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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X2930
管理番号 1272530 
審判番号 不服2012-9838 
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-28 
確定日 2013-03-14 
事件の表示 商願2011-46130拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は,「蔵王」の文字をゴシック体により普通に用いられる方法で横書きしてなり,第29類及び第30類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として平成23年7月1日に登録出願され,その後,指定商品については,平成24年1月10日付けの手続補正書により,第29類「食肉,卵,冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工野菜及び加工果実,カレー・シチュー又はスープのもと」及び第30類「グラタン,ドリア,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,酒かす」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は,「本願商標は,『蔵王』の文字を普通に用いられる方法で表してなるところ,『蔵王』は,宮城・山形の県境にある蔵王山を中心とする地名を容易に看取させる上,スキー場や温泉でも全国的に知られていることを考慮すれば,本願商標をその指定商品について使用しても,本願商標に接する取引者,需要者は,『蔵王山周辺地域で製造又は販売される商品』程の意味合いを認識するにとどまり,結局,本願商標は,単に商品の産地,販売地を表したもので自他商品識別機能を果たし得ない。したがって,本願商標は,商標法3条1項3号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 本願商標が商標法3条1項3号に該当することについて
本願商標は,前記第1のとおり,「蔵王」の文字を普通に用いられる方法で書してなるものであるところ,「蔵王」は,「宮城・山形の県境にある蔵王山を中心とする地名」(「コンサイス日本地名事典<第5版>」株式会社三省堂)とされ,温泉,スキー場などの観光地としても知られている。
そして,「蔵王」の文字は,以下のとおり,飲食料品の分野において,産地を示すものとして,以下のとおり使用されている事実がある。
(1)新聞記事情報
ア 「『蔵王の旬,味わって』/11月末までキャンペーン/宮城・蔵王町 飲食店や宿泊施設/地元食材生かし料理提供」(2012.09.30 河北新報)の見出しにて「蔵王町産の旬の食材を生かしたメニューで町の魅力をPRする『たっぷり蔵王! キャンペーン』が29日,町内各地で始まった。・・・期間中,参加3店のスタンプを集めて応募すると,蔵王の食材詰め合わせなどが抽選で当たる。」との記載。
イ 「東日本大震災:名取の仮設住宅で高原野菜を無料配布--蔵王の農家有志/宮城」(2011.10.29 毎日新聞 地方版/宮城)の見出しにて「蔵王町七日原,北原尾両地区の農家有志で組織する『蔵王高原大根交流会』・・・は27日,・・・青首ダイコンや白菜,キャベツ,ネギ,ナシなど『蔵王高原野菜』を無料で配布した。『被災した人々に蔵王の野菜を食べて元気を出してもらいたい』と企画した。」との記載。
ウ 「蔵王の野菜や魚 創作料理を試食=宮城」(2010.03.17 読売新聞 東京朝刊)の見出しにて「蔵王町の地域福祉センターで16日,地元で採れた野菜や魚を使った料理の試食会が開かれた。豊かな食材を観光資源にしようと,同町観光協会などが主催した。」との記載。
エ 「蔵王の牛乳使用/新作パンを村井宮城県知事に紹介/山崎製パン仙台工場」(2008.09.12 河北新報)の見出しにて「仙台・宮城デスティネーションキャンペーンを前に,蔵王の牧場で搾った牛乳を使った牛乳パンシリーズを発売した山崎製パン・・・」との記載。
オ 「蔵王特産のナシ,出荷作業が本格化 価格は据え置き/宮城県」(2008.09.04 朝日新聞 東京地方版/宮城)の見出しにて「蔵王町で特産のナシの収穫が始まり,JAみやぎ仙南の選果場ではわせ種の『幸水』の出荷が本格化している。」との記載。
(2)インターネット情報
ア 「宮城まるごと探訪」に係るウェブサイトにおいて「JAみやぎ仙南蔵王特産品直売センター」「蔵王の産物がいっぱい」の記載と共に野菜などが陳列されている写真が掲載されている(http://www.miyagi-kankou.or.jp/wom/o-2596)。
イ 「ペンション陽だまり プラン詳細」と題するウェブサイトにおいて「こだわっています蔵王産食材!味が濃いです! ペンション陽だまり」「蔵王野菜の前菜。蔵王は野菜の宝庫。旬をお楽しみください。(夕食の一例です)」との記載(http://www.jalan.net/yad305202/plan/plan01445809/)。
ウ 「蔵王町観光協会」に係るウェブサイトにおいて「蔵王産の豆腐」「蔵王町には,山々から湧き出た水と良質の大豆を使った,こだわりの豆腐を売っている店があります。」との記載(http://www.zao-machi.com/6075)。
エ 「ニチレイフーズ」に係るウェブサイトにおいて「えびとチーズのグラタン(宮城県蔵王産ミルク使用)」との記載(http://www.nichireifoods.co.jp/product/detail/food_detail.html?sho_id=100)。
オ 「ソーセージファクトリーグルックル 」に係るウェブサイトにおいて,「宮城県蔵王産鴨スモークブロック」との記載(http://glockle.shop-pro.jp/?pid=21133684)。
カ 「Amazon」に係るウェブサイトにおいて「蔵王チーズ ビーフカレー(蔵王産牛肉とクリームチーズ入り)」「蔵王牧場で育った牛の肉と,丹念に炒めた玉ねぎと果実,蔵王のクリームチーズでじっくりと煮込んだ,コクのある味わいのビーフカレーに仕上げました。」との記載(http://www.amazon.co.jp/%E8%94%B5%E7%8E%8B%E3%83%81%E3%83%BC%E3%82%BA-%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%BC%EF%BC%88%E8%94%B5%E7%8E%8B%E7%94%A3%E7%89%9B%E8%82%89%E3%81%A8%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%81%E3%83%BC%E3%82%BA%E5%85%A5%E3%82%8A%EF%BC%89/dp/B0055MHS3A)。
キ 「フロム蔵王楽天市場店」に係るウェブサイトにおいて「蔵王の味覚プレゼントキャンペーン・幸水梨」「蔵王の完熟梨(幸水)3kg」「蔵王の特産品として名高い,みずみずしくて特有の香りと甘みで人気の高い『幸水』の中から光センサーによって糖度,熟度,着色を判別し,最上級の等級に選別された『特秀』だけをお届けします。」との記載(http://www.rakuten.co.jp/from-zao/600171/796829/)。
ク 「白石・宮城蔵王の『買う』観光スポット」と題するウェブサイトにおいて「遠刈田温泉朝市」「5月下旬から11月下旬の毎週日曜朝6時から8時まで,『神の湯』前で開催する朝市。蔵王で採れた新鮮な野菜や果物などが販売される。」との記載(http://kanko.travel.rakuten.co.jp/miyagi/region/shiroishi040000.html)。
ケ 「蔵王温泉旅館三浦屋」に係るウェブサイトにおいて「オススメ散歩コース『朝市』/蔵王の採れたて野菜がずらりと並らぶ朝市がオススメです。毎週日曜日朝6時?7時30分に開催されます。」との記載(http://www.miurayaga.com/kankou.html)。
コ 請求人自身に係るウェブサイトにおいて「自家製ソフトクリーム/蔵王産牛乳と生クリームたっぷりの蔵王チーズ工場産ソフトクリーム。濃厚なのにさっぱりとしたあと味。」との記載(http://www.zao-cheese.or.jp/eat/38-cheesehouse.html)。
サ 請求人自身に係るウェブサイトにおいて「チーズケーキ よもぎ/蔵王産よもぎの香りが懐かしいような風味の和風の『よもぎ』と『ブルーベリー』がございます。」との記載(http://www.zao-cheese.or.jp/eat/37-cheeseshed.html)。
シ 請求人自身に係るウェブサイトにおいて「バーベキューハウス ウィンド・デッキ」「ハートランドの中にあるバーベキューハウスです。蔵王産牛肉や宮城県産ホエー豚肉を特製の自家製タレで味わえます。」との記載(http://www.zao-cheese.or.jp/eat/4-winddeck.html)。

以上のことからすれば,「蔵王」の文字は,飲食料品の分野において,産地を示すものとして多用されていることが認められる。
そして,本願商標の指定商品は,まさに飲食料品の分野に含まれるものであるから,本願商標をその指定商品に使用するとき,これに接する取引者,需要者は,その指定商品が,宮城・山形の県境にある蔵王山を中心とする地域である蔵王で生産されたものであることを理解するにとどまるとみるのが相当である。
したがって,本願商標は,商品の産地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから,商標法3条1項3号に該当する。

2 請求人の主張について
(1)請求人は,要するに,「蔵王」は「蔵王権現」を意味する語でもあること,地名だとしてもその地域が漠然としていること,観光地としては有名だが,産地・販売地としては知られていないことなどから,「蔵王」は産地・販売地としては認識されない旨,主張する。
しかしながら,飲食料品の分野において,その飲食料品との関係で「蔵王」の文字が,「蔵王権現」を理解させるものとして使用されている事例は発見できない一方で,産地を示すものとして使用されている事例は,前記1(1)ア?オ及び(2)ア?シのように,多数見受けられる。
そうすると,飲食料品の分野において,「蔵王」の文字が飲食料品に使用された場合,これに接する取引者,需要者は,「蔵王」の文字を,産地を示すものとして理解するというのが相当である。
そして,その産地としての蔵王は,地域が漠然としているとしても,飲食料品の分野において「蔵王」の文字が産地を示すものとして多用されていることからすれば,「蔵王」の文字が,飲食料品である本願商標の指定商品に使用された場合,これが自他商品を識別するための標識として機能するとはいい難い。むしろ,需要者は,産地として認識するにとどまるというのが自然である。
したがって,上記請求人の主張は採用できない。
なお,「蔵王産牛乳」「蔵王産よもぎ」「蔵王産牛肉」というように,「蔵王」の語を,「蔵王権現」等のことではなく,産地として使用している者には,請求人自身も含まれている(前記1(2)コ?シ)。
(2)請求人は,要するに,本願商標と同一又は類似である「蔵王」等が登録されているから,本願商標も登録されるべきである旨,主張する。
登録出願に係る商標が,登録されるべきであるか否かは,当該商標の構成・態様や指定商品との関係と共に,査定時又は審決時における,指定商品の取引の実情等を考慮して判断されるものであるから,過去において同一の商標が登録されていたとしても,その際の判断の妥当性が,その後の判断を恒久に拘束すると言い切れるものではない。
請求人が挙げた登録例の登録年は,昭和28年(甲4),昭和59年(甲5),平成4年(甲6),昭和56年(甲7),平成6年(甲8)であり,もっとも新しいものでも18年前のものである。
そして,最近では,インターネットによる商品の宣伝・広告,情報の開示が極めて活発に行われ,これに接する取引者,需要者も多数いるところ,「蔵王」の文字が飲食料品の産地を示すものとして使用されている例は,新聞だけでなく,インターネットにおいても多数見受けられる(前記1(2)ア?シ)。
また,普段の買物で食品を購入する際に,その食品がどこで生産されたか「気にする」「どちらかといえば気にする」者は,計72.3%にも達しており(「食の安全に関する消費者の意識調査結果報告書」5頁 平成23年7月 消費者庁http://www.caa.go.jp/jisin/pdf/110715press.pdf),「産地や生産者への関心は年々高まっている」(北海道新聞 2012.09.29)とする記事もあるから,最近では,飲食料品の産地に対する取引者,需要者の関心は相当程度高いといえる。
さらに,河北新報(2012.11.02「蔵王ブランド始動/第1弾は環境保全米など/宮城・蔵王町が農産物の品質認」)によれば,「蔵王町は地元で取れた農産物の品質を保証する『蔵王ブランド』認定制度を始めた。第1弾として環境保全米と直播栽培米を手掛ける町内の2団体,1個人を選んだ。農産物の付加価値を高め,他の産地との差別化や販売促進につなげる狙いだ。」とあり,蔵王の地元で取れた農産物が「蔵王」の文字を用いてブランド化されるなど,「蔵王」について産地としての関心が高まっているといえる。
こうしたことからすれば,現在においては,新聞だけでなくインターネットにおいても,飲食料品の産地を示すものとして多用されている「蔵王」の文字が,指定商品に使用されたとき,飲食料品の産地に関心の高い取引者,需要者は,これを,産地を示すものと理解するにとどまるというのが自然である。
加えて,「蔵王」の文字は,前記1(1)及び(2)のとおり,飲食料品の産地を示すものとして多数使用されているから,蔵王で生産された飲食料品の産地を示すものとして,「蔵王」の文字の使用を欲する者は多数いると想定し得るものであり,本願商標「蔵王」の商標権を請求人に与え,請求人にのみ,その使用を独占させなければならない格別の理由は見当たらない。
したがって,本願商標は,現在においては商標法3条1項3号に該当するものというのが相当であり,これを覆すに足る事情は発見できない。
よって,請求人の上記主張は,採用できない。

3 結語
以上のとおりからすると,本願商標が商標法3条1項3号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は,妥当であって,取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2013-01-09 
結審通知日 2013-01-15 
審決日 2013-01-28 
出願番号 商願2011-46130(T2011-46130) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X2930)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 薩摩 純一 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 守屋 友宏
小川 きみえ
商標の称呼 ザオー 
代理人 涌井 謙一 
代理人 山本 典弘 
代理人 鈴木 正次 
代理人 鈴木 一永 

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