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審決分類 審判 全部取消 商51条権利者の不正使用による取り消し 無効としない X35
管理番号 1273992 
審判番号 取消2012-300380 
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-05-11 
確定日 2013-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5426050号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5426050号商標(以下「本件商標」という。)は、「旬彩くいだおれ市場」の文字を横書きしてなり、平成22年2月12日に登録出願され、第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として平成23年7月15日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、商標法第51条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第396号証を提出している。
1 請求の理由(弁駁の理由を含む。)
(1)本件商標と被請求人使用商標について
ア 被請求人使用商標
被請求人は、大阪市を本拠地として、魚介類や鯨肉等の加工販売等を行っている会社であるところ(甲3)、自身のウェブサイトの名称として、別掲1(甲4)に掲げる商標(以下「被請求人使用商標1」という。)を使用している。
また、被請求人は、新聞や情報紙等を媒介としたカニ等の通信販売を行っており(甲5及び甲6)、当該新聞・情報紙においては、当該通信販売業の屋号に係る名称として、上記被請求人使用商標1と同じ構成の商標が使用されている。
加えて、被請求人のウェブサイト(甲4)におけるリンク先ともなっている「Yahoo!ショッピング」のサイトにおいては、カニやイクラ、鯨肉等が販売されており、当該通信販売に係るウェブサイトの名称として、別掲2(甲7)に掲げる商標(以下「被請求人使用商標2」という。また、被請求人使用商標1及び2をまとめて「被請求人使用商標」という場合がある。)が使用されている。更には、共同購入クーポンのウェブサイトにおいても、ホタテキムチ等の商品を販売しており、被請求人使用商標2と同じ構成の商標が使用されている(甲8)。
この点、上記ウェブサイトの運営会社は、株式会社守破理(以下「守破理」という。)という会社であり、被請求人とは異なるものであるが、上記被請求人のウェブサイト(甲4)において「お買い求めは 旬彩 くいだおれ市場 Yahoo!ショッピング店へ」と表示されたうえで、「Yahoo!ショッピング」のウェブサイトがリンクされており、また、守破理の住所が「大阪市西区9条・・・」と被請求人自身のウェブサイトに掲載の住所と同一であること及びその問い合わせ先のフリーダイヤル電話番号も共通しているほか、営業時間や受注の仕方等も共通している。以上の点は、本件審判の請求時だけでなく、現在も変わりがないところである(甲390及び甲391)から、被請求人と守破理とは、協同で事業を行っている等の密接な関係にあることを窺い知ることができる。したがって、形式的には守破理が、たとえ、被請求人と別法人であったとしても、被請求人と実質的に同一視できる程に密接な関係を有する者であるといえるものであり、被請求人使用商標2についても、被請求人の使用に該当する、ということができる。
なお、仮に、守破理と被請求人とが、同一視できるとまではいえないとしても、本件商標の商標権者である被請求人が被請求人使用商標1を使用している以上、本件商標が取り消されるべきことになんら変わりはない。
イ 本件商標と被請求人使用商標との類似性
(ア)本件商標は、「旬彩くいだおれ市場」の文字を、普通の書体において、同書・同大・同間隔で表した構成からなるものである。
(イ)被請求人使用商標1は、別掲1のとおりであり、被請求人使用商標2は、別掲2のとおりである。
(ウ)そこで、本件商標と被請求人使用商標1の態様とを比較すると、構成文字全体が普通の書体か毛筆体かで相違し、また、被請求人使用商標1は、「旬彩」の漢字が「くいだおれ市場」の文字に比べて小さく表されていることから、本件商標とその構成を異にし、両商標の外観上の構成が同一ではない。しかしながら、全体として「旬彩」と「くいだおれ市場」の文字で構成される点や、構成文字全体に相応して「シュンサイクイダオレイチバ」と称呼され得る点で同一である。よって、本件商標と被請求人使用商標1とは、同一の商標でないものの、互いに類似する商標である。
(エ)本件商標と被請求人使用商標2についても、被請求人使用商標2は、「旬彩」の漢字が「くいだおれ市場」の文字に比べて小さく表されており、また、図形の要素が加わって、「くいだおれ市場」の文字に赤色の縁取りが施されている点で、その外観上の構成が一見して相違するものの、全体において構成される「旬彩」と「くいだおれ市場」の文字や、「シュンサイクイダオレイチバ」と称呼され得る点で共通している。よって、本件商標と被請求人使用商標2とは、同一の商標ではないが、互いに類似する商標である。
(オ)被請求人は、被請求人使用商標が、「社会通念上本件商標と同一性のある商標である」旨主張しているが、被請求人使用商標が、実質的に本件商標と同一でなく、「登録商標の範囲」(商標法第27条第1項)に属するものでない以上、商標法第51条第1項における「登録商標に類似する商標」に該当することは明らかである。
ウ 指定役務との関係
被請求人は、被請求人使用商標を表示してカニや鯨肉等の通信販売を行っており、これは、本件商標の指定役務である「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に含まれるものである。
エ 小括
以上のように、被請求人は、本件商標の指定役務について、本件商標と類似する商標を使用していることは明らかである。
(2)請求人との出所の混同について
ア 請求人に係る商標
(ア)請求人は、1949年より2008年までの間、およそ60年の永きにわたって、「大阪名物くいだおれ」の名称で飲食店(以下「請求人店舗」という。)を営業してきており、同店は、「くいだおれ」との略称で、大阪を代表する老舗の飲食店として、店舗の看板・広告人形である「くいだおれ太郎」とともに、数多くの新聞やテレビ、雑誌、観光ガイド等にも取り上げられ、掲載されてきた。その結果、「大阪名物くいだおれ」又は「くいだおれ」は、地元である大阪及び関西圏の需要者において広く知れ渡っただけでなく、大阪の観光名所の一つとして、全国的にも広く浸透してきた。
また、請求人は、請求人店舗の名称である「大阪名物くいだおれ」(以下「請求人使用商標1」という。)や、その略称である「くいだおれ」(以下「請求人使用商標2」という。また、請求人使用商標1及び2をまとめて「請求人使用商標」という場合がある。)及び店舗の看板・広告人形である「くいだおれ太郎」について、請求人の業務に係る飲食店や当該業務と密接に関連する飲食料品の商品・サービスの分野において、数多くの登録商標を保有している(甲10ないし甲23)。
加えて、登録第4365296号商標「大阪名物/くいだおれ/道頓堀(『くいだおれ太郎』の立体商標)」に係る「くいだおれ太郎」の立体商標については、その著名性が認められ、防護標章登録を受けている(甲24)。
(イ)ここで、「くいだおれ(食い倒れ)」の語については、「飲み食いがぜいたくで貧乏すること」との一般的な意味合いを有する。
しかしながら、「大阪まち物語」という書籍における「『食い倒れ』の起源」においても、「ところで大阪が『食い倒れ』の町と言われるようになったのは、・・・昭和も戦後のことではないだろうか。とくに全国的に認知されるのは香住の人・・・が道頓堀通に『大阪名物くいだおれ』を開店してからである。」と記述されていること(甲26)からも判るように、「食い倒れ」が大阪の街を表す言葉として記述的に用いられることがあるとしても、それは、請求人に係る請求人使用商標の著名性に起因するところが大きいといえる。
そして、請求人が使用する「請求人使用商標」は、その文字を一貫して平仮名で表していることに大きな特徴を有するものであり、また、併せて、その書体が毛筆体で表されていることも特徴とするものである。この点において、請求人に係る「請求人使用商標」は、「食い倒れ」、「食いだおれ」と漢字を交えて記載されることの多い記述的な表現とは用いられる表記が異なるといえる。
そうすると、需要者においても、漢字の入った文字でなく、平仮名で表された「くいだおれ」からは、とりわけ、その書体が毛筆体で表された場合には、一般的な意味合いから生じる記述的な表現ではなく、請求人店舗の商標であるという認識が広く浸透しているといえる。
(ウ)以上のように、請求人は、その飲食店に係る業務や飲食料品に関連する商品・役務について、数多くの商標登録や防護標章登録を保有し、かつ、請求人店舗の名称として、「請求人使用商標」が需要者の間に著名性を有していたことは明らかである。
(エ)被請求人は、「請求人使用商標が、需要者の間に著名性を有しているということまではいえない」旨主張し、その根拠として乙第1号証ないし乙第6号証を掲げている。
この点、乙第1号証及び乙第2号証の各新聞記事は、観光客等の聞き取り調査に触れているところ、当該調査の結果が、請求人使用商標の著名性を否定する根拠になり得ないことは明らかである。
すなわち、一口に、「人形目当てに店に来た客は約3割、ミナミに来る目的の一つが人形を見ることだった観光客は約6割」といっても、調査結果におけるその数は、数十万人単位という、極めて多数に上るものであり、単に「約3割」、「約6割」といった割合のみをもって、請求人使用商標の著名性は何ら否定されない。
むしろ、全体の9割が「くいだおれ太郎」の人形を見たというアンケート結果からは、その9割に上る人々が、同時に、請求人店舗を見て、その存在を認識したうえで、「くいだおれ太郎」が同店の看板・広告人形であることを理解していた、という事実が理解されるものである。乙第1号証及び乙第2号証も、「くいだおれ太郎」や「大阪名物くいだおれ」の地域における経済的役割の大きさを示すものであって、請求人使用商標の著名性を補完するものでありこそすれ、否定する材料とはなり得ない。
このことは、乙第3号証ないし乙第6号証の各新聞記事も、「くいだおれ太郎」のキャラクター商品の売上げが通常の約5倍増になったことや、観光客の声、「大阪名物くいだおれ」の会長と社長の話それ自体は、請求人使用商標の著名性を否定する根拠とはならない。むしろ、各新聞記事で取り扱われ、飲食店の会長や社長が登場すること自体で、請求人使用商標が、「飲食店」として相当程度以上の著名性を有していたことの証であるといえる。
(オ)被請求人は、「大阪が『食い倒れ』の町といわれるようになったのは、請求人に係る『大阪名物くいだおれ』に起因するところがない」旨主張している。
この点については、先に提出した甲第26号証のほか、昭和28年発行の「大辞典」には「京の著だふれ、関東の食ひだふれ」とあり(甲392)、昭和34年発行の「新言海」にも「京の着倒れ、江戸の食倒れ」と掲載されている(甲393)。また、昭和26年に林芙美子氏によって執筆され、昭和29年に書籍としても発行された小説「めし」においても、既に「くいだおれ」は請求人店舗を表すいわば固有名詞として登場している(甲394)。
昭和28年や昭和34年発行の国語辞典において、「大阪の食い倒れ」という記述が一般的な表現として挙げられていないことや、小説「めし」における記載、及び先の甲第26号証とをあわせて考慮すると、「食い倒れ」が大阪の街を表す言葉となった背景には、やはり請求人使用商標の著名性が大きく貢献したものと考えられる。
(カ)被請求人は、「『食い倒れ』などの漢字を、平仮名、カタカナで表示することは、一般的な表示方法であり、普通に用いられる方法での表示である」とし、「『くいだおれ』を用いた名称は、インターネットで検索しただけでも、日本各地で多く使用されている」としたうえで、「『くいだおれ』だけでは、請求人店舗の名称として認識することが不可能である」旨主張している。
しかしながら、被請求人が提示する、インターネットにおける第三者の使用例は、わずか数件(乙8ないし乙13及び乙17)にすぎず、しかも、そのうちの幾つかは、個人のブログに係る名称や明らかに記述的な表現のページも含まれている(乙14ないし乙16)。かかる状況においては、いわゆる店舗の屋号や販売目的のウェブサイトの名称など、「くいだおれ」を業としての各種サービス名称として使用することについて、各種サービスにおける普通名称等になっているとは到底いうことはできず、「くいだおれ」の平仮名においては、十分に自他商品・役務識別標識としての機能又は出所表示としての機能を発揮するものである。
イ 現在における請求人使用商標の周知・著名性
(ア)新聞紙面等のマスコミ、出版物等を通じた周知・著名性
大阪及び関西圏の需要者において広く知れ渡って、全国的にも広く浸透してきた請求人店舗は、2008年7月8日をもって閉店した。しかしながら、同年4月に閉店を発表してから、閉店に至るまでの様子・状況については、関西圏の一般紙・スポーツ紙の各新聞やテレビ番組の報道等だけでなく、首都圏版の各新聞や全国放送のニュース番組等にも大々的に取り上げられ、頻繁に報道されている。特に、関西圏の一般紙・スポーツ紙においては、連日のように、大きな紙面で、店舗の歴史やその時々の店舗に関連する状況、閉店後の商標権・営業権等の行方や、本の出版、切手の販売等の看板・広告人形である「くいだおれ太郎」の活動の紹介等がなされており、請求人使用商標1又は請求人使用商標2が、大阪文化の象徴のひとつとして認識されていたことを窺い知ることができる。
以上の内容を示す甲第27号証ないし甲第198号証は、閉店発表から閉店直後の2008年7月までの、主に関西版の各新聞紙面についての資料であり、甲第199号証ないし甲第216号証は、首都圏版の一般紙における新聞紙面の例である。また、甲第217号証は、閉店発表から閉店直後において、全国放送でテレビ放映されたものの一部のリストである。
そして、飲食店閉店後の各新聞記事においても、「くいだおれ太郎」が、閉店した飲食店の看板人形として紹介されており(甲218ないし甲365)、加えて、閉店時には、「くいだおれ太郎のつぶやき。」という題号で、「大阪名物くいだおれ」と「くいだおれ太郎」の自伝的な書籍等の出版がなされたほか(甲269及び甲366)、商品券や献血呼びかけのキャラクター等を務めたりと活動している(甲367ないし甲369)。
また、現在においても、大阪又は関西地域の観光ガイドブックにおいて、「くいだおれ太郎」が請求人店舗の看板人形として紹介されている(甲371ないし甲377)。
(イ)請求人店舗ビル
請求人店舗ビルは、現在も営業していた頃の外観のままであり、大阪・道頓堀の風景は、店舗を営業していた頃の様子ができる限り維持されている(甲378)。
現在、請求人店舗ビルにおいては、「くいだおれ太郎」関連商品等の各土産品を販売しているほか、長期休暇等の観光シーズンには、1階をカフェとして営業を継続しており(甲379)、地元の人々や道頓堀を訪れる人々にとってみれば、請求人店舗としての認識・理解は、何ら失われていない。
(ウ)各種関連グッズの販売
「くいだおれ太郎」をキャラクターとした各種の関連商品や「請求人使用商標1」をモチーフとした各種商品は、飲食店を営業している頃より販売されていたが、現在においても、請求人やその関連会社、ライセンス会社等によって、数々の関連グッズが大阪の土産品として販売されており、このような関連グッズを通じても、請求人使用商標の周知・著名性は維持されているといえる。
例えば、「くいだおれ太郎」に関連する商品としては、先の「くいだおれ太郎プリン」のほか、「はちみつケーキ」「バウムクーヘン」といった食品だけでなく、「キーホルダー」「ストラップ」「ぬいぐるみ」「ボールペン」「メモ帳」「マグネット」「トランプ」から、「箸」「ばんそうこう」「フェイスタオル」「ハンドタオル」「Tシャツ」「靴下」「帽子」に至るまで非常に多岐にわたっている。また、「請求人使用商標1」に関連する商品も、一時期、各種の「駅弁」の販売がなされたほか、現在も、「ラーメン」「ポン酢」「太鼓焼き(まんじゅう)」のほか「Tシャツ」「湯呑み」等の様々な商品が販売されている(甲380ないし甲386)。
(エ)小括
以上のとおり、これまでの各新聞記事やテレビのニュース報道、看板・広告人形である「くいだおれ太郎」の各種活動やテレビ等への登場あるいは出版物を通じて、また、現在販売されている(これまで販売されてきた)「くいだおれ太郎」及び「請求人使用商標1」の各種関連商品を通じて、請求人使用商標が、需要者の間において、その周知・著名性を維持していることは明らかである。
ウ 請求人との出所の混同
(ア)請求人使用商標の使用態様
請求人の現在の業務内容については、上述のとおりであり、現在においても、請求人店舗ビルは、「請求人使用商標1」及び「請求人使用商標2」の看板を掲げ、請求人は、「大阪名物くいだおれ」や「くいだおれ太郎」に関連する商品を、食料品を含めて数多く販売しており、これらの商品においては、飲食店の看板や「くいだおれ太郎」が背負う太鼓に表された文字と同じく、毛筆体で、「大阪名物くいだおれ」又は「大阪名物くいだおれ太郎」の文字が表示されている。
このような請求人の使用態様は、飲食店を営業している頃より、60年以上変わりがなく一貫して使用されてきているものであり、請求人の商標としては、「くいだおれ」の文字を平仮名で表している点を大きな特徴として有しているもので、また、その書体において、毛筆体で表している点も併せて請求人の商標としての特徴となっているものである。
そして、その態様は、「食い倒れ」、「食いだおれ」と表記される記述的な表現と異にするものである。
このような請求人使用商標の特徴と、請求人店舗としての著名性を考慮すれば、現在においても、平仮名の「くいだおれ」に接する需要者は、とりわけ、その書体が毛筆体で表された場合には、請求人使用商標であると直観し、請求人店舗を想起・連想するものである。
(イ)被請求人使用商標の使用態様
上記(1)で述べたように、被請求人使用商標1は、その構成において、「く」の文字がとりわけ太字で大きく強調され、「くいだおれ市場」を毛筆体で大きく表した態様からなり、被請求人使用商標2は、赤色の縁取りを施している点で被請求人使用商標1とは相違するものの、やはり、「く」の文字がとりわけ太字で大きく強調され、「くいだおれ市場」の文字を毛筆体で大きく表した態様からなるものである。
そして、被請求人は、これらの被請求人使用商標を使用して、カニや鯨肉等の水産食品の通信販売を行っている。
(ウ)出所の誤認混同
請求人使用商標と、被請求人使用商標は、「くいだおれ」の文字を有することにおいて、共通している。
また、請求人使用商標は、「くいだおれ」と平仮名で表記している点、その書体を毛筆体で表している点に特徴を有しており、被請求人使用商標は、これらの特徴においても同じくするものである。
そして、請求人使用商標は、現在においても、請求人店舗の商標として、その著名性を有することは明らかであり、かつ、「くいだおれ太郎」が飲食料品のPRキャラクターとして活動したり、また、「くいだおれ太郎」や「大阪名物くいだおれ」の関連商品が、請求人やその関連会社、ライセンス会社等を通じて、食料品も含めて数多く販売されている事実等にかんがみると、被請求人において、被請求人使用商標を用いて、同じ食料品に関係するサービスである、カニや鯨肉等の水産食品の通信販売のサービスが提供されると、需要者においては、「くいだおれ」の文字自体や、「くいだおれ」が平仮名である点、毛筆体で表されている点に着目し、かつ、その印象が強く残るものであり、かかるサービスが、請求人の新しく始めたサービスでないかと誤認混同し、もしくは、請求人と組織的・経済的に何らかの関係がある者に係るサービスではないかと誤認混同を生じるおそれがあることは明白である。
特に、被請求人は、請求人と同じ大阪を本拠としており、このことから、需要者が商品・サービスについて誤認混同を生じるおそれは一層高まるといえる。
そして、実際にも、主に関西地域以外に所在する人々から、被請求人の通信販売について、請求人に対して電話での問い合わせが複数件寄せられている状況であり、需要者において出所の混同が生じているのである。
なお、請求人使用商標の著名性の根拠となっている請求人店舗は、もはや営業していないが、たとえそのような状況であっても、商品・サービスの誤認混同は生じ得るものであり、その点は、平成23年の法改正において、商標法第4条第1項第13号が削除されるにあたって、「権利消滅後の出所の混同防止については、混同防止を目的とする他の不登録事由、具体的には、商標法第4条第1項第15号等の運用により、権利消滅後に出所の混同を招くおそれがある場合には登録を認めないとすることが可能である」とする法改正の趣旨からも明らかである(甲387)。
(エ)小括
以上のとおり、被請求人が、「くいおだれ市場」の文字を大きく表した被請求人使用商標を用いて、カニや鯨肉等の水産食品の通信販売を行うことは、請求人使用商標に係る商品・サービスと、需要者において誤認混同を生じさせるものである。
(3)被請求人の故意について
ア 被請求人の認識
請求人と同じ大阪を本拠地とする被請求人は、請求人使用商標のネームバリューは確実に認識しているはずである。
また、本件商標が「旬彩くいだおれ市場」と普通の書体で一連一体に構成されているにもかかわらず、あえて、「くいだおれ市場」の文字を毛筆体で大きく表した態様の商標を使用することは、請求人が培ってきた請求人使用商標の信用に便乗する意図があることが明白であり、被請求人は、請求人の業務に係る商品・サービスとの誤認混同が生じることを認識・認容したうえで、被請求人使用商標を使用しているものである。
イ 請求人とのやりとり
請求人は、被請求人に対して、その被請求人使用商標を、本件商標の構成に一致させた「旬彩くいだおれ市場」の態様に変更してほしい旨、再三要求してきた(甲388)。
被請求人は、印刷物については「旬彩くいだおれ市場」の一連の標章に変更し、新聞等の「旬彩」の文字が小さい態様についても、今後は徐々にカタログやゆうメールのような文字に統一するとしていたが、被請求人による実際の使用態様は、現在においても、「旬彩くいだおれ市場」の一連一体の構成で使用されておらず、また、そもそもカタログやゆうメールの態様が、「旬彩くいだおれ市場」の文字を一連に表示したものでない。そして、その当時においても、請求人と被請求人との関係について、複数件の問い合わせが寄せられていた事実を被請求人に伝えている。
しかしながら、現在においても、依然として被請求人がその被請求人使用商標の構成を変更する様子はなく、このような被請求人の姿勢からみても、被請求人が、本件商標とは態様の異なる類似商標を使用することによって、請求人使用商標に係る商品・サービスと、その出所についての誤認混同を認識・認容していることは明らかである。
ウ 小括
以上のとおり、被請求人は、請求人使用商標を認識し、かつ、被請求人使用商標の使用によって、請求人の業務に係る商品・サービスと誤認混同が生じることについて認識・認容していることから、被請求人には故意が認められる。
2 むすび
以上のように、被請求人は、故意に、本件商標と類似する商標を使用することによって、請求人の業務に係る商品・サービスであると誤認混同を生ずるものをしたことは明らかであるから、本件商標は、商標法第51条第1項の規定に基づき、その登録が取り消されるべきものである。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第23号証を提出している。
1 本件商標と被請求人使用商標について
(1)「被請求人使用商標」に対して
被請求人と守破理は、協力して事業を行っているが、別法人であり、同一視することはできない。
被請求人は、被請求人のウェブサイトで「被請求人使用商標1」を使用していること、新聞や情報紙に「被請求人使用商標1と同じ構成の商標」を使用していることは認めるが、「Yahoo!ショッピング」のサイト及び共同購入クーポンのウェブサイトで「被請求人使用商標2」を使用していない。前記ウェブサイト等で「被請求人使用商標2」を使用しているのは、被請求人の協力会社である守破理である。
(2)「本件商標と被請求人使用商標の類似性」に対して
本件商標と被請求人使用商標とは、類似する商標でない。被請求人使用商標は、「旬彩」の漢字を毛筆体で少し小さくし、その横の「く」の字を太字で少し大きく構成させたものであるが、全体としてみれば、「旬彩くいだおれ市場」とまとまりよく一体的に表されている構成、「シュンサイクイダオレイチバ」と一連に称呼し得るものであることから、社会通念上本件商標と同一性のある商標である。
なお、請求人主張の「指定役務との関係」は認める。
(3)小括
以上のとおり、被請求人は、本件商標の指定役務について、本件商標と類似する商標を使用していない。
2 請求人との出所の混同について
(1)請求人使用商標に対して
ア 請求人店舗の客や周辺を訪れる観光客らからの聞き取り調査結果によると、人形目当てに店に来た客は約3割、ミナミに来る目的の一つが人形を見ることだった観光客は約6割であり(乙1)、平成20年3月に実施した聞き取り調査の結果では、くいだおれ人形目当てで、くいだおれで食事する客が全体の約3割である(乙2)。請求人店舗が閉店を発表してから、看板人形「くいだおれ太郎」のキャラクター商品の売り上げが通常の約5倍増になった(乙3)。売却が決まっている請求人店舗の前で、アイドルに群がるオタクのように看板人形「くいだおれ太郎」の写真撮影をする人が殺到した(乙4)。「くいだおれ人形こそ、大阪というイメージ。人形だけでも何とか残せないのでしょうか」(乙5)との観光客の話や、「くいだおれ太郎を写真で撮るだけで帰る客も多かったようだ。」との「大阪名物くいだおれ」の会長と社長の話がある(乙6)。
これらのことから、「くいだおれ太郎」は請求人店舗の看板人形であるが、「くいだおれ人形」自体は、請求人店舗を越えて一人立ちし、それ自体で独自有名キャラクターの地位にあるといえる。
したがって、請求人店舗の看板人形である「くいだおれ太郎」が著名性を有しているからといって、請求人使用商標が需要者の間に著名性を有しているということまではいえない。
イ 「請求人使用商標1」は、大阪が「食い倒れ」の町といわれた起因となったものではない。
「大坂の食い倒れ」「京の着倒れ」は、江戸時代からいわれており、また、請求人の「大阪名物くいだおれ」は、「大坂の食い倒れ」「京の着倒れ」という江戸時代の言葉に由来して名付けられたものである(乙7)。
このように、大阪が「食い倒れ」の町といわれるようになったのは、請求人に係る「請求人使用商標1」に起因するところがないといえる。
ウ 平仮名・毛筆体の「くいだおれ」について
「食い倒れ」などの漢字を、平仮名、カタカナで表示することは、一般的な表示方法であり、普通に用いられる方法での表示である。また、飲食店の名称は、飲食に関連する名称が使用されるのが多く、「くいだおれ」を用いた名称もその一つである。このように、「くいだおれ」を用いた名称は、インターネットで検索しただけでも、日本各地で多く使用されている(乙8ないし乙17)。
以上のように、「食い倒れ」の漢字を単に平仮名で表された「くいだおれ」だけでは、請求人店舗の名称として認識することが不可能である。
(2)現在における請求人商標の周知・著名性に対して
ア 新聞等のマスコミ、出版物等を通じた周知・著名性について
請求人店舗の閉店発表から閉店直後の2008年7月までの資料(甲27ないし甲216)、及び閉店後の2008年8月以降2011年9月1日までの「大阪名物くいだおれ」に関連する新聞記事(甲218ないし甲365)は、「ミナミの看板息子定年」「太郎いずこへ」「くいだおれ太郎60年」「『寂しい』くいだおれ人形に別れ」や、「『大阪名物くいだおれ』の飲食店閉店後の2008年8月以降2011年9月1日までの『くいだおれ太郎』」など、そのほとんどが「くいだおれ太郎」に関するものであり、「くいだおれ太郎」自体の知名度が請求人店舗を越えて一人立ちし、それをもって、飲食店である「大阪名物くいだおれ」の周知・著名度は閉店後もなお維持されているということはいえない。このことは、乙第2号証及び乙第6号証からも明らかである。
イ 「『大阪名物くいだおれ』の店舗ビル」及び「各種関連グッズの販売」について
請求人店舗ビルにおいて販売されている商品のほとんどは、「くいだおれ太郎」に関連する商品であり、「くいだおれ太郎」自体の知名度が請求人店舗を越えて一人立ちし、それをもって、「くいだおれ太郎」のキャラクターを通じて、請求人店舗のイメージが失われることなく、維持されているということはできない。このことは、請求人店舗が閉店した後に、請求人は、「くいだおれ太郎」の人気にあずかり、マスコットキャラクター「くいだおれ太郎」のマネージメントを行う企業となったことからも明らかである(乙18)。
ウ 小括
以上のとおり、各新聞記事やテレビのニュース報道は、そのほとんどが「くいだおれ太郎」に関するもので、その他「くいだおれ太郎」の看板、「くいだおれ太郎」の各種活動やテレビ等への登場、あるいは出版物を通じて、また、「くいだおれ太郎」の各種関連商品を通じて、請求人使用商標が、請求人店舗の商標として、需要者の間において、その周知・著名性を維持してきたということはいえない。
(3)請求人との出所の混同に対して
「くいだおれ」を用いた名称は、上記(1)ウのとおり、日本各地で多く使用され、被請求人使用商標についても、その構成中の「くいだおれ市場」が一体的に表されていることから、請求人使用商標2である「くいだおれ」と被請求人使用商標とは誤認混同せず、「旬彩くいだおれ市場」のサービスが、請求人が新しく始めたサービスでないかと誤認混同することはない。
また、被請求人使用商標2と社会通念上同一(「旬彩」の位置が少し上部)の「旬彩くいだおれ市場」の商標が、登録査定(平成24年7月25日登録料納付)になっている(乙19及び乙20)。さらに、「くいだおれ市場」の商標についても、登録査定(平成24年7月25日登録料納付)になっている(乙21及び乙22)。
このように、被請求人使用商標2は、「旬彩くいだおれ市場」の商標が登録査定になっていることを鑑みても、請求人使用商標と出所の混同を生じないことは明らかである。
以上のとおり、被請求人が、「くいだおれ市場」の文字を大きくした被請求人使用商標を用いてカニや鯨肉等の水産食品の通信販売を行うことは、請求人使用商標に係る商品・サービスと、需要者において誤認混同を生じさせるものでない。
3 被請求人の故意について
(1)商標法第51条第1項の「故意」
商標法第51条第1項の「故意」とは、一般に、請求人の使用に係る商標を単に知悉しているだけでは足りず、誤認混同を生ずることをも認識・認容していることを要すると解されている。
(2)「被請求人の認識」に対して
被請求人は、本件商標の商標登録出願前から被請求人使用商標を使用しており、本来であれば、被請求人使用商標の態様で商標登録出願すべきところ、「旬彩くいだおれ市場」と普通の書体で一連一体に構成された態様で、商標登録出願をしてしまったのが実情である。
このように、被請求人は、請求人が培ってきた請求人使用商標の信用に便乗する意図で被請求人使用商標1を使用したものでは全くない。ただ、請求人に係る「請求人使用商標1」は認識していたことは認める。
(3)「請求人とのやりとり」に対して
被請求人は、請求人からの「被請求人使用商標を、本件商標の構成に一致させた『旬彩くいだおれ市場』の態様に変更してほしい旨の再三の要求」に対し、「一定条件の下、被請求人で使用変更するかを十分検討する。」と請求人に回答した(乙23)が、不調に終わったため、被請求人使用商標の態様を変更することなく使用することになった。
(4)小括
以上のとおり、被請求人は、請求人使用商標は認識していたが、被請求人使用商標1の使用によって、請求人の業務に係る商品・サービスと誤認混同が生じることについて認識・認容は全くしておらず、被請求人の「故意」は認められない。
4 むすび
以上のとおり、請求人の主張はいずれも理由がない。
よって、本件審判請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 商標法第51条第1項は、「商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用であって商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定している。
すなわち、商標法第51条の立法趣旨は、商標権者は、指定商品等について登録商標を使用する専用権を有するが、その専用権の範囲を超えて、当該商標権者が、登録商標と類似の商標を使用し、これにより故意に・・・他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるおそれがあるものをするのは、商標権者としての商標の正当使用義務に違反するばかりでなく、他人の権利利益を侵害し、一般公衆の利益を害するものであるから、何人も審判によりその登録商標の取消しを求めることができるものとし、商標権の行使を逸脱した商標の不正使用をする者に対して制裁を加えるとともに、第三者の権利利益及び一般公衆の利益を保護しようとするものと解される(東京高等裁判所平成15年(行ケ)第76号、平成15年8月27日判決言渡)。
そこで、商標権者による被請求人使用商標の使用が上記規定に該当するかについて、以下検討する。
2 本件商標と被請求人使用商標との比較等について
(1)本件商標
本件商標は、「旬彩くいだおれ市場」の文字からなるものであるところ、これらの文字は、同一の書体をもって、外観上まとまりよく一体的に表されているものであるから、構成全体もって、一体不可分の商標を表したと認識されるとみるのが相当である。
してみると、本件商標は、その構成文字に相応して、「シュンサイクイダオレイチバ」の称呼を生ずるものであって、構成全体として、特定の観念を有しない造語よりなるものと認めることができる。
(2)被請求人使用商標
ア 請求人の提出に係る甲第4号証によれば、本件商標権者たる被請求人は、2012年3月6日に、自己のウェブサイトにおいて、別掲1のとおりの構成からなる被請求人使用商標1を、「カニ」等の魚介製品の通信販売について使用しているものと認められる。
なお、甲第5号証及び甲第6号証は、その新聞の日付からすれば、本件商標権が発生する以前の被請求人の使用であり、商標法第51条第1項における商標権者の使用ということにはならない。
イ 請求人は、被請求人のウェブサイトのリンク先「Yahoo!ショッピング」(甲7)及び共同購入クーポンのウェブサイト(甲8)において、別掲2のとおりの構成からなる被請求人使用商標2が「カニ、イクラ、鯨肉」等の販売について使用されている旨主張しているが、上記各サイトを運営する者は、商標権者(被請求人)とは別法人の守破理である。
この点に関し、請求人は、被請求人と守破理とは、密接な関係を有するゆえ、同一視できる旨主張するが、商標法第51条第1項においては、商標権者の使用であることが要件であるところ、両者は、人格を異にする別法人である以上、同一人ということはできないから、請求人の主張は採用することができない。
したがって、被請求人使用商標2についての使用は、商標権者(被請求人)による使用とは認められないから、商標法第51条第1項に規定する商標登録の取消審判の対象となるものとはいえない。
そこで、以下において、被請求人使用商標1について検討する。
ウ 被請求人使用商標1は、別掲1のとおり、毛筆風の書体により、「旬彩」の文字をやや小さく表し、続いてこの2倍ほどの大きさの「く」の文字を配し、更に「旬彩」の文字よりもやや大きな「いだおれ市場」の文字を配した構成からなるものであって、「く」の文字が大きく目立つ態様となっているため、「旬彩」の文字部分と「くいだおれ市場」の文字部分とに視覚上分離して看取される場合も少なくないものといえる。
してみれば、被請求人使用商標1は、「くいだおれ市場」の文字部分をもって取引に資される場合も少なくないものといえる。
しかしながら、「くいだおれ市場」の文字部分は外観上まとまりよく一体的に表されているものであり、「くいだおれ」の文字部分のみを分離抽出して自他役務の識別標識たる要部として認識し把握されるとみるべき格別の理由は見出し難いことから、被請求人使用商標1において「くいだおれ」の文字部分のみが看者の注意を強く惹き印象に残るものとはいえない。
そうすると、被請求人使用商標1は、構成文字全体から生ずる「シュンサイクイダオレイチバ」の称呼のほか、顕著に書された「くいだおれ市場」の文字部分より「クイダオレイチバ」の称呼をも生ずるものであって、構成全体及び「くいだおれ市場」の文字部分のいずれにおいても、特定の観念を有しない造語よりなるものと認めることができる。
(3)被請求人使用商標1の使用に係る役務
上記(2)アに記載したとおり、被請求人は、被請求人使用商標1をウェブサイトにおいて「カニ」等の魚介製品の通信販売に使用(甲4)していることが認められるから、被請求人は、被請求人使用商標1を使用して本件商標の指定役務「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の範ちゅうに含まれる役務を提供しているものといえる。
(4)本件商標と被請求人使用商標1との対比
本件商標と被請求人使用商標1は、外観において若干、文字の態様が異なり、同一の商標ということはできないものの、その構成文字においては同一であることから、外観上類似する商標である。
また、観念については、いずれも特定の観念を有しない造語よりなり、観念上比較することができないものである。
そして、称呼については、被請求人使用商標1からは、上記(2)ウで認定したとおり、顕著に書された「くいだおれ市場」の文字部分より「クイダオレイチバ」の称呼をも生ずる場合があるといえるものの、いずれも「シュンサイクイダオレイチバ」の称呼を共通にする称呼上類似の商標である。
したがって、これらを総合的に判断すると、本件商標と被請求人使用商標1は、その外観及び称呼を共通にする互いに類似する商標というべきである。
(5)小括
以上によれば、商標権者(被請求人)は、2012年(平成22年)3月6日に、本件指定役務について、本件商標に類似する被請求人使用商標1の使用をしていたものと認めることができる。
3 請求人使用商標と被請求人使用商標1との出所混同について
(1)請求人使用商標
請求人の提出に係る証拠(甲27ないし甲386)によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人は、昭和24年から平成20年までの約60年に亘って請求人店舗を営業してきており、請求人店舗は、しばしば「くいだおれ」と略称されていること、
イ 請求人店舗には、「大阪名物」及び「くいだおれ」の文字又は「くいだおれ」の文字からなる看板が掲げられ、その店頭には派手な衣装を身につけ太鼓をたたく電動式の等身大の人形が置かれており、該人形は「くいだおれ太郎」と称されていること、
ウ 上記人形(以下「くいだおれ太郎」という場合がある。)が背負っている太鼓には、「大阪名物」「くいだおれ」及び「道頓堀」の文字が3行縦書きで表されていること、
エ 請求人店舗は、平成20年7月8日に閉店したが、それに先立ち同年4月に、閉店予定であることを発表したところ、その閉店発表から同年7月の閉店に至るまでの様子・状況等について各種新聞やテレビ等で頻繁に報道されたこと、
オ 上記報道においては、例えば、「太鼓をたたく派手な衣装の看板人形で知られる大阪・道頓堀の飲食店『大阪名物くいだおれ』・・・」(甲27)、「『大阪名物くいだおれ』といえば、看板人形の『くいだおれ太郎』」(同号証)、「ユーモラスな動きが人気を集めた『くいだおれ人形』で知られる道頓堀の食堂ビル『くいだおれ』」(甲28)のように、「くいだおれ太郎」と共に請求人店舗を紹介するものが多いこと、
カ 請求人店舗の閉店日前後は、看板人形の「くいだおれ太郎」に名残りを惜しむ人の群れで請求人店舗前がごった返すほどであり、請求人店舗の閉店発表から「くいだおれ太郎」の人気が急上昇したこと、
キ 請求人店舗の閉店後は、看板・広告として使用され人気のあった「くいだおれ太郎」の活用等を巡って話題になったが、結局、請求人の管理・保有のもとに全面的にキャラクターとして活動することになり、「くいだおれ太郎」の動向や活動は、請求人店舗の女将と共に新聞等で頻繁に報道されていること、
ク 例えば、「くいだおれ太郎」は、平成20年の「NHK紅白歌合戦」に出演したほか、大阪府による商品券のキャラクター、献血呼びかけのキャラクター、飲食料品関連や店舗開店のPRキャラクター、大学の一日教授等として活動していること、
ケ 「くいだおれ太郎」については、書籍「くいだおれ太郎のつぶやき」が出版されたほか、「くいだおれ太郎プリン」を始め、はちみつケーキ、バームクーヘン、キーホルダー、ストラップ、ぬいぐるみ、ボールペン、トランプ、タオル、Tシャツ、帽子に至るまでの商品が大阪の土産品として販売されており、また、大阪又は関西地域の観光ガイドブックにおいて「くいだおれ太郎」が請求人店舗の看板人形として紹介されていること、
コ 請求人店舗のビルは、請求人店舗が営業していた当時と同じ場所に略同様の状態で存在しており、同ビルでは、「くいだおれ太郎」関連商品の販売をしているほか、観光シーズンには1階が喫茶店として営業されていること。
上記アないしコの事実によれば、請求人使用商標及び「くいだおれ太郎」は、いずれも請求人の業務に係る役務又は商品を表示する商標としての機能を果たしているものといえる。
そして、上記各種新聞、テレビ等の報道内容は、請求人店舗が閉店すること及び「くいだおれ太郎」に関連するものが多く、特に閉店後は専らキャラクターとしての「くいだおれ太郎」に関するものといえること、請求人店舗については「大阪名物くいだおれ」として紹介するものが多いこと、加えて、「くいだおれ(食い倒れ)」の語は、「飲み食いがぜいたくで貧乏すること」の意味合いを有する既成語であり、「大坂の食い倒れ、京の着倒れ」のごとく用いられる語として広く知られているものであること、などからすると、請求人使用商標1の「大阪名物くいだおれ」は、本件商標の登録出願時はもとより、被請求人使用商標1が使用された2012年3月6日(甲4)頃においても、請求人の商標として取引者・需要者に広く認識されていたといえるとしても、請求人使用商標2の「くいだおれ」が同様に広く認識されていたとまではいえない。
この点に関し、請求人は、請求人使用商標は毛筆体により、「くいだおれ」部分を平仮名で表したことに特徴を有し、一般的な「食い倒れ」の記述的表現ではない旨、「大坂の食い倒れ」の語は請求人店舗の著名性に起因する旨、などを主張している。
確かに、「食い倒れ」の語については、「『食い倒れ』の言葉が大阪の専売特許のようになるのは戦後のことで、請求人店舗が開店してからである。」旨記述する書籍や、「京の着倒れ、江戸の食い倒れ」と記載されている辞典も見られるが(甲26、甲392及び甲393)、現代の国語辞典(例えば、岩波書店発行「広辞苑第6版」、小学館発行「大辞泉」、三省堂発行「大辞林」)においては、「京の着倒れ、大阪の食い倒れ」と記載されているほか、請求人店舗の名称は「京の着倒れ、大坂の食い倒れ」という江戸時代の言葉にちなんで名付けられたとする複数の報道記事(甲31、甲34及び甲37並びに乙7)があること、「くいだおれ」の文字は飲食店の名称等に一般に使用されている事実があること(乙8ないし乙17)などからすると、「大阪の食い倒れ」の言葉が請求人店舗の著名性に起因するということはできないし、「くいだおれ」の平仮名表記が特徴的ということもできない。むしろ、「くいだおれ」の語のみでは、請求人店舗を連想、想起することはないものというべきである。
よって、請求人の上記主張は採用することができない。
(2)請求人使用商標1と被請求人使用商標1との対比
ア 請求人使用商標1
請求人使用商標1は、「大阪名物くいだおれ」の文字からなるものであり、一連一体のものとして認識されているというべきであって、「オオサカメイブツクイダオレ」の一連の称呼のみを生ずるものといえ、特定の観念は生じないものといえる。
イ 被請求人使用商標1
被請求人使用商標1は、上記2(2)ウのとおり、構成文字全体から生ずる「シュンサイクイダオレイチバ」の称呼のほか、顕著に書された「くいだおれ市場」の文字部分より「クイダオレイチバ」の称呼をも生ずるものであって、特定の観念を有しない造語よりなるものと認めることができる。
ウ 請求人使用商標1と被請求人引用商標1との類否について
(ア)称呼について
請求人使用商標1から生じる「オオサカメイブツクイダオレ」の称呼と、被請求人使用商標1から生じる「シュンサイクイダオレイチバ」又は「クイダオレイチバ」の称呼とを対比するに、両者は、「オオサカメイブツ」の音と「シュンサイ」及び/又は「イチバ」の音という顕著な差異を有しており、これらの差異が全体に及ぼす影響は大きく、それぞれを一連に称呼するときは、全体の音感、音調が著しく相違し、互いに相紛れることなく容易に区別することができるものである。
(イ)外観について
請求人使用商標1と被請求人使用商標1とは、それぞれの構成に照らし、外観上判然と区別し得る差異を有するものである。
(ウ)観念について
両商標は、いずれも全体として親しまれた既成の観念を有するものとはいい難いから、観念上比較することはできない。
エ そうすると、請求人使用商標1と被請求人使用商標1とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても互いに相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(3)出所の誤認混同のおそれ
上記(1)のとおり、請求人使用商標1が取引者、需要者間に広く認識されていたといえるとしても、請求人使用商標1と被請求人使用商標1とは、上記(2)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、商標権者が被請求人使用商標1をカニ等の魚介製品の通信販売等の役務について使用しても、これに接する取引者、需要者が「くいだおれ」の文字部分にのみ着目して、請求人使用商標1ないしは請求人を連想、想起するようなことはないというべきであり、また、上記のとおり、請求人使用商標2が取引者、需要者間に広く認識されているとまではいえないことから、被請求人の上記役務が請求人又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのごとく、その出所について誤認し混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、上記のとおり、被請求人(商標権者)による被請求人使用商標の使用は、他人の業務に係る役務と混同を生ずるものをしたと認められないものである。
4 むすび
以上のとおり、被請求人による被請求人使用商標の使用は、商標法第51条第1項の要件を欠くことになり、同条項の他の要件を検討するまでもなく、本件商標の登録を取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(被請求人使用商標1)



別掲2(被請求人使用商標2)


(色彩については原本参照)



審理終結日 2013-02-15 
結審通知日 2013-02-20 
審決日 2013-03-25 
出願番号 商願2010-14313(T2010-14313) 
審決分類 T 1 31・ 3- Y (X35)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 大森 健司 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 堀内 仁子
梶原 良子
登録日 2011-07-15 
登録番号 商標登録第5426050号(T5426050) 
商標の称呼 シュンサイクイダオレイチバ、シュンサイクイダオレシジョー、シュンサイクイダオレ、シュンサイ、クイダオレイチバ、クイダオレシジョー、クイダオレ 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 
代理人 加藤 幸江 
代理人 前田 健一 
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