部増刷したがそれもまた完売したのである。」(甲37の114:平成10年4月10日付け東京新聞)、「…タウン情報誌『千葉ウォーカー』(角川書店)が創刊される。…創刊号の発行部数は33万部で、昨春創刊された『横浜ウォーカー』の平均部数30万部を上回る。」(甲37の159:平成11年6月6日付け毎日新聞)、「角川書店の人気都市情報誌『ウォーカー』シリーズの初の海外版『台湾ウォーカー』(中国語、隔週発行)が17日、台湾で創刊される。発行部数は21万部で、台湾ではいきなり部数トップ級の雑誌になるとあって話題を呼んでいる。」(甲37の177:平成11年9月16日付け産経新聞)がある。
これらの記事から、平成2年に創刊された「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめ「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」が「都市情報誌」として非常に高い著名性を誇っていることがわかる。さらに、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌は、一般誌や経済誌の雑誌媒体及び書籍にも取り上げられ紹介されており、甲第42号証の1ないし59は、雑誌・ムック・書籍等の出版物及び出版物以外の事業展開(ウェブ等)も含めたウォーカーシリーズに関する雑誌記事の写しであり、また、甲第42号証の60ないし68は単行本(書籍)に「東京ウォーカー/TokyoWalker」等が掲載された事実を示すものである。
してみれば、上記の新聞・雑誌記事が掲載されているものの中には、全国紙や全国的に販売される雑誌も多数含まれており、また、新聞・雑誌のみならず、全国で販売される書籍や全国の需要者に広く読まれる書籍や漫画雑誌の記事においても「東京ウォーカー/Tokyo Walker」等が掲載されていることからしても、特定の地域に偏らず全国の需要者に「東京ウォーカー/Tokyo Walker」等の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用したシリーズ化された雑誌の存在が認識されていたことは明白である。
(イ)「その他の情報を示す語+ウォーカー/Walker」の雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等は、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌と同様に多数の新聞媒体にも取り上げられている(甲38の1ないし94)。
(ウ)インターネットでの展開に関しては、公式サイト「ウォーカープラス/Walkerplus」以外にも、「Walkers Net」をはじめとするパソコン通信やウェブサイトを用いた請求人の事業展開についても多数の新聞・雑誌媒体に記事が掲載され、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌と関連して展開されていることや、「ウォーカーズネット/Walkers Net」や「ウォーカープラス/WalkerPlus」の公式サイトも、広く需要者・取引者に受け入れられていることが紹介されている(甲39の1の1ないし甲40の93、甲42の21、25、30及び37他)。
(エ)請求人が多大な費用を費やして宣伝・広告してきた事実についても、多数の新聞媒体にも取り上げられており、その取り上げられた記事の内容の一例を紹介すると、(「関西ウォーカー/KansaiWalker」創刊に関して)「…角川書店がウォーカーの関西進出につぎ込んだ宣伝費は三億円強といわれ、一般に全国をマーケットに創刊される雑誌の宣伝費に相当するという。」(甲37の41:平成6年10月4日付け毎日新聞)、(「九州ウォーカー/KyushuWalker」創刊に際して)「五月下旬から九州各県の書店などを回り、キャンペーンをしてきた。…テレビCMなどを含めた宣伝費の総額は、三億五千万円にのぼるという。」(甲37の85:平成9年6月12日付け朝日新聞)、(「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」創刊に際して)「新雑誌がいきなり大部数を獲得したのは、道内では例がない大がかりな宣伝攻勢の効果が大きい。角川書店は、創刊PRのため広告費三億円を投入。盛んにテレビCMを流したほか、人気アイドルを起用したポスターをJR札幌駅などで大量に張り出すなどして浸透を図った。」(甲37の247:平成12年8月26日付け北海道新聞)ほか、雑誌「宣伝会議」(甲42の7)の記事には「東海地区に誕生したリージョナル誌/戦略的な創刊キャンペーンで25万部を完売/角川書店・東海ウォーカー」という見出しが付けられ、「東海ウォーカー」及び創刊の際のキャンペーンを高く評価する記事が掲載されている。
これらの新聞記事や雑誌記事からも、各種のキャンペーンが成功してきたことが裏付けられている。
(オ)他の企業と提携して「ウォーカー/Walker」の商標を使用してきた事実についてもまた新聞・雑誌に掲載されている(甲38の43及び75、甲42の46、51及び52)。
(カ)請求人は、「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめ「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」という統一された名称の下、同種の雑誌をシリーズ化して複数発行している事実を説明してきたが、請求人の雑誌がシリーズとして展開されていること、さらには、請求人の種々の事業展開全体が一連の事業として展開されていることを新聞や雑誌の記事を執筆する側も認識していたことは、その記事内容からも明らかであり、その一例として、「角川書店は人気タウン情報誌『ウォーカー』シリーズの第四弾として六月に『九州ウォーカー』(隔週刊)を創刊する。」(甲37の75:平成9年3月28日付け産経新聞)、「タウン・行楽地情報では、『ウォーカー・シリーズ』など角川書店のタウン誌の情報を活用」(甲42の22:平成12年2月14日付け日経ニューメディア)、「年内に主力の情報誌『ウォーカー』シリーズや『ザテレビジョン』などでも通販を展開する。」(甲38の55:平成14年7月5日付け日経産業新聞)、「タウン情報誌『ウォーカー』シリーズの情報収集・発信ノウハウを生かすとともに…」(甲40の2:平成12年4月7日付け日本工業新聞)、「角川書店は東京をはじめ四地域で発行している都市情報誌『ウォーカー』シリーズの編集を九十七年度末までにDTP(デスクトップ・パブリッシング)に全面的に切り替える」(甲39の4:平成9年10月6日付け日本経済新聞)がある。また、このような紹介のされ方をまとめたものとして、甲第43号証を提出する。
以上のとおり、新聞や雑誌で紹介された事実を(ア)ないし(カ)に分けて述べたが、このように多数の新聞や雑誌において請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」という統一された商標を使用した事業が紹介されている事実は、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」という統一された商標の著名性をさらに裏付けるものである。
ウ 他社の使用の存在・警告等
(ア)請求人以外の第三者が商品「印刷物」について「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の構成から成る商標を、一般的、かつ、大々的に使用している事実・状況が、本件商標の出願時及び登録査定時において請求人の知る限り存在しないということは、国会図書館所蔵の雑誌について調査を行った報告書(甲44)において、同館所蔵の「和雑誌新聞」のうち「ウォーカー」又は「Walker」の文字が含まれるものは、請求人を含む角川グループ(タイアップを含む)を除き、酣灯社の「スカイウォーカー」の1件のみであった。
また、社団法人日本雑誌協会の証明書(甲45)から、過去に発行された「マガジンデータ」(旧誌名:「会員社発行雑誌媒体資料」)に、請求人が発行する雑誌以外の雑誌のタイトル中に「ウォーカー/Walker」の語を含む雑誌が掲載されたことがないことが判る。
さらに、国内で発行されている新聞・雑誌をはじめ、極めて多数の定期刊行物を調査収録した年鑑『雑誌新聞総かたろぐ』を発行するメディア・リサーチ・センター株式会社の証明書(甲46)から、過去に『雑誌新聞総かたろぐ』に掲載された、雑誌・新聞のタイトル中に「ウォーカー/Walker」の語を含む雑誌・新聞は、無効審判で登録を無効とされた「函館ウォーカーズマニュアル」(甲54)と、学内という極めて限定された範囲で配布される学内報「Handai Walker」(阪大ウォーカー:甲47)の2件以外は皆、請求人の雑誌であることが判る。
以上の証明書や調査結果より、請求人以外の第三者が「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用している事実がないことは明白であり、この事実は第三者が「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標に接した場合に、市場における商標の使用状況から請求人の業務に係るものと認識することは当然である。
(イ)また、請求人は、自社のウォーカーシリーズのブランド力を低下させず、またはブランド力を損なわないように、第三者の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」に係る商標出願や、実際に市場に流通し、また、その可能性がある第三者の使用及び使用準備に対しても強い姿勢で対応してきており、地道に使用排除の効果を上げてきた(甲58、甲48の1ないし4)。
このような請求人の努力の甲斐もあって、調査報告書や証明書(甲44ないし甲46)に示されたように、請求人以外の第三者が「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を定期刊行物等の出版物に使用している事実は存在しない。
エ インターネットを用いた一般需要者向けのアンケート
平成20年に首都圏在住の30歳?39歳を対象として実施したインターネットを利用した読者アンケートの結果(甲49)は、平成20年(行ケ)第10363号審決取消請求事件において請求人が提出したものであるが、このアンケート結果の単純集計表から明らかなとおり、○○ウォーカー(○○Walker)という雑誌名といえば、角川グループが発行している雑誌が圧倒的な認知度を誇っている。したがって、「○○ウォーカー(○○Walker)という雑誌名」を見た需要者・取引者は直ちに請求人の「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌を想起することが明らかになっている。
オ 日本有名商標集への掲載等
第16類「印刷物」を指定商品とする「東京ウォーカー/TokyoWalker」(他7件)の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の登録商標が書籍「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN(日本有名商標集)」(甲50:平成16年(2004年)発行 AIPPI・JAPAN(社団法人日本国際知的財産保護協会)に選定、収録されている。さらに、「東京ウォーカー/TokyoWalker」、「関西ウォーカー/KansaiWalker」の他3件の商標については、第35類「広告」についても有名商標として選定されている。また、甲第2号証の96に示される請求人の登録商標「東京ウォーカー/Tokyo Walker」(登録第4637180号)は特許電子図書館の「日本国周知・著名商標検索」に収録されている(甲2の225)。
(4)裁判所及び特許庁における過去の判断について
裁判所及び特許庁における判決及び審決の判断からも、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標が全国的に著名な商標であることは疑いようのない事実であることが明らかである(甲52ないし甲61)。
さらに、「東京ウォーカー/TokyoWalker」(登録第4637180号)の防護標章として、本件商標の指定役務(一部を除く。)を包含する第35類の指定役務についての登録が認められ(甲71)、当該商標が第35類の指定役務に使用された場合、その出所について混同を生ずるおそれがあることが認定されており、「都市名又は地域名」と「ウォーカー/Walker」の語とを結合させてなる本件商標についても、同様に評価されるべきである。
(5)請求人商標の使用実績及び周知著名性についての小括
上記(2)ないし(4)のとおり、「東京ウォーカー/TokyoWalker」をはじめとする「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した各雑誌は、主要配布地域を中心にして多数の需要者に読まれており、著名性を得ていることは明白である。
このほか、膨大な量の雑誌・ムック・フリーマガジン等の出版物について「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」をはじめとする「○○ウォーカー/Walker」の商標の使用実績等があることも併せて鑑みれば、商標の構成中に「都市名又は地域名を表す語」と「ウォーカー/Walker」の語を含む商標は、請求人が発行する雑誌、雑誌の増刊号、ムック、書籍、フリーマガジン等の商標として、需要者・取引者の間に広く認識されているものである。
また、これらの出版物だけに止まらず、本件商標の出願よりも5年以上前からスタートしている公式サイト「ウォーカープラス/WalkerPlus」についても、需要者・取引者間に広く認識されていることが審決(無効2010年890044号)の判断からも明確となっている。このことから、雑誌・ムック・フリーマガジン等の出版物による情報の発信・伝達に限らず、インターネットにおける情報の発信・伝達という点においても、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の構成からなる商標をはじめ、「○○ウォーカー/Walker」の構成からなる商標は、需要者・取引者に相当程度認知されていたというべきである。
さらに、これらの請求人の「○○ウォーカー/Walker」の構成からなる商標の情報の発信力・伝達力を利用して、広告業務や商品・役務の販売促進活動の企画業務や補助業務と関連性が高い業務においても「○○ウォーカー/Walker」の構成からなる商標を複数種類かつ大量に使用していることは、これらの業務においても請求人の「○○ウォーカー/Walker」の構成からなる商標は、請求人の依頼者(広告主)にも広く認識されているといえる。

4 請求人の事業と本件商標の指定役務との関連性の程度
本件商標の指定役務は第35類の役務であるが、一般的に、第35類は国際分類の包括的な表示では「広告、事業の管理又は運営及び事務処理」とされているものであり、「商品及び役務の区分解説」(甲62)によれば、「この類には、主として、人または組織が提供する役務であって、(1)商業に従事する企業の運営若しくは管理に関する援助又は(2)商業若しくは工業に従事する企業の事業若しくは商業機能の管理に関する援助を主たる目的とする者及び広告事業所であって、すべての種類の商品又は役務に関するあらゆる伝達手段を用いた公衆への伝達または発表を主に請け負う者が提供する役務を含む」とより具体的な概念が解説されている。
そして、本件商標の指定役務である第35類には、審査基準上の表記のほか、種々のいわゆる積極表示がなされているものの、いずれの役務も上記の第35類の概念の範疇に包含されるものであることは疑いない。
以下、請求人の業務と、第35類の役務との関連性について説明する。
(1)出版物やインターネット等の媒体を通じて行う情報の発信や伝達の業務と第35類「広告」との関連性について
雑誌等の出版物やインターネット等の媒体を通じた情報を発信・伝達する業務は、業務を行う側で情報を入手・加工し、そしてその情報を需要者・取引者に発信・伝達するというものであり、このような媒体と広告とは密接な関係があるといえる。
例えば、「雑誌」や「フリーマガジン」等の出版物についていうならば、これらの出版物には多数の広告が掲載され、広告主から広告収入を得ており、雑誌は雑誌の販売による収益と広告収入とによって成立する商品である。
「電通広告事典」(甲63)にも「広告収入」について、「広告主から広告を掲載・放送することで得る収入。…新聞社・雑誌社では広告収入と発行印刷物の販売収入を主体に経営が営まれている。多様な売上構成で経営を行っているインタラクティブ媒体社でも広告収入は売上げの大きな割合を占めており、広告の掲載のみならずクリックなどの成果に応じて課金する収入形態も存在している。…またフリーペーパーなど無料誌紙は、広告収入にすべてを依存して運営されている。」の記載がある。
このことから「雑誌」や「フリーマガジン」の事業は広告主からの広告掲載の依頼があることを前提として成立していることとなり、出版社側は、自社の「雑誌」や「フリーマガジン」を一般の需要者に購入してもらう、又は、読んでもらうために雑誌の宣伝をすると同時に、広告主から多数の広告を出稿してもらえるよう宣伝・営業することになる。
そして、雑誌「東京ウォーカー/Tokyo Walker」をはじめ「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌についてみても、広告主から広告の掲載の依頼があり、請求人は多数の広告を雑誌に掲載しており、本件審判において提出した雑誌やムックの裏表紙には広告が常に掲載されていることは明白である。
したがって、「雑誌」や「フリーマガジン」における広告はこれらの業務を行う上で必要不可欠なものであるといえる(このことを端的に示すものとして、例えば、甲第17号証のような広告掲載料が明記された媒体資料を作成し、広告主や広告代理店に配布している事実がある。)。
これらのことから、雑誌の発行・販売の事業は第35類「広告」とは表裏一体の関係にあるといえ、その両業種の関連性はきわめて強いというべきである。
また、前出「電通広告事典」の「広告収入」の記載でも明らかなように、インターネットの媒体を通じた情報を発信・伝達する業務もまた、自社のウェブサイト上に広告スペースを設け、広告出稿を行うことによって、収益を上げていることは、通常の経済活動として行われている実情に鑑みれば、第35類「広告」との関連性が極めて高いといえる。この請求人の主張は過去の審決例(平成7年審判第27346号)でも裏付けられるものである(甲65)。
(2)出版物やインターネット等の媒体を通じて行う情報の発信や伝達の業務と第35類「事業の管理又は運営及び事務処理」について
上述のとおり、情報を発信・伝達する媒体と広告の関連性は非常に強いものである。
このことから、近年では、単に媒体に広告を掲載するということのみならず、他人から依頼を受けて他人の商品・役務の広告や販売促進活動の企画のために情報発信・伝達するという、広告業務や商品・役務の販売促進活動の企画業務や補助業務も広く行われている。
すなわち、請求人の情報を発信・伝達する媒体に使用される「○○ウォーカー/Walker」の商標を、多角的に使用する(ブランドを他業種に拡張する)ことを検討する場合は、広告業務や商品・役務の販売促進活動の企画業務や補助業務の範囲は、拡張しやすい業務範囲であるといえる。
ア そして、それが前記3(2)キにおいて述べた、他の企業や団体等の他人(すなわち広告主)から依頼を受けて制作する「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌の増刊号、フリーマガジンや綴じ込冊子等であり、さらにはタイアップによる商品展開等であって、雑誌の増刊号及びフリーマガジンの具体例として以下のような例がある。なお、前記3(2)キと一部重複するが、請求人の業務が、本件商標の指定役務である第35類の業務と関連性が強いことを主張する趣旨で言及するものである。
増刊号「ドライブウォーカー/drive/Walker」(平成11年8月発行 共同発行者(依頼人)本田技研工業株式会社:甲27の6)、増刊号「アイモードウォーカー/imode Walker」(平成12年4月発行 共同発行者(依頼人)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ:甲27の17等)、増刊号「Tokyo Walker増刊号/無印良品/MUJI Walker」(平成12年11月発行 共同発行者(依頼人)株式会社良品計画:甲27の22)、増刊号「Tokyo Walker/WindowsXP」(平成13年12月発行 共同発行者(依頼人)マイクロソフト株式会社:甲26の28)、フリーマガジン「Tokyo Walker/おサイフケータイスペシャル」(平成16年7月発行 共同発行者(依頼人)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ:甲26の34)、フリーマガジン「Tokyo Walker/EZナビウォークスペシャル」他(平成16年12月発行 共同発行者(依頼人)KDDI株式会社:甲26の36)、フリーマガジン「Tokyo Walker/TYO SPECIAL」(平成16年?平成17年季刊 共同発行者(依頼人)東日本旅客鉄道株式会社:甲26の38)、フリーマガジン「ローソンWalker」(平成17年7月発行 共同発行者(依頼人)株式会社ローソン:甲28の45)
このような、独立して流通する雑誌の増刊号、フリーマガジンについては、雑誌「宣伝会議」において高く評価されており(甲42の46)、また、上記フリーマガジン「Tokyo Walker/EZナビウォークスペシャル」ほかについては、「宣伝会議」(甲42の52)において、宣伝・広告及び販売促進に多大な寄与をしていることが紹介されている。
イ このほか、前記3(2)キにおいて述べた綴じ込み冊子や別冊付録の中には「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の雑誌内の記事や綴じ込み冊子として、雑誌と一体化したものとして理解されるようにして、広告主の商品紹介・役務紹介に関する記事も多数制作している。
このような記事は「編集タイアップ」(出版社の編集部が協力して製作した広告のこと:電通広告辞典)といわれる広告の一種であり(甲63)、請求人は、広告主の依頼にそって雑誌の雰囲気に合うように雑誌の編集者が広告主の商品を紹介し、多くは広告を掲載するもので広告掲載料のほかに広告記事作成料としての費用が加算される。そして、これは雑誌に広告主から受け取った広告をただ掲載することとは異なり、「広告文・広告媒体の制作」という性質をもつ業務である。
請求人は、例えば「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の雑誌(甲4ないし甲11等)において、以下のような編集タイアップを行ってきた。
・東芝からの依頼で作成した同社の電化製品の情報及び秋葉原の街情報を掲載した冊子「Akiba Walker」(甲4の14の5、甲第66号証の1(実際の冊子))及び同社の携帯用オーディオプレイヤー「gigabeat」の冊子「gigabeat Walker」、当該商品の広告やその利用方法が掲載されている(甲4の17の1、甲第66号証の2(実際の冊子)。
・国土交通省荒川下流下線事務所からの依頼で作成した荒川下流エリアの街情報を掲載した冊子「荒川ウォーカー/Arakawa Walker」(甲4の17の1、甲第66号証の3(実際の冊子))。
・エプソン品川アクアスタジアムからの依頼で作成した同社施設の施設情報が掲載された冊子「AQUA STADIUM Walker」、同施設の案内が掲載されている(甲4の17の2、甲第66号証の4(実際の冊子))。
・宝酒造からの依頼で作成した焼酎「ZIPANG」の冊子「ジパングウォーカー/ZIPANG Walker」、当該焼酎の広告とその焼酎が飲める飲食店情報が掲載されている(甲7の9の5)、甲第66号証の5(実際の冊子))。
・全日本空輸(ANA)からの依頼で作成した冊子「北海道Walker/沖縄Walker」、冊子の表紙と裏表紙に依頼者の広告が掲載されている(甲7の11の2、甲第66号証の6(実際の冊子))。
・筑後地区観光協議会からの依頼で作成した筑後地区のエリアマップの冊子「筑後ウォーカー/ChikugoWalker」、筑後の観光情報等が掲載されている(甲11の3の3、甲第66号証の7(実際の冊子))。
また、別冊付録・綴じ込み冊子の形式ではないが、資源エネルギー庁から依頼を受けて、資源やエネルギー関係の広報記事「EnergyMaster」を作成した(甲4の13の4、甲6の4の3)。
なお、これらは一例であり、他の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の雑誌にも毎号このような編集タイアップが収録されており、雑誌内の誌名の記事においても、広告主からの多数の製作依頼がある。
このような依頼主(広告主)から依頼を受けての出版物の製作は、依頼主(広告主)側にしてみれば、請求人が「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用して、自社の商品・役務を広告する広告物の製作を請け負っているものと理解されるものである。
すなわち、請求人は、単に媒体に広告を掲載するということのみならず、他人のために出版物という形式で広告物の制作を請け負っていることとなり、「○○ウォーカー/Walker」の商標を使用して、広告業務や商品・役務の販売促進活動の企画業務や補助業務をも行っているといえる。
さらに、このような出版や編集にとどまらず、請求人は商品の販促活動や役務の提供の促進活動のような事業運営の協力を行い、広告主の事業発展に寄与しており、各社とのタイアップは、「東京ウォーカー/Tokyo Walker」等の雑誌の宣伝になるとともに、雑誌の顧客吸引力を利用して各社の商品の販売促進にもつながるのである。
タイアップの例としては、株式会社ゼンリンと共同で「東京ウォーカーナビ/Tokyo Walker Navi」というカーナビソフトを作成(甲67の1)、ダイドードリンコ株式会社と飲料に関する販売プロモーションに「ウォーカー/Walker」の商標を使用(甲67の2)、ジャパンフリトレー株式会社のスナック菓子に関する販売プロモーションに「ウォーカー/Walker」の商標を使用(甲67の3)、トーヨービバレッジ株式会社のコーヒー飲料に関する販売プロモーションに「ウォーカー/Walker」の商標を使用(甲67の4)、株式会社ドミノ・ピザ ジャパンのピザに関する販売プロモーションに「ウォーカー/Walker」の商標を使用(甲67の5)がある。
以上の例は、雑誌の増刊号、フリーマガジンや綴じ込冊子等であり、さらにはタイアップによる商品展開という請求人の事業、すなわち広告業務や商品・役務の販売促進活動の企画業務や補助業務については、いわゆる第35類の本件商標の指定役務に含まれる業務であることから、第35類の「広告」に加え、「事業の管理又は運営及び事務処理」についても請求人の事業と関連性は強いといえる。
(3)請求人の業務の多角経営化について
商標法第4条第1項第15号における「混同を生ずるおそれ」の判断基準については、いわゆる「広義の混同」が含まれていることが、最高裁判所平成12年7月11日第三小法廷判決(平成10年(行ヒ)第85号)に判示されている。
請求人の多角経営の中には、前記(1)及び(2)のとおり、第35類「広告、事業の管理又は運営及び事務処理」の事業も当然行っている事業の一つとして含まれるものであり、請求人は第35類の事業も行っているといえる。
このほか、請求人の親会社である株式会社角川グループホールディングスには、様々な事業を行う企業が傘下に含まれており(甲68)、例えば、映画事業を行う株式会社角川書店(旧角川映画株式会社)、ゲームの開発・販売を行う株式会社角川ゲームス、インターネット上のコンテンツを制作する株式会社角川コンテンツゲート等があり、まさに従来の出版事業にとどまらない多角経営を行っているといえる。すなわち、請求人及びその関連会社は、「雑誌」や「フリーマガジン」等の出版物及びインターネット等の媒体を一つの入り口として、第35類「広告、事業の管理又は運営及び事務処理」等の役務に属する事業を行うといった多角経営を行っている。
以上のとおり、請求人の事業と本件商標の指定役務が含まれる第35類との関連性は強いといえる。

5 被請求人の商標の使用態様等について
(1)本件商標は、平成18年9月15日に株式会社響谷フミキ・クルーズによって登録され、平成20年3月24日に一般承継により株式会社ゼイヴェルに移転された。そして、平成23年6月7日に被請求人に特定承継(譲渡)されている。株式会社ゼイヴェル(現商号は株式会社ブランディング)は、平成20年(行ケ)第10361号審決取消請求事件(甲52)で争った相手方であり、請求人の「○○ウォーカー/Walker」商標のブランドイメージへのフリーライドが疑われる。本件商標の出願人である株式会社響谷フミキ・クルーズは株式会社ゼイヴェルの関連会社であり、そして、被請求人も、現在では資本関係がないものの、もともとは株式会社ゼイヴェルの関連会社である。
(2)被請求人の「渋谷ウォーカー」の開設に関するプレスリリース(甲69の1)には、「『渋谷ウォーカー』とは、若者の文化の中心であり続け10代から20代前半の圧倒的な人気を誇る街“渋谷”を中心とするアパレルブランド・コスメ・雑貨・ヘアー用品など渋谷発の情報&販売サイトになります。」とあり、「渋谷ウォーカー」が情報提供サイト・通販サイトであることを明言している。
また、オープンの時期の写真(甲69の2)の1枚目の拡大写真においては、平成18年4月4日にグランドオープンしており、2枚目の拡大写真において「Powered by/T-Garden,INC./Xavel,Inc.(請求人注:ゼイヴェルのこと)/fashionwalker,Inc.」との記載があり、被請求人と株式会社ゼイヴェルとの関係がうかがえる。
その後、被請求人は、この情報サイト及び小売サイト「shibuyawalker」のメールマガジンも発行するようになった。
そのメールマガジンを撮影した平成20年1月の写真は「shibuyawalker News」という一連一体に書したタイトルのメールマガジンであった(甲69の3の1)にも関わらず、2月末には「週刊/Shibuyawalker/News」とロゴの態様を代え(甲69の3の2)、10月ごろからは「週刊Shibuyawalker」と態様が変わっている(甲69の3の3及び4)。さらに、写真(メールマガジンを受信した携帯電話の画面)には「Shibuyawalker編集部/ガチンコダイエット/私たちが証明します」と題しており(甲69の3の4)、明らかに雑誌を意識した表記の仕方になっている。
この態様の変化は、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」のブランドイメージに、まさにフリーライドするものであり、商標の不正使用ともいえるものである(なお、「2010/01/07」の記載のあるブログサイトの記事(甲69の4)の「ちなみに昨日のメルマガの“週刊Shibuyawalker”でも掲載されてました」との文章から、少なくとも平成22年1月6日まではこのような態様でメールマガジンを発行していたものと推測される。)。
(3)さらに、本件商標もまた、請求人の商標展開を見越して出願された商標のように思われる。すなわち、平成17年の夏に、請求人は「足立区ウォーカー」という東京23区のエリア毎のウォーカー事業を開始した際にプレスリリースを発表した(甲70の1)。
このプレスリリースには、「…エリアに特化した新ムックシリーズ『足立区ウォーカー』を発売しました。…今後は東京23区や近郊のエリアにて展開し、シリーズ化を予定しています。」とある。
このプレスリリースにあるムック「足立区Walker」(角川書店発売:甲26の43)に連動させて、同時期に「足立区Walker」のウェブサイトも開設している(甲70の2。)。
この試みは「ウォーカープラスはひと足早い7月25日、『足立区ウォーカー』を刊行した。ともに、グルメから生活まで区内の情報満載の構成だ。地元では、大ベストセラーをしのぐ売れ行きを見せている。」という記事(甲40の62)にあるように好調な滑り出しであった。
その後、シリーズとして、本件商標の登録前には「池袋Walker」(甲26の50、甲70の3)などの限定された地域の情報をまとめたムックを発行し、連動してウェブサイトを開設していった(現在では、「新宿Walker」や「銀座Walker」のような大規模な商業地区だけでなく、「板橋区Walker」「大田区Walker」「八王子Walker」等の地域への展開も行っている。:甲70の4)。
本件商標はこのような請求人の展開が開始された直後の平成17年11月に出願されたものである。
(4)なお、被請求人は「Shibuyawalker」の商標の使用を平成24年(2012年)1月24日に中止し、その後「Candywalker Shop」という商標に変更している(甲73の1及び2)。

6 無効理由について
商標法第4条第1項第15号における「混同を生ずるおそれ」の判断基準については、最高裁判所平成12年7月11日の判決(平成10年(行ヒ)第85号)に判示されており、これに従えば、同号に該当するか否かは、本件商標と請求人使用商標との類似性の程度だけでなく、使用商標全体の周知著名性及び独創性の程度、用途または目的における関連性の程度及び取引実情等も踏まえて総合的に判断すべきであり、以下のとおり、本件商標は同15号に違反して登録されたものである。
(1)当該商標と他人の表示との類似性の程度について
請求人の使用商標は、「都市名又は地域名」と「ウォーカー/Walker」の語とを結合させてなる商標である。
一方、本件商標は、日本でも有名な都市名又は地域名である「渋谷」の語と「ウォーカー」の語とから構成される商標である。
そこで、両商標を対比すると、請求人の使用商標と本件商標は、ともに「都市名又は地域名」と「ウォーカー/Walker」との組合せからなるものといえ、観念上、同一性を有するかまたは極めて類似性の高い商標といえる。
(2)他人の表示の周知著名性について
請求人の使用商標のうち「東京ウォーカー/TokyoWalker」、「関西ウォーカー/KansaiWalker」、「東海ウォーカー/TokaiWalker」、「九州ウォーカー/KyushuWalker」、「横浜ウォーカー/YOKOHAMA Walker」、「千葉ウォーカー/ChibaWalker」、「神戸ウォーカー/KobeWalker」、「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」の著名性、及び、請求人が多種多様の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の商標を使用した雑誌を発行している事実については、これまで述べたところからも明らかである。
また、公式サイト「ウォーカープラス/WalkerPlus」の存在もまた多数の需要者・取引者間において周知性・著名性を獲得している。
そのほかに雑誌・ムック・書籍・フリーマガジン等の出版物や公式サイト「ウォーカープラス/WalkerPlus」の個別のサイトにおいて多数の「○○ウォーカー/Walker」が使用されている事実は需要者・取引者に広く認識されている。
(3)独創性の程度について
請求人の使用商標の旗艦商標である「東京ウォーカー/TokyoWalker」は、「東京を散歩する人」のようなイメージを生じさせるものの、全体として既存の名詞や用語などではなく、請求人の独創的な商標、すなわち造語の商標である。
したがって、請求人の使用商標「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」は、造語で独創的な商標であることは明らかである。
(4)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度について
上述したように請求人の事業と本件の指定役務が含まれる第35類「広告、事業の管理又は運営及び事務処理」とはきわめて関連性が強いといえる。
(5)商品等の取引者及び需要者の共通性について
請求人がターゲットとしている需要者・取引者は一般消費者及び広告主であり、また、被請求人の出版物も一般消費者及び広告主をターゲットにしていることは甲第69号証から明らかである。
したがって、商品等の取引者及び需要者は共通するものである。
(6)その他の取引実情について
特に考慮すべきその他の取引実情は存在しない。
(7)当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力について
請求人の使用商標は、主として雑誌・ムック・フリーマガジン等の出版物のタイトルや関連するウェブサイトの名称として使用されている。すなわち、雑誌、ウェブサイトの最も目を引く部分に請求人使用商標は使用されている。また、被請求人も請求人と同様にウェブサイトやメールマガジンのタイトルとして目を引く形で本件商標を使用していることは、甲第69号証に示したとおりである。
(8)総合的な検討について
以上のとおり、需要者・取引者間において、請求人の「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」からなる商標は、雑誌が対象とする都市名又は地域名によって「都市名又は地域名」の部分を変えて、シリーズ化された雑誌を請求人が発行し、また、その関連で増刊号やムック・フリーマガジンを請求人が発行しているということは十分に認識されている。
そして、本件商標「渋谷ウォーカー」は、「渋谷」という「東京」の中でも極めて有名な都市名又は地域名と「ウォーカー」の語とを結合させた造語商標といえ、また、請求人が長年にわたって使用してきた商標「東京ウォーカー/Tokyo Walker」をはじめとする「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」の構成からなる商標と同じコンセプトに基づく商標といえる。
そして、請求人の雑誌・ムック・フリーマガジン等を含む商品「印刷物」についての「○○ウォーカー/Walker」の使用実績や、公式サイト「ウォーカープラス/WalkerPlus」の使用実績、及び請求人の業務と本件商標の指定役務が含まれる第35類「広告、事業の管理又は運営及び事務処理」の関連性の高さ等の様々な実情を考慮すれば、本件商標「渋谷ウォーカー」という商標が、その指定役務に使用された場合、それに接した需要者・取引者は、本件商標が「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」というコンセプトで構成された商標であるという点に強い印象を受け、その役務が請求人若しくは請求人と営業上何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあることは必定である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであることは明白である。

7 まとめ
以上において述べたように、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証(枝番を含む。)を提出した。
〈答弁の理由〉
請求人が発行する雑誌「東京ウォーカー/Tokyo Walker」及び「都市名(地域名)+ウォーカー(Walker)」の態様よりなるタイトルの雑誌が特定の地域において一定の周知著名性を有することは認められるが、当該商品「雑誌」と本件商標の指定役務とは明らかに非類似のものであり、かつ、本件商標と当該雑誌のタイトルとも互いに非類似のものであることから、役務の出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではなく、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきものではない。
1 混同を生ずるおそれ
商標法第4条第1項第15号の混同とは、取引者・需要者が商品・役務の出所を誤ることをいい、特定の者と資本的・経済的な関係を有する者の商品・役務であると誤る場合(いわゆる「広義の混同」)をも含むと解されている。これに該当するか否かは、(1)請求人の業務に係る商標の周知度、独創性、ハウスマークか否か等、(2)本件商標と請求人商標との類似性、及び(3)請求人の業務と本件商標の指定役務との関連性に鑑みて総合的に判断すべきである。
(1)請求人の業務に係る商標について
ア 提出された証拠資料によれば、「東京ウォーカー/Tokyo Walker」ほか、関西、東海、九州、横浜、千葉、神戸及び北海道の「都市名(地域名)+ウォーカー(Walker)」の構成よりなるタイトルを付した雑誌がそれぞれ創刊され、それらの雑誌が販売されている各地域において、当該雑誌が一定の周知性を獲得していることが認められる。
請求人は、都市名(地域名)以外の文字と「ウォーカー(Walker)」とを組み合わせたタイトルの雑誌、すなわち、「月刊ゲームウォーカー/Game Walker」、「マンスリーウォーカー/MONTHLY WALKER」、「メンズウォーカー/MEN’SWALKER」及び「World Walker」を発行しているが、少なくとも、提出された証拠からは、これらの雑誌名そのものが一定の周知性を有していたとは認められない。
また、請求人は、平成7年にはパソコン通信を用いて「東京ウォーカー」や「月刊ゲームウォーカー」のダイジェスト版の配信を開始し、平成8年には「東京ウォーカー」のホームページを開設しているが、これらはいずれも、請求人の発行にかかる雑誌の宣伝広告活動に過ぎず、情報提供等の独立した役務と認識し得るものではない。さらに、平成9年には映画・イベント・飲食店情報を提供するウェブサイト「Walkers Net」、平成11年には携帯電話用コンテンツサイト「Walkers i」、平成12年には地域情報のポータルサイト「Walkerplus.com」(その後、「ウォーカープラス/Walkerplus」に改名)をそれぞれ開設しているが、それらのタイトルは「都市名(地域名)+ウォーカー(Walker)」の構成から成るものではない。そして、提出された証拠資料からは、これらのサイト名が一定の周知性を有していたとは認められない。
以上のことから、請求人発行の雑誌に係る「東京ウォーカー/Tokyo Walker」他、「都市名(地域名)+ウォーカー(Walker)」の構成からなる8つの商標(以下、単に「請求人商標」ということがある。)について、特定の地域における一定の周知性が認められるが、「○○ウォーカー(Walker)」の構成からなる他の商標が、印刷物及びインターネットサイト名等として一定の周知性を獲得していたとは認め難いものである。
イ そして、請求人商標は、都市名(地域名)と「ウォーカー」又は「Walker」の文字を組み合わせて成るところ、「ウォーカー/Walker」は「歩く人、散歩する人」を意味する英語として、一般に知られていることから、商標全体として「○○(地域)を歩く(散歩する)人」なる観念を容易に想起させ得るものであって、これらが使用されている商品である「地域情報誌(雑誌)」との関係においては、やや識別力の弱いものであるといわざるを得ない。いずれにしても、独創性の低い商標であることに間違いはない。また、請求人商標は、一雑誌のタイトルに過ぎず、請求人の営業全体を指称するハウスマークでもない。
(2)本件商標と請求人商標との類似性について
本件商標からは「シブヤウォーカー」、請求人商標からは「トウキョウウォーカー」等の称呼が生じるところ、両者の称呼は十分に聴別し得るものである。また、本件商標からは「渋谷を歩く人」、請求人商標からは「東京を歩く人」等の如き観念が生ずるものであり、観念上も明確に区別できるものである。さらに、外観においても本件商標と請求人商標とは明らかに非類似の商標である。
なお、本件商標と請求人商標は、いずれも「都市名(地域名)+ウォーカー(Walker)」の構成から成る点で共通するが、本件商標中の「渋谷」は東京都の一特別区であるのに対して、請求人商標中の地名は「関西」、「東海」、「九州」及び「北海道」といった一地方、「東京」及び「千葉」といった都道府県、また「横浜」及び「神戸」は有数の政令指定都市であり、同じ「地名」でも、その規模を大きく異にするものである。
したがって、本件商標に接した需要者等が直ちに請求人商標に係る「雑誌」を想起するとは考え難いものである。
仮に、本件商標が雑誌(印刷物)に使用される商標であれば、当該地域の規模の違いがあるとしても、同一の事業者により発行されたものと認識されるおそれもあるが、後述するように、本件商標の指定役務と請求人商標が使用されている「雑誌」とは明らかに非類似のものであることから、当該印象の差異が需要者に与える影響は決して少なくない。
(3)請求人の業務と本件商標の指定役務との関連性について
ア 「広告」との関連性について
請求人は、出版物やインターネット等の媒体を通じて行う情報の発信や伝達の業務と「広告」とは「関連性が強い」と主張しており、その理由は、雑誌等の情報提供媒体においては、広告収入が主となることを挙げている。しかし、「関連性が強い」ということと「出所の混同を生ずる(すなわち商品・役務が類似する)」ということは、明確に区別して判断しなければならない。
広告は、雑誌、テレビ、インターネットサイト等の情報提供媒体のみならず、例えば、電車やタクシーの車内、運動場や娯楽施設内等においても一般的におこなわれている。この場合、雑誌、インターネットサイト、車両、運動場、娯楽施設等は、いずれも「広告媒体」に過ぎない。一方、第35類における「広告」とは、「広告媒体のスペース又は時間を当該広告媒体企業と契約し、依頼人のためにする広告」をいうと解される(特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説」)。また、広告事業社と広告媒体の所有者(雑誌の発行者、放送事業社、インターネットサイトの運営者、鉄道会社等の運輸事業社、娯楽施設等の提供事業社等)とが必ずしも同一人とは限られず、むしろ、広告代理店と放送事業社のように別人であることが一般的である。
したがって、出版物やインターネット等の媒体を通じて行う情報の発信や伝達の業務と「広告」とは、必ずしも関連性が強いとはいえず、また、広告の分野では広告媒体の所有者からの依頼を受け広告代理店が広告をおこなうことが一般的であることに鑑みれば、広告媒体の所有者の業務と広告事業社(広告代理店等)の業務とが同一人の業務にかかるものと認識される可能性は低いものといわざるを得ない。すなわち、請求人の業務(雑誌の発行)と「広告」との間においては、狭義、広義を問わず、出所の混同が生じる可能性は低いといえる。
イ 「事業の管理又は運営及び事務処理」との関連性について
請求人は、「商品及び役務の区分解説」を引き合いに出して、「広告」以外の指定役務を「事業の管理又は運営及び事務処理」と一括りに解釈し、請求人の業務との関連性を述べているが、そもそも、そのような解釈自体が誤りである。あえて言及するまでもなく、当該区分解説は国際分類の理解を助けるための一資料に過ぎず、商標登録の有効性等については商標登録原簿に記載された指定商品・指定役務に基づいて慎重、かつ厳格に判断されなければならない。ましてや、一度発生した権利を無効とする無効審判においては、より慎重な判断が求められることはいうまでもない。
請求人は、「広告」以外の個々の指定役務について、「請求人が発行する雑誌と他の企業の販売促進活動とのタイアップ」を理由として、請求人の業務との関連性を主張している。しかし、例えば、「職業のあっせん」や「競売の運営」といった役務と当該タイアップとが如何なる関連性を有するというのか定かではない。また、企業活動においては、他の企業との様々なタイアップ(連携)は日常的におこなわれているところである。仮に、請求人の主張を借りれば、食品メーカーが他の企業の宣伝広告用のノベルティを作成した場合には、当該食品と「広告」その他「事業の管理又は運営及び事務処理」なる役務とが強い関連性を有することとなってしまう。したがって、請求人の当該主張は明らかに失当である。
(4)混同を生ずるおそれに関するまとめ
以上のとおり、請求人商標は、商品「雑誌」の商標として特定の地域において一定の周知性を獲得していることは認められるが、当該商品との関係においてやや識別力が弱いものであり、かつ、請求人の営業全体を指称するハウスマークでもない。また、本件商標と請求人商標とは、互いに非類似の商品・役務に使用された場合に出所混同を生ずる程に類似するものではない。
したがって、雑誌とは明らかに非類似である本件商標の指定役務に本件商標を使用しても、役務の出所について混同を生ずるおそれはない。
また、仮に本件商標に接した需要者等が請求人商標に係る雑誌を想起することがあったとしても、請求人の事業を示す他の表示(「角川」、「KADOKAWA」等)や請求人商標(「東京ウォーカー/Tokyo Walker」等)が本件商標の側に併記されていない限り、本件商標に係る役務が請求人又はその関係者により提供されていると認識するとは到底考え難い。

2 具体的出所混同の有無について
(1)本件商標は、請求人が指摘するように「商品の販売に関する情報の提供、商品の売買契約の媒介又は取次ぎ」等の指定役務について現に使用されてきたものである。その間、本件商標が請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生じた事実は認められず、また、当該継続的使用行為により業務上の信用が形成されているものである。
すなわち、記録の残る限り、これまでに本件商標に係る役務の需要者等から被請求人に対して、本件商標の下で提供されている役務が請求人(角川グループ)若しくは請求人商標に係る雑誌と何らかの関係があるものと誤認したとのクレームがなされたことは一度もない。
(2)そして、実際に出所の混同が生じていないことを推認させる事実としては、以下の事実が挙げられる。
請求人により平成19年5月10日に、商標「渋谷ウォーカー/渋谷Wa1ker」(第35類)の出願がされ、この出願に対しては、本件商標を引例とする商標法第4条第1項第11号の拒絶理由通知が発せられた。請求人はこれの意見書で、本件商標に係る商標権の前権利者である株式会社ゼイヴェルが所有する6件の商標登録(いずれも「○○Wa1ker」の構成より成る商標)に対して、商標法第4条第1項第15号を根拠に無効審判を請求しており、その結果を待って、上記出願の対応を考えたい旨を、また、上記出願に係る上申書及び拒絶査定不服審判において「本件商標に対する無効審判の請求を検討している」と主張していた。しかし、当該6件の審判は、すべて請求人の請求が棄却され(乙2の1ないし6)、平成21年春頃にすべての審決が確定した(出願の経緯は乙1の1ないし11のとおり。)。
すなわち、請求人は、上記拒絶理由通知により、遅くとも平成20年6月頃には本件商標の存在を知り、また、平成21年春頃には関連する審判の審決が確定していたにもかかわらず、その後直ちに本件商標に対して無効審判を請求することなく放置していたことになる。現に具体的な出所の混同が生じているならば、果たしてこれだけの長い期間、無効審判を請求せずに放置するであろうか。このことからも、具体的出所の混同が生じていないことが容易に推認し得る。
商標法第4条第1項第15号に該当するか否かの判断時期は、出願時及び査定時である。その時点において、少なくとも混同のおそれが存在していない限り、当該規定により商標登録を拒絶又は無効にすることはできない。ましてや、当該判断時期からすでに5年が経過している現時点において、当該規定により本件商標を無効にするというのであれば、少なくとも現に具体的出所の混同が生じていることを立証する必要があろう。商標登録後5年もの間、具体的出所の混同が生じていないのにもかかわらず、混同を生ずる「おそれ」を認定するのは余りに無理があるといわざるを得ない。

3 その他
本件審判が請求されたのは、除斥期間が経過する直前の平成23年9月15日である。このこと自体に違法性はないが、除斥期間の制度を設けた趣旨、さらには、権利の安定性を通して商業秩序の維持を図るという商標法の立法趣旨そのものにも反するのではないか。
仮に本件商標が無効となり、その後、請求人が本件商標を登録し、使用をしたとすれば、長年にわたり本件商標に係る役務の提供を受けてきた需要者等の間で役務の出所について誤認混同が生じることは明らかである。このように、需要者の利益保護、換言すれば公共の利益を蔑ろにしてまで、請求人の私益を保護すべき理由は見出せない。
商標法第4条第1項第15号は、私益保護的側面の強い規定といわれているが、需要者の利益保護を犠牲にしてまで商標を使用する者の私益を保護する趣旨ではない。このことは、商標法第1条の趣旨からも明らかである。

4 むすび
以上述べたごとく、本件商標は、請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標ではなく、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではないことから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものではない。

第4 当審の判断
1 請求人が本件審判の請求をする利害関係を有するか否かについては当事者間に争いはなく、かつ、請求人は本件審判の請求人適格を有するものと認められるので、本案に入って審理する。

2 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれ」の有無については、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。(平成10年(行ヒ)第85号)
かかる観点から、本件商標をその指定役務について使用した場合に、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるか否かについて、以下検討する。

(2)請求人使用商標の周知著名性及び請求人の業務について
ア 請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、平成2年3月に、東京のテレビ番組、新作作品、映画、ファッション、旅行、ドライブ等の東京を中心とする首都圏の様々な情報を掲載する都市情報誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」を創刊し、その後、同様のコンセプトで、「関西ウォーカー/KansaiWalker」、「東海ウォーカー/TokaiWalker」、「九州ウォーカー/KyusyuWalker」(後継誌は「福岡ウォーカー」)、「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」、「千葉ウォーカー/ChibaWalker」、「神戸ウォーカー/KobeWalker」及び「北海道ウォーカー/HokkaidoWalker」などのタイトルを付した各都市、各地域ごとの総合情報誌を続々と創刊していった(甲3ないし甲12等)。
(イ)上記各情報誌における毎号の平均販売部数は、1992年版ないし2006年版の「雑誌公査レポート」(社団法人日本ABC協会発行:甲13)によれば、「東京ウォーカー/TokyoWalker」は、1992(平成4)年は約28万部、1993(平成5)年は約38万部、1994(平成6)年と1995(平成7)年は約42万部、1996(平成8)年は約40万部、1997(平成9)年は約37万部、1998(平成10)年は約29万部、1999(平成11)年は約24万部、2000(平成12)年は約17万部、2001(平成13)年は約14万部、2002(平成14)年と2003(平成15)年は約11万部、2004(同16)年と2005(平成17)年は約10万部、2006(平成18)年は約9万部となっている。
また、その他の雑誌の毎号の平均販売部数は、本件商標の登録出願前の平成16(2004)年ないし査定時の平成18(2006)年の3年間に限っても、「関西ウォーカー/KansaiWalker」が約19万部(2004年)、約17万部(2005年)、約14万部(2006年)、「東海ウォーカー/TokaiWalker」が約12万部(2004年)、約11万部(2005年)、約9万部(2006年)、「九州ウォーカー/KyushuWalker」が約11万部(2004年)、約9万部(2005年)、約8万部(2006年)、「横浜ウォーカー/YOKOHAMA Walker」が約11万部(2004年)、約10万部(2005年)、約9万部(2006年)となっており、上記平均販売部数は「雑誌公査レポート」に掲載の雑誌の中でも上位に位置するものであって、長年にわたり相当の販売部数を維持していることが認められる。
そして、各雑誌は「東京ウォーカー/TokyoWalker」が東京、埼玉、神奈川、千葉及び茨城、「関西ウォーカー/KansaiWalker」が大阪、兵庫、京都、奈良、滋賀及び和歌山、「東海ウォーカー/TokaiWalker」が愛知、岐阜、三重及び静岡、「九州ウォーカー/KyushuWalker」が福岡、佐賀ほか九州全てと山口、及び「横浜ウォーカー/YOKOHAMAWalker」が神奈川及び東京の各地域を中心に配本されているほか、多くはないものの広く全国各地に配本されていることが認められる(甲13の12及び14)。
(ウ)請求人は、上記の各情報誌の販売促進活動として、その創刊時、発行号数や周年記念の時期などのキャンペーン(甲30の1)、新聞広告(甲30の2)、電車の中吊り広告(甲30の3)、屋外広告(甲30の4の3ないし5)を行い、また、「全国ウォーカーまつり」、「全国Walkerミーティング」といった全国一斉のイベントの開催(甲30の5)や「Walkers’Festival’98秋」での各地のFM局と連動したラジオの特別番組の放送(甲30の6)を行うなど、多種多様の販売促進活動を大々的に行ったことが認められる。また、「ウォーカー」各紙の創刊に関する宣伝費について、新聞各紙に、「関西ウォーカー」について「角川書店がウォーカーの関西進出につぎ込んだ宣伝費は三億円強といわれ、・・・」(甲37の41:平成6年10月4日付け毎日新聞)、「九州ウォーカー」について「テレビCMなどを含めた宣伝費の総額は、三億五千万円にのぼるという。」(甲37の85:平成9年6月12日付け朝日新聞)、「北海道ウォーカー」について「角川書店は、創刊PRのための広告費三億円を投入。」(甲37の247:平成12年8月26日付け北海道新聞)との記事が掲載されている。
そして、新聞各紙等(甲37ないし甲42)には、「九州ウォーカー」創刊の記事(平成9年3月28日付け産経新聞:甲37の75)及び同記事に関連して「東京、関西、東海の『ウォーカー』は、それぞれの地区で情報誌の発行部数ナンバーワンの座にある。」との記載(平成9年5月21日付け朝日新聞:甲37の82)、あるいは「千葉ウォーカー」(平成11年6月6日付け毎日新聞:甲37の159)、「台北ウォーカー」(平成11年9月16日付け産経新聞:甲37の177)、「神戸ウォーカー」(平成12年2月1日付け日本工業新聞:甲37の206)創刊の記事や「北海道ウォーカー」の創刊1周年の記事(平成13年6月24日付け北海道新聞:甲37の291)等の多数の記事が掲載され(甲37ないし甲41)、また、雑誌や書籍においても「いまや〈ウォーカーシリーズ〉は数ある情報誌の中の一大ブランド。」(雑誌「宣伝会議」平成9年8月号(108頁ほか):甲42の8)、「今のところ角川書店『ウォーカー』シリーズが快進撃で一人勝ち?」(雑誌「創」平成11年10月号(50頁ほか):甲42の16)の記載や、株式会社角川書店の事業内容・特色として「…ウォーカーシリーズは同社の看板雑誌で、『横浜ウォーカー』…『台北ウォーカー』と、いずれも定番情報誌として人気を誇っている。」(マスコミ就職読本2001(74頁):甲42の63)などと説明されるなど、「東京ウォーカー」創刊の平成2年4月頃から本件商標の登録後である平成18年まで、請求人に係る「東京ウォーカー/TokyoWalker」を始めとして「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」に関する記事が多数掲載されていたことが認められる。
(エ)また、各情報誌には、当該情報誌名とは別にそれぞれの特集記事やそのとじ込み別冊などのベージ見出しや表題あるいはエリアNEWSコーナーの表題として「渋谷ウォーカー」(甲4の8の1)、「三軒茶屋ウォーカー/SanchaWalker」(甲4の11の5)、「和歌山ウォーカー/WakayamaWalker」(甲4の16の4、甲9の12の6)、「札幌ウォーカー」(甲5の5の2)、「苗場ウォーカー/NaebaWalker」(甲7の3の1)、「岐阜Walker」、「三重Walker」、「浜松・豊橋Walker」及び「浜松・三河Walker」(甲8の7の1、甲8の10の1ないし3)、「大阪ウォーカー/OsakaWalker」(甲9の3の1)、「北摂Walker」、「尼崎Walker」、「東大阪Walker」、「堺Walker」(甲9の12の6ないし8)、「姫路ウォーカー/HimejiWalker」(甲10の4の1)、「長崎ウォーカー/NagasakiWalker」(甲11の6の2)などの「都市名又は地域名+Walker」が使用され、さらに、各定期情報雑誌などの増刊号、ムックやフリーマガジン(フリーペーパー)あるいはキャンペーン用の冊子について、「筑後ウォーカー/ChikugoWalker」(甲11の3の3、甲66の7)、「広島ウォーカー/HiroshimaWalker」(甲26の20の1及び2)、「東北ウォーカー/TohokuWalker」(甲26の25)、「静岡ウォーカー/ShizuokaWalker」(甲26の26)、「埼玉ウォーカー/SaitamaWalker」(甲26の29)、「Akiba Walker」(甲26の31、甲66の1)、「京都ウォーカー/KyotoWalker」(甲26の37)、「足立区Walker」(甲26の43)、「秋葉原/Akiba Walker」(甲26の44)、「放出ウォーカー/HanatenWalker」(甲26の45)、「荒川ウォーカー/Arakawa Walker」(甲66の3)、そのほか、本件商標の出願後であるが、平成18年3月にフリーマガジン「池袋Walker」(甲26の50)、同年6月に「堺市Walker」(甲26の52)及び「湘南鎌倉Walker」(甲26の53)、同年7月に「さいたまWalker」(甲26の54)、同年9月に「町田相模原Walker」などの「地域名+Walker」を使用したものを継続的に発行している(甲26の55ないし72)。
(オ)請求人は、上記の「地域名+ウォーカー/Walker」の構成からなる商標を付した雑誌のほかに、「その他の情報を表す語+ウォーカー/Walker」の構成からなる商標を使用した雑誌として、ゲーム情報を掲載した情報誌「月刊ゲームウォーカー/GameWalker」を平成6(1994)年9月に創刊したほか(甲17の1、甲19の1、甲20)、「マンスリーウォーカー/MONTHLYWALKER」(平成7(1995)年4月?、甲17の2の1、甲19の1、甲21)、「メンズウォーカー/MEN’S WALKER」(平成8(1996)年11月創?、甲17の2の2、甲19の2、甲22)、「ワールドウォーカー/World Walker」(平成9(1997)年1月?、甲17の3、甲23)、「(東京、東海、関西、九州)大人のウォーカー」(平成16(2004)年9月?:甲19の9、甲24)、「ファミリーウォーカー/Family Walker」(甲25)等を創刊している。
そして、雑誌への広告募集用のパンフレット(甲17の1、甲17の2の1、甲17の2の2、甲17の3)には「広告料金表」が掲載され、「角川書店 広告部」の文字のほか、東京本社や各支社などの連絡先が記載されているものである。
また、「ウォーカーズ・ネット/WalkersNet」においても、ネット上での広告についての説明がされ、「広告料金表」や広告バナー入稿についての説明等が掲載されている(甲31の1の1)。
(カ)加えて、請求人は、各雑誌において「インターネットの最新対応機器の紹介」(甲4の11の4、甲5の3の2)、「ポータルサイトとそのコンテンツなどの掲載」(甲4の12の6)、「CD/DVDがケータイで買えるサイトの掲載」(甲4の16の2、甲5の5の1及び2等)、「ケータイ通販情報」(甲5の6の1)、「角川オンラインショップ掲載」(甲6の8の3、甲11の10の2)、「カップめんの新発売とする宣伝・広告掲載」(甲10の2の2、甲11の5の5)等の情報を掲載しているほか、通販情報専門の「ウォーカースタイル/WalkerStyle」(甲27の37、これに関して平成14年6月11日付け日本経済新聞朝刊(甲38の52)に「…通信販売の専門誌を発刊する。…(季刊…)。三十万部を発行し、…ネットや携帯電話の専用サイトなどで受注する。…、年内には主力情報誌『東京ウォーカー』…を使った通販も始め…」との報道がされている。(同様の関連報道:甲38の53ないし56))や、就職情報の「就職ウォーカー/SHUSHOKUWalker」(甲28の18)、制服カタログ雑誌「UniformWalker」(甲28の6)、パソコン情報の「クリックウォーカー/ClickWalker」(甲27の1)、デジタル商品情報の「DIGITAL WALKER」(甲27の5)などように「情報を示す語」と「ウォーカー/Walker」とを組み合わせたもの、また、「アイモードウォーカー/imodeWalker」(甲27の17)、「マックウォーカー/MacWalker」(甲28の1)、「ローソンWalker」(甲28の45)、「NECソフトウォーカー/NECsoftWalker」(甲28の49)などのように各企業等から依頼を受けて又は共同で「他の企業や団体等の商標」と「ウォーカー/Walker」とを組み合わせ、各企業等の商品やサービスに関する情報を掲載した増刊号やフリーマガジン(フリーペーパー)を甲第27号証及び甲第28号証に示されたように多数にわたり発行していることが認められる。
なお、「角川書店カスタムマガジンのご案内」(甲29の1)には、「●カスタムマガジン編集制作・発行プロセス」として「企画/立案」→…「納品」→→「販売・配布・Web・Mobile・etc…」との記載、また、これらカスタムマガジンは、「顧客満足度の向上、販売促進など各企業様のさまざまな戦力の中で、角川書店の企画、編集力は大いに活用されています。」、「販売促進・顧客サービスに、ご活用ください。」など、販売促進に活用できる旨が記載されている(甲29の1及び2)。
(キ)請求人は、雑誌「東京ウォーカー/TokyoWalker」と連動させて、平成8年に「TokyoWalkerNet」とするホームページを開設し(甲4の8の5)、同9年に全国4エリア(東京、東海、関西、九州)の「WalkersNet」をスタートさせた(甲4の9の2、甲4の10の1、甲11の2の3、)。その後、平成12年からは「東京ウォーカー/TokyoWalker」ほかの「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」雑誌と連動させ、又は独立したサービスとして、公式サイト「ウォーカープラス/WalkerPlus」(旧名称「WalkerPlus.com」)を展開するに至っている(甲4の12の6、甲31の2及び3)。これに関しては、平成12年4月7日付け産経新聞(甲40の4)や同年6月20日付け日経産業新聞(甲40の11)に「…インターネットを使った情報提供サービスを始めた。…角川書店が発行する雑誌『週刊ウォーカー』に連動した地域情報をメールで配信する。…」などとの報道がされている。
そして、上記サイト「ウォーカープラス/WalkerPlus」内には、「グルメウォーカー/グルメWalker」、「ムービーウォーカー/MovieWalker」、「ウェディングウォーカー/WeddingWalker」、「トラベルウォーカー/TravelWalker」及び不動産情報に関する「ルームウォーカー/RoomWalker」などの「○○ウォーカー/○○Walker」を見出しとする情報のほか、「シゴト探し/就職・転職・派遣・独立…/powered by リクルート」を見出しとする仕事に関する情報なども提供されている(甲4の12の6、甲31の2及び3)。
(ク)その他、請求人は上記した事業以外に、「Tokyo Walker NAVI」とするカーナビ用ソフトを地図大手のゼンリンと共同で開発し(平成7年5月22日付け日本経済新聞:甲37の52、関連記事他紙:甲37の56)、「週刊東京ウォーカー」のエンタテインメント情報を富士通(シャープと共同)の携帯端末向け情報サービスへ提供(平成8年5月21日付け日経流通新聞:甲37の64、同報道他紙、甲37の61ないし63)、電子商取引の企画会社であるネットプライスと、情報誌と携帯電話を組み合わせた通信販売事業を始め、「ウォーカー」シリーズに掲載した商品を携帯利用者に販売(平成14年10月16日付け日経産業新聞:甲37の323、同様報道、甲37の296、297、311、312、324、338、339及び357等)、「東京ウォーカー」など各地域情報誌の新譜情報コーナーと連動させ「DVDやCD」を、携帯電話向けコンテンツを提供するサイバードと組み、携帯電話を使って販売(平成14年11月6日付け日本経済新聞:甲38の325)するなどの事業を展開していることが認められる。
イ 上記アによれば、請求人の発行する「東京ウォーカー/TokyoWalker」を始めとする「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」を表題とする都市情報誌は、長年にわたり相当の販売部数を維持していたことが認められ、配本地域も各雑誌名が表す地域及びその周囲が中心ではあるものの、広く全国に配本されていたことが認められる。また、雑誌名とは別に特集記事や別冊などの表題として、「渋谷」を含む「三軒茶屋、札幌、苗場、浜松、大阪、堺」等の多数の「都市名又は地域名」と「ウォーカー/Walker」とを組み合わせたものが使用されていたことが認められる。
そして、これらの情報誌の広告には相当の宣伝費が使われ、その広告手法も新聞広告、電車の中吊り広告、全国一斉のイベントの開催等、多岐にわたるものであることが認められる。
また、「地域名+ウォーカー/Walker」の語は、上記各情報誌の特集やとじ込み別冊などにおいて使用するばかりでなく、ウェブサイトの表題としても使用され、さらには、テレビ、ラジオ、各種イベント等で紹介されるなど、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」は、請求人に係る雑誌やサイトの表題ないし商標として、「ウォーカー/Walker」シリーズの如く記憶し印象され、請求人に係る商標として認識されているものである。
したがって、本件商標の登録出願時である平成17年11月及び登録査定時である同18年8月の時点において、「東京ウォーカー/TokyoWalker」を始めとする「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」を表題とする都市情報誌は、請求人が発行する定期刊行雑誌として、全国で周知著名となっていたと認められるものであって、雑誌に係る識別標識、すなわち「商標」としても機能しているものである。
そして、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」に関する周知著名性は、査定時以降も継続していたものと認められるものである。
また、請求人は、前記情報誌以外にも、「ゲーム、メンズ、大人(の)」等の各種情報分野の語と「ウォーカー/Walker」とを結合した表題の情報誌を多数発行しているのをはじめ、通信販売の専門誌、就職情報、パソコン情報、デジタル商品等の情報誌を発行するほか、インターネット上で「グルメ、映画、結婚、旅行、不動産、就職」等に関する多種多様な事業に関連した情報の提供を行っていることが認められる。
さらに請求人は、これら雑誌に掲載する広告やインターネット上のバナー広告の募集を行っていることが認められる。

(3)商標の類似性等について
ア 本件商標は、「渋谷ウォーカー」の文字からなるところ、その構成中の「渋谷」の文字は、都内の区名又は繁華街として著名な地域名として、また「ウォーカー」の文字は「歩く人、歩行者、散歩する人」を意味する外来語として、それぞれよく知られたものであり、本件商標は「地域名」と「ウォーカー」の文字との組み合わせからなるものと容易に理解、認識させるものである。
そして、請求人の使用に係る「都市名又は地域名」と「ウォーカー/Walker」との組合せからなる商標は、既成語として親しまれているものではなく、請求人によって創造された一種の造語として、独創性の高いものというべきである。
そうとすれば、本件商標と「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」からなる請求人に係る使用商標とは、ともに「都市名又は地域名」と、「ウォーカー/Walker」又は「ウォーカー」との組合せからなるものであり、その採択の意図を同じくするものであって、概念的な観念において、両者は同一性の高い商標というのが相当である。

(4)本件商標の指定役務と請求人の業務との関係性について
請求人は前記2(2)イのとおり、雑誌やインターネット上に掲載する「広告」に関する事業を展開していることが認められるものであり、また、「デジタル商品、CD/DVD」等の各種商品に関する情報を内容とする雑誌や、「ケータイ通販」や「角川オンラインショップ」と題する商品の販売に関連した雑誌も発行しており、さらに、ネット上で「グルメ、映画、結婚、旅行、不動産、就職」等に関する各種情報を提供していることが認められるものであることからすれば、「広告、商品の販売に関する情報の提供」を含む本件商標の指定役務と請求人の業務は関連性が深いものということができる。

(5)出所の混同のおそれ
上記のとおり、本件商標と請求人の前記使用商標は、概念的な観念において同一性が高い商標であって、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「都市名又は地域名+ウォーカー/Walker」は雑誌の表題あるいは商標として、その周知著名性は全国に及んでいると認められるものであり、また、請求人の業務と本件商標の指定役務とは関連性が深いといえるものであるから、本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、請求人に係る商標を連想・想起し、それらの役務が請求人との間に緊密な営業上の関係又はそのシリーズの表示による事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る役務であると誤認するおそれがあると認められるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2013-03-26 
結審通知日 2013-03-29 
審決日 2013-04-10 
出願番号 商願2005-108324(T2005-108324) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y35)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山田 和彦 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 内山 進
豊瀬 京太郎
登録日 2006-09-15 
登録番号 商標登録第4988489号(T4988489) 
商標の称呼 シブヤウオーカー、ウオーカー 
代理人 出山 匡 
代理人 ▲高▼見 良貴 
代理人 山田 朋彦 
代理人 西川 巌 
代理人 西浦 ▲嗣▼晴 

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