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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2010890007 審決 商標
無効2007890049 審決 商標
不服20136531 審決 商標
無効2010890099 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない X25
管理番号 1275204 
審判番号 無効2012-890045 
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-05-30 
確定日 2013-05-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第5421097号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5421097号商標(以下「本件商標」という。)は、「TRAX」の欧文字を標準文字で表してなり、平成22年11月30日に登録出願、第25類「合成ゴム製靴底,その他の靴底,履物,運動用特殊靴」を指定商品として、同23年6月24日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第5306566号商標(以下「引用商標」という。)は、「TRAXRUBBER」の欧文字を標準文字で表してなり、平成21年10月1日に登録出願、第25類「靴類,登山靴,靴中敷き,ゴルフ靴,婦人用ブーツ,オーバーシューズ,ゴム製靴,テニス靴,運動靴,防寒靴,釣り用靴,アンクルブーツ」を指定商品として、同22年3月5日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第17号証を提出した。
1 無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであり、同法第46条第1項第1号の規定により無効にすべきものである。
2 請求人について
請求人である「ムン ジョン キ」は、引用商標の商標権者であるところ、本件商標は引用商標に類似しその指定商品も引用商標に係る指定商品と同一又は類似するものであるから、本件商標を無効とすることにつき利害関係を有する者である。
3 商標法第4条第1項第11号について
商標の類否の判断については、商標審査基準(特許庁商標課編)、類似商品・役務審査基準(第9版)、最高裁昭和39年(ツ)第110号(甲第3号証)、最高裁昭和37年(オ)第953号(甲第4号証)によるものとされる。
そこで、これを踏まえて以下検討する。
(1)本件商標と引用商標との類否について
ア 称呼について
本件商標は、「TRAX」の英文字よりなるものであるところ、その構成文字に相応して「トラックス」の称呼が生じることは明らかである。
一方、引用商標は、「TRAXRUBBER」の英文字よりなるものであるところ、その構成文字中「RUBBER」(ラバー)の文字は、「ゴム」を意味する英語であるが、靴関連の商品との関係でいえば、「ゴム製」という指定商品の品質・用途を表した英語の文字部分であり、引用商標や本件商標の指定商品の分野においては、商品の品質を示す名称や普通名称として広く採択使用されているものである(甲第5号証及び甲第6号証)。
したがって、簡易迅速を旨とする商取引の実際の現場において、引用商標に接する取引者・需要者は、その構成文字中前半の「TRAX」の文字部分に注意を強く惹きつけられ、「TRAX」部分から生じる称呼をもって取引にあたることも少なくないものといえる。
以上より、引用商標からは、「トラックスラバー」の称呼のみならず、「トラックス」の称呼をも生じるものといえることは明らかである。
イ 観念について
本件商標の「TRAX」については、特定の観念を想起させない造語であるといえるが、例えば、これが、ゴムを原料とする商品等に使用された場合、「TRAX」ブランドのゴム製品といった観念を想起させるものである。
一方、引用商標の「TRAXRUBBER」の構成文字中、「TRAX」の部分が特定の観念を想起させない造語であることも全く変わらないのであるから、引用商標も「TRAX」ブランドのゴム製品といった観念を想起させるものであり、本件商標と引用商標とは、観念上も類似するとの印象を需要者に与えるものといえる。
ウ 本件商標の要部観察と取引の実情等について
(ア)本件商標の構成文字であり、引用商標の構成文字の一部である「TRAX」は、その言葉自体は一般的な日本人が使用する辞書には掲載されていないか、一般的な日本人が、その意味を直ちに理解できるほどに広く使用されている単語ではない。何らかの頭文字を組み合わせた造語である場合や、英語の「tracks」や「trucks」などの語尾を「x」に置き換えるなどして作られた造語である場合が多いものである(甲第9号証ないし甲第13号証)。
したがって、「TRAX」は、それ自体として識別力を有する文字であるといえる。
一方、上記のとおり、引用商標や本件商標の指定商品の分野においては、「RUBBER」の語は、商品の品質を示す名称や普通名称として広く採択使用されるものであるから、引用商標の構成文字中、「RUBBER」の部分は、それ自体としては識別力がないかあるいは極めて弱いと考えられる文字である。
以上より、本件商標及び引用商標の指定商品との関係では、それ自体としては識別力が極めて弱いと考えられる文字「RUBBER」と、それ自体として識別力を有する文字「TRAX」とが結合された商標「TRAXRUBBER」は、商標「TRAX」と類似するものとされる。
(イ)特許庁における審決例
特許庁における審決例としては、無効2009-890110号(甲第14号証)及び無効2010-890051号(甲第15号証)がある。
(ウ)取引の実情
本件商標の商標権者は、その住所及び名称から、国際商標登録第1022942号商標の商標権者と同一であるものと思われる(甲第16号証)。したがって、本件商標の商標権者の英語表記は、「TRAX RUBBER INC.」であるはずである。法人格を示す部分を除けば、商標権者の名称は、「TRAX RUBBER」であり、「TRAX」と「RUBBER」の間にスペース一文字分の有無の差があるものの、引用商標の構成文字と実質的に同一である。
一般的には、商標は、その流通過程において、商品に付されるものである。また、我が国の家庭用品品質表示法などの法令や公正競争規約などでは、流通過程においては、製造者や販売者の名称を商品に表示することが義務付けられている。したがって、商標を表示している「商品タグ」や「商品の表面」に、製造者名や販売者名として、本件商標の商標権者の名称も表示される場合が多いものと考えられる。その場合、実際の取引の過程において、本件商標を付した商品が、引用商標の商標権者の商品との誤認・混同を生じる可能性は、非常に高い。
また、本件商標権者に関連するものと思われるtwitter画面に表示されているロゴを見ると、「TRAX」の右横にいわゆるRマークを表し、その下に「RUBBER」の文字を表したものを、靴を模した図形で一体にまとまりよく表した図形商標を米国で使用している可能性が高い(甲第17号証)。
当該ロゴと引用商標の類似性については、本件無効審判とは別個の問題である。しかしながら、本件商標権者が、当該ロゴのような態様で、本件商標を使用しようと考えているのであれば、商標が使用される商品の主たる需要者層の通常有する注意力を基準として判断した場合、本件商標は、引用商標と著しく紛らわしく誤認混同を生じさせるものである。
エ 小括
商標法第4条第1項第11号の立法趣旨は、商品の出所の混同防止であり、すでに商標権が設定されている場合に、これと抵触する商標について登録を防止するものなのであるから、本件商標は、同第11号に違反して登録されたものであることは明らかである。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、引用商標と類似しその指定商品も引用商標に係る指定商品と同一又は類似するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第13号証を提出した。
1 請求人について
請求人が引用商標の商標権者であることのみ認める。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)請求人の論拠の二つの誤り
請求人の主張の論拠は、先ず、引用商標の構成文字中「RUBBER」の文字が「ゴム」を意味する英語であって、本件商標及び引用商標の指定商品である靴に関連する分野の商品との関係でいえば、「ゴム製」という指定商品の品質・用途を表すものであるから、識別力がないかある或いは極めて弱いということである。
次の請求人の主張の論拠は、引用商標の要部が「TRAX」であるというものである。
請求人は、これらの二つの論拠に基づいて、本件商標は引用商標に類似するから、その登録を無効にすべきであると、主張している。
しかし、これらの請求人主張は、いずれも誤った論拠から導き出されたものであるので、以下にその誤りを明らかにする。
(2)「RUBBER」の語について
被請求人は、「RUBBER」の語に「ゴム」の意があることを否定するものではないし、請求人が提出する甲第5号証及び甲第6号証において示されているように「ラバーシューズ」、「ラバーソール」、「ラバーブーツ」の如く「ゴム製」であることが想定可能な商品を示す語について「rubber」の語が形容詞として使用された場合には、この語が商品の材質を示すものとして理解され得ることがあることを否定するものでもない。
しかしながら、三省堂提供のウェブ版「新グローバル英和辞典」(乙第1号証)、研究社「新英和大辞典」(乙第2号証)に掲載のとおり、英語「rubber」には消しゴム、輪ゴム、(車の)タイヤ、コンドーム等の多様な意味合いがあり、前後の文脈や、上記したような限定的な使用法等のよりどころがない限り、「rubber」の語の具体的意味合いを捉えることは困難であるので、いわゆる品質表示語には通常なり得ない。
特許庁電子図書館中「商標出願・登録情報」(乙第3号証)において、検索した結果、3件の登録情報においては、「RUBBER」の文字は、商標中の他の要素から明確に分離可能な態様で表示されているが、3件中の2件が、その指定商品に「ゴム製の」等の限定なしに登録されているのである。具体的には、登録第4964973号商標は「靴」を指定商品として、登録第5287182号商標は「被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、履物、仮装用衣服、運動用特殊衣服、運動用特殊靴、水上スポーツ用ウェットスーツ」を指定商品して登録されている。
請求人は、引用商標中の「RUBBER」の語をいわゆる品質表示語としながら、引用商標の指定商品は「靴類、登山靴、靴中敷き、ゴルフ靴、婦人用ブーツ、オーバーシューズ、ゴム製靴、テニス靴、運動靴、防寒靴、釣り用靴、アンクルブーツ」であり、「ゴム製靴」を除いては、「ゴム製」等の限定がなされることなく登録されている。この事実こそ引用商標中の「RUBBER」の語をいわゆる品質表示語とすることには無理があることの証左であり、もし、請求人の主張のとおり引用商標中の「RUBBER」の語がいわゆる品質表示語であるとすれば、引用商標は、商標法第4条第1項第16号に該当することになる。
以上により、「RUBBER」の語が一般生活においても、特許庁の商標審査実務においても、専ら靴に関連する商品の品質を表す語と解すべきではなく、又そのようには捉えられていないことは明らかである。換言すれば、「RUBBER」の語は、引用商標及び本件商標の指定商品について使用されるとき、識別力を有すると解すべき語である。
(3)引用商標からの「TRAX」部分の分離抽出の可否
請求人の第二の論拠は、引用商標中「RUBBER」の語は、本件商標及び引用商標の指定商品である靴に関連する分野の商品との関係でいえば、「ゴム製」という指定商品の品質・用途を表すものであるから、識別力がないか或いは極めて弱いので、引用商標の要部は「TRAX」であるというものであるが、引用商標の要部として「TRAX」が分離・抽出されるという第二の論拠も誤りである。
請求人は、この論拠を正当化すべく、どのような場合に商標の結合部分の一部を他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許されるかの判断基準を説示するものとして、最高裁判決(昭和37年(オ)第953号:甲第4号証)及び「商標第5版(網野誠著)」の写し(甲第7号証)を提出している。
しかしながら、結合商標における分離観察の可否に関する基本的な考え方は、全体観察により類否判断を行うのが原則(最高裁平成3年(行ツ)第103号:乙第4号証)というものであり、要部観察が認められるのはあくまでも例外であるが、引用商標中の「TRAX」の部分は、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとは認められないし、「RUBBER」の部分は出所識別標識としての称呼が生じないと認めることもできない。
造語と解される「TRAX」と、既成語であるが、前述のごとく引用商標及び本件商標の指定商品について使用されるときに識別力を有する「RUBBER」の語を同書同大で、ハイフン記号、スペース等を介さずに一連に書してなる引用商標は、外観上まとまりよく一体的に看取し得るものであり、これより生ずる「トラックスラバー」という称呼も格別冗長なものでなく、淀みなく一連に称呼し得るものであるのに加え、これよりは、「TRAXブランドのゴム製品」といった一定の観念が生ずるものであるから、引用商標は、それ全体が一体不可分のものとして認識し把握されるとみるのが相当である。
「rubber」の語と他の語の組み合わせからなる商標が、当該他の語からなる商標と、「靴類」を指定して併存登録された例が多数(乙第5号証ないし乙第10号証)あり、これらの併存登録例からも、本件商標から、「TRAX」を分離抽出して、本件商標との類否を考察することが許されないことが理解できよう。
以上の登録例中、「Rubber Duo/ラバーデュオ」、「ターボラバー」、「Rubbertec」が一体不可分のものとして認識し把握されていることを示すものであり、これらに徴しても引用商標全体が一体不可分のものとして認定されるべきこと、「トラックスラバー」以外の称呼は生じ得ないことは明らかである。
なお、上記乙各号証中の3件の「Rubber」又は「ラバー」を含む商標からなる登録は、その指定商品を「ゴム製」等に限定されることなく登録されている。
(4)小括
上記(2)及び(3)により、引用商標中の「RUBBER」の語は、その指定商品に使用される時に識別力を有する語であり、したがって、この部分を分離抽出することなく、引用商標は「TRAXRUBBER」全体をもって本件商標と類否判断すべきであるので、請求人の二つの論拠はいずれも誤りである。
(5)補足の答弁
ア 本件商標の審査の過程において、そもそも引用商標は本件商標と非類似と認定され、登録された(乙第11号証ないし乙第13号証)。
イ 請求人は、「簡易迅速を旨とする商取引の実際の現場において、引用商標に接する取引者・需要者は、その構成文字中前半の『TRAX』部分から生じる称呼をもって取引にあたることも少なくないものといえる。」と述べているが、本件商標が商取引の実際の現場において「トラックス」の称呼をもって取引されている事実を何ら示していない。
本件商標から生ずる自然的称呼は唯一「トラックスラバー」であることは上述のとおりである。
商標は、その構成全体によって他人の商標と識別すべく採択されるものであり、請求人もこの趣旨で、「TRAX」ではなく「TRAXRUBBER」を採択したはずである。それにも拘らず、「トラックス」と称呼されて取引されている実情を提示することなく、本件商標から「トラックス」の称呼をも生ずると主張することは、自らの商標の権利範囲を徒らに拡大しようとするもので、到底認められるべきものではない。
ウ 請求人の主張によれば、引用商標が「TRAXブランドのゴム製品といった観念」を想起させるとのことであるが、被請求人は、造語と既成語との組み合わせからなる引用商標からは特定の観念を生じず、造語からなる本件商標からも特定の観念を生じないので、両商標は観念上非類似であると考える。
また、この点は強調すべき点と思料するが、請求人の主張のとおり、引用商標が上記の如き特定の観念を想起させるのであれば、請求人は引用商標の一体不可分性を肯定していることになる。
エ 請求人の「商標[第5版](網野誠著)」(甲第7号証及び甲第8号証)に基づく「類否判断の原則」についての主張によると、「RUBBER」の語は、「商品の品質を示す名称や普通名称として広く採択使用されるものであるから、引用商標の構成文字中、『RUBBER』の部分はそれ自体としては識別力がないかあるいは極めて弱いと考えられる文字」であるとのことだが、その根拠が明らかにされていない。
オ 特許庁における審決例として請求人があげた審決二例につき簡単に触れておく。
無効2009-890110及び無効2010-890051において無効とされた登録の商標中の「プリン」、「カフェ」の語は、その登録が無効とされた指定商品・役務との関連性が極めて直接的であり、いかなる意味でも本件審判事件の参考とはなり得ない。
カ 「取引の実情」において、請求人によれば被請求人に関連すると思われるtwitter両面に表示されているロゴについて述べているが、請求人が述べる如く「本件審判とは別個の問題」であるならば、無効理由中に述べる必要はない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないので、その登録を無効にされるべきものではない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「TRAX」の欧文字を標準文字で表してなるから、その構成文字に相応して「トラックス」の称呼を生じるが、格別の意味を有する既成語とはいえないものである。
してみれば、本件商標は、「トラックス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、前記第2のとおり、「TRAXRUBBER」の欧文字を標準文字で表してなるところ、該文字は、同書、同大、等間隔で表されてなるばかりでなく、これより生ずる「トラックスラバー」の称呼も格別冗長なものとはいえず、無理なく称呼し得るものである。
そうすると、引用商標は、構成全体をもって親しまれた意味合いが生ずるものはないとしても、外観上の一体性及び称呼上の簡潔性を考慮すれば、これを「TRAX」の文字と「RUBBER」の文字とに分離し、その上で「TRAX」の文字部分のみを抽出して、称呼、観念するものとみることはできない。
してみれば、本件商標は、構成全体をもって一体不可分の造語を表したと把握、認識されるとみるべきものであるから、これより「トラックスラバー」の一連の称呼のみ生ずるものであって、単に「トラックス」の称呼は生じないものといわなければならない。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標より生じる「トラックス」の称呼と、引用商標より生じる「トラックスラバー」の称呼についてみるに、両者は、「ラバー」の音の有無に差異を有し、その構成音数に明らかな差異が認められるから、たとえ前半部の「トラックス」の称呼を共通にするとしても、両者をそれぞれ一連に称呼しても、その音感、音調が相違し、十分に聴別し得るというべきである。
また、本件商標と引用商標とは、構成全体の外観において明確な差異を有しており、観念においては、観念上においてはそれぞれが特定の観念を有しないものであるから、比較できないものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれよりみても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
2 請求人の主張について
(1)請求人は、引用商標や本件商標の指定商品の分野においては、「RUBBER」の語は、商品の品質を示す名称や普通名称として広く採択使用されるものであるから、引用商標の構成文字中、「RUBBER」の部分は、それ自体としては識別力がないかあるいは極めて弱いと文字である旨主張している。
しかしながら、請求人の例示する使用例(甲第5号証及び甲第6号証)は、「ラバーソール」、「ラバーシューズ」及び「ラバーブーツ」などであって、「RUBBER」の単独での使用例を示すものではないから、これをもって、「RUBBER」の文字が、引用商標の指定商品との関係において識別力がないとまではいえない。
そして、前記のとおり、外観上一体に表され、簡潔な称呼を生ずる引用商標の構成にあっては、殊更「RUBBER」の部分を捨象し、「TRAX」の文字部分に着目して認識、把握しなければならないとする格別の理由は見当たらない。
そうとすれば、引用商標は、上記のとおり、その構成を一連一体のものとみるのが自然であるから、この点に関する請求人の主張は採用できない。
(2)請求人は、本件商標権者の名称の英語表記は「TRAX RUBBER INC.」であるから、法人格を示す部分を除けば、引用商標の構成文字と実質同一である。そして、「商品タグ」や「商品の表面」に製造者や販売者名として、本件商標の商標権者の名称も表示される場合が多いから、実際の取引過程において、本件商標を付した商品が、引用商標の商標権者の商品との誤認混同を生じる可能性は非常に高いと主張する。
しかしながら、商標法第27条において「登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならない。」とされているとおり、商標の類否は、願書に記載した商標に基づいて判断すべきであって、「TRAX RUBBER」からなる使用の態様を参酌する必要はないから、請求人の主張は、その前提において当を得ていない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-12-14 
結審通知日 2012-12-18 
審決日 2013-01-04 
出願番号 商願2010-92680(T2010-92680) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (X25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 半田 正人 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 鈴木 修
小川 きみえ
登録日 2011-06-24 
登録番号 商標登録第5421097号(T5421097) 
商標の称呼 トラックス 
代理人 杉山 直人 
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所 

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